JP4710128B2 - インクジェットプリンタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットプリンタに関し、特に、プリンタ本体の制御回路と接続するための接続基板、及び印字ヘッドに気泡が流入するのを阻止するインク貯溜室を備える印字ヘッドユニットを、簡単な構造でかつ小型に構成することができるインクジェットプリンタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、印字ヘッドからインクを噴射して印字動作を行うインクジェットプリンタにおいて、噴射するインクを貯蔵するインクタンクから、インク供給管(チューブ)を通して、印字ヘッドにインクを供給するチューブ供給形式を採用したインクジェットプリンタがある。
【0003】
このインクジェットプリンタの印字ヘッドは、インク吐出口に連通したインク流路を形成したインク流路基板の片面に、圧電素子及び加熱素子等からなるアクチュエータが重ねられたものである。インク流路内にインクを充填させた状態において、このアクチュエータに電圧を印加すると、インクは所定の圧力で吐出口からインク滴として吐出される。
【0004】
このアクチュエータへの電圧の印加は、インクジェットプリンタ本体に設けられた制御回路によって制御されるため、制御回路とアクチュエータとは電気的に接続される必要がある。このためアクチュエータには第1のフレキシブルケーブルが接続され、制御回路には第2のフレキシブルケーブルが接続され、両者はキャリッジ上で接続基板を介して接続される。
【0005】
このチューブ供給形式のインクジェットプリンタによれば、インクタンクをキャリッジに搭載する必要がないので、キャリッジを小型化、軽量化することができる。小型化、軽量化されたキャリッジでは、動作するために必要なトルクが小さくなるので、キャリッジを動作させるモータを小型化して、装置本体を小型化することや、キャリッジを高速で動作させて高速印字を行うことができる。また、キャリッジと別体で配設されるインクタンクを大容量化することができ、インクタンクの交換時期(インクの供給期間)を長くすることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらチューブ供給形式のインクジェットプリンタでは、チューブの外壁をとおして、あるいはチューブ両端の接続部から空気が侵入して、インク中に気泡を発生させやすく、その気泡により印字ヘッドが不吐出になりやすいという問題がある。一方、上述した接続基板上で、プリンタ本体に設けられた制御回路からのフレキシブルケーブルと、印字ヘッドからのフレキシブルケーブルとを接続しなければならない。気泡を除去するための装置や接続基板を、印字ヘッドに隣接して配置することは、印字ヘッドまわりの構造の複雑化、キャリッジの大型化を招いてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、プリンタ本体の制御回路と接続するための接続基板、及び印字ヘッドに気泡が流入するのを阻止するインク貯溜室を備える印字ヘッドユニットを、簡単な構造でかつ小型に構成することができるインクジェットプリンタを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために請求項1記載のインクジェットプリンタは、インクを吐出するインク吐出口が形成された表面と複数の駆動素子とが設けられているプレート型の印字ヘッドと、前記複数の駆動素子と配線接続がなされたフレキシブルな第1の配線部材と、前記印字ヘッドを支持する支持筐体とを有するヘッドユニットと、そのヘッドユニットを支持し、印字媒体に沿って移動可能なキャリッジと、そのキャリッジ外に設けられ、前記駆動素子を制御する制御回路と、前記第1の配線部材と前記制御回路とを接続するフレキシブルな第2の配線部材とを備え、前記支持筐体に前記印字ヘッドの前記表面と反対側の面に対向するとともに平行に設けられ、前記キャリッジ外のインクタンクから供給されるインクを貯溜し、前記印字ヘッドへ供給するインク貯溜室と、前記支持筐体に、前記インク貯溜室を挟んで前記印字ヘッドの反対側に、前記印字ヘッドの前記表面と反対側の面と平行に設けられ、前記第1の配線部材と前記第2の配線部材とに配線接続される接続基板と、前記印字ヘッドの前記表面と対向する搬送面に前記印字媒体を搬送する搬送手段とを備え、前記ヘッドユニットと、前記接続基板とは、前記搬送面と平行に配置されている。
【0009】
この請求項1記載のインクジェットプリンタによれば、インクタンクから供給されるインクは、支持筐体に支持され、プレート型の印字ヘッドと平行に設けられたインク貯溜室により貯溜される。その後、支持筐体に支持される該印字ヘッドへ供給される。このインク貯溜室を挟んで印字ヘッドの反対側には、印字ヘッドの表面と反対側の面と平行に接続基板が設けられている。制御回路に接続されるフレキシブルな第2の配線部材と、印字ヘッドに設けられた複数の駆動素子と配線接続されるフレキシブルな第1の配線部材とは、この接続基板を介して配線接続される。このため制御回路により駆動素子は制御される。かかる第1の配線部材と支持筐体とはヘッドユニットに備えられ、このヘッドユニットはキャリッジにより支持される。そして、ヘッドユニットは、キャリッジにより印字媒体に沿って移動される。
【0010】
請求項2記載のインクジェットプリンタは、請求項1に記載のインクジェットプリンタにおいて、前記インク貯留室内において、前記印字媒体が搬送される方向の一方側に所定空間を空けて、前記搬送される方向の他方側から前記一方側に向けて前記搬送面と平行に立設する隔壁部材を備えている。
【0011】
請求項3記載のインクジェットプリンタは、請求項2に記載のインクジェットプリンタにおいて、前記インク貯溜室は、前記インクタンクから供給されるインクが流入する流入口と、前記印字ヘッドへインクを供給する供給口とを備え、前記流入口と、前記供給口とは、前記他方側に設けられている。
【0012】
請求項4記載のインクジェットプリンタは、請求項1から3のいずれかに記載のインクジェットプリンタにおいて、前記第1の配線部材上に実装され、前記制御回路から送信される信号を前記駆動素子に対応した信号に変換するドライバ回路と、前記支持筐体から前記接続基板側に向けて前記搬送面に対して斜めに立設する立壁とを備え、前記第1の配線部材は、前記ドライバ回路が前記立壁と対向するように、前記立壁の外側を通って前記接続基板に接続されている。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例であるインクジェットプリンタ1の展開側面図である。図1に示すように、このインクジェットプリンタ1は、略箱状体に難燃性のプラスチックで形成されたプリンタ本体2と、その上部に着脱可能に装着された印字ヘッドユニット3と、インクタンク4a〜4dと、印字ヘッドユニット3とインクタンク4a〜4dとを連通させるチューブ5a〜5dと、パージ装置6と、ガイドロッド7とを備えている。
【0014】
印字ヘッドユニット3は、インクを吐出して印字用紙PPに対し印字を行う複数個の印字ヘッド15(図3参照)を搭載するものである。この印字ヘッドユニット3は、プリンタ本体2の下部に設けられたインクを貯溜するインクタンク4a〜4dとチューブ5a〜5dを介して連通されており、かかるインクタンク4a〜4dからチューブ5a〜5dを介してインクの供給を受けている。この印字ヘッドユニット3はキャリッジ3aに搭載されており、かかるキャリッジ3aは公知のようにベルトに装着されている。該ベルトはモータに取着されたローラに巻回されている。このため、モータが回転するとベルトが駆動され、駆動された距離分、キャリッジ3a(印字ヘッドユニット3)を移動させることができるようになっている。この印字ヘッドユニット3の詳細については図2及び図3において後述する。
【0015】
ガイドロッド7は、キャリッジ3aにスライド可能に挿嵌され、キャリッジ3aを印字用紙PPの搬送方向と直交する方向(A)に移動可能に支持している。これにより、キャリッジ3aに搭載された印字ヘッドユニット3は、ガイドロッド7に平行方向、即ち、プリンタ本体2の長手方向(A)へ往復移動することができる。
【0016】
インクタンク4は、印字ヘッドユニット3に供給するインクを貯溜しておくためのものであり、印字ヘッドユニット3の下方に配設されている。このインクタンク4と印字ヘッドユニット3との位置関係は、重力方向(B)に対して下であるようになっている。インクタンク4は、キャリッジ3aの移動方向に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが密封されている4つのインクタンク4a〜4dで構成されており、各インクタンク4a〜4dには、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの各インクを印字ヘッドユニット3に供給するためのチューブ5a〜5dの一端がそれぞれ取り付けられている。各チューブ5a〜5dの他端は、上記した印字ヘッドユニット3に連通しており、各インクタンク4a〜4d内に充填されているインクは、印字ヘッドユニット3にそれぞれ供給され、更に、各色のインクに対応した各印字ヘッド15から吐出される。これらの各色のインクが、印字ヘッド15から吐出されることにより、印字用紙PPにフルカラー印刷が可能となるのである。
【0017】
プリンタ本体2の左端部分には、パージ処理を行うパージ装置6が配設されている。パージ処理は、印字ヘッド15からのインクの吐出状態を回復させるための処理であり、このパージ処理を実行するパージ装置6には、印字ヘッド15の複数のインク吐出口を密閉することができる吸引キャップ6aと、該インク吐出口の表面を拭うワイパ6bと、吸引キャップ6aから排出チューブ6cを介してインクを吸引する吸引ポンプ(図示せず)とが備えられている(図3参照)。尚、パージ装置6は、インクタンク4側からインクに正圧を与えることにより、印字ヘッド15からインクを排出する構成のものでも良い。
【0018】
このパージ装置6によってパージ処理を行う場合には、モータを駆動させて印字ヘッド15の搭載された印字ヘッドユニット3をインクジェットプリンタ1の左側へ移動させて、印字ヘッド15におけるインク吐出口を吸引キャップ6aにより密閉する。その後、吸引ポンプを作動させると、インク吐出口から気泡や乾燥して固化したインクが吸引されて排出チューブ6cから排出される。続いて、印字ヘッド15の表面をワイパ6bで拭うことにより、印字ヘッド15のインク吐出口15cの吐出状態を回復することができる。尚、プリンタ本体2の内部には、インクジェットプリンタ1の動作内容に関する制御プログラムに従って、インクジェットプリンタ1を制御するCPU、ROM、RAM等が搭載された制御回路基板(図示せず)が配設されており、上述したパージ装置6におけるパージ処理も、この制御回路基板により制御されている。
【0019】
次に、印字ヘッドユニット3について図2及び図3を参照して詳細に説明する。図2は、印字ヘッドユニット3の断面図であり、図1の紙面奥側から見た図である。尚、インク貯溜室として気泡を貯溜することができるエアトラップ11を用いる。図2に示すように、印字ヘッドユニット3は、エアトラップユニット11とジョイント部材12とを収納した筐体3bを有している。この筐体3b内部に収納されているエアトラップユニット11は、インク流路内で発生した気泡を貯溜するためのものであり、インクタンク4から供給されたインクは、エアトラップユニット11を経由して各印字ヘッド15に供給されるようになっている。このエアトラップユニット11は、4つのインクタンク4a〜4dに対応する4つのインク流路内で発生する気泡を貯溜できるように、4つのインク流路に対応する4つのエアトラップ30〜33が設けられている。
【0020】
このエアトラップユニット11の下方は、各エアトラップ30〜33とインクの供給経路であるチューブ5a〜5dとを仲介して連通するジョイント部材12に結合されており、インクタンク4a〜4dから供給されてチューブ5a〜5dを流動する各インクは、ジョイント部材12を介して、各エアトラップ30〜33に下方から導入される。
【0021】
図3は、図1における断面線III−IIIにおける断面図であり、印字ヘッドユニット3を含む断面図である。図3において(B)方向は重力方向となっており、紙面の奥側と手前側を結ぶ線が、印字ヘッドユニット3の移動方向(A)方向となっている。
【0022】
給紙ローラ16a〜16dは、印字時に印字用紙PPを搬送するためのローラであり、印字ヘッドユニット3の上方に配設された2個のローラ16c,16dと、印字ヘッドユニット3の下方に配設された2個のローラ16a,16bとで構成されている。この給紙ローラ16a〜16dは、プリンタ本体2の制御回路基板から入力された信号により回転駆動して、印字用紙PPを印字ヘッド15の移動方向(A)に対し垂直方向、即ち鉛直方向((B)方向)の逆方向に搬送するものである。この給紙ローラ16a〜16dにより、印字用紙PPが搬送される搬送ラインは、図中において一点鎖線で示している。
【0023】
印字ヘッドユニット3は、給紙ローラ16a〜16dにより印字用紙PPが搬送される搬送ラインに対峙する位置に配設されている。この印字ヘッドユニット3は、重力方向である(B)方向を下方とし、印字用紙PPの搬送方向に対し平行に、即ち、鉛直方向の向きを上下として設けられている。この印字ヘッドユニット3は、印字用紙PPの搬送される側に各エアトラップ30〜33と対応した複数個の印字ヘッド15を備える。
【0024】
各印字ヘッド15は公知のものと同様に、インク流路形成板15bに、印字用紙PPに対向する側に閉口する複数個のインク吐出口を備え、対応するエアトラップ30〜33から供給されたインクをインク吐出口ごとのインク室に分配し、圧電素子等からなるアクチュエータ15aの変位によりインク室内のインクをインク吐出口から吐出する。
【0025】
この印字ヘッド15は、筐体3bに支持され、対応するエアトラップ30〜33と連通路14を介して連通されている。各エアトラップ30〜33は、隔壁部材すなわち第1フィルタ13aにより2室11a,11bに画設され、印字ヘッドユニット3の筐体3bと平行に、鉛直方向の向きを上下として設けられている。
【0026】
第1室11aは、第1フィルタ13aにより画設され、インクタンク4側(インク流路の上流側)に位置する室である。この第1室11aと第2室11bとは、第1フィルタ13aにより完全に画設されておらず、その上方部分13eが連通している構成となっている。インクタンク4からチューブ5a〜5dを介して供給されるインクは、第1室11aの下方に連通するジョイント部材12を経て、この第1室11aに供給される。この第1室11aに流入されたインクは、後述する図5で説明するように第1フィルタ13a及びその上方の連通する部分13eを流れて第2室11bへ供給される。
【0027】
この第1室11aには、サーミスタセンサ18aが備えられている。サーミスタセンサ18aは、第1室11a内のインク量を検出するものであり、第1室11a内の天井部から所定の位置に吊り下げられいる。このサーミスタセンサ18aは正極と負極との電極対で構成されており常に通電されている。このため、サーミスタセンサ18aがインクに浸漬されている場合には、大きな温度上昇は生じないが、第1室11aのインク量の減少によってセンサがインク面から露出すれば、大きな温度上昇が生じる。サーミスタセンサ18aは温度変化により大きく抵抗変化を生じるので、この抵抗変化を検出することにより、インクの量を検出することができるのである。該サーミスタセンサ18aのリード線は、本体2に備えられた制御回路基板の信号線に接続されており、制御回路基板に送信された検出信号により抵抗変化が認識されると、エアトラップ30〜33に貯溜される気泡量が所定量を超えたと判断し、制御回路基板からパージ装置6へパージ処理を行わせる信号が送信される。これにより、パージ装置6によりパージ処理が実行され、エアトラップ30〜33内に貯溜されている気泡が除去される。
【0028】
第2室11bは、第1フィルタ13aにより画設され、印字ヘッド15側(第1室11aに対しインク流路の下流側)に位置する室である。第2室11bには、その下方にガイドノズル11cが連設されており、このガイドノズル11cは上記した連通路14を介して印字ヘッド15に連通している。これにより、第2室11bから印字ヘッド15に、インクが供給されるようになっている。
【0029】
この第2室11bの容量は、第1室11aの容量より小(約1/2)になるように構成されている。エアトラップ30〜33に貯溜される気泡をパージ処理により吸引する際には、この第2室11bに残存するインクは全て排出されるが、この第2室11bの容量を小さくすることでその排出量を少なくして無駄になるインク量を少なくし、更に、小さな吸引圧力でインクの吸引、即ち、気泡の吸引を実行することができるようになっている。
【0030】
更に、第2室11bの内壁はインクに対して濡れ性の良い結晶性の樹脂で構成され、あるいは濡れ性を良くする表面処理がされている。このため、壁面にインクが濡れやすく、パージ処理の実行時に第2室11bを通過して排出される気泡を壁面に溜まり難くして、迅速に気泡を排出することができるようになっている。
【0031】
第1フィルタ13aは、上記したようにエアトラップ30〜33の下方を第1室11aと第2室11bとに画設するものであり、第2室11bの容量を第1室11aの容量より小さく(約1/2)分割する位置において、印字ヘッドユニット3の筐体3bと平行に、鉛直方向の向きを上下として設けられている。この第1フィルタ13aには、ステンレス製の金属を網目状に編んだメッシュが用いられおり、本実施例では目開き、即ち、開口径16μmのものが使用され、インク流路内で発生した気泡を通過させないようになっている。
【0032】
この第1フィルタ13aの縦寸法((B)方向の寸法)は、各エアトラップ30〜33の上方向((B)方向)内寸より短い寸法で構成されている。これにより、エアトラップ30〜33内の上方部に第1フィルタ13aの配設されない空間13eが形成され、第1室11aと第2室11bとが流路抵抗が少なく連通されるようになっている。また、第1フィルタ13aは、各エアトラップ30〜33の幅方向((A)方向)において、その両側の内壁に連設されており、第1室11aに侵入した気泡が、幅方向から第2室11bへ侵入するのを阻止している。ここで、各エアトラップ30〜33と第1フィルタ13aとは、鉛直方向上向きになるように配設されている。このため、各エアトラップ30〜33内に侵入した気泡は、第1フィルタ13aを通過することができないので、第1室11a内を上昇して、その上方に貯溜されることとなる。また、第1フィルタ13aを形成するステンレス素材としては、インクに対し濡れ性のよい材料を使用しているので、気泡が第1フィルタ13aに留まりにくく、第1室11aに進入した気泡を、その第1室11aの鉛直方向上方へ導きやすいようになっている。
【0033】
上記したようにエアトラップユニット11を構成することにより、インク流路内で発生した気泡をエアトラップ30〜33により貯溜することができるが、その貯溜方法についての詳細は図5において説明する。また、かかるように構成されるエアトラップユニット11は、その成形の容易さから、部材11d〜11fの3つの部材によって構成されている。このエアトラップユニット11の製作方法については、図4において後述する。
【0034】
連通路フィルタ13bは、印字ヘッド15に供給されるインク内に混入しているゴミを捕捉するためのものであり、各エアトラップ30〜33のガイドノズル11cと印字ヘッド15との間の連通路14に配設されている。このフィルタは、連通路14を形成する部材に熱溶着されて配設され、連通路14の断面方向を全て覆うような形状に加工されているものである。また、第2フィルタ13bは、ゴミを補足すると共にインクとパージ処理時における気泡とを通過させることができる開口径で構成されている。
【0035】
アクチュエータ15aに接続されたフレキシブルな第1の印刷配線基板17cの表面にドライバ回路17aが実装されている。ドライバ回路17aは、上記したプリンタ本体2に搭載されている制御回路基板により制御されている。具体的には、制御回路基板から送信されるシリアル信号をアクチュエータ15aの各アクチュエータ部に対応したパラレル信号に変換して各アクチュエータ部を駆動するものである。第1の印刷配線基板17cは、非導電性の2枚の薄肉可撓性フィルムの相互間に導電配線パターンを形成する導電層を設けたものである。この第1の印刷配線基板17cの1の一端部にはアクチュエータ15aの多数の圧電素子と配線接続可能なように配列された多数の配線部と1のグランド用の配線部とが設けられている。一方、他の一端部は、後述するインターフェイス基板(接続基板)17bに配線接続するための複数の端子部が設けられている。
【0036】
インターフェイス基板17bは、後述する第2の印刷配線基板17dを着脱可能に接続するコネクタ17e及びノイズ除去回路17fが搭載されている。第2の印刷配線基板17dは第1の印刷配線基板17cと同様の構成の印刷配線基板である。この第2の印刷配線基板17dは、プリンタ本体2の内部に設けられ、インクジェットプリンタ1の動作内容に関する制御プログラムに従って、インクジェットプリンタ1を制御するCPU、ROM、RAM等が搭載された制御回路基板(図示せず)から送信されるシリアルの画像データ信号、クロック信号、ラッチ信号、ストローブ信号などの各種の信号を前記インターフェイス基板17bに配信する。
【0037】
印字ユニット3の筐体3bは図6に示すように箱形に形成され、この箱形の内部にエアトラップユニット11及びジョイント部材12が収容固定され、印字用紙と対向する前面に印字ヘッド15が複数個並べて固定されている。インターフェース基板17bは、筐体3bの一対の側壁面にまたがってエアトラップユニット11を覆うように固定され、つまりエアトラップユニット11を挟んで印字ヘッド15とは反対側の筐体3bに、印字ヘッド15と平行に配置されている。第1の印刷配線基板17cは、筐体3bの上部を越えてアクチュエータ15aとインターフェース基板17bとを接続している。筐体3bは、上記印字ヘッド15、エアトラップユニット11及びインターフェイス基板17bなどを支持した状態で、キャリッジ3bに着脱可能に装着される。
【0038】
図4は、エアトラップユニット11とジョイント部材12との分解斜視図である。このエアトラップユニット11は、上記したように、その製作を容易にするために、部材11d〜11fの3つの部材によって形成されている。各部材11d〜11fは、4つのインク流路(チューブ5a〜5d)に対応する4つのエアトラップ30〜33が連なった形状に加工されており、成型性、耐溶剤性、耐汚染性、耐衝撃性、インクに対する濡れ性などの物性を考慮して選択される熱可塑性の樹脂が用いられている。
【0039】
部材11dは4つの第1室11aを形成するための部材であり、予め、4つの第1室11aが仕切壁11h(図2)で区画され、かつ、4つ連なった形状に加工されている部材である。各第1室11aは、第1フィルタ13aの配設される側が開口されている箱状をなし、各第1室11aの下方にはジョイント部材12との結合部11gを備えている。かかる結合部11gは、4つのインク流路(チューブ5a〜5d)に対応する中空の円筒状の突起構造をなしている。ジョイント部材12は各チューブ5a〜5dと個々に連通する4つの連通路12a〜12dを有し、各連通路12a〜12dが各結合部11gと嵌合されることにより、インクタンク4からチューブ5a〜5dを介して供給されるインクを各エアトラップ30〜33の第1室11aへ導入することができるのである。
【0040】
第1フィルタ13aは部材11eに熱融着され、各エアトラップ30〜33の第1フィルタ13aとして機能するようになっている。この第1フィルタ13aの幅方向は、連接する4つのエアトラップ30〜33の全体の幅にその両端の接着しろを加味した寸法で構成されている。また、第1フィルタ13aの縦方向は、エアトラップ30〜33の下方部分を覆う所定の長さに接着しろを加味した寸法で構成されている。かかる寸法で構成される第1フィルタ13aは、第2室を構成する部材11eの開口部において、その上方部を所定寸法開口状態となる位置に熱融着により固着される。これにより、一度の作業で、各エアトラップ30〜33の室内を第1室11aと第2室11bとに画設する第1フィルタ13aを配設することができる。
【0041】
部材11eは4つの連接される第2室11bを形成する1の部材であり、厚み方向に貫通する4つの開口部を有する。上記したように、その開口部の一方の面には第1フィルタ13aが配設され、他方の面には部材11fが超音波融着されることにより4つの第2室11bを形成する。部材11fは部材11eと共に第2室11bを形成する部材であり、部材11eの4つの開口部に対応する4つの凹部を備えている。各凹部の下方には第2室11bから印字ヘッド15へインクを導入するガイドノズル11cを形成するための溝が凹設されている。かかる溝の先端は、部材11fの裏面(開口部と反対面)へ貫通しており、ガイドノズル11cが連通路14に連通するよう構造になっている。
【0042】
上記した部材11d〜11fで構成されるエアトラップユニット11は、まず、第1フィルタ13aと部材11eが熱融着され、更に、部材11fが超音波融着されて第2室11bが形成される。次いで、部材11dが、作製された第2室11bの第1フィルタ13a側に部材11dが超音波融着され、第1室11aを形成する。かかる工程により、4つの連接するエアトラップ30〜33を備えたエアトラップユニット11を製作することができる。これによれば、1ずつエアトラップ30〜33を形成する場合に比べて、その製作工程が簡易であり、部品点数が少ないのでその工程管理が容易である。また、部品寸法が大きくなるので、第1フィルタ13aの配設作業を容易にして、効率的にエアトラップユニット11を形成することができる。
【0043】
次に、図5を参照して、エアトラップ30〜33でのインクの流動パターン及びエアが貯溜されていく状態について説明する。図5は、印字ヘッドユニット3のエアトラップ機能を模式的に表した縦断面図である。図5(a)は、インクがエアトラップ11内に充填されている初期導入時(パージ処理直後)の図である。図5(a)において、インクタンク4から第1室11aに供給されたインクは、印字ヘッド15でのインクの消費に伴い、第1室11aと第2室11bとが連通している部分13e(第1フィルタ13aの鉛直方向上部の第1フィルタ13aが配設されていない部分)が第1フィルタ13aよりも流路抵抗が小さいので、第1フィルタ13aの上端を越えて第2室11bへと流入する。
【0044】
図5(b)は、インク流路内で発生した気泡が少量、エアトラップ30〜33へ侵入した状態を示した図である。第1室11aに侵入した気泡は、第1フィルタ13aとインクとの濡れ性が良好であるために第1フィルタ13aに張り付くことができない、エアトラップ30〜33が鉛直方向に設置されているために侵入した気泡に浮力による上昇力が生じる、第1フィルタ13aの開口径が小さい等の理由により第1フィルタ13aを通過することができない。このため、自身の浮力とインクの流れに沿って第1室11aの上方へ浮上する。
【0045】
ここで、第1室11aの内壁は、第2室11bの内壁に比べて濡れ性の悪い樹脂で形成されているので、比較的に気泡が溜まりやすくなっている。溜まった気泡の体積がさほど大きくない場合には、流路抵抗の小さな第1室11aと第2室11bとが連通している部分を閉塞されないので、インク流路は変更されず、第1室11aに供給されたインクは、上記した連通部を通って第2室11bへと流入する。尚、印字時に印字ヘッド15へ供されるインクの流速(インクの吸引力)は、エアトラップ30〜33の上方部に溜まった気泡を押し出す(排出する)程大きくないことから、第1室11aの上方部に溜まる。
【0046】
図5(c)は、エアトラップ30〜33に貯溜された気泡が多くなって、流路抵抗の小さな第1室11aと第2室11bとの連通部分が閉塞された状態を示した図である。かかる場合には、第1室11aに供給されたインクは第1室11aと第2室11bとの連通部分を通過することができず、第1フィルタ13aを通過するインク流路により、第1室11aから第2室11bへインクは流入する。
【0047】
図5(d)は、図5(c)の状態から更に気泡が発生し、その発生した気泡がエアトラップ30〜33に貯溜された状態を示した図である。エアトラップ30〜33室内に貯溜する気泡は、上記したように、印字時のインクの吸引力では、エアトラップ30〜33から排出されない。このため、気泡はエアトラップ30〜33に充満していき、第1室11aに供給されるインクのインク面を押し下げることとなる。インク面が所定量まで下がっても印字ヘッド15に対してインク供給不足にならないように、第1フィルタ13aの開口径及び面積が設定される。図5(e)は、図5(d)の状態から更に発生した気泡がエアトラップ30〜33に貯溜された状態を示した図である。第2室11bは気泡により完全に閉塞されているので、インクが印字ヘッド15には供給されず、印字不能状態となっている。
【0048】
図5(f)は、パージ装置6によりパージ処理が行われ、気泡が排出された状態を示した図である。パージ処理においては、強い吸引力が第2室11bにかかるので、第1フィルタ13aを通過する際にインクに負荷される流路抵抗が非常に大きなものとなる。このため、インクは、第1室11aと第2室11bとが連通している部分13e(第1フィルタ13aの鉛直方向上部の第1フィルタ13aが配設されていない部分)を通過する強いインクの流れが生起され、エアトラップ30〜33に貯溜された気泡が、この流れによってエアトラップ30〜33から排出される。その結果、再びインクが充填されて図5(a)の初期導入時と同様の状態へ復帰する。
【0049】
尚、本実施例においては、サーミスタセンサ18aが設けられており、第1室11aのインク面が所定位置より低下すると直ちにパージ処理が実行され、エアトラップ30〜33の気泡が排出されるようになっている。本実施例で使用されるインクには、粘度1〜10cps、表面張力30〜50mN/mのものが使用されている。かかる物性のインクに対し、開口径16μmの第1フィルタ13aが使用されている。
【0050】
以上説明したように、本実施例のインクジェットプリンタ1によれば、インターフェイス基板17bを備えた印字ヘッドユニット3であっても、支持筺体3bに、接続基板17bをエアトラップ11を挟んでアクチュエータ15aの反対側にほぼ平行に設けたことにより、インターフェイス基板17bと印字ヘッドユニット3の筐体3bは一体的に構成され、エアトラップ11を囲うように配置されるので、依然として小型且つ薄型の印字ヘッドユニットを提供することができる。また、エアトラップ30〜33において、第1フィルタ13aが堰の役割を果たすことによりインク流路(チューブ5a〜5d、ジョイント部材12)内に発生し、印字ヘッド15に流入しようとする気泡をエアトラップ30〜33に貯溜し、印字ヘッド15の吐出状態を長期にわたって維持することができ、気泡除去のためのパージ回数を減らすことができる。また、溜まった気泡をパージ装置6により除去してエアトラップ11の機能を回復することができる上、サーミスタセンサ18aによりパージの必要が検出された場合にのみ、パージ処理を実行することができる。
【0051】
以上、上記実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものでなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施例では、ドライバ回路17aを第1の印刷配線基盤17cの表面に実装しているが、インターフェイス基板上に実装して第1の印刷配線基盤17cと結線しても良い。また、第1フィルタ13aのメッシュの開口径(目の粗さ)を16μmとした。しかし、第1フィルタ13aは、エアトラップ11のインク流路の堰となるものであり、インクのゴミを補足するためのものではない。このため、開口径100μm程度以下のメッシュであれば良い。
【0052】
また、第1フィルタ13aを形成する素材としては、ステンレスを用いたが、これに代えて、インクの濡れ性が良好である樹脂を用いても良い。樹脂はステンレスに比べて加工が容易であり又原価が安いので、第1フィルタ13aのコストを低く抑えることができる。更に、チューブ5a〜5dには、可撓性の樹脂で構成されるものを用いたが、エアの透過率を押さえるために、かかるチューブ素材をエアの透過率の低い金属箔で被覆して用いても良い。
【0053】
【発明の効果】
請求項1記載のインクジェットプリンタによれば、印字ヘッド及びインク貯溜室は支持筐体に支持され、接続基板は印字ヘッドとフレキシブルな第1の配線部材を介して接続され、インク貯溜室を挟んで印字ヘッドの反対側に、印字ヘッドの表面と反対側の面と平行に支持筐体に支持される。よって、印字ヘッドユニットは、インク貯溜室及び接続基板の配置が複雑化することなく、小型に構成されるという効果がある。特に、カラープリンタのように印字ヘッドが複数配置されるものでは、接続基板が各印字ヘッドに共通化されかつ印字ヘッドの配列に平行に配置されることで、いっそう小型化され、本体側から延びる第2の配線部材との接続も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例であるインクジェットプリンタの展開側面図である。
【図2】ジョイント部材によりエアトラップとチューブとが接続されていることを模式的に表した断面図である。
【図3】印字ヘッドユニットのエアトラップとパージ装置と給紙ローラとの横断面図である。
【図4】エアトラップユニットの分解斜視図である。
【図5】印字ヘッドユニットのエアトラップ機能を模式的に表した縦断面図である。
【図6】印字ヘッドユニットの筐体、印字ヘッド、インターフェース基板などの斜視図である。
【符号の説明】
1 インクジェットプリンタ
3a キャリッジ
3b 支持筺体
4 インクタンク
6 パージ装置(回復手段)
11 エアトラップユニット(インク貯溜室)
11c ガイドノズル(供給口)
11g 結合部(流入口)
13a フィルタ(隔壁部材)
15 印字ヘッド
16a〜16d 給紙ローラ(搬送手段)
17a ドライバ回路
17b インターフェイス基板(接続基板)
17c 第1の印刷配線基板(第1の配線部材)
17d 第2の印刷配線基板(第2の配線部材)
Claims (4)
- インクを吐出するインク吐出口が形成された表面と複数の駆動素子とが設けられているプレート型の印字ヘッドと、前記複数の駆動素子と配線接続がなされたフレキシブルな第1の配線部材と、前記印字ヘッドを支持する支持筐体とを有するヘッドユニットと、
そのヘッドユニットを支持し、印字媒体に沿って移動可能なキャリッジと、
そのキャリッジ外に設けられ、前記駆動素子を制御する制御回路と、
前記第1の配線部材と前記制御回路とを接続するフレキシブルな第2の配線部材とを備えるインクジェットプリンタにおいて、
前記支持筐体に前記印字ヘッドの前記表面と反対側の面に対向するとともに平行に設けられ、前記キャリッジ外のインクタンクから供給されるインクを貯溜し、前記印字ヘッドへ供給するインク貯溜室と、
前記支持筐体に、前記インク貯溜室を挟んで前記印字ヘッドの反対側に、前記印字ヘッドの前記表面と反対側の面と平行に設けられ、前記第1の配線部材と前記第2の配線部材とに配線接続される接続基板と、
前記印字ヘッドの前記表面と対向する搬送面に前記印字媒体を搬送する搬送手段とを備え、
前記ヘッドユニットと、前記接続基板とは、前記搬送面と平行に配置されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。 - 前記インク貯留室内において、前記印字媒体が搬送される方向の一方側に所定空間を空けて、前記搬送される方向の他方側から前記一方側に向けて前記搬送面と平行に立設する隔壁部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
- 前記インク貯溜室は、
前記インクタンクから供給されるインクが流入する流入口と、
前記印字ヘッドへインクを供給する供給口とを備え、
前記流入口と、前記供給口とは、前記他方側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンタ。 - 前記第1の配線部材上に実装され、前記制御回路から送信される信号を前記駆動素子に対応した信号に変換するドライバ回路と、
前記支持筐体から前記接続基板側に向けて前記搬送面に対して斜めに立設する立壁とを備え、
前記第1の配線部材は、前記ドライバ回路が前記立壁と対向するように、前記立壁の外側を通って前記接続基板に接続されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェットプリンタ。
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