JP4714662B2 - 不定形耐火物の使用方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、炉内ガス中にアルカリ成分を含む窯炉等に内張りされて、アルカリ成分を含むガス雰囲気に熱間で曝される環境で用いられる不定形耐火物の使用方法に関する。
製鉄ダストやスラッジを還元して亜鉛等の不純物を除去し、得られた還元鉄を高炉の原料等に再利用することが行われている。図10は、製鉄ダストやスラッジを還元するのに用いられる回転炉床式還元炉100を示す図である。
この回転炉床炉100は、中空の円環状である炉200と、炉内において周回する円環状の炉床300と、炉200の側壁に設けられた所定数のバーナー400と、を備えている。炉200は、鉄製である外壁210の内側にアルミナシリカ質の耐火物220が内張りされ、1000℃〜1300℃になる炉内の高温に耐えるようになっている。
なお、耐火物の組成としては、特許文献1に開示がある。
ペレット状に固められた製鉄ダストやスラッジが炉床に供給されると、ペレット500が炉床300とともに炉内を回る。炉内を回る際にバーナー400からの加熱昇温によりペレット500中に含まれる亜鉛等の不純物が取り除かれる。そして、不純物が除去されたペレット500が回収される。
このように回収されたペレット500がリサイクルされる。
特開平06−206764号公報
ここで、製鉄ダストやスラッジにはナトリウム(Na)やカリウム(K)などのアルカリ成分が酸化物、炭酸塩、または塩化物等の形態で含まれているので、炉内でペレット500を加熱昇温すると、アルカリ成分が酸化物、炭酸塩、または塩化物等の形態のまま、あるいはナトリウム(Na)やカリウム(K)などが分解して揮発し、炉内のガスにアルカリ成分が含まれることになる。すると、揮発したアルカリ成分が耐火物のなかに侵入し、耐火物中のアルミナおよびシリカと反応する。耐火物中のアルミナおよびシリカにアルカリ成分が反応すると、反応生成物としてやカリオファライト(K2O・Al23・2SiO2)やルーサイト(K2O・Al23・4SiO2)などが生成され、大きな体積膨張が生じる。このように耐火物220のなかで部分的に体積膨張が生じる結果、耐火物220が剥落し、耐火物220の寿命が短くなるという問題が生じていた。
ここで、例えば、特許文献1には、高温アルカリ雰囲気に対する耐火物として、Alが92質量%〜98質量%であり、CaOが2質量%〜8質量%である成分割合の耐火物が開示されている。
このような構成によれば、6Al・CaOである粒界結合部が骨材となるAlを被覆し、アルカリ成分を含むガス雰囲気によるAlの反応侵食の進行を抑制することができるとされている。
しかしながら、ペレット500を加熱昇温するとペレット500から水分が揮発する。すると、特許文献1に開示される成分割合では、含有されるCaOが水分と反応して体積膨張して耐火物がスレーキングを起こし、耐火物が構造を保てなくなるという問題が生じる。そのため、製鉄スラッジを還元する炉の耐火物として高い耐久性能を有する耐火物が望まれていた。
本発明の目的は、高温のアルカリ成分を含むガス雰囲気などの過酷な条件において、耐久性を保ち長寿命である、不定形耐火物の使用方法を提供することにある。
本発明の不定形耐火物の使用方法は、補助原料として2質量%〜10質量%の炭化珪素および3質量%〜10質量%のシャモットの少なくともいずれか1つと、結合材と、残部がコランダム、ムライト、ボーキサイト、ロー石、シリカから選ばれた1種以上の主原料、との混合物からなる不定形耐火物を、アルカリ成分を含むガス雰囲気に750℃以上1400℃以下の熱間で曝される環境で用いることを特徴とする。
このような構成による耐火物を例えば炉内に内張りした状態で炉内を加熱昇温する。すると、炉内に内張りされた耐火物の表層部分に露出している補助原料である炭化珪素および/またはシャモットが、炉内ガスに含まれるアルカリ成分と熱間で反応して、一旦溶融したのちにガラス化される。
このように耐火物の表層がガラス化されると、炉内のガスが耐火物の内部に侵入することが防止される。
例えば、炉内のガスがアルカリ成分を含んでいる場合に炉内のガスが耐火物中に侵入すると、アルカリ成分がコランダムやムライト等と反応して体積膨張が生じる。このようなアルカリ成分との反応による体積膨張のために耐火物が剥落し、耐火物の寿命が非常に短くなっていた。
この点、本発明では、補助原料として含有される炭化珪素および/またはシャモットが溶融して表面にガラス化層を形成し、ガスの侵入を防止するので、反応生成物による耐火物の膨張を防止して、耐火物の耐久性能を向上させ、寿命を長くすることができる。
ここで、炭化珪素を2質量%〜10質量%とするのは、炭化珪素が2質量%未満ではガラス化層の膜が不完全でガスの侵入を遮断できないからであり、炭化珪素が10質量%を超えると、炭化珪素が酸化されて生じる反応生成物の体積膨張が大きくなり、耐火物が剥落してしまうからである。
また、シャモットを3質量%〜10質量%とするのは、シャモットが3質量%未満ではガラス化層の膜が不完全でガスの侵入を遮断できないからであり、シャモットが10質量%を超えると耐火物全体の融点が低くなりすぎて耐火物として機能しなくなるからである。
なお、結合材とは、常温では粉末同士を結合させずに不定形状態を保ち、所定の温度以上に昇温されると、粉末を結合させるものをいう。結合材としては、例えば、アルミナセメントに超微粉アルミナおよび/または超微粉シリカを加えたものや、さらに粘土を加えたものが例として挙げられる。
また、結合材の含有量は、強度を確保するために5質量%以上とし、耐食性を維持するために22質量%以下とすることが好ましい。
主原料は、耐火物の強度を維持するために58質量%〜93質量%とすることが好ましい。
本発明の耐火物の使用方法における熱間での使用温度としては、750℃以上1400℃以下であることが好ましい。
750℃以上でなければ炭化珪素および/またはシャモットが溶融してガラス被膜が生成されにくいからである。
ただし、予め耐火物を所定時間750℃以上に昇温して耐火物の表層にガラス化層を形成させておけば、耐火物の耐火温度である1400℃以下で使用できることはもちろんである。
なお、1400℃を超えると、ガラス被膜が溶融しやすくなるので好ましくない。
また、補助原料である炭化珪素および/またはシャモットが、炉内ガスに含まれるアルカリ成分と熱間で反応して、一旦溶融したのちにガラス化される際に、充分なガラス化層厚を形成するためには、アルカリ成分の濃度としては、0.1容量%以上であることが好ましい。
例えば、製鉄ダストやスラッジを被加熱体として用いた場合、アルカリ成分であるナトリウム(Na)やカリウム(K)は、酸化物、炭酸塩、あるいは塩化物の形態で含まれているため、加熱させたり、一部分解や還元させることで、雰囲気ガスに含まれるアルカリ成分としては、酸化物の形態であるKOやNaO、金属蒸気としてK,Na、炭酸塩、塩化物などが考えられる。このうち、特に、酸化物の形態であるKOやNaO、金属蒸気としてK,Naが、耐火物を体積膨張させる影響が大きい。
従って、ガス成分中にKOやNaO、K、Naが0.1容量%以上含まれている場合には、特に、本発明の耐火物が効力を発揮するため好ましい。一方、ガス中のアルカリ成分濃度の上限としては、後処理設備の腐食やダストの堆積問題を考慮すると、10容量%以下が好ましい。
尚、ガス中のアルカリ成分濃度を直接測定するのは困難なので、実際には、被加熱体中のアルカリ成分濃度と、被加熱体の量と、対象とする炉内容積などから、計算で求めることが現実的である。
また、上記の通り、アルカリ成分のガスが発生するが、雰囲気ガス中のその他の成分としては、酸化雰囲気中での加熱の場合はO、CO、HO、Nなどが、還元雰囲気中での加熱の場合はCO、Hなどが例示できる。
本発明では、前記結合材は、10質量%以下のアルミナセメントと、7質量%以下の超微粉アルミナ、および/または、5質量%以下の超微粉シリカであることが好ましい。
このような構成において、結合材としてのアルミナセメントを10質量%以下とすれば、アルミナセメントの体積膨張がそれほど影響せずに耐火物としての機能を果たすことができる。また、アルミナセメントの含有量の下限値は特に規定するものではないが、3質量%以上が強度の確保という点で好ましい。
また、超微粉アルミナが7質量%超では、ガス中のアルカリ成分との反応による体積膨張の影響が大きくなるため、7質量%以下とすることが好ましい。一方、超微粉シリカを5質量%以下とするのも同様の理由である。超微粉アルミナおよび超微粉シリカの含有量の下限値は特に規定するものではないが、1質量%以上が粉末の分散および強度の確保という点で好ましい。
また、超微粉は、分散材と組み合わせることで流動性を確保すること、およびアルミナセメントと反応させて高い強度を発現させることを目的に添加されるが、十分目的を達するためには、超微粉アルミナ、超微粉シリカともに、粒径10μm以下が好ましい。また、超微粉アルミナ、超微粉シリカともに、粒径の下限値は特に規定するものではないが、1μm以上が粉末の分散および強度の確保という点で好ましい。
本発明では、含有される前記2質量%〜10質量%の炭化珪素および前記3質量%〜10質量%のシャモットの少なくともいずれか1つは、粒径が200μm以下であることが好ましい。
このような構成において、炭化珪素および/またはシャモットの粒径を200μm以下とすることにより、炭化珪素および/またはシャモットが溶融しやすくなり耐火物の表面にガラス被膜を形成しやすくなる。
その結果、耐火物の表面にガラス被膜が形成され、ガスが耐火物の内部に侵入することを防止して耐火物の耐久性能を向上させることができる。
また、炭化珪素および/またはシャモットの粒径の下限値は特に規定するものではないが、10μm未満としても、溶融してガラス被膜が生成されるという点では、その効果が飽和するため、10μm以上とすることが好ましい。
また、本発明の不定形耐火物の使用方法は、前記アルカリ成分を含むガス雰囲気に熱間で曝される環境が窯炉の内部であり、前述したいずれかに記載の不定形耐火物を炉内に内張りした後、アルカリ成分を含むガス雰囲気に熱間で曝される環境で用いられて、表層にガラス化層が1mm以下の厚さで生じていることを特徴とする。
具体的には、本発明の耐火物を炉内温度として750℃以上1400℃以下の熱間で、炉内ガス成分としてアルカリ成分が含まれるガスに曝された場合、アルカリ成分と補助原料として添加された炭化珪素、および/または、シャモットが反応して、ガラス化層を生成する。その厚みは、1mm以下であることが重要である。なぜなら、ガラス化層厚みが1mm超では炉補修を行うための冷却時に剥離してしまうためである。一方、ガラス化層厚みの下限は特に規定するものではないが、30μm未満では十分にアルカリ成分を含むガスの侵入を防止できない場合があるため、30μm以上とすることが好ましい。
尚、本発明の耐火物を実炉に使用した場合、ガラス化層厚みは、通常は200μm以下であることが多い。
前記耐火物に係る発明では、前記不定形耐火物を内張りした後、耐火物表面に、750℃以上で溶融し、シリカ(SiO)、アルカリ金属の酸化物(例えばLiO、NaO)、及びアルミナ(Al)を含む溶液が塗布され、その後アルカリ成分を含むガス雰囲気に熱間で曝されるのが好ましい。
ここで、溶液としては、シリカを主成分として、アルカリ金属の酸化物、及びアルミナを含むものが用いられるが、溶液中の各成分は、シリカ70〜97質量%、アルカリ金属の酸化物2〜10質量%、及びアルミナ1〜20質量%とするのが好ましく、溶液は、これらの他に、例えば、MgO、B等を含んでもよい。
溶液は、750℃以上で溶融し、回転円筒法(例えば、「溶鉄・溶滓の物性値便覧」(日本鉄鋼協会偏)P35を参照)で測定した粘度が1200℃において0.1Pa・s以上となるのが好ましく、50μm以上、500μm未満の膜厚で被膜を形成するのが好ましい。
膜厚が50μm未満では、アルカリ成分を含むガスの遮断効果が薄れるためである。一方、膜厚を500μm未満とするのは、それ以上でもアルカリ成分を含むガスの遮断効果がかわらないにもかかわらず、溶液の特性上、複数回の塗布が必要となり作業量が増えるためである。
ここで、塗布する溶液の粘度の温度を1200℃を基準としたのは、ガスを扱う炉における使用温度相当と考えられるためである。また、上記の溶液の粘度の上限値は特に規定するものではないが、0.5Pa・s以下が施工性という点で好ましい。
上記の溶液は、常温で吹き付け、乾燥して水分を除去しガラス化させる。その後、稼動温度まで上昇させて、炉内温度が750℃以上となると一部溶融を開始して、耐火物全体を覆い、稼動時にはアルカリ成分を含むガスと反応してガラス化層を形成し、その後のアルカリ成分を含むガスの浸入を防止することができる。尚、750℃以上で溶融を開始させるのは、アルカリ成分を含むガスの揮発温度が750℃前後であるためである。
このように溶液を塗布して被膜を形成することにより、溶液を塗布しない場合よりも耐火物にアルカリ成分を含むガスが侵入することを確実に防止して耐火物の寿命をさらに延長できる。
但し、この様にアルカリ成分を含むガスの遮断を目的として、上記の溶液を塗布して被膜を形成させたとしても、熱間で使用することにより、被膜は剥離したり、あるいは溶融することになる。その際には、本発明の耐火物とガス中のアルカリ成分が熱間で反応して、一旦溶融したのちにガラス化されて、ガラス化層を形成することになり、ガラス化層によってアルカリ成分を含むガスが耐火物中に侵入することを防止できる。
本発明は、窯炉に使用しても成立するものであり、具体的には、次の構成を具備するものである。
すなわち、本発明に係る不定形耐火物の使用方法は、前述した不定形耐火物を内張りする際に、前記不定形耐火物が複数の区画で施工され、かつ、隣接する区画間に可縮性耐火材が施工され、それぞれの区画の設定膨張代が、使用温度での前記耐火物の理論膨張量(D)に対して下記式(1)の範囲内となることを特徴とする。
また、本発明に係る窯炉は、前述した耐火物が形成された複数の区画を備え、かつ、隣接する区間内に設けられる可縮性耐火材を有し、それぞれの区画の設定膨張代が、使用温度での前記耐火物の理論膨張量(D)に対して下記式(1)の範囲内となることを特徴とする。
一般的にガスを対象とする窯炉においては、熱間状態により耐火物が膨張しやすいため、炉内に不定形耐火物を内張りする際に、不定形耐火物で構成される複数の区画に分けて施工され、隣接する区画とは所定の間隔を有することにより、耐火物が加熱されて膨張したときに、お互い押し合ってせり出してしまうこと防止している。
また、この不定形耐火物の少なくとも炉内側に切れ目を施すことにより、この切れ目の幅方向長さに相当する空間も、耐火物が加熱されて膨張したときに、お互い押し合ってせり出してしまうこと防止する効果がある。(以降、「不定形耐火物の区画の所定の間隔」や「切れ目による空間」を総称して、「膨張代」と記載することがある。)
さらに、上記の隣接する区画との間の空間に、耐火物の膨張を吸収できる様に可縮性耐火材が施工される。
具体的に図1を用いて説明する。膨張代は、図1に示すように、耐火物の背面まで貫通し、一般にガスが漏れないように可縮率の高い耐火材102を充填する場合と、表面にある間隔で切れ目105を入れる場合(以降、「スコアライン」と記載することがある。)の主に2通りある。図1に示す膨張代では、耐火物101の背面には、断熱用のれんが103があり、その背面に鉄皮104となる構成となっている。
また、上記の隣接する区画との間の空間に充填される耐火材102は可縮性耐火材が用いられており、ガスを扱う炉では、Al−SiO系のセラミックファイバーやMgO−SiO系のセラミックファイバーなどが例示される。
膨張代は、耐火物を窯炉に内張りする際に、事前に設定するものであり、その指標として、使用温度における当該耐火物の理論膨張量が用いられる。この理論膨張量とは、JIS R 2555に定めらた方法により測定した熱間線膨張率により求めることができる。
通常、ガスを扱う炉においては、炉内からガスが漏れない様にするために、膨張代として理論膨張量の0.5未満という値に設定して、耐火物を施工することにより、耐火物の区画同士が可縮性耐火材を強く押し合うため、ガスの漏れを防止できている。この様に、事前に設定する膨張代を、本願では「設定膨張代」と定義する。
これに対して、アルカリ成分を含むガスが炉内に存在する場合、すなわち、耐火物がアルカリ成分を含むガス雰囲気に熱間で曝される場合に耐火物の膨張が大きくなること、および、補助原料として炭化珪素を用いる際にガス雰囲気中に酸素が存在する場合、この酸素と反応してSiOを生成することで耐火物の膨張がより大きくなることが新たに判明したことから、設定膨張代を従来よりも大きくすることが重要であることを、新たに見出した。
具体的には、設定膨張代として、使用温度での不定形耐火物の理論膨張量(D)に対して、0.5倍以上、2倍以下とすることが好ましいことがわかり、式で表現すると下記式(1)となる。
尚、式(1)の中辺の意味は、「pA」が可縮性耐火材が使用温度で収縮した際の幅方向長さを意味しており、「ΣBi」は切れ目の幅方向の長さの総和を意味している。
ここで、i、nを0以上の整数としているのは、可縮性耐火材を施工する際の隣接する区画との間隔のみで設定膨張代を設定する場合もあるためである。
設定膨張代が上記の理論膨張量(D)に対して0.5倍未満では、アルカリ成分を含むガスと耐火物との反応が促進され、耐火物の膨張量が大きく耐火物がお互いに迫るとともに、炉の冷却時にアルカリとの反応層が剥離して耐火物の厚みが減ってしまう。特に、炭化珪素を用いる際にガス雰囲気中に酸素が存在する場合、この酸素と反応してSiOを生成することで耐火物の膨張がより大きくなるため、耐火物がお互いに迫ることがより顕著になるため、好ましくない。
一方、理論膨張量(D)に対して2倍を超える場合には、隣接する耐火物の区画との間の空間に施工されている可縮性耐火材のシール性が低下するため、炉内ガスが耐火物背面に回り、炉殻である鉄皮が赤熱してしまう可能性があるため、好ましくない。
本発明によれば、補助原料として含有される炭化珪素および/またはシャモットが溶融
して表面にガラス化層を形成し、ガスの侵入を防止するので、反応生成物による耐火物の膨張を防止して、耐火物の耐久性能を向上させ、寿命を長くすることができる。また、所定の性状の溶液を塗布して耐火物に膜を形成させることで、さらに寿命を長くすることができる。さらに、設定膨張代を十分に確保することで、耐火物が熱間で膨張しても耐火物の押し合いによるせり出しを防止することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図2は、本発明にかかる耐火物の使用方法の実施例と、従来例および対比例を示す図である。
耐火物は、異なる粒度の粉体を所定の割合で混合した混合物に結合材を混ぜたものである。本発明の実施例では、混合したときに最密充填構造となる割合で各粒径の粒子を混合する。粒子の粒径としては、3mm以上、1mm〜3mm、200μm〜1mm、200μm以下、10μm以下のカテゴリーに分類される。なお、粒径は、所定のメッシュをもったふるいで分類したものである。
そして、本発明の実施例では、コランダム、ムライト、ボーキサイト、シャモット、ロー石、シリカから選ばれた1種以上の主原料と、結合材と、補助原料と、を含み、補助原料は、2質量%〜10質量%の炭化珪素および3質量%〜10質量%のシャモットの少なくともいずれか1つを含有している。さらに、含有される炭化珪素およびシャモットの粒径が200μm以下である。また、結合材として10質量%以下のアルミナセメントと、粒径10μm以下の超微粉アルミナが7質量%以下および粒径10μm以下の超微粉シリカが5質量%以下の少なくともいずれか1つが含有されている。
具体的には、実施例1〜3では、主原料がムライトである。
そして、実施例1では、補助原料として200μm以下の粒径の炭化珪素が3質量%含有され、結合材として8質量%のアルミナセメントと、粒径10μm以下の超微粉アルミナ5質量%および粒径10μm以下の超微粉シリカ3質量%が含有されている。
実施例2では、補助原料として200μm以下の粒径のシャモットが3質量%含有され、結合材として8質量%のアルミナセメントと、粒径10μm以下の超微粉アルミナ5質量%および粒径10μm以下の超微粉シリカ3質量%が含有されている。
実施例3では、補助原料として200μm以下の粒径の炭化珪素が3質量%含有されるとともに200μm以下の粒径のシャモットが5質量%含有され、結合材として8質量%のアルミナセメントと、粒径10μm以下の超微粉アルミナ5質量%および粒径10μm以下の超微粉シリカ3質量%が含有されている。
次に、このような成分組成および粒径割合の耐火物を炉の内張りに使用する形態について図3〜図5を参照して説明する。
図3〜図5は、図10(背景技術)において説明した回転式炉床炉100の炉200を断面した図である。
まず、例えば実施例1、2、3に従って混合した耐火物600を炉内に流し込んで耐火物600を内張りする(図3)。そして、炉内に製鉄ダストやスラッジのペレット500を供給するとともに、バーナー400を点火して炉内を750℃〜1300℃に加熱昇温する(図4)。
このとき、ペレット500からは亜鉛等の不純物が除去されるとともに、ペレット500に含まれるアルカリ金属の酸化物(NaO,KO)、炭酸塩、塩化物といったアルカリ成分がそのまま揮発したり、あるいは分解や還元されて揮発してくる。
これらのアルカリ成分はダストやスラッジに濃化した成分に由来し、通常は、0.1質量%以上が検出される。この様なダストやスラッジのペレットを熱間で処理することにより、雰囲気ガスには0.1容量%以上のアルカリ成分が含まれることとなる。
ペレット500から揮発したアルカリ成分は、耐火物600の表層において耐火物600に含まれる炭化珪素および/またはシャモットと反応する。炭化珪素および/またはシャモットに対してアルカリ成分(NaやK)が反応して、低融点の生成物が生成されるとともに、炉内の高温(750℃〜1300℃)によって一旦溶融した後、ガラス化される。すると、図5に示されるように、耐火物600の表面にガラス被膜610が形成される。
このように耐火物600の表層にガラス被膜610が形成されると、アルカリ成分がガラス被膜610で遮蔽されるため、耐火物600の内部には侵入しない。その結果、耐火物600とアルカリとの反応による体積膨張がないため、耐火物600の耐久性が向上し、耐火物600の寿命が長くなる。
〔1〕実施例1〜実施例3
次に、図2の実施例1、2、3で混合した耐火物を試験した結果について説明する。
本発明に係る実施例1、2、3と、従来例1、2、加えて、本発明の成分割合から外れる対比例1について実験した。
実験方法について説明する。
まず、実施例1〜3、従来例1、2および対比例1の成分割合および粒度割合の耐火物を図6に示されるようなレンガ形状に固めて各サンプルを作成する。サンプルのサイズは、114mm×65mm×230mmである。そして、回転炉床炉100の実炉においてペレット500の供給口から3/4周下流側に位置するマンホール部に各サンプルをセットする。
なお、回転炉としては、新日鉄君津製鉄所の実炉を使用した。
炉内の温度はおよそ1270℃であり、空気比は0.95程度である。ペレットに含まれるアルカリ成分は、KOで1質量%、NaOで1質量%であった。この状態で、3ヶ月間の曝露試験の後、サンプルを回収して、膨張量を測定した。測定する膨張量としては、サンプルの高さaと縦bとのそれぞれの膨張率の平均である。
試験の結果、従来例1では1.0容量%以上の膨張を示し、従来例2では0.5容量%の膨張を示した。これに対し、実施例1、2では膨張量は0.2容量%であり、実施例3では膨張量は0.1容量%に抑えられた。なお、対比例1では、サンプルに溶融部分が生じたために測定不能であった。
また、各実施例に係る耐火物のサンプルを切り出し、樹脂に埋め込み、研磨して断面の組織を観察することにより、ガラス化層の厚みを測定したところ、各実施例における耐火物表面のガラス化層の厚みは、実施例1では略300μm、実施例2では略300μm、実施例3では略200μmであった。
以上の実験から本発明の効果が確認された。
さらに、図7は、炭化珪素の含有量と残存膨張量との関係を示すグラフであり、図8は、シャモットの含有量に対する残存膨張量と液相率との関係を示す図である。なお、図8において、液相率は1300℃の状態における理論値である。図7、図8のデータをそれぞれ表1、表2に表す。
図7について説明すると、炭化珪素が2質量%未満になると、残存膨張量が大きくなることが示されている。これは、炭化珪素が少なすぎるために耐火物の表面に形成されるガラス被膜が不完全となり、耐火物の内部にアルカリ成分を含むガスが侵入し、耐火物とアルカリとの反応が進行してしまうからであると考えられる。
また、炭化珪素が10質量%を超えた場合も耐火物の残存膨張量が大きくなることが示されている。これは、炭化珪素が多すぎると、炭化珪素自体とアルカリ成分を含むガスとの反応によって生成される反応生成物の体積膨張の影響が大きくなるためであると考えられる。したがって、炭化珪素は、2質量%〜10質量%の含有量に調整することが好ましい。
次に、図8について説明すると、シャモットの含有量が多くなれば残存膨張量は小さくなっていくことが示されている。したがって、シャモットの含有量については、耐火物の表面に効果的なガラス被膜が形成される程度の3質量%以上であることが好ましいことが示される。その一方、シャモットの含有量が多くなると、耐火物の融点が下がり、溶ける割合が多くなって液相率が高くなっていくことが分かる。したがって、シャモットの含有量は耐火物の融点が下がり過ぎない程度にしなければならない。よって、シャモットは、3質量%〜10質量%の含有量に調整することが好ましい。
〔2〕実施例4〜実施例6
表3は、耐火物の表面に塗布する溶液の実施例4、5、6を示したものである。いずれも750℃以上で溶融を開始し、1200℃時の粘性が0.1Pa・s以上のものである。図10の回転炉床式還元炉100の内部に前述した不定形耐火物を内張りした後、コーティング材を塗布したときの効果について述べる。
まず、実施例1の材料に、実施例4〜実施例6のコーティング材をオフラインで塗布し、各実施例のコーティング材が塗布された耐火物のサンプルを切り出し、樹脂に埋め込み、研磨して断面の組織を観察することにより、塗布材の被膜厚みを測定したところ、塗布材の被膜厚みは、いずれも略100μmであった。
次に、前述の方法と同様に、回転炉床炉100実炉を用いて曝露試験を行った。何も塗布しない実施例1の材料そのものと、実施例1の材料に実施例5のコーティング材を、上記オフラインで塗布した条件と同じ条件で塗布したものとを準備する。サンプルのサイズは、114mm×65mm×230mmである。そして、回転炉床炉100の実炉においてペレット500の供給口から3/4周下流側に位置するマンホール部に各サンプルをセットする。
なお、回転炉としては、新日鉄君津製鉄所の実炉を使用した。
炉内の温度はおよそ1270℃であり、空気比は0.95程度である。この状態で、3ヶ月間の曝露試験の後、サンプルを回収して、膨張量を測定した。測定する膨張量としては、サンプルの高さaと縦bとのそれぞれの膨張率の平均である。
試験の結果、図9に示す様に、実施例5の塗布なしでは0.2容量%の膨張を示したが、塗布ありでは膨張量は0.05容量%まで抑制できた。
また、曝露試験後のサンプルをコアボーリングにより採取し、採取した耐火物の断面を観察したところ、コーティング材の一部が剥離しており、曝露中コーティング材は剥離してしまうが、塗布することで膨張量を一層抑制できることが確認できた。
次に、実炉に不定形耐火物を施工する場合、その設計の考え方を以下に示す。
まず最初に、予定している操業条件から使用温度を決める。次に、使用温度からJIS
R 2555に従い測定した熱間線膨張率より当該耐火物の理論膨張量が求まる。そして、下記式(1)の上限値と下限値の範囲内で、任意に設定膨張代を決定する。その後、確保するべき設定膨張量に見合う様に、スコアラインの数n、間隔Biと、用いる可縮性耐火材の可縮率に対応した区画の間隔Aが決まる。
具体的に式(1)を用いて設計するに際しての考え方を、回転炉床炉に適用するに際し、回転炉床炉に施工する場合を例に挙げて以下に示す。
回転炉床炉の施工に当って、ほぼ2m間隔でキャスタブルの壁を、実施例1の耐火物を用いて施工する場合を想定する。
予定している操業条件から、使用温度は1300℃とする。その温度での理論膨張率はJIS R 2555に従い0.8%と求まる。その結果、稼動面の理論膨張量は、16mmとなる。
従って、式(1)から、設定膨張代として、8mm以上32mm以下を確保することが好ましい。そこで、今回は32mmの設定膨張代を確保することを選択した場合を想定する。
スコアラインは1箇所のみとして、間隔を11mm確保することとする。その結果、残り21mmの膨張代を耐火物区画の間隔でとる必要がある。ここでは、可縮率70%のAl−SiOのセラミックファイバーを耐火物区画の間の空間に施工するため、区画の間隔Aは、
0.7×A=32mm−11mm=21mm
A=21mm÷0.7=30mm
となる。
この様にして、設定膨張量に見合う様に、耐火物の施工を設計することができる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
例えば、実施例では、主原料をムライトとしたが、主原料は、コランダム、ムライト、ボーキサイト、シャモット、ロー石、シリカから1種以上選択したものであればよい。
粒径の割合は特に限定されるものではなく、粗粒から微粒の粉体を所定の割合で混合すればよい。ただし、耐火物として混合したときに密になる割合であることが好ましい。
ただし、本発明の趣旨から、含有される炭化珪素およびシャモットの粒径が200μm以下であることが好ましいが、これに限定されず、例えば、適切にガラス化される程度であればよいので、例えば300μm以下としてもよい。
また、上記実施形態では回転炉床炉の耐火物として利用する場合を例にして説明したが、耐火物としてその他種々の用途に利用できる。
例えば、炉内温度が、400〜1500℃で還元雰囲気である高炉シャフト部に適用しても良い。
あるいは、ガラス溶解炉において、溶融ガラスと触れない溶解槽の天井部や蓄熱室壁などに適用しても良い。これらの部分は、ガラスからアルカリ蒸気が発生し、温度も750℃〜1400℃と高温であり、耐火物もアルカリ蒸気の侵食により損傷することが知られている部位である。
さらには、焼却炉において、温度が750℃〜1200℃でアルカリ蒸気が存在する部分へも適用しても良い。例えば、ストーカー式であれば燃焼段から後燃焼段にかけての壁部分、流動床式であればフリーボード部やガス冷却室上部などに適用可能である。
本発明は、アルカリ蒸気が発生するガス炉において、好適に利用できる。
設定膨張代を説明するための模式図 本発明にかかる耐火物の実施例と、従来例および対比例を示す図。 回転式炉床炉の炉を断面した図。 回転式炉床炉の炉を断面した図。 回転式炉床炉の炉を断面した図。 サンプルの形状を示す図。 炭化珪素の含有量と残存膨張量との関係を示す図。 シャモットの含有量に対する残存膨張量と液相率との関係を示す図。 残存膨張量への溶液塗布の影響を示す図 回転炉床式還元炉を示す図。
符号の説明
100…回転式炉床炉、200…炉、210…外壁、220…耐火物、300…炉床、4
00…バーナー、500…ペレット、600…耐火物、610…ガラス被膜、101…耐火物、102…可縮性耐火材、103…断熱れんが、104…鉄皮、105…スコアライン

Claims (6)

  1. 補助原料として、2質量%〜10質量%の炭化珪素および3質量%〜10質量%のシャモットの少なくともいずれか1つと、結合材と、残部がコランダム、ムライト、ボーキサイト、ロー石、シリカから選ばれた1種以上の主原料、との混合物からなる不定形耐火物を、アルカリ成分を含むガス雰囲気に750℃以上1400℃以下の熱間で曝される環境で用いることを特徴とする不定形耐火物の使用方法
  2. 請求項1に記載の不定形耐火物の使用方法において、
    前記結合材は、10質量%以下のアルミナセメントと、粒径10μm以下の超微粉アルミナが7質量%以下および粒径10μm以下の超微粉シリカが5質量%以下の少なくともいずれか1つ、との混合物であることを特徴とする不定形耐火物の使用方法
  3. 請求項1または請求項2に記載の不定形耐火物の使用方法において、
    前記2質量%〜10質量%の炭化珪素および前記3質量%〜10質量%のシャモットの少なくともいずれか1つは、粒径が200μm以下であることを特徴とする不定形耐火物の使用方法
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の不定形耐火物の使用方法において、
    前記アルカリ成分を含むガス雰囲気に熱間で曝される環境が窯炉の内部であり、前記不定形耐火物は炉内に内張りされて、表層にガラス化層が1mm以下の厚さで生じていることを特徴とする不定形耐火物の使用方法
  5. 請求項4に記載の不定形耐火物の使用方法において、
    前記不定形耐火物を内張りした後、
    耐火物表面に、750℃以上で溶融し、シリカを主成分として、アルカリ金属の酸化物、及びアルミナを含む溶液が塗布され、
    その後アルカリ成分を含むガス雰囲気に熱間で曝されることを特徴とする不定形耐火物の使用方法
  6. 請求項4又は請求項5に記載の不定形耐火物の使用方法において、前記不定形耐火物を内張りする際に、前記不定形耐火物が複数の区画で施工され、かつ、隣接する区画間に可縮性耐火材が施工され、
    それぞれの区画の設定膨張代が、使用温度での前記耐火物の理論膨張量(D)に対して下記式(1)の範囲内となることを特徴とする不定形耐火物の使用方法
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