JP4702513B2 - 焼結磁石の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、R−TM−B系焼結磁石(Rは希土類元素の1種又は2種以上、TMはFe、又はFe及びCo)等を加工した際に生ずる研削屑に含まれる磁石粉末を再利用する方法に関するものである。
粉末冶金法によって作製されるR−TM−B系焼結磁石等の焼結磁石材料は、所望形状とするために通常、加工工程を経て製品化される。この加工の中で研削を行う場合には研削液が使用される。研削液は通常、水又は水に加工性向上のために潤滑剤や被加工物である磁石材料の酸化防止のための防錆剤を混合して用いられる。加工終了後には研削によって生じたスラッジは研削液と混合したスラリの状態で排出される。
研削によって生ずるスラッジの量は、製品原料の数十%に及ぶ場合があるため、スラッジを再利用することが検討されている。ここで、スラッジの再利用方法として、これまでいくつかの方法が提案されている。この方法は、(1)希土類回収法、(2)合金再生法、(3)磁石再生法に分類することができる。
希土類回収法はスラッジから希土類元素のみを希土類化合物として回収し、原料工程にリサイクルする方法で、例えば特許第2765470号公報(特許文献1)、特開平9−217132号公報(特許文献2)などが提案されている。これらの方法は一度に大量のスラッジを処理できること、高純度の希土類化合物を回収できるといった利点があるが、多量の酸を使用することや廃酸の処理が困難、処理工程が複雑といった問題が指摘されている。
合金再生法はスラッジを同組成の合金として回収する方法で、スラッジを高周波溶解、アーク溶解、プラズマ溶解等で溶解して磁石合金を得る。例えば、特開平8−31624号公報(特許文献3)、特開平6−136461号公報(特許文献4)が提案されている。これらの方法はスラッジを磁石合金として再生することで、希土類を含む合金を得る製錬工程、磁石合金を得る溶解工程を短縮化することができること、スラッジ内に含有する希土類以外の高価な遷移金属も再利用できるといった特徴がある。しかし、希土類元素の回収率が低くなるとともに、坩堝材が溶損し、異物として磁石合金に混入するといった問題が指摘されている。
以上に対し、磁石再生法はスラッジを磁石として再生する方法で、例えば、スラッジと希土類の豊富な合金粉を所定の割合で混合し、成形、焼結し、磁石を得る方法(特許第2746818号公報(特許文献5))が提案されている。この方法は、スラッジと希土類合金を加熱溶解前に坩堝内に一緒に装入し、高周波溶解炉で溶解することにより、磁石用合金として再生する方法である。この方法は、現行の磁石製造装置を使用することができ、更に希土類以外の高価な遷移金属も再利用できるため経済的に大きなメリットがある。さらに、坩堝材の溶損を防ぐため、溶解原料の約10重量%の希土類合金を一緒に溶解すること、更に坩堝材の溶損の原因とされるスラグ発生量を低減するためにフラックスを添加することを特徴としている。しかし、この方法では、フラックスを添加しない場合の歩留が非常に悪いため、添加するフラックス量を溶解原料の40%程度にする必要があるため、フラックスによる坩堝の溶損、インゴットへの混入による磁気特性及び表面処理特性の悪化、さらに希土類回収率の低下、処理コストが高くなるなどの問題が指摘されている。
以上に対して、フラックスの飛散を抑制し、溶解炉内の汚染を抑えて、希土類磁石スラッジを溶解原料として高純度の磁石用合金を得ることができる希土類磁石スラッジの再溶解方法が特開2003−113429号(特許文献6)に開示されている。この方法は、予め希土類を含まないR−Fe−B系磁石に用いる原料金属を坩堝に装入し、加熱溶解後、希土類元素を含む原料金属とR−Fe−B系希土類磁石スラッジ並びにアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属から選ばれる1種又は2種以上の金属のハロゲン化物を含むフラックスを適量添加することによって、高効率で希土類元素を回収することができ、溶解歩留も向上するというものである。
特許第2765470号公報 特開平9−217132号公報 特開平8−31624号公報 特開平6−136461号公報 特許第2746818号公報 特開2003−113429号
以上説明した従来のスラッジの再利用方法は、研削加工によって生じたスラッジを溶解する、あるいは他の化合物に変換させる等の処理が必要であることから、工程数が必然的に多くなる。これに対して、スラッジを処理する工程が少なくて済めば、再利用方法としての価値が大きい。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、少ない処理工程であってもスラッジを有効に再利用することのできる方法を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような方法で得られた磁石粉末を用いて磁石を得る方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、そのような方法で得られた磁石粉末を用いて磁石を得るための製造システムを提供することを課題とする。
これまでのスラッジの再利用方法は、スラッジに化学的又は物理的な変化を伴う処理を施して得られた物質を再利用に供するものであった。本発明者らは、スラッジそのものを再利用するという、これまで見落とされていた斬新な発想に基づいて、スラッジを原料粉末として磁石を製造する方法について検討を行った。
通常、数μmから数十μmの大きさの粒子からなるスラッジと研削液と共に、回収タンクに相当の時間貯留される。R−TM−B系焼結磁石のような希土類化合物は活性であり、特にその化合物表面積が大きいと酸素と反応しやすい。スラッジは加工によって新生面が露出した粒子で構成されており、その酸素との反応は早く防錆剤を混合した研削液といえども、長時間浸漬状態であれば粉体の酸化が進行し粒子の磁気特性は低下する。
そこで、本発明者らは、スラッジの特性を測定したところ、研削液に浸漬されている時間を所定時間内とし、かつその後に乾燥してしまえば、磁石として足りる特性を備えることが判明した。
本発明は以上の知見に基づくものであり、焼結磁石材料を研削加工して生成されたスラッジを研削液から分離するステップと、研削液から分離されたスラッジをその生成から24時間経過前に乾燥処理するステップと、乾燥処理されたスラッジを磁石製造用原料として用い、所定形状に成形し、かつ磁場を印加して成形体を作製する磁場中成形ステップと、成形体を焼結して焼結磁石を得るステップと、を備えることを特徴とする焼結磁石の製造方法である。
本発明によれば、研削により生成されるスラッジを磁石製造用原料として用いるため、スラッジを有効に再利用できるとともに、低コストで磁石を製造することができる。
本発明の焼結磁石の製造方法において、磁性粉であるスラッジの磁気特性の低下を最小限に抑えることができるためである。
本発明の焼結磁石スラッジの再利用方法において、焼結磁石材料は、R−TM−B系焼結磁石材料(Rは希土類元素の1種又は2種以上、TMはFe、又はFe及びCo)とすることが望ましい。R−TM−B系焼結磁石は、磁気特性が高いため、そのスラッジを用いて磁石として十分に機能する特性を有することができるためである。
以上説明したように、本発明によれば、研削により生成されるスラッジを磁石製造用原料として用いるため、スラッジを有効に再利用できるとともに、低コストで磁石を製造することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の焼結磁石スラッジの再利用方法は、はじめに、焼結磁石材料を研削加工して排出された研削液及びスラッジの混合物からスラッジを分離する。通常、焼結磁石の加工時に生成したスラッジは研削液と共に回収タンクに排出される。貯蔵タンクに排出された混合物を、例えばろ過することにより、スラッジと研削液に分離する。スラッジと研削液の分離は、回収タンクに混合物が所定量貯留した後にまとめて行うことができるし、連続的に分離することもできる。分離はろ過に限らず、遠心分離等の公知の固液分離手段を広く適用することができる。
本発明が対象とする焼結磁石は特に限定されず、R−TM−B系焼結磁石(Rは希土類元素の1種又は2種以上、TMはFe、又はFe及びCo)、R−Co系焼結磁石に適用することができる。
本発明において、RはYを含む概念を有しており、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb、Lu及びYの1種又は2種以上から選択される。さらに、保磁力を改善するために、Al、Cr、Mn、Mg、Si、Cu、C、Nb、Sn、W、V、Zr、Ti、Mo、Bi、Ag及びGaなどの元素を1種又は2種以上を含有することもできる。
また、R−Co系焼結磁石は、Rと、Fe、Ni、Mn及びCrから選ばれる1種以上の元素と、Coとを含有する。この場合、好ましくはさらにCuまたは、Nb、Zr、Ta、Hf、Ti及びVから選ばれる1種以上の元素を含有し、特に好ましくはCuと、Nb、Zr、Ta、Hf、Ti及びVから選ばれる1種以上の元素とを含有する。これらのうち特に、SmとCoとの金属間化合物、好ましくはSmCo17金属間化合物を主相とし、粒界にはSmCo系を主体とする副相が存在する。
R−TM−B系焼結磁石は磁気特性が高いため、本発明を適用することにより、用途によって十分な磁気特性を有する磁石を得ることができる。なお、ここではR−TM−B系焼結磁石、R−Co系焼結磁石について言及したが、本発明は他の希土類焼結磁石への適用を妨げるものではない。
本発明においては、公知の研削液を広く用いることができる。研削液としての冷却能が最も優れる水のみを研削液として用いることもできるし、添加剤を含む水性の液を研削液として用いることもできる。スラッジの再利用を考慮すると、スラッジの汚染を抑えることのできる水のみを研削液として用いることが望ましい。また、本発明は、平面研削、両刃研削、バーティカル研削、センタレス研削などの公知の研削方法のいずれにも適用することができる。
研削液から分離されたスラッジは未だ濡れている。したがって、そのまま放置するのではなく、乾燥処理する。乾燥処理することにより研削液に由来する酸素量の増加、炭素量の増加を防止することができる。本発明では、スラッジ生成から、換言するとスラッジが研削液に浸漬されてから24時間以内に乾燥処理することを推奨する。24時間を経過するとスラッジの磁気特性の劣化が顕著となるからである。乾燥の手法は問わないが、大気等の酸化雰囲気中で乾燥することは避けるべきである。酸素量の増加を招くからである。したがって、非酸化性雰囲気、例えばArガス気流中、あるいは真空中で乾燥処理することが望ましい。
乾燥処理は、100℃以下の温度で行うことが望ましい。あまり高温で乾燥処理を行うと、磁気特性の低下を招くおそれがあるからである。したがって、乾燥温度はこれらの事項を考慮して選択すればよい。本発明者らの検討によると、常温であれば10時間程度保持すれば十分な乾燥状態が得られ、また120℃であれば2時間程度保持すれば十分な乾燥状態が得られる。
R−TM−B系焼結磁石から生成したスラッジは、生成から24時間以内に乾燥することにより残留磁化(σr)が70emu/g以上、保磁力(Hcj)が1170Oe以上という特性を備えている。乾燥されたスラッジは、このような特性を備えているので、磁石製造用原料として用いることができる。スラッジ生成から乾燥までの時間を短くすれば、75emu/g以上の残留磁化(σr)、1200Oe以上の保磁力(Hcj)を有するスラッジを得ることができる。
以上のように乾燥されたスラッジは、所定の磁気特性を備えているために新たな磁石製造用原料として用いることができる。本発明は、乾燥されたスラッジを用いて焼結磁石を製造することができる。また、乾燥されたスラッジを用いてボンド磁石を製造することができる。
焼結磁石を製造する場合には、スラッジを磁場中成形して成形体を作製し、次いでこの成形体を焼結する。また、焼結後に、時効熱処理等の熱処理を行うこともできる。つまり、焼結磁石を製造する通常の工程を適用することができる。ただし、スラッジは、研削条件にもよるが、4〜5μm程度の平均粒径を有する磁石粒子であるため、原料合金の作製、粉砕等の工程を省略することができる。このように、本発明は非常に低コストで焼結磁石を製造できる利点がある。
乾燥されたスラッジは、そのまま新たな磁石製造に用いることができる。乾燥されたとはいえ、研削液に浸漬されていたため表面に汚染物質が付着していることも想定される。したがって、洗浄、脱脂を行った後に、スラッジを新たな磁石製造に用いることもできる。また、通常、スラッジは新たな磁石製造にとって好ましい粒径を有しているが、そうでない場合には、必要な粒径を得るために粉砕等の粒度調整を行うことができる。
次に、本発明の焼結磁石スラッジの再利用方法を実施する好適なシステムについて図面を参照しつつ説明する。
図1は磁石製造システムの構成を示すブロック図である。この磁石製造システム10は、ストリップ・キャスト、その他の鋳造方法で得られた新たな原料合金を用いて焼結磁石を製造することができる。さらにこの磁石製造システム10は、新たな原料合金を用いて焼結磁石(第1の磁石)を製造する過程の加工、特に研削加工で生成するスラッジを原料粉末として焼結磁石(第2の磁石)を製造することができる。
磁石製造システム10は、粉砕部1を備えている。この粉砕部1は、上記原料合金を所定の粒径まで粉砕する部分である。粉砕部1における粉砕は、粗粉砕と微粉砕の2段階に分けることができる。粗粉砕は、水素化粉砕又は粗粉砕機により行うことができる。水素化粉砕は、原料合金を常温下で水素含有雰囲気に曝して水素吸蔵させる。水素吸蔵が終了した後に、水素吸蔵が行われた原料合金を加熱保持する脱水素処理が施される。この処理は、永久磁石として不純物となる水素を減少させることを目的として行われる。
粗粉砕はまた、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等の粉砕機を用い、不活性ガス雰囲気中にて行なうこともできる。
粗粉砕後、微粉砕に移る。微粉砕では、通常、気流式粉砕機を用いて平均粒径1〜10μm程度まで処理される。なお、成形時の潤滑及び配向性の向上を目的とした脂肪酸又は脂肪酸の誘導体、例えばステアリン酸系やオレイン酸系であるステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等を微粉砕時に添加することができる。
磁石製造システム10は、磁場中成形部2を備えている。磁場中成形部2は、粉砕部1で得られた微粉末を所定の磁場を印加しつつ、所定形状に成形する。磁場中成形における成形圧力は0.5〜5ton/cmの範囲とすればよい。成形圧力は成形開始から終了まで一定であってもよく、漸増または漸減してもよく、不規則変化してもよい。成形圧力が低いほど配向性は良好となるが、成形圧力が低すぎると成形体の強度が不足してハンドリングに問題が生じるので、この点を考慮して上記範囲から成形圧力を選択する。磁場中成形で得られる成形体の最終的な相対密度は、通常、50〜60%である。また、印加する磁場の強度は、5〜30kOeの範囲から適宜選択すればよい。印加する磁場は静磁場に限らずパルス磁場とすることもできる。その場合、1T(絶対値)以上の磁場を10μs〜0.5s印加することが好ましい。
磁場中成形は、加圧方向と磁場印加方向とがほぼ直交するいわゆる横磁場成形法、加圧方向と磁場印加方向とがほぼ一致するいわゆる縦磁場成形法の両者を用いることができる。
磁場中成形により得られた成形体は、焼結部3において真空又は非酸化性ガス雰囲気中で焼結される。焼結条件は、組成、粉砕方法、平均粒径と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、900〜1200℃で1〜10時間程度焼結すればよい。
焼結により得られた焼結体は、次いで、熱処理部4において熱処理が施される。この熱処理により、希土類焼結磁石の保磁力を向上することができる。この熱処理としては、350℃以上焼結温度未満の温度で所定時間保持する。R−TM−B系焼結磁石の場合、この熱処理を2段に分けて行うことが有効である。
熱処理が施された焼結体(焼結磁石)は、所定形状、寸法にするために加工部5において種々の加工が施される。加工が施された焼結体は製品をなすか、または耐食性付与のための表面処理を施した後に製品をなす。ここで、加工は切断、研削、ラッピング、面取り等多様なものを含むが、本発明は研削により生成されるスラッジを再利用することを目的としている。
磁石製造システム10は、研削によって生成したスラッジを研削液と分離する分離部6を備えている。本発明において、分離部6における研削液とスラッジに分離する具体的な手段は問われない。例えば、スラッジと研削液の混合物を回収タンクに所定時間貯留した後に、ろ過手段にこの混合物を通すことにより研削液とスラッジに分離することができる。また、生成されたスラッジを連続的にろ過手段に通すことにより分離してもよい。
分離部6において研削液とスラッジに分離する手段は、ろ紙等のろ過手段、遠心分離機等の公知の手段を用いることができる。その他、磁力により研削液とスラッジに分離する手段であってもかなわない。なお、分離部6においてスラッジは研削液と分離されるが、通常、乾燥するまでにいたらない。そこで、スラッジは乾燥部7において乾燥される。
磁石製造システム10は、乾燥部7を備えている。乾燥部7は分離部6において研削液と分離されたスラッジを乾燥する。乾燥部7における乾燥の環境は問わない。ただし、酸素を多く含む環境下ではスラッジの酸化を助長するおそれがあるため、真空又は非酸化性雰囲気を実現できるエリアを備える設備で乾燥することが好ましい。また、乾燥の温度は前述した通りであり、乾燥部7は加熱手段を備えることもできる。
磁石製造システム10は、乾燥されたスラッジを一時的に保管する保管部8を備えている。保管部8は、磁場中成形部2で成形するに足りる量のスラッジが蓄積されるまでスラッジを保管する。保管部8としては、外気との接触を避けることのできる容器その他を用いることができる。所定量のスラッジが蓄積されたならば、磁場中成形部2において、磁石粉であるスラッジを磁場中成形する。磁場中成形で得られた成形体は、焼結部3にて焼結に供する。なお、本発明において、図2に示す磁石製造システム20のように、保管部8を設けることなく、乾燥部7から磁場中成形部2にスラッジを直接供給することもできる。
磁石製造システム10において、加工部5〜保管部8までの一連の処理をバッチ的に行うことができるが、連続的に行うこともできる。例えば、加工部5と分離部6との間にスラッジを連続的に搬送する搬送路を設けることにより、分離部6において研削液からスラッジを連続的に分離する。さらに、分離部6と乾燥部7との間にスラッジを搬送する搬送路を設けることにより、乾燥部7にスラッジを連続的に供給する。乾燥部7は供給されたスラッジを乾燥処理するが、乾燥処理は供給された順に終了することができる。したがって、乾燥部7と保管部8との間にスラッジを連続的に搬送する搬送路を設けることにより、乾燥されたスラッジを連続的に保管部8に供給することができる。以上により、スラッジを用いて効率よく焼結磁石を得ることができる。
以上説明した磁石製造システム10、20は、磁場中成形部2、焼結部3、熱処理部4及び加工部5を、新たな原料合金を用いて行う焼結磁石の製造と、スラッジを用いて行う焼結磁石の製造の共用としている。しかし、図3に示す磁石製造システム30のように、スラッジを用いて行う焼結磁石の製造専用に磁場中成形部21、焼結部31、熱処理部41及び加工部51を別途設けることもできる。
また、磁石製造システム10、20及び30は、スラッジを焼結磁石用の原料に用いるものであるが、図4に示す磁石製造システム40のように、スラッジと結合材としての樹脂とのコンパウンドを作製するコンパウンド作製部91、コンパウンド作製部91にて作製されたコンパウンドを例えば射出成形することによりボンド磁石を製造する射出成形部92を設けることもできる。
31wt%Nd−0.2wt%Al−0.5wt%Co−0.07wt%Cu−1.0wt%B−残部Feからなる合金をストリップ・キャスト法により作製した。得られたストリップ・キャスト合金に室温で水素を吸蔵させた後に、500℃の温度下で脱水素する水素吸蔵・脱水素処理を行った。
その後、スタンプミルによる粗粉砕、ジェットミルにより微粉砕を行って平均粒径4.0μmの粒径の微粉末を得た。なお、ジェットミルによる微粉砕を行う際に、オレイン酸アミドを0.1wt%添加した。
次いでこの微粉末を、15kOeの磁場を印加しつつ1.5t/cmの圧力で磁場中成形した。得られた成形体を1050℃で4時間保持することにより焼結した。次いで、得られた焼結体に800℃×1時間と530℃×2.5時間(ともにAr雰囲気中)の2段時効処理を施した。
以上のようにして得られたNd−Fe−B系焼結磁石の磁気特性は、残留磁束密度(Br)が13.5kG、保磁力(Hcj)が16.5kOeであった。
以上のNd−Fe−B系焼結磁石を所望の寸法にするためにバーティカル研削機を用いて加工を施した。研削液には防錆剤としてのトリエタノールアミン溶液を加えた水を使用した。
所望の寸法まで約2時間の加工を行い、加工の際に生じたスラッジを回収タンクに収容した。スラッジを研削液に浸漬状態で回収タンクにて保管し、加工終了から所定時間が経過した後に研削液と一緒に回収タンクから取り出した。取り出したスラッジをろ紙を用いてろ過することにより、研削液とスラッジとを分離した。さらに、スラッジを金属製バットに移し真空恒温槽にて120℃で2時間真空引きし、残った水分を蒸発させる乾燥処理を施した。
乾燥処理されたスラッジをVSM(振動試料型磁力計、印加磁界1.9T)にて測定し、磁気特性を評価した。また、スラッジの酸素量、炭素量を測定した。その結果を表1に示す。
Figure 0004702513
表1に示すように、研削終了から48時間で乾燥処理したスラッジは、磁気特性の低下の小さい磁性粉として使用可能である。研削終了から24時間で乾燥処理したスラッジは、研削直後と比べて磁気特性の低下がほとんど見られないことがわかる。
本実施の形態における磁石製造システムの構成を示すブロック図である。 本実施の形態における磁石製造システムの他の構成を示すブロック図である。 本実施の形態における磁石製造システムの他の構成を示すブロック図である。 本実施の形態における磁石製造システムの他の構成を示すブロック図である。
符号の説明
1…粉砕部、2,21…磁場中成形部、3,31…焼結部、4,41…熱処理部、5,51…加工部、6…分離部、7…乾燥部、8…保管部、91…コンパウンド作製部、92…射出成形部、10,20,30,40…磁石製造システム

Claims (2)

  1. 焼結磁石材料を研削加工して生成されたスラッジを研削液から分離するステップと、
    前記研削液から分離された前記スラッジを前記生成から24時間経過前に乾燥処理するステップと、
    乾燥処理された前記スラッジを磁石製造用原料として用い、所定形状に成形し、かつ磁場を印加して成形体を作製する磁場中成形ステップと、
    前記成形体を焼結して焼結磁石を得るステップと、を備えることを特徴とする焼結磁石の製造方法。
  2. 前記焼結磁石材料は、R−TM−B系焼結磁石材料(Rは希土類元素の1種又は2種以上、TMはFe、又はFe及びCo)であることを特徴とする請求項1に記載の焼結磁石の製造方法。
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