JP4724546B2 - スクラップの予熱処理装置及び予熱処理方法 - Google Patents

スクラップの予熱処理装置及び予熱処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、主にプレス成形された鉄系スクラップを大量かつ効率的に製鋼原料として利用するための予熱処理に関するものである。詳しくは、転炉精錬において、予熱処理されたスクラップを大量に使用することができるスクラップの予熱処理に関するものである。
鉄系スクラップを予熱して製鋼原料として利用する例として、例えば、特許文献1には、予熱炉を、スクラップを転炉などに装入するためのスクラップシュートと同じ長さで、かつ同じ断面積を有する縦長の炉として構成し、予熱後のスクラップを予熱炉に近接配置されたスクラップシュートに排出できるようにすることが記載され、特許文献2には、廃車屑、廃車プレス屑、廃家電屑などの溶解原料を溶解炉に直結された予熱室で予熱して溶解原料中のガス化成分をガス化してから溶解炉に投入することにより、廃車などをシュレッダー処理を施すことなく安価に溶解原料として利用できることが記載されている。
また、非特許文献1の337頁などには、窯業用炉として各種の炉、キルンについての記載があり、本発明に関連するトンネル炉やシャットル炉などの台車に被加熱物を積載する形式の炉についても多数記載がある。
ところで、省エネルギー効果やCO排出量削減効果を十分享受するためには、転炉操業における溶銑比率を5〜10%と大幅に低減させることが必要であり、そのためには、一個あたりの重量が数100kgになる主にプレス成形された鉄系スクラップを一時間あたり500〜1000個予熱する必要がある。
これに対し、特許文献1や特許文献2に記載されている技術では、一度に予熱処理できるスクラップの量が少量であるため転炉操業における溶銑比率を大幅に低下させることができないため、省エネルギー効果やCO排出量削減効果は小さいという問題がある。
また、非特許文献1の第337頁などに記載されている各種台車式トンネル炉は、炭素部材やセラミックスや電子部品の焼成に利用されているものであり、処理時間が数時間〜数日と長いことや、被加熱材の寸法が小さく積載能力が少ないなど、積載作業における時間制約や荷重制約が問題にならないものであった。
特許文献3には台車の代わりに台板を用いているが、回送線のあるトンネル炉が開示されているが、処理時間の長いセラミックス用であり、鋼を加熱するものではない。
特許文献4には大単重のスラブを加熱するトンネル炉に類似したプッシャー炉が開示されているが、スクラップを加熱できるような台車も台板も用いる構造にはなっていない。
このように、重量のあるスクラップを連続して大量に予熱する技術は従来知られていなかった。
特開昭59−225289号公報 特開2002−285225号公報 特開平8−136146号公報 特開昭61−221323号公報 日本工業炉協会編「工業炉ハンドブック」(東京テクノセンター、1978年7月20日発行)第337頁
一個あたりの重量が数100kgになるスクラップを一時間あたり500〜1000個予熱するためには、経済的な理由により、予熱設備はできる範囲でコンパクトである必要があり、高い伝熱効率とすることにより、少ない燃料でより速く加熱するという必要がある。これらの必要条件を満たすためには、プレス成形されたスクラップを重ねることなく、相互に近接して整然と並べて、連続的に加熱することが有利であり、それには、台車式トンネル炉が適していると考えられる。
しかしながら、台車式トンネル炉の台車上にスクラップを近接して整然に積載し、高い伝熱効率で連続的に予熱するための技術は、従来知られていない。
そこで、本発明は、台車式トンネル炉の台車に大量の主にプレス成形されたスクラップを整然と密に積載することにより、予熱装置のコンパクト化と高い伝熱効率を両立する技術を提供することを課題としてなされたものである。
上記課題を解決するために、本発明は以下のことを特徴とする。
第1のスクラップの予熱処理装置の発明は、プレス成形された鉄系スクラップ、または、プレス成形された鉄系スクラップと重量屑からなるスクラップの予熱処理装置であって、台車式トンネル炉と、該トンネル炉内に搬入される台車と、トンネル炉から搬出された台車をトンネル炉に回送する回送線と、該回送線上に沿って設けられたスクラップの積載ゾーンとを有し、前記スクラップを待機位置から台車の移送方向に対して直角方向に、押し出し距離を段階的に調節して押し出して台車上に積載するための積載用プッシャーを、前記積載ゾーンに台車の移送方向に沿って複数設けたことを特徴とする。
第2のスクラップの予熱処理装置の発明は、前記第1の発明において、前記積載ゾーンには、前記スクラップを前記積載用プッシャーごとに決められた待機位置に搬送するコンベアが設けられていることを特徴とする。
第3のスクラップの予熱処理装置の発明は、前記第1または第2の発明において、前記積載用プッシャーを加熱炉内の搬送方向と逆行する回送線の位置に設け、回送線から本線に台車を移動する経路が横行経路となっており、積荷の積載方向と水平直角をなす方向に動作して積荷を整頓させるための整頓用プッシャーが、前記横行経路内に設けられていることを特徴とする。
第4のスクラップの予熱処理装置の発明は、前記第1ないし第3の発明において、台車のスクラップ積載面に、前記スクラップの幅の半分よりも狭い間隔で、積載用プッシャー押し出し方向に沿ってスキッドレールを敷設したことを特徴とする。
第5のスクラップの予熱処理装置の発明は、前記第1ないし第4の発明において、トンネル炉に連続して、スクラップの排出部とスクラップシュートへの待機部を設け、前記排出部に予熱処理が完了したスクラップを前記待機部に排出するための排出用プッシャーが設けられ、前記排出部および前記待機部がトンネル炉と連結された断熱部材で覆われていることを特徴する。
第6のスクラップの予熱処理装置の発明は、前記第5の発明において、排ガスを炉外に排気する煙道が、前記排出部の天井または側壁または炉床部に設置されたことを特徴とする。
第7のスクラップの予熱処理方法の発明は、台車式トンネル炉を用いてプレス成形された鉄系スクラップ、または、プレス成形された鉄系スクラップ及び重量屑からなるスクラップを予熱処理する予熱処理方法であって、台車式トンネル炉の回送線のスクラップ積載ゾーンに、複数台の積載用プッシャーを台車の移送方向に沿って設け、該積載用プッシャーの押し出し方向を台車の移送方向に対して直角方向とし、該積載用プッシャーの押し出し距離を段階的に調節して、押し出し方向の奥側より手前側に向け、複数回に分けて順次前記スクラップを台車に積載し、台車に積載した前記スクラップを台車式トンネル炉内で予熱処理することを特徴とする。
第8のスクラップの予熱処理方法の発明は、前記第7の発明において、前記スクラップが、矩形にプレス成形された鉄系スクラップと重量屑である場合は、それぞれを分類して台車に積載することを特徴とする。
第9のスクラップの予熱処理方法の発明は、前記第7または第8の発明において、前記積載用プッシャーとは別に設けた整頓用プッシャーで台車に搭載された前記スクラップを積載方向と水平直角をなす方向に押圧して、前記スクラップを整頓することを特徴とする。
第10のスクラップの予熱処理方法の発明は、前記第7ないし第9の発明において、台車に積載する前記スクラップの高さが、100mm以上1000mm以下であることを特徴とする。
第11のスクラップの予熱処理方法の発明は、前記第7ないし第10の発明において、前記スクラップを、還元雰囲気中で、炉内温度600℃〜1200℃の温度範囲で予熱処理することを特徴とする。
第12のスクラップの予熱処理方法の発明は、前記第7ないし第11の発明において、前記各プッシャーとは別に設けた排出用プッシャーで台車から予熱後のスクラップを排出することを特徴とする。
第13のスクラップの予熱処理方法の発明は、前記第7ないし第12の発明において、台車式トンネル炉の煙道から炉外に排気されたガスを900℃以上で2秒以上滞留させた後に急冷することを特徴とする。
本願発明により、台車上にスクラップを相互に近接して密にかつ重ねることなく整然と並べて積載することが可能となる。このように積むことにより、伝熱効率を大幅に向上できるので大量のスクラップを効率的に予熱することが可能となる。
その結果、一個あたりの重量が数100kgになる主にプレス成形されたスクラップを、一時間あたり500〜1000個予熱することができ、300トン規模の転炉における溶銑比率を5〜10%程度低減することができる。
以下、添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の装置の概略を示す平面図である。
1は、台車式トンネル炉であり、2は、主に矩形にプレス成形された鉄系スクラップ13が載置される台車である。3は、軌条を用いた台車の回送線で、トンネル炉本体と並行して搬送方向がトンネル炉本体と逆行する回送線3−1と、それと炉本体の搬出側を結ぶ横行経路3−2と同じく搬入側を結ぶ横行経路3−3とで構成されている。
炉内に搬入された台車2は、トンネル炉内に設けられた本線上を後述の台車前進用プッシャーに押されて順次移動し、台車上のスクラップを加熱する。トンネル炉から搬出された台車2は、台車牽引装置などにより横行経路3−2に移送され、通常の横行装置によって、本線上における台車の向きを保ったまま横行経路3−2を移動し回送線3−1に移送される。回送線3−1に移送された台車2は、台車移送用プッシャーによる押し出し移送(この場合には回送線上に台車が並ぶ)や台車下の床部に設置された索引装置などの移送装置によって移動する。そして、回送線3−1上でスクラップ13を積載され、同様にして横行経路3−3を経て、トンネル炉の本線上に再び移動される。
4は、トンネル炉本体入口側の搬入ゾーンであり、搬入前の台車2を一時待機させる待機スペース5と、台車2を、一台分の距離ずつ前進させる前進用プッシャー6が設けられている。
7は、トンネル炉の出側に設けられた排出ゾーンであり、台車上のスクラップをスクラップシュート9に排出するための排出用プッシャー8及び、排出されたスクラップを積載するスクラップシュート9が設けられており、また、炉から搬出された台車2を横行経路3−2に移動する前に一時待機させる待機スペース10が設けられている。
11は、台車にスクラップを積載するために、回送線3−1に沿って設けられた積載ゾーンであり、スクラップ搬入用コンベア12と、このコンベア上の待機位置にあるスクラップ13を台車上に積載するための積載用プッシャー14が複数台、台車の移送方向に沿って設けられている。積載ゾーン11では、図2、3を用いて後述するように、複数台のプッシャーを用いて、台車上にスクラップを段階的に積載することにより、スクラップを台車上に安定して近接して積むことができる。このため、予熱中の荷崩れや排出時のトラブルを回避して、スクラップを大量に予熱することができる。
15は、横行経路3−3内に設けられた整頓用プッシャーであり、台車上のスクラップを、積載用プッシャー14による積載方向と水平直角をなす方向から、プッシャーに対向して配置された押し付け用壁16に向けて押圧し、台車上のスクラップをさらに近接して整然と並べることができる。
なお、トンネル炉1には、通常の燃焼バーナ式のものが使用できる。炉内温度の設定は、600℃〜1300℃とするが、スクラップの予熱所要時間をできるだけ短くして設備規模を小さくするためには1100℃〜1300℃とすることが望ましい。また、スクラップの酸化を抑制するために雰囲気を還元雰囲気にするのが好ましい。その際、前半部などのスクラップ温度が比較的低い領域ではスクラップの酸化はほとんど進まないので酸化雰囲気にすることもできる。また、還元雰囲気にした操業をする場合は炉内圧を負圧にすれば、未燃ガスの炉外吹き出しを防止することができる。
本発明は、以上のように、台車式トンネル炉を用い、スクラップを搭載する台車を順次循環移動させるとともに、台車上にスクラップを相互に近接して整然と並べることにより、従来にはないスクラップの大量処理ができるようにしたものであるが、図2〜6を用いて本発明をさらに詳述する。
図2は、積載ゾーン11の詳細を示す図であり、図3は、その一部断面図である。
図2では、積載用プッシャー14が3台設置されている例を示している。各積載用プッシャー14−1〜14−3は、例えばラック&ピニオン機構などの駆動機構17によって駆動され、かつ、押し出し距離を段階的に調節できるように構成されている。プレス成形されたスクラップ13はコンベア12によって積載用プッシャー14の前の待機位置に搬送される。スクラップ13は、前記積載用プッシャーごとに分けて決められた待機位置に、コンベア12によってあらかじめ搬送されている。
積載用プッシャー14の前には台車2が待機している。図2の例ではプッシャー14−1の前に空の台車2−1が待機しており、プッシャー14−1の前の待機位置にあらかじめ搬送されたプレス成形された矩形のスクラップ13は、プッシャー14−1によって押し出されて台車2−1に積載される。このとき、台車の一番奥(図では手前)までプレス成形されたスクラップが押しこまれる。
続いて、台車2は台車2−2の位置に移動し、同様に、プッシャー14−2の前の待機位置にあらかじめ搬送されたプレス成形されたスクラップ13が台車2−2に積載される。このとき、プッシャー14−2はすでに積載されているプレス成形されたスクラップを考慮した押し込み量となる。さらに、台車2は台車2−3の位置に移動し、プッシャー14−3にて三度目の積載が行われ、台車へのスクラップの積載が完了する。
以上の操作によって、台車上にスクラップを安定積載して予熱中の荷崩れや排出時のトラブルを回避することができる。
図2に示された例では、1台の積載用プッシャーでプレス成形されたスクラップを一度に2列分積載し、積載用プッシャー3台で3回に分けて台車に積載しているが、これらの数は3台および3回に限られるものではなく、それぞれ複数であればよい。しかし、一度に積載するプレス成形されたスクラップの列は、押し込み中のスクラップ並びの乱れを抑制するために、せいぜい2列程度とすることが望ましい。
また、積載用プッシャー14−1〜14−3でプレス成形されたスクラップを押し込む際に、図3に示されるように台車2の奥側に押し付け用の壁18を設けてスクラップを整えることができる。このようにしてスクラップは積み込み方向に近接して密に、かつ、重ならないように積載することができる。
なお、プレス成形されたスクラップ13の搬送手段はコンベアに限られるものではなく、積載用プッシャー前の待機位置に位置決め搬送できる手段であればよい。また、スクラップの搬送経路は一方向に限られるものではなく、処理量の多少によって、図2の矢印に示されているように、台車の進行方向に対し両方向から待機位置に搬送してもよい。
図4は、本発明で用いるのに好適な台車の説明図である。
台車2の表面は耐火物で構成されており、スクラップをそのまま積載することも可能である。しかし、積載用プッシャーによる押し込み中に荷の並びが乱れるのを防止するため、台車とプレス成形されたスクラップとの間の摩擦を小さくできるスキッドレール19を、図4に示されるように台車表面に取り付けることが望ましい。その場合、スキッドレール19は、矩形にプレスされたスクラップの幅の半分よりも短い間隔で設けることが望ましい。矩形にプレスされた鉄系スクラップの幅が奥行より短く、スキッドレール間隔の倍より短い場合はスクラップの向きを90°回して積載する。それによりスクラップ13は少なくとも2本のスキッドレール上に載ることになり、スクラップを安定して移送することができる。スキッドレールはスクラップと台車表面の耐火物とが擦れない程度の高さがあればよく、10mm〜30mm程度が望ましい。これよりも低いとスクラップと耐火物が引っかかり押し込み中にスクラップの並びが乱れたりする可能性がある。
台車2の進行方向前方側及び後方側の端部には、スクラップの落下防止用のガイド20、21が設けられており、積載用プッシャーによりスクラップを台車上に押し込む際、スクラップをガイドするとともにスクラップの落下を防止する。前方側のガイド21は、整頓用プッシャー15と干渉しないような高さとされている。
また、台車の進行方向に平行な側面に、図4に示されるようなつば部22を形成するとともに、トンネル炉の炉壁につば部に対応する溝部を設ければ、連続する台車の各つば部が炉壁のみぞ部に嵌入して、台車上部の炉空間を下部からシールすることができ、炉の雰囲気形成を有利に実施できる。
図5は、排出ゾーン7の詳細を示す図であり、図6は、その一部断面図である。
排出ゾーン7には、トンネル炉の燃焼帯に隣接するスクラップ排出部23と、スクラップ排出部に連続してスクラップシュート待機部24が設けられている。
スクラップ排出部23は、トンネル炉の燃焼帯25に続いて設けられ、該燃焼帯25とは仕切り壁26を介して仕切られており、台車2台分のスペースが設けられている。また、台車上のスクラップをスクラップシュート9に排出するための排出用プッシャー8が2台設けられている。図5では2台分のスペースであるが、台車の大きさなどの条件が異なる場合は、2台分に限らなくても良い。
スクラップシュート待機部24は、スクラップ排出部23に連続してトンネル炉側方に設けられており、台車の下段位置にスクラップシュート9が待機できるようになっている。また、台車2とスクラップシュート9の間には、排出用プッシャー8にて台車上から排出されたスクラップをスクラップシュート9に案内する傾斜ガイド板27が設けられている。
スクラップシュート待機部24下面には、スクラップシュート9の移動場所から伸びている軌条28が敷設されており、スクラップシュート9はその軌条上を移動できるように構成されているが、スクラップシュート9の移動は、軌条を用いるものに限定されるものではない。
スクラップ排出部23及びスクラップシュート待機部24は、排出ゾーン7でのスクラップの温度低下を防止するため、トンネル炉と連結された断熱部材で覆われている。
さらに、排出ゾーン7には、燃焼排ガスを排出する煙道29が設けられている。その際、排ガス温度が900℃以上ある場合は、2秒以上の滞留時間が得られるように煙道の一部または全部を断熱して排ガス中のダイオキシン類を熱分解できるようにする。排ガス温度が900℃に満たない場合は、煙道の後段に燃焼塔を設けて900℃以上になるようにする。また、燃焼排ガス中に未燃成分が残存している場合には、燃焼空気を供給して燃焼させることによって900℃以上の排ガス温度を得るようにしてもよい。900℃以上で2秒以上滞留したガスは、ダイオキシン類の再合成を防止するために後段の冷却塔で300℃以下に急速に冷却される。冷却された排ガスは必要に応じてバグフィルターや吸着塔を経てダスト回収された後に、煙突より大気に放散される。
また、図5で、燃焼排ガスの煙道を排出部の天井に設けた例を示したが、側壁または炉床部に設置してもよい。さらに、煙道を設ける位置は排出ゾーン7に限られるものではなく、例えば、トンネル炉の入口側に設けてもよく、その場合、トンネル炉の入口側に燃焼装置を配備しない熱交換帯を設けてもよい。トンネル炉入口側は常温のスクラップが装入されるため排ガス温度が低下しやすい。このため、煙道をトンネル炉の入口側に設ける場合は燃焼塔を設置することが必要となる。
次に、上記のような予熱処理装置を用いたスクラップの予熱処理方法を説明する。
使用済み自動車屑、廃家電屑、市中老廃屑、加工屑、製鉄所内発生屑(たとえばトリム屑など)などの鉄系のスクラップをプレス機によって矩形形状にプレス成形し、プレス成形された矩形のスクラップを、台車に積載してトンネル炉で600℃以上1200℃以下、より望ましくは760℃以上1100℃以下に予熱する。760℃未満では転炉精錬における溶銑比率の低減効果が小さくなり、1100℃超ではスクラップの酸化が顕著になり予熱による溶銑比率低減効果が得られなくなる。
鉄系矩形スクラップのプレスサイズには特に制限はないが、台車に積載したときの厚みを考慮すれば、厚みは100mm以上1000mm以下が望ましく、さらに望ましくは、200mm以上600mm以下である。プレス成形の厚みが薄いと、多量の矩形にプレス成形された鉄系スクラップを成形、ハンドリングする必要があり、厚いと厚み比例以上の予熱時間を要してスクラップの酸化割合が増大して溶銑比率低減を妨げるとともに予熱装置が大規模になる。プレス形状は一般に直方体または立方体である。
本発明は、主に前記のような矩形にプレス成形された鉄系スクラップを予熱処理するが、このようなスクラップに限られるものではなく、プレス成形されたスクラップにクロップなどの重量屑を混ぜて予熱することもできる。重量屑を混ぜる場合、重量屑の量は転炉などの1チャージ分のスクラップ装入量の20%以下(質量比で)に制限される。台車へ積載の安定性を考慮すれば10%以下が望ましい。
また、重量屑を含んだスクラップを転炉に装入する際、炉内耐火物の損傷を抑制するためには、先に投入されたプレス成形されたスクラップの上に重量屑が投入されるようにすることが望ましく、そのためには、重量屑をスクラップシュート9の後部側で、上層部に位置するように排出することが望ましい。これを実現するために、プレス成形されたスクラップと重量屑とを混在させて処理する場合は、プレス成形されたスクラップと重量屑とを図7のように台車上に配置することが好適である。
このようなスクラップは、図2に示されるように、台車に積載される。
スラブ加熱のような従来からあるトンネル炉では、炉内でガスを燃焼させて加熱する。本発明で同様な加熱形態である場合、燃焼炎からの被加熱体であるスクラップへの伝熱は輻射である。スクラップを疎に積載すると台車上面を直接加熱することになり、ここに照射された熱は台車下面へ抜熱されて無駄となる。したがって、できるだけ台車上面が照射されないようにできるだけに密にかつ重ならないように積載することが望ましい。
スクラップを積載した台車は、回送線3−1から横行経路3−3に順次移送され、通常の横行装置によって本線に移送される。この横行経路の途中に、矩形にプレス成形された鉄系スクラップの積載押し込み方向とは水平直角の方向に動作する整頓用プッシャー15を設けて図8のようにスクラップの積載状態をさらに整頓することができる。この場合も、プッシャーの反対側に押し付け用壁16を設けることができる。これにより、スクラップは台車上により密に安定して並べられる。
本線に移送された台車2は台車前進用プッシャー6によって一台分前進し、トンネル炉1の炉内に搬入される。次に本線に移送された台車は本線上の待機スペース5で待機する。予熱が完了すると、台車前進用プッシャー6を前進させトンネル炉内の先頭側の台車を排出部22に押し出す。
排出ゾーン7では、台車の下段にスクラップシュート9が待機しており、排出プッシャー8にて台車上のスクラップをスクラップシュート9に落下排出する。
スクラップシュート9にさらにスクラップ13を排出する場合は、横行経路3−3からさらに本線に台車2を移動し、台車前進用プッシャー6で必要な台車数分だけ前進し、上記と同様にスクラップシュート9に排出する。
所定量のスクラップが装入されたスクラップシュート9は、例えば転炉横のクレーン吊り場まで移動され、その後、クレーンで転炉炉上まで吊り上げられ、スクラップシュートを傾動させてスクラップを転炉に装入する。転炉には溶銑も注がれ、精錬処理が行われる。スクラップを装入するのは主に転炉であるが、溶銑予備処理炉等に装入されても良い。
スクラップの排出を完了した台車は後続の台車が前進する際に炉外に搬出される。炉外に搬出された台車は、台車牽引装置などにより横行経路3−2に移送される。そして、横行装置によって横行経路3−2から回送線3−1に戻り、再びスクラップが積載される。以後、以上の操作が繰り返される。
図では横行経路を一度に搬送できる台車の数を一台としているが、二台以上としてもよい。二台の場合は整頓用プッシャーを2機設けることもできる。三台以上の場合は整頓用プッシャーを設けることは困難であるが、本発明における必須用件ではないため、積載ゾーン11で一度に積載するスクラップ列を一列または二列として積載時の荷の乱れを抑制することで同様の効果を得ることができる。
また図ではトンネル炉前に一台分の台車スペースを設けて一度に二台の台車を前進させているが、これに限られるものではない。
以上の実施の形態では、台車2の回送線3を、搬送方向がトンネル炉本体と逆行する回送線3−1と、それと炉本体の搬出側を結ぶ横行経路3−2と同じく搬入側を結ぶ横行経路3−3とで構成して、台車は、本線上における台車の向きを保ったまま横行経路3−1、3−2を移動する例で説明したが、本発明は、回送線3−1の両端部及びトンネル炉本体の入側及び出側で台車を90度旋回させることにより、回送線3−1とトンネル炉本体を結ぶ経路を横行経路としない場合にも適用できることはもちろんである。
以下、本発明の実施例について説明する。
[本発明例]
(1)使用するスクラップ
使用済み自動車屑、所内発生屑、市中老廃屑を、600×600×320mmのサイズにプレスした。プレスされたスクラップの重量はほぼ230kgであった。
(2)台車へのスクラップの積載
台車は、サイズが4m×7mで、積載面側に200mm間隔で高さ20mmのスキッドレールが設置されているものを用いた。
この台車上に、奥行6個×幅10個(合計60個)となるように、積載用プッシャー3台で奥行方向に2列(奥行2個×幅10個)ずつ、320mmの辺が高さ方向になるように積載した。スクラップは、回転してせり上がることなどなく積載したので、積載した高さはほぼ320mmとなった。
スクラップは、積載時に積載用プッシャーにより、また、搬入側横行経路部で整頓用プッシャーにより、それぞれ押し付け用壁に押し付けられることに両方向とも密に整頓された。
(3)トンネル炉
トンネル炉は、炉内台車数16台分の有効炉長に加えて排出ゾーン台車2台分、搬入側台車1台分の本線長さを有し、排出ゾーンのシュート長は15mで、一度に2台分のスクラップを排出できるものとした。
排ガス煙道は排出ゾーン上に設け、その後燃焼塔(燃料と燃焼空気を供給して排ガス温度900℃維持)、冷却塔(水スプレーにて250℃まで急冷)を経て、バグフィルターにてダスト回収し、誘引ファンで昇圧して煙突から大気放散するようにした。
(4)転炉への装入
340T/ch転炉を2基用い、この2基の転炉で1時間あたり3チャージ実施した。1チャージに投入するスクラップ個数は、溶銑比率を86%から81%に低下させるのに必要なスクラップ個数が720個程度であることから、台車4台分の240個(55.2トン)とした。
(5)結果
以上の条件で、トンネル炉を1100℃、炉内O濃度1%に燃焼制御し、スクラップを80分予熱した結果、スクラップは1個の矩形全体で平均温度760℃まで予熱された。この予熱された台車4台分のスクラップ240個を、一度にスクラップシュートを経て転炉に装入した。
予熱完了から転炉装入までの間にスクラップの温度は多少低下したが、計画通り1時間に720個のスクラップを投入でき、溶銑比率を5%低下させることができた。
これに対し、上記実施例において、台車へのスクラップの積載を本発明のように多段階としなかった場合(比較例)、及び上記従来技術の場合は以下の結果となった。
[多段階積載なしの場合(比較例)]
積載用プッシャー1機で、一度に6列(奥行6個×幅10個)押したところ、スクラップの移動が不安定になり、図9に示すように回転したり重なったりし、スクラップ間に隙間が生じた。そのため、6列分積載することができず、4列分しか積載できず、積載された高さもスクラップが重なった部分や回転してせり上がった部分で600mm以上の高さになった部分ができた。
スクラップが重なった部分は、トンネル炉内での放射伝熱が減じられ予熱が十分できなかった。また、台車移動中にスクラップが台車から落下しそうになり、操業を一時中断して、台車上のスクラップをクレーンを使って整頓する必要が生じた。
積載量が2/3になったこと、予熱が不十分であったことから、5%の溶銑比率低下の目標に対し、2%の低下しか効果が得られなかった。
[従来技術の場合]
特許文献2において開示された技術で廃車プレス屑を一度に5トン予熱し、ガス化完了時に溶解炉に供給した。これを溶解量120トンになるまで24回繰り返した。
廃車プレス屑は伝熱抵抗が大きく、内部がガス化完了温度(約300℃)になるのに概ね10分を要した。そのため120トン分のプレスを予熱処理するのに4時間を要し、時間あたりの処理量は30トンとなった。本発明による予熱処理量と比べると18%以下であるうえ、本発明に比べて予熱温度も低いため、溶銑比率の低下代は1%未満となった。
本発明の全体構成の説明図である。 本発明で使用される積載装置及び方法の説明図である。 第2図の一部断面図である。 本発明で使用される台車の説明図である。 第1図の排出ゾーンの説明図である。 第5図の一部断面図である。 重量屑の積載方法の説明図である。 整頓用プッシャーの説明図である。 比較例の積載状態の説明図である。
符号の説明
1 台車式トンネル炉
2 台車
3 台車の回送線
3−1 トンネル炉本体と並行する回送線
3−2 炉本体の出口側と回送線3−1とを結ぶ横行経路
3−3 回送線3−1と炉本体の入口側とを結ぶ横行経路
4 搬入ゾーン
5 待機スペース
6 前進用プッシャー
7 排出ゾーン
8 排出用プッシャー
9 スクラップシュート
10 待機スペース
11 積載ゾーン
12 スクラップ搬入用コンベア
13 プレス成形されたスクラップ
14 積載用プッシャー
15 整頓用プッシャー
16 押し付け用壁
17 プッシャーの駆動機構
18 押し付け用壁
19 台車上のスキッドレール
20 落下防止用のガイド
21 落下防止用のガイド
22 つば部
23 スクラップ排出部
24 スクラップシュート待機部
25 トンネル炉の燃焼帯
26 仕切り壁
27 傾斜ガイド板
28 スクラップシュートの軌条
29 煙道

Claims (13)

  1. レス成形された鉄系スクラップ、または、プレス成形された鉄系スクラップと重量屑からなるスクラップの予熱処理装置であって、
    台車式トンネル炉と、該トンネル炉内に搬入される台車と、トンネル炉から搬出された台車をトンネル炉に回送する回送線と、該回送線に沿って設けられたスクラップの積載ゾーンとを有し、前記スクラップを待機位置から台車の移送方向に対して直角方向に、押し出し距離を段階的に調節して押し出して台車上に積載するための積載用プッシャーを、前記積載ゾーンに台車の移送方向に沿って複数設けたことを特徴とするスクラップの予熱処理装置。
  2. 前記積載ゾーンには、前記スクラップを前記積載用プッシャーごとに決められた待機位置に搬送するコンベアが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスクラップの予熱処理装置。
  3. 前記積載用プッシャーを加熱炉内の搬送方向と逆行する回送線の位置に設け、回送線からトンネル炉の本線に台車を移動する経路が横行経路となっており、積荷の積載方向と直角をなす方向に動作して積荷を整頓させるための整頓用プッシャーが、前記横行経路内に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のスクラップの予熱処理装置。
  4. 前記台車のスクラップ積載面に、前記スクラップの幅の半分よりも狭い間隔で、積載用プッシャーの押し出し方向に沿ってスキッドレールを敷設したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスクラップの予熱処理装置。
  5. 前記トンネル炉に連続して、スクラップの排出部とスクラップシュートの待機部を設け、前記排出部に、予熱処理が完了したスクラップを前記待機部にあるスクラップシュートに排出するための排出用プッシャーが設けられ、前記排出部および前記待機部がトンネル炉と連結された断熱部材で覆われていることを特徴する請求項1〜4のいずれかに記載のスクラップの予熱処理装置。
  6. 前記トンネル炉の排ガスを炉外に排気する煙道が、前記排出部の天井または側壁または炉床部に設置されていることを特徴とする請求項5記載のスクラップの予熱処理装置。
  7. 台車式トンネル炉を用いてプレス成形された鉄系スクラップ、または、プレス成形された鉄系スクラップ及び重量屑からなるスクラップを予熱処理する予熱処理方法であって、
    台車式トンネル炉の回送線のスクラップ積載ゾーンに複数台の積載用プッシャーを台車の移送方向に沿って設け、該積載用プッシャーの押し出し方向を台車の移送方向に対して直角方向とし、該積載用プッシャーの押し出し距離を段階的に調節して、押し出し方向の奥側より手前側に向け、複数回に分けて順次前記スクラップを台車に積載し、台車に積載した前記スクラップを台車式トンネル炉内で予熱処理することを特徴とするスクラップの予熱処理方法。
  8. 前記スクラップが、矩形にプレス成形された鉄系スクラップと重量屑である場合は、それぞれを分類して台車に積載することを特徴とする請求項7記載のスクラップの予熱処理方法。
  9. 前記積載用プッシャーとは別に設けた整頓用プッシャーで台車に搭載された前記スクラップを積載方向と水平直角をなす方向に押圧して、前記スクラップを整頓することを特徴とする請求項7または8に記載のスクラップの予熱処理方法。
  10. 前記台車に積載する前記スクラップの高さが、100mm以上1000mm以下であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載のスクラップの予熱処理方法。
  11. 前記スクラップを、還元雰囲気中で、炉内温度600℃〜1300℃の温度範囲で予熱処理することを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載のスクラップの予熱処理方法。
  12. 排出用プッシャーで台車から予熱後のスクラップを排出することを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載のスクラップの予熱処理方法。
  13. 前記台車式トンネル炉の煙道から炉外に排気されたガスを900℃以上で2秒以上滞留させた後に急冷することを特徴とする請求項7〜12のいずれかに記載のスクラップの予熱処理方法。
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