JP4711478B2 - 味がマスクされた薬物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、味がマスクされた薬物に関する。
【0002】
【従来の技術】
医薬品製剤は服用時に感じる薬物の味の不快感を低減するために、甘味料や香料を加える方法、水溶性高分子のフィルムコーティングによって薬物の味をマスクする方法、薬物と賦形剤で核粒子を作り、この核粒子にフィルムコーティングして味をマスクする方法等が知られている。特許出願公表平1−502589号公報には、エチルセルロースとアクリルポリマーを組み合わせて、薬物に対して20〜40重量%コーティングすることで味をマスクする方法が記載されている。
【0003】
しかし、従来の方法は、味のマスクが不十分であること、薬物に十分な味のマスクを施すためには、多くのコーティング量を必要とし、コーティング時に粒子の合一の発生が多く、コーティング性が劣ること、味をマスクするためにコーティング量を増やすと、味はマスクされても薬物が速やかに溶出しなくなること、賦形剤を配合することで薬物含有量が低くなること等の問題を有していた。
なお、特開平3−275618号公報には、セルロース系ラテックス、可塑剤および細孔形成剤で芯錠剤に200〜400μmの厚さにコーティングし、細孔形成剤が溶解することによって形成する細孔を通じて、薬物を溶出させる方法が開示されている。しかし、この公報には、薬物のマスキングについての記載はない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、薬物の表面に少ない被覆量で被覆することで味のマスクを行い、ある時間経過後は薬物が溶出する味がマスクされた薬物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するため、膜の組成を鋭意検討した結果、本発明に到達したものである。すなわち、本発明は、平均粒子径が1000μm以下である顆粒状、細粒状、粉末状、結晶状薬物の表面が、エチルセルロ−スを主成分とする直径1μm以下の球形固体粒子と可塑剤と溶出制御剤を含む水性被覆液で薬物に対して3−30重量%被覆された味がマスクされた薬物被覆物であって、
上記可塑剤の配合量が球形固体粒子の重量1.0に対して0.05−0.50であり、
上記溶出制御剤がセルロース誘導体、デンプン誘導体、単糖類、オリゴ糖類、糖アルコール類、多価アルコール類、多糖類、塩類、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルピロリドン、尿素、ニコチン酸アミドから選ばれる1種又は2種以上であり、その配合量が球形固体粒子の重量1.0に対して0.01−1.0であり、
処理前溶出率が20%以下、処理後溶出率が20%以下で、且つ、30分後の溶出率が30%以上であることを特徴とする味がマスクされた薬物被覆物を提供する。
【0006】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で使用される薬物とは、人および動物の疾病の治療、予防、診断に使用されるものである。これらの中で、味を有する場合に、本発明は大きな効果を上げることができる。
例としては、抗癲癇剤(アセチルフェネトライド、プリミドン等)、解熱鎮痛消炎剤(アセトアミノフェン、フェニルアセチルグリシンメチルアミド、ジクロフェナクナトリウム、オキシフェンブタゾン、スルピリン、イブプロフェン、ケトプロフェン、塩酸チノリジン、塩酸ベンジダミン、塩酸チアラミド、ピロキシカム等)、鎮暈剤(ジメンヒドリナート、塩酸ジフェニドール等)、精神神経用剤(塩酸クロルプロマジン、マレイン酸レボメプロマジン、マレイン酸ペラジン、ペルフェナジン、ジアゼパム、オキサゼパム等)、骨格筋弛緩剤(クロルゾキサゾン、カルバミン酸クロルフェネシン、クロルメザノン、塩酸エペリゾン等)、自律神経用剤(塩化ベタネコール、臭化ネオスチグミン、臭化ピリドスチグミン等)、鎮痙剤(臭化ブトロピウム、臭化ブチルスポコラミン、臭化プロパンテリン、塩酸パパベリン等)、抗パーキンソン剤(塩酸トリヘキシフェニジル等)、抗ヒスタミン剤(塩酸ジフェンヒドラミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、プロメタジン、メキタジン等)、強心剤(アミノフィリン、カフェイン、dl−塩酸イソプロテレノール、塩酸エチレフリン等)、不整脈用剤(ジソビラミド等)、利尿剤(塩化カリウム、ヒドロクロロチアジド、アセタゾラミド等)、血圧降下剤(臭化ヘキサメトニウム、塩酸ヒドララジン、塩酸プロプラノール、カプトプリル、メチルドパ等)、血管拡張剤(塩酸エタフェノン、塩酸カルボクロメン、四硝酸ペンタエリスリトール、ジピリダモール、クエン酸ニカメタート等)、動脈硬化用剤(レシチン等)、循環器官用剤(塩酸ニカルジピン、塩酸メクロフェノキサート、ピリジノールカルバメート、ホパンテン酸カルシウム、ペントキシフィリン等)、呼吸促進剤(塩酸ジメフリン等)、鎮咳去痰剤(臭化水素酸デキストロメトルファン、ノスカピン、塩酸L−メチルシステイン、テオフィリン、塩酸エフェドリン等)、利胆剤(デヒドロコール酸等)、消化器官用剤(メトクロプラミド、ドンペリドン等)、ビタミン剤(フルスルチアミン、オクトチアミン、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸、アスコルビン酸等)、抗生物質(エリスロマイシン、キタサマイシン、ジョサマイシン、テトラサイクリン等)、化学療法剤(イソニアジド、エチオナミド、ニトロフラントイン、エノキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン等)等が挙げられる。本発明では、二種以上の薬物を同時に被覆してもよい。
【0007】
本発明で使用される薬物は、顆粒状、細粒状、粉末状、結晶状である。粒度分布は特に規定しないが、小さすぎると被覆が困難であるばかりでなく、味をマスクするために多くの被覆量を必要とする。また、あまり大きすぎると、被覆時に操作性が低下し、また、服用し難く、味がマスクされた薬物を錠剤にする場合に使用し難い。好ましい薬物の平均粒子径は、1000μm以下であり、より好ましくは50〜710μm、さらに好ましくは100〜500μmである。
【0008】
被覆に供される薬物は、通常は薬物そのものを使用するが、薬物の粒子径が小さい、棒状や複雑な表面形状(凹凸等)を有する等により、そのまま被覆に供すると被覆が困難な場合は、公知の方法で造粒し、薬物の粒度を調整したものも使用できる。造粒方法の例としては、流動層造粒、転動流動造粒、撹拌造粒、押し出し造粒、球形晶析造粒、噴霧乾燥造粒等が挙げられる。造粒する場合は、薬物含有量をあまり低下させない程度に結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等)等も使用できる。その添加量の目安は、薬物に対して10重量%程度以下である。
【0009】
本発明で使用されるエチルセルロースを主成分とする実質的に直径1μm以下の球形固体粒子のエチルセルロースとは、The United StatesPharmacopia23(米国)のGuide to General Chapters/General Test and Assays/<431>Methoxy Determinationの方法(但し、0.1Nチオ硫酸ナトリウム液1mLはエトキシル基0.7510mgに相当)によって測定されるエトキシル基(−0C2 H5 )の含有率が41.0〜51.0重量%のものである。
【0010】
本発明において、エチルセルロースを主成分とする球形固体粒子が、実質的に直径1μmを越える場合は、被覆性能が劣るため、味をマスクするために多くの被覆量を必要とするので好ましくない。
ここで、「実質的に」直径1μm以下の球形固体粒子を含むという意味は、直径1μmを越える球形固体粒子(但し、最大で5μm程度)が被覆剤としての成膜性や分散安定性を阻害しない程度の量の存在を認めているということであり、その量は0.5体積%以下である。
【0011】
エチルセルロースを主成分とする実質的に直径1μm以下の球形固体粒子は、エチルセルロース以外の副成分と共に、通常水分散体として供される。エチルセルロース以外の副成分としては、球形固体粒子に内包するか、あるいは複合体化した状態を呈するもので、球形固体粒子の水分散体を製造するために必要な助剤、あるいは球形固体粒子の水中での分散安定性を維持するのに必要な助剤、あるいは細菌汚染を防止するための助剤などである。
例としては、界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム等)、乳化助剤(脂肪族アルコール類、脂肪酸および脂肪酸の塩類、ワックス類等)、消泡剤、静菌剤、殺菌剤、可塑剤等を挙げることができる。
【0012】
界面活性剤および乳化助剤等の配合量は、エチルセルロースに対して30重量%以下、好ましくは20重量%以下である。
エチルセルロースを主成分とする実質的に直径1μm以下の球形固体粒子の水分散体は種々の方法で製造される。
例えば、Pharmaceutical Technology,Vol.11,No.3,p56−68(1987)に示されているようなエマルジョン−溶媒蒸発法、あるいは転相法などで製造される。
【0013】
上記のようなエチルセルロースを主成分とする実質的に直径1μm以下の球形固体粒子の水分散体は、これ自身で使用する場合は、エチルセルロースを主成分とする実質的に直径1μm以下の球形固体粒子の最低成膜温度が高すぎて実用に供しない。そこで、可塑剤を配合し、エチルセルロースを主成分とする実質的に直径1μm以下の球形固体粒子の最低成膜温度を下げる必要がある。
本発明で使用される可塑剤の例としては、アセチル化モノグリセリド、クエン酸トリエチル、トリアセチン、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジメチル、中鎖脂肪酸トリグリセリド、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、フタル酸ジエチル、アジピン酸ジブチル、オレイン酸、オレイノール等を挙げることができる。
【0014】
可塑剤の配合量は、使用する薬物の溶解度や味の程度や配合する溶出制御剤の種類と配合量、最低成膜温度、被膜の熱軟化による融着性(被覆操作に影響)などを考慮して決められるが、エチルセルロースを主成分とする実質的に直径1μm以下の球形固体粒子の重量1.0に対して0.05〜0.50が好ましく、より好ましくは0.1〜0.40、さらに好ましくは0.15〜0.35である。配合量が0.05未満であると、エチルセルロースを主成分とする実質的に直径1μm以下の球形固体粒子の可塑化が不足し、被覆が不十分になったり、味をマスクするための被覆量が多くなりすぎて好ましくない。使用する可塑剤の種類にもよるが、配合量が0.50を越えると、被覆操作に悪影響を与えるため好ましくない。
【0015】
また、本発明においては、薬物の溶出速度を調節する目的で水性被覆液に溶出制御剤を配合する。その配合量は、エチルセルロースを主成分とする実質的に直径1μm以下の球形固体粒子の重量1.0に対して0.01〜1.0が好ましい。溶出制御剤の配合量が0.01未満の場合は、薬物の味がマスクされるものの薬物が溶出し難くなるため好ましくない。また、1.0を越える場合は、使用する薬物の溶解度や味の程度や配合する可塑剤の種類と配合量等によっては、溶出が促進され過ぎるため、味のマスクが不十分となり好ましくない。エチルセルロースを主成分とする実質的に直径1μm以下の球形固体粒子の重量1.0に対して、上記よりもより好ましくは0.05〜0.7、さらに好ましくは0.1〜0.55である。
【0016】
溶出制御剤は、主に水溶性物質が選ばれる。その例としては、セルロース誘導体(メチルセルロースやヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、デンプン誘導体(デキストリン、プルラン等)、単糖類(グルコース等)、オリゴ糖類(トレハロース、ラクトース、スクロース等)、糖アルコール類(ソルビトール、マンニトール、エリスリトール等)、多価アルコール類(マクロゴール、ポリビニルアルコール等)、多糖類(アラビアゴム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム等)、塩類(塩化カルシウム、クエン酸ナトリウム等)、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルピロリドン、尿素、ニコチン酸アミド等である。また、非水溶性物質であっても、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、メタアクリル酸コポリマー等のエチルセルロースを主成分とする実質的に直径1μm以下の球形固体粒子の成膜状態を変化させる物質も含まれる。本発明においては、これらの一種もしくは二種以上を使用する。
【0017】
薬物に上記の組成からなる水性被覆液で被覆する方法としては、流動層型コーティング装置(フロイント産業(株)製「フローコーター」等)、ワースターカラム付き流動層型コーティング装置(グラット社製GPCGシリーズ等)、遠心流動型コーティング装置(フロイント産業(株)製「CF−グラニュレーター」等)、転動流動型コーティング装置((株)パウレック製「マルチプレックス」、不二パウダル(株)製「ニューマルメライザー」、フロイント産業(株)製「スパイラフロー」、同「ローターコンテナー」付き「フローコーター」等)等の汎用の方法を使用することができる。
【0018】
少ない被覆量で味をマスクするためには、ワースターカラム付き流動層型コーティング装置や転動流動型コーティング装置の使用が好ましい。
このようにして得られた被覆物の被覆量は、薬物の重量に対して3〜30重量%が好ましい。3重量%未満の場合、使用する薬物の粒度分布、薬物の味の程度にもよるが、被覆量が不足し、味のマスクが不十分となるので好ましくない。また、30重量%を越えると、被覆薬物中の薬物含有量が低くなるので好ましくない。上記よりもより好ましくは3〜25重量%、さらに好ましくは3〜20重量%である。
【0019】
本発明の味がマスクされた薬物は、50℃以上の温度で10分以上加熱成膜処理されることが好ましい。被覆したままの状態の場合、使用する可塑剤の種類、配合量にもよるが、味のマスクが不十分となるので好ましくない。加熱成膜処理する方法は、熱風乾燥機、流動層造粒機等一般的な機器を使用できる。加熱成膜処理の温度と時間は、使用する機器、使用する薬物の溶解度、味の程度、粒度分布、使用する可塑剤の種類、配合量、使用する溶出制御剤の種類、配合量により異なるが、熱風乾燥機を使用した場合、55℃以上の温度で60分以上が好ましく、より好ましくは70℃以上の温度で60分以上、さらに好ましくは70℃以上で120分以上である。
【0020】
本発明の味がマスクされた薬物は、以下に定義する処理前溶出率が30%以下、かつ、処理後溶出率が30%以下、かつ、30分後溶出率が10%以上であることが好ましい。より好ましくは処理前溶出率が25%以下、かつ、処理後溶出率が25%以下、かつ、30分後溶出率が10%以上であり、さらに好ましくは処理前溶出率が20%以下、かつ、処理後溶出率が20%以下、かつ、30分後溶出率が10%以上である。処理前溶出率および処理後溶出率が30%を越えると、味のマスクが不十分となるので好ましくない。処理前溶出率および処理後溶出率が30%以下の場合でも、30分後溶出率が10%未満の場合、薬物が溶出し難いため好ましくない。
【0021】
本発明の味がマスクされた薬物は、そのまま投薬されるか、あるいはカプセルに充填して使用されるか、あるいは他の薬剤、賦形剤等と混合した後、カプセル充填あるいは錠剤化して使用される。
味がマスクされた薬物を含む錠剤は、賦形剤(結晶セルロース、乳糖、コーンスターチ等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、崩壊剤(クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン等)、甘味剤や矯味剤(マンニトール、アスパルテーム、エリスリトール、トレハロース、クエン酸、クエン酸ナトリウム等)等のその他の添加剤と共に、公知の方法で圧縮成形により調製される。
本発明の味がマスクされた薬物は、口腔内溶解錠、チュアブル錠に使用する場合特に有効である。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
<物性の測定方法等>
▲1▼薬物の粒度分布[重量%]
ロータップ式篩振盪機(平工製作所製シーブシェーカーA型)によりJIS標準篩(Z8801−1987)を用いて、試料10gを15分間篩分することにより粒度分布を測定した。
▲2▼エチルセルロースを主成分とした球形固体粒子の粒度分布[体積%]
試料の水分散体を適当な透過率を示す濃度に水で希釈し、1分間超音波分散した後、攪拌しながら、相対屈折率1.2、取り込み回数10回の条件で、レーザー回折式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、LA−910型)にて測定し、体積基準の粒子径分布を求めた。
【0023】
▲3▼処理前溶出率[%]
味がマスクされた薬物を第13改正日本薬局方溶出試験法第二法(試験液;第13改正日本薬局方一般試験法崩壊試験法の試験液第1液900ml、パドル回転数;50rpm)で試験を行い、溶出試験開始3分後の薬物溶出率を処理前溶出率とした。薬物溶出率[%]は日本分光(株)製、自動溶出試験機DT−610を用いて吸光度測定法で測定した。測定は3回行い、その平均値をとった。
▲4▼処理後溶出率[%]
味がマスクされた薬物0.1gを、断面積1cm2 の金型に入れ、テストスタンド(アイコーエンジニアリング(株)製TESTSTAND MODEL-1321DW-CREEP)で、100mm/分のスピードで15kgfまで圧縮し、10秒間保持した。圧縮後の味がマスクされた薬物を処理前溶出率で実施した条件で溶出試験を行い、溶出試験開始3分後の薬物溶出率を処理後溶出率とした。
▲5▼30分後溶出率[%]
味がマスクされた薬物を処理前溶出率で実施した条件で溶出試験を行い、溶出試験開始30分後の薬物溶出率を30分後溶出率とした。
【0024】
【実施例1】
シクロヘキセンの溶媒1000g中にエトキシル基(−0C2 H5 )の含有率が48.6重量%のエチルセルロース261gとセチルアルコール27gを溶解させ、エチルセルロース溶液を作成した。別に、水700gにラウリル硫酸ナトリウム12gを溶解させたラウリル硫酸ナトリウム水溶液を作成した。ラウリル硫酸ナトリウム水溶液をホモミキサーで分散させながら、エチルセルロース溶液を滴下し、粗乳濁液を作成した。得た粗乳濁液を400kgf/cm2 の圧力でホモジナイザーを2回通し、乳濁液を作成した。この乳濁液を減圧蒸留により、シクロヘキセンの留去を行い、エチルセルロースを主成分とする実質的に直径1μm以下の球形固体粒子からなる固形分30重量%の乳濁液を得た。乳濁液中の球形固体粒子の粒度分布を表1に示す。
【0025】
次に、調製した乳濁液46.0部、トリアセチン3.5部、マンニトール2.8部、水47.7部の割合からなる被覆液(固形分の重量比/エチルセルロースを主成分とした実質的に直径1μm以下の球形固体粒子:トリアセチン:マンニトール=1.0:0.25:0.21)を調製し、平均粒子径310μmのアセトアミノフェン0.8kgに対し、「マルチプレックス」MP−01型を用いて、回転板回転数:450rpm、タンジェンシャルボトムスプレーを使用し、スプレーエアー圧:1.4kgf/cm2 、スプレーエアー流量:35L/min、給気温度:70℃、排気温度:33℃、風量:40m3 /hr、被覆液供給速度:12g/minの条件で、アセトアミノフェンに対して、被覆液の固形分として、5.0重量%の量まで被覆した。使用したアセトアミノフェンの粒度分布を表2に示す。
得られた被覆物は、熱風乾燥機(タバイエスペック(株)製PV−211型)で40℃、30分間乾燥した後、さらに80℃、60分間加熱成膜処理した。
アセトアミノフェンの処理前溶出率、処理後溶出率、30分後溶出率を表3に示す。
【0026】
【実施例2】
(参考例)
被覆液の組成を、実施例1で調製した乳濁液48.9部、クエン酸トリエチル2.6部、マンニトール2.8部、水45.8部の割合(固形分の重量比/エチルセルロースを主成分とした実質的に直径1μm以下の球形固体粒子:クエン酸トリエチル:マンニトール=1.0:0.18:0.19)とした以外は、実施例1と同様に操作して、アセトアミノフェンに対して、被覆液の固形分として、10.0重量%の被覆物を調製した。得られた被覆物は、熱風乾燥機で40℃、30分間乾燥した後、さらに80℃、240分間加熱成膜処理した。アセトアミノフェンの処理前溶出率、処理後溶出率、30分後溶出率を表3に示す。
【0027】
【実施例3】
被覆液の組成を、実施例1で調製した乳濁液38.1部、トリアセチン2.9部、マンニトール5.7部、水53.3部の割合(固形分の重量比/エチルセルロースを主成分とした実質的に直径1μm以下の球形固体粒子:トリアセチン:マンニトール=1.0:0.25:0.50)とした以外は、実施例1と同様に操作して、アセトアミノフェンに対して、被覆液の固形分として、10.0重量%の被覆物を調製した。得られた被覆物は、熱風乾燥機で40℃、30分間乾燥した後、さらに80℃、60分間加熱成膜処理した。 アセトアミノフェンの処理前溶出率、処理後溶出率、30分後溶出率を表3に示す。
【0028】
【実施例4】
被覆液の組成を、実施例1で調製した乳濁液44.6部、トリアセチン2.0部、マンニトール4.6部、水48.8部の割合(固形分の重量比/エチルセルロースを主成分とした実質的に直径1μm以下の球形固体粒子:トリアセチン:マンニトール=1.0:0.15:0.34)とした以外は、実施例1と同様に操作して、アセトアミノフェンに対して、被覆液の固形分として、10.0重量%の被覆物を調製した。得られた被覆物は、熱風乾燥機で40℃、30分間乾燥した後、さらに60℃、24時間加熱成膜処理した。 アセトアミノフェンの処理前溶出率、処理後溶出率、30分後溶出率を表3に示す。
【0029】
【実施例5】
実施例3で調製した被覆物30部、コーンスターチ20部、結晶セルロース10部、トレハロース40部からなる混合物0.5gを、断面積1cm2 の金型に入れ、テストスタンドで、100mm/分のスピードで1000kgfまで圧縮し、10秒間保持し、味がマスクされた薬物を含む錠剤を調製した。得られた錠剤は、口溶けも良好でアセトアミノフェンの苦味を感じなかった。
【0030】
【比較例1】
被覆液の組成を、実施例1で調製した乳濁液53.3部、クエン酸トリエチル4.0部、水42.7部の割合(固形分の重量比/エチルセルロースを主成分とした実質的に直径1μm以下の球形固体粒子:クエン酸トリエチル=1.0:0.25)とした以外は、実施例1と同様に操作して、アセトアミノフェンに対して、被覆液の固形分として、5.0重量%の被覆物を調製した。得られた被覆物は、棚段で40℃、30分間乾燥した後、さらに80℃、60分間加熱成膜処理した。
アセトアミノフェンの処理前溶出率、処理後溶出率、30分後溶出率を表3に示す。
【0031】
【比較例2】
被覆液の組成を、実施例1で調製した乳濁液33.3部、10重量%ヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液50.0部、水16.7部の割合(固形分の重量比/エチルセルロースを主成分とした実質的に直径1μm以下の球形固体粒子:ヒドロキシプロピルメチルセルロース=1.0:0.50)とした以外は、実施例1と同様に操作して、アセトアミノフェンに対して、被覆液の固形分として、10.0重量%の被覆物を調製した。得られた被覆物は、棚段で40℃、30分間乾燥した。
アセトアミノフェンの処理前溶出率を表3に示す。
【0032】
【比較例3】
被覆液の組成を、実施例1で調製した乳濁液16.7部、10重量%ヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液50.0部、水33.3部の割合(固形分の重量比/エチルセルロースを主成分とした実質的に直径1μm以下の球形固体粒子:ヒドロキシプロピルメチルセルロース=1.0:1.0)とした以外は、実施例1と同様に操作して、アセトアミノフェンに対して、被覆液の固形分として、15.0重量%の被覆物を調製した。得られた被覆物は、棚段で40℃、30分間乾燥した。
アセトアミノフェンの処理前溶出率、処理後溶出率を表3に示す。
【0033】
【比較例4】
比較例2で調製した被覆物30部を用いて、実施例5と同様に錠剤を調製した。得られた錠剤は、口に含むと直ぐにアセトアミノフェンの苦味を感じた。
【比較例5】
比較例3で調製した被覆物30部を用いて、実施例5と同様に錠剤を調製した。得られた錠剤は、口に含むと直ぐにアセトアミノフェンの苦味を感じた。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【発明の効果】
本発明の味がマスクされた薬物は、少ない被覆量で味がマスクされており、溶出変化率も少なく、味がマスクされた薬物として極めて好適である。
Claims (2)
- 平均粒子径が1000μm以下である顆粒状、細粒状、粉末状、結晶状薬物の表面が、エチルセルロ−スを主成分とする直径1μm以下の球形固体粒子と可塑剤と溶出制御剤を含む水性被覆液で薬物に対して3−30重量%被覆された味がマスクされた薬物被覆物であって、
上記可塑剤がトリアセチンであり、その配合量が球形固体粒子の重量1.0に対して0.15−0.35であり、
上記溶出制御剤が糖アルコール類であり、その配合量が球形固体粒子の重量1.0に対して0.1−0.55であり、
処理前溶出率が20%以下、処理後溶出率が20%以下で、且つ、30分後の溶出率が30%以上であることを特徴とする味がマスクされた薬物被覆物。 - 請求項1に記載の味がマスクされた薬物被覆物を含有する錠剤。
Priority Applications (1)
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