JP3732640B2 - 廃棄物の熱分解溶融燃焼装置 - Google Patents

廃棄物の熱分解溶融燃焼装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、都市ごみ等の廃棄物の溶融燃焼処理に利用されるものであり、廃棄物をほぼ酸素遮断下で熱分解する熱分解ドラムの加熱システムに改良を加えた廃棄物の熱分解溶融燃焼装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の廃棄物の熱分解溶融燃焼装置としては、従来から特公平6−56253号公報やドイツ連邦共和国特許第243250号明細書等に開示されたものが知られており、当該廃棄物の熱分解溶融燃焼装置は、熱分解反応器、搬出装置、分離装置、粉砕装置、溶融燃焼装置、廃熱ボイラ、集塵装置及びガス浄化装置等から構成されている。
【0003】
而して、前記熱分解反応器内へ供給された廃棄物は、ここで空気の遮断下で300℃〜600℃の温度に一定時間加熱され、熱分解ガスと熱分解残渣に変換された後、搬出装置に於いて熱分解ガスと熱分解残渣とに分別される。
【0004】
分別された熱分解ガスは、搬出装置から溶融燃焼装置へ送られ、ここで燃焼される。又、分別された熱分解残渣は、搬出装置から分離装置へ送られ、微細粒と細かい粗粒と粗い粗粒とに夫々分離され、更に分離された微細粒と細かい粗粒は粉砕装置で微粉砕されたあと溶融燃焼装置へ供給され、前記熱分解ガスと共に1200℃以上の高温下で溶融燃焼することにより溶融スラグとなる。
【0005】
溶融燃焼装置内の溶融スラグは、水砕スラグとして順次取り出されて行く。又、溶融燃焼装置からの排ガスは廃熱ボイラ、集塵装置及びガス浄化装置等を経て大気中へ排出されて行く。
【0006】
前記廃棄物を乾留熱分解する熱分解反応器は、加熱管を備えた回転式のドラムから成り、ドラムの長手方向に配設した複数の加熱管へは廃棄物を加熱する為の加熱ガスが循環流通されている。
ところで、当該熱分解反応器内の廃棄物を加熱する為の熱エネルギー源としては、廃棄物熱分解溶融燃焼装置で発生するエネルギー源を使用するのが熱経済上好ましい方策である。このエネルギー源としては、例えば熱分解ドラムで生じた熱分解ガスの一部を燃焼させた燃焼ガスや、溶融燃焼装置で生じた燃焼ガスを使用することが考えられ、特に、後者の溶融燃焼装置の燃焼ガスは高温であるため、これを用いるのが熱経済上最も好ましい方策である。
【0007】
しかし、熱分解ガスには、廃棄物に含まれている塩化ビニールを主体とした有機塩素化合物の燃焼に伴って生成する塩化水素ガスが多量に含有されている。従って、熱分解ガスの燃焼ガスにも多量の塩化水素ガスが含まれることになり、その高温に於ける激しい腐食性の為に、これらを熱分解反応器の加熱用熱源として利用することは一般に忌避されている。
【0008】
その為、従来の廃棄物の熱分解溶融燃焼装置に於いては、▲1▼石油やLPG等の外部燃料をバーナにより燃焼させて燃焼ガスを発生させ、この燃焼ガスを加熱ガスとして熱分解反応器の加熱管へ循環流通させる方法、▲2▼溶融燃焼装置から排出される燃焼ガスの熱エネルギーを廃熱ボイラにより回収し、廃熱ボイラからの蒸気により熱交換器を介して加熱ガスを加熱し、この高温加熱ガスを熱分解反応器の加熱管へ循環流通させる方法、▲3▼溶融燃焼装置の出口側に燃焼ガスの熱エネルギーを回収する熱交換器(高温空気加熱器)を設け、この熱交換器で加熱した高温空気(加熱ガス)を熱分解反応器の加熱管へ循環流通させる方法等が多く利用されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、石油やLPG等の外部燃料を利用する廃棄物熱分解溶融燃焼装置に於いては、石油やLPG等の外部燃料を多量に必要とし、ランニングコストが必然的に上昇して、廃棄物の処理費の大幅な引き下げを図り難いと云う問題がある。又、廃熱ボイラからの蒸気を利用する廃棄物の熱分解溶融燃焼装置に於いては、加熱ガスの温度制御等の点から化石燃料を用いる熱風発生炉等を補助的に設けることが不可欠となり、ランニングコストや設備費が増加すると云う問題がある。
更に、熱交換器を利用する廃棄物熱分解溶融燃焼装置に於いては、熱交換器が塩化水素ガスを含有する高温の燃焼ガスと直接接触する為、熱交換器自体に高温腐食が生じてメンテナンス費が大幅に高騰するうえ、熱交換器に燃焼ガス中のダストが付着して熱の回収効率が低下する等の問題がある。
【0010】
本発明は、従前の廃棄物の熱分解溶融燃焼装置に於ける上述の如き問題、即ち、▲1▼廃棄物の加熱用に石油やLPG等の外部燃料を用いた場合には、省エネルギー化が困難で廃棄物の処理費の大幅な引き下げを図れないこと、▲2▼溶融燃焼装置の燃焼ガスを加熱源に利用した場合には、塩化水素ガスによる燃焼機等の高温腐食が不可避であること等の問題を解決せんとするものであり、脱塩化水素処理を施した熱分解ガスの一部を燃焼させ、この燃焼ガスを熱分解ドラムの加熱用熱源として利用すると共に、脱塩化水素処理により生じた反応生成物と未反応の脱塩素剤との混合物を脱塩素剤として排ガス処理装置へ供給して再利用することにより、塩化水素ガスに起因する腐食の問題を生ずることがなく、然も、より経済的に廃棄物の溶融燃焼処理を行えるようにした廃棄物の熱分解溶融燃焼装置を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する為に、本発明の請求項1の発明は、廃棄物を乾留熱分解して熱分解ガスと熱分解残渣にする熱分解ドラムと、熱分解ドラムの加熱ガスに熱を供給する加熱用熱源装置と、熱分解ガスと熱分解残渣を分別して得られた細粒とを燃焼させる溶融燃焼装置と、溶融燃焼装置からの燃焼排ガスの熱を回収する廃熱ボイラと、燃焼排ガス中のダストを捕集する集塵装置と、燃焼排ガスを浄化する排ガス処理装置とを備えた廃棄物の熱分解溶融燃焼装置に於いて、前記熱分解ガスの一部を脱塩化水素反応装置へ供給して熱分解ガスに含まれている塩化水素を脱塩素剤と反応せしめて除去し、清浄化した熱分解ガスを加熱用熱源装置の燃焼機で燃焼させると共に、脱塩化水素反応装置から取り出した反応生成物と未反応の脱塩素剤との混合物を脱塩素剤として排ガス処理装置へ供給するようにしたことに特徴がある。
【0012】
本発明の請求項2の発明は、請求項1の発明に於いて、脱塩素剤を消石灰とすると共に、反応生成物の塩化カルシウムと未反応の消石灰との混合物を粉砕して排ガス処理装置へ供給するようにしたものである。
【0013】
本発明の請求項3の発明は、請求項1の発明に於いて、脱塩素剤を生石灰あるいは炭酸カルシウムとすると共に、反応生成物の塩化カルシウムと未反応の生石灰あるいは炭酸カルシウムとの混合物を粉砕して排ガス処理装置へ供給するようにしたものである。
【0014】
本発明の請求項4の発明は、請求項1の発明に於いて、脱塩素剤を炭酸ナトリウムとしたものである。
【0015】
本発明の請求項5の発明は、請求項1の発明に於いて、加熱用熱源装置を、燃焼機の燃焼ガスを熱分解ドラムの加熱ガスへ混合することにより加熱ガスに熱を供給する構成のものとしたものである。
【0016】
本発明の請求項6の発明は、請求項1の発明に於いて、加熱用熱源装置を、燃焼機の燃焼ガス、空気若しくは不活性ガスより成る熱分解ドラムの加熱ガスを間接加熱することにより、加熱ガスに熱を供給する構成のものとしたものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施態様に係る廃棄物熱分解溶融燃焼装置の全体系統図を示すものであり、図1に於いて、1は廃棄物ピット、2は廃棄物供給用ホッパ、3は廃棄物Wの供給装置、4は熱分解ドラム、5は搬出装置、6は溶融燃焼装置、7は分離装置、8は送風機、9は廃熱ボイラ、10は集塵装置、11は排ガス処理装置、12は誘引通風機、13は煙突、14は脱塩化水素反応装置、15はサイクロン、16は脱塩化水素反応器、17は消石灰粗粒子用ホッパ、18は破砕機、19は消石灰用ホッパ、20は燃焼機、21は加熱ガス用送風機、22は空気予熱器である。
【0018】
前記熱分解ドラム4は、水平に対して約1.5度の傾斜角度で入口側を上方に、出口側を下方に位置せしめた状態で回転自在に軸支されており、運転中は約1〜3rpmの回転速度で回転駆動されている。
又、熱分解ドラム4の内部には、複数本の加熱管4aがドラムの軸芯方向に平行に配設されている。この各加熱管4aは、両端部を入口ケーシング4b及び出口ケーシング4cへ夫々連通せしめた状態で支持固定されており、熱分解ドラム4と一体となって回転するようになっている。
【0019】
前記脱塩化水素反応装置14は、脱塩素剤として内部に直径2〜10mmの球形若しくは円柱形の消石灰(Ca(OH)2 )Cの粗粒子を充填した脱塩化水素反応器16と、脱塩化水素反応器16に接続され、脱塩素剤として消石灰Cの粗粒子を脱塩化水素反応器16へ供給する消石灰粗粒子用ホッパ17とを備えており、搬出装置5と溶融燃焼装置6とを接続する熱分解ガス排出用導管23から抜き出されたサイクロン15でダストD2 を除去した後の熱分解ガスG中に含まれている塩化水素(HCl)ガスを、消石灰Cと反応せしめて塩化カルシウム(CaCl2 )を生成することによりこれを除去し、清浄化した熱分解ガスGを燃焼用ガスとして燃焼機20へ供給する。
【0020】
即ち、熱分解ガス排出用導管23内を流れる熱分解ガスGの一部は、熱分解ガス排出用導管23に接続した熱分解ガス分岐用導管24により抜き出されてサイクロン15へ供給され、ここで熱分解ガスG中のダストD2 が分離された後、熱分解ガス用導管25を経て脱塩化水素反応器16へ供給され、ここで熱分解ガスG中の塩化水素ガスと消石灰Cとが下記のような反応をし、塩化水素ガスが除去される。
Ca(OH)2 +2HCl=CaCl2 +2H2
【0021】
塩化水素ガスと消石灰Cとの反応により脱塩化水素反応器内に生成された塩化カルシウムと未反応消石灰Cとの混合物C1 は、脱塩化水素反応器16に接続した混合物排出用導管26から破砕機18へ供給され、ここで更に微粉砕されて微細粒子となった後、微細粒子用導管27を経て消石灰用ホッパ19へ移送される。又、消石灰用ホッパ19内に貯留された前記混合物C1 の微細粒子は、消石灰供給用導管28を介して排ガス処理装置11へ吹き込まれ、燃焼排ガス内の塩化水素の除去剤として再利用される。
【0022】
尚、前記脱塩化水素反応器16内へは、消石灰粗粒子用ホッパ17から脱塩素剤としての消石灰Cの粗粒子が規則的且つ間欠的に供給されると共に、供給量に見合うだけの量の混合物C1 が脱塩化水素反応器16から排出されて行く。
又、図1の実施態様に於いては、脱塩素剤として消石灰(Ca(OH)2 )を使用しているが、これに代えて生石灰(CaO)や炭酸カルシウム(CaCO3 )、炭酸ナトリウム(Na2CO3 )等を脱塩素剤として利用することも可能である。
【0023】
前記脱塩化水素反応器16で清浄化された熱分解ガスGは熱分解ガス供給用導管29を経て、熱分解ドラム4の加熱ガスG1 に熱を供給する加熱用熱源装置を構成する燃焼機20へ供給され、燃焼用ガスとして利用される。
尚、熱分解ガスG中にはタール分が含まれている為、熱分解ガスGが冷却された場合には、タール分が凝縮して配管等が閉塞すると云うトラブルを起こす虞れがある。その為、熱分解ガスGが流れる配管及び各機器(熱分解ガス排出用導管23、熱分解ガス分岐用導管24、サイクロン15、熱分解ガス用導管25、脱塩化水素反応器16、熱分解ガス供給用導管29等)には、熱分解ガスGを熱分解ドラム4から排出される熱分解ガスGの温度と同じか、これよりやや高い温度に維持し、タール分の凝縮を防止する保温手段や加熱手段(何れも図示省略)が設けられている。
【0024】
前記燃焼機20は、脱塩化水素反応器16で清浄化した熱分解ガスGを燃焼させ、この燃焼ガスを熱分解ドラム4の加熱管4aへ廃棄物Wの加熱ガスG1 として供給するものである。
即ち、燃焼機20内で発生した高温の燃焼ガス(加熱ガスG1 )は、加熱ガス供給用導管30から熱分解ドラム4へ供給され、入口側導管31、入口ケーシング4b、加熱管4a、出口ケーシング4c、出口側導管32、加熱ガス用送風機21及びバイパス用導管33から成るループ管路内を循環流通し、加熱管4aを通過する間に廃棄物Wに熱エネルギーを供給し、自らは250℃〜300℃の温度となって出口ケーシング4cから流出する。
【0025】
本実施態様では、入口ケーシング4bに流入する加熱ガスG1 の温度を一定に保つ為、燃焼機20で発生した燃焼ガス(加熱ガスG1 )を加熱ガス供給用導管30から前記ループ管路内へ流通させている。
又、入口側導管31内を流れる加熱ガスG1 の温度が過度に上昇するのを防止する為、前記ループ管路内を流れる加熱ガスG1 の一部を分岐し、加熱ガス排出用導管34及びこれに接続された加熱ガス用導管35を介して低温の加熱ガスG1 の一部を燃焼機20内へ流入するようにしている。
更に、ループ管路内等を流れる加熱ガスG1 の過剰分は、空気予熱器22で熱を回収された後、加熱ガス排出用導管34から大気中へ放出される。
【0026】
尚、前記燃焼機20には、廃棄物熱分解溶融燃焼装置の始動時に燃焼ガスを発生させる為、石油やLPG等の外部燃料(化石燃料)を燃料とするオイルバーナ若しくはガスバーナ等の補助燃焼装置(図示省略)が設けられており、熱分解ガスGの発生量が所定量に達すればその運転が停止される。
又、燃焼機20へは、熱分解ガスGの燃焼用空気Aが空気予熱器22で加熱された後、空気供給用導管36を通して供給され、各導管には、加熱ガスG1 や燃焼用空気Aを制御するダンパや制御弁(図示省略)が設けられている。
【0027】
次に、本発明に係る廃棄物熱分解溶融燃焼装置の作動を図1の実施態様に基づいて説明する。
トラック等により搬入されて来た都市ごみ等の廃棄物Wは、廃棄物ピット1内へ貯留され、ここでシュレッダー(図示省略)により所定の大きさ(通常150mm以下)に破砕された後、クレーンやコンベヤ等により廃棄物供給用ホッパ2内へ移送され、供給装置3によって順次熱分解ドラム4内へ供給されて行く。
尚、廃棄物熱分解溶融燃焼装置の始動時には、燃焼機20の補助燃焼装置で石油やLPG等の外部燃料を燃焼させ、発生した燃焼ガスを廃棄物Wの加熱ガスG1 として熱分解ドラム4の加熱管4aへ供給する。
【0028】
熱分解ドラム4内へ供給された廃棄物Wは、酸素が遮断された状態下で加熱管4a内を流通する加熱ガスG1 によって300℃〜600℃好ましくは450℃の温度に加熱され、約1時間程度熱分解ドラム4内に回転による攪拌混合を受け乍ら滞留する。この間に熱分解ドラム4内の廃棄物Wが熱分解されることにより、熱分解ガスGと固形の熱分解残渣Dが熱分解ドラム4内に生成される。
尚、熱分解ドラム4内での廃棄物Wの熱分解は通常約1時間程度で完了し、概ね75wt%の熱分解ガスGと25wt%の熱分解残渣Dとが生成される。又、生成された熱分解残渣Dは、熱分解ドラム4内で攪拌・混合されることにより均一化され、一様な大きさの粒子となる。
【0029】
熱分解ドラム4内に発生した熱分解ガスGは、水分、CO、CO2 、H2 及び炭化水素を主成分とするものであり、ダストD2 及びタールが若干含まれている。又、発生した熱分解残渣Dは、主成分が炭素と灰分で構成されるチャーと鉄、アルミニウム、ガラス、石等の不燃物との混合物である。
熱分解ドラム4内の熱分解ガスGと熱分解残渣Dは、熱分解ドラム4に隣接して設けた搬出装置5内へ排出され、ここで熱分解ガスGと熱分解残渣Dとに分別される。
【0030】
搬出装置5内で分別された熱分解ガスGは、熱分解ガス排出用導管23を経て溶融燃焼装置6へ供給され、所謂溶融燃焼が行なわれる。
又、熱分解残渣Dの方は、熱分解残渣排出用導管37を経て複数の振動スクリーン、磁選機、破砕装置及びサイロ(何れも図示省略)等から成る分離装置7へ供給され、ここで選別貯留される。即ち、熱分解残渣Dは、分離装置7に於いて可燃物を主体とする細粒D1 (粒径1mm以下)と砂、ガラス、金属等の不燃物(粗大粒)とに分離される。
【0031】
分離装置7で分離された可燃性の細粒D1 は、送風機8からの空気によって細粒用導管38を経て溶融燃焼装置6へ送られ、ここで熱分解ガスGと共に燃焼される。このとき、廃熱ボイラ9や集塵装置10からのダストD2 がダスト排出用導管39により前記細粒用導管38へ導かれ、空気輸送によって溶融燃焼装置6へ送られ、ここで熱分解ガスGと共に燃焼される。
即ち、溶融燃焼装置6内へ供給された炭素含有量の高い細粒D1 と廃熱ボイラ9や集塵装置10からのダストD2 は、熱分解ガスGと共に溶融燃焼装置6内で高温燃焼(約1300℃)される。尚、前記燃焼温度(約1300℃)は灰の溶融温度より100〜150℃ほど高いので、細粒D1 及びダストD2 は溶融スラグとなり、スラグ冷却槽内へ排出されることによって所謂水砕スラグとなる。
【0032】
尚、この溶融燃焼装置6に於いては、極めて高い燃焼温度により、生成されたダイオキシン類は他の有機物と共に略完全に燃焼・分解される。その結果、排ガス処理装置11から排出される燃焼ガス中のダイオキシン類は、0.5ng/Nm3 (換算値)以下となっている。しかし、より厳しい規制のある場合には、排ガス処理装置11に於いて燃焼排ガス内へ消石灰Cと共に活性炭を吹き込み、塩化水素ガスとダイオキシン類を除去することも可能である。
又、当該溶融燃焼装置6に於いては、燃焼用空気の多段階供給方式や排ガス再燃焼法、サイクロン燃焼法等の良好な燃焼を維持する為の各種の公知の手段を単独又は組合せ使用することができることは勿論であり、例えば平均空気過剰率λ=1.3に於いて、燃焼室内の均等な温度分布と攪拌効果によって低NOx状態下で、熱分解ガスG及び細粒D1 等を完全に溶融燃焼させることができると共に、水砕スラグ中の未燃炭素分も0.2wt%以下に抑えることができる。
【0033】
前記溶融燃焼装置6から排出される高温の燃焼排ガスG2 は、排ガス用導管40を経て廃熱ボイラ9へ流入し、ここで燃焼排ガスG2 中の熱エネルギーが熱回収される。これによって、廃熱ボイラ9では過熱蒸気が発生し、この蒸気は例えば蒸気タービン発電装置(図示省略)へ供給されて発電に利用される。
又、廃熱ボイラ9での熱回収により約200℃位にまで冷却された燃焼排ガスG2 は、集塵装置10(電気集塵機若しくはバグフィルター)によってダストD2 が除去された後、排ガス処理装置11に供給され、ここでHClやSOx、NOx等の有害物質が除去される。
【0034】
前記排ガス処理装置11に於いては、燃焼排ガスG2 中に脱塩素剤として消石灰用ホッパ19から消石灰Cが消石灰供給用導管28を介して吹き込まれており、消石灰Cと塩化水素ガスとを反応せしめて塩化水素ガスを除去するようにしている。又、排ガス処理装置11で生成した塩化カルシウム等の生成物は、電気集塵機やバグフィルター等の集塵装置(図示省略)で捕集される。
当該排ガス処理装置11により清浄化された燃焼排ガスG2 は、誘引通風機12を経て煙突13から大気中へ放出されて行く。
【0035】
一方、熱分解ガス排出用導管23内を流れる熱分解ガスGの一部は、熱分解ガス分岐用導管24からサイクロン15へ供給され、ここで熱分解ガスG中のダストD2 が分離された後、熱分解ガス用導管25を経て脱塩化水素反応器16へ供給され、該脱塩化水素反応器16内で熱分解ガスG中の塩化水素ガスと脱塩素剤である消石灰Cとの反応により塩化水素ガスが除去される。
【0036】
前記脱塩化水素反応器16内へは、消石灰粗粒子用ホッパ17から消石灰Cの粗粒子が規則的且つ間欠供給されている。
又、塩化水素ガスと消石灰Cとの反応により脱塩化水素反応器16内で生成した塩化カルシウムと未反応消石灰Cとの混合物C1 は、消石灰Cの粗粒子の供給量と同じ量だけ混合物排出用導管26から排出されている。通常、除去されるべき塩化水素ガスに対して、化学量論的に必要な消石灰Cの4〜10倍の消石灰粗粒子を供給している為、混合物排出用導管26から排出される混合物C1 には、塩化カルシウムに対してモル当量比当り3〜9倍の未反応消石灰Cを含有している。
従って、混合物排出用導管26から排出された混合物C1 は、破砕機18へ供給され、ここで微粉砕されて微細粒子となった後、微細粒子用導管27を経て消石灰用ホッパ19に貯留される。そして、消石灰供給用導管28を介して脱塩素剤として排ガス処理装置11へ吹き込まれ、燃焼排ガスG2 中の塩化水素ガスの除去に使用される。
【0037】
尚、サイクロン15で分離されたダストD2 は、ダスト排出用導管41を介して溶融燃焼装置6へ供給され、ここで熱分解ガスG等と共に溶融燃焼される。
又、脱塩化水素反応器16で清浄化された熱分解ガスGは、熱分解ガス供給用導管29から加熱用熱源装置を構成する燃焼機20へ供給され、ここで燃焼用空気Aと共に燃焼される。このとき、燃焼機20に設けた補助燃焼装置(図示省略)は、前述の通り熱分解ガスGの発生量に応じて運転を停止するように制御されている。従って、石油等の外部燃料は、廃棄物熱分解溶融燃焼装置の始動時のみ必要とし、消費量が少なくて済む。
【0038】
燃焼機20内で発生した高温の燃焼ガス(加熱ガスG1 )は、加熱ガス供給用導管30から熱分解ドラム4へ供給され、入口側導管31、入口ケーシング4b、加熱管4a、出口ケーシング4c、出口側導管32、加熱ガス用送風機21及びバイパス用導管33から成るループ管路内を循環流通し、加熱管4aを通過する間に廃棄物Wに熱エネルギーを供給する。尚、加熱ガスG1 の流れやその温度制御に関する説明は前述の通りであるから省略する。
【0039】
本発明の廃棄物の熱分解溶融燃焼装置は、熱分解ガスG中に含まれている塩化水素ガス(0.4〜0.8%程度)を脱塩化水素反応装置14で除去し、清浄化した熱分解ガスGを加熱用熱源装置の燃焼機20へ供給して燃焼させ、この燃焼ガスを熱分解ドラム4へ加熱ガスG1 として供給している為、燃焼ガス(加熱ガスG1 )中の塩化水素濃度を著しく低減させることができる。即ち、熱分解ガスG中の塩化水素濃度は200ppm以下に、又、燃焼ガス(加熱ガスG1 )中の塩化水素濃度は50ppm以下に抑えられ、その結果、熱分解ドラム4の加熱管4aやその他の導管等の腐食が少なくなり、メンテナンス費の大幅な低減を図れる。
又、石油やLPG等の外部燃料は、廃棄物熱分解溶融燃焼装置の始動時にのみ使用すれば良く、ランニングコストが大幅に低下して極めて経済的である。
更に、脱塩化水素反応装置14で生成した塩化カルシウム等の反応生成物と未反応消石灰C等の未反応脱塩素剤との混合物C1 を破砕機18により粉砕し、これを排ガス処理装置11に供給して燃焼排ガスG2 中に含まれている塩化水素ガスを消石灰Cと反応せしめて除去するようにしている為、消石灰C等の脱塩素剤の反応率が向上すると共に、消費量も少なくなり、ランニングコストの低減を図れる。
【0040】
図2は本発明の第2実施態様に係る廃棄物熱分解溶融燃焼装置の全体系統図を示すものであり、当該廃棄物熱分解溶融燃焼装置は、熱分解ドラム4へ空気若しくは不活性ガスを流通せしめると共に、前記熱分解ガスGの一部を脱塩化水素反応装置14に供給してここで熱分解ガスG中に含まれている塩化水素ガスを消石灰C等の脱塩素剤と反応せしめて除去し、清浄化した熱分解ガスGを加熱用熱源装置を構成する熱交換器42を備えた燃焼機20へ供給して燃焼させ、前記空気若しくは不活性ガスを熱交換器42により加熱して熱分解ドラム4の加熱用媒体として使用するものである。
【0041】
即ち、脱塩化水素反応装置14で清浄化された熱分解ガスGは、熱分解ガス供給用導管29を経て燃焼機20へ供給され、ここで燃焼用空気Aと共に燃焼される。
又、熱分解ドラム4へ供給される空気若しくは不活性ガスは、加熱ガス供給用導管30を経て入口側導管31、入口ケーシング4b、加熱管4a、出口ケーシング4c、出口側導管32、熱分解ガス用送風機21及びバイパス用導管33から成るループ管路内を循環流通する。
更に、出口ケーシング4cから排出された低温の空気若しくは不活性ガスの一部は、加熱ガス排出用導管34及び加熱ガス用導管35を介して熱交換器42を備えた燃焼機20へ流入し、清浄化した熱分解ガスGの燃焼ガスと熱交換器42を介して熱交換した後、加熱ガス供給用導管30を経てループ管路内へ供給され、入口ケーシング4bに流入する加熱ガスG1 (空気若しくは不活性ガス)の温度を一定に保つ。
そして、前記ループ管路内を流れる加熱ガスG1 (空気若しくは不活性ガス)の過剰分は、加熱ガス排出用導管34から空気予熱器22へ流入し、ここで燃焼機20へ供給される燃焼用空気Aを加熱した後、大気中へ放出される。
【0042】
尚、当該廃棄物熱分解溶融燃焼装置は、加熱ガスG1 に空気若しくは不活性ガスを使用したこと及び加熱用熱源装置を構成する燃焼機20に空気若しくは不活性ガスと燃焼ガスとを熱交換する熱交換器42を設けたこと以外は、図1の装置と全く同一構造に構成されている。
又、当該廃棄物の熱分解溶融燃焼装置は、図1に示す装置と同様の作用効果を奏することができる。特に、当該廃棄物熱分解溶融燃焼装置では、加熱された空気若しくは不活性ガスを加熱管4aへ供給するようにしている為、空気若しくは不活性ガス中の塩化水素濃度を0%にすることができ、加熱管4a及びその他の導管の塩化水素による腐食は皆無となり、耐久性を飛躍的に増大させることができる。
更に、図2の実施態様では、消石灰Cを脱塩素剤として使用しているが、消石灰Cに代えて他の生石灰(CaO)や炭酸カルシウム(CaCO3 )、炭酸ナトリウム等を脱塩素剤としても良いことは勿論である。
【0043】
上記図1及び図2の実施態様に於いては、脱塩化水素反応装置14を、脱塩素剤である消石灰Cの粗粒子を充填した脱塩化水素反応器16と、消石灰Cの粗粒子を脱塩化水素反応器16へ供給する消石灰粗粒子用ホッパ17とから構成したが、脱塩化水素反応装置14を、図3に示すように熱分解ガス分岐用導管24に接続された混合器43と、混合器43に接続された脱塩素剤である微粉消石灰用ホッパ44と、混合器43に導管45を介して接続されたバグフィルター46とから構成するようにしても良い。
【0044】
即ち、図3の実施態様では、熱分解ガス排出用導管23内を流れる熱分解ガスGの一部が熱分解ガス分岐用導管24を通して混合器43へ供給され、ここで微粉消石灰用ホッパ19から送入された微粉消石灰Cが熱分解ガスG内へ混合される。これにより熱分解ガスGは、ガス中の塩化水素ガスと微粉消石灰Cとの反応を維持しつつ、導管45を通ってバグフィルター46へ至る。
【0045】
バグフィルター46に於いては、清浄化された熱分解ガスGが透過すると共に、反応生成物である塩化カルシウムと未反応消石灰Cとの混合物C1 がバグフィルター46に積層して行く。その結果、引き続きバグフィルター46を透過する熱分解ガスG中の塩化水素ガスが、先に積層した未反応消石灰Cと反応して脱塩化水素反応が促進されることになる。
【0046】
バグフィルター46で捕集された熱分解ガスG中のダストD2 、未反応消石灰C、塩化水素ガスと反応して生成される塩化カルシウム等の混合物C1 は、バグフィルター46に接続した混合物排出用導管26から破砕機18へ供給され、ここで粉砕されて微細粒子となった後、微細粒子用導管27を経て消石灰用ホッパ19に貯留される。又、貯留された微細粒子は、消石灰供給用導管28を介して排ガス処理装置11へ吹き込まれ、脱塩素剤として再利用される。
【0047】
尚、混合器43へは、通常除去されるべき塩化水素ガスに対して、化学量論的に必要な消石灰Cの1.2〜3倍の微粉消石灰Cを供給している為、混合物排出用導管26から排出される混合物C1 は塩化カルシウムに対してモル当量比当り0.2〜2倍の未反応消石灰Cを含有している。従って、混合物排出用導管26から排出された混合物C1 は、上述したように排ガス処理装置11へ吹き込むことにより、脱塩素剤として十分に再利用できる。
【0048】
【発明の効果】
上述の通り、本発明に係る廃棄物の熱分解溶融燃焼装置は、熱分解ガス中に含まれている塩化水素ガスを脱塩化水素反応装置で除去し、清浄化した熱分解ガスを燃焼機へ供給して燃焼させ、この燃焼ガスを熱分解ドラムの加熱用熱源として使用すると共に、脱塩化水素処理により生じた反応生成物と未反応の脱塩素剤との混合物を脱塩素剤として排ガス処理装置へ供給して再利用するようにしている為、熱分解ガス中の塩化水素濃度及び燃焼ガス中の塩化水素濃度を著しく低減させることができると共に、脱塩素剤の反応率の向上や燃焼排ガスの処理に必要とする脱塩素剤の使用量の削減を図ることができる。
その結果、熱分解ドラムや導管、その他の各機器等が塩化水素ガスに起因する高温腐蝕を生ずることも少なくなり、メンテナンス費の大幅な低減を図ることができると共に、石油やLPG等の外部燃料を殆ど必要とせず、ランニングコストが大幅に低下して極めて経済的である。
【0049】
又、請求項6の発明に於いては、空気若しくは不活性ガスを熱分解ドラムの加熱ガスとし、前記空気若しくは不活性ガスを燃焼機の熱交換器により加熱して熱分解ドラムへ供給するようにしている為、空気若しくは不活性ガス中の塩化水素濃度を0%にすることができ、加熱管及びその他の導管の塩化水素による腐食は皆無となり、耐久性を飛躍的に増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施態様に係る廃棄物熱分解溶融燃焼装置の全体系統図である。
【図2】本発明の第2実施態様に係る廃棄物熱分解溶融燃焼装置の全体系統図である。
【図3】脱塩化水素反応装置の他の例を示す概略系統図である。
【符号の説明】
4は熱分解ドラム、6は溶融燃焼装置、9は廃熱ボイラ、10は集塵装置、11は排ガス処理装置、14は脱塩化水素反応装置、18は破砕機、20は燃焼機、42は熱交換器、Wは廃棄物、Gは熱分解ガス、Dは熱分解残渣、D1 は細粒、D2 はダスト、G2 は排ガス、Cは消石灰、C1 は混合物。

Claims (6)

  1. 廃棄物を乾留熱分解して熱分解ガスと熱分解残渣にする熱分解ドラムと、熱分解ドラムの加熱ガスに熱を供給する加熱用熱源装置と、熱分解ガスと熱分解残渣を分別して得られた細粒とを燃焼させる溶融燃焼装置と、溶融燃焼装置からの燃焼排ガスの熱を回収する廃熱ボイラと、燃焼排ガス中のダストを捕集する集塵装置と、燃焼排ガスを浄化する排ガス処理装置とを備えた廃棄物の熱分解溶融燃焼装置に於いて、前記熱分解ガスの一部を脱塩化水素反応装置へ供給して熱分解ガスに含まれている塩化水素を脱塩素剤と反応せしめて除去し、清浄化した熱分解ガスを加熱用熱源装置の燃焼機で燃焼させると共に、脱塩化水素反応装置から取り出した反応生成物と未反応の脱塩素剤との混合物を脱塩素剤として排ガス処理装置へ供給する構成としたことを特徴とする廃棄物の熱分解溶融燃焼装置。
  2. 脱塩素剤を消石灰とすると共に、反応生成物の塩化カルシウムと未反応の消石灰との混合物を粉砕して排ガス処理装置へ供給するようにした請求項1に記載の廃棄物の熱分解溶融燃焼装置。
  3. 脱塩素剤を生石灰あるいは炭酸カルシウムとすると共に、反応生成物の塩化カルシウムと未反応の生石灰あるいは炭酸カルシウムとの混合物を粉砕して排ガス処理装置へ供給するようにした請求項1に記載の廃棄物の熱分解溶融燃焼装置。
  4. 脱塩素剤を炭酸ナトリウムとするようにした請求項1に記載の廃棄物の熱分解溶融燃焼装置。
  5. 加熱用熱源装置を、燃焼機の燃焼ガスを熱分解ドラムの加熱ガスへ混合することにより加熱ガスに熱を供給する構成の加熱用熱源装置とした請求項1に記載の廃棄物の熱分解溶融燃焼装置。
  6. 加熱用熱源装置を、燃焼機の燃焼ガス、空気若しくは不活性ガスより成る熱分解ドラムの加熱ガスを間接加熱することにより、加熱ガスに熱を供給する構成の加熱用熱源装置とした請求項1に記載の廃棄物の熱分解溶融燃焼装置。
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