JP4705797B2 - 熱融着分繊親糸の製造方法 - Google Patents

熱融着分繊親糸の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は熱融着分繊親糸に関する。更に詳細には、後加工の分繊により熱融着性の優れたモノフィラメントを製造することができる分繊親糸となる、分繊用ポリエステルマルチフィラメント及びその製造方法に関する。
ポリエステル繊維は比較的安価であり、寸法安定性や耐久性、さらにはリサイクル性に優れていることから、衣料、食品及び産業資材として様々な分野で使用されている。その中でも熱融着ポリエステル繊維は、車両用シート、カーペットなどにおける目ずれを熱融着によって防ぐ目的で広く用いられている。特にスクリーンメッシュやティーバッグなど、より細かな網目状が要求され且つ目ずれが好ましくない分野においては、熱融着ポリエステルモノフィラメント(熱融着モノフィラメント)が広く普及している。
このような状況において、糸質及び生産性の安定した熱融着モノフィラメントの製造及び供給が強く求められている。
これらの熱融着ポリエステル繊維としては、たとえば、特許文献1に記載されているように、芯成分にポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という)、鞘成分にイソフタル酸を共重合した低融点PETからなる芯鞘構造のものが用いられている。
特開平6−184824号公報
一方、モノフィラメントの糸質及び生産性の向上や安定を図るためには、特許文献2に記載されているように、複数本のモノフィラメントを一本のマルチフィラメントとして紡糸し、延伸仮撚工程後の分繊工程によって複数本のモノフィラメントとする製造方法が用いられている。
特開2003−247120号公報
また、生産効率の問題点を解消するため、たとえば特許文献3では、複数本のモノフィラメントを一本のマルチフィラメントとして直接延伸紡糸法によって紡糸し、延撚工程を経ることなく分繊することによって複数本のモノフィラメントを得る製造方法が用いられている。
特開2003−267630号公報
しかしながら、上記特許文献1のものは、芯鞘構造の熱融着モノフィラメントを製造する際に、モノフィラメントとして紡糸するものであるため、生産性が十分なものでない。
また、上記特許文献2のものは、単成分モノフィラメントにおける分繊親糸の製造方法であり、本発明における熱融着ポリエステル繊維を単成分で製造しようとすると、ポリマーの性質上、紡糸工程において糸同士が融着してしまい紡糸が困難である。また、紡糸が可能であったとしても、得られる糸は大変弱いものになってしまい分繊工程での糸切れが多発するという問題が生じる。さらには、上記特許文献2の紡糸方法は、溶融紡糸を行った後に延伸仮撚工程を必要とするものであり、生産効率が高いものとはいえない。
また、上記特許文献3のものは、分繊親糸の直接延伸紡糸法における綾落ちや綾寄りの対策についてのものであるが、一般的なポリエステル繊維の紡糸における対策方法であるため、本発明における熱融着ポリエステル繊維においてはそれだけで対応するには不十分なものである。また、本発明における分繊親糸を分繊する際、紡糸工程で発生する自然交絡による張力によってすら糸切れが発生する可能性があるため、上記特許文献3のように交絡を付与することは分繊工程の操業性を低下させることにつながる。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、熱融着モノフィラメントの分繊親糸でありながら紡糸中に糸同士が融着することがなく、分繊工程でも優れた操業性となる生産性のよい熱融着分繊親糸の提供を目的とする。
また、上記に加え、直接延伸紡糸法を用いることで生産効率の向上を図り、且つ、分繊工程でも優れた操業性となる、すなわち大幅なコストダウンを可能とすることができる、より生産性に優れた熱融着分繊親糸を提供することを別の目的とする。
すなわち、本発明は、分繊後、熱融着モノフィラメントを得るための分繊親糸であって、芯鞘型複合マルチフィラメントからなり、芯成分がポリエステル、鞘成分が芯成分より20℃以上融点が低いイソフタル酸を20〜40mol%共重合したポリエチレンテレフタレートであり、分繊後の熱融着モノフィラメントの芯鞘横断面比率が、40/60〜90/10であり、フィラメント数が3〜20本、単糸繊度5〜80dtexである直接紡糸延伸糸である熱融着分繊親糸をその要旨とする。なかでも、芯成分が粘度0.66〜0.90のポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
さらに、本発明は、芯成分にポリエチレンテレフタレート、鞘成分に芯成分の融点より20℃以上低いイソフタル酸を20〜40mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、芯鞘容積比率40/60〜90/10で芯鞘型複合マルチフィラメント用の紡糸口金から吐出し、冷却した後、テーパー率が2〜5%の第1ゴデッドローラに導き、第1ゴデッドローラーから第2ゴデッドローラーとの間で延伸した後、巻き取取り、フィラメント数が3〜20本、単糸繊度5〜80dtexである熱融着分繊親糸を製造することを特徴とする熱融着分繊親糸の製造方法(但し、テーパー率とは[(ローラー表面最大径−ローラー根元径)/ローラー長さ]×100〔%〕)でもある。
すなわち、本発明の熱融着分繊親糸は、芯鞘型複合マルチフィラメントからなり、芯成分がポリエステル、鞘成分が芯成分より20℃以上融点が低い低融点ポリエステルであり、分繊後の熱融着モノフィラメントの芯鞘横断面積比率が、40/60〜90/10とすることで、良好な糸質と熱融着効果を有する熱融着モノフィラメントを効率良く生産することができる。
なかでも、上記熱融着分繊親糸を構成するフィラメント数が3〜20本であり、単糸繊度が5〜80dtexであるものは、紡糸工程及び分繊工程における操業性を向上させる効果を奏する。
さらに、直接延伸紡糸法によって製造される直接紡糸延伸糸であれば、紡糸操業性を向上させるだけでなく、分繊後の芯鞘型モノフィラメントの糸質がより良好なものが得られる。
また、本発明の熱融着分繊親糸を、直接延伸紡糸法によって製造することにより、操業性を向上させ、大幅なコスト削減を可能にする効果を奏する。特に、上記直接延伸紡糸法において、GR1にテーパー率が2〜5%のテーパーローラーを用いると、溶融紡糸時のGR1及びGR2上での糸揺れを大幅に減少し、糸同士の熱融着を防止する効果を奏する。
さらに、上記直接延伸紡糸法における巻取り時のリボン回避のタイミングに合わせて綾角を変化させていくことにより、ボビンの綾落ちや綾寄りを回避し分繊工程における操業性を大幅に向上させる熱融着分繊親糸を容易に得ることができるという効果を奏する。
つぎに、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明の熱融着分繊親糸は、後の分繊工程により熱融着モノフィラメントを得るための分繊親糸であり、分繊用のマルチフィラメントである。
分繊親糸は、通常、マルチフィラメントとして一旦巻き取ったものを、糸条を構成するフィラメントを一本毎、或いは複数本毎に分けて再度巻き取ることによって分繊可能なものである。
図1は、本発明の一実施の形態である熱融着分繊親糸の横断面を示している。この熱融着分繊親糸は、複数本の熱融着モノフィラメントによって形成されている。この熱融着モノフィラメントは、芯部1と鞘部2を備えた芯鞘型複合モノフィラメントである。
上記芯鞘型複合モノフィラメントは、繊維表面に芯部が露出されていないことが好ましい。
上記芯部1はポリエステルからなり、上記鞘部2の成分(以下、「鞘成分」という)は芯部1の成分(以下、「芯成分」という)より20℃以上融点の低い低融点ポリエステルである。
上記芯成分は、鞘成分との溶融紡糸操業性を低下させるものでなければ特に限定するものではなく、ホモポリエステル、共重合ポリエステルでもよい。
上記芯成分が共重合ポリエステルである場合は、熱融着モノフィラメントの強度を向上させるためにも、その極限粘度が0.66〜0.90の高粘度域、特に、極限粘度が0.68〜0.85の高粘度域のものが好ましい。なかでも、極限粘度が0.68〜0.85の高粘度PETを用いることが最も好ましい。
なお、芯成分に用いるポリエステルは、紡糸操業性、コスト等の点からは、PETを用いることが好ましい。
上記鞘成分の低融点ポリエステルは、芯成分のポリエステルよりも20℃以上融点が低いものであれば特に限定するものではないが、たとえば、イソフタル酸、アジピン酸、1,4−ブタンジオール等を共重合せしめた共重合ポリエステルが挙げられる。
なかでも、イソフタル酸を共重合せしめたポリエステルが好ましく、特にイソフタル酸を共重合せしめたPETが好ましい。なお、イソフタル酸共重合PETを用いる場合、紡糸操業性及びコストの点から、鞘成分に対して20〜40mol%共重合せしめたものが好ましい。
上記芯成分と鞘成分の好適な組合せとしては、ホモPETとイソフタル酸共重合PET、高粘度共重合PETとイソフタル酸共重合PET等が挙げられる。なかでも、高粘度共重合PETとイソフタル酸共重合PETは糸の強度を十分に保つことができる点でより好ましい。
次に、本発明の熱融着分繊親糸の構成フィラメント数は3〜20本となるように設定することが好ましく、より好ましくは6〜16本である。
すなわち、構成フィラメント数が3本未満であると、分繊工程におけるモノフィラメントの生産性の飛躍的向上とはならず、逆に20本以上になると、分繊工程においての操業性が悪くなるおそれがある。
さらに、構成フィラメントの単糸繊度は、分繊工程後の熱融着モノフィラメントの用途に応じて適宜に設定することができるが、紡糸操業性、分繊操業性、得られる熱融着モノフィラメントの品質を保つ点から、5〜80dtexに設定することが好ましく、より好ましくは10〜50dtexである。
すなわち、繊度が5dtexより細いと、糸切れが多発し紡糸操業性が低下するだけでなく紡糸自体が困難になり、紡糸ができたとしても、分繊ができず、分繊親糸を得ることができなかったり、分繊工程での操業性を低下させるおそれがある。また、分繊後のモノフィラメントに充分な糸質を持たせるためにも、5dtex以上とすることが好ましい。
一方、80dtexより太いと、紡糸における巻取り工程において綾落ちが発生し紡糸操業性を低下させ、さらに分繊工程での操業性も悪くなるおそれがある。
すなわち、紡糸操業性、分繊操業性、得られる熱融着モノフィラメントの品質に保つことを考慮すると、本発明の熱融着分繊親糸の好適なdtex/フィラメント数は60/6〜800/16であり、160/8〜480/12であればより好ましい。
上記芯部1と鞘部2の横断面積比率は、熱融着分繊親糸の紡糸、またはその後の分繊性及び得られる熱融着モノフィラメントの熱融着性、糸質の点から、芯部1の横断面積/芯部2の横断面積が、40/60〜90/10である。なかでも50/50〜70/30の割合に設定することが好適である。
すなわち、芯部1の横断面積の割合が小さすぎると、低融点の熱融着ポリエステル成分が多すぎることによって紡糸工程において糸同士が融着し操業性が悪くなり、もしくは糸としての強度が低すぎるために分繊工程の操業性の低下、または、分繊後の熱融着モノフィラメントの糸質が低下する。一方、芯部1の横断面積の割合が大きすぎると、低融点のポリエステル成分が少なすぎることによって、分繊工程後のモノフィラメントが芯鞘構造を形成せず、熱融着効果が低下するおそれがある。
また、上記熱融着分繊親糸は、直接延伸紡糸法によって製造された直接紡糸延伸糸であることが好適である。このものは、分繊後の熱融着モノフィラメントが強度、伸度共に向上した糸質のものとなる。
上記熱融着分繊親糸は、紡糸操業性が安定し、且つ、後の分繊工程における操業性が良好なものであれば特に限定するものでないが、強度は2.0cN/dtex以上、伸度は10〜60%程度と設定できるものであることが好ましい。さらに、好ましくは、強度が3.0cN/dtex以上、伸度が20〜50%である。
上記熱融着分繊親糸を分繊した熱融着モノフィラメントは、用途に応じて適宜設定すればよいが、強度は2.0〜10.0cN/dtex、伸度は10〜60%程度と設定できるものであることが好ましい。さらに、好ましくは、強度は3.0〜8.0cN/dtex、伸度は20〜50%である。
本発明の上記熱融着分繊親糸は、直接延伸紡糸法により得ることが好ましく、例えばつぎのようにして得ることができる。
まず、芯部形成用としてホモポリエステルチップ又は共重合ポリエステルチップを用意する。一方、鞘部形成用として、芯部形成用のポリエステルチップより融点が20℃以上低い共重合ポリエステルチップを用意する。そして、芯鞘型複合モノフィラメントの分繊親糸溶融紡糸口金より吐出し、冷却して、油剤を付与した後、ガイドを経て、第1ゴデッドローラー(以下、「GR1」という)に導かれる。次に、GR1では、芯成分のガラス転移温度以上、且つ、鞘成分の融点以下の延伸温度を付与し、第2ゴデッドローラー(以下、「GR2」という)との間で、延伸する。GR2にて熱セットを施し、巻き取ることにより、目的とする熱融着分繊親糸を得ることができる。
上記製造方法に用いる芯成分及び鞘成分は、上述した成分を用いることが好ましい。
なお、芯部形成用のチップとして用いるホモポリエステルチップ、又は共重合ポリエステルチップ、鞘部形成用のチップとして用いる共重合ポリエステルチップの水分率は、ポリマーにもよるが50ppm以下程度であることが好ましい。
そして、芯成分がPET、鞘成分がイソフタル酸共重合PETの場合、鞘成分のチップ水分率は、30ppm以下であることが好ましい。このように、チップの水分率を一定以下にしたものを用いることにより、紡糸操業性がより好ましいものとなる。
上記紡糸口金より吐出する芯成分と鞘成分の容積比率は、紡糸操業性、分繊操業性、分繊後に得られる糸質を良好に保持する点から、40/60〜90/10であることが好ましい。さらに好ましくは、50/50〜70/30である。
また、フィラメント数、繊度は、上述した範囲であることが好ましい。
上記直接紡糸延伸法において、GR1にテーパーローラーを用いることは重要である。
なお、テーパーローラーの概要は図2に示した通りであり、ローラーの根元から外側に向かって徐々に径が増加する。テーパー率は図2に示したローラー長さLとローラー根元径H1とローラーの表面最大径H2から下記式にて算出されるものである。
テーパー率(%)=[(H2−H1)/L]×100
このテーパー率は2〜5%が好ましく、より好ましくは3〜4%である。テーパー率が2%以上であると、GR1上での糸揺れを抑えることが可能となり、紡糸工程における糸同士の融着を防ぐことができるだけでなく、GR2でなされる熱セット中の糸揺れを抑えることによって、糸揺れによる繊度斑や繊維断面の形状異常を防ぐことができる。
また、テーパー率が5%以下であると、GR1上での張力が高くなりすぎず、糸切れの発生を防ぐことによって紡糸操業性が安定したものとなる。
本発明のポリエステル熱融着分繊親糸を製造する場合、上記GR1の温度は、80〜120℃が好ましく、より好ましくは90〜110℃である。
また、上記GR1―GR2間での延伸倍率は3〜6倍が好ましく、より好ましくは4〜5倍である。そして、GR2の温度は、100〜150℃が好適であり、より好ましくは110〜140℃である。
さらに、上記直接延伸紡糸法では、巻取り時において、リボン回避のタイミングで綾角を変更させることが重要である。通常の直接延伸紡糸法においては、巻取り時の綾角は一定であるため、ある周期でボビン上の糸道が重なることによりリボンが発生する。それを回避するために、ある周期に合わせて一時的にトラバースの速度を変化させる、即ち一時的に綾角を変更する設定がなされているが、本発明の熱融着分繊親糸の直接延伸紡糸法においては、リボン回避の綾角変更のタイミングで綾落ちが発生してしまう。
そこで、リボンを回避しつつ綾落ちも回避することを目的として、リボン回避のタイミングで綾角を変化させ、且つ、その変化が一時的なものではなく、次のリボン回避のタイミングまで一定のものとなるよう設定する。
このようにして得られる熱融着分繊親糸は、直接延伸紡糸法において糸切れがなく紡糸操業性に優れ、且つ、綾落ちがなく分繊工程においても通常の分繊親糸と変わりない分繊操業性を示す。
さらには延撚工程を省略できる直接延伸紡糸法によって大幅なコストダウンを可能にし、しかも、優れた糸質の熱融着モノフィラメントを得ることができる。
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。
なお、物性の測定、評価等は以下の方法で行った。
[紡糸操業性]
1週間紡出時の完全ボビン率が85%以上の場合を◎、70%以上85%未満を○、50%以上70%未満の場合を△、50%未満の場合を×として評価した。
[分繊操業性]
分繊親糸を張力0.5〜2.0cN/dtex、巻取り速度巻取り速度350〜800m/minで適宜設定した条件で分繊し、モノフィラメント1kgを巻き取る時の糸切れ回数が0回の場合を◎、1〜3回の場合を○、3回以上の場合を×として評価した。
[熱融着モノフィラメントの断面セクション]
断面写真を光学顕微鏡にて断面セクションを確認し、断面セクションが正常なものは○、不良のものは×とした。
[融点]
パーキンエルマー社製DSC−7型を用い、チップ10mg、昇温速度10℃/分の条件にて測定した。
[強度、伸度]
JIS−L−1013に準じ、島津製作所(株)製、AGS−1KNGオートグラフ引っ張り試験機を用い、試料糸長20cm/minの条件で試料が伸長破断したときの強度及び伸度を求めた。
[10%S−S]
島津製作所(株)製、AGS−1KNGオートグラフ引っ張り試験機を用い、初期長200mm、歪速度100%/分、初荷重1/30cN/dtexとして破断するまで引張り試験を実施し、伸度10%の強度を10%SSとして求めた。
[イナート]
ツェルベガーウスター(株)製 USTER−TESTER4を用い、測定速度50m/分、撚数5000rpmにてイナート(U%)の測定を行った。
[熱水収縮率(以下、「熱収」)という]
荷重を2mg/dtex掛けた試料長500mmの糸を沸騰水中に15分間浸漬し、次いで風乾した後に次式により収縮率を求めた。
熱水収縮率(%)=(初期試料長−収縮後の試料長)/初期試料長×100
〔実施例1〕
固有粘度〔η〕が0.629のPETチップ及びイソフタル酸を25mol%共重合させた低融点PETチップを、カールフィッシャー水分測定法により、チップ水分が20ppmとなるまで加熱乾燥させ、得られたPETチップを芯成分(融点:255℃)とし、低融点PETチップを鞘成分(融点:185℃)として、芯鞘容積比50/50で芯鞘型複合溶融紡糸口金から吐出後、冷却して油剤を付与して、表面温度100℃、周速度800m/分のGR1に導き、巻き付けた。GR1にはテーパー率3.5%のテーパーローラーを使用した。次に、表面温度135℃で、周速度3300m/分のGR2と上記GR1との間で延伸倍率4.13倍で延伸し、GR2にて熱セットを施した。GR2はストレートローラーを使用した。その後、巻取り機にて周速度3250m/分にて巻取り、芯鞘複合マルチフィラメントを得た。巻取りの際、綾角はリボン回避のタイミングに合わせて4.4°〜4.8°の間で変更されるパターンを設定した。
得られたマルチフィラメントは、芯鞘横断面積比率が50/50、フィラメント数12本、単糸繊度28dtex、芯成分の融点は、255℃、鞘成分の融点は185℃であった。
このマルチフィラメントを、熱融着分繊親糸として、分繊し、熱融着モノフィラメントを得た。マルチフィラメントの芯鞘横断面積比率、紡糸操業性、モノフィラメントの糸物性(強度、伸度、10%S−S、イナート、熱収)、断面セクション及び分繊操業性の結果を表1に示す。
なお、分繊後の熱融着モノフィラメントの芯鞘横断面比率は、以下、特に記載がない限り、親糸として表中に記載しているマルチフィラメントの芯鞘横断面比率と同じである。
〔実施例2〜4、比較例1及び2〕
紡糸時の芯鞘容積比率を変更し、GR1−GR2の延伸倍率等を適宜設定する以外は、上記実施例1と同様に芯鞘型複合マルチフィラメントを得た後、分繊し、熱融着モノフィラメントを得た。結果を表1に示す。なお、芯成分及び鞘成分の融点は、実施例1と同様であった。
芯鞘比(50:50)の実施例1、(67:33)の実施例2は、紡糸操業性、分繊操業性、断面セクションとも優れたものであり、分繊後に得られたモノフィラメントの強度・伸度等の糸物性も優れたものであった。実施例3、4は実施例1、2に比べると、紡糸操業性、分繊操業性とも劣るものの良好であった。比較例1は、鞘成分が大きすぎ、紡糸操業性に劣り、また得られたマルチフィラメントを分繊すると、糸切れが多発し、分繊操業性も悪かった。
比較例2は、鞘成分が少ないため芯成分を充分に覆うことができず、断面セクションが不良で、糸質に劣るものであった。
Figure 0004705797
〔実施例5〜9、比較例3〜5〕
マルチフィラメントの構成フィラメント数及び単糸繊度を後記の表2に示すようになるように変更し、GR1の温度及びGR1−GR2の延伸倍率等の条件を適宜設定する以外は上記実施例1と同様にして紡糸を行った。
このマルチフィラメントを、熱融着分繊親糸として、分繊し、熱融着モノフィラメントを得た。結果を表2に示す。
フィラメント数が2本の実施例5は紡糸及び分繊操業性も良好で糸質も充分なものであったが、生産効率が2倍にしかならず、分繊工程を経ることを考慮すると、実施例1と比較してコスト面で優位性に劣る。実施例6は紡糸操業性、分繊操業性、断面セクションとも優れたものであり、分繊後に得られたモノフィラメントの強度・伸度等の糸物性も優れたものであった。実施例7は、紡糸操業性、分繊操業性が実施例1には劣るものの良好であった。単糸繊度を5dtexとした実施例8、単糸繊度を80dtexとした実施例9とも、分繊操業性において実施例1に劣るものの良好であった。比較例3、4及び5のマルチフィラメントは、分繊できず、後工程で分繊可能な熱融着分繊親糸は得られなかった。
Figure 0004705797
〔比較例6〕
GR1にストレートローラーを用い、それ以外は上記実施例1と同様にして紡糸を行ったところ紡糸できず、熱融着分繊親糸を得ることができなかった。
〔比較例7〕
綾角を紡糸開始から終了まで一定の値に設定し、それ以外は上記実施例1と同様にして紡糸を行った。紡糸工程において綾落ちが多発し操業性が悪かった。得られたマルチフィラメントは、分繊ができず、後工程で分繊可能な熱融着分繊親糸は得られなかった。
〔実施例10〕
次に、共重合ポリエステルであって固有粘度〔η〕が0.688である高粘度PETチップを芯成分(融点:257℃)とし、共重合ポリエステルである低融点の熱融着PETチップを鞘成分(融点:185℃)とし、紡糸条件について、GR1の温度を98℃、GR1−GR2の延伸倍率等と適宜設定する以外は実施例1と同様に、芯鞘型複合マルチフィラメントを得た。
このマルチフィラメントを、熱融着分繊糸親糸として、分繊し、熱融着モノフィラメントを得た。結果を表3に示す。
〔実施例11、比較例8〕
紡糸時の芯鞘容積比率変更する以外は上記実施例10と同様にして、芯鞘型複合マルチフィラメントを得た。このマルチフィラメントを、熱融着分繊糸親糸として、分繊し、熱融着モノフィラメントを得た。結果を表3に示す。
なお、高粘度共重合PETを芯成分に用いた実施例10、11は、紡糸操業性、分繊操業性、得られた分繊モノフィラメントのセクションともに優れ、実施例1より強度の高いものが得られた。芯成分が小さい比較例8は、紡糸操業性に劣り、また得られたマルチフィラメントを分繊すると、糸切れが多発し、分繊操業性も悪かった。
Figure 0004705797
〔比較例9〕
GR1にストレートローラーを用い、それ以外は上記実施例10と同様にして紡糸を行ったところ紡糸できず、熱融着分繊親糸を得ることができなかった。
〔比較例10〕
綾角を紡糸開始から終了まで一定の値に設定し、それ以外は上記実施例10と同様にして紡糸を行った。紡糸操業性に劣り、また後工程で分繊可能な熱融着分繊親糸は得られなかった。
〔比較例11〕
次に、実施例1と同じポリマーの組合せで、芯鞘型複合モノフィラメント用口金を用いてコンベンショナル法によって溶融紡糸を行い、その後、延撚工程を経て熱融着モノフィラメント(芯鞘横断面積比率:67/33)を得た。
得られた熱融着モノフィラメントを比較例11とし、実施例1及び2の分繊を行った熱融着モノフィラメントの糸質と共に表4に示す。強伸度及びイナートが実施例1、2のものより劣っていた。また、比較例11のものは、コンベンショナル法によって製造されるモノフィラメントであるため、一本単位での生産しかできず、且つ、延撚工程を経る必要があり、生産効率は実施例1及び2のものと比べると大幅に劣るものであった。
Figure 0004705797
〔比較例12〕
実施例10と同じポリマーの組合せで、芯鞘型複合モノフィラメント用口金を用いてコンベンショナル法によって溶融紡糸を行い、その後、延撚工程を経て熱融着モノフィラメント(芯鞘横断面積比率:67/33)を得た。得られた熱融着モノフィラメントを比較例12とし、実施例10及び11の分繊を行った熱融着モノフィラメントの糸質と共に表5に示す。実施例10及び11に比べ、伸度はほぼ同じであるものの強度、イナートが劣っていた。また、比較例12のものは、コンベンショナル法によって製造されるモノフィラメントであるため、一本単位での生産しかできず、且つ、延撚工程を経る必要があり、生産効率は実施例1及び2のものと比べると大幅に劣るものであった。
Figure 0004705797
本発明の熱融着分繊親糸により、生産効率よく、糸質のよい熱融着性モノフィラメントを得ることができるので、衣料、食品、産業用資材などで用いる熱融着モノフィラメントの分繊親糸として、好適に用いることができる。
本発明の熱融着分繊親糸の説明図である。 本発明の製造に用いるテーパーローラーの説明図である。

Claims (1)

  1. 芯成分にポリエチレンテレフタレート、鞘成分に芯成分の融点より20℃以上低いイソフタル酸を20〜40mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを用いて、芯鞘容積比率40/60〜90/10で芯鞘型複合マルチフィラメント用の紡糸口金から吐出し、冷却した後、テーパー率が2〜5%の第1ゴデッドローラに導き、第1ゴデッドローラーから第2ゴデッドローラーとの間で延伸した後、巻取り時のリボン回避のタイミングに合わせて綾角を変化させて巻き取り、フィラメント数が3〜20本、単糸繊度5〜80dtexである熱融着分繊親糸を製造することを特徴とする熱融着分繊親糸の製造方法(但し、テーパー率とは[(ローラー表面最大径−ローラー根元径)/ローラー長さ]×100〔%〕)。
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