JP2011207597A - 単糸太繊度マルチフィラメントの巻取り方法および巻取りパッケージ - Google Patents
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Abstract
【課題】硬度が高く形状安定性が良好で、リボンの発生がなくバルジや綾落ちも少なく、製織や分繊などの後工程における解舒時に糸切れが少なく高い工程通過性が得られる単糸太繊度マルチフィラメントの巻取り方法を提供する。
【解決手段】スピンドル回転数Nsp[rpm]とトラバース周波数Ntr[cpm]との比Nsp/Ntr(ワインド比)が、常に予め設定された値となるように巻取るとともに、ワインド比多段切替え巻を用いる方法であって、巻取り張力0.05〜0.15[cN/dtex]、綾角4.5〜8.0[度]とし、パッケージ巻幅W[mm]/リボン数Nが常に3〜5の範囲内となるワインド比を用いて巻取りを行う。(Nsp/Ntr)=(N+ε)/J数式中J:1〜20の整数、N:正の整数、ε:絶対値が1未満の小数であり、N/Jは互いに素な整数の組合せによる既約の仮分数または真分数であり、ε/Jの絶対値が最小となる値である。
【選択図】図4
【解決手段】スピンドル回転数Nsp[rpm]とトラバース周波数Ntr[cpm]との比Nsp/Ntr(ワインド比)が、常に予め設定された値となるように巻取るとともに、ワインド比多段切替え巻を用いる方法であって、巻取り張力0.05〜0.15[cN/dtex]、綾角4.5〜8.0[度]とし、パッケージ巻幅W[mm]/リボン数Nが常に3〜5の範囲内となるワインド比を用いて巻取りを行う。(Nsp/Ntr)=(N+ε)/J数式中J:1〜20の整数、N:正の整数、ε:絶対値が1未満の小数であり、N/Jは互いに素な整数の組合せによる既約の仮分数または真分数であり、ε/Jの絶対値が最小となる値である。
【選択図】図4
Description
本発明は、単糸太繊度マルチフィラメントの巻取り方法および巻取りパッケージに関するものである。より詳しくは、硬度が高く形状安定性が良好で、ドラム端面の膨らみ(バルジ)や綾落ちが少なく、製織や分繊などの後工程における解舒時に、糸切れが少なく高い工程通過性を得ることができる、熱可塑性合成繊維糸条の巻取り方法および巻取りパッケージに関するものである。
糸条をボビンに巻取りドラム巻パッケージを形成することは、熱可塑性合成繊維の製造工程で広く用いられてきたが、近年、生産性向上を目的として巻取り速度は2500[m/分]を超えることが一般的となっている。しかし、巻取り速度の高速化に伴い、パッケージ形状の悪化や、巻取りパッケージの端部にてマルチフィラメントの一部もしくは全てがボビン側に飛び出して巻取られる綾落ちや、スピンドル回転数[rpm]とトラバース周波数[cpm]とが整数比となった場合に巻かれる糸が同じ場所を通って重なって発生するリボンなどに起因する後工程での解舒不良などの問題が発生している。とりわけ直接紡糸延伸法で無撚で巻上げられたマルチフィラメントを後工程でモノフィラメントへと分繊する分繊用途においては、綾落ちやリボンの発生により分繊中の糸切れが顕著に増加する。特に単糸が太く、フィラメントのコシが強い場合、糸条の挙動が不安定となり、特に綾落ちが発生しやすいため、巻取り品位向上に関する様々な試みが行われてきた。
ドラム巻パッケージの巻取りにおいては、巻取り張力および綾角が巻取り品位に大きく影響することが一般に広く知られている。例えば、特許文献1に示す方法のように、綾角を4.0〜8.0[度]、巻取り張力を0.10〜0.25[g/dtex]の範囲で巻取りを行うことにより、分繊用途のような単糸太繊度糸でもドラム端面のバルジや綾落ちが小さい、解舒性良好なドラム巻パッケージを得ることができる。しかし、例えば産業用途などのように、巻幅200mm以上のラージパッケージとして巻取りを行う場合には、パッケージ中央部に糸を巻取る時の張力に対しパッケージ端部に糸を巻取る時の張力が高くなるなどの理由により、十分にバルジや綾落ちを抑制することはできなかった。
パッケージの巻始めから巻終りまで綾角を一定の範囲内で巻取る際によく用いられる方式としては、綾角一定巻、綾角変化巻およびワインド比多段切替え巻がある。綾角一定巻および綾角変化巻は、パッケージの巻径に関わらずあらかじめ設定した綾角となるように巻取る方式である。この方式は、パッケージを巻取るにしたがい徐々に低下する巻取りスピンドルの回転数とは無関係にトラバース速度が決定されるため、スピンドル回転数[rpm]とトラバース周波数[cpm]が整数比となった場合に解舒不良を引き起こすリボンの発生を回避する必要がある。そのため、特許文献2に示すような、トラバースの速度を数秒程度の周期で変動させるディスターブと、危険ワインド比近傍で綾角を大きく変化させるトラバースジャンプを組み合わせ、かつ、綾角を低下させるステップでは徐々に綾角を変化させることにより巻幅の急激な増加を防ぎ、綾落ちを回避する方法が提案されている。しかし、この方式はトラバースの速度を常に揺動させているため、トラバース端部においてパッケージ上に巻付けられる糸条の軌跡が安定せず、特に単糸太繊度マルチフィラメントを2500[m/分]以上の高速で巻取る場合においては綾落ちを十分に回避することはできなかった。
一方、ワインド比多段切替え巻については特許文献3や特許文献4などに示されている。ワインド比多段切替え巻はリボンを確実に回避することが可能なうえ、ワインド比の切替え時以外は安定したトラバース速度を維持して巻取りを行うため、トラバース端部におけるパッケージ上の糸条の軌跡も安定し、綾落ちの抑制に非常に効果的な巻取り方式である。また、ワインド比の切替え時においても、通常綾角が高くなる方向にトラバース速度を急変させるため巻幅は一時的に減少し、綾落ちを増加させるものではない。以上の理由からワインド比多段切替え巻は後工程で糸切れなどの解舒不良を回避する目的において、非常に有効な巻取り方式といえる。
一般的にワインド比切替え巻によって連続的に巻取られる糸条は、パッケージ表面上で周期的に近似した軌跡をたどりながら巻き取られるため、綾目とよばれる菱形の模様をパッケージ表面に形成する。この菱形模様の頂点では糸条の軌跡が交差しているため、交点において後から巻取られる糸条は先に巻取られた糸条を乗り越えて巻取られることとなり、少なくとも単糸直径分は糸条が浮き上がり交点直近部に微小な空間が発生する。このため細かい綾目を形成して巻取りを行った場合、交点が多くなるためパッケージの巻密度が低下する。その結果パッケージが軟らかくなり、運搬時に型崩れを発生させるなどハンドリング性が悪化する。一方粗い綾目を形成して巻取りを行った場合は、交点が少なくなるためパッケージの巻密度が高く硬いパッケージを得ることができるが、パッケージ表面の凹凸が大きくなる。また、綾目を形成するパッケージ表面上の糸条の軌跡、すなわちパッケージ表面上において巻取られる糸条がたどり得る軌跡の数が少なくなるため、先に巻取られた糸条と後から巻取られる糸条の重なりが発生しやすくなり、制御の乱れなどによって解舒不良の原因となるリボンを発生させやすい。
この綾目の細かさ、すなわち綾目の形状は巻取りワインド比の値によって決定されるため、ワインド比多段切替え巻における各ワインド比の決定の際には考慮される必要があるが、特許文献3および特許文献4いずれの方法においてもかかる点は何ら認識されておらず、場合によっては適正な綾目の細かさとはならず解舒不良を発生させる恐れがあった。
本発明は、上述した従来の巻取り方法および巻取りパッケージにおける問題点を解決し、硬度が高く形状安定性が良好でリボンの発生を確実に回避するとともにバルジや綾落ちが少なく、製織や分繊などの後工程における解舒時に糸切れが少なく高い工程通過性を得ることができる、単糸太繊度マルチフィラメントの巻取り方法および巻取りパッケージを得ることを課題とするものである。
上述の課題を解決するために、本発明の単糸太繊度マルチフィラメントの巻取り方法は、以下のとおりとする。すなわち、0.5[%]伸張時の強度[cN/dtex]が0.2以上の熱可塑性合成繊維であって、単糸繊度が15〜60[dtex]でかつ総繊度が150〜3300[dtex]の単糸太繊度マルチフィラメントで構成された、ドラム巻パッケージを形成する方法において、スピンドル回転数Nsp[rpm]とトラバース周波数Ntr[cpm]との比Nsp/Ntrで表されるワインド比が、常にあらかじめ設定された値となるように巻取りを行うとともに、パッケージの巻始めから巻終わりにかけて少なくとも1回以上ワインド比を切替えるワインド比多段切替え巻を用いる方法であって、巻取り張力T[cN/dTex]を0.05以上0.15以下、綾角θ[度]を4.5以上8.0以下の範囲内で巻取るとともに、パッケージ巻幅W[mm]を以下の数式で表されるリボン数Nで割った、W/Nが常に3以上5以下の範囲内となるワインド比を用いることを特徴とする巻取り方法である。
(Nsp/Ntr)=(N+ε)/J
数式中
J:リード数であり、1〜20の整数を示す。
N:リボン数であり、正の整数を示す。
ε:絶対値が1未満の小数
であり、N/Jは互いに素な整数の組み合わせによる既約の仮分数または真分数であり、ε/Jの絶対値が最小となる値である。
(Nsp/Ntr)=(N+ε)/J
数式中
J:リード数であり、1〜20の整数を示す。
N:リボン数であり、正の整数を示す。
ε:絶対値が1未満の小数
であり、N/Jは互いに素な整数の組み合わせによる既約の仮分数または真分数であり、ε/Jの絶対値が最小となる値である。
本発明によれば、単糸太繊度マルチフィラメントをドラム巻パッケージとして巻取りした場合にも、リボンを確実に回避し、バルジや綾落ちの発生を最小限に抑制することが可能になるとともに、常に最適な細かさの綾目を形成することが可能となるため、パッケージ硬度が高く形状安定性が良好なパッケージを得ることができ、製織や分繊などの後工程における解舒時に、糸切れが少なく高い工程通過性を得ることができる。
本発明について図面に基づき詳細に説明する。
本発明が対象とする単糸太繊度マルチフィラメント糸は、0.5[%]伸張時の強度[cN/dtex]が0.2以上の熱可塑性合成繊維であって、単糸繊度が15〜60[dtex]でかつ総繊度が150〜3300[dtex]の単糸太繊度マルチフィラメントである。かかる単糸太繊度マルチフィラメントは、糸条の剛性、いわゆる糸条のコシが強いフィラメントである。このような特性と繊度を有するフィラメントは、通常ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステルや、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などの比較的コシの強いマルチフィラメントを与える熱可塑性ポリマから構成されるマルチフィラメント糸である。その製造方法は特に規定されるものではないが、図1に示すように紡糸口金1から紡出された糸条を、加熱ヒーター2によって徐冷却したのち冷却気体吹出し部3によって冷却固化し、紡糸ダクト4を経てオイリングローラー5で油剤を付与した後、延伸ローラ群6にて2段もしくは3段延伸を行い弛緩処理したものを、巻取り機7にて巻取る製造方法が多く採用されている。
本発明で用いる単糸太繊度マルチフィラメントの単糸繊度は、上記のとおり15〜60[dtex]であるが、より糸条のコシが強く解舒性良好なパッケージの巻取りが困難な25〜60[dtex]であることが本発明の効果が顕著に発揮し得る点で好ましい。また、0.5[%]伸張時の強度[cN/dtex]も糸条のコシを決定づける要素であり、本発明の効果が顕著に発揮し得るには0.2以上であり、上限としては2.0以下が好ましい。この範囲であれば適度なコシを有するため折り返し時の糸外れもしにくいためである。
また、本発明に関するドラム巻パッケージとは、内層から外層まで略一定の巻幅Wで該マルチフィラメントを巻取りボビンに巻いたものである。ドラム巻パッケージのサイズは特に規定されるものではないが、パッケージ毎の巻量をできるだけ多く確保するラージパッケージ化の観点から、巻幅が200[mm]以上のものが好ましく、解舒性、ハンドリング性の観点から、巻幅が350[mm]以下のものが好ましい。
ドラム巻パッケージにおいて綾角とは図2のθで示すとおり、パッケージ表面に巻取られた糸条とパッケージの回転方向とによって規定される角度をいい、ボビン表面の回転速度とトラバース速度とによって決定される。ボビンに巻つけられながらトラバースされる糸条は、巻幅の端部においてトラバース方向を逆転させ、急激に折り返す必要があるが、綾角θが高い場合には糸条の持つ慣性力が増大し折り返し時の糸条の挙動が不安定となり、パッケージ端部からマルチフィラメントの一部もしくは全てが巻取りボビン側にはみ出しボビン表面側に向かって落ち込む現象、すなわち後工程で解舒不良の原因となる綾落ちが発生する。
また、単糸太繊度マルチフィラメントであって、かつ糸条の剛性、いわゆる糸条のコシが強い場合には、糸条の挙動がさらに不安定となるため綾落ちが発生しやすくなる。特に0.5[%]伸張時の強度[cN/dtex]が0.2以上であり、かつ単糸繊度が15[dtex]以上の単糸太繊度マルチフィラメントの場合、一般にコシが強いため、綾落ちなく巻取るためには綾角を8[度]以下とする。特に単糸繊度が25[dtex]以上となるような単糸太繊度マルチフィラメントの場合においては、単糸毎のコシがさらに強くなるため、綾角を6[度]以下とするのがより好ましい。一方、綾角θが低い場合は、綾落ちの発生は抑制されるものの、バルジとよばれるパッケージ端面の膨らみが増大し、パッケージ端面が巻取りボビン幅からはみ出したりするほか、パッケージ硬度が極端に低くなりパッケージの角が容易に崩れたりするため、ドラム巻パッケージのハンドリング性や後工程での解舒性が悪化する。このため、綾角は4.5[度]以上とする。
なお、単糸繊度が60[dtex]を超えるような単糸太繊度マルチフィラメントでは単糸のコシが非常に強くなり、パッケージ端部における糸条の折り返し、すなわち単糸の折り曲げが困難となり、綾落ちやトラバースガイドからの糸外れが多発することとなるため、鍔のないボビンを用いて巻幅一定のドラム巻パッケージとして巻取りを行なっても、実質的に解舒性の良好なパッケージを得ることは非常に困難である。また、0.5[%]伸張時の強度[cN/dtex]が0.2未満、もしくは単糸繊度が15[dtex]未満のマルチフィラメントでは単糸のコシが弱いため、本発明の巻取り方法によって得られる効果は小さい。
一方、糸条の巻取り張力Tもドラム巻パッケージの後工程での解舒性を決定付ける重要な要素となる。巻取り張力Tが高い場合には、一般的に綾振り支点はトラバース範囲の中央部の上流側に配置されていることから、トラバース端部に巻き付けられた糸条をトラバース幅の中央側へ戻そうとする分力が増大し、パッケージ上に実際に巻取られる糸条の巻幅がトラバースのメカストロークに対して狭くなるため、パッケージ端部にて糸条がはみ出しやすく綾落ちが増加する。また同様の理由によりバルジも増大する。巻取り張力Tが低い場合には、綾落ちおよびバルジは改善するものの、トラバースガイドから糸が外れることにより、糸条がドラム巻パッケージの中央部によって巻取られる糸スベリが発生し、解舒性が極めて悪いものとなる。本発明の単糸太繊度マルチフィラメント糸条を綾落ちや糸スベリがなくバルジの少ない、解舒性良好なパッケージとして巻取るには、巻取り張力T[cN/dTex]を0.05以上、0.15以下の範囲にて巻取ることが必要である。
ドラム巻パッケージの巻始めから巻終わりまで、上述したような一定の綾角範囲内で巻取る場合、綾角一定巻、綾角変化巻およびワインド比多段切替え巻のいずれかの方法が一般的に用いられる。このうち綾角一定巻および綾角変化巻ではスピンドル回転数[rpm]とトラバース周波数[cpm]とが整数比となった場合に解舒不良の原因となるリボンが発生するため、トラバース速度を揺動させるなどによってリボン回避を行なう必要があるが、その際パッケージ端部に巻付けられる糸条の挙動が不安定となるため綾落ちが発生しやすい。このため、本発明で単糸太繊度マルチフィラメント糸条をドラム巻パッケージとして巻取るに際し、ワインド比多段切替え巻を採用する。切替え段数についてはボビン径、所定量の糸条の巻取りを完了した時点のパッケージ径である満管巻径、および巻取り綾角範囲によって決定され、ボビン径と満管巻径との差が大きく、綾角範囲が狭いほど切替え段数は多くなる。
ワインド比多段切替え巻は、パッケージ径の増大にしたがってワインド比を段階的に切替える方式であり、一例としてボビン径110[mm]、巻幅200[mm]、綾角範囲をおよそ5.3[度]〜6.3[度]とし、パッケージ径300[mm]まで巻取りを行なう場合の、パッケージ径とワインド比および綾角との関係を図3に示す。
ここで各段のワインド比設定は、巻取りを行う綾角範囲及びその時点の巻径に応じて選定することが可能であり、例えば図3の例では、初期ワインド比はおよそ10.4〜10.5となるように選定することとなる。この条件を満たすワインド比については例えば10.40、10.44、10.50などがあり、これを分母と分子が互いに素な整数の組み合わせで表すとそれぞれ52/5、94/9、21/2となる。これらのワインド比設定で巻径120[mm]まで巻取りを行った場合に形成される綾目を図4に示す。なお、52/5、94/9、21/2といったように分母が20以下の整数で、分子も整数で表されるようなワインド比条件で巻取りを行なうとリボンが発生するため、実際の巻取りでは例えば52.005/5のように分子に小数部分を加えた条件とするが、図4に示した例では説明を簡単にするため小数部分のないワインド比としている。図4に示したとおり、52/5のワインド比で巻取りを行った場合の綾目に対し、94/9では綾目が細かく、21/2では綾目が粗くなっている。このようにワインド比によって綾目の細かさが大きく異なる理由について以下に詳しく説明する。
ワインド比とはスピンドル回転数Nsp[rpm]とトラバース周波数Ntr[cpm]の比Nsp/Ntrにより決定されるが、また、(N+ε)/Jで表すこともできる。
すなわち、Nsp/Ntr=(N+ε)/Jとなる。
ただしJを1〜20の整数、Nを正の整数、εを絶対値が1未満の小数とする。N/Jは互いに素な整数の組み合わせによる仮分数または真分数であるが、上記条件を満たす組み合わせは複数存在する。本発明ではそのような組み合わせのうち、ε/Jの絶対値が最小となる値である。
この式はパッケージ上に形成される綾目の形状を表しており、Jはリード数とよばれ、パッケージ最表面の巻取り糸条1層分における端部円周上での糸条の折り返し点の数となる。またNはリボン数とよばれ、パッケージ最表面の巻取り糸条1層分において、パッケージ端部のある1点を起点として巻取りを開始した糸条が、ワインド比で決定される軌跡でパッケージ表面上に巻取られ、再び起点と同じ位置に戻り巻取られるまでの周回数となる。すなわち、Nはパッケージ表面上のある一端から反対側の端部まで引いたボビン軸と並行な直線に対して、綾目を形成する糸条の軌跡が交差する回数を示すこととなる。したがって、同一の巻幅およびパッケージ巻径においてほぼ同じ綾角で糸条を巻取る場合であっても、Nが大きいと細かい綾目を、Nが小さいと粗い綾目が形成されることとなる。なお、εはズレ量とよばれN周巻取り後から再び全く同じ軌跡で糸条が巻取られることにより発生するリボンを回避するための糸ずらし量を表すものであり、値は特に限定されるものではないが、リボンを確実に回避する観点から0.001以上であることが好ましく、明瞭な綾目を形成するためには0.03以下であることが好ましい。この考えに基づき、様々なワインド比設定にて巻取りテストを繰り返して行うことにより、最適な綾目の細かさを見出した。すなわち解舒性の良いドラム巻パッケージを得るための、パッケージの巻幅W[mm]をリボン数Nで割った値W/Nの範囲は3以上5以下である。
以下に、実施例および比較例を示して、本発明を更に具体的に説明する。なお、明細書本文および実施例に示した特性の定義および測定法は以下の通りである。
[総繊度]:JIS L1013(1999)8.3.1 A法に従って、所定荷重0.045[cN/dtex]で正量繊度を測定して総繊度とした。
[単糸繊度]:総繊度を単糸数で除することで算出した。
[強度]:JIS L1013 8.5.1標準試験に示される定速伸張条件で測定した。試料をオリエンテック社製“テンシロン”(TENSILON)UCT−100を用い、掴み間隔は25[cm]、引張り速度は30[cm/分]、試験回数10[回]で行い、0.5[%]伸張時の強度を求めた。
[巻取り張力]:検出器としてエイコー測器社製“TensionPickup”(BTB1−R03)を用い、エイコー測器社製“TensionMeter”(HS−3060)を用いてモニタリングした。フィルター設定をONとして、振り支点ガイド上流側直近部で巻取り1分毎に張力を測定し、平均値を算出した。
[ポリ乳酸の重量平均分子量]
試料のクロロホルム溶液にテトラヒドロフランを混合し測定溶液とした。これをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ウォーターズ社製GPC−150C)で測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。なお、測定は3回行い、その平均値を用いた。
試料のクロロホルム溶液にテトラヒドロフランを混合し測定溶液とした。これをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ウォーターズ社製GPC−150C)で測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。なお、測定は3回行い、その平均値を用いた。
[固有粘度]
オルソクロロフェノール100[mL]に対し試料8gを溶解した溶液の相対粘度ηをオストワルド式粘度計を用いて25[℃]で測定し、IV=0.0242η+0.2634の近似式によって求めた。
オルソクロロフェノール100[mL]に対し試料8gを溶解した溶液の相対粘度ηをオストワルド式粘度計を用いて25[℃]で測定し、IV=0.0242η+0.2634の近似式によって求めた。
[メルトフローレート]
ASTM D−1238−70記載の方法に準じて、測定温度316[℃]、5000[g]荷重として、測定した。単位は[g/10分]である。
ASTM D−1238−70記載の方法に準じて、測定温度316[℃]、5000[g]荷重として、測定した。単位は[g/10分]である。
[バルジ]:バルジは図5に示す方法で両側端面を測定し、バルジの大きい端面側におけるバルジの大きさで判定した。バルジの大きさが10[mm]未満のものを◎、10[mm]以上20[mm]未満のものを○、20[mm]以上のものを×とした。
[パッケージ硬度]:パッケージ硬度は、満管パッケージの表面側の両端部に1[cm]四方の接触面積で荷重を掛け、変形の有無にて判定した。3[kg]荷重で変形のないものを◎、1[kg]荷重で変形しないが3[kg]未満の荷重で変形するものを○、1[kg]荷重で変形するものを×とした。
[綾落ち]:綾落ちはドラム巻パッケージの両側端面を目視確認し、綾落ちの多い端面側の状態により判定した。端面に糸条露出部の長さ1[cm]以上の綾落ちがないものを◎、糸条露出部の長さ1[cm]以上5[cm]未満の小さな綾落ちが3個以下で、かつ5[cm]以上の大きな綾落ちがないものを○、糸条露出部の長さ1[cm]以上5[cm]未満の小さな綾落ちが4個以上または、5[cm]以上の大きな綾落ちが1個以上あるものについては×とした。
[実施例1〜3]
光学純度99.5[%]のL−乳酸から製造したラクチドを、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ触媒(ラクチド対触媒モル比=10,000:1)、GE社製Ultranox626(ラクチド対Ultranox626重量比=99.8:0.2)を存在させてチッソ雰囲気下180[℃]で350分間重合を行うことにより得られた、重量平均分子量200,000のポリ乳酸ポリマを105[℃]で真空乾燥して、水分率60[ppm]のポリ乳酸チップを得た。このポリ乳酸チップを、エクストルーダー型紡糸機を用いて溶融温度220[℃]で口金より紡出し、口金直下には長さ300[mm]の加熱筒および150[mm]の断熱筒を設け糸条を徐冷却した後、環状吹き出し冷却チムニーを使用して30[℃]で30[m/分]の冷風により冷却固化せしめ、次に非水系油剤を給油ローラにて付与し、引き取り速度670[m/分]の速度で紡糸引き取りローラに捲回して紡出糸条を引き取り、引き続き延伸・熱処理ゾーンに供給することで、直接紡糸延伸法によるポリ乳酸マルチフィラメントを製造した。
光学純度99.5[%]のL−乳酸から製造したラクチドを、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ触媒(ラクチド対触媒モル比=10,000:1)、GE社製Ultranox626(ラクチド対Ultranox626重量比=99.8:0.2)を存在させてチッソ雰囲気下180[℃]で350分間重合を行うことにより得られた、重量平均分子量200,000のポリ乳酸ポリマを105[℃]で真空乾燥して、水分率60[ppm]のポリ乳酸チップを得た。このポリ乳酸チップを、エクストルーダー型紡糸機を用いて溶融温度220[℃]で口金より紡出し、口金直下には長さ300[mm]の加熱筒および150[mm]の断熱筒を設け糸条を徐冷却した後、環状吹き出し冷却チムニーを使用して30[℃]で30[m/分]の冷風により冷却固化せしめ、次に非水系油剤を給油ローラにて付与し、引き取り速度670[m/分]の速度で紡糸引き取りローラに捲回して紡出糸条を引き取り、引き続き延伸・熱処理ゾーンに供給することで、直接紡糸延伸法によるポリ乳酸マルチフィラメントを製造した。
まず、引き取りローラとフィードローラの間で1.5[%]のストレッチをかけ、次いでフィードローラと第1延伸ローラの間で第1段目の延伸、第1延伸ローラと第2延伸ローラの間で第2段目の延伸を行った。引き続き、第2延伸ローラと弛緩ローラとの間で1.5[%]の弛緩処理を施し、交絡付与装置にて糸条を交絡処理した後、巻取り機にて巻取った。各ローラの表面温度は、引き取りローラが50[℃]、フィードローラが100[℃]、第1延伸ローラが110℃、第2延伸ローラが135[℃]であり、弛緩ローラは非加熱とした。第1延伸ローラと第2延伸ローラの回転速度は、第1段目延伸倍率が3.95倍、総合延伸倍率が4.55倍となるように設定した。
巻取り機では、ドラム巻パッケージとして表1〜表4に示す巻取り条件となるようなワインド比多段切替え巻きにて巻取りを行い、総繊度300[dtex]、単糸繊度30[dtex]、0.5[%]伸張時の強度0.22[cN/dtex]のポリ乳酸マルチフィラメントを巻取った。
巻取り機では、ドラム巻パッケージとして表1〜表4に示す巻取り条件となるようなワインド比多段切替え巻きにて巻取りを行い、総繊度300[dtex]、単糸繊度30[dtex]、0.5[%]伸張時の強度0.22[cN/dtex]のポリ乳酸マルチフィラメントを巻取った。
実施例1、2では綾落ちが少なく、バルジが小さく、パッケージ硬度も高く、解舒性の良好なパッケージを得ることができた。また、実施例3は若干の綾落ちは認められたものの、バルジが小さくパッケージ硬度も高く、解舒性に全く問題のない良好なパッケージを得ることができた。
[実施例4]
酸化チタンを0.1[重量%]含有した固有粘度1.2の東レ製ポリエチレンテレフタレート(PET)ポリマを、エクストルーダー型紡糸機を用いて溶融温度300[℃]で口金より紡出し、口金直下には長さ300[mm]の加熱筒を設け糸条を徐冷却した後、横吹き出し冷却チムニーを使用して20[℃]で30[m/分]の冷風により冷却固化せしめ、次に油剤を給油ローラにて付与し、引き取り速度730[m/分]の速度で紡糸引き取りローラに捲回して紡出糸条を引き取り、引き続き延伸・熱処理ゾーンに供給することで、直接紡糸延伸法によるPETマルチフィラメントを製造した。
酸化チタンを0.1[重量%]含有した固有粘度1.2の東レ製ポリエチレンテレフタレート(PET)ポリマを、エクストルーダー型紡糸機を用いて溶融温度300[℃]で口金より紡出し、口金直下には長さ300[mm]の加熱筒を設け糸条を徐冷却した後、横吹き出し冷却チムニーを使用して20[℃]で30[m/分]の冷風により冷却固化せしめ、次に油剤を給油ローラにて付与し、引き取り速度730[m/分]の速度で紡糸引き取りローラに捲回して紡出糸条を引き取り、引き続き延伸・熱処理ゾーンに供給することで、直接紡糸延伸法によるPETマルチフィラメントを製造した。
まず、引き取りローラとフィードローラの間で6[%]のストレッチをかけ、次いでフィードローラと第1延伸ローラの間で第1段目の延伸、第1延伸ローラと第2延伸ローラの間で第2段目の延伸を行った。引き続き、第2延伸ローラと弛緩ローラとの間で6[%]の弛緩処理を施し、交絡付与装置にて糸条を交絡処理した後、巻取り機にて巻取った。各ローラの表面温度は、引き取りローラが75[℃]、フィードローラが100[℃]、第1延伸ローラが110[℃]、第2延伸ローラが215[℃]となるように設定し、弛緩ローラは非加熱である。第1延伸ローラと第2延伸ローラの回転速度は、第1段目延伸倍率が3.6倍、総合延伸倍率が4.5倍となるように設定した。
巻取り機では、ドラム巻パッケージとして表1および表5に示す巻取り条件となるようなワインド比多段切替え巻きにて巻取りを行い、単糸繊度22.9[dtex]、総繊度1100[dtex]、0.5[%]伸張時の強度が0.56[cN/dtex]のPETマルチフィラメントを巻取った。
実施例4では、若干のバルジの発生はあったものの、綾落ちの発生はなく、パッケージ硬度も問題のない、解舒性良好なパッケージを得ることができた。
実施例4では、若干のバルジの発生はあったものの、綾落ちの発生はなく、パッケージ硬度も問題のない、解舒性良好なパッケージを得ることができた。
[実施例5]
メルトフローレートが160[g/10分]の東レ製E2280ポリフェニレンサルファイド(PPS)ポリマを1.33[kPa]真空下の状態でエクストルーダー型紡糸機を用いて溶融温度315[℃]で口金より紡出し、口金直下には長さ100[mm]の加熱筒を設け糸条を徐冷却した後、横吹き出し冷却チムニーを使用して25[℃]で38[m/分]の冷風により冷却固化せしめ、次に平滑剤等を有する水系エマルジョン油剤(水系20)を給油ローラにて付与し、引き取り速度630[m/分]の速度で紡糸引き取りローラに捲回し、紡出糸条を引き取った。引き続き連続して前記と同様の成分からなる非水系油剤を給油ローラにて両面に付与し、延伸・熱処理ゾーンに供給することで、直接紡糸延伸法によるPPSマルチフィラメントを製造した。
メルトフローレートが160[g/10分]の東レ製E2280ポリフェニレンサルファイド(PPS)ポリマを1.33[kPa]真空下の状態でエクストルーダー型紡糸機を用いて溶融温度315[℃]で口金より紡出し、口金直下には長さ100[mm]の加熱筒を設け糸条を徐冷却した後、横吹き出し冷却チムニーを使用して25[℃]で38[m/分]の冷風により冷却固化せしめ、次に平滑剤等を有する水系エマルジョン油剤(水系20)を給油ローラにて付与し、引き取り速度630[m/分]の速度で紡糸引き取りローラに捲回し、紡出糸条を引き取った。引き続き連続して前記と同様の成分からなる非水系油剤を給油ローラにて両面に付与し、延伸・熱処理ゾーンに供給することで、直接紡糸延伸法によるPPSマルチフィラメントを製造した。
まず、引き取りローラとフィードローラの間で6[%]のストレッチをかけ、次いでフィードローラと第1延伸ローラの間で第1段目の延伸、第1延伸ローラと第2延伸ローラの間で第2段目の延伸を行った。引き続き、第2延伸ローラと弛緩ローラとの間で5[%]の弛緩熱処理を施し、交絡付与装置にて糸条を交絡処理した後、巻取り機にて巻取った。各ローラの表面温度は、引き取りローラが非加熱、フィードローラが80[℃]、第1延伸ローラが110[℃]、第2延伸ローラは235[℃]、弛緩ローラが150[℃]となるように設定した。第1延伸ローラと第2延伸ローラの回転速度は、第1段目延伸倍率が3.70倍、総合延伸倍率が4.30倍となるように設定した。
巻取り機では、ドラム巻パッケージとして表1および表6に示す巻取り条件となるようなワインド比多段切替え巻きにて巻取りを行い、単糸繊度23.2[dtex]、総繊度440[dtex]、0.5[%]伸張時の強度が0.30[cN/dtex]のPPSマルチフィラメントを巻取った。実施例5では、綾落ちがなく、バルジが小さく、パッケージ硬度も高く、解舒性の良好なパッケージを得た。
[比較例1〜5]
巻取り機における巻取り条件を表1、表3および表7〜9に示す条件としたこと以外は、実施例1〜3と同様にしてポリ乳酸マルチフィラメントを巻取った。
比較例1は綾角が本発明の範囲より高いため、綾落ちが多発した。比較例2は綾角が本発明の範囲より低いため、パッケージ硬度が低くドラム巻パッケージの角が軟らかくなった。比較例3は内層部におけるパッケージ巻幅W/リボン数Nが本発明の範囲より小さいため、内層部の綾目が細かくなり巻密度が低下し、パッケージ硬度が低くドラム巻パッケージの角が軟らかくなった。これに伴いバルジもやや大きくなり綾落ちも発生した。比較例4は巻取り張力が本発明の範囲より高いため、綾落ちの発生が多く、バルジも大きいパッケージとなった。比較例5は巻取り張力が本発明の範囲より低いため、内層スベリが発生し糸切れとなり、巻取り不可能であった。
巻取り機における巻取り条件を表1、表3および表7〜9に示す条件としたこと以外は、実施例1〜3と同様にしてポリ乳酸マルチフィラメントを巻取った。
比較例1は綾角が本発明の範囲より高いため、綾落ちが多発した。比較例2は綾角が本発明の範囲より低いため、パッケージ硬度が低くドラム巻パッケージの角が軟らかくなった。比較例3は内層部におけるパッケージ巻幅W/リボン数Nが本発明の範囲より小さいため、内層部の綾目が細かくなり巻密度が低下し、パッケージ硬度が低くドラム巻パッケージの角が軟らかくなった。これに伴いバルジもやや大きくなり綾落ちも発生した。比較例4は巻取り張力が本発明の範囲より高いため、綾落ちの発生が多く、バルジも大きいパッケージとなった。比較例5は巻取り張力が本発明の範囲より低いため、内層スベリが発生し糸切れとなり、巻取り不可能であった。
[比較例6]
硫酸相対粘度が3.35の東レ製ナイロン6ポリマを1.33[kPa]真空下の状態でエクストルーダー型紡糸機を用いて溶融温度280[℃]で下面を水蒸気雰囲気とした口金より紡出し、口金直下には長さ100[mm]の加熱筒を設け糸条を徐冷却した後、横吹き出し冷却チムニーを使用して20[℃]で35[m/分]の冷風により冷却固化せしめ、次に非水系油剤を給油ローラにて付与し、引き取り速度405[m/分]の速度で紡糸引き取りローラに捲回し、紡出糸条を引き取った。引き続き連続して前記と同様の成分からなる非水系油剤を給油ローラにて両面に付与し、延伸・熱処理ゾーンに供給することで、直接紡糸延伸法によるナイロンマルチフィラメントを製造した。
硫酸相対粘度が3.35の東レ製ナイロン6ポリマを1.33[kPa]真空下の状態でエクストルーダー型紡糸機を用いて溶融温度280[℃]で下面を水蒸気雰囲気とした口金より紡出し、口金直下には長さ100[mm]の加熱筒を設け糸条を徐冷却した後、横吹き出し冷却チムニーを使用して20[℃]で35[m/分]の冷風により冷却固化せしめ、次に非水系油剤を給油ローラにて付与し、引き取り速度405[m/分]の速度で紡糸引き取りローラに捲回し、紡出糸条を引き取った。引き続き連続して前記と同様の成分からなる非水系油剤を給油ローラにて両面に付与し、延伸・熱処理ゾーンに供給することで、直接紡糸延伸法によるナイロンマルチフィラメントを製造した。
まず、引き取りローラとフィードローラの間で9[%]のストレッチをかけ、次いでフィードローラと第1延伸ローラの間で第1段目の延伸、第1延伸ローラと第2延伸ローラの間で第2段目の延伸、さらに第2延伸ローラと第3延伸ローラの間で第3段目の延伸を行った。引き続き、第3延伸ローラと弛緩ローラとの間で10[%]の弛緩熱処理を施し、交絡付与装置にて糸条を交絡処理した後、巻取り機にて巻取った。各ローラの表面温度は、引き取りローラが非加熱、フィードローラが55[℃]、第1延伸ローラが95[℃]、第2延伸ローラが150℃、第3延伸ローラが195[℃]、弛緩ローラが140[℃]となるように設定した。第1延伸ローラと第2延伸ローラの回転速度は、第1段目延伸倍率が2.70倍、第2段目延伸倍率が1.25倍、総合延伸倍率が5.05倍となるように設定した。
巻取り機では、ドラム巻パッケージとして表1に示す巻取り条件となるようなワインド比一定巻きにて巻取りを行い、単糸繊度35.0[dtex]、総繊度700[dtex]、0.5[%]伸張時の強度が0.14[cN/dtex]のナイロン6マルチフィラメントを巻取った。比較例6では、0.5[%]伸張時の強度が本発明の範囲より低く、糸のコシが弱いため、ワインド比一定巻を用いることにより本発明の綾角範囲外で巻取ったものの、綾落ちがなく、バルジが小さく、パッケージ硬度も高く、解舒性の良好なパッケージを得た。
[比較例7]
巻取り機における巻取り条件を表1および表10に示す条件としたこと以外は、実施例4と同様にしてPETマルチフィラメントを巻取った。比較例7は内層部におけるパッケージ巻幅W/リボン数Nが本発明の範囲より小さいため、内層部の綾目が細かくなり巻密度が低下し、パッケージ硬度が低くドラム巻パッケージの角が軟らかくなった。これに伴いバルジもやや大きくなり綾落ちも発生した。
巻取り機における巻取り条件を表1および表10に示す条件としたこと以外は、実施例4と同様にしてPETマルチフィラメントを巻取った。比較例7は内層部におけるパッケージ巻幅W/リボン数Nが本発明の範囲より小さいため、内層部の綾目が細かくなり巻密度が低下し、パッケージ硬度が低くドラム巻パッケージの角が軟らかくなった。これに伴いバルジもやや大きくなり綾落ちも発生した。
[比較例8]
単糸繊度が本発明の範囲外の5[dtex]であり、引き取り速度を725[m/分]とし、また第1段目延伸倍率を3.2倍、総合延伸倍率を4.0とし、それに合わせて口金からのポリマー吐出量および各ローラの速度を変更し、さらに巻取り機における巻取り条件を表1および表11に示す条件としたこと以外は、実施例5と同様にしてPPSマルチフィラメントを巻取った。比較例8は単糸繊度が本発明の範囲より低いため、糸のコシが弱く、本発明の綾角範囲外で巻取っても綾落ちの発生がなく、バルジの少ないパッケージを得た。
単糸繊度が本発明の範囲外の5[dtex]であり、引き取り速度を725[m/分]とし、また第1段目延伸倍率を3.2倍、総合延伸倍率を4.0とし、それに合わせて口金からのポリマー吐出量および各ローラの速度を変更し、さらに巻取り機における巻取り条件を表1および表11に示す条件としたこと以外は、実施例5と同様にしてPPSマルチフィラメントを巻取った。比較例8は単糸繊度が本発明の範囲より低いため、糸のコシが弱く、本発明の綾角範囲外で巻取っても綾落ちの発生がなく、バルジの少ないパッケージを得た。
[比較例9]
巻取り機における巻取り条件を表1および表11に示す条件としたこと以外は、実施例5と同様にしてPPSマルチフィラメントを巻取った。比較例9は綾角範囲が本発明の範囲より高いため、綾落ちが多く発生した。
巻取り機における巻取り条件を表1および表11に示す条件としたこと以外は、実施例5と同様にしてPPSマルチフィラメントを巻取った。比較例9は綾角範囲が本発明の範囲より高いため、綾落ちが多く発生した。
表1〜表11から明らかなように、巻取り条件が本発明の範囲内にある実施例のものは、巻取り条件が外れる比較例に比して、綾落ちが少なく、バルジが小さく、パッケージ硬度が高いパッケージであり、解舒性のよいものであった。また、比較例のうち、糸の剛性の低いものについては、巻取り条件が本発明の範囲外にあっても綾落ちが少なく、バルジが小さく、パッケージ硬度が高いパッケージを得られており、本発明の巻取り方法による効果は少ないものであった。表1〜表11の結果から、本発明の巻取り方法によれば、硬度が高く形状安定性が良好で、バルジや綾落ちが少なく、製織や分繊などの後工程における解舒時に、糸切れが少なく高い工程通過性を得ることができる、単糸太繊度マルチフィラメントの巻取りパッケージを得られることがわかる。
1 紡糸口金
2 加熱ヒーター
3 冷却気体吹き出し部
4 紡糸ダクト
5 オイリングローラー
6 延伸ローラ群
7 巻取り機
2 加熱ヒーター
3 冷却気体吹き出し部
4 紡糸ダクト
5 オイリングローラー
6 延伸ローラ群
7 巻取り機
Claims (5)
- 0.5[%]伸張時の強度[cN/dtex]が0.2以上の熱可塑性合成繊維であって、単糸繊度が15〜60[dtex]でかつ総繊度が150〜3300[dtex]の単糸太繊度マルチフィラメントで構成された、ドラム巻パッケージを形成する方法において、スピンドル回転数Nsp[rpm]とトラバース周波数Ntr[cpm]との比Nsp/Ntrで表されるワインド比が、常にあらかじめ設定された値となるように巻取りを行うとともに、パッケージの巻始めから巻終わりにかけて少なくとも1回以上ワインド比を切替えるワインド比多段切替え巻を用いる方法であって、巻取り張力T[cN/dtex]を0.05以上0.15以下、綾角θ[度]を4.5以上8.0以下の範囲内で巻取るとともに、パッケージ巻幅W[mm]を以下の数式で表されるリボン数Nで割った、W/Nが常に3以上5以下の範囲内となるワインド比を用いることを特徴とする巻取り方法。
(Nsp/Ntr)=(N+ε)/J
数式中
J:リード数であり、1〜20の整数を示す。
N:リボン数であり、正の整数を示す。
ε:絶対値が1未満の小数
であり、N/Jは互いに素な整数の組み合わせによる既約の仮分数または真分数であり、ε/Jの絶対値が最小となる値である。 - 単糸繊度が25〜60[dtex]であり、綾角θ[度]が4.5以上6.0以下であることを特徴とする、請求項1に記載のマルチフィラメントの巻取り方法。
- 巻取りパッケージの巻幅が200[mm]以上350[mm]以下であることを特徴とする、請求項1、2に記載のマルチフィラメントの巻取り方法。
- ドラム巻パッケージが、分繊用マルチフィラメントで構成されたことを特徴とする、請求項1〜3に記載のマルチフィラメントの巻取り方法。
- 請求項1〜4に記載の方法により巻取られたことを特徴とする、マルチフィラメントの巻取りパッケージ。
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JP2010077955A JP2011207597A (ja) | 2010-03-30 | 2010-03-30 | 単糸太繊度マルチフィラメントの巻取り方法および巻取りパッケージ |
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-
2010
- 2010-03-30 JP JP2010077955A patent/JP2011207597A/ja active Pending
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