JP4712209B2 - すべり支承用カバー - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物の下部にすべり支承体を設け、基礎上に設けられたすべり面により前記すべり支承体を介して前記建物をすべり可能に支持するすべり支承装置において、前記すべり面を覆うために使用されるすべり支承用カバーに関する。
【0002】
【従来の技術】
建築物においては、地震や振動による変位を吸収することにより建物に伝達される振動を軽減する免震支持装置の一つとして、すべり支承装置を用いることが行なわれている。このすべり支承装置は、建物の下部にすべり支承体を設け、基礎上に設けられたすべり面により前記すべり支承体を介して前記建物をすべり可能に支持するように構成されている。また、このすべり支承装置は、例えば積層ゴム支承装置など、水平方向に弾性変位可能な免震支持装置とともに使用されることがある。このような建築用のすべり支承装置においては、摩擦係数を一定に保つために、すべり面に水や埃が付着することを極力防ぐ必要があり、そのために、防水防塵用のカバー(すべり支承用カバー)を装着することが行なわれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のすべり支承用カバーにあっては、カバー材の内面(裏面)に吸水性や保水性がないため、カバーの接合部(切れ目)、カバーのすべり支承体との嵌合部(開口部)、あるいはカバーの周縁部などの隙間から侵入した水がすべり面上に溜まった場合、カバー内面とすべり面との間の空気層による通気性のみでは溜まった水分を十分に蒸発させることができず、すべり支承体とすべり面との間の摩擦係数を一定に保つことができなくなるという解決すべき技術的課題があった。
【0004】
本発明はこのような従来の技術的課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、すべり支承体をすべり自在に支持するすべり面に水が侵入した場合に、侵入した水を迅速に外周端面などへ移動させるとともに該外周端面などから蒸発させることにより、すべり支承体とすべり面との間の摩擦係数を常に一定に保つことができ、また、地震発生などによるすべり支承体とすべり面との相対移動を利用してカバー材によって該すべり面上の水や汚れ等を効果的に拭き取ることができるすべり支承用カバーを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明(請求項1)は、上記目的を達成するため、建物の下部にすべり支承体を設け、基礎上に固定されたすべり面により前記すべり支承体を介して前記建物をすべり可能に支持するすべり支承装置において、前記すべり面への水やほこりの侵入を防ぐために該すべり面を覆うために使用されるすべり支承用カバーであって、前記すべり面を覆った状態での外側面を形成する防水シートと、前記すべり面を覆った状態での内側面を形成するように前記防水シートに接着剤等で一体に接合された不織布から成る保水層とを有し、前記保水層の外周端面は親水性塗料の塗布層を介して外部へ開放され、前記すべり支承体に嵌合されるとともに、前記すべり面上の水を前記保水層により吸水可能に該保水層を該すべり面上に載置した状態で使用され、前記すべり面上の水を前記保水層で吸水するとともに、この吸水した水を前記親水性塗料に浸透させ、該親水性塗料に浸透した水を外部へ自然蒸発させることにより、すべり面上に侵入する水を前記保水層及び前記親水性塗料の層を通して外部へ排出することを特徴とする。
【0006】
他の本発明(請求項7)は、上記目的を達成するため、建物の下部にすべり支承体を設け、基礎上に固定されたすべり面により前記すべり支承体を介して前記建物をすべり可能に支持するすべり支承装置において、前記すべり面への水やほこりの侵入を防ぐために該すべり面を覆うために使用されるすべり支承用カバーであって、前記すべり面を覆った状態の不織布から成る保水層で形成され、前記保水層の外側面及び外周端面は親水性塗料の塗布層を介して外部へ開放され、前記すべり支承体に嵌合されるとともに、前記すべり面上の水を前記保水層により吸水可能に該保水層を該すべり面上に載置した状態で使用され、前記すべり面上の水を前記保水層で吸水するとともに、この吸水した水を前記親水性塗料に浸透させ、該親水性塗料に浸透した水を外部へ自然蒸発させることにより、すべり面上に侵入する水を前記保水層及び前記親水性塗料の層を通して外部へ排出することを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明を適用したすべり支承用カバーを有するすべり支承装置を使用した建物を模式的に示す立面図であり、図2は図1中のすべり支承装置を示す縦断面図である。図1において、建物10は床下に設置された複数のすべり支承装置20及び複数の積層ゴム支承装置30によって免震支持されている。図示の例では、床下は建物10の床面11と地中に構築された基礎12の上面との間に形成されており、各すべり支承装置20は建物の柱13の下端部と前記基礎12との間に構成されている。なお、符号14は地面を例示する。
【0008】
前記積層ゴム支承装置30は円柱状の積層ゴム部31の上下端面にフランジ部材32、33を一体的に固着接合して構成されており、前記積層ゴム部31はゴム層と金属や硬質プラスチック板などの補強板とを交互に一体的に積層した構造を有する。図示の例では、前記積層ゴム支承装置30は、上下のフランジ部材32、33を建物10の柱13及び基礎12に対してボルト・ナット等で締結することにより、建物10を免震支持する状態で取り付けられている。このような積層ゴム支承装置30は、縦方向には高いばね定数を有し、横方向(水平方向)には低いばね定数を有しており、通常、その縦横ばね定数比は800以上という大きな値となる。このような積層ゴム支承装置は、例えば、特開昭60−261845号公報、特開昭61−14340号公報、特開昭64−48950号公報などに開示されている。
【0009】
図1及び図2において、各すべり支承装置20は、建物10の柱13の下端部に設けられたすべり支承体21を基礎12上に設けられたすべり面22上に水平方向にすべり(摺動)可能に支持する構成を有している。図示の例では、基礎12の上面に平板状のすべり板23を固定し、該すべり板23の平滑な上面を低摩擦面に仕上げることにより前記すべり面22が形成されている。このすべり面22を形成する前記すべり板23の材質としては、鋼又はステンレス等の金属や焼結合金やPTFE樹脂などが使用され、平滑性に優れ、かつ耐磨耗性もある低摩擦係数の材料が好ましい。また、前記すべり板23としては、普通鋼等の平板状のバックプレートの上面にステンレス等のスライドプレートを接合し、該スライドプレートの表面を前記すべり面22として使用するように構成してもよい。
【0010】
一方、前記すべり支承体21側のすべり面(端面)としても、前記すべり板23と同様の材質であってすべり面22との組合せにより適度な摩擦係数を得られるものが使用される。さらに、このすべり支承体21としては、前記積層ゴム支承装置30の積層ゴム部31と同様の構成の弾性支承体を使用し、その下端面にテフロン板等から成るスライド部材を接合した構成の弾性すべり支承体を使用してもよい。
【0011】
前記すべり支承装置20においては、すべり特性(免震特性)を一定に保つためには、すべり面22に水分やほこりが付着して摩擦係数が変化することを極力防止することが要請され、その目的のため、図2に示すように、すべり面22を覆うためのすべり支承用カバー24が装着されている。図3は本発明を適用したすべり支承用カバーを有するすべり支承装置20の一実施例の組み付け状態を一部破断して示す模式的斜視図であり、図4は図3中のすべり支承用カバー24の組み付け前の状態を示す模式的分解斜視図であり、図5は図4中の線5−5に沿って断面することによりすべり支承用カバー24の構造を示す模式的縦断面図である。
【0012】
図2〜図4において、前記すべり支承用カバー24は、前記すべり面22上への水やほこりの侵入を防ぐために、該すべり面22の全面を覆うようなカバー部材で形成されている。図示のすべり支承装置では、建物10側のすべり支承体21は円形断面の円筒状部材で形成されているが、基礎12側のすべり面22を形成する前記すべり板23としては八角形状の平板部材が使用されており、該すべり板23を覆うすべり支承用カバー24としては、前記すべり面22と略同じ面積もしくはそれ以上の面積(十分に広い面積を含む)を有する八角形状のカバー部材(略相似形のカバー部材)が使用されている。
【0013】
また、前記すべり支承用カバー24は、図3及び図4に示すように中央部を通る切れ目27により2分割され、現場で組み付けた後で切れ目を密着させた状態で布テープ(クロステープ)28で結合することで一体化するように構成され、施工時の組付け作業性の向上が図られている。なお、図示のすべり支承用カバー24では、前記切れ目27に沿う部位に接合部補強用の塩ビシート29がブチル系接着剤の接着等で固着されている。さらに、前記すべり支承用カバー24の略中央部には、組み立てた状態(図2、図3)で建物10側の前記すべり支承体21の外径面(周面)と防水防塵性を確保できるような状態で密着嵌合する開口25が形成されている。
【0014】
図2〜図4の実施例では、前記すべり支承用カバー24は平板状をしており、建物10側のすべり支承体21と嵌合させて前記すべり面22上に載置した状態で使用される。つまり、すべり支承用カバー24の裏面(内面、下面)はすべり面22上に載せられ周縁部では該すべり面22と面一となるかもしくは該すべり面からはみ出して基礎12の上面に当接している。図2〜図5において、前記すべり面22への水やほこりの侵入を防ぐために該すべり面を覆うために使用されるすべり支承用カバー24は、前記すべり面22を覆った状態(図2及び図3の状態)での外側面(図示の例では上側面)を形成する防水シート41と、前記すべり面22を覆った状態での内面(裏面、図示の例では下面)を形成する不織布から成る保水層42と一体に接合した構成を有している。この防水シート41と保水層42との接合は、例えば熱融着用の接着剤で一体化することにより行われる。そこで、本実施例に係るすべり支承用カバー24においては、該カバーの上側面及び周縁端面(外周端面)の全域に親水性塗料の塗布層が形成されている。
【0015】
前記親水性塗料としては、分子の中の基(原子団)として、水分子との間に結合を作りやすい水酸基OH、カルボキシル基COOH、アミノ基NH2 、ケトン基CO、スルホ基SO3 Hなどの親水性基を含む塗料が使用される。
また、前記防水シート41としては、防水性に優れるとともに、例えば防塵性にも優れた難燃性の防炎シートを使用することが望ましい。この種の防水シートの具体例としては、例えばカンボウプラス株式会社により製造販売されているカラーターポリンの品番APC400F(厚さ0.35mm)を挙げることができる。
【0016】
前記保水層42としては、不織布から成る吸水性及び保水性に優れた層が使用される。この種の保水層の具体例としては、例えば株式会社ブリヂストンにより製造販売されているフィブライト(同社の登録商標)を挙げることができる。このフィブライトは、吸音材としても使用されるものであり、ポリエステル短繊維を特殊繊維バインダー(ポリエステル)により繊維間を結合したポリエステル繊維100%の繊維成形体もしくは不織布であり、吸音性、吸水性、保水性に優れている他、断熱性及び通気性にも優れた難燃性のスポンジ状(綿状)材料であり、構造的には不織布でもある。さらに、上記フィブライトは、撥水処理が容易で、高耐久性を有し、環境性にも優れた材料である。
【0017】
そして、前記すべり支承用カバー24では、通常、厚みが約0.2mm〜約1.5mm程度の防水シート41の裏面に、厚みが約25mm〜約100mm程度の保水層42を熱融着用の接着剤で固着した構造が採用され、その上面及び外周端面に厚みが約0.3mm〜約5.0mm程度の親水性塗料の塗膜(塗料層)45が形成される。その場合、通気性を有する保水層42は比較的厚さが大きい(例えば50mm程度)層で形成されるので、その外周端面43は比較的広い面にすることができ、この外周端面43は前記親水性塗料45を介して外部へ開放されている。そこで、保水層42内に吸水され保水された水は、この外周端面43を通して親水性塗料45内へ浸透し、そして、この親水性塗料45に浸透した水は該親水性塗料45の外表面から外部(外気)へ自然蒸発していく。こうして、すべり面22上に侵入する水は前記保水層42及び前記親水性塗料(親水性塗装)45を通して外部へ順次排出されていく。つまり、すべり支承用カバー24の外周端面(外縁端面)は、吸水した水を自然蒸発によって外部へ放散(排出)する通気面として機能する。従って、すべり支承用カバー24の隙間等から侵入してすべり面22上に溜まる水は、通気性を有する前記保水層42に吸水され保水された後、前記外周端面及び前記親水性塗料45を通して自然蒸発により逐次外部へ排出されることになる。
【0018】
以上説明したすべり支承用カバー24の構成により、すべり面22を覆った状態での外側面を形成する防水シート41とすべり面22を覆った状態での内側面を形成する不織布から成る保水層42とを接着剤等で接合して一体化するとともに、該保水層の外周端面43に親水性塗料の塗布層45を形成し、すべり面22上の水を保水層42で吸水するとともに、この吸水した水を親水性塗料45に浸透させ、該親水性塗料45に浸透した水を外部へ自然蒸発させることにより、すべり面22上に侵入する水を保水層42及び親水性塗料の層45を通して外部へ排出するようにしたすべり支承用カバーが得られる。
【0019】
そして、以上説明したすべり支承用カバー24によれば、すべり面22上の水を保水層42で吸水するとともに、この吸水した水を親水性塗料45に浸透させ、親水性塗料45に浸透した水を外部へ自然蒸発させることで、すべり面22上に侵入する水を外部へ排出するようにしたので、すべり支承体21をすべり自在に支持するすべり面22に水が侵入した場合に、侵入した水をカバーの外周端面部へ移動させるとともに該外周端面部から迅速に蒸発させて外部へ排出することができ、それによって、不織布から成る保水層42が多量の水を含んでビチャビチャ(又はグシャグシャ)になることを防止することができ、吸水能低下を防止するとともに、すべり支承体21とすべり面22との間の摩擦係数を常に一定に保つことができる。
【0020】
また、地震発生時に建物10が移動すると、すべり支承体21とともにすべり支承用カバー24も移動するので、該すべり支承用カバー24の吸水性を有する裏面(保水層)42によってすべり面22上の水や汚れ等を拭き取ることができるという効果(いわゆる雑巾掛けの効果)も得られる。さらに、前記すべり支承用カバー(シート)24は、すべり支承体21と嵌合する前記開口25から周縁に至る切れ目27によって分割構造にされているので、すべり支承体21がすべり面22に当接したそのままの状態ですべり支承用カバー24を簡単かつ容易に取り付け取外しすることができ、保守点検時の作業性及び取扱い性を向上させることができる。つまり、図1及び図2の状態でも、すべり支承用カバー24をすべり支承装置に簡単に取り付けたり取り外したりすることができる。
【0021】
図6は本発明を適用したすべり支承用カバーの第2実施例の構造を示す図5と同じところの模式的縦断面図である。前述の第1実施例では、図5に示すように、防水カバー41の裏面に保水層42を接合した構造のすべり支承用カバー24の上側表面及び外周端面に親水性塗料45を塗装したが、防水カバー41を有するすべり支承用カバーの場合には、図6に第2実施例として示すように、該すべり支承用カバー24の外周端面もしくは前記保水層42の外周端面の領域に親水性塗料45を塗装層を設けるだけでもよく、それによっても前述の実施例の場合と実質的に同じ作用効果を奏することができる。
【0022】
図7は本発明を適用したすべり支承用カバーの第3実施例の構造を示す図5と同じところの模式的縦断面図である。図7の第3実施例では、前述の第1及び第2実施例における防水カバー41が省略され、不織布から成る保水層42のみで構成されたすべり支承用カバー24の上側表面及び外周端面に親水性塗料45の塗装層が形成されている。このような図7の構成によれば、保水層42で吸水された水を上側表面及び外周端面に形成された親水性塗料の層45へより迅速に移動させるとともに広い表面から自然蒸発させることができる。従って、図7の第3実施例によれば、一層効率よく、前述の第1及び第2の実施例の場合と実質的に同じ作用効果を奏することができる。なお、前述の実施例では、すべり支承体21を円形断面の円筒体で形成するとともに、すべり面22(すべり板23)及びすべり支承用カバー24の平面形状を八角形状にしたが、これらの形状は円形、長円形、各種多角形など任意の形状に選定できるものである。
【0023】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなごとく、本発明(請求項1)によれば、建物の下部にすべり支承体を設け、基礎上に固定されたすべり面により前記すべり支承体を介して前記建物をすべり可能に支持するすべり支承装置において、前記すべり面への水やほこりの侵入を防ぐために該すべり面を覆うために使用されるすべり支承用カバーであって、前記すべり面を覆った状態での外側面を形成する防水シートと、前記すべり面を覆った状態での内側面を形成するように前記防水シートに接着剤等で一体に接合された不織布から成る保水層とを有し、前記保水層の外周端面は親水性塗料の塗布層を介して外部へ開放され、前記すべり支承体に嵌合されるとともに、前記すべり面上の水を前記保水層により吸水可能に該保水層を該すべり面上に載置した状態で使用され、前記すべり面上の水を前記保水層で吸水するとともに、この吸水した水を前記親水性塗料に浸透させ、該親水性塗料に浸透した水を外部へ自然蒸発させることにより、すべり面上に侵入する水を前記保水層及び前記親水性塗料の層を通して外部へ排出する構成としたので、
すべり面上の水を保水層で吸水し、この吸水した水を親水性塗料に浸透させ、親水性塗料に浸透した水を外部へ自然蒸発させることで、すべり面に侵入した水をカバーの外周端面部へ迅速に移動させるとともに該外周端面部から迅速に蒸発させて外部へ排出することができ、それによって、不織布から成る保水層が多量の水を含んでビチャビチャになることを防止して吸水能低下を防止するとともに、すべり支承体とすべり面との間の摩擦係数を常に一定に保つことができ、加えて、地震発生時などにおけるすべり支承用カバーとすべり面との相対移動を利用してカバー材により該すべり面上の水や汚れ等を拭き取ることができるすべり支承用カバーが提供される。
【0024】
請求項2〜6の発明によれば、上記請求項1の構成に加えて、前記防水シートの厚みは約0.2mm〜約1.5mm程度であり、前記保水層の厚みは約25mm〜約100mm程度であり、前記親水性塗料の塗布厚さは約0.3mm〜約5.0mm程度である構成、前記すべり支承体の周囲に密着嵌合する開口と該開口から周縁に至る切れ目とが形成されている構成、前記シートの前記開口から周縁に至る切れ目を略対向する2箇所に形成することにより、該シートを2分割できるようにする構成、前記保水層は通気性及び断熱性に優れた難燃性部材で形成されている構成、あるいは、前記防水シートの表面にも前記親水性塗料の塗布層を形成する構成としたので、上記効果に加えて、水の排出機能の更なる向上、施工性の向上、耐久性の向上などの効果を達成することが可能となる。
【0025】
請求項7の発明によれば、建物の下部にすべり支承体を設け、基礎上に固定されたすべり面により前記すべり支承体を介して前記建物をすべり可能に支持するすべり支承装置において、前記すべり面への水やほこりの侵入を防ぐために該すべり面を覆うために使用されるすべり支承用カバーであって、前記すべり面を覆った状態の不織布から成る保水層で形成され、前記保水層の外側面及び外周端面は親水性塗料の塗布層を介して外部へ開放され、前記すべり支承体に嵌合されるとともに、前記すべり面上の水を前記保水層により吸水可能に該保水層を該すべり面上に載置した状態で使用され、前記すべり面上の水を前記保水層で吸水するとともに、この吸水した水を前記親水性塗料に浸透させ、該親水性塗料に浸透した水を外部へ自然蒸発させることにより、すべり面上に侵入する水を前記保水層及び前記親水性塗料の層を通して外部へ排出する構成としたので、
すべり面上の水を保水層で吸水し、この吸水した水を親水性塗料に浸透させ、親水性塗料に浸透した水を外部へ自然蒸発させることで、すべり面に侵入した水をカバーの外面部へ迅速に移動させるとともに該外面部から迅速に蒸発させて外部へ排出することができ、それによって、不織布から成る保水層が多量の水を含んでビチャビチャになることを防止して吸水能低下を防止するとともに、すべり支承体とすべり面との間の摩擦係数を常に一定に保つことができ、加えて、地震発生時などにおけるすべり支承用カバーとすべり面との相対移動を利用してカバー材により該すべり面上の水や汚れ等を拭き取ることができるすべり支承用カバーが提供される。
【0026】
請求項8〜11の発明によれば、上記請求項7の構成に加えて、前記保水層の厚みは約25mm〜約100mm程度であり、前記親水性塗料の塗布厚さは約0.3mm〜約5.0mm程度である構成、前記すべり支承体の周囲に密着嵌合する開口と該開口から周縁に至る切れ目とが形成されている構成、前記シートの前記開口から周縁に至る切れ目を略対向する2箇所に形成することにより、該シートを2分割できるようにする構成、あるいは、前記保水層は通気性及び断熱性に優れた難燃性部材で形成されている構成としたので、上記効果に加えて、水の排出機能の更なる向上、施工性の向上、耐久性の向上などの効果を達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したすべり支承用カバーを有するすべり支承装置を使用した建物を模式的に示す立面図である。
【図2】図1中のすべり支承装置を示す縦断面図である。
【図3】本発明を適用したすべり支承用カバーを有するすべり支承装置の組み付け状態を一部破断して示す模式的斜視図である。
【図4】図3中のすべり支承用カバーの組み付け前の状態を示す模式的分解斜視図である。
【図5】図4中の線5−5に沿って断面することにより本発明を適用したすべり支承用カバーの第1実施例の構造を示す模式的縦断面図である。
【図6】図4中の線5−5に沿って断面することにより本発明を適用したすべり支承用カバーの第2実施例の構造を示す模式的縦断面図である。
【図7】図4中の線5−5に沿って断面することにより本発明を適用したすべり支承用カバーの第3実施例の構造を示す模式的縦断面図である。
【符号の説明】
10 建物
11 床面
12 基礎
13 建物の柱
14 地面
20 すべり支承装置
21 すべり支承体
22 すべり面
23 すべり板
24 すべり支承用カバー
25 開口
27 切れ目
28 布テープ(クロステープ)
29 塩ビシート(接合部補強用)
30 積層ゴム支承装置
41 防水シート
42 保水層
43 保水層の外周端面
45 親水性塗料(親水性塗装の層)

Claims (11)

  1. 建物の下部にすべり支承体を設け、基礎上に固定されたすべり面により前記すべり支承体を介して前記建物をすべり可能に支持するすべり支承装置において、前記すべり面への水やほこりの侵入を防ぐために該すべり面を覆うために使用されるすべり支承用カバーであって、
    前記すべり面を覆った状態での外側面を形成する防水シートと、前記すべり面を覆った状態での内側面を形成するように前記防水シートに接着剤等で一体に接合された不織布から成る保水層とを有し、
    前記保水層の外周端面は親水性塗料の塗布層を介して外部へ開放され、
    前記すべり支承体に嵌合されるとともに、前記すべり面上の水を前記保水層により吸水可能に該保水層を該すべり面上に載置した状態で使用され、
    前記すべり面上の水を前記保水層で吸水するとともに、この吸水した水を前記親水性塗料に浸透させ、該親水性塗料に浸透した水を外部へ自然蒸発させることにより、すべり面上に侵入する水を前記保水層及び前記親水性塗料の層を通して外部へ排出することを特徴とするすべり支承用カバー。
  2. 前記防水シートの厚みは約0.2mm〜約1.5mm程度であり、前記保水層の厚みは約25mm〜約100mm程度であり、前記親水性塗料の塗布厚さは約0.3mm〜約5.0mm程度であることを特徴とする請求項1に記載のすべり支承用カバー。
  3. 前記すべり支承体の周囲に密着嵌合する開口と該開口から周縁に至る切れ目とが形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のすべり支承用カバー。
  4. 前記シートの前記開口から周縁に至る切れ目を略対向する2箇所に形成することにより、該シートを2分割できるようにすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のすべり支承用カバー。
  5. 前記保水層は通気性及び断熱性に優れた難燃性部材で形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のすべり支承用カバー。
  6. 前記防水シートの表面にも前記親水性塗料の塗布層を形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のすべり支承用カバー。
  7. 建物の下部にすべり支承体を設け、基礎上に固定されたすべり面により前記すべり支承体を介して前記建物をすべり可能に支持するすべり支承装置において、前記すべり面への水やほこりの侵入を防ぐために該すべり面を覆うために使用されるすべり支承用カバーであって、
    前記すべり面を覆った状態の不織布から成る保水層で形成され、
    前記保水層の外側面及び外周端面は親水性塗料の塗布層を介して外部へ開放され、
    前記すべり支承体に嵌合されるとともに、前記すべり面上の水を前記保水層により吸水可能に該保水層を該すべり面上に載置した状態で使用され、
    前記すべり面上の水を前記保水層で吸水するとともに、この吸水した水を前記親水性塗料に浸透させ、該親水性塗料に浸透した水を外部へ自然蒸発させることにより、すべり面上に侵入する水を前記保水層及び前記親水性塗料の層を通して外部へ排出することを特徴とするすべり支承用カバー。
  8. 前記保水層の厚みは約25mm〜約100mm程度であり、前記親水性塗料の塗布厚さは約0.3mm〜約5.0mm程度であることを特徴とする請求項7に記載のすべり支承用カバー。
  9. 前記すべり支承体の周囲に密着嵌合する開口と該開口から周縁に至る切れ目とが形成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載のすべり支承用カバー。
  10. 前記シートの前記開口から周縁に至る切れ目を略対向する2箇所に形成することにより、該シートを2分割できるようにすることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載のすべり支承用カバー。
  11. 前記保水層は通気性及び断熱性に優れた難燃性部材で形成されていることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載のすべり支承用カバー。
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