JP3745271B2 - 溶融還元方法および溶融還元装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、鉄鉱石等の金属酸化物を予備還元したのち還元して溶融金属を得るための溶融還元方法および溶融還元装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶融還元方法により金属酸化物から溶融金属を製造するには、従来、流動層式又はシャフト炉式の予備還元炉と溶融還元炉とを組み合わせて使用するのが一般的である。金属酸化物を、まず流動層式又はシャフト炉式の予備還元炉において還元ガスと接触させることにより固体状態で予備的に還元し、得られた予備還元金属を溶融還元炉に装入して溶融させ、炭素を含む固体燃料および酸素含有ガスと反応させることにより最終的に還元するのである。
【0003】
それに対して近年、回転炉床炉を予備還元炉に使用した溶融還元装置が提案されている。こうした回転炉床炉では、原料の予備還元率(原料中の金属酸化物の酸素のうち除去された酸素の割合)を90%程度またはそれ以上の高率の予備還元金属を溶融還元炉に装入し溶融金属を製造している。
【0004】
なお、回転炉床炉を予備還元炉とし溶融還元炉と組み合わせて金属の溶融還元を行うシステムは、特公平3−60883号公報や特開平11−29808号公報等に紹介されている。前者は回転炉床炉内で予備還元するシステム、後者は粉状酸化鉄と粉状炭素質還元剤との混合物を炉床上に敷いた状態で加熱し、溶融・還元するシステムである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の回転炉床炉と溶融還元炉とを組み合わせた溶融金属製造装置には、下記のような不利な面があった。すなわち、従来は、平地に設置した回転炉床から排出された予備還元金属を、再酸化を防ぐため容器(たとえば容量100ton)に窒素とともに封入し、溶融還元炉の頂部上方まで搬送(たとえば天井クレーンにて)したのち、ロックホッパに再封入して連続的に装入しているので、設備費が高額になり、操業も複雑であった。そこで、回転炉床を溶融還元炉の頂部上方に配置し、密閉状態を保って重力落下により溶融還元炉へ予備還元金属を投入する方法が考えられるが、予備還元を行なう回転炉床は所定の生産量を確保するため、大型化しなければならない(たとえば溶銑日産3000tonであると、内径50mの回転炉床が2基必要)ことから、建屋・土木も大掛かりとなってこれも設備費が高額になり、さらにそれらの設置スペースが広大になって、装置全体のレイアウトも制約されていた。
【0006】
この発明は上述の点に鑑みなされたもので、金属酸化物の予備還元と溶融還元炉への揚上搬送とを兼用化することにより、設備費の低減と生産効率の向上とレイアウト上の適用範囲を拡大化とを実現することのできる溶融還元方法および溶融還元装置を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載した溶融還元方法は、
▲1▼ 炭素を含む固体燃料(たとえば石炭)と金属酸化物(たとえば鉄鉱石)との混合物を加熱することにより固体状態で予備還元したのち、得られた予備還元金属を溶融還元炉に装入して溶融させ、炭素を含む固体燃料および酸素含有ガスと反応させて前記金属酸化物を還元する溶融還元方法において、
▲2▼ 前記金属酸化物を前記溶融還元炉に装入する前の該溶融還元炉への揚上搬送過程中に、加熱して予備還元することを特徴とする。なお、ここでいう「金属」には、鉄のほかにクロムやニッケルなど、溶融還元によって製造されるすべての金属が含まれる。
【0008】
この溶融還元方法はまず、上記▲1▼のとおり金属酸化物を炭素含有の固体燃料とともに混合したもの(つまり混合物)を原料とする。そのような混合物は加熱されると内部で反応を起こし、炭素から生じる一酸化炭素の作用によって金属酸化物の還元(予備還元)が進行する。
【0009】
そして、▲1▼の混合物を▲2▼にしたがって溶融還元炉へ揚上搬送し炉内に装入するが、この混合物の揚上搬送過程で加熱することにより固体状態の予備還元金属を得ることができる。最終的には、それを▲1▼により最終的に還元して溶融金属とする。したがって、後述の請求項4のごとく▲2▼の過程は回転炉床炉あるいは流動層式炉などによらず、揚上搬送手段で行うことができ、この搬送手段は耐熱性を備えておれば種々の形式の搬送装置において実現可能である。もちろん、回転炉床炉や流動層式又はシャフト炉式還元炉を予備還元炉として備えたうえ、予備還元炉で予備還元したのちに揚上搬送手段でも引き続き予備還元することが可能である。
【0010】
揚上搬送過程中にだけ予備還元を行うか、あるいは回転炉床炉または他の加熱炉形式の炉も使用して予備還元を行うにしても、この溶融還元方法によれば、設備費を抑制するとともに生産効率を向上させることができる。
【0011】
請求項2に記載した溶融還元法は、
前記混合物の溶融還元炉への揚上搬送工程の際に、炭素を含む固体燃料を又は同固体燃料と副原料を(炭素を含む固体燃料は溶融還元炉内で燃料・還元剤として使用される相当量を、また副原料は溶融還元炉内で媒溶剤として使用される相当量を)、前記混合物の下側に敷層しながら前記溶融還元炉に装入することを特徴とする。なお、副原料には石灰石やドロマイトなどがある。
【0012】
この構成により、混合物が加熱されて揚上搬送室内の雰囲気温度は高温(たとえば1200〜1400℃)になるが、図4に温度分布を示すように下側に敷層されている固体燃料などが断熱材として作用し、搬送手段の表面はたとえば200℃以下に保持することができ、温度的に金属ワイヤー製コンベヤベルトをはじめ耐熱ゴム製の一般的なコンベヤベルトの適用が可能になる。また溶融還元炉に直接別系統により前記固体燃料および副原料を供給する装置が不要になり、さらに搬送手段から溶融還元炉に装入される全てが有効に活用される。
【0013】
請求項3に記載の溶融還元法は、
前記溶融還元炉への揚上搬送工程中に前記混合物を、前記溶融還元炉からの排ガスを導入し、燃焼空気を吹き込んで燃焼させることにより加熱することを特徴とする。
【0014】
この構成により、溶融還元炉への揚上搬送中の混合物は、排ガスの燃焼熱にて加熱されることにより固体燃料中の炭素から生じる一酸化炭素の作用によって還元とガス改質を繰り返しながら粒子内で連鎖反応的に予備還元される。
【0015】
請求項4に記載した溶融還元装置は、
炭素を含む固体燃料と金属酸化物との混合物を加熱して予備還元するための予備還元装置として、前記混合物の揚上手段に沿って複数の加熱手段が設けられ、前記混合物を装入するための溶融還元炉への揚上搬送機構を備えたことを特徴とする。
【0016】
この溶融還元装置は揚上搬送手段を備えており、この揚上搬送機構は予備還元装置としての機能と揚上搬送装置としての機能との2つの機能を併せ持つ機構から構成されている。この構成により、溶融還元炉へ揚上搬送途上の混合物は加熱されることにより、固体燃料中の炭素から生じる一酸化炭素の作用によって還元とガス改質を繰り返しながら粒子内で連鎖反応的に金属酸化物の予備還元が進行する。そして、予備還元された混合物中の金属酸化物は溶融還元炉へ装入され、溶融した状態において炭素を含む固体燃料および酸素含有ガスと反応して溶融金属に還元されることになる。
【0017】
請求項5に記載した溶融還元装置は、
前記揚上搬送機構がベルト式傾斜型コンベヤ装置とその周囲を囲繞する筺状カバー体とを備え、該カバー体内に前記混合物の各加熱手段を設けるとともに、前記コンベヤ装置のコンベヤベルト上に前記混合物を投入する投入口の下流側に同混合物の下側に敷層する炭素を含む固体燃料等の投入口を設けたことを特徴とする。なお、上記加熱手段としては、下記の1)〜3)を適用できる。
【0018】
この構成により、傾斜型コンベヤ装置により揚上搬送中の混合物は、筺状カバー体内において加熱手段にて高温加熱されることにより固体燃料中の炭素から生じる一酸化炭素の作用によって予備還元される。また、炭素を含む炭材などの固体燃料を断熱層として敷層することでコンベヤベルトの使用が可能になり、またその固体燃料は溶融還元炉内で有効に使用されるので、独自の固体燃料投入装置を設ける必要がなく、また炭材などの固体燃料は揚上搬送過程で温度も若干上昇する。
【0019】
上記加熱手段について;
1)一般の回転炉床炉で用いられるバーナ装置:
天然ガス、重油、微粉炭などの燃料を燃焼空気とともに導入し、燃焼させることによって雰囲気温度を高め、混合物を加熱する。
【0020】
2)上記1)のバーナ装置の燃料に溶融還元炉からの排ガスを用いるもの:
排ガスは還元性ガスで、燃料として使用できる。成分はCO、CO2、H2、H2O、N2などで、ダストは除去され、ほぼ常温になったものを使用する。
【0021】
3)溶融還元炉からの発生ガスを直接コンベヤハウジング内に導入し、バーナ装置の代わりに燃焼用空気のみを吹き込んで上記発生ガスを燃焼するもの:
発生ガスの燃焼によって雰囲気温度を高め、混合物を加熱する。発生ガスは上記2)の冷却・除塵後の排ガスと比べてダストを含むが1200℃前後の高温ガスであり、熱エネルギの有効利用が図れる。なお、溶融還元炉は一般に高圧下(たとえば2kg/cm2G)で操業されるので、一旦減圧してからコンベヤハウジング内に導入するのが望ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、この発明に係る溶融還元装置および予備還元方法の実施の形態について説明する。
【0023】
図1は溶融還元装置の実施例を示す、一部を省略した正面視断面図、図2は図1の溶融還元装置の主要部を拡大して示す断面図、図3は図2のIII−III線断面図である。図4は図2の
一部を拡大して温度分布を示す断面図である。
【0024】
図1に示すように、溶融還元装置1は、金属酸化物である鉄鉱石(酸化鉄)を、固体燃料である石炭中に含まれる炭素等の作用で還元して溶融還元鉄を生産する装置であり、図1のように、予備還元併用の揚上搬送機構10および溶融還元炉30を主体に構成している。図示は省略するが、石炭と鉄鉱石とを混合して混合物Aとする混合機(ミキサー)を備えている。揚上搬送機構10は本発明の特徴部分であり、その混合物Aを加熱することにより予備還元鉄Cを製造すると同時に、溶融還元炉30へ搬送するもの、そして溶融還元炉30は、その予備還元鉄Cを後述する混合物Aの下側に敷層した石炭の敷層物Bとともに溶融鉄浴D中に投入し、酸素をその浴中に吹き込んで溶融・最終還元するものである。
【0025】
図1のように溶融還元炉30は、一般の転炉と同様にるつぼ状の形をし平面中央部に酸素の吹き込みランス31を備えるものである。ランス31は建屋33の上方からワイヤ34等で昇降自在に吊持される。溶融還元炉30の投入口30aから予備還元鉄Cが装入され、同時に上記石炭の敷層物Bが装入されることにより、内部の鉄浴D中で予備還元鉄Cを溶融状態で最終還元する。還元中には一酸化炭素を多量に含む高温のガスが発生するため、これを排気口30cから排気ダクト36を通して外部へ排出している。なお、石炭などの固体燃料を混合物Aの敷層物Bとして後述のコンベヤベルト12上に投入しない構成においては、別途に石炭等の固体燃料を溶融還元炉30内に投入する装置を設ける必要がある。
【0026】
本例の溶融還元装置1では、生産効率の向上および設備費の低減の観点から、揚上搬送機構10の予備還元手段に、本例では予備還元率の平均値を常時30%以上80%以下に保てるものを使用している。つまり、揚上搬送機構10では混合物A中の酸化鉄を予備還元しながら溶融還元炉30へ揚上搬送し、投入口30aから溶融還元炉30内に装入しているが、予備還元鉄Cの予備還元率は、平均値で30〜80%になるように予備還元率を設定している。ただし、この予備還元率は限定されるものではない。
【0027】
本例の揚上搬送機構10の搬送手段は、無端コンベヤベルト12を備えた耐熱性のベルト式傾斜型のトラフベルトコンベヤ装置11からなり、ベルトコンベヤ装置11の上側走行部(ドライブ側)は図3のように、3本のローラ11aによってコンベヤベルト12下面の中央部および両側部をトラフ(樋)状に支持され、下側走行部(リターン側)を長寸の1本のローラ11bでフラット(平坦)に支持されている。また、ベルトコンベヤ装置11の上側走行部の上方は、図2・図3のように耐火物壁13Bを備えた断面略コの字形のカバー体13Aで覆われており、傾斜型ベルトコンベヤ装置11は混合物Aおよび敷層物Bが滑り落ちない角度、つまり安息角以下の約11゜に傾斜角α(図1)を設定している。この傾斜角αを約11゜に設定したもう一つの理由は、溶融還元炉30への混合物Aの投入位置の高さが約30mあることから、傾斜型ベルトコンベヤ装置11の搬送距離が150mになり、従来の直径が50mクラスの回転炉床の炉床の周長にほぼ匹敵する。したがって、傾斜型ベルトコンベヤ装置11の搬送速度を従来の回転炉床の炉床の回転速度に合わせれば、ほぼ同等の予備還元反応時間が得られることになる。なお、傾斜型ベルトコンベヤ装置11の周囲はカバー体13Aを上部に一体的に備えたコンベヤハウジング13により囲繞しているが、コンベヤハウジング13内部の機密性(密閉性)については、従来の水封性シールを適用できる回転炉床に比べてやや劣っている。しかし、コンベヤハウジング13内は、大気圧よりも若干負圧状態に保持して周囲から燃焼空気として代用できる空気を吸い込むことにより、コンベヤハウジング13内の燃焼ガスが周囲に放出されるのを防止するとともに、コンベヤベルト12の雰囲気温度の上昇防止を図っている。上記の燃焼用空気はカバー体13Aの耐火物壁Bとコンベヤベルト12の間の間隙より若干量ずつ吸い込むことによって、耐熱性が維持されている。なお、図1中の符号15cは二次燃焼空気の供給ラインである。
【0028】
揚上搬送機構10はベルトコンベヤ装置11のコンベヤハウジング13(カバー体13A)内に、ガスバーナ15を配備してその燃焼ガスを用いて混合物Aを加熱し、予備還元するのである。本例では、ガスバーナ15の燃料に、溶融還元炉30からの排ガスを、排気ダクト36の途中の設置したガス清浄装置37によりダスト等を取り除いて清浄化するとともに常温まで冷却して使用している。この排ガスは、排気ダクト36に一端が接続され、減圧弁15bが介設されたガス供給ライン15aよりガスバーナ15へ供給される。なお、溶融還元炉30からの排ガスに代えて、重油や天然ガスを使用してもよい。
【0029】
また、加熱に用いた燃焼後の排ガスは排気管13cを通してコンベヤハウジング13から排出する。さらに、コンベヤベルト12の反転位置から溶融還元炉30の投入口30aへは、コンベヤハウジング13と一体に一次貯留ホッパー部14aを備えたシュート14が下向きに延設されている。一次貯留ホッパー部14aは大気圧下のコンベヤハウジング13と圧力下(たとえば2kg/cm2G)の溶融還元炉30とを接続する役目も課されている。
【0030】
上記の構成からなる本実施例に係る溶融還元装置1では、以下のようにして溶融還元される。すなわち、
▲1▼ 図示を省略した混合機では、鉄鉱石・石炭等の粉粒体の供給を受け、これらを均一に混合して混合物Aとしたうえ、傾斜型ベルトコンベヤ装置本体11のコンベヤハウジング13の投入口13aへ投入する。この投入に先立ってその上流側投入口13bへ、敷層物B用の石炭等の固体燃料が投入される。
▲2▼ 揚上搬送機構10は予備還元炉を兼ねた傾斜型ベルトコンベヤ装置であり、投入口13aから送り込まれる混合物Aを、傾斜型ベルトコンベヤ装置11の走行するコンベヤベルト12の敷層物B上に載せて溶融還元炉30の投入口30aの上方まで搬送する。そして、シュート14を介して投入口30aより溶融還元炉30内に装入される。本例では、混合物Aがコンベヤベルト12上の敷層物Bに載って搬送される間に、バーナ15からの燃焼ガスで加熱することによって予備還元鉄Cとしている。そして、最終の予備還元率は上記したとおり30〜80%にしているが、従来の回転炉床による予備還元時間に搬送時間を一致させたことで、生産能力は予備還元率を90%以上とする場合に比べて約2〜1.2倍の増大を図れることになる。
【0031】
▲3▼ 予備還元率が上記のように低いが、溶融還元炉30ではその旺盛な還元能力に基づき、炭素および酸素等を十分に供給することにより、完全に還元された溶融金属を得ることが可能である。しかも、その予備還元率によって溶融還元装置1としての設備費・運転費を抑えながら高効率の生産が達成されることになる。
【0032】
次に図5は溶融還元装置の別の実施例を示す縦断面図および同平面図、図6は図5の一部拡大断面図である。本例の溶融還元装置1は、揚上搬送機構10の搬送手段にパレット式傾斜型搬送装置11’を用いている。この搬送装置11’は、図5に示すように複数台の耐火物製台車状パレット18が一連に縦列して上昇する一方、横移動した後に一連に縦列して下降し、元の開始位置に横移動するが、最上昇位置で横移動する際にその中間位置付近で、図5(a)・(b)のようにパレット18が前方へ迫り出しながらパレット18の前端が下向きに傾斜し、パレット18上に投入された混合物(予備還元鉄)Cがシュート14を通して溶融還元炉30へ装入される。そして、パレット18は元の位置に迫り上がって横移動する。また、最下降位置で横移動する際の中間位置に、混合物Aの投入口19が設けられている。なお、このようにパレット18を前方へ迫り出して前方へ傾動させたり、混合物Aを搬出後に後方へ迫り上がらせて元の状態に戻したりするのは、たとえば、パレット18の横移動時の移動力を利用して図示を省略したリニアガイドを用いて行なうことができる。
【0033】
図5(b)のようにコンベヤハウジング13内は、上昇用パレット18の搬送路と下降用パレット18の搬送路とで仕切り壁13aにより概ね2室に分離されており、上昇用搬送路側には、パレット18の搬送路の両側に沿って複数の燃焼空気導入座15’が図6(a)のように配設され、パレット18上の混合物Aを加熱するようになっている。また、パレット18の上昇用搬送路の上部においてコンベヤハウジング13の天井壁に溶融還元炉30で発生したガスの導入口16が開口され、上昇用搬送路の下部においてコンベヤハウジング13の天井壁に燃焼済み排ガスの排気口17が開口されている。本例では、燃焼空気導入座15’から導入した空気により溶融還元炉30から導入した発生ガスが燃焼し、混合物Aに熱を与える。このため、図5(a)に示すように、排気ダクト36に一端が接続され、減圧弁16bが介設された発生ガス供給ライン16aによりガス導入口16から発生ガスがコンベヤハウジング13内へ導入される。
【0034】
上記の構成からなる第2実施例に係る溶融還元装置1でも、溶融還元の態様については上記第1実施例のそれと共通する。すなわち、投入口19より最下降位置のパレット18に順次投入された混合物Aは、図6(b)のように一連に縦列状態となって傾斜したハウジング13内を上昇し、この上昇過程において燃焼空気導入座15’から吹き込まれた空気により溶融還元炉30から導入した発生ガスが燃焼する火炎で加熱され、混合物A中の炭素から生じる一酸化炭素の作用によって反応して予備還元される。そして、予備還元された予備還元鉄Cは溶融還元炉30に装入され、上記実施例と同様に溶融還元される。なお、図5・図6において、上記実施例と共通する構成部材には同一の符号を付して表し、説明を省略する。
【0035】
揚上搬送機構10の搬送手段については、上記に傾斜型ベルトコンベヤ装置11、パレット式傾斜型搬送装置11’などを実施例として挙げたが、耐熱性を具備する搬送装置であればこれらに限られるものでなく、たとえば、バケットエレベータやバケットコンベヤを使用できる。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、この発明に係る溶融還元方法および溶融還元装置には、次のようなすぐれた効果がある。
【0037】
(1) 金属酸化物の予備還元と溶融還元炉への搬送とを兼用化することにより、設備費の低減と生産効率の向上とレイアウト上の適用範囲を拡大化とを実現することができる。また、揚上搬送過程での予備還元により搬送時の熱ロスおよび再酸化を削減できる。
【0038】
(2) 溶融還元炉へ搬送途上の混合物を加熱することにより金属酸化物の予備還元を遂行できる。しかも、揚上搬送と予備還元とを共通の機構(装置)で達成するから、設備(プラント)全体としての構造の簡素化が図れるとともに、設置スペースも縮小できる。
【0039】
(3) 請求項4記載の溶融還元装置は、混合物が揚上搬送過程で加熱手段にて加熱されることによって効率よく予備還元される。
【0040】
(4) 請求項5記載の溶融還元装置では、炭材などの固体燃料を断熱層として敷層することでコンベヤベルトの使用が可能になり、またその固体燃料は溶融還元炉内で有効に使用されるので、独自の固体燃料投入装置を設ける必要がなく、また炭材などの固体燃料は揚上搬送過程で温度も若干上昇するので、予熱した固体燃料を溶融還元炉内に投入する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶融還元装置の実施例を示す、一部を省略した正面視断面図である。
【図2】図1の溶融還元装置の主要部を拡大して示す断面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図2の一部を拡大して各位置での温度分布を示す断面図である。
【図5】図面は溶融還元装置の別の実施例を示すもので、図5(a)は装置全体の縦断面図、図5(b)は図5(a)の揚上搬送機構を示す平面図である。
【図6】図6(a)は図5(a)のC−C線拡大断面図、図6(b)は図6(a)のD−D線拡大断面図である。
【符号の説明】
1 溶融還元装置
10 揚上搬送機構
11 傾斜型ベルトコンベヤ装置(搬送手段)
11’パレット式傾斜型搬送装置
12 無端コンベヤベルト
13 コンベヤハウジング
15 燃焼用バーナ
15’燃焼空気導入座
16 発生ガス導入口
17 排気口
18 パレット
30 溶融還元炉
36 排気ダクト
Claims (5)
- 炭素を含む固体燃料と金属酸化物との混合物を加熱することにより予備還元し、得られる予備還元金属とともに溶融還元炉に装入して溶融させ、該溶融還元炉内において装入される炭素を含む固体燃料および酸素含有ガスと反応させて前記金属酸化物を溶融・還元する溶融還元方法であって、
前記混合物を前記溶融還元炉に装入する前の該溶融還元炉への揚上搬送工程中に、前記混合物中の前記金属酸化物を加熱して予備還元することを特徴とする溶融還元方法。 - 前記混合物の溶融還元炉への揚上搬送工程の際に、炭素を含む固体燃料を又は同固体燃料と副原料を、前記混合物の下側に敷層しながら前記溶融還元炉に装入することを特徴とする請求項1記載の溶融還元方法。
- 前記溶融還元炉への揚上搬送工程中に前記混合物を、前記溶融還元炉からの排ガスを導入し、燃焼空気を吹き込んで燃焼させることにより加熱することを特徴とする請求項1又は2記載の溶融還元方法。
- 炭素を含む固体燃料と金属酸化物との混合物を加熱して予備還元するための予備還元装置として、前記混合物の搬送手段に沿って複数の加熱手段が設けられ、前記混合物を装入するための溶融還元炉への揚上搬送機構を備えたことを特徴とする溶融還元装置。
- 前記揚上搬送機構が搬送手段としてのベルト式傾斜型コンベヤ装置とその周囲を囲繞する筺状カバー体とを備え、該カバー体内に前記混合物の各加熱手段を設けるとともに、前記コンベヤ装置のコンベヤベルト上に前記混合物を投入する投入口の下流側に同混合物の下側に敷層する炭素を含む固体燃料等の投入口を設けたことを特徴とする請求項4記載の溶融還元装置。
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