JP4728598B2 - リチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Description
上記非水電解液は,例えば電解質を溶解した有機溶媒等よりなり,電解質としては,例えばLiClO4,LiPF6,LiBF4,LiAsF6,LiN(CF3SO2)2及びLiCF3SO3等がある。
LiPF6を電解質として含有するリチウムイオン二次電池は,他の電解質に比べて,爆発性や毒性がほとんど無く安全性に優れている。また,LiPFO4は,集電体からアルミニウム等の金属を溶出させることもほとんどないため,このようなリチウムイオン二次電池は,充放電を繰り返し行ったときの容量劣化が小さいという利点を有している。
即ち,このようなリチウムイオン二次電池を高温条件下で繰り返し使用すると,電解質が分解し負極に高抵抗な被膜を形成するおそれがある。その結果,充放電容量が低下し,また電池の内部抵抗が上昇して出力電圧を低下させてしまうという問題があった。
そのため,上記電解質を有する非水電解液を用いてリチウムイオン二次電池を作製する際には,その製造工程において,電池系内への水の混入を極力防ぐ必要があった。
しかし,その結果,グローブボックスやドライルーム等の設備が必要となるため製造コストが高くなると共に,リチウムイオン二次電池の作製が煩雑になるという問題があった。
上記非水電解液には,添加剤として下記の式(α)で表される化合物が添加されており,
上記添加剤は,上記電解質とのモル比で,電解質:添加剤=99.9〜5:0.1〜95となるように上記非水電解液中に添加されており,
また,上記非水電解液は,濃度100ppm〜10000ppmの割合で水を含有していることを特徴とするリチウムイオン二次電池にある(請求項1)。
そのため,上記リチウムイオン二次電池を一回以上充電させると,上記添加剤のすべてもしくは一部が分解し,上記正極又は/及び上記負極の表面や,上記正極活物質又は/及び上記負極活物質の表面に,これらを被覆する被覆物が形成される。
そのため,上記リチウムイオン二次電池においては,リチウムイオンの吸蔵・放出がスムーズに行われ,正極又は/及び負極の表面や上記正極活物質又は/及び負極活物質の表面と,電解液との界面抵抗が低減し,幅広い温度範囲で電池の初期出力を向上できる。特に,低温では電解液の抵抗が高くなるために,出力の向上はより顕著になる。
また,上記被覆物は,非水電解液中の電解質の分解等によって起こる,負極上での高抵抗な被膜の形成を抑制することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池においては,上記被覆物が,負極における高抵抗な被膜の形成を防止することができる。そのため,例えば60℃という高温環境下で使用した場合においても,優れた放電容量及び出力電圧を発揮することができる。
例えばすでに実用化されているLiPF6を支持塩に用いた電解液を用いた場合には,加水分解によってHFが生じるおそれがある。このHFは,例えば60℃,4.1V等という環境下において,例えばAl等からなる集電体を腐食するおそれがある。その結果,抵抗が上昇し,電池特性が劣化してしまうおそれがある。
これに対し,上記リチウムイオン二次電池においては,上記非水電解液に,上記式(α)で表される化合物が添加されているため,加水分解してもHFが発生しない。そのため,上記リチウムイオン二次電池は優れた耐久性を発揮することができる。
そのため,上記リチウムイオン二次電池は,その作製時において,従来のように電池内に水分を混入させないための特別な装置や設備等を必要としない。それ故,本発明のリチウムイオン二次電池は,低コストで簡単に作製することができる。また,上記リチウムイオン二次電池は,非水電解液中に上記添加剤が添加されているため,上記の濃度範囲で水分を含有していても,集電体等をほとんど腐食せず,高温条件下でのサイクル特性に優れている。即ち,高温条件下で充放電を繰り返し行っても,充放電容量の低下及び内部抵抗の上昇を抑制できる。
そのため,最も好ましくはa=1である。このようなカチオンAa+としては,リチウムイオン,テトラアルキルアンモニウムイオン,プロトンがある。
また,同様にアニオンの価数bも1〜3であり,b=1が最も好ましい。
また,カチオンとアニオンの比を表す定数pは,両者の価数の比b/aにより必然的に決まってくる。
好ましくは,上記一般式(1)中のMは,Al,B,V,Ti,Si,Zr,Ge,Sn,Cu,Y,Zn,Ga,Nb,Ta,Bi,P,As,Sc,Hf,またはSbのいずれかであることがよい。
この場合には,上記添加剤の合成が容易となる。
さらには,R1が複数存在する場合(q=1,m=2〜4の場合)には,それぞれが結合してもよく,例えばエチレンジアミン四酢酸のような配位子を挙げることができる。
好ましくは,R2としては,電子吸引性の基がよく,特にフッ素がよい。この場合には,上記添加剤の溶解度や解離度が向上し,これに伴ってイオン伝導度が向上するという効果を得ることができる。さらにこの場合には,耐酸化性が向上し,これにより副反応の発生を防止することができる。
また、上述のR1,R2,R3,R4において、C1〜C10は炭素数が1〜10であることを示し、C6〜C20は炭素数が6〜20であることを示す。
一方,上記非水電解液中の水の濃度が10000ppmを超える場合には,高温条件下で充放電を繰り返し行うことにより,上記リチウムイオン二次電池の充放電容量が劣化し易くなると共に内部抵抗が上昇しやすくなる。
また,上記リチウムイオン二次電池は,正極,負極,電池ケースの内壁等という上記非水電解液中以外の部分にも,水分を含有していても良い。
この場合には,上記リチウムイオン二次電池の電位及び充放電容量が高くなるという効果を得ることができる。
この場合には,上記リチウムイオン二次電池の充放電容量が一層向上するという効果を得ることができる。
これら活物質,導電材,結着剤を分散させる溶剤としては,例えばN−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
この場合には,上記リチウムイオン二次電池の充電時に,上記添加剤が分解し負極又は/及び負極活物質に低抵抗でかつ安定な被覆物を形成し易くなり,上記リチウムイオン二次電池の内部抵抗の上昇を一層抑制することができる。
比表面積が0.8m2/g未満の場合又は5m2/gを越える場合には,上記被覆物が充分に形成されず,上記内部抵抗の上昇を充分に抑制できないおそれがある。
この場合には,比較的イオン伝導度が高く,電気化学的に安定であるという効果を得ることができるとともに,さらに,上記添加剤のリチウムイオンも電池の充放電反応に寄与できるという効果を得ることができる。また,この場合には低コストで上記リチウムイオン二次電池を作製できる。
上記電解質と上記添加剤とのモル比が上記の範囲から外れる場合には,充放電を繰り返し行うことによって,リチウムイオン二次電池の内部抵抗(IV抵抗)が上昇し,充分な出力を得ることができなくなるおそれがある。
また,上記リチウムイオン二次電池のIV抵抗増加率をより抑制させたい場合には,特に電解質:添加剤=99.9〜20:0.1〜80であることが好ましい。より好ましくは電解質:添加剤=95〜50:5〜50であることが好ましい。
また,上記リチウムイオン二次電池の初期出力を向上させたい場合には,特に電解質:添加剤=99.9〜90:0.1〜10であることが好ましい。より好ましくは電解質:添加剤=99〜93:1〜7がよい。
したがって,上記電解質と上記添加剤との混合比は,上記リチウムイオン二次電池の用途に応じて要求される電池特性によって,適宜決定することができる。
次に,本発明のリチウムイオン二次電池の実施例につき図1〜図2を用いて説明する。
図1及び図2に示すごとく,本例のリチウムイオン二次電池1は,リチウムと遷移金属とを含有する酸化物又はポリアニオン系化合物を正極活物質25の主成分として含有する正極2と,炭素材料を負極活物質35として含有する負極3と,有機溶媒に電解質51を溶解してなる非水電解液とを有する。
また,上記非水電解液は,濃度100ppm〜10000ppmの割合で水を含有している。
図1に示すごとく,本例のリチウムイオン二次電池1は,正極2,負極3,セパレータ4,ガスケット59,及び電池ケース6等よりなっている。電池ケース6は,18650型の円筒形状の電池ケースであり,キャップ63及び外装缶65よりなる。電池ケース6内には,シート状の正極2及び負極3が,該正極2及び負極3の間に挟んだセパレータ4と共に捲回した状態で配置されている。
また,電池ケース6のキャップ63の内側には,ガスケット59が配置されており,電池ケース6の内部には,非水電解液が注入されている。
正極2及び負極3には,それぞれ正極集電リード23及び負極集電リード33が熔接により設けられている。正極集電リード23は,キャップ63側に配置された正極集電タブ235に熔接により接続されている。また,負極集電リード33は,外装缶65の底に配置された負極集電タブ335に熔接により接続されている。
まず,以下のようにして,上記非水電解液を準備した。
即ち,まずエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを3:7の体積比で混合した有機溶媒に,電解質としてのLiPF6を終濃度が1Mとなるように加えて電解質溶液を作製した。また,エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを3:7の体積比で混合した有機溶媒に,上記の式(β)で表される化合物(LPFO)を終濃度が1Mとなるように加えて添加剤溶液を作製した。
正極においては,まず正極活物質としてLiNi0.75Co0.15Al0.10O2を準備し,該正極活物質と,導電材としてのカーボンブラック(東海カーボン株式会社製,TB5500)と,結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(呉羽化学工業株式会社製,KFポリマ)とを混合し,分散剤としてn−メチル−2−ピロリドンを適量添加し,混練してペースト状の正極合材を得た。正極活物質と導電材と結着剤との混合比は,重量比で,正極活物質:導電材:結着剤=85:10:5とした。
上記試料E1〜試料E12において,非水電解液に含まれる電解質と添加剤とのモル比及び水分量を,それぞれ後述する表1に示す。
本例は,上記実施例1において作製したリチウムイオン二次電池(試料E1〜試料E12)の優れた特性を明らかにするために,比較用のリチウムイオン二次電池を作製した例である。具体的には,比較用として,上記非水系電解液に上記添加剤を含有しない3種類のリチウムイオン二次電池(試料C1〜試料C3)を作製した。
続いて,上記の実施例1と同様にして,正極及び負極を準備し,これらの正極,負極及び非水電解液を電池ケース内に配置して,リチウムイオン二次電池を作製した。これを試料C1とした。
試料C1は,非水電解液に添加剤(LPFO)が添加されていない点を除いては,上記試料E1〜試料E4と同様のものである。
上記試料C1〜試料C3において,上記非水電解液に含まれる水分量を,それぞれ後述する表1に示す。
次に,本例では,上記実施例1において作製した試料E1〜試料E12,及び比較例にて作製した試料C1〜試料C3を用いて,下記の充放電サイクル試験を行うと共に,容量維持率及び抵抗上昇率を測定した。
電池の実使用温度範囲の上限と目される60℃の温度条件下で,上記試料E1〜試料E12及び試料C1〜試料C3を,電流密度2.0mA/cm2の定電流で充電上限電圧4.2Vまで充電し,次いで電流密度2.0mA/cm2の定電流で放電下限電圧3Vまで放電を行う充放電を1サイクルとし,このサイクルを合計100サイクル行った。
充放電サイクル試験前の放電容量を容量A(初期放電容量),充放電サイクル試験後の放電容量を容量Bとしたとき,下記の式(a)により算出した。
容量維持率(%)=容量B/容量A×100 ・・・・(a)
「抵抗上昇率の評価」
各試料を電池容量の50%(SOC=50%)に調整し,0.12A,0.4A,1.2A,2.4A,4.8Aの電流を流して10秒後の電池電圧を測定した。流した電流と電圧とを直線近似し,その傾きからIV抵抗を求めた。
抵抗上昇率は,充放電試験後のIV抵抗を抵抗A(初期IV抵抗),充放電試験前のIV抵抗を抵抗Bとすると,下記の式(b)にて算出することができる。
抵抗上昇率(%)=(抵抗B−抵抗A)×100/抵抗A ・・・・(b)
また,本例においては明確に示していないが,最大量で10000ppmの水を非水電解液中に含有するリチウムイオン二次電池においても,上記と同様の結果が得られることを確認している。
一方,添加剤が添加されていない試料C1〜試料C3においては,上記のような1.8V近傍の容量成分はなく,負極に被覆物が形成されていないと考えられる。
本例は,後述の実験例2にて行う初期出力試験に用いるリチウムイオン二次電池を作製する例である。
本例においては,上記実施例1における上記試料E1とは,上記非水電解液中の上記電解質と上記添加剤との混合比が異なる3種類のリチウムイオン二次電池を,試料E1と同様にして作製した。これらをそれぞれ試料E13〜試料E15とした。試料E13〜試料E15のリチウムイオン二次電池は,上記非水電解液中の上記電解質と上記添加剤との混合比を変えた点を除いては,実施例1の上記試料E1と同様にして作製したものである。
即ち,試料E13は,非水電解液中に電解質と添加剤とが電解質:添加剤=97:3という割合で添加されている点を除いては,実施例1の上記試料E1と同様のものである。
即ち,試料E14は,非水電解液中に電解質と添加剤とが電解質:添加剤=93:7という割合で添加されている点を除いては,実施例1の上記試料E1と同様のものである。
即ち,試料E15は,非水電解液中に電解質と添加剤とが電解質:添加剤=85:15という割合で添加されている点を除いては,実施例1の上記試料E1と同様のものである。
即ち,試料E16は,非水電解液の有機溶媒としてECとDMCとEMCとを3:3:4の体積比で混合してなる混合溶媒を用いた点を除いては,実施例1の試料E1と同様のものである。
即ち,試料E17は,非水電解液の有機溶媒としてECとDMCとEMCとを3:3:4の体積比で混合してなる混合溶媒を用いた点を除いては,実施例1の試料E2と同様のものである。
即ち,試料E18は,非水電解液の有機溶媒としてECとDMCとEMCとを3:3:4の体積比で混合してなる混合溶媒を用いた点を除いては,実施例1の試料E3と同様のものである。
即ち,試料E19は,非水電解液の有機溶媒としてECとDMCとEMCとを3:3:4の体積比で混合してなる混合溶媒を用いた点を除いては,上記試料E13と同様のものである。
即ち,試料E20は,非水電解液の有機溶媒としてECとDMCとEMCとを3:3:4の体積比で混合してなる混合溶媒を用いた点を除いては,上記試料E14と同様のものである。
即ち,試料E21は,非水電解液の有機溶媒としてECとDMCとEMCとを3:3:4の体積比で混合してなる混合溶媒を用いた点を除いては,上記試料E15と同様のものである。
試料C4は,非水電解液として,ECとDMCとEMCとを体積比3:3:4で混合してなる有機溶媒に,電解質としてのLiPF6を終濃度が1Mとなるように加え,さらに水を約1000ppmの濃度で加えた電解液を用いて作製したものである。試料C4の非水電解液には,添加剤(LPFO)が添加されていない。
即ち,試料C4は,有機溶媒として,ECとDMCとEMCとを体積比3:3:4で混合してなる溶媒を用いた点を除いては,比較例の上記試料C1と同様のものである。
次に,本例においては,上記実施例2において作製した上記試料E13〜E21及び試料C4,上記実施例1において作製した試料E1〜試料E3,及び比較例において作製した上記試料C1について,低温(−30℃)における初期出力を測定した。測定は,下記の初期出力試験により行った。
上記試料E1〜E3,試料E13〜E21,試料C1及びC4は,非水電解液中に含まれる電解質と添加剤とのモル比、有機溶媒の種類が異なるリチウムイオン二次電池である。各試料の電解液中における電解質と添加剤とのモル比、有機溶媒を下記の表2に示す。
各試料(試料E1〜E3,試料E13〜E21,試料C1及びC4)を−30℃に保持した。その後,電池容量50%(SOC=50%)の状態に調整し,0.12A,0.4A,1.2A,2.4A,4.8Aの電流を流して10秒後の電池電圧を測定し,出力値を算出した。測定は,各試料と同様の試料を3つずつ作製して行い,その平均を求めた。
各試料の出力値は,試料C1の値を1としたときの相対値,即ち試料C1の値を基準に規格化した値で表した。その結果を図3に示す。
2 正極
25 正極活物質
3 負極
35 負極活物質
51 電解質
53 添加剤
55 被覆物
Claims (2)
- 請求項1において,上記電解質は,LiPF 6 ,LiClO 4 ,LiBF 4 ,LiAsF 6 ,またはLiSbF 6 から選ばれる1種以上であることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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