請求項1に記載の発明は、前面開口部を有する筐体と、前記筐体に備えられ閉時に前記前面開口部を閉塞する扉と、前記筐体に備えられた冷凍サイクルの圧縮機と、前記圧縮機を前記筐体に支持する防振装置とを有したものであって、前記扉が閉時に、前記扉が前記筐体へ衝突する衝突方向に対して、前記防振装置は、前記衝突方向に対する略直角方向の変位量よりも前記衝突方向に対する略平行方向の変位量が大きいものであるとともに、前記圧縮機を前記筐体の天面に配置することに加え、前記圧縮機の前方側には断熱層が形成されるように冷蔵庫本体の背面上部に配置しているものであり、これによって、圧縮機の内部へ衝撃力が伝わる前に、圧縮機の外部にそなえられた防振装置によって衝撃力を大きく低減することができ、圧縮機の内部への衝撃力の伝播を低減することで圧縮機の釜当りを抑制することができる。このように、略水平成分の振動に対して圧縮機の支持装置において大きな防振効果が得られこととなり、圧縮機の釜当りを抑制することができる。
請求項2に記載の発明は、前面開口部を有する筐体と、前記筐体に備えられ閉時に前記前面開口部を閉塞する扉と、冷凍サイクルの圧縮機と、前記圧縮機を前記筐体に支持する防振装置とからなり、前記防振装置は、前記箱筐体からの振動のうち、略垂直成分の振動よりも略水平方向成分の振動をより多く吸収する第一緩衝手段と、略水平方向成分の振動よりも略垂直成分の振動をより多く吸収する第二緩衝手段とを備えたものであるとともに、前記圧縮機を前記筐体の天面に配置することに加え、前記圧縮機の前方側には断熱層が形成されるように冷蔵庫本体の背面上部に配置しているものであり、これによって、圧縮機の内部へ衝撃力が伝わる前に、圧縮機の外部にそなえられた防振装置によって衝撃力を大きく低減することができ、圧縮機の内部への衝撃力の伝播を低減することで圧縮機の釜当りを抑制することができる。このように、略水平成分の振動に対して圧縮機の支持装置において極めて大きな防振効果が得られこととなり、圧縮機の釜当りを抑制することができる。
請求項3に記載の発明は、防振装置は、圧縮機の外部に取付けられた弾性部材からなる第二緩衝手段と、前記第二緩衝手段と前記筐体との間に形成され前記第二緩衝手段も含めた前記圧縮機の水平方向への移動を可能にした第一緩衝手段とからなることにより、略水平成分の衝撃力に対して大きな吸収力を備えることにより防振効果が得られた上で、吸収しきれなかった衝撃力を第二緩衝手段によって吸収することで、圧縮機の内部への衝撃力の伝播を抑制し、圧縮機の釜当りを抑制することができる。
請求項4に記載の発明は、防振装置は、圧縮機と冷蔵庫本体に対して、二重の弾性部材である外部弾性部材と外部支持部材とを備え、前記防振装置の圧縮機側に外部弾性部材が備えられており、前記圧縮機と前記外部弾性部材とを含めて外部支持部材によって弾性支持されているものである。
これによって、冷蔵庫の外部からかかった衝撃力をまず外部支持部材が吸収し、外部支持部材で吸収しきれなかった衝撃力を外部弾性部材によって吸収することにより、圧縮機の内部へ伝達する衝撃力を抑制することができ、圧縮機の釜当りを抑制することができる。
請求項5に記載の発明は、防振装置の外部支持部材は、前記筐体に回動可能に軸止されていることにより、前記扉の閉時に前記筐体が前後方向に傾倒するように揺動する場合、揺動方向の振動成分に対して大きな防振効果が得られ、圧縮機の釜当りを抑制することができる。
請求項6に記載の発明は、防振装置は、弾性を有する弾性部材と、筐体と固定される固定部材とを備え、少なくとも扉が筐体へ衝突する衝突方向と略平行方向において、前記固定部材と前記弾性部材との間にクリアランスを有するものである。
これによって、衝撃方向と略平行方向における防振装置の剛性が隙間部分であるクリアランスの部分においては限りなく0に近くなる程度まで低くすることができ、圧縮機の内部へ衝撃力が伝わる前に圧縮機の外部で大きく衝撃力を吸収することができるので、密閉容器から電動圧縮要素へ伝達する振動を低減することができるので、圧縮機の釜当りを抑制し、静音化が図れ、信頼性の高い冷蔵庫を提供することができる。
請求項7に記載の発明は、防振装置の固定部材と弾性部材との間に備えられたクリアランスは、前記防振装置の圧縮機側のクリアランスが前記防振装置の筐体側のクリアランスよりも大きいものである。
これによって、防振装置の圧縮機側の変位量をより大きくすることができ、例えば防振装置の下端部が冷蔵庫本体に固定されているような場合でも、防振装置の圧縮機側に備えられたクリアランスクの部分においては衝撃方向と略平行する方向における剛性が限りなく0に近くなる程度まで低くすることができ、圧縮機の内部へ衝撃力が伝わる前に圧縮機の外部で大きく衝撃力を吸収することができるので、密閉容器から電動圧縮要素へ伝達する振動を低減することができるので、圧縮機の釜当りを抑制し、静音化が図れ、信頼性の高い冷蔵庫を提供することができる。
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の冷蔵庫に搭載する圧縮機であって、これによって、釜当たりの課題が発生する可能性の高い冷蔵庫に搭載するような圧縮機において、圧縮機の釜当りを抑制するので、静音化が図れ、信頼性の高い圧縮機を提供できるという効果が得られる。
請求項9に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の冷蔵庫に搭載する圧縮機の防振装置であって、これによって、釜当たりの課題が発生する可能性の高い冷蔵庫に搭載するような圧縮機の搭載する際に、圧縮機の釜当りを抑制するので、静音化が図れ、信頼性の高い圧縮機を提供できるという効果が得られる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における冷蔵庫の側面図である。図2は本発明の実施の形態1における冷蔵庫の平面図である。図3(a)は本発明の実施の形態1における圧縮機の縦断面図であり、図3(b)は本発明の実施の形態1における圧縮機の水平断面図である。図4は本発明の実施の形態1における防振装置の構成を示す図である。図5は本発明の実施の形態1における防振装置の動作を示す図である。
図1、図2、図3(a)、図3(b)、図4において、筐体である冷蔵庫本体100は、外箱100aの内部に断熱層100bが形成されている。
ここで、冷蔵庫は、平たんな床面96に設置されており、最下部が設置部となり、冷蔵庫の背面に位置する壁97とは所定の距離を隔てて設置されている。
機械室101は、冷蔵庫本体100の上部の背面近傍に区画形成されている。
扉102は、冷蔵庫本体100の上部に取り付けられた回転式の扉である。
扉103は、冷蔵庫本体100の中部より下方に取り付けられた引出し式の扉である。
圧縮機110は、冷蔵庫本体100の背面上方に備えられた機械室101に配設されており、4つの防振装置120を介して外箱100aに固定されている。また、圧縮機110の前方側には断熱層100bが形成されている。
また、本実施の形態においては、垂直方向とは重力方向である上下方向を指し、水平方向とは重力方向に対して垂直な前後左右方向をさす。また水平方向の中でも扉102,104が閉まる際に冷蔵庫本体100と衝突する衝突方向Aに対して略平行方向と、衝突方向Aに対して略直角方向とを用いて説明する。よって、衝突方向Aに対する略平行方向と略直角方向とは、ともに水平方向に含まれるものである。
ここで、圧縮機110は、主に略密閉された外郭を成すシェル111とシェル111の外部に備えられた脚部111aと、シェル111の内部に備えられた駆動部112と、メカ部113と、駆動部112とメカ部113からなる圧縮機本体をシェルに対して弾性支持する弾性体114とから構成され、駆動部112とメカ部113からなる圧縮機本体は弾性体114を介してシェル111に固定されることで、シェル111に対して伝わる運転時の振動を低減している。つまり、駆動部112とメカ部113からなる圧縮機本体は、シェル111内部で移動可能であり、例えば圧縮機110にかかる外部からの加速度により、圧縮機本体が揺動し、特に支持部である弾性体114から離れている上部に位置するメカ部113とシェル111内部とが接触することになり、釜当り音が散発的に発生する。
圧縮機110の外部に備えられ、圧縮機110を冷蔵庫本体100に対して弾性支持する防振装置120は、シェル111の外部に備えられた脚部111aに取り付けられ、主にスタットピン121と、防振ゴム122と、Uリング123とから構成されている。
また、この時、防振装置120は圧縮機110のシェル111に形成された脚部111aに備えられているが、この際に扉102,104が閉まる際に冷蔵庫本体100と衝突する衝突方向A冷蔵庫に対し略平行方向の脚111a間ピッチWbは、衝突方向Aに対し略直角方向の脚111a間ピッチWaよりも長くなるように形成している。
ここで、冷蔵庫本体100への固定部材であるスタットピン121は、外郭110aに固定され、上方に向けて伸びる円柱状の固定金具である。
次に、防振ゴム122は、内部が中空である球根形状をしており、上下部には貫通穴122a、122bが形成されている。
防振装置120の冷蔵庫本体100側に位置する下部貫通穴122aは、スタットピン121とのクリアランスが略0となるように設定されており、防振装置120の圧縮機110側に位置する上部貫通穴122bは、スタットピン121とのクリアランスが約3mmとなるように設定されている。
本実施の形態では、このクリアランスを第一緩衝手段とし、外部から衝撃力がかかった場合に略垂直方向の成分よりも略水平方向の成分の衝撃力をより多く吸収するものである。また、防振ゴム122を第二緩衝手段とし、外部から衝撃力がかかった場合に、略水平方向の成分よりも略垂直方向の成分の衝撃力をより多く吸収するものである。
すなわち、防振装置120は、閉扉に伴い外部から衝撃力がかかった場合には、扉102,103が冷蔵庫本体100と衝突する衝突方向と略平行方向を含む水平方向において、冷蔵庫本体100側よりも圧縮機110側の方が変位量が大きく動きやすくなっている。つまり、外部から衝撃力がかかった場合の防振装置の変位量は冷蔵庫本体100側の特に下端部はほぼ0で冷蔵庫本体に対して変位しないのに対して、圧縮機110側は上記クリアランスによって、容易に冷蔵庫本体に対して変位することとなる。
また、防振ゴム122は、中空の球根形状であり、水平方向においては、上部貫通穴122aとスタットピン121の間に所定のクリアランスが形成されているのに対して、垂直方向である上下方向に対しては、シェル111の脚部111aの下端部と冷蔵庫本体100との間は弾性部材である防振ゴムによってクリアランスなく弾性保持されている。
これによって、例えば外部からそれぞれの方向に対して同程度の衝撃力がかかった場合に、垂直方向である上下方向における防振ゴム122の変位量よりも、水平方向における防振ゴム122の変位量の方が大きく設定されている。つまり、圧縮機110の駆動により発生する振動を冷蔵庫本体110への伝達を抑制するために用いられる従来の防振装置は、縦方向の振動減衰率をより高めることで振動伝達を抑制するように設定されているのに対して、本実施の形態の防振装置120は、水平方向の振動減衰率をより高めることを主眼において設計されている。
さらに、上部貫通穴122aの近傍で、シェル111の脚部111aは防振ゴム122に嵌め込まれるように固定されている。
Uリング123は、防振ゴム122の上部に取り付けられ、圧縮機110の上下方向の脱離を防止している。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
図5において、まず、開状態の扉102、扉103が人の手により閉められ、扉102,103が冷蔵庫本体100と衝突する全閉状態となった瞬間、扉102および扉103により、冷蔵庫本体100は、扉102,103と冷蔵庫本体100との衝突方向である前方から後方に向けて強い衝撃力を受け、冷蔵庫本体100には水平方向への振動が生じることになる。
この時、冷蔵庫本体100は、扉102,103が冷蔵庫本体100と衝突する衝突方向と略平行方向を含む水平方向において、まず衝突方向である後方への大きな振幅が生じた後、前後方向の揺動によって減衰振動を繰り返すこととなる。
さらに、本実施の形態では、圧縮機110は、冷蔵庫本体100の上部に配設されており、冷蔵庫本体100の設置面が最下部であることから、冷蔵庫本体100の最下部が固定端となり、冷蔵庫本体100の最上部が自由端となることから、圧縮機110が自由端付近に配置されることとなり、外部から衝撃力がかかった場合には、振動の影響を受け易く、冷蔵庫本体100の中でも圧縮機110付近の揺動の振幅が最も大きくなる。
よって、圧縮機110に外部から水平方向の振動が加わった場合、シェル111に生じる振動と、駆動部112とメカ部113からなる圧縮機本体の振動は、弾性体114により位相差が生じ、圧縮機本体とシェル111が衝突し、この衝突に伴う音が釜当り音となる。
こういった釜当たりの課題に対して、従来技術の防振装置では、圧縮機110への水平方向成分の振動減衰率は小さく、圧縮機110の外部において水平方向の衝撃力を吸収しにくい為、衝撃力が圧縮機110の内部へと容易に伝達する為、釜当りが生じやすかったのに比べて、本実施の形態の場合、防振ゴム122は、中空の球根形状であり、また上部貫通穴122aとスタットピン121の間に水平方向における所定のクリアランスが形成されており、上下方向に対して防振ゴム122が許容する変位量よりも、水平方向に対して防振ゴム122が許容する変位量の方が大きく設定されているので、圧縮機110の外部から衝撃力がかかった場合に、圧縮機110の外部において水平方向の衝撃力をより吸収しやすい為、衝撃力が圧縮機110の内部へ伝達するのを抑制することができる為、圧縮機110内の釜当りを抑制することができる。
特に、防振装置120は、外部から衝撃力がかかった場合には、水平方向において、冷蔵庫本体100側よりも圧縮機110側の方がより変位量が大きく動きやすくなっている。つまり、外部から衝撃力がかかった場合の防振装置の変位量は冷蔵庫本体100側の特に下端部はほぼ0で冷蔵庫本体に対して変位しないのに対して、圧縮機110側は上記クリアランスによって、容易に冷蔵庫本体に対して変位することとなるので、冷蔵庫本体100対してシェル111の変位量が大きくなるので、より衝撃力の吸収量を大きくすることができる。
この時、第一緩衝部材であるクリアランスの部分においては衝撃方向と略平行する方向における剛性が限りなく0に近くなる程度まで低くすることができ、圧縮機の内部へ衝撃力が伝わる前に圧縮機の外部で大きく衝撃力を吸収することができることは言うまでもない。また、この第一緩衝部材に加えて第二緩衝部材である防振ゴム122を備えることで、圧縮機110から発生する振動が冷蔵庫本体100へと伝達するのをも抑制することができる。
このように、圧縮機110の内部へ衝撃力が伝わる前に、圧縮機110の外部支持部材である防振装置120によって衝撃力を大きく低減することができ、圧縮機110の内部への衝撃力の伝播を低減することで圧縮機150の釜当りを抑制することができる。
また、本発明は、防振装置120は圧縮機110のシェル111に形成された脚部111aに備えられているが、この際に扉102,104が閉まる際に冷蔵庫本体100と衝突する衝突方向A冷蔵庫に対し略平行方向の脚111a間ピッチWbは、衝突方向Aに対し略直角方向の脚111a間ピッチWaよりも長くなるように形成しているので、閉扉による釜当たりの抑制を図る場合には、衝突方向Aに主眼を置いて、衝突方向Aと略平行方向の剛性をより低くすることで、圧縮機110が衝突方向Aと略平行な方向により動きやすくすることで、衝突方向Aと略平行な方向の衝撃力をより吸収することができ、釜当たりの抑制を図ることができる。
このように圧縮機110の脚111aのピッチを工夫することで、扉102,104が閉まる際に、衝突方向Aに対する略直角方向の変位量よりも衝突方向に対する略平行方向の変位量が大きくすることができ、これによって、圧縮機の内部へ衝撃力が伝わる前に、圧縮機の外部にそなえられた防振装置によって衝撃力を大きく低減することができ、圧縮機の内部への衝撃力の伝播を低減することで圧縮機の釜当りを抑制することができる。このように、略平行成分の振動に対して圧縮機の支持装置において大きな防振効果が得られこととなり、圧縮機の釜当りを抑制することができる。
つまり、水平方向の振動減衰率を高めた本実施の形態の防振装置120は、回転式扉102および引出し式扉103の閉時に生じる水平方向の振動に対して、圧縮機110の振幅を小さくできることから、圧縮機110内の釜当りを抑制することができる。
これは、圧縮機110を冷蔵庫本体100の上部に配設した冷蔵庫においては特に釜当たり音の発生が顕著となるので、有効な手段となる。
さらに、本実施の形態においては、圧縮機110を筐体である冷蔵庫本体100の天面に配置することに加え、圧縮機110の前方側には断熱層100bが形成されるように冷蔵庫本体の背面上部に配置していることで、仮に釜当たり音が発生した場合においても、釜当たり音の前方への透過をより低減することができ、さらなる静音化を実現した冷蔵庫を提供することが可能となる。
以上のように、本実施の形態の冷蔵庫は、前面開口部を有する冷蔵庫100と、冷蔵庫100に備えられ閉時に前面開口部を閉塞する回転式の扉102および引出し式の扉103と、冷凍サイクルの圧縮機110と、圧縮機110を冷蔵庫100に支持する防振装置120からなり、防振装置120は、垂直方向に許容する変位量よりも水平方向に許容する変位量が大きくしたことにより、回転式扉102および引出し式扉103の閉時に生じる水平方向の振動に対して、圧縮機110の振幅を小さくできることから、圧縮機110内の釜当りを抑制することができ、静音化が図れ、かつ信頼性を高めることができる。
なお、本実施の形態では冷蔵庫本体100の天面に圧縮機110を搭載するものとしたが、必ずしも天面に圧縮機を搭載するものでなくとも、なんらかの要因で外部からの衝撃力が冷蔵庫本体100にかかり、その際に圧縮機110の内部で釜当たり音が発生するような冷蔵庫においては、同様に、釜当たり音を抑制することが可能である。
なお、本実施の形態では、圧縮機110の脚111aのピッチを工夫することで、扉102,104が閉まる際に、衝突方向Aに対する略直角方向の変位量よりも衝突方向に対する略平行方向の変位量が大きくするものとしたが、例えば、圧縮機110と冷蔵庫本体100との間に備えられた配管形状を工夫することによっても、衝突方向Aに対する略直角方向の変位量よりも衝突方向に対する略平行方向の変位量を大きくすることが可能である。この一例としては、例えば圧縮機110の背面側の冷蔵庫本体100から延出した吸入配管を上下方向に蛇行させながら一旦圧縮機110の側方を通って圧縮機110前面側付近まで延出させた後、再び圧縮機110の背面側へと戻すことで、圧縮機110の冷蔵庫本体100に対する衝突方向Aにおける剛性を低め、しなりやすくすることで変位量を大きくすることも可能である。
(実施の形態2)
図6は本発明の実施の形態2における防振装置の構成を示す図である。図7は本発明の実施の形態2における防振装置の動作を示す図である。
なお、実施の形態1と同様の構成については、詳細な説明を省略する。
図6において、防振装置220は、主に冷蔵庫本体100への固定部材であるスタットピン221と、スプリング222と、上部ゴムブッシュ223と、下部ゴムブッシュ224と、潤滑部材225と、Uリング226とから構成されている。
ここで、スタットピン221は、外郭110aに固定され、上方に向けて伸びる円柱状の固定金具である。
次に、スプリング222は、鋼材を用いたバネである。
上部ゴムブッシュ223は、シェル111とスプリング222を固定するために用いられる中空部材であり、スタットピン221との水平方向におけるクリアランスが約3mmとなるように設定されている。
下部ゴムブッシュ224は、スプリング222の下方に固定された中空部材であり、スタットピン221とのクリアランスが約3mmとなるように設定されている。
潤滑部材225は、下部ゴムブッシュ224と、外箱100aの間に塗布された潤滑材であり、耐油性の高いグリースを用いることが望ましい。
このように、防振装置220は異なる種類の弾性部材であるコイルばねからなるスプリング222と、ゴムからなる上部ゴムブッシュ223および下部ゴムブッシュ224とを組み合わせて用いている。
本実施の形態では、圧縮機110の運転時の振動を吸収するために主に垂直方向である上下方向の振動吸収率を高め、さらに耐久性も保障される鋼材を用いたばねからなるスプリング222と、扉102および扉103の閉時に生じる水平方向の振動吸収率を高めた潤滑部材225とを独立して構成し、さらに水平方向の振動吸収率を高める為にゴムブッシュとスタットピン221との間にクリアランスを形成することで、水平方向の振動吸収率を高めた。
Uリング226は、上部グムブッシュ223の上部に取り付けられ、圧縮機110の上下方向の脱離を防止している。
本実施の形態では、この潤滑部材と、ゴムブッシュ224とスタットピン221との間のクリアランスとを第一緩衝手段とし、外部から衝撃力がかかった場合に略垂直方向の成分よりも略水平方向の成分の衝撃力をより多く吸収するものである。また、スプリング222と、ゴムからなる上部ゴムブッシュ223および下部ゴムブッシュ224とを組み合わせた防振装置120を第二緩衝手段とし、外部から衝撃力がかかった場合に、略水平方向の成分よりも略垂直方向の成分の衝撃力をより多く吸収するものである。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
図7において、開状態の扉102および扉103の閉時に生じる外部からかかる水平方向の衝撃力に対して、潤滑部材225の働きにより、圧縮機110と、防振部材120は、外箱100aの上で横滑りする状態となる。つまり、前後方向の冷蔵庫本体100の変位に対して圧縮機110のシェル111の変位を大きくすることが可能となり、圧縮機110の外部から衝撃力がかかった場合に、圧縮機110の外部において水平方向の衝撃力をより吸収しやすい為、衝撃力が圧縮機110の内部へ伝達するのを抑制することができ、圧縮機110の内部に伝達する衝撃力を抑制できることから、圧縮機110内の釜当りを抑制することができる。
特に、圧縮機110の外部に備えられた防振装置120は、外部から衝撃力がかかった場合には、水平方向において、圧縮機110が横滑りすることにより、圧縮機110を弾性支持する防振部材120そのものがより変位量が大きく動きやすくなっている。さらに、この防振部材も含めた圧縮機110の横滑りに加えて、防振装置120の内部においても、ゴムブッシュとスタットピン221との間にクリアランスによって、圧縮機110が防振部材120に対しても変位することが可能となるので、冷蔵庫本体100対してシェル111の変位量が大きくなるので、より水平方向における衝撃力の吸収量を大きくすることができる。
このように、圧縮機110の内部へ衝撃力が伝わる前に、圧縮機110の外部支持部材である防振装置120によって衝撃力を大きく低減することができ、圧縮機110の内部への衝撃力の伝播を低減することで圧縮機150の釜当りを抑制することができる。
以上のように本実施の形態の冷蔵庫は、前面開口部を有する冷蔵庫本体100と、冷蔵庫本体100に備えられ閉時に前面開口部を閉塞する回転式の扉102および引出し式の扉103と、冷凍サイクルの圧縮機110と、圧縮機110を冷蔵庫100に支持する防振部材120からなり、防振部材120は、冷蔵庫100からの振動のうち、主に略水平方向成分の振動を吸収する潤滑部材225と主に略垂直成分の振動を吸収するスプリング222とを独立して構成したことにより、回転式扉102および引出し式扉103の閉時に生じる水平方向の振動に対して圧縮機110の振幅を小さくできることから、圧縮機110内の釜当りを抑制することができ、静音化が図れ、かつ信頼性を高めることができる。
なお、本実施の形態では、潤滑部材225によって、圧縮機110を弾性支持する防振部材120そのものがより変位量が大きく動きやすくなっているものとしたが、実施の形態1で示したように、防振部材120の下端部は冷蔵庫本体100に対してあまり変位せずに防振部材120の圧縮機110側がクリアランスによって冷蔵庫本体100に対してより動きやすくするものに本実施の形態のような防振装置220は異なる種類の弾性部材であるコイルばねからなるスプリング222と、ゴムからなる上部ゴムブッシュ223および下部ゴムブッシュ224とを組み合わせて用いている場合でも、水平方向における衝撃力の吸収量を確保することができる。
なお、本実施の形態は、防振装置220は異なる種類の弾性部材であるコイルばねからなるスプリング222と、ゴムからなる上部ゴムブッシュ223および下部ゴムブッシュ224とを組み合わせて用いているものにおいて、さらに潤滑部材225によって、圧縮機110を弾性支持する防振部材120そのものがより変位量が大きく動きやすくなっているものとしたが、例えば実施の形態1のようなゴム等の単一の材料によって弾性力を得ているようなタイプの防振装置220を用いた場合でも、下端部に潤滑部材225を設けることによって、圧縮機110を弾性支持する防振部材120そのものがより変位量が大きく動きやすくすることができることによって、圧縮機110の外部でより衝撃力を吸収することももちろん可能である。
(実施の形態3)
図8は本発明の実施の形態3における冷蔵庫の側面図である。図9は本発明の実施の形態3における防振装置の構成を示す図である。図10は本発明の実施の形態2における防振装置の動作を示す図である。図11は本発明の実施の形態2における防振装置の動作を示す図である。
図8、図9において、筐体である冷蔵庫本体100は、平たんな床面98に設置されており、壁99とは下方の突起部99aと当接した状態で設置されている。
ここで、実際の家屋において突起部99aは、冷蔵庫の背壁面にある壁に取り付けられた桟に代表される突起である。
防振装置320は、主に冷蔵庫本体100への固定部材であるスタットピン321と、スプリング322と、上部グムブッシュ323と、下部ゴムブッシュ324と、Uリング225とからなる外部弾性部材と、揺動部材326と、ガイドピン327と、緩衝材328とからなる外部支持部材で構成されている。
ここで、スタットピン321は、外郭110aに固定され、上方に向けて伸びる円柱状の固定金具である。
スプリング322は、鋼材を用いたバネである。
上部ゴムブッシュ323は、シェル111とスプリング222を固定するために用いられる中空部材であり、スタットピン221とのクリアランスが略0となるように設定されている。
下部ゴムブッシュ324は、スプリング222の下方に固定された中空部材であり、スタットピン321とのクリアランスが略0となるように設定されている。
Uリング325は、上部グムブッシュ323の上部に取り付けられ、圧縮機110の上下方向の脱離を防止している。
揺動部材326は、外箱100aに対し回転軸326aを中心に前後方向に回転可能に軸止された揺動プレート326bから構成されており、揺動プレート326bの一端には、ガイド溝326cが形成されている。
このように、圧縮機110の防振装置320は冷蔵庫本体100に対して、2重の弾性部材である外部弾性部材と外部支持部材とから構成されており、圧縮機110側に外部弾性部材が備えられており、圧縮機110と外部弾性部材とを含めて外部支持部材によって弾性支持されている。
ガイドピン327は、外箱100aから上方に向けて伸びる円柱状の固定金具であり、ガイド溝326cを貫通するように配設されている。
緩衝材328は、ガイドピン327の上下端部に設けられた緩衝材であり、揺動プレート326bと、外箱100aおよびガイドピン327の上端との当接音を抑制している。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
図10、図11において、まず、開状態の扉102、扉103が人の手により閉められ、全閉状態となった瞬間、扉102および扉103により、冷蔵庫本体100は、後方に向けて強い衝撃を受け、突起部99aと冷蔵庫本体100の下部が当接していることから、冷蔵庫本体100の後方下部を支点に回転運動が生じる。つまり、まず、冷蔵庫本体100の前方下部が若干浮き上がり、機械室101が後方に若干沈み込む動作を行い、次に前方への復帰動作が続き、これらの動作を繰り返しながら減衰して行く。
これに対して、本実施の形態の防振装置320は、揺動プレート326bが回転軸326aを中心に傾倒する。このとき、揺動プレート326bが傾倒を許される範囲は、揺動プレート326bがガイドピン327の上下部に配設された緩衝材328に当接する間に限られる。
このように、冷蔵庫本体100の揺動運動に対して、揺動プレート326bが圧縮機110の初期状態、つまり水平状態を保つように傾倒することで、圧縮機110の内部に伝わる衝撃を低減でき、釜当たりを抑制することができる。
すなわち、圧縮機110の防振装置320は冷蔵庫本体100に対して、2重の弾性部材である外部弾性部材と外部支持部材とから構成されており、圧縮機110側に外部弾性部材が備えられており、圧縮機110と外部弾性部材とを含めて外部支持部材によって弾性支持されていることにより、外部から衝撃力が加わった場合には、まずはより大きく外部支持部材が揺動することによって衝撃力が吸収され、次に外部支持部材によって吸収しきれなかった衝撃力が外部弾性部材によって吸収され、さらにそこでも吸収しきれなかった衝撃力のみが圧縮機110の内部へと伝達することとなるので、圧縮機の内部へ伝達する衝撃力を大幅に低減することができ、釜当たりを抑制することができる。
以上のように本実施の形態の防振装置320は、前面開口部を有する冷蔵庫本体100と、冷蔵庫本体100に備えられ閉時に前面開口部を閉塞する回転式の扉102および引出し式の扉103と、冷凍サイクルの圧縮機110と、圧縮機110を冷蔵庫本体100に支持する防振部材320からなり、防振部材320bは、冷蔵庫本体100に回動可能に軸止されていることにより、冷蔵庫本体100の回転運動に対して、揺動プレート326bが圧縮機110の初期状態、つまり水平状態を保つように傾倒することで、圧縮機110に加わる衝撃を低減でき、釜当たりを抑制することができ、静音化が図れ、かつ信頼性を高めることができる。