JP4708657B2 - 透過型電子顕微鏡から利用可能な測定情報を増加させる方法および原子間力顕微鏡挿入物を含む透過型電子顕微鏡装置 - Google Patents
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Description
(発明の技術分野)
本発明は、標準的な透過型電子顕微鏡から利用可能な測定情報を増加させる方法に関し、前記情報は測定サンプルに関するものである。本発明はまた、原子間力顕微鏡挿入物を有する透過型電子顕微鏡装置および標準的な透過型電子顕微鏡内に挿入するための原子間力顕微鏡挿入物に関する。
【0002】
(背景技術)
ナノ粒子間の力の相互作用は長い間にわたって研究されてきた。1つの技術は透過電子顕微鏡検査(TEM)であり、相互作用する粒子の直接的な可視化によって相互作用を理解することができる。しかしながら、この方法は、相互作用を視覚的に表わすだけであり、したがってその用途は限定される。
【0003】
ナノ粒子間の力の相互作用を調べるために改良された1つの方法および装置がTEM−STM顕微鏡(透過型電子顕微鏡−走査トンネル顕微鏡)である。この種の電子顕微鏡では、走査トンネル顕微鏡(STM)が透過型電子顕微鏡(TEM)の中に設置され、サンプル構造ならびにコンダクタンスなどサンプルの電気的特性の同時測定を可能にする。粒子相互作用のある様子を調べるとき、この顕微鏡技術は極めて役に立つ。しかしながら、それでもなお実行できる実験の範囲を広げ、それによって物質の性質をさらに深く理解することが必要とされている。
【0004】
(発明の概要)
上述した問題は、本発明に従って、標準的な透過型電子顕微鏡内に原子間力顕微鏡挿入物を含めるステップを有する方法によって解決される。この方法はTEM環境下で原子間力顕微鏡検査(AFM)測定をすることを可能にし、それによって相互作用する粒子の幾何学的形状と粒子間相互作用力との関係を調べるためのTEMとAFMとの同時測定を可能にする。前記方法は、サンプル、および前記原子間力顕微鏡挿入物の一部であるプローブを、標準的な透過型電子顕微鏡を使用して可視化するステップと、前記標準的な透過型電子顕微鏡内に配置された原子間力顕微鏡挿入物を使用して前記サンプルと前記プローブとの間の力の相互作用を前記可視化と同時に調べるステップとを含むことが好ましい。
【0005】
力の相互作用を調べるステップは、前記プローブが固定されているカンチレバーのたわみを測定するステップを適切に含み、前記カンチレバーとプローブは前記原子間力顕微鏡挿入物の部品である。これがサンプルとプローブとの間の相互作用力の判定に簡単な方法を提供する。好ましい実施形態によると、カンチレバーのたわみを測定するステップは前記標準的な透過型電子顕微鏡から得られる電子ビームを使用することによってたわみを測定するステップを含む。このビームを発生するための手段がすでにTEM内に提供されているので、これは単純で空間効率的な方法である。本発明のまた別の実施形態によると、カンチレバーのたわみを測定するステップは歪みに起因して変化し得る物理的性質を検出するために前記カンチレバーに装着された測定装置を使用することによってたわみを測定するステップを含む。これもやはり空間効率的な解決法であり、例えば前記カンチレバーに装着された歪みゲージ、または磁気弾性測定装置の手段によって実現することができる。本発明の第3の実施形態によると、カンチレバーのたわみを測定するステップは前記カンチレバーの反射表面に照射するための放射源を含む測定装置を使用することによってたわみを測定するステップを含み、前記放射は検出手段によって検出されることで前記カンチレバーのたわみの量が判定される。
【0006】
さらに、上述の問題は、本発明に従って、標準的な透過型電子顕微鏡を、前記標準的な透過型電子顕微鏡内に置かれた原子間力顕微鏡挿入物と組み合わせることを特徴とする透過型電子顕微鏡装置によって解決される。この装置はTEM環境下で原子間力顕微鏡(AFM)測定を可能にし、それによって相互作用する粒子の幾何学的形状と相互作用力の間の関係を調べるためのTEMとAFMの同時測定を可能にする。
【0007】
前記原子間力顕微鏡挿入物、はサンプルを設置するためのサンプル・ホルダ、サンプルに近接して配置されるカンチレバーを含むことが好ましく、前記カンチレバーは弾性材料で作製される。さらに、前記原子間力顕微鏡挿入物はカンチレバー上に設置されるプローブを含み、前記プローブはチップの形状を有し、前記カンチレバーと前記プローブは互いに適切に一体化される。このようにして、前記チップとサンプルを、それらの間で相互作用が可能となるように配列することができる。
【0008】
さらに、前記透過型電子顕微鏡装置はプローブ/チップとサンプルとの間の力の相互作用を測定するためにカンチレバーのたわみの測定装置を適切に含む。好ましい実施形態によると、前記カンチレバーたわみ測定装置は前記カンチレバー上の反射表面を照射するための放射源を含み、そこで前記放射が検出手段によって検出されることで前記カンチレバーのたわみの量が決定される。これはたわみを決定するための単純な構成であり、放射源ならびに検出器は、問題となっている動作モードに適合させることができる。本発明のさらなる実施形態によると、前記カンチレバーたわみ測定装置は歪みに起因して変わり得る物理的性質を検出するために前記カンチレバーに装着された測定装置を含む。これらの種類の測定装置は極めて小型に作製することが可能であり、上述の検出器のような独立空間を占める部品を必要としないので、これは極めてコンパクトな構成を提供する。前記測定装置は、例えば圧電歪みゲージあるいは磁気弾性センサを含むこともある。
【0009】
さらに、前記チップに対してサンプルが容易に動くことが可能になるように前記サンプル・ホルダは可動である。このようにして、サンプル表面の様々な領域を調べるためにサンプルを容易に動かすことが可能となる。前記サンプル・ホルダは前記可動性を提供するために圧電素子を含むことが好ましい。この種の装置は、例えば、K.Svensson、F.Althoff、およびH.Olin、「A compact inertial slider STM」、Meas.Sci.Techn.、8、1360−1362(1997)に述べられており、サンプルの単純で正確な微細位置決めを可能にする。
【0010】
最後に、上述の問題は、本発明に従って、標準的な透過型電子顕微鏡内に挿入するための原子間力顕微鏡挿入物によって解決される。これは標準的な透過型電子顕微鏡の使用者が拡大した利用性のために標準的な透過型電子顕微鏡にAFM挿入物を付加することを可能にする。
【0011】
次に、本発明について、添付図面を参照しながらより詳しく述べる。
【0012】
(発明の好ましい実施形態の詳細な説明)
組合されたTEM/AFM顕微鏡は、Philips(登録商標)CM200 Super Twin FEG顕微鏡のような標準的な透過型電子顕微鏡を含む。そのような標準的な透過型電子顕微鏡の構成を図1に示す。図1に示した顕微鏡は本質的に電子ビーム2を発生することのできる電子銃1を含む。電子ビームは集光レンズ3、目標物、対物レンズ5、投影レンズ6のような様々な部品を通り抜け、最後にスクリーン7に投影される。この顕微鏡の機能はよく知られており、これ以上精密にはここで述べない。AFM挿入物は目標物の位置に配置される(図1参照)。AFM挿入物は、前記電子ビーム2を受ける位置に材料表面を有するサンプル11を保持するサンプル・ホルダ10を含む。前記サンプル・ホルダ10もやはり前記サンプルのための微細位置決め装置を構成し、そのために、サンプルの位置を微調整するための圧電材料のチューブを含み、またz方向で位置のおおよその調整をするためにモータを含むこともできる(図示せず)。前記サンプル11は前記チューブの一方の端部に固定される。
【0013】
さらに、前記AFM挿入物4は弾性材料のカンチレバー13に装着された尖鋭なチップまたはプローブ18を含む。図2に示した実施形態で、カンチレバーはAFM挿入物4の一部である固定ロッド14に装着されているが、それはAFMのチップの位置の調整を可能にする第2の微細位置決め装置(図示せず)に装着されることもある。チップ18とカンチレバー13が一緒になってAFMデバイス12を構成し、ここではチップ18とカンチレバー13は一体化して形成されている。AFMチップ18は図2で最もよく見えるように前記サンプルの方向に向くように位置決めされている。AFM挿入物4は従ってチップ18とカンチレバー13からなるAFMデバイス12、固定ロッド14、サンプル11、及びサンプル・ホルダ10により1つのユニットとして形成され、容易に標準的な透過型電子顕微鏡(TEM)に挿入・配置され得る。
【0014】
その上さらに、カンチレバーのたわみおよび/または向きを検出するための手段が前記サンプルに隣接して配置される。前記手段は、例えば、前記カンチレバー13の反射領域17に伝播されて反射されるレーザ・ビームを発生するレーザ源15を含んでもよく、そこでは反射レーザ・ビームは図2に示したように本質的に知られている方式で2セル(または多重セル)の検出器のような位置感知検出器16によって検出される。たわみはまた、前記カンチレバー上に歪みゲージなどを搭載することによっても、または走査トンネル顕微鏡を含むことあるいは干渉計測法の手段(図示せず)によるたわみ測定によっても測定できる。さらに、電子ビームをカンチレバーに向かって反射させ、それによって多重セル検出器のような検出器手段によって反射位置を測定することも可能である。その他のたわみ測定装置が可能である。
【0015】
原子間力顕微鏡挿入物の主な動作をここで簡単に説明する。最初に、図1に示したように、AFM挿入物4がTEMの目標物の位置に置かれる。TEM内に固定のAFMユニットを持たせることもまた可能である。正しい位置にあるときにはTEMの電子ビームの径路は、図2に示したように、前記チップ18の領域と前記サンプル11の表面領域を少なくともカバーする。力の相互作用の測定および可視化をしているとき、電子ビームは電子顕微鏡システムを通って送られ、それにより目標物位置を通過し、チップとサンプルの領域が前記スクリーン7で画像化される。図2に見られるように、このケースでは画像化は横から見たときのAFM挿入物4となる。同時に、AFM挿入物4は前記カンチレバー13の現在のたわみを測定するための手段によってサンプル11とチップ18との間の力の相互作用を測定する。力の相互作用はサンプル・ホルダおよび/またはカンチレバーのための前記微細位置決め装置手段によってサンプルとチップを互いに対して動かすことによって変えることができる。図3に、運動シーケンスの一例、ならびにこのシーケンスでの力の相互作用の図式的/理論的グラフを示す。
【0016】
この構成で、AFM挿入物のカンチレバー・チップとサンプルとの間の接触を画像化することが可能であり、同時にサンプルとチップとの間の力の相互作用を測定することができる。その上さらに、TEM画像によって変形(弾性または塑性)を調べて追跡することができる。
【0017】
本発明による方法および装置は接触モード、非接触モードおよび中間モードのようなAFM動作の様々なモードについて均等に応用可能である。
【0018】
本発明の好ましい実施形態に従った方法および装置で行う1つの実験をこれ以降に図3から図5までを参照しながら説明する。
【0019】
TEM−AFMは基本的にAFM挿入物を備えた修正TEM顕微鏡を含み、微細な動きのために使用される圧電チューブ(長さ25mm、直径3mm)とおおよそのz方向移動のためのモータを備えている。TEM−AFMを電界放出型銃のTEM(Philips CM200 Super TWIN FEG顕微鏡)に挿入した。サンプルおよびチップ/プローブは化学的にエッチング処理される金のチップであって直径0.25mmのワイヤ(Au99.99%)から作製される。
【0020】
AFM挿入物のチップは力定数0.37N/mをもつ標準的な窒化ケイ素のチップである。このAFMチップは5nmのCr粘着層で最初にコーティングされ、その後、16nmのAuでコーティングされる。TEMの内側で、チップをサンプル中に強く局所的に加圧して不純物層を破壊してサンプルが調製される。チップとサンプルの力の相互作用はAFMチップの動きの直接的な画像化によって測定した(図3および図4のaからeを参照)。
【0021】
抵抗測定は10mVのバイアス電圧で実施した。ビデオTEM画像と同時にデジタル・オシロスコープで信号をモニタした。
【0022】
図4のaからeはサンプルをAFMチップからおよびそれに向かって動かして得られる順々のTEM画像を示している。対応する力−距離曲線は図5に見られる。最初にサンプルはAFMチップに向かって動かされる。チップ−サンプルの引力の勾配がカンチレバーのバネ定数を超えた瞬間、突発的な飛躍/接触が約1.4nNで生じた。サンプルはさらに5nm押しつけられ、その後収縮された。収縮中に、サンプルとチップの間にネックが形成された(図4のf)。8.7nNの引力に対応する約20nm収縮した後、飛躍/離脱が生じた。この瞬間に至る直前のネックの面積は約0.6nm2であった。これは原子当たり約1nmの粘着力を与えるものであり、Rubio,AdraitとViera(Phys.Rev.Letter 76(1996)2302)による金ナノ・ワイヤの力の実験ならびに理論的計算値と合致する。
【0023】
上述した好ましい実施形態は、例示目的で示すだけのものであり、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきでない。添付した特許請求の範囲に規定する本発明の範囲内で上述の実施形態のいくつかの修正が可能であることは理解されるはずである。例えば、サンプルとチップの形状および材質は、前記サンプルおよび/またはカンチレバーの微細位置決めに使用する微細位置決め装置と同様に変更することができる。例えば、マイクロ・モータあるいは様々な設計の慣性スライダを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 原子間力顕微鏡挿入物が組み込まれる透過型電子顕微鏡の概略図である。
【図2】 本発明の一実施形態に従ってTEMに挿入するAFM挿入物をクローズアップして示す図である。
【図3】 本発明による組合わされた顕微鏡で為される測定の図式的な範例を示す図である。
【図4】 本発明による複合された顕微鏡で為される測定のTEMによる可視化を示す図である。
【図5】 図4のaからfの可視化実験について、サンプルとAFMチップとの間の測定した力の相互作用をグラフ化した図である。
Claims (14)
- 標準的な透過型電子顕微鏡から利用可能な、測定サンプルに関する測定情報を増加するための方法であって、
前記標準的な透過型電子顕微鏡内に、サンプル(11)を設置するためのサンプル・ホルダ(10)と、カンチレバー(13)と、該カンチレバー(13)上に設置され、前記サンプル(11)の近くに配置されるプローブ(18)とを1つのユニットとして有する原子間力顕微鏡挿入物(4)を含ませるステップと、
サンプル(11)、および前記プローブ(18)を、前記標準的な透過型電子顕微鏡(1、2、3、5、6、7)を使用して可視化するステップと、
前記標準的な透過型電子顕微鏡内に配置された前記原子間力顕微鏡挿入物(4)を使用して前記サンプル(11)と前記プローブ(18)との間の力の相互作用を前記可視化と同時に調べるステップとを含む方法。 - 前記力の相互作用を調べるステップが、前記プローブ(18)の固定されたカンチレバー(13)のたわみを測定するステップを含む請求項1に記載の方法。
- 前記カンチレバー(13)のたわみを測定するステップが、前記標準的な透過型電子顕微鏡から入る電子ビームを使用してたわみを測定するステップを含む請求項2に記載の方法。
- 前記カンチレバー(13)のたわみを測定するステップが、歪みに起因して変わり得る物理的特性を検出するために前記カンチレバー(13)に装着された測定装置を使用することによってたわみを測定するステップを含む請求項2に記載の方法。
- 前記カンチレバー(13)のたわみを測定するステップが、前記カンチレバー(13)の反射表面(17)を照射するための放射源(15)を含む測定装置を使用することによってたわみを測定するステップを含み、そのとき前記カンチレバー(13)のたわみの量を判定するために前記放射が検出手段(16)によって検出可能である請求項2に記載の方法。
- 透過型電子顕微鏡装置であって、該透過型電子顕微鏡装置が、
標準的な透過型電子顕微鏡と、
前記標準的な透過型電子顕微鏡内に置かれた原子間力顕微鏡挿入物(4)であって、サンプル(11)を設置するためのサンプル・ホルダ(10)と、カンチレバー(13)と、該カンチレバー(13)上に設置され、前記サンプル(11)の近くに配置されるプローブ(18)とを1つのユニットとして有する原子間力顕微鏡挿入物(4)と、
カンチレバーたわみ測定装置(15、16、17)と、を有し、
前記原子間力顕微鏡挿入物(4)と前記標準的な透過型電子顕微鏡とが同時に使用され、
前記サンプル(11)、および前記プローブ(18)を、標準的な透過型電子顕微鏡(1、2、3、5、6、7)を使用して可視化するステップと、
前記標準的な透過型電子顕微鏡内に配置された前記原子間力顕微鏡挿入物(4)を使用して前記サンプル(11)と前記プローブ(18)との間の力の相互作用を前記可視化と同時に調べるステップと、
を実行するように配置されている、ことを特徴とする透過型電子顕微鏡装置。 - 前記カンチレバー(13)が弾性材料から作製されている請求項6に記載の透過型電子顕微鏡装置。
- 前記プローブ(18)がチップの形状を有する請求項6または7に記載の透過型電子顕微鏡装置。
- 前記カンチレバー(13)と前記プローブ(18)が互いに一体化されている請求項6、7又は8に記載の透過型電子顕微鏡装置。
- 前記カンチレバーたわみ測定装置が前記カンチレバーの反射表面を照射するための放射源(15)を含み、そこでは前記カンチレバー(13)のたわみ量を判定するために検出手段(16)によって放射が検出され得る請求項6から9のいずれかに記載の透過型電子顕微鏡装置。
- 前記カンチレバーたわみ測定装置が歪みに起因して変わり得る物理的特性を測定するために前記カンチレバー上に装着された測定装置を含む請求項6から9のいずれかに記載の透過型電子顕微鏡装置。
- 前記プローブ(18)に対して前記サンプルが容易に動くことを可能にするために、前記サンプル・ホルダ(10)が可動である請求項6から11のいずれかに記載の透過型電子顕微鏡装置。
- 前記可動性を提供するために前記サンプル・ホルダ(10)が圧電素子を含む請求項12に記載の透過型電子顕微鏡装置。
- 前記圧電性サンプル・ホルダ(10)が慣性型のスライダである請求項13に記載の透過型電子顕微鏡装置。
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