JP4706610B2 - 印刷用塗被紙の製造方法および印刷用塗被紙 - Google Patents
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Description
近年、これらの印刷用塗被紙は高級化が進展し、ポスターやカタログの印面の光沢感や平滑性をより高く求められるようになった。また、近年の低コスト化指向により、従来の紙厚、印刷品質を維持しながら軽量化する要望が増してきている。これらの要求を満たすためには、印刷用塗被紙自体が高い光沢度と平滑性を有していることと、低密度で紙厚が厚いこと(即ち、嵩高であること)が重要である。
近年、嵩高な塗被紙を製造する方法として、高温でのソフトカレンダー処理が一般的に行われるようになり、高温のロールで紙の表面のみを可塑化させて平滑性や白紙光沢度を向上させることを目的に、より高温、低線圧でソフトカレンダー処理する傾向が強くなっている(特許文献1、2、3参照)。
このように従来の技術では高光沢で嵩高であり、しかもロール汚れが無く安定して製造でき、光沢ムラの良好な印刷用塗被紙が得られていないのが実情である。
シュープレスの構造はスリーブあるいはブランケットと呼ばれる耐磨耗性のプラスチックで作られた筒の中にシューが配置され、潤滑油膜を介して回転するスリーブと接し、油圧で加圧されるシューによりスリーブが対向ロールに押付けられる。スリーブの表面は搾水性を良くするため盲孔或いは溝が設けられている。シュープレスは搾水性が優れるため、蒸気コストの削減や、湿紙強度が向上することによる紙の走行性改善などにも役立っている。
この平滑性低下の要因はフェルトの品質によるものであり、各フェルトメーカーでフェルトの最適化を図る努力が行われているが、特にシュープレスを採用したマシンでは表裏差が満足できるレベルに至っていない。
そして、原紙に生じた表裏差は、塗被層を形成したあとも残り、塗被紙にも表裏差を生ずるため、その改善が強く要請されている。
プレスパートにおける最終プレス工程で使用されるプレス装置が、シングルフェルト式のシュープレスであると、本発明の効果がより顕著に発揮される。
填料として、無定形シリカまたは無定形シリケートの少なくとも1種を原紙質量の1〜10質量%含有する原紙を使用すると、より嵩高な印刷用塗被紙が得られる。
その結果、塗被層形成後の熱ソフトカレンダーによる平滑化処理において、原紙抄紙機の最終プレス工程で湿紙がフェルトに当接して搾水されたのち乾燥されてなる原紙面側に形成された塗被層面(A面)を原紙の反対面側に形成された塗被層面(B面)より1回以上多く金属ロールと接触するように通紙し、且つA面が接触する金属ロールの表面温度をB面が接触する金属ロールの表面温度より10℃以上低くして通紙することで所望の効果が得られることを見出した。
なお、以下、本発明では、原紙抄紙機の最終プレス工程で湿紙がフェルトに当接して搾水されたのち乾燥されてなる原紙面側に形成された塗被層面を、単に「A面」と称し、原紙の反対面側に形成された塗被層面を、単に「B面」と称する。
勿論、上記処理回数の範囲内で、A面が、B面よりも1回以上多く金属ロールと接するように処理される必要があることは、いうまでもない。
また、金属ロールと接する回数を、上記の範囲に留めると、より低密度の印刷用塗被紙が得られるため、好ましい。
さらに、塗被紙のそれぞれの面を平滑化処理する順番も特に限定されるものでない。しかし、B面が先に熱ソフトカレンダーの金属ロールと接し、次いでA面が熱ソフトカレンダーの金属ロールに接するよう処理するのが、表裏差が小さく、より低密度の塗被紙が得られることから望ましい。
なお、熱ソフトカレンダーによる平滑化処理は、オフコーター方式あるいはオンコーター方式の何れであってもよい。
以下に、本発明の塗被紙の一実施形態について説明する。
これらの填料の中でも無定形シリカまたは無定形シリケートを単独で使用するか、または他の填料と併用すると、より低密度の印刷用塗被紙が得られるため、好ましい。
上記の無定形シリカおよび無定形シリケートのうち、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD2000J、島津製作所製)にて測定した50累積質量%に相当する平均粒子径(d50)が3〜40μmのものが好ましく、平均粒子径が16〜40μmのものがより好ましい。
なお、平均粒子径が3〜40μmのものを使用すれば、原紙の平滑度および層間強度を低下させることなく、所望の低密度な塗被紙に仕上げることができる。
本発明では、無定形シリカや無定形シリケートが、ここで規定した平均粒子径と嵩比重の双方を満たすと、原紙の低密度化と層間強度維持をバランスさせやすいため、好ましく用いられる。
また、無定形シリカや無定形シリケートを填料として単独で、あるいは他の填料と併用する場合は、無定形シリカや無定形シリケートが原紙質量の1〜10質量%となるように配合するのが望ましい。なお、無定形シリカや無定形シリケートを他の填料と併用する場合は、填料の合計量が原紙質量の15質量%以下となるように併用するのが望ましい。
本発明は、これらの原紙のうちでも、抄紙機のプレスパートにおける最終プレス工程のプレス装置としてシングルフェルト式のシュープレスを設置した抄紙機で製造された原紙を使用する場合において特に顕著な効果を発揮するものである。シングルフェルト式のシュープレスは、1枚のフェルトを挟んでシューロールと対向ロールが配置され、フェルトと対向ロールの間に湿紙を通紙して搾水するプレス装置である。従って、シングルフェルト式のシュープレスでは、湿紙はフェルトまたは対向ロールに当接することになる。
なお、本発明では、最終プレス工程の前段のプレス工程にもシングルフェルト式のシュープレスを配置した抄紙機で製造された原紙も包含する。
これらの顔料のうち、最表層となる塗被層に使用する顔料は、X線透過式粒度分布測定装置(セディグラフ5100、マイクロメリティックス社製)で測定した平均粒子径が0.1〜1.5μm、好ましくは0.2〜1.0μmの範囲にあるものを使用するのが望ましい。前記顔料の中でもカオリン、デラミネーテッドカオリン、構造化カオリン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウムの組合せが主に使用される。
接着剤の使用量は、顔料100質量部当り10〜30質量部程度である。
かくして得られた塗被紙は、前記特定の方法に従って熱ソフトカレンダーに通紙して平滑化処理が施される。
[原紙の調製]
LBKP(フリーネス450ml/csf)80部、NBKP(フリーネス450ml/csf)20部からなるパルプスラリーに、填料として軽質炭酸カルシウム(商品名:TP−121/奥多摩工業社製)を、抄紙した原紙質量の9%になるように添加した。さらに該パルプスラリーに対し、内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(商品名:サイズパインK−902/荒川化学工業社製)0.03%(固形分換算)、およびカチオン化澱粉(商品名:ピラーP3Y/ピラー社製)0.5%(固形分換算)をそれぞれ添加して紙料を調成した。
この紙料をギャップフォーマ型抄紙機で運転速度1200m/分にて抄紙し、湿紙を4つのプレス装置を備えたプレスパートで搾水し、プレドライヤーで乾燥後、ロッドメタリングサイズプレス装置で、6%濃度の酸化澱粉(商品名:エースA/王子コーンスターチ社製)水溶液を固形分で2g/m2(両面合計)となるように塗布し、アフタードライヤーで乾燥して米坪45g/m2の塗被紙用原紙を得た。上記プレスパートは3番目および4番目のプレス装置がシングルフェルト式のシュープレスで構成されており、湿紙の各面は交互にフェルトを介して搾水された。以下、最後(4番目)のプレス装置でフェルトに当接した面を「原紙a面」、その反対面(対向ロールに当接した面)を「原紙b面」と表示する。
カオリン(商品名:カオファイン/シール社製、平均粒子径:0.22μm)60部、重質炭酸カルシウム(商品名:FMT−90/ファイマテック社製、平均粒子径:0.78μm)40部からなる顔料に、顔料100部に対し分散剤(商品名:SNディスパーサントL400/サンノプコ社製)0.2部(固形分換算)を添加し、コーレス分散機を用いて分散し、顔料スラリーを得た。この顔料スラリーに接着剤として酸化澱粉液(商品名:エースA/王子コーンスターチ社製)2部(固形分換算)とカルボキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:F−1073/旭化成社製)10部(固形分換算)を添加し、最終的に固形分濃度63%の塗被層用塗料を調製した。
このようにして調製した塗被層用塗料を前述の塗被紙用原紙上に、片面当たりの乾燥塗工量が10g/m2となるようにブレードコーターで両面塗工を行い、紙水分が4.5%となるように乾燥し、両面塗被紙を得た。
得られた両面塗被紙を熱ソフトカレンダーにて、「原紙b面」側に形成された塗被層B面が表面温度180℃に加熱された金属ロールと1回(線圧:60kN/m)接触するように処理し、次いで「原紙a面」側に形成された塗被層A面が表面温度160℃に加熱された金属ロールと4回(線圧:160kN/m)接触するように1400m/分で処理して印刷用塗被紙を得た。
実施例1の印刷用塗被紙の製造において、熱ソフトカレンダーによる処理を、両面塗被紙の「原紙a面」側に形成された塗被層A面が表面温度160℃に加熱された金属ロールと3回(線圧:120kN/m)接触するように処理した以外は実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
実施例1の印刷用塗被紙の製造において、熱ソフトカレンダーによる処理を、両面塗被紙の「原紙a面」側に形成された塗被層A面が表面温度160℃に加熱された金属ロールと2回(線圧:100kN/m)接触するように処理した以外は実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
実施例1の印刷用塗被紙の製造において、熱ソフトカレンダーによる処理を、両面塗被紙の「原紙b面」側に形成された塗被層B面が表面温度155℃に加熱された金属ロールと1回(線圧:80kN/m)接触するように処理し、次いで「原紙a面」側に形成された塗被層A面が表面温度70℃に加熱された金属ロールと4回(線圧:200kN/m)接触するように処理した以外は実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
実施例1の印刷用塗被紙の製造において、熱ソフトカレンダーによる処理を、両面塗被紙の「原紙b面」側に形成された塗被層B面が表面温度170℃に加熱された金属ロールと2回(線圧:100kN/m)接触するように処理し、次いで「原紙a面」側に形成された塗被層A面が表面温度130℃に加熱された金属ロールと4回(線圧:150kN/m)接触するように1400m/分で処理した以外は実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
実施例1の原紙の調製において、填料として軽質炭酸カルシウム(商品名:TP−121/奥多摩工業社製)と無定形シリカ(トクシールGU−N/トクヤマ社製、平均粒子径:19.9μm、嵩比重 0.10g/ml)を、それぞれ抄紙した原紙質量の6%と3%となるよう添加した以外は実施例1と同様にして原紙を調製し、その原紙を使用した以外は実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
実施例1の原紙の調製において、填料として軽質炭酸カルシウム(商品名:TP−121/奥多摩工業社製)と無定形シリケート(チキソレックス17/ローディア社製、平均粒子径:9.0μm、嵩比重0.20g/ml)を、それぞれ抄紙した原紙質量の2%と7%となるよう添加した以外は実施例1と同様にして原紙を調製し、その原紙を使用した以外は実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
[下塗塗被層用塗料の調製]
重質炭酸カルシウム スラリー(商品名:FMT−75/ファイマテック社製、平均粒子径:1.29μm)100部からなる顔料に、接着剤として酸化澱粉液(商品名:エースA/王子コーンスターチ社製)6部(固形分換算)とカルボキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:F−1073/旭化成社製)5部(固形分換算)を添加し、最終的に固形分濃度64%の下塗塗被層用塗料を調製した。
[印刷用塗被紙の製造]
このように調製した下塗塗被層用塗料を実施例1の塗被紙用原紙上に、片面当たりの乾燥塗工量が6g/m2となるようにブレードコーターで両面塗工を行い、次いで実施例1の塗被層用塗料を片面当たりの乾燥塗工量が6g/m2となるようにブレードコーターで両面塗工を行い、紙水分が4.5%となるように乾燥し、両面塗被紙を得た。
得られた両面塗被紙を実施例1の熱ソフトカレンダー条件で処理して印刷用塗被紙を得た。
[塗被層用塗料の調製]
カオリン(商品名:カオファイン/シール社製、平均粒子径:0.22μm)60部、重質炭酸カルシウム(商品名:FMT−90/ファイマテック社製、平均粒子径:0.78μm)35部、中空プラスチックピグメント(商品名:AE−851、平均粒子径:0.1μm)5部からなる顔料に、顔料100部に対し分散剤(商品名:SNディスパーサントL400/サンノプコ社製)0.2部(固形分換算)を添加し、コーレス分散機を用いて分散し、顔料スラリーを得た。この顔料スラリーに接着剤として酸化澱粉液(商品名:エースA/王子コーンスターチ社製)2部(固形分換算)とカルボキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:F−1073/旭化成社製)10部(固形分換算)を添加し、最終的に固形分濃度63%の塗被層用塗料を調製した。
[印刷用塗被紙の製造]
このように調製した塗被層用塗料を実施例1の塗被紙用原紙上に、片面当たりの乾燥塗工量が10g/m2となるようにブレードコーターで両面塗工を行い、紙水分が4.5%となるように乾燥し、両面塗被紙を得た。
得られた両面塗被紙を実施例1の熱ソフトカレンダー条件で処理して印刷用塗被紙を得た。
実施例1の印刷用塗被紙の製造において、熱ソフトカレンダーによる処理を、両面塗被紙の「原紙a面」側に形成された塗被層A面が表面温度180℃に加熱された金属ロールと1回(線圧:60kN/m)接触するように1400m/分で処理した以外は実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
実施例1の印刷用塗被紙の製造において、熱ソフトカレンダーによる処理を、両面塗被紙の「原紙b面」側に形成された塗被層B面が表面温度180℃に加熱された金属ロールと1回(線圧:60kN/m)接触するように処理し、次いで「原紙a面」側に形成された塗被層A面が表面温度200℃に加熱された金属ロールと1回(線圧:90kN/m)接触するように1400m/分で処理した以外は実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
実施例1の印刷用塗被紙の製造において、熱ソフトカレンダーによる処理を、両面塗被紙の「原紙b面」側に形成された塗被層B面が表面温度180℃に加熱された金属ロールと1回(線圧:60kN/m)接触するように処理し、次いで「原紙a面」側に形成された塗被層A面が表面温度180℃に加熱された金属ロールと4回(線圧:130kN/m)接触するように1400m/分で処理した以外は実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
(印刷用塗被紙の密度)
得られた印刷用塗被紙を23℃±1℃、(50±2)%RHの環境下で調湿したのち、同環境下で、JIS P8124に準じて米坪、JIS P8118に準じて紙厚を測定し、密度を計算によって求めた。
得られた印刷用塗被紙を23℃±1℃、(50±2)%RHの環境下で調湿したのち、同環境下で、ISO 8254−Part1に準じた光沢度計(GM−26D、村上色彩技術研究所製)を用いて印刷用塗被紙の両面の75度光沢度を測定した。
なお、塗被紙表裏の光沢度の差が2ポイント以下のものが表裏差が少なく、優れている。
得られた印刷用塗被紙の両面について、光沢ムラの有無を目視により判定した。
○:良好。
△:やや劣るが、実用上は問題ない。
×:劣る。
得られた印刷用塗被紙を23℃±1℃、(50±2)%RHの環境下で調湿したのち、同環境下で、J.TAPPI No.5−2に準じた王研式平滑度計を用いて印刷塗被紙の両面について平滑度を測定した。
得られた印刷用塗被紙を23℃±1℃、(50±2)%RHの環境下で調湿したのち、同環境下で、RI印刷機(石川島機械製)を用い、オフセットインキ(商品名:バリウスG/大日本インキ化学工業製)0.3ccで印刷を行い、下記基準により判定した。
○:インキ転移性が良好。
△:インキ転移性がやや劣るが、実用上は問題ない。
×:インキ転移性が非常に劣る。
Claims (4)
- 原紙の両面に、顔料と接着剤を含有する塗被層を1層以上形成した後、樹脂ロールと金属ロールからなる熱ソフトカレンダーに通紙して平滑化処理を施す印刷用塗被紙の製造方法において、熱ソフトカレンダーに通紙する際に、原紙抄紙機のプレスパートにおける最終プレス工程で湿紙がフェルトに当接して搾水されたのち乾燥されてなる原紙面側に形成された塗被層面(A面)を原紙の反対面側に形成された塗被層面(B面)より1回以上多く金属ロールと接触するように通紙し、且つA面が接触する金属ロールの表面温度をB面が接触する金属ロールの表面温度より10℃以上低くして通紙することを特徴とする印刷用塗被紙の製造方法。
- プレスパートにおける最終プレス工程で使用されるプレス装置が、シングルフェルト式のシュープレスである請求項1に記載の印刷用塗被紙の製造方法。
- 原紙が、填料として無定形シリカまたは無定形シリケートの少なくとも1種を原紙質量の1〜10質量%含有する原紙である請求項1または2に記載の印刷用塗被紙の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法で製造したことを特徴とする印刷用塗被紙。
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