JP3693270B2 - フィルムコーティング顆粒およびその製造方法 - Google Patents

フィルムコーティング顆粒およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薬物の溶出速度が制御された顆粒およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、薬物溶出制御フィルムを施した球形の薬物含有顆粒およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
医薬品製剤は副作用の低減や、服用回数の低減を目的に、薬物(医薬品薬効成分)の溶出速度が制御される。このような製剤は徐放性製剤、あるいは持効性製剤、持続性製剤と呼ばれ、数時間から十数時間で薬物の全量が製剤から溶出するように設計される。
【0003】
徐放性製剤を製造するために、エチルセルロースの水分散体をフィルムコーテイング剤として用いた例としては、アニーリング剤(水溶性高分子)の配合(特表昭55−500709号公報)、細孔形成剤の配合(特開平3−275618号公報)、オイドラギットの配合(特開昭57−109716号公報)、固体粒子(タルク、デンプン)の配合(特開平2−3608号公報)などが知られている。
【0004】
しかしながら、従来の方法は、溶出量が増すほど溶出速度が低下するという欠点を持ち、さらに、経時安定性に劣るものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、薬物の溶出速度が溶出時間に関わらずほぼ一定で、また、その溶出速度の経時安定性に優れたフィルムコーテイング顆粒、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、こうした現状に鑑み、薬物溶出速度調整フィルムの薬物透過性、および、機械的強度を同時に制御することを鋭意検討した結果、本発明に到達したものである。
即ち、本発明は以下の通りのものである。
(1) 薬物を含有する球形素顆粒と、その外側にエチルセルロースと可塑剤と薬物溶出速度調整物質を含有する薬物溶出速度調整フィルムを有するフィルムコーティング顆粒において、薬物溶出速度調整フィルムを形成するためのフィルムコーティング剤がエチルセルロースを主成分とする実質的に直径1μm以下の球形固体粒子と可塑剤と薬物溶出速度調整物質を含有する水分散体であり、
薬物溶出速度調整物質がメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、プルラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、尿素、ジメチルスルホン、ニコチンアミド、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、キサンタンガム、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、メタアクリル酸コポリマー、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、グルコース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、トレハロースから選ばれた一種、
もしくは二種以上であり、
この分散体で形成したフィルム強度が0.08kgf以上であること、を特徴とするフィルムコーティング顆粒。
(2) 薬物を含有する球形素顆粒が、薬物と球形素顆粒からなり、その核粒子が結晶セルロースを30重量%以上含有する球形素顆粒であることを特徴とする上記(1)記載のフィルムコーティング顆粒。
(3) 薬物溶出速度調整物質がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンの中から選ばれる一種、もしくは二種以上であり、薬物溶出速度調整フィルム中に15重量%以上30重量%以下含まれることを特徴とする上記(1)または(2)記載のフィルムコーティング顆粒。
(4) 薬物溶出速度調整フィルムの厚みが30μm以上であることを特徴とする上記(1)、(2)または(3)記載のフィルムコーティング顆粒。
(5)粒度分布が実質的に75〜600μmの範囲の大きさであることを特徴とする上記(1)、(2)、(3)または(4)記載のフィルムコーティング顆粒。
(6) 薬物を含有する球形素顆粒と、その外側にエチルセルロースと可塑剤と薬物溶出速度調整物質を含有する薬物溶出速度調整フィルムを有するフィルムコーティング顆粒を製造する方法において、薬物溶出速度調整フィルムを形成するためのフィルムコーティング剤がエチルセルロースを主成分とする実質的に直径1μm以下の球形固体粒子と可塑剤と薬物溶出速度調整物質を含有する水分散体であり、
薬物溶出速度調整物質がメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、プルラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、尿素、ジメチルスルホン、ニコチンアミド、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、キサンタンガム、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、メタアクリル酸コポリマー、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、グルコース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、トレハロースから選ばれた一種、
もしくは二種以上であり、
そして、転動流動型コーティング装置を用いて球形素顆粒に薬物溶出速度調整フィルムを被覆することを特徴とするフィルムコーティング顆粒の製造方法。
(7) 薬物溶出速度調整フィルムの強度が0.08kgf以上であることを特徴とする上記(6)記載のフィルムコーティング顆粒の製造方法。
(8) 薬物を含有する球形素顆粒が、薬物と球形核粒子からなり、その核粒子が結晶セルロースを30重量%以上含有する球形素顆粒であることを特徴とする上記(6)または(7)記載のフィルムコーティング顆粒の製造方法。
(9) 薬物溶出速度調整物質がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンの中から選ばれる一種、もしくは二種以上であり、薬物溶出速度調整フィルム中に15重量%以上30重量%以下含まれることを特徴とする上記(6)、(7)または(8)記載のフィルムコーティング顆粒の製造方法。
(10) フィルムコーティング剤を転動流動型コーティング装置の転動作用の接線方向に噴霧することを特徴とする上記(6)、(7)、(8)または(9)記載のフィルムコーティング顆粒の製造方法。
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で使用される球形素顆粒は薬物を含有する。好ましくは、球形素顆粒は球形核粒子と薬物を含有する。
球形核粒子は結晶セルロースを30重量%以上含有するものが好ましい。結晶セルロースが30重量%未満であると機械的強度が低く、薬物を担持させる際、および、薬物溶出速度調整フィルムを被覆する際に破壊が生じたり、また、他の成分の性質にもよるが、通常吸水性が低くなるので、フィルム被覆工程において粒子の合一が発生して、収率が低下する場合がある。結晶セルロースの含有量は50重量%がより好ましく、さらには100重量%(水分を除く)であることが最も好ましい。本発明で使用される球形核粒子に含有される結晶セルロースの重合度は60〜375であり、さらには110〜240であることが好ましい。
【0008】
本発明で使用される球形素顆粒及び球形核粒子の「球形」とは、球形度が0.7以上であることを意味する。球形素顆粒の球形度が0.7未満であると、大きな凸部を有することになる。また、球形核粒子の球形度が0.7未満であると、結果として、薬物を担持した素顆粒の球形度が低下する。大きな凸部には薬物溶出速度調整フィルムがのり難く、多量のコーティングを施さないと所望の薬物溶出性を得ることができない。そのために無為に薬物溶出速度調整フィルムを使用し、また、フィルムコーティング操作に時間をかけてしまうことになる。表面が平滑な真球であることが理想であるが、実用的には球形度が0.7以上が好ましく、さらに0.8以上であると、フィルムのコーティング量、およびコーティング時間を顕著に低減することができるので好ましい。
【0009】
本発明で使用される球形核粒子は前述の性質を備え、かつ、その吸水能は0.5〜1.5g/g、タッピング見掛密度が0.65g/cm3以上、摩損度が1%以下、粒度分布が75〜600μmの範囲内であることが好ましい。例としては旭化成工業(株)製造の「セルフィア」CP−102、CP−203、CP−305、フロイント産業(株)製造のノンパレル−105などを挙げることができる。なお、各性質の測定方法、等の詳細は後述する。
【0010】
本発明で使用される薬物とは、人および動物の疾病の治療、予防、診断に使用されるものであって、器具・機械ではないもののことであり、例としては、下記のようなものが挙げられる。
抗癲癇剤、例えば、フェニトイン、アセチルフェネトライド、トリメタジオン、フェノバルビタール、プリミドン、ニトラゼパム、バルプロ酸ナトリウム、スルチアム、等、
解熱鎮痛消炎剤、例えば、アセトアミノフェン、フェニルアセチルグリシンメチルアミド、メフェナム酸、ジクロフェナクナトリウム、フロクタフェニン、アスピリン、アスピリンアルミニウム、エテンザミド、オキシフェンブタゾン、スルピリン、フェニルブタゾン、イブプロフェン、アルクロフェナク、ナプロキセン、ケトプロフェン、塩酸チノリジン、塩酸ベンジダミン、塩酸チアラミド、インドメタシン、ピロキシカム、サリチルアミド、等、
鎮暈剤、例えば、ジメンヒドリナート、塩酸メクリジン、塩酸ジフェニドール、等、
麻薬、例えば、塩酸アヘンアルカロイド、塩酸モルヒネ、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、オキシメテバノール、等、
精神神経用剤、例えば、塩酸クロルプロマジン、マレイン酸レボメプロマジン、マレイン酸ペラジン、プロペリシアジン、ペルフェナジン、クロルプロチキセン、ハロペリドール、ジアゼパム、オキサゼパム、オキサゾラム、メキサゾラム、アルプラゾラム、ゾテピン、等、
骨格筋弛緩剤、例えば、クロルゾキサゾン、カルバミン酸クロルフェネシン、クロルメザノン、メシル酸プリジノール、塩酸エペリゾン、等、
自律神経用剤、例えば、塩化ベタネコール、臭化ネオスチグミン、臭化ピリドスチグミン、等、
鎮痙剤、例えば、硫酸アトロピン、臭化ブトロピウム、臭化ブチルスポコラミン、臭化プロパンテリン、塩酸パパベリン、等、
抗パーキンソン剤、例えば、塩酸ビペリデン、塩酸トリヘキシフェニジル、塩酸アマンタジン、レボドパ、等、
眼科用剤、例えば、ジクロルフェナミド、メタゾラミド、等、
抗ヒスタミン剤、例えば、塩酸ジフェンヒドラミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、プロメタジン、メキタジン、フマル酸クレマスチン、等、
強心剤、例えば、アミノフィリン、カフェイン、dl−塩酸イソイソプロテレノール、塩酸エチレフリン、塩酸ノルフェネリン、ユビデカレノン、等、
不整脈用剤、例えば、塩酸プロカインアミド、ピンドロール、酒石酸メトプロロール、ジソビラミド、等、
利尿剤、例えば、塩化カリウム、シクロペンチアジド、ヒドロクロロチアジド、トリアムテレン、アセタゾラミド、フロセミド、等、
血圧降下剤、例えば、臭化ヘキサメトニウム、塩酸ヒドララジン、シロシンゴピン、レセルピン、塩酸プロプラノール、カプトプリル、メチルドパ、等、
血管収縮剤、例えば、メシル酸ジヒドロエルゴタミン、等、
血管拡張剤、例えば、塩酸エタフェノン、塩酸ジルチアゼム、塩酸カルボクロメン、四硝酸ペンタエリスリトール、ジピリダモール、硝酸イソソルビド、ニフェジピン、クエン酸ニカメタート、シクランデレート、シンナリジン、等、
動脈硬化用剤、例えば、リノール酸エチル、レシチン、クロフィブラート、等、
循環器官用剤、例えば、塩酸ニカルジピン、塩酸メクロフェノキサート、チトクロームC、ピリジノールカルバメート、ピンボセチン、ホパンテン酸カルシウム、ペントキシフィリン、イデベノン、等、
呼吸促進剤、例えば、塩酸ジメフリン、等、
鎮咳去痰剤、例えば、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、臭化水素酸デキストロメトルファン、ノスカピン、塩酸L−メチルシステイン、塩酸ブロムヘキシン、テオフィリン、塩酸エフェドリン、アンレキサノクス、等、
利胆剤、例えば、オサルミド、フェニルプロパノール、ヒメクロモン、等、
整腸剤、例えば、塩化ベルベリン、塩酸ロペラミド、等、
消化器官用剤、例えば、メトクロプラミド、フェニペントール、ドンペリドン、等、
ビタミン剤、例えば、酢酸レチノール、ジヒドロタキステロール、エトレチナート、塩酸チアミン、硝酸チアミン、フルスルチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサール、ニコチン酸、パンテチン、シアノコバラミン、ビオチン、アスコルビン酸、フィトナジオン、メナテトレノン、等、
抗生物質、例えば、ベンジルペニシリンベンザチン、アモキシシリン、アンピシリン、シクラシリン、セファクロル、セファレキシン、エリスロマイシン、キタサマイシン、ジョサマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、グリセオフルビン、セフゾナムナトリウム、等、
化学療法剤、例えば、スルファメトキサゾール、イソニアジド、エチオナミド、チアゾスルホン、ニトロフラントイン、エノキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、等が挙げられる。
【0011】
球形素顆粒の作成方法は、公知の方法が利用でき、例えば、押し出し−マルメ法や核粒子に薬物を担持させる方法(修飾造粒法)などが利用できる。
球形核粒子の外側および/もしくは内側に薬物が担持されている球形素顆粒は、本発明の好ましい態様の一つである。薬物が外殻を呈する如く、球形核粒子を被覆した状態も本発明の好ましい態様の一つである。
【0012】
球形核粒子に薬物を担持させることを容易にするために、あるいは、その薬物が後加工工程ではがれぬように、あるいは、薬物の溶出速度を調製するために、あるいは、安定化させるために、例えば下記のようなものを併用して薬物を担持させても良い。
結合剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、等、
フィルムコーティング基剤、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、エチルセルロース、エチルセルロース水分散液、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE、メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーS、メタアクリル酸コポリマーLD、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS、等、
界面活性剤、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム、糖、等、
賦形剤、例えば、トウモロコシデンプン、コメデンプン、粉糖、乳糖、結晶セルロース、等、
崩壊剤、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、部分アルファー化デンプン、等、
無機物質、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、等、
その他、例えば、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、硬化油、マクロゴール、等が挙げられる。
【0013】
薬物の被覆(担持)、および、薬物速度調整フィルムの被覆のバッチバラツキ低減などの目的で、球形核粒子の外側に、薬物と水溶性高分子(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、等)の2層構造(核粒子の外側に水溶性高分子、その外側に薬物を被覆する場合、および、核粒子の外側に薬物、その外側に水溶性高分子を被覆する場合)および3層構造(核粒子の外側に水溶性高分子、その外側に薬物、さらにその外側に水溶性高分子を被覆する場合)を持たせることも、本発明の球形素顆粒の好ましい態様の一つである。
【0014】
球形核粒子に薬物を担持させる方法は公知の方法を使用することができる。その例としては、▲1▼球形核粒子を遠心流動型コーティング装置中で転動させながら、結合剤水溶液を連続的に噴霧し、同時に薬物粉末(必要に応じて賦形剤を含有)を散布する方法、▲2▼球形核粒子を流動層コーティング装置(あるいは転動流動型コーテイング装置)で流動させながら、結合剤水溶液中に薬物を溶解あるいは懸濁させた液を噴霧する方法、▲3▼球形核粒子を高速攪拌造粒装置にて転動させながら、核粒子が吸収できる量の薬物と結合液の水溶液を添加する方法、▲4▼薬物と結合液の水溶液中に球形核粒子を浸漬する方法などを挙げることができる。いずれの方法においても必要に応じて、乾燥し、合一した粒子を除去するなどの操作を行い、薬物溶出速度調整フィルムの被覆に供する。
【0015】
薬物担持量は薬物の投与量によって決まる。あえて例を示せば、極微量で薬効が発現する薬物の場合は球形核粒子に対して0.01重量%程度、薬効の発現に多量の薬物が必要な場合は300重量%程度の担持量である。本発明において汎用的な担持量は0.5〜100重量%である。
本発明のフィルムコーティング顆粒は、球形素顆粒の外側にエチルセルロースと可塑剤と水溶性高分子を含有する薬物溶出速度調整フィルムを有する。
【0016】
本発明で使用されるエチルセルロースとは、The United States Pharmacopia23(米国)のGuide to General Chapters/General Test and Assays/<431>Methoxy Determinationの方法(但し、0.1Nチオ硫酸ナトリウム液1mLはエトキシル基0.7510mgに相当)によって測定されるエトキシル基(−OC2 5 )の含有率が41.0〜51.0重量%のものである。
【0017】
本発明で使用される可塑剤は、エチルセルロースのガラス転移温度および最低成膜温度を低下させる物質である。例としては、アセチル化モノグリセリド、クエン酸トリエチル、トリアセチン、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジメチル、中鎖脂肪酸トリグリセリド、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、アジピン酸ジブチル、オレイン酸、オレイノールなどを挙げることができる。可塑剤の選択は、薬物の溶解性と製剤設計(薬物溶出速度、保存安定性の設定)に大きく依存する。一例を挙げれば、薬物の溶解度が低い場合はフィルムコーティングのバッチバラツキを低減できるのでアセチル化モノグリセリドの使用が好ましく、また、薬物の溶解度が高い場合はフィルムコーティング量を少なくし得るクエン酸トリエチルの使用が好ましい。配合量は、最低成膜温度、フィルムの熱軟化による融着性(フィルムコーティング操作に影響)、保存安定性などを考慮して決められるが、おおよそエチルセルロース100重量部に対して10〜70重量部、好ましくは25〜50重量部程度である。
【0018】
本発明で使用される薬物溶出速度調整物質としては、医薬品製剤に汎用されるものが使用され、その例としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、プルラン、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の有機脂肪族あるいは芳香族のジオール、ポリオールを含むオール類、尿素、ジメチルスルホン、ニコチンアミド、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、キサンタンガム、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、メタアクリル酸コポリマー、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、グルコースやラクトース等のサッカライド、ソルビトール、マンニトール、トレハロースなどを挙げることができる。本発明ではこれらの一種、もしくは二種以上を使用する。これらの中で水溶性高分子は、フィルムコーティング顆粒が胃液などの体液に接すると、薬物溶出速度調整フィルムから徐々に溶出するので、フィルムに小孔が形成される。つまりフィルムの拡散抵抗が時間(薬物の溶出)とともに低下してゆくのである。
【0019】
通常、本発明で使用するようなフィルム制御型の徐放性顆粒の場合、フィルム内部の薬物水溶液濃度が飽和状態を保っている間は、時間に比例して薬物がフィルムの外部(体液)へ溶出する、つまり溶出速度が一定であるが、水溶液濃度が低下するに従い溶出速度も低下する、という欠点を有する。これは「薬物の血中濃度を長時間一定に保つ」という徐放性製剤の目的に反するものであり、改善すべき点の一つとされていた。ところが本発明においては前述の通り、フィルムの拡散抵抗が徐々に低下するので、フィルム内部の薬物水溶液濃度が低下しても溶出速度を低下させることなく、薬物を時間にほぼ比例させたまま全量溶出させることが可能となったのである。
【0020】
また、徐放性製剤は薬物の溶出速度が限定されていることが重要であり、製品間のバラツキはもちろん、経時的な変化も充分少ないものである必要がある。溶出速度のバラツキの限度は薬理効果の発現に同等性が認められる範囲内と考えられるが、その目安としては例えば「徐放性製剤(経口投与剤)の設計及び評価に関するガイドライン」(日本公定書協会編、医薬品製造指針1992年版、p107−112(薬事時報社))に示されている。水溶性高分子の配合は結局フィルムの薬物溶出速度を上げることになるので、所望の徐放性(薬物を全量溶出させる時間)を得るためにはフィルムコーティング量を上げること、つまりは薬物溶出速度調整フィルムを厚くすることになる。フィルムを厚くすると機械的強度が増し、保存安定性を向上させることができる。
【0021】
本発明のフィルムコーティング顆粒のフィルム強度は0.08kgf以上である。フィルムの強度が0.08kgf未満の場合、強度が不足し、経時変化を起こしやすいだけでなく、フィルムが破れやすいため、溶出速度の制御ができなくなる。フィルム強度は、溶出速度を勘案しつつ、水溶性高分子の配合量およびフィルムの厚み(=コーティング量)のバランスをとることによって、所望の値、つまり、0.08kgf以上にすることができる。
【0022】
さらに、可塑剤の種類、配合量などの影響で、フィルムコーティング顆粒を長期間貯蔵すると、フィルム表面が融着し、顆粒が軽くブロッキングするという現象が生じることがある。これは美観を損なうなどの理由から嫌われることが多いが、水溶性高分子の配合はこのブロッキングを防ぐ効果もあり、さらなるブロッキング防止のためのフィルムコーティングなどを必要としなくなる。
【0023】
水溶性高分子の選択および配合量は、薬物の溶出性(分子量、溶解度、浸透圧などに依存)、製剤設計(薬物含有量、溶出速度、顆粒の大きさ、保存安定性、など)およびフィルム強度によって決められるものであるが、好ましくはヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンの中から選ばれる一種、もしくは二種以上が使用される。その配合量は薬物溶出速度調整フィルム中の15重量%以上30重量%以下、好ましくは、18重量%から23重量%である。配合量が15重量%以上であると薬物の溶出速度を制御しやすく、また、フィルムの厚みも充分厚くなるので、保存安定性が向上する。加えて、フィルムコーティング顆粒のブロッキング防止効果も顕著となる。配合量が30重量%を越えると、薬物溶出速度調整フィルム層の急激な崩壊をもたらし、溶出速度の十分な制御ができなくなる場合がある。
【0024】
本発明では、薬物溶出速度調整フィルムを形成するためのフィルムコーティング剤として、エチルセルロースを主成分とする実質的に直径1μm以下の球形固体粒子と可塑剤と薬物溶出速度調整物質を含有する水分散体が使用される。
エチルセルロースを主成分とする球形固体粒子の粒度分布は実質的に直径1μm以下である。「実質的」という意味は、直径1μmを越える球形固体粒子(但し、最大で5μm程度)がフィルムコーティング剤としての成膜性や分散安定性を阻害しない程度の量の存在を認めているという事であり、その量は0.5体積%以下である。球形固体粒子は小さい方が好ましいが、その分布としては直径0.6μm以下のものは95体積%以上、0.5μm以下のものは75体積%以上、0.4μm以下のものは1体積%以上であることが好ましい。球形固体粒子の「球形」とは球形度が0.7以上のことを意味し、0.8以上であることがより好ましい。
【0025】
エチルセルロース以外の副成分としては、球形固体粒子に内包するか、あるいは複合体化した状態を呈するもので、球形固体粒子の水分散体を製造するために必要な助剤、あるいは球形固体粒子の水中での分散安定性を維持するのに必要な助剤、あるいは細菌汚染を防止するための助剤などのことである。例としては、界面活性剤(例、ラウリル硫酸ナトリウム)、乳化助剤(例、セチルアルコール)、消泡剤、静菌剤、殺菌剤などを挙げることができる。その配合量はエチルセルロースに対して30重量%以下、好ましくは20重量%以下である。
【0026】
このようなエチルセルロースの水分散体は、これ自身では最低成膜温度が高すぎて実用に供しない。そこで可塑剤を配合し、最低成膜温度を下げる必要があるが、前述のようなエチルセルロースを主成分とする球形固体粒子の大きさが1μm以下であると、可塑剤の使用量が少なくて良い。可塑剤の配合は、その配合量が多い場合、成膜後に分離(ブリード)などを起こし、薬物溶出速度が経時的に変化してしまうという欠点を有する。本発明で使用のフィルムコーティング剤の場合、可塑剤の使用量が少なくて良いため、経時変化を最小に抑えることができる。
【0027】
薬物溶出速度調整フィルムを形成するためのフィルムコーティング剤は、エチルセルロースの球形固体粒子が水中に安定に分散し、可塑剤はほとんどがエチルセルロース粒子に吸収され、場合によっては一部が水に溶解し、薬物溶出速度調整物質は水に溶解した状態または分散した状態を呈したものを使用する。場合によっては、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、メタアクリル酸コポリマーなどの水分散体、あるいは、アンモニア水などの分散安定化剤、タルク、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、トウモロコシデンプン、結晶セルロースなどのフィルムコーティング用添加剤、など通常のフィルムコーティングに使用される助剤を含んでいても良い。
【0028】
エチルセルロースの球形固体粒子の水分散体は種々の方法で製造され、例えば、Pharmaceutical Technology,Vol.11,No.3,p56−68(1987)に示されているようなエマルジョン−溶媒蒸発法、あるいは転相法などで製造される。例としてはFMC社(米国)製造の「Aquacoat」ECD−30などを挙げることができる。また、予め可塑剤を混合されて供与されるColorcon社(米国)の「Surelease」も本発明に用いる水分散体の例として挙げることができる。
【0029】
薬物溶出速度調整フィルムの厚み(コーティング量)は薬物の溶出性と製剤設計とフィルム強度によって決められるものであり、前述の如き、水溶性高分子の配合によって大きく影響を受けるものであるが、その厚みは30μm以上であることが好ましい。30μm以下ではフィルム強度が低く、経時変化しやすい。上限は特にないが、あまり厚すぎるとフィルムコーティングに長時間かかり、実用的でない。そのような制約からいうと、上限はおおよそ100μmである。
【0030】
球形素顆粒をフィルムコーティング剤で被覆して薬物溶出速度調整フィルムを形成させる方法としては、流動層型コーティング装置(例、フロイント産業(株)製「フローコーター」)、ワースターカラム付き流動層型コーティング装置(例、グラット社製GPCGシリーズ)、遠心流動型コーティング装置(例、フロイント産業(株)製「CF−グラニュレーター」)、転動流動型コーティング装置(例、(株)パウレック製「マルチプレックス」、不二パウダル(株)製「ニューマルメライザー」、フロイント産業(株)製「スパイラフロー」、同「ローターコンテナー」付き「フローコーター」)などを用いた汎用の方法を使用することができる。特に好ましくは、転動流動型コーティング装置を使用した場合であり、さらに好ましくは装置の転動作用の接線方向にフィルムコーティング剤を噴霧する方法である。
【0031】
転動流動型コーティング装置とは、略円筒型の空間と、底部には被コーティング粒子を転動させるための円盤と温風を供給するためスリットあるいは小孔を有し、上部には温風を排出するための排風口(通常はバグフィルター付き)を持つものであり、フィルムコーティング液を噴霧するためのスプレーノズルが上部から下部に向かって、あるいは略円筒型空間下部の円盤の回転の接線方向に取り付けられている。略円筒型空間の形状、転動用の円盤の形状、温風を供給するためのスリットあるいは小孔の形状および位置、スプレーノズルの形状(噴霧能力、異物の付着防止)の違いによって、種々の装置が提案されているが、本発明においてはいずれの装置を用いてもよい。特に好ましい装置は前述の「マルチプレックス」である。
【0032】
転動流動型コーティング装置が好ましい理由は、緻密で、経時的に安定な薬物溶出速度調整フィルムを形成させ得る点にある。その機構はおそらく、温風による流動作用に加え、円盤による転動作用が球形素顆粒に与えられるため、球形素顆粒に付着したコーティング剤が乾燥する前に良く展延され、その結果、より緻密な薬物溶出速度調整フィルムが形成されるものと考えられる。特にフィルムコーティングを円盤の転動作用の接線方向に噴霧する場合は、スプレーノズル先端から球形素顆粒までの距離が短く、充分水分を持った状態で付着するため、付着効率が高く、その後の展延効果も高くなるので好ましい。「マルチプレックス」のスプレーノズルには、その外側に噴霧と同一方向にエアーを流す機構を備えているが、このエアーは非コーティング粒子等の付着防止の他に、フィルムコーティング剤の付着防止、噴霧された液滴を球形素顆粒に良く付着させる作用、および、球形素顆粒をよく転動流動させる作用をもつので特に好ましい。
【0033】
このようにして得られたフィルムコーティング顆粒の粒度分布は、実質的に75〜600μmの範囲内であることが好ましい。さらに好ましくは75〜500μmの範囲内である。この範囲内の粒度分布であると、服用が容易である、食品などに混合して服用することが可能である、第12改正日本薬局方製剤総則で規定の「散剤」あるいは「顆粒剤」との混合性が良いので調剤しやすい、他の賦形剤と混合して打錠してもフィルムの損傷が少ない、などの利点を有する。「実質的」という意味は、前述の利点を損なわない程度に75μm未満、あるいは600μmを越える粒子を含んでいても良いということであり、それは75μm未満の粒子が10重量%以下、600μmを越える粒子が5重量%以下(但し、最大で850μm程度)であることをいう。
【0034】
本発明のフィルムコーティング顆粒は、そのまま投薬されるか、あるいはカプセルに充填して使用されるか、あるいは他の薬剤と混合して使用されるか、あるいは他の賦形剤や薬物や薬物を含む顆粒やフィルムコーティングを施した顆粒と混合後、打錠して錠剤とし、使用される。前述の通り、食品や経管流動食などに混合して投薬することも可能である。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
なお、球形核粒子などの物性の測定方法は、以下の通りである。
(1)球形素顆粒、球形核粒子、エチルセルロースを主成分とした球形固体粒子の球形度[−]
粒子形状を光学顕微鏡、電子顕微鏡などを用いて撮影し、その50個の粒子の短径と長径の比(短径/長径)の平均値をとった。
(2)結晶セルロースの平均重合度[−]
INDUSTRIAL AND ENGINEERING CHEMISTRY Vol.42,No.3 p502〜507(1950)に記載された銅安溶液粘度法により測定。必要に応じて、試料を乳鉢で磨砕してから測定に使用した。
(3)球形核粒子の吸水能[g/g]
球形核粒子10g(乾燥物換算)に蒸留水30gを加え、1時間室温で放置後、ろ取し、表面付着水をろ紙で軽くふき取った後、重量を測定し、含水量を30で除した。繰り返し数は5で、その平均値をとった。
(4)球形核粒子のタッピング見掛密度[g/cm3
球形核粒子30gを100cm3のガラス製メスシリンダーに疎充填し、ゴム板を敷いた机の様な衝撃の低い台の上で、手でタッピングを行う。タッピングは数cmの高さから台に垂直に落とすようにして行い、粒子層の圧密が止まるまで行う。タッピング終了後、粒子層の容積を読みとり、30で除する。繰り返し数は3で、その平均値を取った。
(5)球形核粒子の摩損度[%]
萱垣式摩損度測定装置に球形核粒子10gを仕込み、25rpmで15分間回転させ、粉化による重量減少率を測定、計算する。繰り返し数は3で、その平均値を取った。
(6)球形核粒子、球形素顆粒、フィルムコーティング顆粒の粒度分布[重量%]
ロータップ式篩振盪機(平工製作所製:シーブシェーカーA型)によりJIS標準篩(Z8801−1987)を用いて試料30gを30分間篩分することにより粒度分布を測定した。
(7)薬物溶出速度調整フィルムの厚み[μm]
球形素顆粒、フィルムコーティング顆粒の粒度分布[重量%]から、50%積算粒径を求め、両者の差から、フィルムの厚みを計算により求めた。
(8)エチルセルロースを主成分とした球形固体粒子の粒度分布[体積%]
試料の水分散体を適当な透過率を示す濃度に水で希釈し、1分間超音波分散した後、攪拌しながら、相対屈折率1.2、取り込み回数10回、の条件で、レーザー回折式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、LA−910型)にて測定し、体積基準の粒子径分布を求めた。
(9)フィルム強度
薬物溶出速度調整フィルムを形成するためのフィルムコーティング剤をガラス板上に塗布し、80℃で1時間、加熱製膜処理を行い、30〜100μmの厚みの異なるフィルムを数種類作成した。得られたフィルムを幅10mm、長さ50mm、クロスヘッド速度50mm/分の条件でTENSIRON(TOYO BALDWIN CO,.LTD、UTM−4−100型)にて破断点強度を測定した。10点以上のフィルムの測定から得られた破断点強度と供したフィルムの厚みの関係を最小自乗法で1次回帰し、求めた薬物調整フィルムの厚みに相当する破断点強度を計算で求め、フィルム強度とした。
【0036】
【実施例1】
転動流動コーティング装置((株)パウレック製、「マルチプレックス」MP−25型)に球形核粒子(旭化成工業(株)製、「セルフィア」CP−305)を仕込み、リボフラビン10部、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達(株)製、Lタイプ)2部、水88部の薬物被覆液を噴霧し、リボフラビンが2重量%含有する、球形度0.9の球形素顆粒を得た。使用した球形核粒子の物性を表1に、得られた球形素顆粒の粒度分布を表2に記す。
【0037】
次に、エチルセルロース水分散液(「Aquacoat」ECD−30、固形分濃度:30%、FMC社製造、旭化成工業(株)販売)32部、クエン酸トリエチル2.4部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業(株)製、TC−5E)10%水溶液30部、水35.6部の割合からなるフィルムコーティング液を調製し、上記素顆粒1.5kgに対し、マルチプレックスを用いて、回転板回転数:380rpm、タンジェンシャルボトムスプレーを使用し、スプレーエアー圧:1.6kgf/cm2、スプレーエアー流量:40L/min、給気温度:75℃、排気温度:36℃、風量:75m3/hr、コーティング液供給速度:21g/minの条件で、素顆粒に対して、コーティング液の固形分として、30.0、40.0、50.3、61.4重量%の量でコーティングした。得られたコーティング顆粒は、棚段で50℃、30分間乾燥した後、さらに80℃、60分間キュアリング(加熱成膜処理)した。
【0038】
使用した「Aquacoat」中の固体粒子は球形であり、その粒度分布を表3に示す。
薬物の溶出率[%]は日本分光工業(株)製、自動溶出試験機DT−600を用い、パドル法(100rpm)にて測定した。試験液は第12改正日本薬局方一般試験法崩壊試験法の試験液第1液を用いた。測定は3回行い、その平均値をとった。
【0039】
コーティング量とリボフラビンの溶出量の結果を図1に示す。図に示されるように溶出速度の変化が殆どなく主薬が溶出した。
また、コーティング量が50.3%のもの(粒度分布を表4に示す。フィルム厚み39μm)を、試薬用ガラス瓶に入れて60℃の状態で2ヶ月保存した後の溶出の変化を図2に示す。図に示される通り、保存の前後で溶出量にほとんど変化は見られなかった。また、保存後の試薬用ガラス瓶中の粒子は軽くブロッキングしていたが、瓶を振ると簡単に解れた。
【0040】
また、フィルム強度を求める回帰式は、0.00202×A+0.0128=B(A:フィルム厚み、B:フィルム強度)であり、コーティング量が50.3%のもののフィルム強度は、0.0916kgfであった。
【0041】
【比較例1】
フィルムコーティング液の組成を、エチルセルロース水分散液38部、クエン酸トリエチル2.9部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース10%水溶液7部、水52.1部とした以外は、実施例1と同様にしてフィルムコーティング顆粒を調製した。得られたコーティング顆粒の粒度分布を表5に、コーティング量とリボフラビンの溶出量の結果を図3に示す。図に示される通り、溶出率が50%以上になると、極度に溶出速度が低下している。
【0042】
また、コーティング量が5.0%のもの(粒度分布を表5に示す。フィルム厚み5μm)を、試薬用ガラス瓶に入れて60℃の状態で2週間保存した後の溶出の変化を図4に示す。図に示される通り、保存後は溶出が速まった。また、保存後の試薬用ガラス瓶中の粒子がブロッキングして、なかなか粒子が解れなかった。
【0043】
また、フィルム強度を求める回帰式は、0.00913×A+0.00877=B(A:フィルム厚み、B:フィルム強度)であり、コーティング量が5.0%のもののフィルム強度は、0.0544kgfであった。
【0044】
【表1】
Figure 0003693270
【0045】
【表2】
Figure 0003693270
【0046】
【表3】
Figure 0003693270
【0047】
【表4】
Figure 0003693270
【0048】
【表5】
Figure 0003693270
【0049】
【発明の効果】
本発明のフィルムコーティング顆粒は、薬物溶出速度が溶出時間に関わらずほぼ一定であり、また、その速度は長期間保存によっても変わることが無く、さらには、顆粒のブロッキングもないので、徐放性顆粒として極めて好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のコーティング量30.0%〜61.4%までのコーティング顆粒の溶出試験における主薬の溶出図である。
【図2】実施例1のコーティング量50.3%のコーティング顆粒の保存前後の溶出試験における主薬の溶出図である。
【図3】比較例1のコーティング量5.0%〜10.0%までのコーティング顆粒の溶出試験における主薬の溶出図である。
【図4】比較例1のコーティング量5.0%のコーティング顆粒の保存前後の溶出試験における主薬の溶出図である。

Claims (10)

  1. 薬物を含有する球形素顆粒と、その外側にエチルセルロースと可塑剤と薬物溶出速度調整物質を含有する薬物溶出速度調整フィルムを有するフィルムコーティング顆粒において、薬物溶出速度調整フィルムを形成するためのフィルムコーティング剤がエチルセルロースを主成分とする実質的に直径1μm以下の球形固体粒子と可塑剤と薬物溶出速度調整物質を含有する水分散体であり、
    薬物溶出速度調整物質がメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、プルラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、尿素、ジメチルスルホン、ニコチンアミド、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、キサンタンガム、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、メタアクリル酸コポリマー、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、グルコース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、トレハロースから選ばれた一種、
    もしくは二種以上であり、
    この分散体で形成したフィルム強度が0.08kgf以上であること、を特徴とするフィルムコーティング顆粒。
  2. 薬物を含有する球形素顆粒が、薬物と球形素顆粒からなり、その核粒子が結晶セルロースを30重量%以上含有する球形素顆粒であることを特徴とする請求項1記載のフィルムコーティング顆粒。
  3. 薬物溶出速度調整物質がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンの中から選ばれる一種、もしくは二種以上であり、薬物溶出速度調整フィルム中に15重量%以上30重量%以下含まれることを特徴とする請求項1または2記載のフィルムコーティング顆粒。
  4. 薬物溶出速度調整フィルムの厚みが30μm以上であることを特徴とする請求項1、2または3記載のフィルムコーティング顆粒。
  5. 粒度分布が実質的に75〜600μmの範囲の大きさであることを特徴とする請求項1,2、3、または4記載のフィルムコーティング顆粒。
  6. 薬物を含有する球形素顆粒と、その外側にエチルセルロースと可塑剤と薬物溶出速度調整物質を含有する薬物溶出速度調整フィルムを有するフィルムコーティング顆粒を製造する方法において、薬物溶出速度調整フィルムを形成するためのフィルムコーティング剤がエチルセルロースを主成分とする実質的に直径1μm以下の球形固体粒子と可塑剤と薬物溶出速度調整物質を含有する水分散体であり、
    薬物溶出速度調整物質がメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、プルラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、尿素、ジメチルスルホン、ニコチンアミド、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、キサンタンガム、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、メタアクリル酸コポリマー、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、グルコース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、トレハロースから選ばれた一種、
    もしくは二種以上であり、
    そして、転動流動型コーティング装置を用いて球形素顆粒に薬物溶出速度調整フィルムを被覆することを特徴とするフィルムコーティング顆粒の製造方法。
  7. 薬物溶出速度調整フィルムの強度が0.08kgf以上であることを特徴とする請求項6記載のフィルムコーティング顆粒の製造方法。
  8. 薬物を含有する球形素顆粒が、薬物と球形核粒子からなり、その核粒子が結晶セルロースを30重量%以上含有する球形素顆粒であることを特徴とする請求項6または7記載のフィルムコーティング顆粒の製造方法。
  9. 薬物溶出速度調整物質がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンの中から選ばれる一種、もしくは二種以上であり、薬物溶出速度調整フィルム中に15重量%以上30重量%以下含まれることを特徴とする請求項6、7または8記載のフィルムコーティング顆粒の製造方法。
  10. フィルムコーティング剤を転動流動型コーティング装置の転動作用の接線方向に噴霧することを特徴とする請求項6、7、8または9記載のフィルムコーティング顆粒の製造方法。
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