JP4702868B2 - 有機性廃棄物の処理方法、同処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は有機ハロゲン化化合物の生成を抑制した有機性廃棄物、特にごみ、汚泥などの有機性廃棄物の処理方法及び同装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ごみ、汚泥などの有機性化合物を主体とする有機性廃棄物は、ハロゲン化化合物を含有しているので、空気を支燃剤として、通常の方法で焼却するとダイオキシン類など有毒な有機ハロゲン化化合物を発生する。前記有毒な化合物の発生を抑制するために、従来、燃焼条件の複雑な制御や発生抑制物質の添加、除害設備の併設などが試みられている。特に、このダイオキシン類などの有機ハロゲン化化合物は燃焼温度が300〜850℃付近の中程度の温度範囲で生成し易いので、この温度を避けた条件、例えば高温燃焼などの方法がとられている。
【0003】
しかし、これら従来の方法では、不均一な形態の有機性廃棄物を直接燃焼させる以上、必ずしも全体を理想的な条件で燃焼させるのは困難であり、付帯設備が大きくなり、且つ高温燃焼に耐える焼却炉とするなど、処理コストの増大を伴う問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、処理コストの増大を伴わない、有機ハロゲン化化合物の生成を抑制した有機性廃棄物、特にごみ、汚泥などの有機性物質を主体とする有機性廃棄物の処理をして、同時に資源として有効に利用できる炭化物を有効に固定する方法及び同装置の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明は、有機ハロゲン化化合物の生成を抑制した有機性廃棄物の処理方法であって、有機性廃棄物を外部より加熱する外部加熱手段を有する加熱流通系ゾーンに供給し、該外部加熱手段による加熱流通系ゾーンの内部を昇温途上の十分低温の間に窒素若しくは水蒸気でフラッシュして、内部の空気の一部を置換し、酸素濃度を5%以下に抑えた状態で該加熱流通系ゾーン内を温度300〜800℃に維持し、前記有機性廃棄物より発生する熱分解ガスと炭化物を該加熱流通系ゾーン終端側より分離しながら抜きだして行うことにより、有機ハロゲン化化合物を抑制しつつ分解処理するとともに、前記炭化物の加熱流通系ゾーン終端側からの炭化物の抜き出し時に、酸素との接触を防止しながら前記炭化物を250℃以下に急冷することを特徴とする。
【0006】
本発明では従来技術のような燃焼をさせるという概念から離れることから始まる。それには、酸素を制限して、発熱を伴う酸化燃焼ではなく、緩やかな条件で起こる化学結合の切断を主体とする熱分解が支配的な反応とすべきであった。そして、該反応が行われているゾーンは常に原料系を供給し、生成系を取り出すことを可能とする、加熱流通系ゾーンであるべきであり、該主体とする吸熱反応である熱分解に必要な熱を外部から供給する必要があった。
【0007】
5%以下という若干の酸素は、酸化反応に関与するが、このように酸素分圧の低い条件での酸化は燃焼とまでは行かず、発熱反応によって内部から熱を与える面では寄与するものの、局部的な高温状態はとても現出しえないので、前記毒性のある有機ハロゲン化物質の生成には至らない。また、ダイオキシン類などの有機ハロゲン化物質は一旦生成すると難分解性であるので、また、炭化物の収量を上げる意味においても全体の温度を300〜800℃に制限するのが同時に重要な要素である。
【0008】
更に本発明の有機性廃棄物の処理方法は、前記方法で処理するに当たって、前記有機性廃棄物とともに水蒸気若しくは金属の炭酸塩、酸化物、硫酸塩、水酸化物から選ばれる少なくとも一つの化合物を供給することを特徴とする。
【0009】
水蒸気の添加は、系の酸素分圧を低下することによって、激しい酸化反応を抑制し、更に水が系内の炭素と反応して、一酸化炭素や水素を生成して、還元性ガス雰囲気となり、有毒な有機ハロゲン化化合物の生成を抑制し、原料中の炭素分の固定に寄与する。
【0010】
また、金属の炭酸塩、酸化物、ケイ酸塩、硫酸塩、水酸化物は炭素鎖の切断を助長する触媒作用や、反応系内の遊離ハロゲンを無機物(金属塩)として固定する作用があることがわかり、本発明の方法を低温で速やかに進行させるのに有効である。これら化合物の例としては、炭酸ソーダ、酸化鉄、水酸化カルシウム、などがあげられる。
【0011】
更に本発明の有機性廃棄物の処理方法は、前記加熱流通系ゾーンから抜き出す熱分解ガスを850〜1100℃で高温燃焼させることを特徴とする。この熱分解ガスは、未だ、ハロゲン源を持っているため、潜在的に前記有毒な有機ハロゲン化化合物を生成する原因物質を含んでいるので、これら化合物を生成しない、また、たとえ生成していたとしても分解する前記高温域で燃焼させる。これにより、系内に含有しているハロゲンはハロゲン化水素となるので、排気経路でアルカリ性物質などで中和して容易且つ低コストで除去することが可能となる。また得られた高温の排ガスは前記流通ゾーンを外部から加熱する熱源として有効に利用することができる。
【0012】
更に本発明の有機性廃棄物の処理方法は、前記加熱流通系ゾーンから抜き出す炭素を主体とする炭化物を250℃以下に急冷して抜きだすことを特徴とする。前記炭化物は、前記加熱流通系ゾーン終端側に接続された炭化物抜き出し経路に設けた熱交換器によって、酸素との接触を防止しながら冷却される。
これは、前記熱分解で固相の方に移行した残存ハロゲン化物質があった場合、ダイオキシン等有毒ハロゲン化化合物に転化させないための手段である。高温状態で抜き出し空気中の酸素と触れさせないためには、本発明のこの操作が必要となる。
【0013】
そして本発明は、有機ハロゲン化化合物の生成を抑制した有機性廃棄物の処理装置であって、前記有機性廃棄物を加熱流通系ゾーンに供給する供給手段と、攪拌手段及び外部加熱手段を有する加熱流通系ゾーンと、該外部加熱手段による加熱流通系ゾーンの内部を昇温途上の十分低温の間に窒素若しくは水蒸気でフラッシュして、内部の空気の一部を置換し、酸素濃度を5%以下に抑える酸素抑制手段と、該加熱流通系ゾーンの終端側に有機性廃棄物より発生する熱分解ガス及び炭化物の分離抜き出し手段とを有し、前記有機性廃棄物を前記加熱流通系ゾーンに供給し、300〜800℃の設定温度範囲に維持することにより有機性廃棄物より発生する熱分解ガスと炭化物を該加熱流通系ゾーンの終端側より分離しながら抜きだすことを可能にして、有機ハロゲン化化合物を抑制しつつ分解処理を行うとともに、前記炭化物の加熱流通系ゾーンの終端側からの炭化物の抜き出し時に、酸素との接触を防止しながら前記炭化物を250℃以下に急冷する炭化物急冷手段を備えたことを特徴とする。
【0014】
有機性廃棄物の供給手段は、本発明の性格上、該加熱流通系ゾーンと外気との間がシール性よく保たれる構造のもので、供給速度が自在に調節可能なものが好ましい。そして、原料系の形態が雑多であるので、破砕、粉砕などの手段を含むことも好ましい。従って、これら好ましい態様の組み合わせとしては、該加熱流通系ゾーンの入り口とを接続したスクリューフィーダなどがあげられる。
【0015】
そして、前記加熱流通系ゾーンは供給手段と接続された、原料の供給される入口があり、熱分解ガス及び炭化物を抜き出す出口のある、確定した、一定容積の反応ゾーンであり、攪拌手段及び外部加熱手段を付帯する。攪拌手段は反応ゾーンそのものが揺動、回転などして滞留物が攪拌されてもよいし、攪拌機などで滞留物が攪拌されるタイプてもよい。また、外部加熱手段とは熱を外から供給する意味であって、例えば高温ガス源に接続された該加熱流通系ゾーンを取り巻くジャケットであってもよい、また同様に高温ガス源に接続された該加熱流通系ゾーン内部にコイル状に配置された管であってもよい。
【0016】
前記分離抜き出し手段は、例えば、該加熱流通系ゾーン終端側出口付近に設けられた固気分離ポートに接続された、分解ガス排出配管、及び炭化物排出口である。炭化物排出口には排出用のスクリューコンベヤが付帯していてもよい。
【0017】
更に本発明の廃棄物の処理装置は、前記加熱流通系ゾーンより抜き出す熱分解ガスを高温燃焼させることのできる高温燃焼炉を更に備えたことを特徴とする。
この高温燃焼炉は例えば、前記加熱流通系ゾーンより抜き出す熱分解ガスを導入する配管及び空気若しくは酸素富化空気送入配管に接続して、該熱分解ガスを高温で燃焼させるバーナーを備え、燃焼排ガスを排出する出口を有する燃焼炉である。例えば、高温の燃焼排ガスの用途によっては、若しくはバーナ閉塞防止の目的から、燃焼炉入り口の経路に除塵器を設け分解ガスに随伴する固体粒子を排除してから、高温燃焼炉に供給することも可能である。
【0018】
更に本発明の有機性廃棄物の処理装置は、前記加熱流通系ゾーンより抜き出す炭化物を急冷して抜きだすことのできる炭化物急冷手段を更に備えたことを特徴とする。
該急冷手段は、炭化物抜き出し経路に設けた例えば熱交換器で、抜き出し途上の炭化物が熱交換器の伝熱面に接触して冷却されるよう構成すればよい。該伝熱面の他方の面は水などの低温媒体で冷却して、除熱する。
【0019】
冷却効率の点から、熱交換器の伝熱面積は限られた空間の中で大きい方がよい。したがって、例えば、管路の径を拡大して、その外部を囲繞した冷却ジャケットや、経路に挿入した多管式熱交換器、若しくはフィン付きチューブ等とすることができる。
【0020】
更に本発明の有機性廃棄物の処理装置は、前記加熱流通系ゾーンが外熱式キルンであることを特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面を参照しながら、例示的に説明する。但し本実施の形態に記載される製品の寸法、形状、材質、その相対配置等は特に特定的な記載がない限りは本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0022】
図1は本発明の一例を示すプロセスフロー図である。図1において、貯留された有機性廃棄物101は破砕機及びスクリューフィーダにより構成された供給手段111により、破砕された後、加熱流通ゾーンである外熱式キルン112中に連続的に供給される。また破砕機の投入口から、有機性廃棄物の0.3%ほどの炭酸ソーダを触媒として、同時に連続的に供給する。そして外熱式キルン112の加熱ジャケット113中に高温排ガス104を流通して内部を加熱する。昇温途上の十分低温の間に、キルン内部は窒素若しくは水蒸気でフラッシュして、内部の空気の一部を置換し、酸素濃度を5%以下に抑える。外熱式キルンの内温は300〜800℃に制御し、炭化物を分離抜き出し手段114の下部に導き、熱分解ガス102を上部から取り出す。分離抜き出し手段114の下部からは、有機性廃棄物の供給量とバランスしてキルン内容量が定常状態になるよう、炭化物を抜き出す。分離抜き出し手段の下部には急冷手段として熱交換器115を備え、抜き出し時に急冷する。
【0023】
熱分解ガス102は飛散粒子を含んでいるので、バグフィルタ116で除塵した後、高温燃焼炉117で燃焼させる。高温焼却炉117での燃焼用空気若しくは酸素富化空気106は別の経路で該炉117まで導く。
【0024】
高温燃焼炉117で得られた高温排ガスの一部104は、外熱式キルン112の加熱ジャケット113に導き、分解に必要な熱供給に用い、加熱ジャケット113出口から排出する未だ温度の高い、熱供給後のガス107は高温燃焼炉117から排出する高温ガスの一部と合流させてボイラ加熱用ガス105とする。
【0025】
高温のボイラ加熱用ガス105はボイラ122に導かれ、ここで蒸気を発生する熱源として使用され、発生した蒸気は蒸気タービン式発電機119を駆動し、復水機120により凝縮した水を再びボイラに戻し、循環せしめる。
【0026】
ボイラ加熱用ガス105はボイラ122で熱交換してボイラからの排ガスとなり、バグフィルタ121で除塵後、煙突118から排出される。
【0027】
以上本例のプロセスにより、有機性廃棄物を有毒な有機ハロゲン化化合物の生成を抑制して処理し、炭素を主体とする、資源として有効利用の出来る炭化物を取得し、発生する熱源によりボイラを稼動しタービン発電機を運転してエネルギーを有効に回収できる。しかも、装置としてコンパクトで、特に特殊な材料を必要としないプラントとすることができ、コストも低廉である。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明により、処理コストの増大を伴わない、有機ハロゲン化化合物の生成を抑制した有機性廃棄物、特にごみ、汚泥などの有機性物質を主体とする有機性廃棄物の処理をして、同時に資源として有効に利用できる炭化物を有効に固定する方法及び同装置の提供が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一例を示すプロセスフロー図である。
【符号の説明】
101 有機性廃棄物
102 熱分解ガス
103 炭化物
104 高温排ガス
105 ボイラ加熱用ガス
106 空気若しくは酸素富化空気
107 熱供給後のガス
111 供給手段(破砕機+スクリューフィーダ)
112 加熱流通系ゾーン(外熱式キルン)
113 加熱ジャケット
114 分離抜き出し手段
115 急冷手段(熱交換器)
116 バグフィルタ
117 高温燃焼炉
118 煙突
119 蒸気タービン発電機
120 複水器
121 バグフィルタ
122 ボイラ
Claims (8)
- 有機性廃棄物を外部より加熱する外部加熱手段を有する加熱流通系ゾーンに供給し、該外部加熱手段による加熱流通系ゾーンの内部を昇温途上の十分低温の間に窒素若しくは水蒸気でフラッシュして、内部の空気の一部を置換し、酸素濃度を5%以下に抑えた状態で該加熱流通系ゾーン内を温度300〜800℃に維持し、前記有機性廃棄物より発生する熱分解ガスと炭化物を該加熱流通系ゾーン終端側より分離しながら抜きだして行うことにより、有機ハロゲン化化合物を抑制しつつ分解処理するとともに、前記炭化物の加熱流通系ゾーン終端側からの炭化物の抜き出し時に、酸素との接触を防止しながら前記炭化物を250℃以下に急冷することを特徴とする有機性廃棄物の処理方法。
- 前記有機性廃棄物とともに炭酸ソーダ、酸化鉄、水酸化カルシウムから選ばれる少なくとも一つの化合物を供給することを特徴とする請求項1記載の有機性廃棄物の処理方法。
- 前記加熱流通系ゾーンから抜き出す熱分解ガスを850〜1100℃で高温燃焼させることを特徴とする請求項1記載の有機性廃棄物の処理方法。
- 前記炭化物は、前記加熱流通系ゾーン終端側に接続された炭化物抜き出し経路に設けた熱交換器によって、酸素との接触を防止しながら冷却されることを特徴とする請求項1記載の有機性廃棄物の処理方法。
- 有機ハロゲン化化合物の生成を抑制した有機性廃棄物の処理装置であって、
前記有機性廃棄物を加熱流通系ゾーンに供給する供給手段と、
攪拌手段及び外部加熱手段を有する加熱流通系ゾーンと、
該外部加熱手段による加熱流通系ゾーンの内部を昇温途上の十分低温の間に窒素若しくは水蒸気でフラッシュして、内部の空気の一部を置換し、酸素濃度を5%以下に抑える酸素抑制手段と、
該加熱流通系ゾーンの終端側に有機性廃棄物より発生する熱分解ガス及び炭化物の分離抜き出し手段とを有し、
前記有機性廃棄物を前記加熱流通系ゾーンに供給し、300〜800℃の設定温度範囲に維持することにより有機性廃棄物より発生する熱分解ガスと炭化物を該加熱流通系ゾーンの終端側より分離しながら抜きだすことを可能にして、有機ハロゲン化化合物を抑制しつつ分解処理を行うとともに、
前記炭化物の加熱流通系ゾーンの終端側からの炭化物の抜き出し時に、酸素との接触を防止しながら前記炭化物を250℃以下に急冷する炭化物急冷手段を備えたことを特徴とする有機性廃棄物の処理装置。 - 前記加熱流通系ゾーンより抜き出す熱分解ガスを高温燃焼させることのできる高温燃焼炉を更に備えたことを特徴とする請求項5記載の有機性廃棄物の処理装置。
- 前記炭化物急冷手段は、前記加熱流通系ゾーンの終端側に接続された炭化物抜き出し経路に設けた熱交換器であることを特徴とする請求項5記載の有機性廃棄物の処理装置。
- 前記加熱流通系ゾーンが外熱式キルンであることを特徴とする請求項5乃至7いずれかの項記載の有機性廃棄物の処理装置。
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