JP4702024B2 - 変速機の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、変速機の制御装置に関し、特に、運転者の操作がなされた場合に、変速機の変速比および変速機の変速比の変化範囲のうちのいずれか一方を変更することにより制御される変速機の制御装置に関する。
従来より、アクセル開度や車速に応じて自動で変速を行なう自動変速機が知られている。このような自動変速機の中には、運転者がシフトレバー等を操作することにより、運転者の意思でアップシフトやダウンシフトを行なうことができるマニュアルモードを備えたものがある。マニュアルモードによりアップシフトやダウンシフトを行なうことにより、運転者の嗜好が反映された変速比(変速段)で車両を走行させることができる。言い換えると、マニュアルモードにより変速が行なわれる理由の一つとして、自動で変速を行なうオートモードにおいてドライバの嗜好が反映されていないということがいえる。そのため、オートモードにおいてマニュアルモードによる変速傾向を反映し、ドライバの嗜好に近い変速を行なうことが好ましい。
特開平9−137860号公報(特許文献1)は、アップシフトとダウンシフトとの双方をドライバの好みに応じて制御することができる変速制御装置を開示する。特許文献1に記載の変速制御装置は、エンジンに連結され、運転者の操作により変速段を切換えるマニュアルモードと車両の運転状態に応じて自動的に変速段を切換えるオートモードのいずれか一方のモードで自動変速機を制御する。この変速制御装置は、マニュアルモードおよびオートモードの少なくとも一方における変速状態をパラメータとしてニューラルネットワークにより運転者の変速嗜好を反映した変速パターン学習を行なう学習部と、学習部からの出力およびオートモードでの車両の運転状態に基づき目標変速段を設定する目標変速段設定部と、目標変速段に基づき自動変速機の変速制御を行なう変速制御部とを含む。
この公報に記載の変速制御装置によると、マニュアルモードおよびオートモードの少なくとも一方における変速状態がパラメータとされてニューラルネットワークにより運転者の変速嗜好を反映した変速パターン学習が行われる。この学習による出力とオートモードでの車両の運転状態とに基づき目標変速段が設定される。これにより、自動変速機の変速制御を手動変速機の変速操作に近いものにできる。
特開平9−137860号公報
しかしながら、特開平9−137860号公報に記載の変速制御装置においては、運転者の変速嗜好はオートモード時においてのみ反映されているにすぎない。そのため、たとえば運転者が複数段のアップシフトやシフトダウンをマニュアルモード時において要求しているような場合には、運転者がシフトレバー等を複数回操作しなければならない。そのため、所望の変速段(変速比)まで変速を行なうためには、操作が煩雑になり、運転者に対する負荷が増大し得る。近年、自動変速機の多段化が進んでいるため、このような課題がより顕著になる。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、マニュアルモードで変速機の変速比を変更する場合における運転者の負荷を軽減することができる変速機の制御装置を提供することである。
第1の発明に係る変速機の制御装置は、運転者による操作がなされた場合に、変速機の変速比および変速機の変速比の変化範囲のうちのいずれか一方を、予め定められたパターンで変更することにより、変速機を制御するための制御手段と、運転者の操作傾向を検知するための傾向検知手段と、運転者の操作傾向に応じて、パターンを変更するための変更手段とを含む。
第1の発明によると、運転者による操作がなされた場合、変速機の変速比および変速機の変速比の変化範囲のうちのいずれか一方が、予め定められたパターンで変更される。このような変速機に対する運転者の操作傾向(アップシフト側への操作回数やダウンシフト側への操作回数)が検知され、検知された操作傾向に応じて、変速比や変速比の変化範囲の変更パターンが変更される。たとえば、運転者の操作毎に変速比や変速比の変化範囲が予め定められた値づつ(変速段で1段づつ)変更される状態において、運転者が予め定められた時間内に複数回アップシフト操作もしくはダウンシフト操作する傾向が検知された場合、運転者が変速比を大きく変更することを要求しているといえる。したがって、この場合、たとえば、運転者の操作による変速比や変速比の変化範囲の変更量がより多くなるように、変更パターンが変更される。逆に、運転者が予め定められ時間内にアップシフト操作とダウンシフト操作とを繰返す場合、運転者の操作による変速比や変速比の変化範囲の変更量が、運転者の好みよりも大きいと考えられる。したがって、この場合、たとえば、運転者の操作による変速比や変速比の変化範囲の変更量がより小さくなるように、変更パターンが変更される。これにより、運転者の意思により変速を行なうマニュアルモードにおいて、運転者が希望する変速比まで変速する際における運転者の操作回数を抑制することができる。そのため、操作が煩雑になることを抑制することができる。その結果、マニュアルモードで変速機の変速比を変更する場合における運転者の負荷を軽減することができる変速機の制御装置を提供することができる。
第2の発明に係る変速機の制御装置においては、第1の発明の構成に加え、変速機は、車両に搭載される。制御装置は、運転者の操作傾向を検知する際における車両の運転状態を検知するための状態検知手段をさらに含む。変更手段は、第1のタイミングにおける運転状態と、第1のタイミングの操作傾向と同じ操作傾向が検知された第2のタイミングにおける運転状態とを比較した結果に基づいて、パターンを変更するための手段を含む。
第2の発明によると、運転者の操作傾向を検知する際における車両の運転状態(アクセル開度、ステアリングホイールの舵角、車速、変速比、ブレーキ踏力等)が検知される。運転者の操作による変速比や変速比の変化範囲の変更パターンは、同じ操作傾向が検知された第1のタイミングおよび第2のタイミングにおける運転状態を比較した結果に基づいて変更される。たとえば、第1のタイミングにおける運転状態と第2のタイミングにおける運転状態が同じであったり、同等(検知された値の差が予め定められた範囲内)であったりした場合、運転者の操作による変速比や変速比の変化範囲の変更パターンが変更される。これにより、運転状態に応じたパターンで変速比や変速比の変化範囲を変更することができる。そのため、運転状態に対する運転者の嗜好を反映した変速を行なうことができる。
第3の発明に係る変速機の制御装置においては、第1の発明の構成に加え、変速機は、車両に搭載される。制御装置は、運転者の操作傾向を検知する際における車両の走行環境を検知するための環境検知手段をさらに含む。変更手段は、第1のタイミングにおける走行環境と、第1のタイミングの操作傾向と同じ操作傾向が検知された第2のタイミングにおける走行環境とを比較した結果に基づいて、パターンを変更するための手段を含む。
第3の発明によると、運転者の操作傾向を検知する際における車両の走行環境(勾配、車両周辺の他の車両の有無、道路の車線数、路面の摩擦係数、気圧、気温等)が検知される。運転者の操作による変速比や変速比の変化範囲の変更パターンは、同じ操作傾向が検知された第1のタイミングおよび第2のタイミングにおける走行環境を比較した結果に基づいて変更される。たとえば、第1のタイミングにおける走行環境と第2のタイミングにおける走行環境が同じであったり、同等(検知された値の差が予め定められた範囲内)であったりした場合、運転者の操作による変速比や変速比の変化範囲の変更パターンが変更される。これにより、走行環境に応じたパターンで変速比や変速比の変化範囲を変更することができる。そのため、走行環境に対する運転者の嗜好を反映した変速を行なうことができる。
第4の発明に係る変速機の制御装置は、第1〜3のいずれかの発明の構成に加え、変速機の現在の変速比および変速比の変化範囲のうちのいずれか一方を運転者に対して報知するための第1の報知手段と、運転者の操作による変更後の変速比および変速比の変化範囲のうちのいずれか一方を運転者に対して報知するための第2の報知手段とをさらに含む。
第4の発明によると、変速機の現在の変速比および変速比の変化範囲のうちのいずれか一方が運転者に対して報知される。また、運転者の操作による変更後の変速比および変速比の変化範囲のうちのいずれか一方が運転者に対して報知される。これにより、運転者が、現在の変速比の状態および操作後の変速比の状態を認識することができる。そのため、運転者が、変速比や変速比の変更範囲の変更パターンを認識し、操作に関して正確な判断をすることができる。
第5の発明に係る変速機の制御装置においては、第4の発明の構成に加え、第1の報知手段は、変速機の現在の変速比および変速比の変化範囲のうちのいずれか一方を表示する第1の表示部を含む。第2の報知手段は、運転者の操作による変更後の変速比および変速比の変化範囲のうちのいずれか一方を表示する第2の表示部とを含む。第1の表示部と第2の表示部とは隣接して設けられる。
第5の発明によると、変速機の現在の変速比および変速比の変化範囲のうちのいずれか一方と、運転者の操作による変更後の変速比および変速比の変化範囲のうちのいずれか一方とが隣接して表示される。これにより、運転者からの視認性を高めることができる。そのため、運転者がより容易に、現在の変速比の状態および操作後の変速比の状態を認識することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る制御装置を搭載した車両について説明する。この車両は、FF(Front engine Front drive)車両である。なお、FF以外の車両であってもよい。
車両は、エンジン1000と、オートマチックトランスミッション2000と、オートマチックトランスミッション2000の一部を構成するプラネタリギヤユニット3000と、オートマチックトランスミッション2000の一部を構成する油圧回路4000と、ディファレンシャルギヤ5000と、ドライブシャフト6000と、前輪7000と、ECU(Electronic Control Unit)8000とを含む。
エンジン1000は、インジェクタ(図示せず)から噴射された燃料と空気との混合気を、シリンダの燃焼室内で燃焼させる内燃機関である。燃焼によりシリンダ内のピストンが押し下げられて、クランクシャフトが回転させられる。
オートマチックトランスミッション2000は、トルクコンバータ3200を介してエンジン1000に連結される。オートマチックトランスミッション2000は、所望のギヤ段を形成することにより、クランクシャフトの回転数を所望の回転数に変速する。なお、ギヤ段を形成するオートマチックトランスミッションの代わりに、変速比を無段階に変更するCVT(Continuously Variable Transmission)を搭載するようにしてもよい。さらに、アクチュエータにより変速される常時噛合式歯車からなる自動変速機を搭載するようにしてもよい。
オートマチックトランスミッション2000の出力ギヤは、ディファレンシャルギヤ5000と噛合っている。ディファレンシャルギヤ5000にはドライブシャフト6000がスプライン嵌合などによって連結される。ドライブシャフト6000を介して、左右の前輪7000に動力が伝達される。
ECU8000には、車速センサ8002と、シフトレバー8004のポジションスイッチ8006と、アクセルペダル8008のアクセル開度センサ8010と、ブレーキペダル8012の踏力センサ8014と、電子スロットルバルブ8016のスロットル開度センサ8018と、エンジン回転数センサ8020と、入力軸回転数センサ8022と、出力軸回転数センサ8024と、油温センサ8026とがハーネスなどを介して接続されている。
さらに、ECU8000には、ステアリングホイール8028のステアリングセンサ8030と、レーダ8032と、ナビゲーション装置8034と、気圧センサ8036と、気温センサ8038とがハーネスなどを介して接続されている。
車速センサ8002は、車輪の回転数から車両の速度を検知し、検知結果を表す信号をECU8000に送信する。また、ECU8000は、各車輪の回転数差等から、路面の摩擦係数を推定する。
シフトレバー8004の位置は、ポジションスイッチ8006により検知され、検知結果を表す信号がECU8000に送信される。オートマッチクトランスミッション2000の変速モードにオートモードが選択されている場合には、シフトレバー8004の位置に対応して、オートマチックトランスミッション2000のギヤ段が自動で形成される。
また、マニュアルモードが選択されている場合には、運転者がシフトレバー8004を操作することにより、運転者の意思で、アップシフトもしくはダウンシフトが行なわれる。すなわち、マニュアルモードにおいては、シフトレバー8004を操作することにより、運転者がギヤ段を選択することができる。
シフトレバー8004を1回だけ操作することにより形成されるギヤ段(マニュアルモードの変速パターン)は、車両の運転状態(アクセル開度、ステアリングホイールの舵角、車速、ギヤ段、ブレーキ踏力等)および車両の走行環境(道路勾配、周辺の他車の有無や位置、走行中の道路の車線数、路面の摩擦係数、気圧、気温等)毎に予め定められる。
さらに、シフトレバー8004を1回だけ操作することにより形成されるギヤ段は、後述するように、運転者による操作傾向(予め定められた時間内におけるアップシフト側への操作回数やダウンシフト側への操作回数等)に基づいて変更(学習)される。
なお、アップシフトやダウンシフトを行なうことによりギヤ段を選択する代わりに、変速レンジ(自動で形成され得るギヤ段の範囲)を選択するようにしてもよい。また、シフトレバー8004の代わりにもしくは加えて、ステアリングホイール8028およびその近傍に設けられたスイッチを操作することにより、アップシフトもしくはダウンシフトが行なわれるようにしてもよい。
アクセル開度センサ8010は、アクセルペダル8008の開度を検知し、検知結果を表す信号をECU8000に送信する。踏力センサ8014は、ブレーキペダル8012の踏力を検知し、検知結果を表す信号をECU8000に送信する。
スロットル開度センサ8018は、アクチュエータにより開度が調整される電子スロットルバルブ8016の開度を検知し、検知結果を表す信号をECU8000に送信する。電子スロットルバルブ8016により、エンジン1000に吸入される空気量(エンジン1000の出力)が調整される。
エンジン回転数センサ8020は、エンジン1000の出力軸(クランクシャフト)の回転数を検知し、検知結果を表す信号をECU8000に送信する。入力軸回転数センサ8022は、オートマチックトランスミッション2000の入力軸回転数NIを検知し、検知結果を表す信号をECU8000に送信する。出力軸回転数センサ8024は、オートマチックトランスミッション2000の出力軸回転数NOを検知し、検知結果を表す信号をECU8000に送信する。
油温センサ8026は、オートマチックトランスミッション2000の作動や潤滑に用いられるオイル(ATF:Automatic Transmission Fluid)の温度(油温)を検知し、検知結果を表す信号をECU8000に送信する。
ステアリングセンサ8030は、ステアリングホイール8028の舵角を検知し、検知結果を表す信号をECU8000に送信する。レーダ8032は、車両の周囲(前後左右等)を走行中の他の車両の有無を検知し、検知結果を表す信号をECU8000に送信する。レーダ8082には、たとえばミリ波レーダ等が用いられる。
ナビゲーション装置8034は、ECU8000に対して、車両の現在地と、車両が走行している道路の勾配、および車線数の情報を表す信号を送信する。なお、Gセンサ等、その他の装置を用いて道路の勾配を検知するようにしてもよい。また、道路上のインフラから送信される信号により、道路の勾配や車線数を検知するようにしてもよい。
気圧センサ8036は、大気圧を検知し、検知結果を表す信号をECU8000に送信する。気温センサ8038は、外気温を検知し、検知結果を表す信号をECU8000に送信する。
ECU8000は、これらのセンサなどから送られてきた信号、ROM(Read Only Memory)に記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、車両が所望の走行状態となるように、機器類を制御する。
本実施の形態において、ECU8000は、1速〜6速ギヤ段のうちのいずれかのギヤ段が形成されるように、オートマチックトランスミッション2000を制御する。1速〜6速ギヤ段のうちのいずれかのギヤ段が形成されることにより、オートマチックトランスミッション2000は前輪7000に駆動力を伝達し得る。なお、形成し得るギヤ段の数は「6」に限られず、その他、「7」や「8」であってもよい。
オートマチックトランスミッション2000のギヤ段は、図2に示すように、インストルメントパネルのコンビネーションメータ9000内に設けられたディスプレイ9100に表示される。
ディスプレイ9100は、3つのディスプレイから構成される。ディスプレイ(1)9101は、現在形成されているギヤ段を表示する。ディスプレイ(2)9102は、マニュアルモードにおいて、シフトレバー8004が1回だけアップシフト側に操作された場合に形成されるギヤ段を表示する。ディスプレイ(3)9103は、マニュアルモードにおいて、シフトレバー8004が1回だけダウンシフト側に操作された場合に形成されるギヤ段を表示する。
ディスプレイ(2)9102およびディスプレイ(3)9103は、ディスプレイ(1)9101に隣接して設けられる。ディスプレイ(1)9101は、ディスプレイ(2)9102およびディスプレイ(3)9103に挟まれるように設けられる。なお、3つのディスプレイの配置はこれに限らない。
ディスプレイ9100は、ECU8000により制御される。すなわち、ディスプレイ(1)9101〜ディスプレイ(3)9103に表示されるギヤ段は、ECU8000により決定される。
図3を参照して、プラネタリギヤユニット3000について説明する。プラネタリギヤユニット3000は、クランクシャフトに連結された入力軸3100を有するトルクコンバータ3200に接続されている。プラネタリギヤユニット3000は、遊星歯車機構の第1セット3300と、遊星歯車機構の第2セット3400と、出力ギヤ3500と、ギヤケース3600に固定されたB1ブレーキ3610、B2ブレーキ3620およびB3ブレーキ3630と、C1クラッチ3640およびC2クラッチ3650と、ワンウェイクラッチF3660とを含む。
第1セット3300は、シングルピニオン型の遊星歯車機構である。第1セット3300は、サンギヤS(UD)3310と、ピニオンギヤ3320と、リングギヤR(UD)3330と、キャリアC(UD)3340とを含む。
サンギヤS(UD)3310は、トルクコンバータ3200の出力軸3210に連結されている。ピニオンギヤ3320は、キャリアC(UD)3340に回転自在に支持されている。ピニオンギヤ3320は、サンギヤS(UD)3310およびリングギヤR(UD)3330と噛合している。
リングギヤR(UD)3330は、B3ブレーキ3630によりギヤケース3600に固定される。キャリアC(UD)3340は、B1ブレーキ3610によりギヤケース3600に固定される。
第2セット3400は、ラビニヨ型の遊星歯車機構である。第2セット3400は、サンギヤS(D)3410と、ショートピニオンギヤ3420と、キャリアC(1)3422と、ロングピニオンギヤ3430と、キャリアC(2)3432と、サンギヤS(S)3440と、リングギヤR(1)(R(2))3450とを含む。
サンギヤS(D)3410は、キャリアC(UD)3340に連結されている。ショートピニオンギヤ3420は、キャリアC(1)3422に回転自在に支持されている。ショートピニオンギヤ3420は、サンギヤS(D)3410およびロングピニオンギヤ3430と噛合している。キャリアC(1)3422は、出力ギヤ3500に連結されている。
ロングピニオンギヤ3430は、キャリアC(2)3432に回転自在に支持されている。ロングピニオンギヤ3430は、ショートピニオンギヤ3420、サンギヤS(S)3440およびリングギヤR(1)(R(2))3450と噛合している。キャリアC(2)3432は、出力ギヤ3500に連結されている。
サンギヤS(S)3440は、C1クラッチ3640によりトルクコンバータ3200の出力軸3210に連結される。リングギヤR(1)(R(2))3450は、B2ブレーキ3620により、ギヤケース3600に固定され、C2クラッチ3650によりトルクコンバータ3200の出力軸3210に連結される。また、リングギヤR(1)(R(2))3450は、ワンウェイクラッチF3660に連結されており、1速ギヤ段の駆動時に回転不能となる。
ワンウェイクラッチF3660は、B2ブレーキ3620と並列に設けられる。すなわち、ワンウェイクラッチF3660のアウターレースはギヤケース3600に固定され、インナーレースはリングギヤR(1)(R(2))3450に回転軸を介して連結される。
図4に、各変速ギヤ段と、各クラッチおよび各ブレーキの作動状態との関係を表した作動表を示す。この作動表に示された組み合わせで各ブレーキおよび各クラッチを作動させることにより、1速〜6速の前進ギヤ段と、後進ギヤ段が形成される。
図5を参照して、油圧回路4000の要部について説明する。なお、油圧回路4000は、以下に説明するものに限られない。
油圧回路4000は、オイルポンプ4004と、プライマリレギュレータバルブ4006と、マニュアルバルブ4100と、ソレノイドモジュレータバルブ4200と、SL1リニアソレノイド(以下、SL(1)と記載する)4210と、SL2リニアソレノイド(以下、SL(2)と記載する)4220と、SL3リニアソレノイド(以下、SL(3)と記載する)4230と、SL4リニアソレノイド(以下、SL(4)と記載する)4240と、SLTリニアソレノイド(以下、SLTと記載する)4300と、B2コントロールバルブ4500とを含む。
オイルポンプ4004は、エンジン1000のクランクシャフトに連結されている。クランクシャフトが回転することにより、オイルポンプ4004が駆動し、油圧を発生する。オイルポンプ4004で発生した油圧は、プライマリレギュレータバルブ4006により調圧され、ライン圧が生成される。
プライマリレギュレータバルブ4006は、SLT4300により調圧されたスロットル圧をパイロット圧として作動する。ライン圧は、ライン圧油路4010を介してマニュアルバルブ4100に供給される。
マニュアルバルブ4100は、ドレンポート4105を含む。ドレンポート4105から、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104の油圧が排出される。マニュアルバルブ4100のスプールがDポジションにある場合、ライン圧油路4010とDレンジ圧油路4102とが連通させられ、Dレンジ圧油路4102に油圧が供給される。このとき、Rレンジ圧油路4104とドレンポート4105とが連通させられ、Rレンジ圧油路4104のRレンジ圧がドレンポート4105から排出される。
マニュアルバルブ4100のスプールがRポジションにある場合、ライン圧油路4010とRレンジ圧油路4104とが連通させられ、Rレンジ圧油路4104に油圧が供給される。このとき、Dレンジ圧油路4102とドレンポート4105とが連通させられ、Dレンジ圧油路4102のDレンジ圧がドレンポート4105から排出される。
マニュアルバルブ4100のスプールがNポジションにある場合、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104の両方と、ドレンポート4105とが連通させられ、Dレンジ圧油路4102のDレンジ圧およびRレンジ圧油路4104のRレンジ圧がドレンポート4105から排出される。
Dレンジ圧油路4102に供給された油圧は、最終的には、B1ブレーキ3610、B2ブレーキ3620、C1クラッチ3640およびC2クラッチ3650に供給される。Rレンジ圧油路4104に供給された油圧は、最終的には、B2ブレーキ3620に供給される。
ソレノイドモジュレータバルブ4200は、ライン圧を元圧とし、SLT4300に供給する油圧(ソレノイドモジュレータ圧)を一定の圧力に調圧する。
SL(1)4210は、C1クラッチ3640に供給される油圧を調圧する。SL(2)4220は、C2クラッチ3650に供給される油圧を調圧する。SL(3)4230は、B1ブレーキ3610に供給される油圧を調圧する。SL(4)4240は、B3ブ
レーキ3630に供給される油圧を調圧する。
SLT4300は、アクセル開度センサ8010により検知されたアクセル開度に基づいたECU8000からの制御信号に応じて、ソレノイドモジュレータ圧を調圧し、スロットル圧を生成する。スロットル圧は、SLT油路4302を介して、プライマリレギュレータバルブ4006に供給される。スロットル圧は、プライマリレギュレータバルブ4006のパイロット圧として利用される。
SL(1)4210、SL(2)4220、SL(3)4230、SL(4)4240、およびSLT4300は、ECU8000から送信される制御信号により制御される。
B2コントロールバルブ4500は、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104のいずれか一方からの油圧を選択的に、B2ブレーキ3620に供給する。B2コントロールバルブ4500に、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104が接続されている。B2コントロールバルブ4500は、SLソレノイドバルブ(図示せず)およびSLUソレノイドバルブ(図示せず)から供給された油圧とスプリングの付勢力とにより制御される。
SLソレノイドバルブがオフで、SLUソレノイドバルブがオンの場合、B2コントロールバルブ4500は、図5において左側の状態となる。この場合、B2ブレーキ3620には、SLUソレノイドバルブから供給された油圧をパイロット圧として、Dレンジ圧を調圧した油圧が供給される。
SLソレノイドバルブがオンで、SLUソレノイドバルブがオフの場合、B2コントロールバルブ4500は、図4において右側の状態となる。この場合、B2ブレーキ3620には、Rレンジ圧が供給される。
図6を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECU8000が実行するプログラムの制御構造について説明する。
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、ECU8000は、オートマチックトランスミッション2000の変速モードに、マニュアルモードが選択されているか否かを判別する。マニュアルモードが選択されていると(S100にてYES)、処理はS110に移される。もしそうでないと(S100にてNO)、この処理は終了する。
S110にて、ECU8000は、アップシフトもしくはダウンシフトを行なうために、シフトレバー8004が予め定められた時間内に複数回操作されたか否かを判別する。シフトレバー8004が予め定められた時間内に複数回操作されると(S110にてYES)、処理はS120に移される。もしそうでないと(S110にてNO)、処理はS300に移される。
S120にて、ECU8000は、シフトレバー8004が複数回操作された際の、運転者の操作傾向(アップシフト操作の回数やダウンシフト操作の回数)、車両の運転状態(アクセル開度、ステアリングホイールの舵角、車速、ギヤ段、ブレーキ踏力等)、車両の走行環境(道路勾配、周辺の他車の有無や位置、走行中の道路の車線数、路面の摩擦係数、気圧、気温等)を検知する。検知された操作傾向、運転状態および走行環境は、ECU8000のメモリ(図示せず)に記憶される。
S130にて、ECU8000は、同じ操作傾向での変速が過去に行なわれたか否かを判別する。同じ操作傾向での変速が過去に行なわれていると(S130にてYES)、処理はS140に移される。もしそうでないと(S130にてNO)、処理はS300に移される。
S140にて、ECU8000は、今回の複数回操作時における運転状態および走行環境と、過去の複数回操作時における運転状態および走行環境とが同じもしくは同等であるか否かを判別する。ここで、運転状態や走行環境が同等であるとは、運転状態や走行環境を示すパラメータとして検知された値の差が、予め定められた範囲内であることをいう。
今回の複数回操作時における運転状態および走行環境と、過去の複数回操作時における運転状態および走行環境とが同じもしくは同等であると(S140にてYES)、処理はS200に移される。もしそうでないと(S140にてNO)、処理はS300に移される。
S200にて、ECU8000は、今回の複数操作時と同じ運転状態および走行環境において、シフトレバー8004を1回だけ操作することにより形成されるギヤ段を、シフトレバー8004への操作が複数回なされることにより形成されたギヤ段に変更する。すなわち、シフトレバー8004を1回だけ操作することにより行なわれるマニュアルモードの変速パターンが変更される。その後、この処理は終了する。
S300にて、ECU8000は、シフトレバー8004を1回だけ操作することにより形成されるギヤ段の設定を維持する。なお、初期状態において、シフトレバー8004を1回だけアップシフト側に操作することにより変速されるギヤ段は、現在のギヤ段よりも1段だけ高速側のギヤ段に設定される。同様に、1回だけダウンシフト側に操作することにより変速されるギヤ段は、現在のギヤ段よりも1段だけ低速側のギヤ段に設定される。その後、この処理は終了する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る制御装置であるECU8000の動作について説明する。なお、現時点では、シフトレバー8004を1回だけ操作することにより形成されるギヤ段の設定は、初期状態であると想定する。
運転者の意思によりオートマチックトランスミッション2000を変速させるために、マニュアルモード2000が選択されている状態において(S100にてYES)、予め定められた時間内のシフトレバー8004の操作が1回だけであると(S110にてNO)、1段だけ変速することにより運転者が要求するギヤ段が形成されたといえる。この場合、シフトレバー8004を1回だけ操作した場合に形成されるギヤ段(マニュアルモードの変速パターン)を変更する必要がないため、設定が維持される(S300)。
一方、1段だけ変速するのみでは、運転者が要求するギヤ段が形成されていなければ、運転者は、連続して複数回シフトレバー8004を操作する(S110にてYES)。この場合、シフトレバー8004が複数回操作された際の、運転者の操作傾向(アップシフト操作の回数やダウンシフト操作の回数)、車両の運転状態(アクセル開度、ステアリングホイールの舵角、車速、ギヤ段、ブレーキ踏力等)、車両の走行環境(道路勾配、周辺の他車の有無や位置、走行中の道路の車線数、路面の摩擦係数、気圧、気温等)が検知される(S120)。
同じ操作傾向での変速が過去に行なわれており(S130にてYES)、今回の操作時における運転状態および走行環境と、過去の操作時における運転状態および走行環境とが同じもしくは同等であると(S140にてYES)、その運転状態および走行環境において、運転者が複数段の変速を嗜好しているといえる。
そこで、この場合は、今回の複数操作時における運転状態および走行環境におけるシフトレバー8004を1回だけ操作することにより形成されるギヤ段が、シフトレバー8004への操作が複数回なされることにより形成されたギヤ段に変更される(S200)。
たとえば、5速ギヤ段が形成されている場合に、シフトレバー8004がダウンシフト側に2回操作されているとすると、シフトレバー8004を1回だけ操作することにより5速ギヤ段からダウンシフトされて形成されるギヤ段が、4速ギヤ段から3速ギヤ段に変更される。
また、たとえば、3速ギヤ段が形成されている場合に、シフトレバー8004がアップシフト側に3回操作されているとすると、シフトレバー8004を1回だけ操作することにより3速ギヤ段からアップシフトされて形成されるギヤ段が、4速ギヤ段から6速ギヤ段に変更される。
さらに、たとえば、シフトレバー8004を1回だけ操作することにより、4速ギヤ段から6速ギヤ段に変速するように変速パターンが変更された後において、4速ギヤ段から5速ギヤ段への変速が嗜好されるようになった場合、シフトレバー8004がアップシフト側に1回操作された後、ダウンシフト側の1回操作されることが考えられる。この場合、4速ギヤ段が形成されている場合に、シフトレバー8004をアップシフト側に1回だけ操作することにより4速ギヤ段からアップシフトされて形成されるギヤ段が、6速ギヤ段から5速ギヤ段に変更される。
これにより、所望のギヤ段まで複数回シフトレバー8004を操作する必要があったところ、1回の操作で所望のギヤ段までの変速を行なうことができる。そのため、運転者が要求するギヤ段が形成されるまでの操作回数を抑制することができる。その結果、操作が煩雑になることを抑制し、運転者に対する負荷を低減することができる。
このとき、同じ操作傾向での変速が、同じもしくは同等の運転状態および走行環境において行なわれていることを前提として、その運転状態および走行環境においてシフトレバー8004を1回だけ操作することにより形成されるギヤ段が変更される。
これにより、シフトレバー8004を操作することによる変速パターンを、運転状態および走行環境に対応して設定することができる。そのため、運転状態および走行環境に対する運転者の嗜好を反映させて、マニュアルモード時の変速を行なうことができる。
さらに、このとき、現在形成されているギヤ段、シフトレバー8004が1回だけアップシフト側に操作された場合に形成されるギヤ段およびシフトレバー8004が1回だけダウンシフト側に操作された場合に形成されるギヤ段は、近接してディスプレイ9000に表示される。そのため、運転者が、現在のギヤ段やシフトレバー8004を操作することにより形成されるギヤ段を容易に認識することができる。そのため、運転者が、シフトレバー8004を操作することによる変速の要否に関して、正確な判断をすることができる。
一方、同じ操作傾向での変速が過去に行なわれていなかったり(S130にてNO)、今回の操作時における運転状態および走行環境と、過去の操作時における運転状態および走行環境とが同じもしくは同等でないと(S140にてNO)、運転者が複数段の変速を嗜好しているということができない。
これらの場合(S130にてNO、S140にてNO)、シフトレバー8004を1回だけ操作することにより形成されるギヤ段の設定が維持される(S300)。これにより、必要以上にマニュアルモードの変速パターンが変更されることを抑制することができる。
以上のように、本実施の形態に係る制御装置であるECUによれば、同じもしくは同等の運転状態および走行環境において、マニュアルモード時におけるシフトレバーの複数回操作による変速が、同じ操作傾向で過去に行なわれていると、その運転状態および走行環境においてシフトレバーを1回だけ操作することにより形成されるギヤ段が変更される。シフトレバーを1回だけ操作することにより形成されるギヤ段は、シフトレバーへの操作が複数回なされることにより形成されたギヤ段に変更される。これにより、運転者が要求するギヤ段が形成されるまでの操作回数を抑制することができる。そのため、操作が煩雑になることを抑制し、運転者に対する負荷を軽減することができる。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の実施の形態に係る制御装置であるECUにより制御されるパワートレーンを示す概略構成図である。 インストルメントパネルのコンビネーションメータを示す図である。 オートマチックトランスミッションにおけるギヤトレーンを示すスケルトン図である。 オートマチックトランスミッションの作動表を示す図である。 オートマチックトランスミッションにおける油圧回路の要部を示す図である。 本発明の実施の形態に係る制御装置であるECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
符号の説明
1000 エンジン、2000 オートマチックトランスミッション、3000 プラネタリギヤユニット、3200 トルクコンバータ、4000 油圧回路、5000 ディファレンシャルギヤ、6000 ドライブシャフト、7000 前輪、8000 ECU、8002 車速センサ、8004 シフトレバー、8006 ポジションスイッチ、8008 アクセルペダル、8010 アクセル開度センサ、8012 ブレーキペダル、8014 踏力センサ、8016 電子スロットルバルブ、8018 スロットル開度センサ、8020 エンジン回転数センサ、8022 入力軸回転数センサ、8024 出力軸回転数センサ、8026 油温センサ、8028 ステアリングホイール、8030 ステアリングセンサ、8032 レーダ、8034 ナビゲーション装置、8036 気圧センサ、8038 気温センサ、9000 コンビネーションメータ、9100 ディスプレイ、9101 ディスプレイ(1)、9102 ディスプレイ(2)、9103 ディスプレイ(3)。

Claims (4)

  1. 車両に搭載された変速機の制御装置であって、
    運転者による操作がなされた場合に、前記変速機の変速比および前記変速機の変速比の変化範囲のうちのいずれか一方を、予め定められたパターンで変更することにより、前記変速機を制御するための制御手段と、
    運転者の操作傾向を検知するための傾向検知手段と、
    運転者の操作傾向に応じて、前記パターンを変更するための変更手段と
    運転者の操作傾向を検知する際における前記車両の運転状態を検知するための状態検知手段とを含み、
    前記変更手段は、第1のタイミングにおける運転状態と、前記第1のタイミングの操作傾向と同じ操作傾向が検知された第2のタイミングにおける運転状態とを比較した結果に基づいて、前記パターンを変更するための手段を含む、変速機の制御装置。
  2. 記制御装置は、運転者の操作傾向を検知する際における前記車両の走行環境を検知するための環境検知手段をさらに含み、
    前記変更手段は、第1のタイミングにおける走行環境と、前記第1のタイミングの操作傾向と同じ操作傾向が検知された第2のタイミングにおける走行環境とを比較した結果に基づいて、前記パターンを変更するための手段を含む、請求項1に記載の変速機の制御装置。
  3. 前記制御装置は、
    前記変速機の現在の変速比および変速比の変化範囲のうちのいずれか一方を運転者に対して報知するための第1の報知手段と、
    運転者の操作による変更後の変速比および変速比の変化範囲のうちのいずれか一方を運転者に対して報知するための第2の報知手段とをさらに含む、請求項1または2に記載の変速機の制御装置。
  4. 前記第1の報知手段は、前記変速機の現在の変速比および変速比の変化範囲のうちのいずれか一方を表示する第1の表示部を含み、
    前記第2の報知手段は、運転者の操作による変更後の変速比および変速比の変化範囲のうちのいずれか一方を表示する第2の表示部とを含み、
    前記第1の表示部と前記第2の表示部とは隣接して設けられる、請求項に記載の変速機の制御装置。
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