JP7120507B2 - ホウ酸リチウム組成物、リチウム二次電池用添加剤、ホウ酸リチウム組成物の製造方法、リチウム二次電池用非水電解液、リチウム二次電池 - Google Patents

ホウ酸リチウム組成物、リチウム二次電池用添加剤、ホウ酸リチウム組成物の製造方法、リチウム二次電池用非水電解液、リチウム二次電池 Download PDF

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Description

本開示は、新規なホウ酸リチウム組成物、リチウム二次電池用添加剤、ホウ酸リチウム組成物の製造方法、リチウム二次電池用非水電解液、及びリチウム二次電池に関する。
ホウ酸リチウム化合物は、例えば電気化学の分野において利用されている。
例えば、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムを電解質として含むリチウムイオン電池用電解液が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、例えば、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウムを電解質として含むリチウムイオン電池用電解液も知られている(例えば、特許文献2参照)。
特許3730855号公報 特許3722685号公報
本開示の一態様の課題は、新規なホウ酸リチウム組成物、及びホウ酸リチウム組成物の製造方法を提供することである。
また、本開示の別の一態様の課題は、電池抵抗を低減できるリチウム二次電池用添加剤及びリチウム二次電池用非水電解液、並びに、上記リチウム二次電池用非水電解液を含むリチウム二次電池を提供することである。
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1>
下記式(I)で表されるホウ酸リチウム化合物と、メタホウ酸リチウムとを含み、前記式(I)で表されるホウ酸リチウム化合物と前記メタホウ酸リチウムの含有量の合計に対する前記メタホウ酸リチウムの含有量が0.5質量%~20質量%であるホウ酸リチウム組成物。
Figure 0007120507000001

〔式(I)中、Rは、単結合、又は炭素数1~4のアルキレン基を表す。〕
<2>
前記Rが、単結合、メチレン基、又はエチレン基である<1>に記載のホウ酸リチウム組成物。
<3>
前記式(I)で表されるホウ酸リチウム化合物が下記式(I-1)で表される化合物である<1>又は<2>に記載のホウ酸リチウム組成物。
Figure 0007120507000002

<4>
<1>~<3>のいずれか1つに記載のホウ酸リチウム組成物を含むリチウム二次電池用添加剤。
<5>
<1>~<3>のいずれか1つに記載のホウ酸リチウム組成物の製造する方法であって、水とニトリル系溶媒とを含み、前記水と前記ニトリル系溶媒の含有量の合計に対する前記水の含有量が0質量%~70質量%である溶媒Aを準備する工程と、ジカルボン酸化合物と、リチウム塩化合物と、ホウ酸化合物とを、前記溶媒A中で、20℃以上80℃未満の温度条件で混合させることにより前記ホウ酸リチウム組成物を含む分散液を得る工程と、を含むホウ酸リチウム組成物の製造方法。
<6>
更に、前記分散液から固形分を取出す工程、を含む<5>に記載のホウ酸リチウム組成物の製造方法。
<7>
更に、前記固形分を加熱する工程、を含む<6>に記載のホウ酸リチウム組成物の製造方法。
<8>
前記加熱する工程は、前記加熱によって生じた水を除去することを含む<7>に記載のホウ酸リチウム組成物の製造方法。
<9>
<1>~<3>のいずれか1つに記載のホウ酸リチウム組成物を含むリチウム二次電池用非水電解液。
<10>
正極と、
金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属もしくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれる少なくとも1種を負極活物質として含む負極と、
<9>に記載のリチウム二次電池用非水電解液と、
を含むリチウム二次電池。
<11>
<10>に記載のリチウム二次電池を充放電させて得られたリチウム二次電池。
本開示の一態様によれば、新規なホウ酸リチウム組成物、及びホウ酸リチウム組成物の製造方法が提供される。
また、本開示の別の一態様によれば、電池抵抗を低減できるリチウム二次電池用添加剤及びリチウム二次電池用非水電解液、並びに、上記リチウム二次電池用非水電解液を含むリチウム二次電池が提供される。
本開示のリチウム二次電池の一例である、ラミネート型電池の一例を示す概略斜視図である。 図1に示すラミネート型電池に収容される積層型電極体の、厚さ方向の概略断面図である。 本開示のリチウム二次電池の別の一例である、コイン型電池の一例を示す概略断面図である。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
〔ホウ酸リチウム組成物〕
本開示のホウ酸リチウム組成物は、下記式(I)で表されるホウ酸リチウム化合物と、メタホウ酸リチウムとを含む。ホウ酸リチウム化合物とメタホウ酸リチウムの含有量の合計に対する前記メタホウ酸リチウムの含有量は0.5質量%~20質量%である。
<式(I)で表されるホウ酸リチウム化合物>
式(I)で表されるホウ酸リチウム化合物は下記のとおりである。
Figure 0007120507000003
式(I)中、Rは、単結合、又は炭素数1~4のアルキレン基を表す。
式(I)中、Rで表される炭素数1~4のアルキレン基としては、炭素数1~4の無置換のアルキレン基、及び炭素数1~4のフッ素原子で置換されたアルキレン基が挙げられる。
また、式(I)中、Rで表される炭素数1~4のアルキレン基としては、直鎖状のアルキレン基であってもよいし、分岐状のアルキレン基であってもよい。
式(I)中、Rで表される炭素数1~4のアルキレン基の具体例としては、
メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソプロピレン基などの直鎖状又は分岐状であって無置換のアルキレン基;
ジフルオロメチレン基、テトラフルオロエチレン基、ヘキサフルオロプロピレン基などのフッ素原子で置換されたアルキレン基;
などが挙げられる。
式(I)中のRは、好ましくは単結合か、又は炭素数1~2のアルキレン基であり、より好ましくは単結合か、又は炭素数1のアルキレン基であり、更に好ましくは単結合である。
式(I)で表されるホウ酸リチウム化合物の具体例としては、下記式(I-1)で表される化合物(以下、「LiMOB」ともいう。)が挙げられる。但し、式(I)で表されるホウ酸リチウム化合物は、この具体例には限定されない。
Figure 0007120507000004
<メタホウ酸リチウム>
本開示のホウ酸リチウム組成物は、メタホウ酸リチウム(以下、「LiBO」ともいう。)を含む。メタホウ酸リチウムの含有量は、上記式(I)で表されるホウ酸リチウム化合物とメタホウ酸リチウムの含有量の合計に対して0.5質量%~20質量%である。これにより電池特性が向上する。また、電池特性の向上の観点から、メタホウ酸リチウムの含有量は、1質量%~20質量%であることが好ましく、5質量%~20質量%であることがより好ましく、10質量%~20質量%であることが更に好ましい。
〔ホウ酸リチウム組成物の製造方法〕
以下、上述した本開示のホウ酸リチウム組成物を製造する方法の一例(「製法A」とも称す。)を示す。
製法Aは、水とニトリル系溶媒とを含み、前記水と前記ニトリル系溶媒の含有量の合計に対する前記水の含有量が0質量%~70質量%である溶媒Aを準備する工程(以下、「準備工程」ともいう)と、ジカルボン酸化合物と、リチウム塩化合物と、ホウ酸化合物とを、前記溶媒A中で、20℃以上80℃未満の温度条件で混合させることにより前記ホウ酸リチウム組成物を含む分散液を得る工程(以下、「第一工程」ともいう)と、を含む。
溶媒Aに含まれるニトリル系溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられる。
溶媒Aにおける水とニトリル系溶媒の含有量の合計に対する水の含有量は0質量%~70質量%である。前記水の含有量は、式(I)で示されるホウ酸リチウム化合物の収率の向上の観点から、0質量%~65質量%が好ましく、0質量%~55質量%がより好ましく、0質量%~45質量%が更に好ましく、0質量%~35質量%が更に好ましい。
第一工程におけるジカルボン酸化合物としては、シュウ酸、炭素数1~4のアルキレン基を有するジカルボン酸などが挙げられ、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸などが好ましく、中でも、シュウ酸、又はマロン酸がより好ましい。
第一工程におけるリチウム塩化合物としては、炭酸リチウム、水酸化リチウム、シュウ酸リチウムなどが挙げられ、炭酸リチウム、又は水酸化リチウムが好ましく、中でも、炭酸リチウムがより好ましい。
第一工程におけるホウ酸化合物としては、ホウ酸、三酸化二ホウ素、メタホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウムなどが挙げられ、ホウ酸、又は三酸化二ホウ素が好ましく、中でも、ホウ酸がより好ましい。
製法Aにおける第一工程では、下記の反応が進行しているものと考えられる。下記に示した反応スキームは、その一例である。また、下記反応スキームに対し、副反応としてメタホウ酸リチウムが生成されると考えられる。
Figure 0007120507000005
第一工程における上記の反応は、常圧下、減圧下のいずれでも行うことができる。第一工程における反応は、式(I)で示されるホウ酸リチウム化合物の生成を阻害する成分(例えば水分)の混入を防ぐ観点から、不活性雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下、等)で行うことが好ましい。
第一工程における反応温度は、20℃以上80℃未満であり、25℃~70℃であることが好ましく、25℃~65℃であることがより好ましい。反応温度が20℃以上であると、式(I)で示されるホウ酸リチウム化合物の生成が促進されやすい。反応温度が80℃未満であると、メタホウ酸リチウムの生成が抑制され、ホウ酸リチウム組成物中のメタホウ酸リチウムの含有量が20質量%以下であることが実現されやすい。結果、式(I)で示されるホウ酸リチウム化合物の生成率が向上しやすい。
第一工程における反応時間は、ジカルボン酸化合物とリチウム塩化合物とホウ酸化合物との反応を効率よく進行させる観点から、30分~12時間であることが好ましく、1時間~8時間であることがより好ましい。
製法Aは、更に、以下の工程を含んでいてもよい。
製法Aは、前記分散液から固形分を取出す工程(以下、「第二工程」ともいう)と、前記固形分を加熱する工程(以下、「第三工程」ともいう)と、を含むことが好ましい。
第二工程において、固形分は第一工程で得られた分散液から、例えば分散液に含まれる溶媒を除去することにより取り出される。溶媒の除去方法は特に制限は無く、濾紙、濾布、金属メッシュ、メンブランフィルター等の濾材を用いて、一般的に行われる自然濾過、加圧濾過、減圧濾過、遠心濾過等のいかなる方法で行ってもよい。
第二工程における溶媒除去時の温度は、第一工程で得られる分散液をそのまま除去操作に移すことが可能であることから、20℃以上80℃未満で行うことができるが、特段加熱、保温をする必要性は無く、濾過により除去する場合、濾過操作時に濾過器内にて落着く80℃未満のいかなる温度で行ってもよい。
第三工程は、第二工程で取り出された固形分中の未反応物であるジカルボン酸化合物と、リチウム塩化合物と、ホウ酸化合物とを反応させることができると考えられるため、式(I)で示されるホウ酸リチウム化合物の収率の向上の観点から好ましい。
第三工程により上記の反応スキームが更に促進された結果、水が生じる。第三工程である固形分を加熱する工程は、前記水を除去する工程を含んでいてもよい。
第三工程における固形分の加熱により生成した水(以下、「生成水」ともいう。)の除去方法は特に制限は無く、溶媒除去後の固形分をトルエンの様な水と共沸する媒体と共に加熱脱水する方法(ここで、媒体は加熱前に加えておいてもよい。)や、または溶媒除去後の固形分をそのまま乾燥させる方法により行ってもよい。乾燥方法としては、棚段式乾燥機での静置乾燥法;コニカル乾燥機での流動乾燥法;ホットプレート、オーブン等の装置を用いて乾燥させる方法;ドライヤーなどの乾燥機で温風又は熱風を供給する方法;等一般的に行われる乾燥方法が適用できる。
第三工程における生成水の除去時の圧力は、常圧、減圧のいずれであってもよい。またその際の温度については、60℃~200℃であることが好ましく、80℃~180℃であることがより好ましく、100℃~160℃であることがさらに好ましい。温度が60℃以上であると生成水の除去効率に優れる。温度が200℃以下であると、生成したホウ酸リチウム組成物を安定して取り出しやすい。
取り出されたホウ酸リチウム組成物は、そのまま用いてもよいし、例えば、溶媒中に分散又は溶解させて用いてもよいし、他の固体物質と混合して用いてもよい。
本開示のホウ酸リチウム組成物は、リチウム電池用添加剤(好ましくはリチウム二次電池用添加剤、より好ましはリチウム二次電池の非水電解液用の添加剤)、反応試剤、合成反応触媒、各種電気化学デバイス用電解質、ドーピング剤、潤滑油の添加剤などの用途に有用に使用できる。
〔リチウム二次電池用添加剤〕
本開示のリチウム二次電池用添加剤(以下、単に「電池用添加剤」ともいう)は、上述したホウ酸リチウム組成物を含む。本開示の電池用添加剤は、特にリチウム二次電池の非水電解液用の添加剤として好適である。
本開示のリチウム二次電池用添加剤によれば、電池抵抗を低減できる。
〔リチウム二次電池用非水電解液〕
本開示のリチウム二次電池用非水電解液(以下、単に「非水電解液」ともいう)は、上述したホウ酸リチウム組成物を含む。
本開示の非水電解液は、本開示のホウ酸リチウム組成物を含有することにより、電池抵抗を低減できる。
本開示の非水電解液は、上記ホウ酸リチウム組成物を1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
本開示の非水電解液は、上記ホウ酸リチウム組成物を電池用添加剤として含んでもよいし、電解質の供給源として含んでもよい。
本開示の非水電解液が、上記ホウ酸リチウム組成物を電池用添加剤として含む場合、電池用添加剤の含有量(2種以上である場合には総含有量)は、非水電解液の全量に対し、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.01質量%~10質量%がより好ましく、0.05質量%~5質量%が更に好ましく、0.1質量%~5質量%が更に好ましく、0.5質量%~5質量%が更に好ましく、0.5質量%~3質量%が更に好ましく、0.5質量%~2質量%が更に好ましい。
本開示の非水電解液が、上記ホウ酸リチウム組成物を電解質の供給源として含む場合、電解質の濃度は、0.1mol/L~3mol/Lが好ましく、0.5mol/L~2mol/Lがより好ましい。
なお、実際に電池を解体して採取した非水電解液を分析しても、上記ホウ酸リチウム組成物の量が、非水電解液への添加量と比較して減少している場合がある。従って、電池から取り出した非水電解液中に少量でも上記ホウ酸リチウム組成物が検出できる場合には、本開示の非水電解液の範囲に含まれる。
また、非水電解液から上記ホウ酸リチウム組成物が検出できない場合であっても、非水電解液中や電極の被膜中に、上記ホウ酸リチウム組成物の分解物由来の化合物が検出される場合も、本開示の非水電解液の範囲に含まれるとみなされる。
これらの取り扱いは、非水電解液に含有され得る上記ホウ酸リチウム組成物以外の化合物についても同様である。
次に、非水電解液の他の成分について説明する。
非水電解液は、一般的には、非水溶媒を含有する。
<非水溶媒>
非水溶媒としては、種々公知のものを適宜選択することができるが、環状の非プロトン性溶媒及び鎖状の非プロトン性溶媒から選ばれる少なくとも一方を用いることが好ましい。
電池の安全性の向上のために、溶媒の引火点の向上を志向する場合は、非水溶媒として環状の非プロトン性溶媒を使用することが好ましい。
(環状の非プロトン性溶媒)
環状の非プロトン性溶媒としては、環状カーボネート、環状カルボン酸エステル、環状スルホン、環状エーテルを用いることができる。
環状の非プロトン性溶媒は単独で使用してもよいし、複数種混合して使用してもよい。
環状の非プロトン性溶媒の非水溶媒中の混合割合は、10質量%~100質量%、さらに好ましくは20質量%~90質量%、特に好ましくは30質量%~80質量%である。このような比率にすることによって、電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。
環状カーボネートの例として具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネートなどが挙げられる。これらのうち、誘電率が高いエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートが好適に使用される。負極活物質に黒鉛を使用した電池の場合は、エチレンカーボネートがより好ましい。また、これら環状カーボネートは2種類以上を混合して使用してもよい。
環状カルボン酸エステルとして、具体的にはγ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、あるいはメチルγ-ブチロラクトン、エチルγ-ブチロラクトン、エチルδ-バレロラクトンなどのアルキル置換体などを例示することができる。
環状カルボン酸エステルは、蒸気圧が低く、粘度が低く、かつ誘電率が高く、電解液の引火点と電解質の解離度を下げることなく電解液の粘度を下げることができる。このため、電解液の引火性を高くすることなく電池の放電特性に関わる指標である電解液の伝導度を高めることができるという特徴を有するので、溶媒の引火点の向上を指向する場合は、上記環状の非プロトン性溶媒として環状カルボン酸エステルを使用することが好ましい。環状カルボン酸エステルの中でも、γ-ブチロラクトンが最も好ましい。
また、環状カルボン酸エステルは、他の環状の非プロトン性溶媒と混合して使用することが好ましい。例えば、環状カルボン酸エステルと、環状カーボネート及び/又は鎖状カーボネートとの混合物が挙げられる。
環状スルホンの例としては、スルホラン、2-メチルスルホラン、3―メチルスルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、メチルエチルスルホン、メチルプロピルスルホンなどが挙げられる。
環状エーテルの例としてジオキソランを挙げることができる。
(鎖状の非プロトン性溶媒)
鎖状の非プロトン性溶媒としては、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル、鎖状エーテル、鎖状リン酸エステルなどを用いることができる。
鎖状の非プロトン性溶媒の非水溶媒中の混合割合は、10質量%~100質量%、さらに好ましくは20質量%~90質量%、特に好ましくは30質量%~80質量%である。
鎖状カーボネートとして具体的には、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、メチルペンチルカーボネート、エチルペンチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、メチルヘプチルカーボネート、エチルヘプチルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、メチルヘキシルカーボネート、エチルヘキシルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、メチルオクチルカーボネート、エチルオクチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、メチルトリフルオロエチルカーボネートなどが挙げられる。これら鎖状カーボネートは2種類以上を混合して使用してもよい。
鎖状カルボン酸エステルとして具体的には、ピバリン酸メチルなどが挙げられる。
鎖状エーテルとして具体的には、ジメトキシエタンなどが挙げられる。
鎖状リン酸エステルとして具体的には、リン酸トリメチルなどが挙げられる。
(溶媒の組み合わせ)
本開示の非水電解液で使用する非水溶媒は、1種類でも複数種類を混合して用いてもよい。また、環状の非プロトン性溶媒のみを1種類又は複数種類用いても、鎖状の非プロトン性溶媒のみを1種類又は複数種類用いても、又は環状の非プロトン性溶媒及び鎖状のプロトン性溶媒を混合して用いてもよい。電池の負荷特性、低温特性の向上を特に意図した場合は、非水溶媒として環状の非プロトン性溶媒と鎖状の非プロトン性溶媒を組み合わせて使用することが好ましい。
さらに、電解液の電気化学的安定性から、環状の非プロトン性溶媒には環状カーボネートを、鎖状の非プロトン性溶媒には鎖状カーボネートを適用することが最も好ましい。また、環状カルボン酸エステルと環状カーボネート及び/又は鎖状カーボネートの組み合わせによっても電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。
環状カーボネートと鎖状カーボネートの組み合わせとして、具体的には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネートなどが挙げられる。
環状カーボネートと鎖状カーボネートの混合割合は、質量比で表して、環状カーボネート:鎖状カーボネートが、5:95~80:20、さらに好ましくは10:90~70:30、特に好ましくは15:85~55:45である。このような比率にすることによって、電解液の粘度上昇を抑制し、電解質の解離度を高めることができるため、電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。また、電解質の溶解度をさらに高めることができる。よって、常温又は低温での電気伝導性に優れた電解液とすることができるため、常温から低温での電池の負荷特性を改善することができる。
環状カルボン酸エステルと環状カーボネート及び/又は鎖状カーボネートの組み合わせの例として、具体的には、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとプロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとスルホラン、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとスルホラン、γ-ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとスルホラン、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとスルホラン、γ-ブチロラクトンとスルホランとジメチルカーボネートなどが挙げられる。
(その他の溶媒)
非水溶媒としては、上記以外のその他の溶媒も挙げられる。
その他の溶媒としては、具体的には、ジメチルホルムアミドなどのアミド、メチル-N,N-ジメチルカーバメートなどの鎖状カーバメート、N-メチルピロリドンなどの環状アミド、N,N-ジメチルイミダゾリジノンなどの環状ウレア、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリオクチル、ホウ酸トリメチルシリル等のホウ素化合物、及び下記の一般式で表されるポリエチレングリコール誘導体などを挙げることができる。
HO(CHCHO)
HO[CHCH(CH)O]
CHO(CHCHO)
CHO[CHCH(CH)O]
CHO(CHCHO)CH
CHO[CHCH(CH)O]CH
19PhO(CHCHO)[CH(CH)O]CH
(Phはフェニル基)
CHO[CHCH(CH)O]CO[OCH(CH)CHOCH
上記式中、a~fは、5~250の整数、g~jは2~249の整数、5≦g+h≦250、5≦i+j≦250である。
<電解質>
本開示の非水電解液は、種々の公知の電解質を含んでいてもよい。電解質は、通常、非水電解液用電解質として使用されているものであれば、いずれをも使用することができる。電解質としては、リチウム塩が好ましい。
リチウム塩の具体例としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsFLiSiF、LiOSO(2k+1)(k=1~8の整数)、LiN(SOF)、LiN(SO(2k+1))(k=1~8の整数)、LiPF(C(2k+1))(6-n)(n=1~5の整数、k=1~8の整数)、LiBF(2k+1)(n=1~3の整数、k=1~8の整数)、LiB(C)(リチウムビスオキサリルボレート)、LiBF(C)(リチウムジフルオロオキサリルボレート)、LiPF(C)(リチウムトリフルオロオキサリルフォスフェート);下記一般式で示されるリチウム塩;が挙げられる。
LiC(SO11)(SO12)(SO13)
LiN(SOOR14)(SOOR15)
LiN(SO16)(SOOR17)
式中、R11~R17は、炭素数1~8のパーフルオロアルキル基である。R11~R13は、互いに同一であっても異なっていてもよい。R14とR15は、互いに同一であっても異なっていてもよい。R16とR17は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiN(SO(2k+1))(k=1~8の整数)が好ましい。
本開示の非水電解液のリチウム塩濃度は、0.1mol/L~3mol/Lが好ましく、0.5mol/L~2mol/Lがより好ましい。
リチウム塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本開示の非水電解液は、電池用の非水電解液として好適であるばかりでなく、一次電池用及び二次電池用の非水電解液、電気化学キャパシタ用の非水電解液、電気二重層キャパシタ、アルミ電解コンデンサー用の電解液としても用いることができる。
〔リチウム二次電池〕
本開示のリチウム二次電池は、正極と、負極と、本開示の非水電解液と、を含む。
本開示のリチウム二次電池によれば、本開示の非水電解液を含むことにより、電池抵抗が低減される。
(負極)
負極は、負極活物質及び負極集電体を含んでもよい。
負極における負極活物質としては、金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属もしくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれた少なくとも1種(単独で用いてもよいし、これらの2種以上を含む混合物を用いてもよい)を用いることができる。
リチウム(又はリチウムイオン)との合金化が可能な金属もしくは合金としては、シリコン、シリコン合金、スズ、スズ合金などを挙げることができる。また、チタン酸リチウムでもよい。
これらの中でもリチウムイオンをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料が好ましい。このような炭素材料としては、カーボンブラック、活性炭、黒鉛材料(人造黒鉛、天然黒鉛)、非晶質炭素材料、等が挙げられる。上記炭素材料の形態は、繊維状、球状、ポテト状、フレーク状いずれの形態であってもよい。
上記非晶質炭素材料として具体的には、ハードカーボン、コークス、1500℃以下に焼成したメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチカーボンファイバー(MCF)などが例示される。
上記黒鉛材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。人造黒鉛としては、黒鉛化MCMB、黒鉛化MCFなどが用いられる。また、黒鉛材料としては、ホウ素を含有するものなども用いることができる。また、黒鉛材料としては、金、白金、銀、銅、スズなどの金属で被覆したもの、非晶質炭素で被覆したもの、非晶質炭素と黒鉛を混合したものも使用することができる。
これらの炭素材料は、1種類で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。
上記炭素材料としては、特にX線解析で測定した(002)面の面間隔d(002)が0.340nm以下の炭素材料が好ましい。また、炭素材料としては、真密度が1.70g/cm以上である黒鉛又はそれに近い性質を有する高結晶性炭素材料も好ましい。以上のような炭素材料を使用すると、電池のエネルギー密度をより高くすることができる。
負極における負極集電体の材質には特に制限はなく、公知のものを任意に用いることができる。
負極集電体の具体例としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられる。中でも、加工しやすさの点から特に銅が好ましい。
(正極)
正極は、正極活物質及び正極集電体を含んでもよい。
正極における正極活物質としては、MoS、TiS、MnO、Vなどの遷移金属酸化物又は遷移金属硫化物、LiCoO、LiMnO、LiMn、LiNiO、LiNiCo(1-X)〔0<X<1〕、α-NaFeO型結晶構造を有するLi1+αMe1-α(Meは、Mn、Ni及びCoを含む遷移金属元素、1.0≦(1+α)/(1-α)≦1.6)、LiNiCoMn〔x+y+z=1、0<x<1、0<y<1、0<z<1〕(例えば、LiNi0.33Co0.33Mn0.33、LiNi0.5Co0.2Mn0.3等)、LiFePO、LiMnPOなどのリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアセン、ジメルカプトチアジアゾール、ポリアニリン複合体などの導電性高分子材料等が挙げられる。これらの中でも、特にリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物が好ましい。負極がリチウム金属又はリチウム合金である場合は、正極として炭素材料を用いることもできる。また、正極として、リチウムと遷移金属との複合酸化物と、炭素材料と、の混合物を用いることもできる。
正極活物質は、1種類で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。正極活物質は導電性が不充分である場合には、導電性助剤とともに使用して正極を構成することができる。導電性助剤としては、カーボンブラック、アモルファスウィスカー、グラファイトなどの炭素材料を例示することができる。
正極における正極集電体の材質には特に制限はなく、公知のものを任意に用いることができる。
正極集電体の具体例としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、タンタルなどの金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパーなどの炭素材料;等が挙げられる。
(セパレータ)
本開示のリチウム二次電池は、負極と正極との間にセパレータを含むことが好ましい。
セパレータは、正極と負極とを電気的に絶縁し且つリチウムイオンを透過する膜であって、多孔性膜や高分子電解質が例示される。
多孔性膜としては微多孔性高分子フィルムが好適に使用され、材質としてポリオレフィン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル等が例示される。
特に、多孔性ポリオレフィンが好ましく、具体的には多孔性ポリエチレンフィルム、多孔性ポリプロピレンフィルム、又は多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンフィルムとの多層フィルムを例示することができる。多孔性ポリオレフィンフィルム上には、熱安定性に優れる他の樹脂がコーティングされてもよい。
高分子電解質としては、リチウム塩を溶解した高分子や、電解液で膨潤させた高分子等が挙げられる。
本開示の非水電解液は、高分子を膨潤させて高分子電解質を得る目的で使用してもよい。
(電池の構成)
本開示のリチウム二次電池は、種々公知の形状をとることができ、円筒型、コイン型、角型、ラミネート型、フィルム型その他任意の形状に形成することができる。
なお、電池の基本構造は、形状によらず同じであり、目的に応じて設計変更を施すことができる。
本開示のリチウム二次電池の例として、ラミネート型電池が挙げられる。
図1は、本開示のリチウム二次電池の一例であるラミネート型電池の一例を示す概略斜視図であり、図2は、図1に示すラミネート型電池に収容される積層型電極体の厚さ方向の概略断面図である。
図1に示すラミネート型電池は、内部に非水電解液(図1中では不図示)及び積層型電極体(図1中では不図示)が収納され、且つ、周縁部が封止されることにより内部が密閉されたラミネート外装体1を備える。ラミネート外装体1としては、例えばアルミニウム製のラミネート外装体が用いられる。
ラミネート外装体1に収容される積層型電極体は、図2に示されるように、正極板5と負極板6とがセパレータ7を介して交互に積層されてなる積層体と、この積層体の周囲を囲むセパレータ8と、を備える。正極板5、負極板6、セパレータ7、及びセパレータ8には、本開示の非水電解液が含浸されている。
上記積層型電極体における複数の正極板5は、いずれも正極タブを介して正極端子2と電気的に接続されており(不図示)、この正極端子2の一部が上記ラミネート外装体1の周端部から外側に突出している(図1)。ラミネート外装体1の周端部において正極端子2が突出する部分は、絶縁シール4によってシールされている。
同様に、上記積層型電極体における複数の負極板6は、いずれも負極タブを介して負極端子3と電気的に接続されており(不図示)、この負極端子3の一部が上記ラミネート外装体1の周端部から外側に突出している(図1)。ラミネート外装体1の周端部において負極端子3が突出する部分は、絶縁シール4によってシールされている。
なお、上記一例に係るラミネート型電池では、正極板5の数が5枚、負極板6の数が6枚となっており、正極板5と負極板6とがセパレータ7を介し、両側の最外層がいずれも負極板6となる配置で積層されている。
しかし、ラミネート型電池における、正極板の数、負極板の数、及び配置については、この一例には限定されず、種々の変更がなされてもよいことは言うまでもない。例えば、ラミネート外装体1に収容される積層型電極体は、1枚の正極板5と1枚の負極板6とが1枚のセパレータ7を介して積層された積層型電極体であってもよい。
本開示のリチウム二次電池の別の一例として、コイン型電池も挙げられる。
図3は、本開示のリチウム二次電池の別の一例であるコイン型電池の一例を示す概略斜視図である。
図3に示すコイン型電池では、円盤状負極12、非水電解液を注入したセパレータ15、円盤状正極11、必要に応じて、ステンレス、又はアルミニウムなどのスペーサー板17、18が、この順序に積層された状態で、正極缶13(以下、「電池缶」ともいう)と封口板14(以下、「電池缶蓋」ともいう)との間に収納される。正極缶13と封口板14とはガスケット16を介してかしめ密封する。
この一例では、セパレータ15に注入される非水電解液として、本開示の非水電解液を用いることができる。
なお、本開示のリチウム二次電池は、負極と、正極と、上記本開示の非水電解液と、を含むリチウム二次電池(充放電前のリチウム二次電池)を、充放電させて得られたリチウム二次電池であってもよい。
即ち、本開示のリチウム二次電池は、まず、負極と、正極と、上記本開示の非水電解液と、を含む充放電前のリチウム二次電池を作製し、次いで、この充放電前のリチウム二次電池を1回以上充放電させることによって作製されたリチウム二次電池(充放電されたリチウム二次電池)であってもよい。
本開示のリチウム二次電池の用途は特に限定されず、種々公知の用途に用いることができる。例えば、ノート型パソコン、モバイルパソコン、携帯電話、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、電子手帳、電卓、ラジオ、バックアップ電源用途、モーター、自動車、電気自動車、バイク、電動バイク、自転車、電動自転車、照明器具、ゲーム機、時計、電動工具、カメラ等、小型携帯機器、大型機器を問わず広く利用可能なものである。
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例には限定されない。
〔実施例1〕
<準備工程>
溶媒として、アセトニトリル100gを準備した。
<第一工程>
撹拌装置、温度計、ガス導入ライン、及び排気ラインを備えた300mLのフラスコを乾燥窒素ガスでパージした後、ここに、シュウ酸9.00g(0.1mol)と、ホウ酸6.18g(0.1mol)と、炭酸リチウム3.69g(0.05mol)と、アセトニトリル100gとを入れ、攪拌混合した。攪拌を続けて、25℃の温度で2時間反応を行い、ホウ酸リチウム組成物を含む均質な分散液(スラリー)を得た。
<第二工程>
第一工程で得られたスラリーを濾過して固形分を含むウェットケーキを取り出し、次いでこの濾過器内のウェットケーキにアセトニトリル50gを注いでリンス洗浄処理を行った。リンス洗浄液が濾過器から出終わった後に、ウェットケーキを取り出した。
<第三工程>
次に、撹拌装置、温度計、ガス導入ライン、排気ライン、及び、ディーンシュターク管を備えた100mLのフラスコを準備した。ディーンシュターク管には、生成水の除去用にトルエンを満たした。上記100mLのフラスコを乾燥窒素ガスでパージした後、上述のウェットケーキを入れ、ここにトルエン80gを加えて撹拌し、懸濁状態とした。攪拌を続け懸濁状態を保持しながら加熱をし、85~110℃の温度でトルエンが還流する状態とした。加熱、攪拌、トルエン還流を継続し、留出する水をディーンシュターク管内でトルエンと分液して除去し続けた。還流するトルエンに水の同伴留出が無くなった段階で加熱を止め、処理液が室温(25℃)まで冷えたところで濾過してウェットケーキを別け取り、次いで、得られたウェットケーキをイナートオーブン中、120℃で8時間乾燥させることにより、固体生成物10.82gを得た。収率88.9質量%。
得られた固体生成物を分析し、下記式(I-1)で表されるホウ酸リチウム化合物(以下、文中及び表中では「化合物(I-1)」もしくは「LiMOB」ともいう)の生成物中における質量分率(質量%)を求めた。その結果、LiMOBの質量分率は、88.7質量%であった。その他の成分はメタホウ酸リチウム(以下、文中及び表中では「LiBO」ともいう)であり、その質量分率は11.3質量%であった。結果を表1に示す。
Figure 0007120507000006
(LiMOBの質量分率)
ここで、LiMOBの質量分率は、以下のようにして求めた。得られた固体生成物を重ジメチルスルホキシド溶媒に溶解し、得られた溶液について11B-NMR分析を行い、得られた11B-NMRスペクトルの積分値に基づき、質量基準の百分率法によりLiMOBの質量分率を算出した。
11B-NMRスペクトルの帰属は以下の通りである。
LiMOB:4.0ppm(分子量:121.8、B数:1)
LiBO:19.0ppm(分子量:49.8、B数:1)
分析で得られた11B-NMRスペクトルから、固体生成物中における各化合物について、それぞれ、上記帰属並びに下記式(a)、(b)、(c)及び(d)により、各成分の質量分率(質量%)を求めた。
(LiMOBに由来するピークの積分値/LiMOBのB数)×(LiMOBの分子量)
=(LiMOBの質量部) ‥‥ 式(a)
(LiBOに由来するピークの積分値/LiBOのB数)×(LiBOの分子量)
=(LiBOの質量部) ‥‥ 式(b)
(式(a)の質量部)/{(式(a)の質量部)+(式(b)の質量部)}×100
=LiMOBの質量分率(%) ‥‥ 式(c)
(式(b)の質量部)/{(式(a)の質量部)+(式(b)の質量部)}×100
〔実施例2〕
第一工程の反応温度を60℃に変更して処理を行った以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
〔比較例1〕
第一工程の反応温度を80℃に変更して処理を行った以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
実施例1と比較し、第一工程の反応温度の上昇により、LiBOの生成量の増加、およびLiMOBの収率の低下が認められた。
〔実施例3〕
第一工程の溶媒をアセトニトリル100gからアセトニトリル80g及び水20gに変更し、さらに第一工程の反応温度を60℃として反応を行った以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
〔実施例4〕
第一工程の溶媒をアセトニトリル100gからアセトニトリル50g及び水20gに変更し、さらに第一工程の反応温度を60℃として反応を行った以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
〔実施例5〕
第一工程の溶媒をアセトニトリル100gからアセトニトリル50g及び水10gに変更し、さらに第一工程の反応温度を60℃として反応を行った以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
〔実施例6〕
第一工程の溶媒をアセトニトリル100gからアセトニトリル30g及び水10gに変更し、さらに第一工程の反応温度を60℃として反応を行った以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
〔実施例7〕
第一工程の溶媒をアセトニトリル100gからアセトニトリル50g及び水50gに変更し、さらに第一工程の反応温度を60℃として反応を行った以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
〔実施例8〕
第一工程の溶媒をアセトニトリル100gからアセトニトリル30g及び水60gに変更し、さらに第一工程の反応温度を60℃として反応を行った以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
下記表1に、以上の実施例及び比較例の結果をまとめた。
Figure 0007120507000007
以上の結果から示されるように、第一工程の溶媒のアセトニトリル中の水分量、及び反応温度を制御する製造方法により、メタホウ酸リチウム(LiBO)を規定量含有する組成物が得られ、またホウ酸リチウム化合物(LiMOB;化合物(I-1))が高収率で得られることが判った。
〔実施例101、比較例101〕
以下の手順にて、リチウム二次電池であるコイン型電池(試験用電池)を作製した。
<負極の作製>
天然黒鉛系黒鉛100質量部、カルボキシメチルセルロース1質量部及びSBRラテックス2質量部を水溶媒で混錬してペースト状の負極合剤スラリーを調製した。
次に、この負極合剤スラリーを厚さ18μmの帯状銅箔製の負極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して負極集電体と負極活物質層とからなるシート状の負極を得た。このときの負極活物質層の塗布密度は12mg/cmであり、充填密度は1.5g/mlであった。
<正極の作製>
LiNi0.5Mn0.3Co0.2を90質量部、アセチレンブラック5質量部及びポリフッ化ビニリデン5質量部を、N-メチルピロリドンを溶媒として混錬してペースト状の正極合剤スラリーを調製した。
次に、この正極合剤スラリーを厚さ20μmの帯状アルミ箔の正極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して正極集電体と正極活物質とからなるシート状の正極を得た。このときの正極活物質層の塗布密度は22mg/cmであり、充填密度は2.9g/mlであった。
<非水電解液の調製>
非水溶媒としてエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とメチルエチルカーボネート(EMC)とをそれぞれ30:35:35(質量比)の割合で混合し、混合溶媒を得た。
得られた混合溶媒中に、電解質であるヘキサフルオロリン酸リチウムを、最終的に得られる非水電解液中における電解質濃度が1モル/リットルとなるように溶解させた。
上記で得られた溶液に対して、添加剤として、実施例8で得られたホウ酸リチウム組成物を添加し(添加量0.5質量%)、実施例101の非水電解液を得た。
また、上記で得られた溶液に対して、添加剤として、実施例8で得られたホウ酸リチウム組成物を酢酸エチルで抽出した化合物(LiMOB;化合物(I-1)100質量%)を添加し(添加量0.5質量%)、比較例101の非水電解液を得た。
<コイン型電池の作製>
上述の負極を直径14.5mmで、上述の正極を直径13mmで、それぞれ円盤状に打ち抜いて、コイン状の電極(負極及び正極)を得た。また、厚さ20μmの微多孔性ポリエチレンフィルムを直径16mmの円盤状に打ち抜きセパレータを得た。
得られたコイン状の負極、セパレータ及びコイン状の正極を、この順序でステンレス製の電池缶(2032サイズ)内に積層し、上記非水電解液40μlを注入してセパレータと正極と負極に含漬させた。
さらに、正極上にアルミニウム製の板(厚さ1.2mm、直径16mm)及びバネを乗せ、ポリプロピレン製のガスケットを介して、電池缶蓋をかしめることにより電池を密封し、直径20mm、高さ3.2mmの図3で示す構成を有するコイン型電池(試験用電池)を作製した。
〔電池試験〕
得られたコイン型電池(試験用電池)について、ASKA充放電装置(ASKA CHARGE DISCHARGE SYSTEM ACD-M01A, ASKA ElectronicCo.,Ltd.,Japan)と恒温槽(LU-113,ESPEC CORP.,Japan)とを用いて、各測定を実施した。
電池試験はコンディショニングを含む。
<コンディショニング>
上記コイン型電池を恒温槽内で25℃にて0.2CでCC-CV電圧4.2Vまで充電してから、0.2CでCC放電し、以上の工程を4回繰り返した。
得られたコイン型電池(試験用電池)について、以下の評価を実施した。
<初期抵抗(-20℃)>
コイン型電池を定電圧4.2Vで充放電を3回繰り返した後、定電圧3.9Vまで充電し、次いで、該充電後のコイン型電池を恒温槽内で-20℃に冷却し、-20℃において0.2mA定電流で放電し、放電開始から10秒間における電位低下を測定することにより、コイン型電池の直流抵抗[Ω]を測定し、得られた値を初期抵抗値[Ω](-20℃)とした。
これらの結果から、下記式により、比較例101の初期抵抗値[Ω](-20℃)を100%としたときの実施例101の初期抵抗値(相対値;%)として、「初期抵抗(-20℃)(相対値;%)」を求めた。
結果を表2に示す。
初期抵抗(-20℃)(相対値;%)
=(実施例101での初期抵抗値[Ω](-20℃)/比較例101での初期抵抗値[Ω](-20℃))×100
<保存後の抵抗(-20℃)>
上記初期抵抗値を測定したコイン型電池に対し、定電圧4.25Vで充電し、充電したコイン型電池を60℃の恒温槽内に5日間保存した後、定電圧3.9Vに設定し、前述の直流抵抗と同様にして、コイン型電池の直流抵抗[Ω]を測定し、得られた値を保存後の抵抗値(-20℃)とした。
これらの結果から、下記式により、比較例101の保存後の抵抗値[Ω](-20℃)を100%としたときの実施例101の保存後の抵抗値(相対値;%)として、「保存後の抵抗(-20℃)(相対値;%)」を求めた。
結果を表2に示す。
保存後の抵抗(-20℃)(相対値;%)
=(実施例101での保存後の抵抗値[Ω](-20℃)/(比較例101での保存後の抵抗値[Ω](-20℃))×100
〔実施例102、比較例102〕
非水電解液の調製における添加剤の添加量を、表2に示すように変更したこと以外は実施例101及び比較例101と同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
Figure 0007120507000008
表2に示すように、本開示のホウ酸リチウム組成物を添加剤として用いている実施例101及び102は、LiMOB;化合物(I-1)100質量%を添加剤として用いている比較例101及び102に比べ、-20℃での電池抵抗が低くなる傾向であることがわかり、特に、保存後の-20℃での電池抵抗は、顕著に低くなることがわかった。
1 ラミネート外装体
2 正極端子
3 負極端子
4 絶縁シール
5 正極板
6 負極板
7、8 セパレータ
11 正極
12 負極
13 正極缶
14 封口板
15 セパレータ
16 ガスケット
17、18 スペーサー板

Claims (11)

  1. 下記式(I)で表されるホウ酸リチウム化合物と、メタホウ酸リチウムとを含み、前記式(I)で表されるホウ酸リチウム化合物と前記メタホウ酸リチウムの含有量の合計に対する前記メタホウ酸リチウムの含有量が0.5質量%~20質量%であるホウ酸リチウム組成物。
    Figure 0007120507000009

    〔式(I)中、Rは、単結合、又は炭素数1~4のアルキレン基を表す。〕
  2. 前記Rが、単結合、メチレン基、又はエチレン基である請求項1に記載のホウ酸リチウム組成物。
  3. 前記式(I)で表されるホウ酸リチウム化合物が下記式(I-1)で表される化合物である請求項1又は請求項2に記載のホウ酸リチウム組成物。
    Figure 0007120507000010

  4. 請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のホウ酸リチウム組成物を含むリチウム二次電池用添加剤。
  5. 請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のホウ酸リチウム組成物の製造する方法であって、
    水とニトリル系溶媒とを含み、前記水と前記ニトリル系溶媒の含有量の合計に対する前記水の含有量が0質量%~70質量%である溶媒Aを準備する工程と、
    ジカルボン酸化合物と、リチウム塩化合物と、ホウ酸化合物とを、前記溶媒A中で、20℃以上80℃未満の温度条件で混合させることにより前記ホウ酸リチウム組成物を含む分散液を得る工程と、
    を含むホウ酸リチウム組成物の製造方法。
  6. 更に、前記分散液から固形分を取出す工程、
    を含む請求項5に記載のホウ酸リチウム組成物の製造方法。
  7. 更に、前記固形分を加熱する工程、
    を含む請求項6に記載のホウ酸リチウム組成物の製造方法。
  8. 前記加熱する工程は、前記加熱によって生じた水を除去することを含む請求項7に記載のホウ酸リチウム組成物の製造方法。
  9. 請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のホウ酸リチウム組成物を含むリチウム二次電池用非水電解液。
  10. 正極と、
    金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属もしくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれる少なくとも1種を負極活物質として含む負極と、
    請求項9に記載のリチウム二次電池用非水電解液と、
    を含むリチウム二次電池。
  11. 請求項10に記載のリチウム二次電池を充放電させて得られたリチウム二次電池。
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