JP4703060B2 - サファイア基板とその製造方法およびこれを用いた電子装置とその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、サファイアからなり微細な貫通孔を有する基板、これを用いた電子装置およびこれらの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器は小型軽量化が進んでおり、それに用いられる回路ブロックもその動向に呼応する形で小型軽量化、表面実装化、複合化が押し進められているが、混成集積回路(以下、HICという)もそのひとつである。
【0003】
HIC用の基板としては、従来、セラミックスや樹脂からなる絶縁材料が用いられ、例えば、特開平9-186426号公報にはアルミナを用いた場合が示されている。
【0004】
また、絶縁材料を基板に用いて電子装置を構成する場合、電子装置の実装を簡素化する、あるいは、電子装置自体を小型化する目的で基板に貫通孔を設け、その貫通孔を通して基板の両面での電気的な接続を行っている。また、入出力信号が高周波になるに従って、ノイズ軽減の目的から基板材料の低誘電損失のものが求められており、近年、その基板材料としてサファイアが候補として挙げられている。
【0005】
また、サファイアの用途は広く、HICのみならずGaN系化合物半導体成長用基板や、サファイアを構造材料とした圧力センサなど、数多く挙げられるが、これらの電子装置においても同様に、微細な貫通孔の形成が要請されている。
【0006】
サファイアに対する貫通孔は、直径0.2mm程度までのものであれば、機械工具による加工や超音波加工によって形成することができた。しかし、近年、電子装置のさらなる小型化を行うに当たり、直径0.1mm未満のものなど、貫通孔も微細化が必要とされているが、サファイアに対してこの大きさの貫通孔を形成するのは困難であった。
【0007】
そのような中、特開平11-45892公報では、サファイア基板に微細な貫通孔を形成する方法として、炭酸ガスレーザによる加工とマスクを用いたウエットエッチングを組み合わせたものが提案されている。上記公報では、炭酸ガスレーザを用いる理由としてその波長がサファイアの加工に適していることを述べているが、他のレーザについては触れられていない。
【0008】
図4および5は、上記公報に挙げられているウエットエッチングを用いた貫通孔の形成方法を示す。
【0009】
まず、研磨加工によってサファイア基板1を他方の主面側から薄くし、所定の厚みとする。図4に示すように、一方の主面上に電子素子4aが形成されたサファイア基板1の他方の主面側から、炭酸ガスレーザ7を照射することで選択的に孔加工を行い、貫通しない孔4bを形成する。
【0010】
次に、図5に示すように、孔4bを有する主面にフォトリソグラフィー技術およびリフト法を用いて、クロム(Cr)膜および白金(Pt)膜を積層してなるエッチングマスク5aを形成する。同様に孔のない主面にもエッチングマスク5bを形成する。それを300℃前後のリン酸/硫酸混合液に長時間さらすことでエッチングし、選択的にサファイア基板1を腐食させて孔5cを形成し、孔を貫通させる。そして、この孔1中に導電性物質を充填することで半導体素子4aとの電気的な接続を他方の主面から行うことができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記孔4b、5cからなる貫通孔の形成方法は、炭酸ガスレーザとウエットエッチングの2つの工程の組み合わせによって孔を貫通させるものであり、手間が掛かり、時間を要した。特にエッチングマスクの形成は、フォトリソグラフィーを用いるため特に煩雑であり、数多くの工程を行うことで製造歩留まりを低下させていた。
【0012】
また、サファイアは化学的に非常に安定なため、上記のようなウエットエッチングを用いる方法ではエッチングレートが非常に小さい。最も速い場合でも10μm/hに及ばず、実質3μm/h以下であるため、ウエットエッチングは製造方法としては実用的でなかった。また、高濃度の強酸を高温でエッチングを行わないと十分に加工できないので、作業的に危険を伴っていた。
【0013】
従って、ウエットエッチングを用いない単一の工程による貫通孔の形成方法が必要とされていた。
【0014】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は、上記のような事情に鑑み、精意研究を繰り返した結果、ウエットエッチングを必要としない、微細な貫通孔の形成を単一の工程にて行うことが可能であることを見出した。
【0015】
本発明は、一方主面の側から他方主面の側に貫通した貫通孔を有するサファイア基板であって、前記貫通孔は、前記一方主面の側から前記他方主面の側に向かって拡径しており、前記一方主面における前記貫通孔の開口が0.1mm未満であるとともに、上記貫通孔が大径となる側の主面における直径Aと上記小径側の貫通孔の直径Bが、1.1<A/B <2.5を満たし、前記一方主面に垂直な断面において、前記貫通孔の内面の断面線と前記一方主面に平行な仮想線とのなす角が、前記一方主面から前記他方主面に近づくにしたがい増加していることを特徴とするサファイア基板を提供する。
【0016】
また、サファイア基板にレーザを選択的に照射する工程のみによって上記貫通孔の形成を行うことを特徴とするサファイア基板の製造方法を、併せて提供する。
【0017】
また、上述のサファイア基板の前記一方の主面上に電子素子を備えたことを特徴とする電子装置を、併せて提供する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1のように、サファイア基板1は、レーザ6を選択的に照射する工程のみによって、貫通孔1aの形成を行うことを特徴する。特に、スラブ型のYAGレーザの照射による加工であれば、スポット径を絞って十分微細な貫通孔1aの形成が可能である。スラブ型レーザは、ロッド型のレーザに比べて冷却効果が高められると言う利点があり、レーザ媒質の屈折率に偏りが少なく、また、光学異方性が軽減される。このことにより、モードや集光特性などのビーム品質を向上させ、微細レーザ光における高出力化が可能となり、スポット径0.1mm未満を実現することができる。これにより、従来はサファイアを透過すると考えられてきた、波長1.06μmのYAGレーザによってもサファイアへの貫通孔加工が可能となる。
【0020】
さらに、レーザ光による貫通孔形成は、ウエットエッチングとは異なってマスクの形成が必要なく、レーザ6を照射する部分にのみ孔が形成されるので微細な貫通孔1aを選択的に形成するのに適している。
【0021】
貫通孔1aは、レーザ6の出口側の主面1bから入射側の主面1cに向かって断面積が大きくなるようなテーパ形状を有し、貫通孔1aが小径となる主面1bにおける直径Bは0.1mm以下である。また、主面1bにおける貫通孔1aの直径Bと貫通孔1aが大径となる側の主面1cにおける直径Aが 1.1 < A/B < 2.5 を満たしている。また、上記貫通孔の直径Bと上記サファイア基板1の厚みCが、 0.02 < B/C < 4 を満たしている。
【0022】
ここで1.1 < A/B < 2.5としたのは、レーザ加工でA/Bを1.1以下に加工することが困難であり、また一種類のレーザスポット径の加工ではA/Bを2.5以上にすることが困難であるからである。また、0.02 < B/C < 4 としたのは、B/Cが0.02以下の場合、基板が厚いためにレーザ照射時間を長くする必要があり、その結果直径Bを0.1mm以下にできず、またB/Cが4以上では基板が薄すぎて現状装置ではレーザパワーが制御限界以下となってしまうためである。
【0023】
以下に、上記のような、直径0.1mm未満の貫通孔1aを有するサファイア基板1の製造方法を説明する。
【0024】
図1のように、厚みC(mm)のサファイア基板1に対し、スポット径が0.1mm以下のYAGレーザ6を一方の主面1cから照射する。指示出力は例えば100W、パルス幅は0.2ms以下、好ましくは0.1ms以下とすれば良い。パルス幅が大きいと貫通孔の直径が大きくなってしまうため適していない。このようなパルスレーザをワンパルスだけ貫通孔1aの形成を行いたい位置に照射すると、入射側の主面1cに開口し、出口側の主面1bまで貫通するようなテーパ形状を有する貫通孔1aが形成される。
【0025】
この時、厚みC(mm)と出射側の主面における孔径B(mm)は、0.02 < B/C < 4を満たすように注意しつつ、レーザ照射条件をサファイア基板1の厚みによって変更する必要がある。指示出力が大き過ぎると微細な貫通孔1aを得ることができないが、小さ過ぎても深さが得られない、あるいは、加工がなされないなどの弊害がある。パルス幅に関しても同様である。また、パルス数はワンパルスである必要はなく、レーザ6の条件に応じてパルス幅を小さくして複数のパルス照射を行っても良く、正味のレーザ照射時間が0.2ms以下であれば良い。
【0026】
ここで、本発明における電子装置用基板として用いるサファイア基板1は、公知の結晶成長方法を用いて製造したもので良く、EFG法やチョクラルスキー法など種々の方法が挙げられる。サファイア基板1の面方位は用途に応じてC面、A面、M面、R面などから選べば良い。
【0027】
次に、本発明の電子装置の製造方法について説明する。
【0028】
図2に示すように、厚みC(mm)のサファイア基板1を用い、その一方の主面1b上に電子素子2を形成する。
【0029】
その後、電子素子2を形成していない方の主面1cから上記と同様の条件でスポット径が0.1mm以下のレーザ6を照射すると、電子素子2を形成した方の主面1bまで貫通するような、テーパ形状を有する貫通孔1aが形成される。
【0030】
次に、図3のように、サファイア基板1の電子素子2を形成していない主面1c上に例えば20nmのCr膜および例えば5μmのAu膜を真空蒸着法などにより順次形成する。次に、貫通孔1aを満たすことができる程十分に厚いAu膜を形成する。これによって、サファイア基板1の、電子素子2を形成していない主面1cおよび貫通孔1aの内壁に接する金属層3aを得る。さらに、この金属層3aと電子素子2を配線3bによって接続する。配線3bの形成方法は、真空蒸着法とフォトリソグラフィーによる金属膜の形成、あるいは、ワイヤーボンディングなど、電気的に接続ができる方法であれば良い。
【0031】
このようにして、サファイア基板1に形成された貫通孔1aを通して電子素子2に対する電気的な接続をサファイア基板1の他方の主面側から行う電子装置3を得ることができる。
【0032】
本発明における電子素子は、前述したHICに限定するものではなく、サファイアを基板として用いることのできる電子装置の基板であれば良い。従って、電子装置は、発光素子、受光素子やトランジスタなどの半導体素子を有する半導体装置であっても構わないし、また、サファイアを構造材料として用いる圧力センサなど各種センサであっても良い。故に、電子装置の機能に関わらず、サファイアを用い、貫通孔1aを通して電気的な接続を行うものであれば良い。
【0033】
また、上記のような素子や電極など、電子装置を構成する部位の全部あるいは一部の形成を、基板に貫通孔1aを形成する以前に行っても良い。その場合には上記電子素子を形成した主面から他方の主面に向かって上記貫通孔1aの断面積が大きくなるようなテーパ形状を持ち、かつ、上記電子素子を形成した主面における上記貫通孔1aの直径が0.1mm未満であれば良い。
【0034】
【実施例】
第1の実施例
図1に示すように、厚みCが0.5mmのサファイア基板1に対し、スポット径が0.05mmのYAGレーザ6を一方の主面1cから照射した。指示出力は100W、パルス幅は0.1msとした。このようなパルスレーザをワンパルスだけ貫通孔1aの形成を行いたい位置に照射したところ、他方の主面1bから入射側の主面1cに向かって断面積が大きくなるようようなテーパ形状を有する貫通孔1aが形成された。この時、入射側の主面1cにおける直径Aは0.12mm、出口側の主面における直径Bは0.08mmであり、式1.1 < A/B = 1.5 < 2.5、0.02 < B/C = 0.16 < 4を満たした。このようにして貫通孔1aを有するサファイア基板1を得た。この基板を用いて電子装置を形成すれば、電気的な接続をサファイア基板1のレーザ入射側の主面側から行うことができる。
【0035】
第2の実施例
図2のように、厚みCが0.5mmのサファイア基板1を用い、その一方の主面1b上にHIC2を形成した。その後、HIC2を形成していない方の主面1cから、第1の実施例と同様の条件でスポット径が0.05mmのYAGレーザ6を照射したところ、HIC2を形成した方の主面1bまで貫通するような、テーパ形状を有する貫通孔1aが形成された。ここで、YAGレーザ6照射の際はレーザ光によってHIC2を破壊しないよう、照射する位置には注意しなければならない。
【0036】
次に、図3のように、サファイア基板1のHIC2を形成していない主面側に20nmのCr膜および5μmのAu膜を真空蒸着法により順次形成した。次に、メッキ法によって孔1aを満たすことができる程十分に厚い100μmのAu膜を形成した。これによって、サファイア基板1の、HIC2を形成していない主面および孔1aの内壁に接する金属層3aを得た。この金属層3aとHIC2を配線層3bによって接続した。このようにして、サファイア基板1に形成された貫通孔1aを通してHIC2に対する電気的な接続をサファイア基板1の他方の主面側から行う電子装置3を得た。
【0037】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、サファイア基板に対しYAGレーザによって直径0.1mm未満の貫通孔を形成することができる。これによって電子装置の小型化、実装工程の簡素化が可能となり、基板が低誘電損失であるためノイズを軽減して高性能となる。
【0038】
また、本発明におけるサファイア基板の製造方法は、ウエットエッチングを必要としない、微細な貫通孔1aの形成を可能とするものであって、ウエットエッチングに起因する製造上の問題を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のサファイア基板を示す断面図である。
【図2】本発明の電子装置の製造方法を示す断面図である。
【図3】本発明の電子装置を示す断面図である。
【図4】 従来のサファイア基板の製造方法を示す断面図である。
【図5】従来のサファイア基板の製造方法を示す断面図である。
【符号の説明】
1 サファイア基板
1a 貫通孔
1b、1c 主面
2 HIC
6 レーザ

Claims (9)

  1. 一方主面の側から他方主面の側に貫通した貫通孔を有するサファイア基板であって、
    前記貫通孔は、前記一方主面の側から前記他方主面の側に向かって拡径しており、
    前記一方主面における前記貫通孔の開口が0.1mm未満であるとともに、上記貫通孔が大径となる側の主面における直径Aと上記小径側の貫通孔の直径Bが、1.1<A/B <
    2.5を満たし、
    前記一方主面に垂直な断面において、前記貫通孔の内面の断面線と前記一方主面に平行な仮想線とのなす角が、前記一方主面から前記他方主面に近づくにしたがい増加していることを特徴とするサファイア基板。
  2. 上記小径側の貫通孔の直径Bと上記サファイア基板の厚みCが、0.02<B/C<4を満たすことを特徴とする請求項1に記載のサファイア基板。
  3. サファイア基板にレーザを選択的に照射する工程のみによって上記貫通孔の形成を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のサファイア基板の製造方法。
  4. 前記レーザを照射する工程では、パルスレーザーをワンパルスだけ照射することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のサファイア基板の製造方法。
  5. 上記レーザがYAGレーザであることを特徴とする請求項3記載のサファイア基板の製造方法。
  6. 上記YAGレーザが、スラブ型発振器による、スポット径が0.1mm以下のものであることを特徴とする請求項5記載のサファイア基板の製造方法。
  7. レーザの照射時間が0.2ms以下であることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載のサファイア基板の製造方法。
  8. 請求項1または2に記載のサファイア基板の前記一方の主面上に電子素子を備えたことを特徴とする電子装置。
  9. 前記貫通孔に、前記電子素子と電気的に接続した金属導体が充填されていることを特徴とする請求項8記載の電子装置。
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