JP4720026B2 - 製氷皿 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、給水・製氷・離氷等の動作を自動的に行うようにした、自動製氷装置の製氷皿に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、冷蔵庫の製氷装置は、消費者の手間を省くために、タンクに水を入れてセットすれば、給水・製氷・離氷を自動的に繰り返す、自動製氷装置を搭載する機種が増加している。
【0003】
従来の自動製氷装置としては、特公昭50−16541号公報に示されているものがある。
【0004】
以下、図4から図7を参照しながら上記従来の自動製氷装置に使用されている製氷皿ついて説明する。
【0005】
図において、1は冷凍室2に搭載された自動製氷装置で、3はポリプロピレン製の製氷皿であり、4は前記製氷皿3を回転させ、一端の回転継続中に他端を係止させ、表面に歪を付加させ離氷を行うための駆動装置、5は製氷の完了を検知するセンサー、6は離氷された氷を貯める貯氷箱である。
【0006】
7は前記冷凍室2の奥面に配置された冷却器、8は送風機、9は前記冷却器7の前方に配置された冷却器カバー、10は前記冷却器カバー9に設けられた製氷用の冷気吐出口、11は給水タンクである。
【0007】
12は前記給水タンク11の水を前記製氷皿3へ供給するための給水ホース、13は前記製氷皿3を保持するためのフレーム、14は離氷時に製氷皿3の一端を係止させて製氷皿3にひねりを加えるための係止ピンである。
【0008】
以上のように構成された自動製氷装置1について、以下その動作を図4のフローチャートをもとにして説明する。
【0009】
まず、給水タンク11に水を入れてセットすれば(ステップ1)、給水ホース12を通って自動的に適量の水が製氷皿3に供給される(ステップ2)。製氷皿3に供給された水は、冷却器7で冷却され送風機8によって冷却器カバー9の冷気吐出口10から吐出される冷気によって製氷される(ステップ3)。
【0010】
そして、センサー5が製氷完了温度T1に到達すれば(ステップ4)、駆動装置4によって固定された製氷皿3の一端が時計方向に回転(正転)し、離氷動作に入り、180度回転させた時に製氷皿3の他端が係止ピン14によって係止され、さらに回転を加えると製氷皿3にひねりが生じ、氷は貯氷箱6へ離氷される(ステップ5)。
【0011】
離氷が完了すれば、製氷皿3は反時計方向に回転(逆転)し、元の位置に戻る(ステップ6)。その後、給水〜製氷〜離氷が繰り返し自動的に行われる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の構成は、製氷皿に大きなひねりを加えて離氷を行うため、製氷と離氷の繰り返しで製氷皿に応力が加わり変形に至る可能性が大きく、更には、離氷時に氷にも大きな応力が加わるため、離氷された氷が割れるという欠点があった。
【0013】
本発明は従来の課題を解決するもので、製氷された氷を割る事なく確実に離氷することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため本発明の請求項1記載の発明は、水と接し製氷を行う表面に0℃〜−15℃以上の範囲内にガラス転移温度を有する形状記憶樹脂層を形成した製氷皿において、接触角が50度以上のぬれ性を有する形状記憶樹脂層を形成したもので、氷が凍結した後、氷結点以下で形状記憶樹脂層の分子構造に変形が生じる為、氷との界面での分子間引力が弱くなり非常に離氷がしやすくなる。
【0015】
そして、0℃以下でマイナス15℃以上の範囲内にガラス転移温度を有する形状記憶樹脂層を形成したもので、マイナス15℃までに分子構造の変形が完了するので必要以上に冷却することがなく、家庭用の冷蔵庫に使用しても離氷しやすい状態となる。
【0016】
また、接触角が50度以上のぬれ性を有する形状記憶樹脂層を形成したもので、凍結時における氷と表面との密着を小さくするもので、分子構造の変形との相乗効果により、表面に大きな歪をかけることなく容易に離氷が完結し、小さなひずみですむ事から製氷皿の耐久性も良くなる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、形状記憶樹脂層として(化2)に示す一般構造式を有するウレタン系ポリマよりなるもので、ウレタン系ポリマは混合成分モノマー種類や分子量でガラス転移温度やぬれ性が調整可能であり、また、膜として成形しやすく製氷皿の表面に容易に形成して離氷性を良好に出来る。
【0018】
【化2】
【0019】
請求項3に記載の発明は、表面に歪を付加させる変形手段を有するもので、分子構造の変化と外部ひずみにより、離氷性を良好にするものである。
【0020】
請求項4に記載の発明は、変形手段として製氷皿の一端を駆動させ前記製氷皿の他端を係止するもので、従来のある離氷動作との兼用により、大きなひねりを必要とすることなく離氷することが可能で、製氷皿の変形も少なく、氷の割れも低減でき、信頼性を高めたものとなる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の製氷皿について図1から図3を参照しながら説明する。なお、従来と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1による製氷皿を有する自動製氷装置を搭載した冷蔵庫の断面図である。図2は、同実施の形態1の要部断面図である。図3は同実施の形態1の動作を示すフローチャートである。
【0023】
図1、図2において、15は自動製氷装置、16は製氷皿、17は前記製氷皿16の製氷容器表面18の凹部底面に当接するように設けたウレタン系の形状記憶樹脂層で、19は離氷時に前記製氷皿16を回転させるための駆動装置である。
【0024】
以上のように構成された自動製氷装置15について、以下その動作を図3のフローチャートをもとにして説明する。
【0025】
まず、給水タンク11に水を入れてセットすれば(ステップ1)、給水ホース12を通って自動的に適量の水が製氷皿16に供給される(ステップ2)。製氷皿16に供給された水は、冷却器7で冷却され送風機8によって冷却器カバー9の冷気吐出口10から吐出される冷気によって製氷される(ステップ3)。そして、センサー5が製氷完了温度T1に到達すれば(ステップ4)、駆動装置19によって製氷皿16が時計方向に回転(正転)し、離氷動作に入り、180度回転させた時に製氷皿16の一端が係止ピン14によって係止され、さらに回転を加えると製氷皿16にひねりが生じ、氷は貯氷箱6へ離氷される(ステップ5)。離氷が完了すれば、製氷皿16は反時計方向に回転(逆転)し、元の位置に戻る(ステップ6)。その後、給水〜製氷〜離氷が繰り返し自動的に行われる。
【0026】
次に、形状記憶樹脂層17を備える製氷皿16の製法とその作用について説明する。まず、製氷容器表面18はポリプロピレン樹脂により射出成形で形成する。ポリプロピレン樹脂は繰り返し強度に強く耐薬品性や低温特性に優れるもので、自動製氷装置15のように低温で繰り返し変形を加える製氷皿16の素材としては最適である。
【0027】
次に、その製氷容器表面18の凹面にウレタン系ポリマーを形成する方法について説明する。あらかじめ、イソシアネート成分として4,4−ジフェニルメタジイソシアネートを1.5部、ポリオール成分としてポリプロピレングリコール1.0部を加え、無触媒で反応させてプレポリマーとする。それに鎖延長剤としてビス(2−ハイドロキシエチル)ハイドロキノン0.51部を添加し製氷容器表面18の凹面に塗布し、加熱することにより60℃で3時間のキュアリングを施しウレタン系ポリマーの形状記憶樹脂層17を得る。
【0028】
この方法により得られた形状記憶膜として物性値はガラス転移点がマイナス7℃で、ぬれ性が60度の接触角を有するものであった。
【0029】
次に、この形状記憶樹脂層を有する製氷皿での製氷と離氷性について説明する。
【0030】
製氷皿16に供給された水は、冷却器7で冷却され送風機8によって冷却器カバー9の冷気吐出口10から吐出される冷気によって氷結する。0℃の凍結点では水が氷に変わる時の凝固熱を奪うためにしばらく温度は一定となり、その後、製氷皿の水が氷にすべて変わると、氷点下に低下する。凍結完了時における0℃近傍での氷と製氷皿16の表面18界面との結合は、氷が凍結による体積膨張でひずみを起こしているにもかかわらず、製氷皿16の表面18表面とは強い密着性を有している。
【0031】
さらに温度が低化してマイナス7℃以下になると形状記憶樹脂の分子構造が変化し結晶化度が上昇し物性値にして数十倍の強度を有する樹脂層に変貌する。この変貌は形状記憶樹脂層17の微妙な変形をもたらすと共に氷と密着していた結合が破壊され、非常に分離されやすい界面構造に変化する事になる。
【0032】
よって、センサー5が製氷完了温度であるマイナス15℃のT1に到達すれば、製氷皿16の変形手段が働く。すなわち、駆動装置19によって製氷皿16が時計方向に回転(正転)し、離氷動作に入り、180度回転させた時に製氷皿16の他端が係止ピン14によって係止され、さらに回転を加えると製氷皿16にひねりが生じ、氷は貯氷箱6へ離氷されるが、氷は製氷皿16から離れやすい状態となっているために、従来に比して容易に離氷が完了することになる。さらに、製氷皿16は反時計方向に回転(逆転)し、元の位置に戻る(ステップ6)。その後、給水〜製氷〜離氷が繰り返し自動的に行われる。
【0033】
発明の実施の形態1で使用したのは、イソシアネート成分として4,4−ジフェニルメタジイソシアネート、ポリオール成分としてポリプロピレングリコール、鎖延長剤としてはビス(2−ハイドロキシエチル)ハイドロキノンを添加したが、他のジイソシアネートとしては2、4−トルエンジイソシアネート、4、4−ジフェニルイソシアネートがあり、他のポリオールはポリエチレングリコール、他の鎖延長剤としてはビスフェノールAとプロピレンオキサイドがあり、それらの分子量や比率によりガラス転移点やぬれ性や剛性を変化させることが可能である。ガラス転移温度は(化3)で示す分子構造の中にあるR1、R2、R3の直剛性、分子量、分子容、極性によって決まるもので、また、ぬれ性は(NCO)と(0H)の比率で決まるもので、
ここではウレタン系のポリマー成分を限定するものではない。
【0034】
【化3】
【0035】
以上の方法で、0℃〜マイナス15の範囲のガラス転移点、及び3〜50重量%の結晶化度を有する形状記憶性ポリウレタンエラストマーを成形する事により、形状記憶樹脂層17はマイナス7℃付近で屈曲点を持つ為に氷が凍結したおり、分子構造が変化するために氷と形状記憶樹脂層17との間でズレを生じる為J
に、非常に離氷しやすい状態となっている。
【0036】
実際従来では180度の変形を必要としたが、本発明の実施の形態1では120℃で100%の離氷性を確保でき、また、耐久性の面からも、単純なクリープ特性での変形でなく分子構造の変化である為に長期信頼性も良好な結果を得た。
【0037】
形状記憶樹脂として実施の形態1ではポリウレタン形樹脂を採用したが成形性の面で取り扱いやすく、物性を自由に変化できることからウレタン系の形状記憶樹脂が良いが、ポリノルボルネンやトランスポリイソプレンとうの形状記憶樹脂も使用可能で、また、実施の形態1ではポリプロピレン樹脂の容器を成形し形状記憶樹脂層を塗付したが、形成品自体を形状記憶樹脂で形成してもよく、形状記憶樹脂層の厚みを限定するものではない。
【0038】
また、本発明の実施の形態1ではセンサー5の製氷完了温度T1をマイナス15℃としたが、ガラス転移温度以下になれば形状記憶樹脂層の結晶化度が変化し離氷性が良好となるので、設定はガラス転移温度以下にすれば良くマイナス15℃に限定するものではない。
【0039】
また、製氷容器にポリプロピレン樹脂を使用したが、繰り返し特性の面で良好であり採用したが、変形量が少なくてすむ事からウレタン形樹脂との接着性の良いABS樹脂を使用しても差し支えない。
【0040】
また、ぬれ性として接触角が50度以下になると形状記憶樹脂層と氷との分子間引力の強度が強くなり、耐久性が悪くなり形状記憶樹脂層の表面の荒れが著しくなり経時的に離氷性が落ちることとなる。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、水と接し製氷を行う表面に0℃以下の温度帯にガラス転移温度を有する形状記憶樹脂層を形成することで、氷が凍結した後、氷結点以下で形状記憶膜の分子構造に変形を生じる為、氷との界面での分子間引力が弱くなり非常に離氷がしやすくなりる。
【0042】
また、マイナス15℃までに分子構造の変形が完了するので必要以上に冷却することもなく、接触角が50度以上のぬれ性を有する形状記憶樹脂層を形成したので、凍結時における氷と表面との密着を小さくするもので、分子構造の変形との相乗効果により、表面に大きな歪をかけることなく離氷が完結することができる。
【0043】
また、ウレタン系ポリマは混合成分モノマーの分子主鎖でガラス転移温度やぬれ性を調整可能であり、また、膜として成形しやすく容易に製氷皿の離氷性を良好に出来る。
【0044】
変形手段により表面に歪を付加させるもので、分子構造の変化と外部ひずみにより、従来の離氷動作との兼用により、大きなひねりを必要とすることなく、製氷皿の変形も少なく、氷の割れも低減でき、信頼性を高めたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1の製氷皿を有する自動製氷装置を搭載した冷蔵庫の断面図
【図2】 本発明の実施の形態1の製氷皿を有する自動製氷装置の要部断面図
【図3】 本発明の実施の形態1の製氷皿を有する自動製氷装置の動作を示すフローチャート
【図4】 従来の製氷皿を有する自動製氷装置を搭載した冷蔵庫の断面図
【図5】 従来の製氷皿を有する自動製氷装置の要部断面図
【図6】 従来の製氷皿を有する自動製氷装置の離氷動作時の正面図
【図7】 従来の製氷皿を有する自動製氷装置の動作を示すフローチャート
【符号の説明】
15 自動製氷装置
16 製氷皿
17 形状記憶樹脂層
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