JP4727132B2 - 電子顕微鏡のフォーカス合わせ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子顕微鏡のフォーカス合わせ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
透過型電子顕微鏡のレンズ系におけるフォーカス合わせにはいくつかの種類があり、図3のレンズ系の例を用いて概略説明する。
電子銃101から放射される電子は加速管102で加速され、加速された電子線103は第1のコンデンサレンズ104で集束されるとともに、絞り105により通過電子線が制限されて明るさの調整がなされる。さらに第2コンデンサレンズ106、第3コンデンサレンズ107、絞り108により試料109に照射する電子線のサイズ(プローブサイズ)が調節される。
【0003】
試料109は対物レンズ110の前側焦点位置近傍に配置され、対物レンズ110の後焦点面には試料の回折像(回折スポット)111が形成され、試料像結像位置には制限視野絞り112が配置される。制限視野絞り112は、特定領域の回折スポットのみ観察するためのものである。すなわち、制限視野像観察モードにおいて、対物レンズ110による像面を制限視野絞り112の位置に合わせ、次いで、制限視野像を第1中間レンズ113、第2中間レンズ114、投影レンズ115を通してスクリーン116に投影して観察し、第1中間レンズ113のフォーカス合わせを行って回折スポットを最小にし、さらに第1中間レンズ113の物面が制限視野像に合うようにフォーカス合わせを行う。
【0004】
このように、透過型電子顕微鏡のレンズ系におけるフォーカス合わせには以下のような種類がある。
▲1▼像観察を行うときに像のピントを合わせる。
▲2▼試料に微小電子プローブを照射するときにそのプローブサイズを調節する。
▲3▼電子回折図形を観察するときに回折スポットを小さくする。
▲4▼制限視野電子回折図形を観察するときに試料上の視野領域を制限するための絞りにピントを合わせる。
【0005】
これらのフォーカス合わせでは、特定のレンズの強さを変える(焦点距離を変える)ことによって実現される。図3の例で言えば、
▲1▼は対物レンズ110の結像位置を第1中間レンズ113の物面に合わせることにより実現される。
▲2▼は第2コンデンサレンズ106、第3コンデンサレンズ107のレンズの強さを変えることより実現される。
▲3▼は回折図形結像条件における第1中間レンズ113のフォーカス合わせで実現される。
▲4▼は制限視野像観察条件における第1中間レンズ113のフォーカス合わせで実現される。
【0006】
なお、対物レンズの焦点合わせにより発生する焦点距離の変化に伴うカメラ長の変化を補正するために、焦点合わせに伴う対物レンズの基準焦点距離に対する変化量を検出し、検出した変化量に基づいてカメラ長または倍率の基準値に対するズレ量を求め、このズレ量をなくすように対物レンズを除く結像系の励磁電流を制御するものが提案されている(特許文献1)。
【0007】
また、対物レンズによる回折像を制限視野絞りの位置に結像するミニレンズを設けるとともに、像観察モード時には対物レンズの像面を物面とし、回折像観察モード時には制限視野絞りの位置を物面とするように励磁される第1中間レンズを設けて、像観察モードと回折像観察モードとを切り換えられるようにしたものが提案されている(特許文献2)。
【0008】
【特許文献1】
特開昭61−110953号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平5−135727号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、いくつかあるフォーカス合わせにおいてレンズ割り当ては固定であるが、電子顕微鏡の拡大倍率は2つ以上のレンズの強さの組み合わせ条件によって変えられる。そのレンズの光学条件に依存して、特に上記▲3▼、▲4▼の場合、フォーカス合わせのためにレンズの強さを変えると、同時に回折のカメラ長(図3の例では回折像111からスクリーン116までの距離)や像拡大倍率が大きく変わってしまう場合がある。したがって、回折モードのカメラ長や制限視野像観察モードの倍率は、その精度は期待できないものとして扱っているのが現状である。最悪の場合には、フォーカス合わせは不可能で、倍率ばかり変わってしまう条件もあるので、それを回避して実現可能なレンズ条件が制限させられている。
【0011】
この点特許文献1では対物レンズの焦点合わせについて開示しているだけで、他のレンズのフォーカス合わせについての開示はない。また、特許文献2では像観察モードと回折像観察モードとを切り換えられるようにしているが、各レンズのフォーカス合わせについての開示はない。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決しようとするもので、拡大倍率或いはカメラ長ごとにレンズ系の各レンズ強度を設定する条件テーブルに、フォーカス可変レンズ情報も含めることにより、所望倍率におけるフォーカス合わせを支障なく行えるようにして電子顕微鏡の操作性を向上させることを目的とする。
そのために本発明は、倍率或いはカメラ長ごとに、予め求めた各レンズの強度及びフォーカス合わせすべきレンズを規定した条件テーブルと、指定された倍率或いはカメラ長に対応する各レンズの強度を前記条件テーブルから読み出して設定するとともに、前記条件テーブルからフォーカス合わせすべきレンズを自動的に指定する制御手段とを備え、前記指定後のフォーカス合わせにおいては、前記指定されたレンズの強度がフォーカス調整手段によるフォーカス調整に伴って変わるように構成されていることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本実施形態のフォーカス合わせ装置を説明する概念図である。
制御装置10はコンピュータ等からなる制御手段であり、レンズデータテーブル20からデータを読み出し、電子顕微鏡本体30のレンズ系31に対し、それぞれ設定されたレンズ強度、さらにはフォーカス合わせしたレンズ強度の駆動信号を出力する。レンズデータテーブル20は、コンピュータ等に内蔵のROM、ハードディスク、或いは外付けの記憶手段等に格納されており、理論的、或いは経験的に予め求められた拡大像モードやそのいくつかの条件、回折モードやそのいくつかの条件、例えば、倍率或いはカメラ長ごとの各レンズ強度の基本データセットが格納されている。このテーブルには、さらに各倍率、各カメラ長ごとのメモリ項目にフォーカス可変レンズ指定インデックスが加えられている。フォーカス可変としては、図3に関連して説明した▲1▼像のピントを合わせ、▲2▼プローブサイズの調節、▲3▼回折フォーカス、▲4▼制限視野絞りフォーカス等が含められる。
【0014】
制御装置10は、オペレータにより電子顕微鏡の使用モード(倍率或いはカメラ長)が指定されると、レンズデータテーブル20から対応するレンズデータセット11を読み出し、各レンズの強度データ「レンズ#1」、「レンズ#2」……をレジスタ14にセットする。次いで、レジスタ14のデータをDA変換機15でアナログ信号に変換して電子顕微鏡本体30のレンズ系31に出力し、電子顕微鏡は像観察が可能な状態となる。
【0015】
一方、読み出したレンズデータセット11には、フォーカス・インデックス(フォーカス合わせすべきレンズ名)が規定されており、このインデックスに基づいてスイッチ13により自動的にフォーカス合わせすべきレンズが指定される。フォーカス合わせすべきレンズについても基本データの強度が設定されており、オペレータはどのレンズの強度を調整すべきかを意識せずに、フォーカス調整手段12により、設定されている強度データを調整してフォーカス合わせすることができる。すなわち、オペレータがフォーカス調整手段12を操作すると、フォーカス・インデックスで指定されたレンズについてレジスタ14の値、DA変換機15の値が調整されてフォーカス合わせが行われる。フォーカス合わせを行ったときの当該レンズの強度調整量または、調整後の当該レンズの強度を別途、記憶手段に格納しておき、同じ使用モードが指定されたときに、これを読み出してフォーカス合わせレンズの強度に使用すればフォーカス合わせを迅速に行うことが可能である。
【0016】
図2はフォーカス合わせの動作フローを説明する図である。
まず、電子顕微鏡の使用モード(倍率又はカメラ長)を設定すると(ステップS1)、倍率(カメラ長)に対応するテーブルから各レンズの設定条件を読み出し(ステップS2)、レジスタに各レンズの強さをセットする(ステップS3)。次いで、各レンズのDA変換機にレジスタ値を出力し(ステップS4)、DA変換機からは電子顕微鏡の各レンズに対して設定されたレンズ強度の信号が出力され、電子顕微鏡は選択された条件を実現する。次いで、倍率(カメラ長)に対応するテーブルからフォーカス可変インデックスを読み出し(ステップS5)、フォーカス可変インデックスに規定されるレンズにより像ピント合わせ、プローブサイズ調整、回折フォーカス、或いは制限視野フォーカス等の強さを調整してフォーカス合わせを行い(ステップS6)、このときフォーカス合わせしたレンズに対応するレジスタに調整した強さデータがセットされ(ステップS7)、このレジスタの値がDA変換機に出力される(ステップS8)。
【0017】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、フォーカス可変レンズが変わるとその可変感度を変えることの必要性が生じる場合がある。そこで、各倍率/カメラ長ごとの条件テーブルにフォーカス可変感度情報も含めるようにしてもよい。また、フォーカス可変には、上記▲1▼〜▲4▼の4つに限定されるものではなく、特に電子エネルギー分光装置を装着した場合、その分解能を調整するという操作も必要となり、このような分解能の調整も条件テーブルのフォーカス・インデックスに含めるようにしてもよい。
【0018】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、倍率やカメラ長に依存してフォーカス可変に最適なレンズ指定が可能となり、倍率やカメラ長の精度を悪化させることなくフォーカス合わせを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の電子顕微鏡のフォーカス合わせ装置を説明する図である。
【図2】 フォーカス合わせの動作フローを説明する図である。
【図3】 透過型電子顕微鏡のフォーカス合わせを説明する概略図である。
【符号の説明】
10…制御装置、11…レンズデータセット、12…フォーカス調整手段、13…スイッチ、14…レジスタ、15…DA変換機、20…レンズデータテーブル、30…電子顕微鏡本体、31…レンズ系。
Claims (2)
- 倍率或いはカメラ長ごとに、予め求めた各レンズの強度及びフォーカス合わせすべきレンズを規定した条件テーブルと、
指定された倍率或いはカメラ長に対応する各レンズの強度を前記条件テーブルから読み出して設定するとともに、前記条件テーブルからフォーカス合わせすべきレンズを自動的に指定する制御手段と、
を備え、前記指定後のフォーカス合わせにおいては、前記指定されたレンズの強度がフォーカス調整手段によるフォーカス調整に伴って変わるように構成されていることを特徴とする電子顕微鏡のフォーカス合わせ装置。 - 前記条件テーブルには、フォーカス合わせすべきレンズの感度情報も含められていることを特徴とする請求項1記載の電子顕微鏡のフォーカス合わせ装置。
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2003
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