しかしながら、上記特許文献1に開示されている警報装置の場合、センサモジュール部(ガスセンサ部)には、所定の検出対象に対して性状変化することで検出能を発揮するセンサ素子以外に、検出回路、調整回路、判定回路、電圧制御回路を備え、センサモジュール部を交換する際に、寿命の短いセンサ素子以外の回路部分も同時に交換する構成となっている。
また、上記特許文献2に開示されている警報装置の場合も、特許文献1に開示されている警報装置と同様に、センサモジュール部(センサ部)には、センサ素子以外に、変換回路、警報信号生成手段、センサ部出力手段、警報レベル設定手段を備え、センサモジュール部を交換する際に、寿命の短いセンサ素子以外の回路部分も同時に交換する構成となっている。
このように、センサ素子以外に、多くの回路をセンサモジュール部内に備える理由としては、センサ素子には個々の特性のバラツキがあるため、検出対象を検出した状態のセンサ出力も変動するので、当該変動に併せて、センサ出力側或いはセンサ出力を受け取る側の判定回路や警報信号生成手段を、センサ素子の特性バラツキに併せて調整する必要があるためである。
また、上記特許文献2に開示されている警報装置の場合、警報信号生成手段、センサ部出力手段、警報レベル設定手段を1つのマイクロプロセッサで実現するため、一部の回路だけを本体部に移行できず、また、これらの回路全てを本体部に移行すると、センサ素子の特性バラツキに併せて本体部の回路の調整が、センサモジュール部を交換する都度必要となる。
上述の如く、従来の本体部に対して着脱自在なセンサモジュール部を備えてなる警報装置の場合、警報装置の主要な機能がセンサモジュール部に設けられ、センサモジュール部の回路規模が大きく、回路削減によるセンサモジュール部の低コスト化が困難であった。
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、上記問題点を解消し、本体部に対して着脱自在なセンサモジュール部を備え、センサモジュール部の交換が容易で、且つ、低コスト化が可能な警報装置を提供することにある。
この目的を達成するための本発明に係る警報装置は、本体部に対して着脱自在なセンサモジュール部を備えてなる警報装置であって、前記センサモジュール部は、所定の検出対象に対して性状変化することで検出能を発揮するセンサ素子の前記性状変化を電気的信号に変換して出力するセンサ部と、前記センサ部の感度調整要素を記憶するための感度調整要素記憶手段を備え、前記本体部は、前記センサ部に対する駆動を制御する駆動制御部、前記センサ部から出力されるセンサ出力に基づいて警報を出力するか否かを判定する判定部、前記警報を出力する警報出力部、前記本体部と前記センサモジュール部の各部に所定の電力を供給する電源部、及び、前記センサ出力のレベルが所定の範囲内にある場合に、前記センサモジュール部から接続確認用データの読み出しを行い、前記接続確認用データが読み出されなかった場合に、前記センサモジュール部が非接続状態にあると判定し、前記本体部に設けられた表示手段を用いて非接続状態検出表示を行う非接続状態検出機能を備えることを第1の特徴とする。
上記第1の特徴の警報装置によれば、センサモジュール部がセンサ部と感度調整要素記憶手段を備え、従来はセンサモジュール部側に設けられていた駆動制御部と判定部が本体部側に設けられているため、センサモジュール部を構成する回路点数を少なくできセンサモジュール部の低コスト化が図れ、結果として警報装置のライフサイクルを通しての低コスト化が図れる。また、センサモジュール部に感度調整要素記憶手段を設けることにより、センサ素子の特性バラツキに対する調整に要する情報が、センサモジュール部から本体部に対して提供されるため、判定部は感度調整要素記憶手段に記憶されている感度調整要素とセンサ部から出力されるセンサ出力の比較結果に基づいて警報を出力するか否かの判定を行うことができ、センサモジュール部の交換時に、センサモジュール部の個体差に適合するように本体部を調整する必要が無い。
上記第1の特徴の警報装置は、更に、前記センサモジュール部が備える前記センサ素子として、半導体式ガスセンサが含まれることを第2の特徴とする。
上記第2の特徴の警報装置によれば、所定の検出対象ガスに感応して警報を発する警報装置を提供できるとともに、センサ素子として半導体式ガスセンサを用いることにより、センサモジュール部のセンサ部の構成を小型化でき、また、センサ素子の性状変化を電気的信号に変換する回路構成も簡単化できる。
上記第2の特徴の警報装置は、更に、前記半導体式ガスセンサが、可燃性ガスと一酸化炭素の少なくとも何れか一方を検出可能であることを第3の特徴とする。
上記第3の特徴の警報装置によれば、メタン等の可燃性ガスの検出能により都市ガス等のガス漏れを検知して警報を発する警報装置、一酸化炭素の検出能により都市ガス等の不完全燃焼を検知して警報を発する警報装置、または、その両機能を備えた多機能の警報装置を提供できる。
上記第3の特徴の警報装置は、更に、前記センサ部が、前記センサ素子として可燃性ガスと一酸化炭素の両方を検出可能な半導体式ガスセンサと、前記駆動制御部からの制御信号により検出対象ガス種に対応した抵抗値を選択可能な負荷抵抗回路を備えていることを第4の特徴とする。
上記第4の特徴の警報装置によれば、本体部の駆動制御部からの制御信号により、センサ部に対しメタン等の可燃性ガスの検出能と一酸化炭素の検出能を切り替えて発揮させることができるので、都市ガス等のガス漏れを検知して警報を発する警報装置と都市ガス等の不完全燃焼を検知して警報を発する警報装置の何れかを選択的に実現できる。更に、センサ部に対するメタン等の可燃性ガスの検出能と一酸化炭素の検出能の切り替え制御を時分割で実行することで、1つのセンサモジュール部を用いて、2つの検出能を発揮して都市ガス等のガス漏れと不完全燃焼を個別に検知して警報を発する警報装置を実現できる。
上記第1乃至第4の何れかの特徴の警報装置は、更に、前記センサモジュール部が、前記感度調整要素記憶手段として、可変抵抗素子を備えることを第5の特徴とする。
上記第5の特徴の警報装置によれば、例えば、センサ部内に設けられた負荷抵抗を可変抵抗素子で構成することで、該可変抵抗素子の抵抗値を調整することにより、センサ素子の特性バラツキをセンサモジュール部側で調整することが可能となる。或いは、可変抵抗素子の抵抗値の調整により、感度調整要素或いは感度調整要素とセンサ部から出力されるセンサ出力の比較値をアナログデータとして本体部に出力することができる。
上記第1乃至第4の何れかの特徴の警報装置は、更に、前記センサモジュール部が、前記感度調整要素記憶手段として、不揮発性半導体メモリを備えることを第6の特徴とする。
上記第6の特徴の警報装置によれば、感度調整要素をディジタルデータとして記憶且つ処理できるので、本体部側の駆動制御部や判定部等をマイクロプロセッサ等のディジタル信号処理手段で構成する場合に、データの授受及び処理に一貫性が維持され好適である。また、不揮発性半導体メモリは、可変抵抗素子等のアナログ的な記憶手段と比較して記憶可能な情報容量が大きいため、多種多様な感度調整要素を記憶でき、更には、感度調整要素以外のセンサ部の駆動制御に有用な情報も記憶することができ、警報装置の品質向上に貢献する。
上記第6の特徴の警報装置は、更に、前記判定部が、前記不揮発性半導体メモリに記憶された前記感度調整要素を読み出し、前記感度調整要素に基づいて前記センサ出力に対する判定基準を設定することを第7の特徴とする。
上記第7の特徴の警報装置によれば、判定部が、感度調整要素データに基づいて、センサ素子の特性バラツキによるセンサ出力の出力値の変動に応じた判定基準の設定を行うことができるので、センサモジュール部の交換時に、センサモジュール部の個体差に適合するように本体部を調整する必要が無い。
上記第6または第7の特徴の警報装置は、更に、前記不揮発性半導体メモリは、前記駆動制御部が前記センサ部に対する駆動制御を行うための制御パラメータを記憶可能であることを第8の特徴とする。
上記第8の特徴の警報装置は、更に、前記駆動制御部は、前記不揮発性半導体メモリに記憶された前記制御パラメータを読み出し、読み出した前記制御パラメータに基づいて前記センサ部に対する駆動制御を行うことを第9の特徴とする。
上記第8または第9の特徴の警報装置によれば、駆動制御部が不揮発性半導体メモリに記憶された制御パラメータを読み出し、読み出した制御パラメータに基づいてセンサ部に対する駆動制御を行うことができるので、駆動制御の異なるセンサ部を備えた別のセンサモジュール部に交換しても、本体部側で何らの調整を行うことなく、駆動制御の異なるセンサモジュール部を使用することができる。これにより、同じ本体部を用いて、回路規模を最小化したセンサモジュール部を交換するだけで、多品種の警報装置を低コストで製造することができる。
上記第8または第9の特徴の警報装置は、更に、前記制御パラメータとして、前記センサ部の所定ノードに印加する電圧波形を規定するパラメータを含むことを第10の特徴とする。
上記第10の特徴の警報装置によれば、センサ部の所定ノードに印加する電圧波形の電圧値や印加時間等を制御パラメータに基づいて変更できるので、センサ部の備えるセンサ素子や検出対象に適合した電圧波形でセンサ部を駆動することができる。
上記第8または第9の特徴の警報装置は、更に、前記制御パラメータとして、前記センサ部の所定ノードにPWM制御により電圧印加する場合のデューティー比を規定するパラメータを含むことを第11の特徴とする。
上記第11の特徴の警報装置によれば、センサ部の所定ノードに印加するPWM制御による電圧のデューティー比を制御パラメータに基づいて変更できるので、センサ部の備えるセンサ素子や検出対象に適合したデューティー比のPWM制御による電圧でセンサ部を駆動することができる。
上記第8乃至第11の何れかの特徴の警報装置は、更に、前記制御パラメータとして、前記センサ部から出力される前記センサ出力の検知時点を規定するパラメータを含むことを第12の特徴とする。
上記第12の特徴の警報装置によれば、センサ部の備えるセンサ素子や検出対象に適合したセンサ出力の検知時点で、本体部の判定部がセンサ出力を検知するので、センサ素子や検出対象に適合した適正な警報出力判定を行うことができる。
上記第6乃至第12の何れかの特徴の警報装置は、更に、前記不揮発性半導体メモリ内に、前記センサ素子の種類を示す情報、及び、前記センサ素子の個体識別情報の少なくとも何れか一方を記憶していることを第13の特徴とする。
上記第13の特徴の警報装置によれば、不揮発性半導体メモリ内に記憶されている情報を外部から電気的に読み出すことで、センサモジュール部の有する検出能等のセンサ素子に関する情報を把握できる。
上記第1乃至第13の何れかの特徴の警報装置は、更に、前記センサモジュール部が、前記センサ部の所定ノードに印加される電圧値を調整する電圧調整手段を備えることを第14の特徴とする。
上記第14の特徴の警報装置によれば、本体部からセンサモジュール部のセンサ部に印加される電圧値が不安定な場合や、適正な電圧値を正確に印加困難な場合に、電圧調整手段によって安定した電圧や適正な電圧をセンサ部に印加することができる。
上記第1乃至第14の何れかの特徴の警報装置は、更に、前記本体部と前記センサモジュール部の間の接点上に寄生する抵抗成分を検出する接点抵抗検出手段を備えることを第15の特徴とする。
上記第15の特徴の警報装置によれば、本体部とセンサモジュール部の間の接点上に寄生する抵抗成分によって、本体部からセンサモジュール部に供給される電圧に電圧降下が生じて適正な電圧供給ができない場合を事前に検知できる。当該寄生抵抗成分の異常を検出することにより、本体部とセンサモジュール部間の接触異常のまま、警報装置が通常の動作状態として使用され、本来の機能が十分に発揮できなくなるのを防止できる。また、当該抵抗成分による電圧降下を別途補正することができれば、本体部からセンサモジュール部に適正な電圧値での電圧供給を行うことができる。
上記第1乃至第15の何れかの特徴の警報装置は、更に、前記センサモジュール部が、検出対象が互いに異なる2以上の前記センサ部を装備可能であることを第16の特徴とする。
上記第16の特徴の警報装置によれば、センサモジュール部に2以上のセンサ部を装備可能であるので、装備するセンサ部の組み合わせによって多種多様な検出対象を選択可能な警報装置を提供可能となる。また、用途によって検出対象の種類や個数を加減できるため、例えば、警報装置を所定の使用個所に設置後においても、検出対象の変更や追加が可能となる。
本発明に係るセンサモジュールは、上記第1乃至第16の何れかの特徴の警報装置の本体部に対して着脱自在なセンサモジュールであって、所定の検出対象に対して性状変化することで検出能を発揮するセンサ素子の前記性状変化を電気的信号に変換して出力するセンサ部と、前記センサ部の感度調整要素を記憶するための感度調整要素記憶手段を備え、前記センサ部は、前記本体部からの制御信号により駆動制御され、前記電気的信号を前記本体部に出力可能に構成され、前記感度調整要素記憶手段は、前記感度調整要素を前記本体部に出力可能に構成されていることを特徴とする。
上記特徴のセンサモジュールによれば、センサモジュールがセンサ部と感度調整要素記憶手段を備え、従来はセンサモジュール側に設けられていた駆動制御部と判定部が本体部側に設けられているため、センサモジュールを構成する回路点数を少なくできセンサモジュールの低コスト化が図れ、結果としてセンサモジュールを含む警報装置のライフサイクルを通しての低コスト化が図れる。また、センサモジュールに感度調整要素記憶手段を設けることにより、センサ素子の特性バラツキに対する調整に要する情報が、センサモジュールから本体部に対して提供されるため、本体部側で、感度調整要素記憶手段に記憶されている感度調整要素とセンサ部から出力されるセンサ出力に基づいて警報を出力するか否かの判定を行うことができ、センサモジュールの交換時に、センサモジュールの個体差に適合するように本体部を調整する必要が無い。
本発明に係るセンサモジュールの操作方法は、警報装置の本体部に対して着脱自在なセンサモジュールの操作方法であって、前記センサモジュールは、前記本体部からの制御信号により駆動制御され、所定の検出対象に対して性状変化することで検出能を発揮するセンサ素子の前記性状変化を電気的信号に変換して前記本体部に出力するセンサ部と、前記センサ部の感度調整要素を少なくとも記憶し、記憶している前記感度調整要素を前記本体部に出力可能に構成されている感度調整要素記憶手段を備えてなり、前記センサ部から出力されるセンサ出力のレベルが所定の範囲内にある場合に前記センサモジュールから接続確認用データの読み出しを行い、前記接続確認用データが読み出せなかった場合に、前記センサモジュール部が非接続状態にあると判定して前記警報装置の本体部に設けられた表示手段を用いて非接続状態検出表示を行い、前記接続確認用データが読み出せた場合に、前記センサモジュール部が接続状態にあると判定して前記感度調整要素記憶手段から前記感度調整要素を読み出すことを第1の特徴とする。
上記第1の特徴のセンサモジュールの操作方法によれば、センサ部と感度調整要素記憶手段を備えたセンサモジュールに対して、センサモジュールとの接続状態を確認した後に、センサモジュールの感度調整要素記憶手段に記憶された感度調整要素のデータを読み出すので、センサモジュールの接続状態において、センサ素子の特性バラツキに対する調整に要する情報としての感度調整要素のデータが確実に提供され、感度調整要素とセンサ部から出力されるセンサ出力に基づいて警報を出力するか否かの判定を行うことができる。従って、接続しているセンサモジュールに適合した警報出力判定がなされるため、センサモジュール部の交換時に、センサモジュール部の個体差に適合するように本体部を調整する必要が無い。
本発明に係るセンサモジュールの操作方法は、警報装置の本体部に対して着脱自在なセンサモジュールの操作方法であって、前記センサモジュールは、前記本体部からの制御信号により駆動制御され、所定の検出対象に対して性状変化することで検出能を発揮するセンサ素子の前記性状変化を電気的信号に変換して前記本体部に出力するセンサ部と、前記センサ部の感度調整要素と前記センサ部に対する駆動制御を行うための制御パラメータを記憶し、記憶している前記感度調整要素と前記制御パラメータのデータを前記本体部に出力可能に構成されている感度調整要素記憶手段を備えてなり、前記センサ部から出力されるセンサ出力のレベルが所定の範囲内にある場合に前記センサモジュールから接続確認用データの読み出しを行う工程と、前記接続確認用データが読み出せなかった場合に、前記警報装置の本体部に設けられた表示手段を用いて非接続状態検出表示を行う工程と、前記接続確認用データが読み出せた場合に、前記感度調整要素記憶手段から前記制御パラメータのデータを読み出す工程と、読み出した前記制御パラメータに基づいて前記センサ部に対する駆動制御を行う工程と、を有することを第2の特徴とする。
上記第2の特徴のセンサモジュールの操作方法によれば、センサ部と感度調整要素記憶手段を備えたセンサモジュールに対して、感度調整要素記憶手段に記憶されたセンサ部に対する駆動制御を行うための制御パラメータを読み出して、その制御パラメータに基づいてセンサ部に対する駆動制御を行うので、センサモジュールの駆動制御が個々のセンサモジュールで異なる場合であっても、駆動対象のセンサモジュールに適合した制御方法で駆動制御できる。従って、センサモジュールと警報装置の本体部が一体となって警報装置が形成されている場合における本体部からのセンサモジュールの駆動、或いは、センサモジュールの出荷テスト時におけるテスト装置からのセンサモジュールの駆動が、センサモジュールの駆動制御方法に合わせて実行できる。
本発明に係る警報装置(以下、適宜「本発明装置」という。)の実施の形態につき、図面に基づいて説明する。
〈第1実施形態〉
図1に、本発明装置の回路構成を示す。図1に示すように、本発明装置は、本体部1と、本体部1に対して着脱自在なセンサモジュール部2を備えて構成される。センサモジュール部2は、メタンと一酸化炭素の2種類の検出対象ガスをヒータの駆動制御により選択的に検出可能な半導体式ガスセンサからなるセンサ素子による検出対象ガスの検出状態を電気的信号として出力するセンサ部3と、センサ部3の感度調整要素とセンサ部3の駆動を制御するための制御パラメータを記憶するための感度調整要素記憶手段4を備える。一方、本体部1は、センサ部3に対する駆動を制御する駆動制御部5、センサ部3から出力されるセンサ出力に基づいて警報を出力するか否かを判定する判定部6、判定部6の警報出力判定に基づいて警報を出力する警報出力部7、本体部1とセンサモジュール部2の各部に所定の電力を供給する電源部8、及び、判定部6の警報出力判定処理における温度補正のための温度検出を行うサーミスタ等の温度センサ9を備える。
センサ部3は、図2に示すように、ヒータ10と一体化して形成された半導体式ガスセンサからなるセンサ素子11のセンサ出力端子12と電源電圧Vccとの間に2つの異なる負荷抵抗R1とR2を並列に設けて構成される。但し、負荷抵抗R2は、スイッチングトランジスタTと直列回路を形成して、センサ出力端子12と電源電圧Vccの間に設けられている。かかる構成により、スイッチングトランジスタTのオン・オフ操作により、検出対象ガスがメタンの場合と一酸化炭素の場合のヒータ10の温度制御の違いによる検出対象ガスの検出/非検出のセンサ出力の振幅を適正に調整することが可能となる。負荷抵抗R1とR2は、本実施形態では固定抵抗で、その抵抗値は、例えば、100kΩと10kΩ等が一例として使用される。尚、センサ出力端子12上に現れるセンサ出力は、ヒータ10の温度制御が100℃前後においては、一酸化炭素の有無によりセンサ出力端子12とヒータ10の接地端子側の間のセンサ素子11の電気抵抗が顕著に変化することで変化し、更に、ヒータ10の温度制御が400〜500℃においては、メタンの有無により上記電気抵抗が顕著に変化することで変化する。スイッチングトランジスタTは、後述するようにヒータ10の駆動制御のタイミングに合わせて本体部1の駆動制御部5からの制御信号によってオン・オフ制御される。
本実施形態では、センサ素子11のヒータ10の温度制御は、一定電圧(例えば3.3V)の電圧をPWM(パルス幅変調)制御で、つまり、ヒータ10に印加する電圧パルスのオン(電圧印加状態)とオフ(電圧非印加状態)の時間比(デューティー比)を制御して印加することで、実効的な印加電圧の調整を行い、センサ素子11に掛かる温度を制御する。ヒータ10のPWM制御による印加電圧波形の一例を図3に示す。
感度調整要素記憶手段4は、EEPROM等の電気的にデータの消去書込み可能な不揮発性半導体メモリで構成される。感度調整要素記憶手段4に記憶される感度調整要素は、例えば、所定の検出規定濃度時におけるセンサ素子11の抵抗値に対応するセンサ出力の電圧値である。ここで、所定の検出規定濃度時における抵抗値は、センサ素子11の各検出対象ガスの濃度に対する抵抗特性の個体差によって変動する。以下、所定の検出規定濃度時におけるセンサ出力の電圧値を検出閾値電圧と称する。尚、検出規定濃度は、各検出対象ガスに対して検出レベルを段階的に設定する場合は複数になり、その場合は検出閾値電圧も複数となる。
また、感度調整要素記憶手段4に記憶される制御パラメータとして、図3に示すような、メタン検出用のPWM制御による電圧パルス印加の開始タイミング、終了タイミング、そのデューティー比、及び、センサ出力の検出タイミング、一酸化炭素検出前のパージ処理用のPWM制御による電圧パルス印加の開始タイミング、終了タイミング、及び、そのデューティー比、一酸化炭素検出用のPWM制御による電圧パルス印加の開始タイミング、終了タイミング、そのデューティー比、及び、センサ出力の検出タイミングが想定される。
本体部1の駆動制御部5は、センサ素子11のヒータ10に印加する電圧パルスを駆動するセンサ駆動部5aとセンサ駆動部5aが駆動する電圧パルスの駆動タイミングと電圧パルスのデューティー比を制御するパルス制御部5bとを備えて構成される。駆動制御部5のパルス制御部5bは、本体部1に設けられたマイクロプロセッサ13内に構成され、感度調整要素記憶手段4に記憶されている制御パラメータを感度調整要素記憶手段4から読み出し、当該制御パラメータの各電圧パルス印加の開始タイミング、終了タイミング、そのデューティー比で、対応する電圧パルスの駆動タイミングとデューティー比を制御し、当該制御に従って、センサ駆動部5aがセンサ部3内のヒータ10を、所定の温度制御パターンとなるように駆動する。マイクロプロセッサ13は、プログラム格納用のROMやRAMを内蔵したマイクロコンピュータを含み、当該ROMやRAMを内蔵するか外付けで備えるかは問わない。
判定部6は、感度調整要素記憶手段4に記憶されている制御パラメータの内のメタン検出用のセンサ出力の検出タイミングと、一酸化炭素検出用のセンサ出力の検出タイミングで、夫々のセンサ出力を読み込み、読み込まれたセンサ出力と、感度調整要素記憶手段4に記憶されている感度調整要素のメタン検出用の検出閾値電圧、または、一酸化炭素検出用の検出閾値電圧の温度補正後の検出閾値電圧と比較して、メタン或いは一酸化炭素の濃度が検出規定濃度以上か否かを判定し、メタンの濃度がメタンの検出規定濃度以上の場合は、ガス漏れが発生していると判定してガス漏れ判定信号を出力し、一酸化炭素の濃度が検出規定濃度以上の場合は、不完全燃焼状態であると判定して不完全燃焼判定信号を出力する。
メタン検出用及び一酸化炭素検出用の各検出閾値電圧の温度補正は、各検出閾値電圧の設定時の温度と温度センサ9が検出した温度の差分に、予め設定された補正係数を乗じて求めた補正電圧値を各検出閾値電圧に加算或いは乗算して行う。その他にも関数を用いる、或いは、温度データと設定値との関連を示したテーブルより補正係数を導き出し、各検出閾値電圧に加算或いは乗算する方法もある。
判定部6は、本体部1に設けられたマイクロプロセッサ13内に構成され、センサ出力(アナログ値)は、マイクロプロセッサ13の所定のアナログポートから入力され、マイクロプロセッサ13内のA/D変換部でサンプリングされ、ディジタル化される。この時のサンプリングタイミングが、制御パラメータの内の各検出対象ガスのセンサ出力の検出タイミングで規定される。また、温度センサ9の温度検出出力(アナログ値)もマイクロプロセッサ13の所定のアナログポートから入力され、マイクロプロセッサ13内のA/D変換部でサンプリングされ、ディジタル化される。
警報出力部7は、LED表示回路からなる光警報出力部14、音声回路15aとスピーカ15bからなる音声警報出力部15、判定部6の警報出力判定情報を外部に電圧レベルによって出力する外部出力回路16、判定部6の警報出力判定に基づいて光警報出力部14、音声警報出力部15、及び、外部出力回路16に対して所定の制御信号を出力する警報出力制御部17を備えて構成される。ここで、警報出力制御部17は、本体部1に設けられたマイクロプロセッサ13内に構成される。
電源部8は、電源トランス18、平滑回路19、及び、定電圧回路20を備えて構成され、例えば、家庭用の商用交流電圧100Vから直流低電圧(例えば、5V、3.3V)を生成する。
次に、図4及び図5に、本発明装置の外観構成を示す。図4(A)は、本体部1の前面側から見た斜視図で、前面の左下領域に光警報出力部14のLED表示回路の3色(赤、緑、黄)のLED14aが設けられ、前面の右下領域に音声警報出力部15のスピーカ15bが設けられ、スピーカ15bの上部に、センサモジュール部2を嵌め込むための凹部21が設けられ、凹部21の底部の奥側に、センサモジュール部2と本体部1を電気的に接続するためのコネクタ22が固定されている。また、本体部1の上面の凹部21の縁部後方側にセンサモジュール部2をビス止めにより固定するためのビス穴23が設けられている。また、先端部に電源プラグ24を備えた電源コード25が電源部8に接続し、本体部1の背面から外部に引き出されている。
図4(B)は、本体部1の凹部21にセンサモジュール部2が嵌合され、ビス止めにより固定された状態を示している。図5(A),(B),(C),(D)は、夫々、センサモジュール部2を底面側から見た斜視図、前面側から見た斜視図、背面側から見た斜視図、及び、側面図である。図5(A)に示すように、センサモジュール部2の底面の背面寄りに本体部1のコネクタ22と嵌合して、電気的に接続するためのコネクタ(接続ピン)26が設けられている。コネクタ26の各接続ピンは、センサモジュール部2内に設けられているセンサ部3のセンサ出力端子12やスイッチングトランジスタTのベース(またはゲート)端子等の入力端子、電源電圧端子、グランド端子、感度調整要素記憶手段4の各入力端子、各出力端子、電源電圧端子、グランド端子等に接続している。また、図5(B),(C)に示すように、センサモジュール部2の上面の一部を背面より後ろ側に突出させ本体部1とのビス止め用のビス穴27が設けられている。また、図5(A),(B),(D)に示すように、センサモジュール部2の前面には、周囲の雰囲気中の検出対象ガスを内部のセンサ部3に設けられたセンサ素子11まで導入するためのスリット28が設けられている。
尚、LED14a、スピーカ15b、コネクタ(接続ピン)26、ビス穴27、スリット28の位置は、必ずしも図4に示す位置に限定されるものではない。LED14aは外部から視認し易い位置であればよく、スピーカ15bの位置も出力される音声が拡散し易い位置であればよい。
本体部1の凹部21の形状、コネクタ22とビス穴23の位置、及び、センサモジュール部2の形状、コネクタ(接続ピン)26とビス穴27の位置を、異なる警報装置間で共通化しておくことで、複数種のセンサモジュール部2が同じ本体部1に共通に使用でき、また、複数種の本体部1に対して、同じセンサモジュール部2を使用することが可能となる。
次に、図1に示す本発明装置の動作について、図6のフローチャートを参照して説明する。本体部1の電源プラグ24をACコンセントに差し込み、電源を投入すると、電源部8において商用交流電力が直流電力に変換され、本発明装置の本体部1及びセンサモジュール部2の各部に電力供給を開始する(ステップ#1)。
本体部1のマイクロプロセッサ13は、起動プログラムを実行し、以下に示すセンサモジュール部2に内蔵の感度調整要素記憶手段4からの一連のデータ読み込み処理を実行する。先ず、カウンタ値Nを0にリセットするとともに、感度調整要素記憶手段4が電源投入後安定するまでの所定時間α秒(例えば、0.5秒)時間待ちして(ステップ#2)、感度調整要素記憶手段4に対して、センサモジュール部2の接続確認用データの読み出しを試みる(ステップ#3)。次に、接続確認用データの確認を行い(ステップ#4)、感度調整要素記憶手段4から接続確認用データが読み出せなかった場合は、本体部1にセンサモジュール部2が接続されていない非接続状態と判定して、通常の警報装置として機能しないことから、警報出力部7に対して非接続状態検出信号を出力し、警報出力部7がLED表示を所定のエラー警報表示に切り替える(ステップ#5)。例えば、緑のLEDを消灯し、赤のLEDを点灯させる。その後、センサモジュール部2の接続確認用データの読み出しを一定間隔で再度試みるために、所定時間β秒の時間待ち後(ステップ#6)、ステップ#3に戻る。ここで、待ち時間β秒は、センサモジュール部2の接続後、マイクロプロセッサ13がセンサモジュール部2の接続確認を行い、正常な動作状態を作業者に報知する必要から、その際の作業者の作業性を考慮すると30秒以下でなるべく短時間であることが好ましい。
接続確認用データの確認(ステップ#4)において、感度調整要素記憶手段4から接続確認用データが読み出せた場合は、感度調整要素記憶手段4から上述の感度調整要素と制御パラメータの各データを読み出す(ステップ#7)。次に、再度、感度調整要素記憶手段4から感度調整要素と制御パラメータの各データを読み出す(ステップ#8)。そして、ステップ#7とステップ#8で夫々読み出したデータを照合する(ステップ#9)。当該照合処理で読み出したデータが不一致の場合、カウンタ値Nをカウントアップし(ステップ#10)、カウンタ値Nが最大値Nmaxに到達しているかを判定し(ステップ#11)、最大値Nmaxに到達していない場合は、所定時間γ秒(例えば、0.2秒)の時間待ち後(ステップ#12)、ステップ#7に戻り、ステップ#7〜ステップ#9の処理を繰り返す。ステップ#11で、カウンタ値Nが最大値Nmaxに到達している場合は、警報出力部7に対してデータエラー検出信号を出力し、警報出力部7がLED表示を所定のエラー警報表示に切り替える(ステップ#13)。この時、非接触検出時とデータエラー検出時のエラー警報を変えてもよい。
ステップ#9の照合処理で読み出したデータが一致している場合は、読み出したデータを、本体部1に内蔵のメモリ(図示せず)に記憶する(ステップ#14)。所定時間δ秒(例えば、0.2秒)の時間待ち後(ステップ#15)、感度調整要素記憶手段4から読み出した感度調整要素と制御パラメータに基づいて、駆動制御部5によるセンサモジュール部2のセンサ部3に対する駆動制御と、判定部6によるセンサ部3から出力されるセンサ出力に対する警報出力判定が開始される(ステップ#16)。
駆動制御部5は、メタンと一酸化炭素の2種類の検出対象ガスの検出を行うべく、感度調整要素記憶手段4から読み出した制御パラメータに基づいて、図3に示すようなタイミングとデューティー比で、センサ素子11のヒータ10の温度制御を実行する。同時に、センサ部3のスイッチングトランジスタTのオン・オフ制御も、図3に示すタイミングに同期して行う。具体的には、一酸化炭素検出時にスイッチングトランジスタTをオンさせる。
判定部6は、感度調整要素記憶手段4から読み出した制御パラメータの図3に示すメタン検出用のセンサ出力の検出タイミングと、一酸化炭素検出用のセンサ出力の検出タイミングで、夫々のセンサ出力を読み込み、読み込まれたセンサ出力と、感度調整要素記憶手段4から読み出した感度調整要素のメタン検出用の検出閾値電圧、または、一酸化炭素検出用の検出閾値電圧の温度補正後の検出閾値電圧と比較して、メタン或いは一酸化炭素の濃度が検出規定濃度以上か否かを判定し、メタンの濃度がメタンの検出規定濃度以上の場合は、ガス漏れが発生していると判定してガス漏れ判定信号を出力し、一酸化炭素の濃度が検出規定濃度以上の場合は、不完全燃焼状態であると判定して不完全燃焼判定信号を出力する。
以下、メタン検出用の検出閾値電圧が2段階に設定されている場合を例に説明する。判定部6が、センサ出力と1段目のメタン検出用の温度補正後の検出閾値電圧(例えば、検出規定濃度500ppmに相当)を比較して、メタン濃度が1段目の検出規定濃度(500ppm)以上か否かを判定し、メタン濃度が1段目の検出規定濃度以上の場合は、1段階目(軽度)のガス漏れが発生していると判定して1段階目のガス漏れ判定信号を、警報出力部7の警報出力制御部17に対して出力する。警報出力制御部17は、1段階目のガス漏れ判定信号に基づいて、光警報出力部14、音声警報出力部15、及び、外部出力回路16の各警報出力を制御する。例えば、一例として、1段階目(軽度)のガス漏れ警報の場合、光警報出力部14に対して、赤のLEDを一定周波数(例えば、2Hz)で点滅させ、音声警報出力部15に対してメロディー音を出力させ、外部出力回路16に対して6Vの電圧を出力させる。
また、判定部6は、センサ出力と2段目のメタン検出用の温度補正後の検出閾値電圧(例えば、検出規定濃度3500ppmに相当)を比較して、メタン濃度が2段目の検出規定濃度(3500ppm)以上か否かを判定し、メタン濃度が2段目の検出規定濃度以上の場合は、2段階目(重度)のガス漏れが発生していると判定して2段階目のガス漏れ判定信号を、警報出力部7の警報出力制御部17に対して出力する。警報出力制御部17は、2段階目のガス漏れ判定信号に基づいて、光警報出力部14、音声警報出力部15、及び、外部出力回路16の各警報出力を制御する。例えば、一例として、2段階目(重度)のガス漏れ警報の場合、光警報出力部14に対して、赤のLEDを常時で点灯させ、音声警報出力部15に対して警報音(例えば、「ピッピッピッピッ・・・・」等)と警報メッセージ(例えば、「ガス漏れです」等)を順次出力させ、外部出力回路16に対して12Vの電圧を出力させる。
次に、センサモジュール部2の製造時における、センサ部3に内蔵されるセンサ素子11に係る感度調整要素の感度調整要素記憶手段4への記憶方法について説明する。
工場での感度調整要素、例えば、所定の検出規定濃度時におけるセンサ出力電圧値(検出閾値電圧)の設定は、設定装置(図示せず)のチャンバー内において予め定められた一定の温湿度(例えば、20℃、65%)の雰囲気中で行われる。この状態で、複数のセンサモジュール部2を装着できる設定装置内に設けられた評価用基板の各コネクタに設定対象のセンサモジュール部2のコネクタ26(図4参照)を接続する。そして、装着された各センサモジュール部2に電源が供給され、設定制御手段が、センサ部3に対して、本体部1に装着した場合と同じ駆動方法でヒータ10を含むセンサ部3を駆動する。設定装置が評価対象ガス(例えば、メタンや一酸化炭素)の濃度調整手段に対し、チャンバー内をガス濃度が検出規定濃度に維持されるように指令を出す。濃度調整手段は、チャンバー内の校正用センサにてチャンバー内のガス濃度を監視しながら目標となる検出規定濃度となるように投入するガス量を調整し、目標となる検出規定濃度が維持できると、設定対象のセンサモジュール部2に対応した設定制御手段に対し、チャンバー内のガス濃度が検出規定濃度になっている旨の信号を出力する。設定制御手段は、評価用基板上の各センサモジュール部2に対応して設けられ、本体部1のマイクロプロセッサ13と同様にマイクロプロセッサを含んで構成される。
設定制御手段は、ガス濃度が検出規定濃度になっている旨の信号を受信すると、検出対象ガス種に適合した検出タイミング(通常は、本体部1と接続して警報装置として動作する場合と同じタイミング)で、設定対象のセンサモジュール部2のセンサ出力を読み出し、A/D変換により2値化されたチャンバー内の検出規定濃度に対応する検出閾値電圧を、感度調整要素記憶手段4の所定の記憶領域に書き込む。
上記要領で、メタンの1段目と2段目の検出閾値電圧と、一酸化炭素の1段目と2段目の検出閾値電圧を感度調整要素記憶手段4に書き込む。また、制御パラメータについても、センサ素子11及びセンサ部3の回路構成に対応した駆動方法に適合したものが、感度調整要素とともに感度調整要素記憶手段4に書き込まれる。
次に、本発明装置のセンサモジュール部2の交換について説明する。本発明装置が所定の使用個所に設置され、センサモジュール部2に内蔵のセンサ素子11の有効期限(例えば、5年)が切れて、センサモジュール部2を交換する場合を想定する。
通常は、センサモジュール部2を交換する場合は、本体部1の電源プラグ24をACコンセントから取り外して、電源の投入を遮断してから使用済みのセンサモジュール部2を本体部1から取り外して、新しいセンサモジュール部2を本体部1に取り付けた後、本体部1の電源プラグ24をACコンセントに差し込み、電源を投入する。電源投入後は、上述の図6のフローチャートを参照して説明したのと同じ手順で起動し、駆動制御部5によるセンサモジュール部2のセンサ部3に対する駆動制御と、判定部6によるセンサ部3から出力されるセンサ出力に対する警報出力判定が開始される。
ここで、本体部1の電源プラグ24をACコンセントに挿入したまま、つまり、電源投入状態でセンサモジュール部2が交換された場合について説明する。
電源投入状態でセンサモジュール部2が本体部1から取り外されると、センサ出力を受信する本体部1のマイクロプロセッサ13のアナログポートへのセンサ出力の入力がなくなるが、当該無入力状態において開放状態とならずに高抵抗状態で当該アナログポートの入力レベルが0Vとなるように入力レベルを例えば抵抗を介してクランプしておく。この場合の高抵抗状態は、センサ部3のセンサ出力端子12に接続する負荷抵抗やセンサ素子11の抵抗変動範囲より例えば3桁以上の高抵抗状態とする。
本体部1のマイクロプロセッサ13は、センサ出力0Vを検出すると、当該センサ出力0Vが、センサ素子11の故障によるものか、或いは、センサモジュール部2の取り外しによるものかを判定する判定プログラムを起動する。
当該判定プログラムが起動されると、マイクロプロセッサ13は、センサモジュール部2の接続確認用データの読み出しを試みる。ここで、センサモジュール部2との接続が確認されると、センサ出力0Vはセンサ素子11の故障によるものと判定して、警報出力部7に対してセンサ素子11の故障検出信号を出力し、警報出力部7がLED表示を所定のエラー警報表示に切り替える。
センサモジュール部2との接続が確認されない場合は、センサモジュール部2の接続確認用データの読み出しを所定回数試みて、最終的にセンサモジュール部2との接続が確認されなかった場合、センサ出力0Vはセンサモジュール部2の取り外しによるものと判定して、警報出力部7に対してセンサモジュール部2の非接続状態検出信号を出力し、警報出力部7がLED表示を所定の非接続状態検出表示に切り替える。その後、マイクロプロセッサ13は、センサモジュール部2の接続確認用データの読み出しを定期的に試みる。
次に、新しいセンサモジュール部2が本体部1に接続されると、マイクロプロセッサ13は、センサモジュール部2の接続確認用データの読み出しを行い、センサモジュール部2の接続を確認する。接続確認後の処理は、図6のフローチャートのステップ#7以降の処理と同じ手順となるので、重複する説明は割愛する。
〈第2実施形態〉
次に、本発明装置の第2実施形態について説明する。図7に、第2実施形態に係る本発明装置の回路構成を示す。第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付して説明する。第2実施形態に係る本発明装置は、図7に示すように、第1実施形態と同様に、本体部1に対して着脱自在なセンサモジュール部2を備えて構成される。本体部1のハードウェア構成、及び、本発明装置の外観構成は、第1実施形態の構成と同じである。センサ部3のセンサ素子11がメタンと一酸化炭素の2種類の検出対象ガスをヒータの駆動制御により選択的に検出可能な半導体式ガスセンサである点、及び、センサ部の回路構成も、第1実施形態と同じである。従って、これらにつき重複する説明は省略する。
図1に示す第1実施形態との相違点は、センサモジュール部2のセンサ部3のヒータ10に対する駆動制御が、第1実施形態ではPWM制御を用いたが、第2実施形態では、印加電圧の電圧値を直接制御する。図8に、ヒータ10に印加する電圧波形及びセンサ出力の検出タイミングを示す。図8に示すように、メタン検出時には0.9Vを5秒間、一酸化炭素検出時には0.2Vを10秒間印加し、各印加期間の最後に各センサ出力を検出する。
第2実施形態では、ヒータ10の印加電圧の振幅制御を行うため、ヒータ10に印加する電圧値を調整する電圧調整手段29がセンサモジュール部2内に設けられている。図9に、電圧調整手段29の回路構成を示す。電圧調整手段29は、2つの基準電圧Vref1(図8に示すメタン検出時の印加電圧0.9V)とVref2(図8に示す一酸化炭素検出時の印加電圧0.2V)をスイッチのオン・オフ操作により択一的に生成してオペアンプの一方の差動入力端子に接続する抵抗分圧回路と、出力を他方の差動入力端子に帰還させたオペアンプとで構成されている。抵抗分圧回路のスイッチのオン・オフは、本体部1の駆動制御部5からの制御信号によって制御される。また、スイッチのオン・オフ制御は、スイッチングトランジスタTのオン・オフ制御と同期して行われる。
感度調整要素記憶手段4に記憶される感度調整要素は、第1実施形態と同様に、所定の検出規定濃度時におけるセンサ出力の検出閾値電圧である。検出閾値電圧の設定方法も、第1実施形態と同様であるので、重複する説明は割愛する。
感度調整要素記憶手段4に記憶される制御パラメータは、第2実施形態の場合、図3に示すような、メタン検出用の振幅制御による電圧印加の開始タイミング、終了タイミング、及び、センサ出力の検出タイミング、一酸化炭素検出用の振幅制御による電圧印加の開始タイミング、終了タイミング、及び、センサ出力の検出タイミングが想定される。尚、第2実施形態の場合、電圧調整手段29がセンサモジュール部2内に設けられ、電圧調整手段29によって振幅制御による印加電圧の調整がなされるため、メタン検出用及び一酸化炭素検出用の各電圧値は制御パラメータとして記憶する必要がない。
〈第3実施形態〉
次に、本発明装置の第3実施形態について説明する。図10に、第3実施形態に係る本発明装置の回路構成を示す。第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付して説明する。第3実施形態に係る本発明装置は、図10に示すように、第1実施形態と同様に、本体部1に対して着脱自在なセンサモジュール部2を備えて構成される。本発明装置の外観構成は、第1実施形態の構成と同じである。従って、これらにつき重複する説明は省略する。
図1に示す第1実施形態、または、図7に示す第2実施形態との相違点は、図10に示すように、センサモジュール部2が、複数のセンサ部3(本第3実施形態では2つのセンサ部3A,3B)と、各センサ部3A,3Bに対応した電圧調整手段29A,29Bと、センサ部3Aのセンサ出力の増幅回路30と、感度調整要素記憶手段4を備えて構成されている点である。また、各センサ部3A,3Bは、夫々異なる検出対象ガスに感応するセンサ素子を備え、例えば、センサ部3Aにはメタン専用のセンサ素子が、センサ部3Bには一酸化炭素専用のセンサ素子が備えられている。
図11と図12に、センサ部3Aのヒータ駆動用の印加電圧パターンとセンサ部3Bのヒータ駆動用の印加電圧波形とセンサ出力の検出タイミングを、夫々例示する。図11と図12に示すように、第3実施形態においても、各センサ部3A,3Bのヒータ駆動制御が、印加電圧の電圧値を直接制御する振幅制御であり、メタン検出用のセンサ部3Aに対しては、2.5秒間の2.0V印加と7.5秒間の0V印加を周期的に繰り返し、2.0V印加期間の最後にセンサ出力を検出し、一酸化炭素検出用のセンサ部3Bに対しては、60秒間の1.2V印加と90秒間の0V印加を周期的に繰り返し、0V印加期間の最後にセンサ出力を検出する。また、各センサ部3A,3Bに夫々印加する電圧パルスは単一の電圧振幅であるので、電圧調整手段29A,29Bの各基準電圧Vref1,Vref2の一方はグランド電位(0V)となり、一方の抵抗分圧回路が不要となり回路構成が簡単化される。
また、センサ部3Bは、センサ出力の検出タイミングがヒータ駆動されていない比較的長い期間の最後にあるので、検出時にのみセンサ部3Bの読み出し用の負荷抵抗を駆動して(電源電圧を印加して)、センサ出力を読み出す回路構成となっている。ここで、当該負荷抵抗の駆動制御は、本体部1の駆動制御部5の制御信号によって行われる。
感度調整要素記憶手段4に記憶される感度調整要素は、所定の検出規定濃度時におけるセンサ部3A,3Bの各センサ出力の検出閾値電圧である。本第3実施形態の場合、2つのセンサ部3A,3Bによってメタンと一酸化炭素は各別に検出可能であり、検出対象ガス種は第1及び第2実施形態と同じであるので、感度調整要素記憶手段4に記憶される感度調整要素も第1及び第2実施形態と同様となる。また、検出閾値電圧の設定方法も、基本的に第1実施形態と同様であるので、重複する説明は割愛する。
感度調整要素記憶手段4に記憶される制御パラメータは、第3実施形態の場合、図11に示すような、メタン検出用の振幅制御による電圧印加の開始タイミング、終了タイミング、及び、センサ出力の検出タイミング、及び、図12に示すような、一酸化炭素検出用の振幅制御による電圧印加の開始タイミング、終了タイミング、センサ出力の検出タイミングが想定される。尚、第3実施形態の場合、電圧調整手段29A,29Bがセンサモジュール部2内に設けられ、電圧調整手段29A,29Bによって振幅制御による印加電圧の調整がなされるため、メタン検出用及び一酸化炭素検出用の各電圧値は制御パラメータとして記憶する必要がない。
図10に示すように、本体部1の駆動制御部5が、センサモジュール部2内のセンサ部3A,3Bの個数に合わせて、各別に必要な制御信号を備える。第1及び第2実施形態では、センサ素子自体が、メタン検出能と一酸化炭素検出能を兼ね備えて、それらの両検出能を時分割で駆動する構成であったため、メタン検出と一酸化炭素検出に係る制御信号は共通であったが、第3実施形態では、メタン検出能を有するセンサ部3Aと一酸化炭素検出能を有するセンサ部3Bが並列に設けられているため、駆動制御部5からの駆動制御は時分割で行う必要がなく、メタン検出用と一酸化炭素検出用に個別の駆動制御を行う。
また、図10に示すように、本体部1の判定部6は、センサモジュール部2内のセンサ部3A,3Bの個数に合わせて、各センサ出力の入力端子を設け、個別に読み込む。具体的には、感度調整要素記憶手段4から読み出した制御パラメータの図11及び図12に示す検出タイミングで各センサ出力を夫々読み込み、各別に温度補正処理を行い、警報出力判定を行う。警報出力判定及びその後の警報出力処理は、第1及び第2実施形態と基本的に同じであるので重複する説明は省略する。
〈第4実施形態〉
次に、本発明装置の第4実施形態について説明する。図13に、第4実施形態に係る本発明装置の回路構成を示す。図13に示す回路構成は、第1実施形態の回路構成を基本に、本体部1側に、本体部1とセンサモジュール部2の間の接点上に寄生する抵抗成分を検出する接点抵抗検出手段31を備える。
図13に示すように、本体部1とセンサモジュール部2の接続端子の内、特に電流が多く流れる電源端子やグランド端子等に対し、センサモジュール部2側に引き出し点を設けて、接点抵抗検出用の端子32,33に接続する。
第1実施形態で説明した本発明装置の起動時の動作において、例えば、図6に示すフローチャートのステップ#4の接続確認用データの確認において、感度調整要素記憶手段4から接続確認用データが読み出せた場合に、ステップ#7の感度調整要素記憶手段4からの感度調整要素と制御パラメータの各データの読み出し動作に移行する前に、接点抵抗検出手段31を起動して、電源端子とその接点抵抗検出用端子間に電流を流して、両端子間の電圧差により寄生抵抗成分を計測する。寄生抵抗成分が規定値以上の場合は、本体部1のマイクロプロセッサ13が、警報出力部7に対して接点抵抗異常検出信号を出力し、警報出力部7がLED表示を所定のエラー警報表示に切り替える。作業者は、当該エラー警報表示によってセンサモジュール部2と本体部1の接続状態を調整し、当該接点抵抗異常を解消するか、調整困難な場合は、不良品として早期に異常を発見できる。
尚、上記説明では、接点抵抗検出手段31を本体部1に設け、接点抵抗検出用の端子32,33を別途追加する例を、第1実施形態の回路構成をベースに説明したが、当該追加構成は、第2または第3実施形態をベースとして行っても構わない。
以下に、別の実施形態につき説明する。
〈1〉上記各実施形態では、感度調整要素記憶手段4がEEPROM等の電気的にデータの消去書込み可能な不揮発性半導体メモリで構成される場合を説明したが、感度調整要素記憶手段4としては、不揮発性半導体メモリに代えて、或いは、追加して、可変抵抗素子等のアナログ的に情報を記憶可能な電気素子を用いて構成しても構わない。
感度調整要素の記憶用に可変抵抗素子を使用する場合は、例えば、図14に示すように、センサ部3のセンサ出力の読み出し用の負荷抵抗R1,R2に可変抵抗素子を用いることで、工場での製造時における感度調整要素の設定工程において、予め定められた一定の温湿度(例えば、20℃、65%)の雰囲気下で所定の検出規定濃度時におけるセンサ出力電圧値(検出閾値電圧)が、予め設定された一定値(判定基準値)になるように、可変抵抗素子の抵抗値を調整することで、感度調整要素を実質的に記憶することができる。この場合、本体部1の当該一定値(判定基準値)に対して温度補正処理を施して警報出力判定を行う。
また、感度調整要素記憶手段4としては、不揮発性半導体メモリと可変抵抗素子を併用する場合は、センサモジュール部2のセンサ部3の駆動制御用の制御パラメータは、不揮発性半導体メモリに記憶することができる。
更に、上記各実施形態では、感度調整要素記憶手段4に感度調整要素と制御パラメータを記憶させる場合を説明したが、感度調整要素記憶手段4に感度調整要素だけを記憶する形態であっても構わない。
〈2〉上記第1実施形態の図6のフローチャートに示す起動時の動作において、接続確認用データの読み出しは、必ずしも感度調整要素記憶手段4から読み出す必要はない。例えば、接続確認用データの読み出し専用の端子を、本体部1とセンサモジュール部2に設けておき、接続状態で、センサモジュール部2側の当該端子に与えられる所定電圧を読み出すようにしても構わない。また、上記第4実施形態で説明した接点抵抗検出手段31を利用しても構わない。つまり、例えば電源端子とそれに対応する接点抵抗検出用の端子間に電流を流し、通電を検知できれば、接続状態の確認ができる。
〈3〉上記第2及び第3実施形態では、センサモジュール部2内に、電圧調整手段29を設けていたが、電圧調整手段29を本体部1側に設けても構わない。この場合、センサ部2に対する印加電圧を調整するための基準電圧Vref1,2等の生成は、駆動制御部5からの基準電圧を指定する制御信号によって行い、該基準電圧の指定値は、感度調整要素記憶手段4に記憶される制御パラメータとして記憶されているものを利用する。従って、感度調整要素記憶手段4に記憶される制御パラメータには、振幅制御による電圧印加の開始タイミング、終了タイミング、及び、センサ出力の検出タイミングに加えて、印加電圧の電圧値も記憶される。
〈4〉上記第3実施形態において、センサ部3Aのメタン専用のセンサ素子、及び、センサ部3Bの一酸化炭素専用のセンサ素子の各ヒータ駆動制御は、印加電圧の振幅制御の場合を説明したが、PWM制御により実効的な印加電圧の制御を本体部1側から行うようにしても構わない。この場合、電圧調整手段29A,29Bは不要となり、その代わり、感度調整要素記憶手段4に制御パラメータとして夫々の印加電圧パルスのデューティー比を記憶し、当該デューティー比に基づいてPWM制御による各センサ部3A,3Bの駆動制御を行ってもよい。
〈5〉上記第3実施形態において、センサモジュール部2内に、複数のセンサ部3を設ける場合を説明したが、初期の出荷状態において、センサモジュール部2内に搭載するセンサ部3の個数を、最大搭載個数未満としても構わない。但し、センサモジュール部2と本体部1との間のコネクタの端子数、並びに、本体部1側の駆動制御部5の制御信号数と判定部6のセンサ出力受信用の入力数は、最大搭載個数のセンサ部3に対応して予め準備しておく。更に、感度調整要素記憶手段4に記憶する制御パラメータとして、例えば、有効なセンサ部を指定するデータを記憶しておき、本体部1は起動時の処理で当該制御パラメータを読み込むことで、有効なセンサ部を判別するとともに、有効なセンサ部に係るその他の制御パラメータを読み込み、有効なセンサ部に対してのみ駆動制御を行い、センサ出力の読み込みを行い、警報出力判定を行うようにすればよい。
以上のように構成することで、当初ガス漏れ警報装置として出荷した警報装置に、一酸化炭素検出能を有するセンサ部を追加したセンサモジュール部2に交換することで、ガス漏れと不完全燃焼を検出して警報を発する複合型の警報装置に機能アップすることができる。
〈6〉上記各実施形態において、センサモジュール部2に内蔵されるセンサ素子は、メタン検出能、一酸化炭素検出能、または、その両方を有する半導体式ガスセンサを想定したが、センサモジュール部2に内蔵されるセンサ素子は半導体式ガスセンサに限定されるものではなく、また、センサ素子の検出対象も、メタンまたは一酸化炭素に限定されるものではない。例えば、異常高温や煙を検知して火災状態を検出するセンサ部を備えても構わない。
〈7〉上記各実施形態において例示した各電圧値やタイミング、或いは、ガス濃度等は、一例であり上記各実施形態の電圧値、タイミング、ガス濃度等に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
〈8〉上記各実施形態において、図4に示すように、本発明装置の外観構成として、センサモジュール部2が、本体部1に設けられた凹部21に嵌め込まれて一体化する形態を例示したが、例えば、図15に例示するように、本体部1とセンサモジュール部2を接続ケーブル34で接続し、本体部1とセンサモジュール部2を離間させて設置する形態であっても構わない。
〈9〉上記各実施形態において、本体部1の電源部8は、電源トランス18、平滑回路19、及び、定電圧回路20を備えて構成され、外部から供給される交流電力を直流電力変換して、本体部1とセンサモジュール部2の各部に供給する構成であったが、電源部8を内蔵電池を用いて構成し、当該内蔵電池の直流電圧を、本体部1とセンサモジュール部2の各部に、直接、或いは、DC/DCコンバータ等を介して供給する形態であっても構わない。