JP4711472B2 - フィルムコーティング顆粒 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、薬物を含有した素顆粒の外側にフィルムコーティングされた顆粒に関わる。
【0002】
【従来の技術】
医薬品製剤は服用時に感じる薬物の味の不快感を低減するために、甘味料や香料を加える方法、水溶性高分子のフィルムコーティングによって薬物の味をマスクする方法、水系ラテックスと可塑剤によるフィルムコーティングや水系ラテックスと可塑剤に水溶性高分子を配合したフィルムコーティングによって薬物の味をマスクする方法等が知られている。
また、特開平1−502589号公報に開示されるエチルセルロースとアクリルポリマーを組み合わせて味をマスクする方法がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の方法は、味のマスクが不十分であったり、顆粒に十分なマスクを施すためには、多くのコーティング量を必要とし、コーティング時に顆粒の合一の発生が多く、コーティング性が劣っていたり、味をマスクするためにコーティング量を増やすと味はマスクされても薬物が速やかに溶出しなくなる等の問題を有していた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者はこうした現状に鑑み、素顆粒の性質、および、膜の組成を鋭意検討した結果、本発明に到達したものである。
即ち、本発明は:
(1)薬物および平均重合度が60〜375である結晶セルロースを30重量%以上含有する素顆粒を、(A)エチルセルロースと(B)アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーを含み、前記成分(A)と前記成分(B)の固形分の重量比が1.0:0.25〜1.0:0.64であるフィルムで被覆してなり、且つ薬物の溶出性が、日本薬局方第13改正日本薬局方崩壊試験法の試験液第1液を使用し、日本薬局方第13改正溶出試験法第2法(パドル法(100rpm))において、溶出試験開始1分までの薬物溶出率が15%未満であり、溶出試験開始20分後には薬物溶出率が60%以上になることを特徴とする、破裂溶出型フィルムコーティング顆粒を提供する。
【0005】
以下、本発明について説明する。
〔I〕素顆粒
本発明で使用される素顆粒は、薬物を含有し、結晶セルロースを5重量%以上含有しなければならない。
即ち、本発明の素顆粒は、薬物と結晶セルロースとを上記配合比率で混合したものでもよく、結晶セルロースまたは結晶セルロースと薬物および/またはその他の成分を核粒子とし、その表面に薬物を担持させてもよい。
(i) 特に、賦形剤としての結晶セルロース
結晶セルロースが5重量%未満の配合量であると、他の成分の性質にもよるが、通常真損度が高くなり、球形度が低くなり、タッピング見掛密度が小さくなるためコーティング時に均一なフィルムの形成が難しく、かつ、吸水性が低くなるので溶出試験において水が浸透した際に、素顆粒の膨潤が僅かなため、破裂型溶出を示さなくなる。
より高い球形度、より高い見掛密度、より高い吸水性を付与するためには、素顆粒中の結晶セルロースは15重量%以上が好ましく、さらに好ましくは25重量%以上である。
【0006】
なお、ここでいう破裂型溶出とは、フィルムコーティング顆粒の溶出試験において、溶出試験開始直後の薬物の溶出速度に比べて、ある時間が経過した後の薬物溶出速度が速くなることを指す。
溶出試験開始1分までの薬物溶出率は15%未満、好ましくは12%未満、さらに好ましくは10%未満であるが、その後薬物溶出速度が上昇し、溶出試験開始20分後には薬物溶出率が50%以上、好ましくは55%以上、さらに好ましくは60%以上になることである。
本発明で使用される結晶セルロースの重合度は60〜375であり、100〜300が好ましく、さらには120〜280であることが好ましい。
【0007】
(ii)素顆粒の特性
1)本発明の素顆粒は、タッピング見掛密度が0.40g/cm3 以上が好ましい。
タッピング見掛密度が0.40g/cm3 未満の場合は、素顆粒が軽質になり、コーティング時に均一なフィルムを形成するのが難しいため、破裂型溶出を示し難い。タッピング見掛密度は、より好ましくは0.50g/cm3 以上、さらに好ましくは0.65g/cm3 以上である。
タッピング見掛密度の上限については特に制限されないが、この値が大きすぎるとフィルムコーティング時に操作性が低下するので、操作性に影響を及ぼさない範囲が好ましい。
2)本発明の球形素顆粒は、球形度が0.5以上が好ましい。球形度が0.5未満の場合、均一なフィルムを形成し難く、破裂型溶出を示し難い。球形度0.7以上が好ましく、球形度0.8以上がさらに好ましい。
3)結晶セルロースを10重量%以上配合する核粒子の表面に薬物を担持させた場合は、より破裂型溶出の効果が得られ易く好ましい形態の一つである。
ここで使用される核粒子の結晶セルロースの含有量は25重量%が好ましく、50重量%以上がより好ましい。
【0008】
(iii) 素顆粒成分
1)その他の配合成分
その他の配合成分としては、医薬品として一般的に使用される成分である。
例えば、素顆粒中に、結合剤(例、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等)、
フィルムコーティング剤(例、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、エチルセルロース、エチルセルロース水分散液、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE、メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーS、メタアクリル酸コポリマーLD、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS等)、
【0009】
界面活性剤(例、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム糖)、
賦形剤(例、トウモロコシデンプン、コメデンプン、粉糖、乳糖、結晶セルロース、粉末セルロース等)、
崩壊剤(例、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、部分アルファー化デンプン等)、
無機物質(例、タルク、ステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、酸化チタン等)、
その他(例、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、硬化油、マクロゴール、等)を配合してもよい。
【0010】
2)薬物成分
本発明で使用の薬物成分とは、人および動物の疾病の治療、予防、診断に使用されるものであって、器具機械ではないもののことである。
例としては、抗癲癇剤(例、フェニトイン、アセチルフェネトライド、トリメタジオン、フェノバルビタール、プリミドン、ニトラゼパム、バルプロ酸ナトリウム、スルチアム等)、
解熱鎮痛消炎剤(例、アセトアミノフェン、フェニルアセチルグリシンメチルアミド、メフェナム酸、ジクロフェナクナトリウム、フロクタフェニン、アスピリン、アスピリンアルミニウム、エテンザミド、オキシフェンブタゾン、スルピリン、フェニルブタゾン、イブプロフェン、アルクロフェナク、ナプロキセン、ケトプロフェン、塩酸チノリジン、塩酸ベンジダミン、塩酸チアラミド、インドメタシン、ピロキシカム、サリチルアミド等)、
【0011】
鎮暈剤(例、ジメンヒドリナート、塩酸メクリジン、塩酸ジフェニドール等)、麻薬(例、塩酸アヘンアルカロイド、塩酸モルヒネ、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、オキシメテバノール等)、
精神神経用剤(例、塩酸クロルプロマジン、マレイン酸レボメプロマジン、マレイン酸ペラジン、プロペリシアジン、ペルフェナジン、クロルプロチキセン、ハロペリドール、ジアゼパム、オキサゼパム、オキサゾラム、メキサゾラム、アルプラゾラム、ゾテピン等)、
骨格筋弛緩剤(例、クロルゾキサゾン、カルバミン酸クロルフェネシン、クロルメザノン、メシル酸プリジノール、塩酸エペリゾン等)、
自律神経用剤(例、塩化ベタネコール、臭化ネオスチグミン、臭化ピリドスチグミン等)、
鎮痙剤(例、硫酸アトロピン、臭化ブトロピウム、臭化ブチルスポコラミン、臭化プロパンテリン、塩酸パパベリン等)、
【0012】
抗パーキンソン剤(例、塩酸ビペリデン、塩酸トリヘキシフェニジル、塩酸アマンタジン、レボドパ等)、
眼科用剤(例、ジクロルフェナミド、メタゾラミド等)、
抗ヒスタミン剤(塩酸ジフェンヒドラミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、プロメタジン、メキタジン、フマル酸クレマスチン等)、
強心剤(例、アミノフィリン、カフェイン、dl−塩酸イソイソプロテレノール、塩酸エチレフリン、塩酸ノルフェネリン、ユビデカレノン等)、
不整脈用剤(例、塩酸プロカインアミド、ピンドロール、酒石酸メトプロロール、ジソビラミド等)、
【0013】
利尿剤(例、塩化カリウム、シクロペンチアジド、ヒドロクロロチアジド、トリアムテレン、アセタゾラミド、フロセミド等)、
血圧降下剤(例、臭化ヘキサメトニウム、塩酸ヒドララジン、シロシンゴピン、レセルピン、塩酸プロプラノール、カプトプリル、メチルドパ等)、
血管収縮剤(例、メシル酸ジヒドロエルゴタミン等)、
血管拡張剤(例、塩酸エタフェノン、塩酸ジルチアゼム、塩酸カルボクロメン、四硝酸ペンタエリスリトール、ジピリダモール、硝酸イソソルビド、ニフェジピン、クエン酸ニカメタート、シクランデレート、シンナリジン等)、
動脈硬化用剤(例、リノール酸エチル、レシチン、クロフィブラート等)、
循環器官用剤(例、塩酸ニカルジピン、塩酸メクロフェノキサート、チトクロームC、ピリジノールカルバメート、ピンボセチン、ホパンテン酸カルシウム、ペントキシフィリン、イデベノン等)、
【0014】
呼吸促進剤(例、塩酸ジメフリン等)、
鎮咳去痰剤(例、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、臭化水素酸デキストロメトルファン、ノスカピン、塩酸L−メチルシステイン、塩酸ブロムヘキシン、テオフィリン、塩酸エフェドリン、アンレキサノクス等)、
利胆剤(例、オサルミド、フェニルプロパノール、ヒメクロモン等)、
整腸剤(例、塩化ベルベリン、塩酸ロペラミド等)、
消化器官用剤(例、メトクロプラミド、フェニペントール、ドンペリドン等)、ビタミン剤(例、酢酸レチノール、ジヒドロタキステロール、エトレチナート、塩酸チアミン、硝酸チアミン、フルスルチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサール、ニコチン酸、パンテチン、シアノコバラミン、ビオチン、アスコルビン酸、フィトナジオン、メナテトレノン等)、
【0015】
抗生物質(例、ベンジルペニシリンベンザチン、アモキシシリン、アンピシリン、シクラシリン、セファクロル、セファレキシン、エリスロマイシン、キタサマイシン、ジョサマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、グリセオフルビン、セフゾナムナトリウム等)、
化学療法剤(例、スルファメトキサゾール、イソニアジド、エチオナミド、チアゾスルホン、ニトロフラントイン、エノキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン等)
などが挙げられる。これらの中で、味、特に苦味の強い薬物を使用する場合に、本発明は大きな効果を上げることができる。
【0016】
(iii) 素顆粒の作成方法等
1)素顆粒の作成方法は、公知の方法が利用でき、例えば、素顆粒に使用する成分に水を加えて混練した後、適当な大きさに押出し、マルメライザー等の機械で球形化する「押し出し−マルメ法」や核粒子に薬物を担持させる方法(修飾造粒法)などが利用できる。
2)作成用補助成分
核粒子に薬物成分を担持させる場合は、担持させることを容易にするために、あるいは、その薬物が後加工工程で剥がれぬように、あるいは、薬物の溶出速度を調製するために、あるいは、安定化させるために、
結合剤(例、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等)、
フィルムコーティング剤(例、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、エチルセルロース、エチルセルロース水分散液、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE、メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーS、メタアクリル酸コポリマーLD、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS等)、
【0017】
界面活性剤(例、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム糖等)、
賦形剤(例、トウモロコシデンプン、コメデンプン、粉糖、乳糖、結晶セルロース、粉末セルロース等)、
崩壊剤(例、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、部分アルファー化デンプン等)、
無機物質(例、タルク、ステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、酸化チタン等)、
その他(例、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、硬化油、マクロゴール等)
などを併用して薬物を担持させても良い。
【0018】
3)薬物担持法
薬物の担持、及び、フィルムの被覆のバッチバラツキ低減などの目的で、素顆粒の外側に、薬物と水溶性高分子(例、ヒドロキシメチルセルロース等)の2層構造(素顆粒の外側に水溶性高分子、その外側に薬物を被覆する場合、及び、素顆粒の外側に薬物、その外側に水溶性高分子を被覆する場合)及び3層構造(素顆粒の外側に水溶性高分子、その外側に薬物、さらにその外側に水溶性高分子を被覆する場合)を持たせても良い。
【0019】
核粒子に薬物を担持させる方法は公知の方法を使用することができる。
その例としては、▲1▼ 核粒子を遠心流動型コーティング装置中で転動させながら、結合剤水溶液を連続的に噴霧し、同時に薬物粉末(必要に応じて賦形剤を含有)を散布する方法、
▲2▼ 核粒子を流動層コーティング装置(あるいは転動流動型コーテイング装置)で流動させながら、結合剤水溶液中に薬物を溶解あるいは懸濁させた液を噴霧する方法、
▲3▼ 核粒子を高速攪拌造粒装置にて転動させながら、核粒子が吸収できる量の薬物と結合液の水溶液を添加する方法、
▲4▼ 薬物と結合液の水溶液中に核粒子を浸漬する方法などを挙げることができる。
いずれの方法においても必要に応じて、乾燥し、合一した粒子を除去するなどの操作を行い、フィルムの被覆に供する。
【0020】
4)薬物担持量
薬物担持量は薬物の投与量によって決まる。
なお、ここでいう薬物担持量は、素顆粒の表面に担持させる薬物の量を指す。
あえて例を示せば、極微量で薬効が発現する薬物の場合は素顆粒の0.01重量%程度、薬効の発現に多量の薬物が必要な場合は75重量%程度の担持量である。本発明において汎用的な担持量は0.5〜50重量%である。
フィルムの被覆のバッチバラツキ低減などの目的で、素顆粒の外側に、水溶性高分子(例、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、等)の2層構造(素顆粒の外側に水溶性高分子)を持たせてもよい。
【0021】
〔II〕フィルムコーティング
本発明のフィルムコーティング顆粒は、平均重合度が60〜375である結晶セルロースを5重量%以上含有する素顆粒の外側に(A)エチルセルロースと(B)アクリルポリマーを含み、前記成分(A)と前記成分(B)の固形分の重量比が1.0:0.1〜0.2:1.0であるフィルムを有する必要がある。
【0022】
(i) コーティングの配合比率
エチルセルロース(A) の重量1.0に対してアクリルポリマー(B) の重量が0.1未満の場合、可塑剤等の配合にもよるが、アクリルポリマー(B) の配合効果が低いため、溶出試験開始直後から急激に薬物が溶出したり、逆にある時間が経過した後も溶出速度が速くならず、破裂型溶出を示し難いため好ましくない。
また、アクリルポリマー(B) の重量1.0に対してエチルセルロース(A) の重量が0.2未満である場合、ある時間が経過した後も溶出速度が速くならず、破裂型溶出を示し難いため好ましくない。
エチルセルロース(A) とアクリルポリマー(B) の重量比が、1.0:0.20〜0.4:1.0である場合、破裂型溶出の効果が高いため好ましく、更に好ましくは、(A) と(B) の重量比が1.0:0.25〜0.5:1.0である。
【0023】
(ii)エチルセルロース(A)
1)本発明で使用されるエチルセルロース(A) とは、The UnitedStates Pharmacopia23(米国)のGuide to General Chapters/General Test and Assays/<431>Methoxy Determinationの方法(但し、0.1Nチオ硫酸ナトリウム液1mLはエトキシル基0.7510mgに相当)によって測定されるエトキシル基(−0C2 H5 )の含有率が41.0〜51.0重量%のものである。
【0024】
エチルセルロース(A)を主成分とする「実質的に」直径1μm以下の球形固体粒子を含む水分散体の使用が好ましい。1μmを超える場合は、アクリルポリマーとの均一混合が難しくなるため好ましくない。
ここで、「実質的」という意味は、直径1μmを越える球形固体粒子(但し、最大で5μm程度)がフィルムコーティング剤としての成膜性や分散安定性を阻害しない程度の量の存在を認めているという事であり、その量は0.5体積%以下である。
2)エチルセルロース(A)を含む球形固体粒子は小さい方が好ましいが、その分布としては直径0.6μm以下のものは95体積%以上、0.5μm以下のものは75体積%以上、0.4μm以下のものは1体積%以上であることが好ましい。
【0025】
球形固体粒子の「球形」とは球形度が0.7以上のことを意味し、0.8以上であることがより好ましい。エチルセルロース(A) 以外の副成分としては、球形固体粒子に内包するか、あるいは複合体化した状態を呈するもので、球形固体粒子の水分散体を製造するために必要な助剤、あるいは球形固体粒子の水中での分散安定性を維持するのに必要な助剤、あるいは細菌汚染を防止するための助剤などである。
例としては、界面活性剤(例、ラウリル硫酸ナトリウム)、乳化助剤(例、セチルアルコール)、消泡剤、静菌剤、殺菌剤などを挙げることができる。
その配合量はエチルセルロース(A) に対して30重量%以下、好ましくは20重量%以下である。
【0026】
3)上記のようなエチルセルロース(A) の水分散体は、これ自身で使用する場合は最低成膜温度が高すぎて実用に供しない。そこで使用するアクリルポリマーの種類と配合量によっては、可塑剤を配合し、エチルセルロースの球形固体粒子の最低成膜温度を下げる必要がある。
エチルセルロースの球形固体粒子の水分散体は種々の方法で製造され、例えばPharmaceutical Technology,Vol.11,No.3,p56−68(1987)に示されているようなエマルジョン−溶媒蒸発法、あるいは転相法などで製造される。
例としてはFMC社(米国)製造の「Aquacoat」ECD−30などを上げることができる。
また、予め可塑剤を混合されて供与されるColorcon社(米国)の「Surelease」も本発明の水分散体の例として挙げることができる。
【0027】
4)可塑剤
本発明では、エチルセルロース(A) と共に必要に応じて可塑剤を配合しても良い。
本発明で使用される可塑剤はエチルセルロース(A) のガラス転移温度および最低成膜温度を低下させる物質である。
例としては、アセチル化モノグリセリド、クエン酸トリエチル、トリアセチン、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジメチル、中鎖脂肪酸トリグリセリド、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、アジピン酸ジブチル、オレイン酸、オレイノールなどを挙げることができる。
可塑剤の選択は、薬物の溶解性と製剤設計(薬物溶出速度、保存安定性の設定)に大きく依存する。
【0028】
一例を挙げれば、薬物の溶解度が低い場合はフィルムコーティングのバッチバラツキを低減できるのでアセチル化モノグリセリドの使用が好ましく、また、薬物の溶解度が高い場合はフィルムコーティング量を少なくし得るクエン酸トリエチルの使用が好ましい。
可塑剤の配合量は、配合するアクリルポリマーの種類と配合量、最低成膜温度、フィルムの熱軟化による融着性(フィルムコーティング操作に影響)、保存安定性などを考慮して決められるが、おおよそエチルセルロースを主成分とする球形固体粒子100部に対して1〜70部、好ましくは1〜40部程度である。
【0029】
(iii) アクリルポリマー(B)
本発明で使用されるアクリルポリマーとは、医薬品添加剤として使用可能なアミノアルキルメタアクリレートコポリマー、メタアクリル酸コポリマー、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーである。
アクリルポリマーは、水に分散可能なアクリルポリマーの使用が好ましい。
水中に分散可能なアクリルポリマーを含有する水分散体の例としては、Rohm社(独国)製造の「EUDRAGIT L30D−55」、「EUDRAGIT RS30D」、「EUDRAGIT RL30D」、「EUDRAGITNE30D」を挙げることができる。
(iv)その他の成分
また、本発明においては、薬物の溶出速度を調節する目的でフィルムに水溶性物質(例、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マンニトール等)等を配合しても良い。
【0030】
〔III〕フィルムコーティング顆粒
(i) 被覆方法
素顆粒に上記フィルムコーティング剤からなるフィルムを被覆する方法としては、流動層型コーティング装置(例、フロイント産業(株)製「フローコーター」)、ワースターカラム付き流動層型コーティング装置(例、グラット社製GPCGシリーズ)、遠心流動型コーティング装置(例、フロイント産業(株)製「CF−グラニュレーター」)、転動流動型コーティング装置(例、(株)パウレック製「マルチプレックス」、不二パウダル(株)製「ニューマルメライザー」、フロイント産業(株)製「スパイラフロー」、同「ローターコンテナー」付き「フローコーター」)などの汎用の方法を使用することができる。
特に好ましくは、転動流動型コーティング装置を使用した場合であり、さらに好ましくは装置の転動作用の接線方向にフィルムコーティング剤を噴霧する方法である。
【0031】
(ii)転動流動型コーティング装置とは、略円筒型の空間と、底部には被コーティング粒子を転動させるための円盤と温風を供給するためスリットあるいは小孔を有し、上部には温風を排出するための排風口(通常はバグフィルター付き)を持つものであり、フィルムコーティング液を噴霧するためのスプレーノズルが上部から下部に向かって、あるいは略円筒型空間下部の円盤の回転の接線方向に取り付けられている。
略円筒型空間の形状、転動用の円盤の形状、温風を供給するためのスリットあるいは小孔の形状および位置、スプレーノズルの形状(噴霧能力、異物の付着防止)の違いによって、種々の装置が提案されているが、本発明においてはいずれの装置を用いてもよい。特に好ましい装置は前述の転動流動型コーティング装置である。
【0032】
(iii) フィルムコーティング顆粒の粒度分布
このようにして得られたフィルムコーティング顆粒の粒度分布は「実質的に」75〜1700μmの範囲内であることが好ましい。さらに好ましくは75〜1000μmの範囲内であり、さらに好ましくは75〜850μm、さらに好ましくは75〜600μmの範囲内である。
この範囲内の粒度分布であると、服用が容易である、食品などに混合して服用することが可能である、第13改正日本薬局方製剤総則で規定の「散剤」あるいは「顆粒剤」との混合性が良いので調剤しやすい、他の賦形剤と混合して打錠してもフィルムの損傷が少ない、などの利点を有する。
ここで、「実質的」という意味は、前述の利点を損なわない程度に75μm未満、あるいは1700μmを越える粒子を含んでいても良いということである。
【0033】
本発明のフィルムコーティング顆粒は、そのまま投薬されるか、あるいはカプセルに充填して使用されるか、あるいは他の薬剤と混合して使用されるか、あるいは他の賦形剤や薬物や薬物を含む顆粒やフィルムコーティングを施した顆粒と混合後、打錠して錠剤とし、使用される。前述の通り、食品や経管流動食などに混合して投薬することも可能である。
【0034】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を制限しない。
<物性の測定方法>
素顆粒などの物性の測定方法を以下にまとめて記す。
▲1▼ 結晶セルロースの重合度
第13改正日本薬局方結晶セルロースの確認試験(3)を用いた。
▲2▼ 素顆粒、エチルセルロースを主成分とした球形固体粒子の球形度[−]
粒子形状を光学顕微鏡、電子顕微鏡などを用いて撮影し、その50個の粒子の短径と長径の比(短径/長径)の平均値をとった。
▲3▼ 素顆粒の粒度分布[重量%]
ロータップ式篩振盪機(平工製作所製シーブシェーカーA型)によりJIS標準篩(Z8801−1987)を用いて試料10gを15分間篩分することにより粒度分布を測定した。
▲4▼ エチルセルロースを主成分とした球形固体粒子の粒度分布[体積%]
試料の水分散体を適当な透過率を示す濃度に水で希釈し、1分間超音波分散した後、攪拌しながら、相対屈折率1.2、取り込み回数10回、の条件で、レーザー回折式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、LA−910型)にて測定し、体積基準の粒子径分布を求めた。
【0035】
(実施例1)
転動流動コーティング装置((株)パウレック製、「マルチプレックス」MP−25型)に重合度220の結晶セルロース100重量%(水分を除く)からなる球形度0.9、タッピング見掛密度0.97g/cm3 の球形核粒子(旭化成工業(株)製、「セルフィア」CP−305)を仕込み、カフェイン3部、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達(株)製、Lタイプ)2部、水95部の薬物被覆液を噴霧し、結晶セルロースが95重量%、カフェインが3重量%を含有する、球形度0.9、タッピング密度0.93g/cm3の球形素顆粒を得た。得られた素顆粒の粒度分布を表1に記す。
【0036】
次に、エチルセルロース水分散液(「Aquacoat」ECD−30、固形分濃度:30重量%、FMC社製造、旭化成工業(株)販売)43部、クエン酸トリエチル3.2部、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマー・エマルジョン(EUDRAGIT NE30D、固形分濃度:30重量%、(株)樋口商会販売)13部、水40.8部の割合からなるフィルムコーティング液を調製し、上記素顆粒1.0kgに対し、「マルチプレックス」MP−01型を用いて、回転板回転数:380rpm、タンジェンシャルボトムスプレーを使用し、スプレーエアー圧:1.6kgf/cm2、スプレーエアー流量:40L/min、給気温度:75℃、排気温度:36℃、風量:75m3 /hr、コーティング液供給速度:21g/minの条件で、素顆粒に対して、コーティング液の固形分として、7.5重量%の量までコーティングした。得られたコーティング顆粒は、棚段で40℃、30分間乾燥した後、さらに80℃、60分間キュアリング(加熱成膜処理)した。
【0037】
使用した「Aquacoat」中の固体粒子は球形であり、その粒度分布を表2に示す。
薬物の溶出率[%]は日本分光工業(株)製、自動溶出試験機DT−610を用い、パドル法(100rpm)にて測定した。試験液は第13改正日本薬局方一般試験法崩壊試験法の試験液第1液を用いた。測定は3回行い、その平均値をとった。
コーティング量とカフェインの溶出率の結果を図1に示す。図に示されるように溶出時間4分までの薬物溶出速度に比べて、それ以降は急激に薬物溶出速度が速くなる破裂型溶出を示した。
【0038】
(実施例2)
フィルムコーティング液の組成を、エチルセルロース水分散液35.3部、クエン酸トリエチル2.6部、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマー・エマルジョン22.7部、水39.4部とし、コーティング時の給気温度:61℃、排気温度:30℃、コーティング液供給速度:19g/minとした以外は、実施例1と同様に操作して、素顆粒に対して、コーティング液の固形分として、15.0重量%のフィルムコーティング顆粒を調製した。
コーティング量とカフェインの溶出率の結果を図2に示す。図に示されるように溶出時間5分までの薬物溶出速度に比べてそれ以降は急激に薬物溶出速度が速くなる破裂型溶出を示した。
【0039】
(実施例3:参考例)
フィルムコーティング液の組成を、エチルセルロース水分散液29.7部、クエン酸トリエチル2.2部、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマー・エマルジョン29.7部、水38.4部とし、コーティング時の給気温度:56℃、排気温度:27℃、コーティング液供給速度:19g/minとした以外は、実施例1と同様に操作して、素顆粒に対して、コーティング液の固形分として、10.0重量%のフィルムコーティング顆粒を調製した。
コーティング量とカフェインの溶出率の結果を図3に示す。図に示されるように溶出時間5分までの薬物溶出速度に比べてそれ以降は急激に薬物溶出速度が速くなる破裂型溶出を示した。
【0040】
(実施例4:参考例)
フィルムコーティング液の組成を、エチルセルロース水分散液33.3部、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマー・エマルジョン33.3部、水33.4部とし、コーティング時の給気温度:53℃、排気温度:27℃、コーティング液供給速度:19g/minとした以外は、実施例1と同様に操作して、素顆粒に対して、コーティング液の固形分として、15.0重量%のフィルムコーティング顆粒を調製した。
コーティング量とカフェインの溶出率の結果を図4に示す。図に示されるように溶出時間5分までの薬物溶出速度に比べてそれ以降は急激に薬物溶出速度が速くなる破裂型溶出を示した。
【0041】
(実施例5:参考例)
マルチプレックスに重合度220の結晶セルロースを30重量%含有する球形度0.9、タッピング見掛密度0.8g/cm3 の球形核粒子(旭化成工業(株)製、「セルフィア」LC−203)を仕込み、リボフラビン10部、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達(株)製、Lタイプ)2部、水88部の薬物被覆液を噴霧し、結晶セルロース27重量%、リボフラビンが2重量%を含有する、球形度0.9の球形素顆粒を得た。
次に、エチルセルロース水分散液33.3部、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマー・エマルジョン33.3部、水33.4部の割合からなるフィルムコーティング液を調製し、上記素顆粒1.0kgに対し、マルチプレックスを用いて、実施例4の条件で素顆粒に対して、コーティング液の固形分として5.0重量%のフィルムコーティング顆粒を調製した。
コーティング量とリボフラビンの溶出率の結果を図5に示す。図に示されるように溶出時間5分までの薬物溶出速度に比べてそれ以降は急激に薬物溶出速度が速くなる破裂型溶出を示した。
【0042】
(比較例1)
フィルムコーティング液の組成を、エチルセルロース水分散液53.3部、クエン酸トリエチル4.0部、水42.7部とした以外は、実施例1と同様に操作して、素顆粒に対して、コーティング液の固形分として、5.0および10.0重量%のフィルムコーティング顆粒を調製した。
コーティング量とカフェインの溶出量の結果を図6に示す。図に示されるように5.0重量%の場合は、溶出時間1分から急激に薬物が溶出しており、10.0重量%の場合は、溶出時間20分でも薬物の溶出が少なく、破裂型溶出を示さなかった。
【0043】
(比較例2)
フィルムコーティング液の組成を、エチルセルロース水分散液6.0部、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマー・エマルジョン60.7部、水33.3部とし、コーティング時の給気温度:48℃、排気温度:25℃、コーティング液供給速度:18g/minとした以外は、実施例1と同様に操作して、素顆粒に対して、コーティング液の固形分として、5.0重量%のフィルムコーティング顆粒を調製した。
コーティング量とカフェインの溶出量の結果を図7に示す。図に示されるようにコーティング量5.0重量%で、溶出時間20分でも薬物の溶出が少なく、破裂型溶出を示さなかった。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【発明の効果】
本発明のフィルムコーティング顆粒は、溶出試験開始直後の薬物溶出速度が遅く、ある時間以降の薬物溶出速度が急激に速くなる破裂型溶出を示すため、薬物の味をマスキングした顆粒として極めて好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1のコーティング量7.5重量%のコーティング顆粒の溶出試験における主薬の溶出図である。
【図2】 実施例2のコーティング量15.0重量%のコーティング顆粒の溶出試験における主薬の溶出図である。
【図3】 実施例3(参考例)のコーティング量10.0重量%のコーティング顆粒の溶出試験における主薬の溶出図である。
【図4】 実施例4(参考例)のコーティング量15.0重量%のコーティング顆粒の溶出試験における主薬の溶出図である。
【図5】 実施例5(参考例)のコーティング量5.0重量%のコーティング顆粒の溶出試験における主薬の溶出図である。
【図6】 比較例1のコーティング量5.0および10.0重量%のコーティング顆粒の溶出試験における主薬の溶出図である。
【図7】 比較例2のコーティング量5.0重量%のコーティング顆粒の溶出試験における主薬の溶出図である。
Claims (1)
- 薬物および平均重合度が60〜375である結晶セルロースを30重量%以上含有する素顆粒を、(A)エチルセルロースと(B)アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーを含み、前記成分(A)と前記成分(B)の固形分の重量比が1.0:0.25〜1.0:0.64であるフィルムで被覆してなり、且つ薬物の溶出性が、日本薬局方第13改正日本薬局方崩壊試験法の試験液第1液を使用し、日本薬局方第13改正溶出試験法第2法(パドル法(100rpm))において、溶出試験開始1分までの薬物溶出率が15%未満であり、溶出試験開始20分後には薬物溶出率が60%以上になることを特徴とする、破裂溶出型フィルムコーティング顆粒。
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