JP4700825B2 - 光学式エンコーダ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回折格子を利用した光学式エンコーダに関し、特にその光学系の構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
回折格子を利用した光学式エンコーダが知られている。光学式エンコーダのうち、3格子型と呼ばれるものは、干渉縞を形成する二つの格子と、干渉縞に対して相対移動する格子を有している。この移動する格子を通過した光を受光し、この受光光量を計測し、光量の変化に基づき格子の相対移動量が算出される。3格子型の場合、使用する光には可干渉性は必要としない。すなわち平行光である必要はなく、少なくとも各格子を通過した後、受光素子まで到達すれば十分である。
【0003】
受光素子は、フォトダイオードあるいはフォトトランジスタが用いられ、受光した光量に応じた信号を出力する。また、受光素子そのものを格子状に形成し、前記相対移動する格子を兼ねる構成も知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述の受光素子は、その受光面積にほぼ比例して浮遊容量、接合容量が増加するという特性がある。よって、受光面積が大きくなると、負荷となる容量が増加し、応答周波数が低下する。一方、受光面積を小さくすると、受光光量が低下し、出力信号が小さくなる。信号低下を光源の輝度を高めることで補うと、光源の発熱、寿命の低下などの問題が生じる。
【0005】
本発明は、前述の課題を解決するためになされたものであり、光源の輝度を高めることなく、受光素子を小型化することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段および作用】
前述の課題を解決するために、本発明に係る光学式エンコーダは、格子により形成された干渉縞と、干渉縞と相対移動する格子を通過した光の量に基づき格子の相対移動量を算出する、光学式エンコーダであって、発光素子と受光素子を背中合わせに一体とした光学素子と、前記光学素子の発光素子側に配置され、発光素子からの光を平行光よりも集光して前記光学素子の受光素子側に向けて反射する凹面鏡と、前記光学素子の受光素子側に配置された透過格子と、透過格子と相対移動し、反射面が格子状に形成された反射格子とを有し、凹面鏡によって反射され、受光素子側に向けて照射された発光素子からの光は、透過格子を通過し、反射格子により反射されて、再度透過格子を通過して受光素子へと集光される。
【0007】
さらに、前記光学素子は、背中合わせに一体とした発光素子と受光素子を透光性材料により鋳ぐるみ、この透光性材料の発光素子側の表面を反射層が形成された凸面として凹面鏡とすることができる
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。図1は、本発明の参考形態の光学式エンコーダの概略構成図である。スケール10の表面は、反射率の高い材料で構成され、この上に反射率の低い材料が格子状に配置されている。したがって、スケール10の表面には、格子状の鏡が形成されたことになり、以下これを反射格子12と記す。スケール10に対して、その格子の配列方向に移動可能なスライダ14が配置されている。スライダ14は、光源16、凸レンズ18、格子20、受光素子22が配置されている。光源16は点光源であり、ここから発せられた光は、凸レンズ18により少なくとも平行光より集光する光束となり、格子20に達し、さらにこれを通過して反射格子12に達する。格子20は、光束を通過させるので、以後、この格子を透過格子20と記す。反射格子12で反射した光は、再び透過格子20に達し、これを通過して受光素子22に到達する。
【0012】
図2には、図1の光学式エンコーダに等価な光学系が示されている。すなわち、図1において、反射格子12で折り返された系を展開した状態が、図2に表されている。したがって、反射格子12の前後に透過格子20が現れ、これらを区別するため、反射格子12より光源側の透過格子に符号20aを、他方に符号20bを付して説明する。光源16より発した光は、凸レンズ18により、受光素子22に集光する光束となる。この凸レンズ18を通過した光束は、好ましくは、集光された光束の照射範囲が、ほぼ受光素子に一致するように、その配光が設定される。さらに好ましくは、凸レンズ18の焦点に受光素子22が配置される。光源側の二つの格子、すなわち透過格子20aと反射格子12により、透過格子20bの配置される位置に干渉縞が形成される。この干渉縞は、反射格子12が、透過格子20a,20bを含む他の構成に対し、格子配列方向に相対移動するのに応じて移動する。したがって、反射格子12の移動によって、透過格子20bを通過して受光素子22に達する光の光量が変化する。この変化の増減を計数することにより、反射格子12の相対移動量、すなわちスケール10に対するスライダ14の相対移動量が算出される。
【0013】
この参考形態において、凸レンズ18が、光源16からの光を平行光よりも集光する集光光学系を形成する。集光により、受光素子の受光光量が増加し、受光素子を小型とすることができる。
【0014】
図3には、図2の光源16の代わりに略平行光を出射する光源24を用いた参考形態が示されている。反射格子12、透過格子20および受光素子22の構成は図1および図2に示された参考形態と同様の構成である。光源24が略平行光を出射することにより、図2に示される凸レンズ18より直径の小さいレンズを使用することができる。これにより、図1および2の構成と同等の効果を得ることができる上に、より装置を小型とすることができる。
【0015】
図4には、前述の凸レンズ18,26に代えて、ボールレンズ28を用いた光学式エンコーダの参考形態が記載されている。この参考形態においては、図1の参考形態の光源16が前述した略平行光を出射する光源24に、また凸レンズ18がボールレンズ28に代替されたスライダ30を用いている。その他の構成は、前述した構成と同様であり、同一の符号を付して説明を省略する。図5は、図4の光学式エンコーダと等価の光学系が示されている。すなわち、図4において反射格子12で折り返された系を展開した状態が図5に示されている。略平行光源24を用いることで、ボールレンズ28の直径が抑えられ、装置が大型化するのを防止している。また、ボールレンズ28は、基板32、例えば透過格子20が設けられた基板上に固定される。基板32には、図6に示されるように環状に凸条34が形成されており、ボールレンズ28は、ここに載置される。ボールレンズ28は、球面対称であるので、通常の凸レンズとは異なり、所定位置に載置することで、光軸を合わせることができる。すなわち、光軸を合わせるための工程を設ける必要がなく、組立工程が簡略化される。
【0016】
図7には、本発明にかかる光学式エンコーダの実施形態が記載されている。前述の参考形態と同様の構成には、同一符号を付しその説明を省略する。スライダ36は、スケール10に対して、スケール10上に形成された反射格子12の配列方向に移動可能である。スライダ36には、光源としての発光素子38と、反射格子12で反射後、透過格子20を透過した光を受光する受光部としての受光素子40が設けられている。発光素子38と受光素子40は、背中合わせに一体に設けられ、受光素子40がスケール10に面するように配置されている。発光素子38の側には、凹面鏡42が配置され、発光素子からの光をスケール10に向けて反射する。この反射光は、少なくとも平行光より集光する光束となるように設定される。また、この光束が照射する範囲は、受光素子40とほぼ一致することが好ましい。さらに、この凹面鏡42の焦点が受光素子40上に設定されることも好ましい。
【0017】
図8には、図7の光学式エンコーダに等価な光学系が示されている。すなわち、図7において、反射格子12で折り返された系を展開した状態が、図8に表されている。凹面鏡42の反射面の形状は、回転楕円体の表面の一部となっている。この図においては分離して示されている発光素子38と受光素子40は、前記回転楕円体表面の対をなす二つの焦点に各々配置されている。この構成により、光源を薄型とすることができる。
【0018】
図9には、発光素子38と受光素子40と凹面鏡の他の構成が示されている。表面上に透過格子20が構成された基板44上に、互いに背中合わせとなるように発光素子38と受光素子40が配置される。これらは、透明または透光性の材料の鋳込み材46で覆われている。この材料はエポキシ樹脂などとすることができる。鋳込み材46の、基板44と反対側の表面は、凸形状となっており、ここにはアルミニウム、クロムなどの金属を蒸着した反射層48が形成されている。したがって、発光素子38にとっては、鋳込み材46の表面は凹面鏡となり、発光素子38、受光素子40と共に一体型光学素子を構成する。前述の透過格子20は、この一体型光学素子の受光素子40側に位置することになる。凹面鏡の形状は、図7と同様に、平行光より集光する光束を形成するものとする。さらに、この光束の照射範囲が受光素子40とほぼ一致することも好ましい。さらに、凹面鏡の焦点が受光素子40上に設定されることも好ましい。
【0019】
図10には、一体型光学素子のさらに他の構成が示されている。図10においては、透過格子20が基板44の受光素子40側に形成されている。また、発光素子38と受光素子40は、互いに背中合わせとされ、透過格子20から所定の間隔を開けて配置される。したがって、透過格子20は一体型光学素子の受光素子側に位置することになる。その他の構成については、図9と同様であり説明を省略する。
【0020】
なお、図9および図10に示した光学要素を用いた光学式エンコーダの光学系は、図8と全く同様となる。
【0021】
図9および図10の構成によれば、凹面鏡を形成したことにより、発光素子38の発する光を効率よく受光素子40に導くことができるので、受光素子40を小型とすることができる。これとは逆に、発光素子38の発光量を減少させる、すなわち発光素子38に流す電流を低減させることができる。電流が少なくなることによって、発光素子の発熱量が低下するため、発光素子38を本実施形態のように鋳込んだとしても、鋳込み材46が過熱により変形したり、損傷したりすることを防止することができる。
【0022】
図11は、光学式エンコーダのスケールに付着した汚れの影響を説明するための図である。光源100から発した光はレンズ102により集光されて受光素子104に向かう。この経路上にスケール106が置かれている。スケール106の表面には、干渉縞を形成するための第1の格子108が形成されている。干渉縞が形成される領域には、スケール106の延びる方向に対して相対移動する第2の格子110が配置される。干渉縞と第2の格子110の相対位置によって、ここを通過する光の量が変化し、この変化が受光素子104により検出され、移動量が算出される。
【0023】
前述のように、光源100からの光は、レンズ102により集光されているため、受光素子104に入射する光の通過する範囲は、第1の格子108、第2の格子110で異なることになる。すなわち、第1の格子108を通過する範囲W1が、第2の格子110を通過する範囲W2より広くなっている。図においては、スケールの長さ方向の違いのみが示されているが、これに直交する方向、すなわち紙面を貫く方向においても、前記の光の通過する範囲を異ならせることも可能である。
【0024】
図中のスケールには、汚れ112が付着している。このような汚れは、干渉縞の形成を阻害する。すなわち、光量が低下し干渉縞の濃淡の差を小さくしたり、汚れによる屈折や回折により、干渉縞が正確に形成されないといった問題を起こす。汚れの範囲dが第1の格子108の範囲W1より小さければ小さいほど、すなわち、d/W1が小さいほど、汚れ112の影響は小さくなる。したがって、受光素子104に入射する光が通過する第1の格子108の範囲W1は、大きい方が好ましい。一方で、受光素子104を大きくすると、前述のように応答性が悪くなる。以上より、受光素子104に近い格子(第2の格子110)の光の通過範囲W2より、第2の格子の位置に干渉縞を形成するための第1の格子の通過範囲W1を大きくすることが好ましい。
【0025】
また、汚れ112以外の、精度の高い干渉縞の形成を阻害する要因に対しても、第1の格子の光の通過範囲W1が大きい方が好ましい。前記の阻害要因としては、格子を形成する1本1本の縞の間隔の誤差、転写などにより形成された格子の1本の縞の高さ、格子が形成されるスケールの表面のゆがみ、格子の欠陥、などが考えられる。これらの干渉縞形成の阻害因子についても、受光素子に到達する光が第1の格子を通過する範囲W1を広くすることによって、その影響を小さいものとすることができる。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、光学式エンコーダにおいて、光源からの光を効率よく受光素子に導くことができる。これにより、発光素子発熱量の低下、受光素子の小型化、構成の簡素化を図ることが可能となる。また、汚れなどの干渉縞形成を阻害する因子の影響を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の参考形態の光学式エンコーダの概略構成図である。
【図2】 図1の光学式エンコーダの光学系と等価な光学系の構成図である。
【図3】 他の光学系の構成例を示す図である。
【図4】 本発明の他の参考形態の光学式エンコーダの概略構成図である。
【図5】 図4の光学式エンコーダの光学系と等価な光学系の構成図である。
【図6】 図4の光学式エンコーダの細部を示す図である。
【図7】 本発明の実施形態の光学式エンコーダの概略構成図である。
【図8】 図7の光学式エンコーダの光学系と等価な光学系の構成図である。
【図9】 図7の光学式エンコーダにおいて、スライダ側の他の構成を示す図である。
【図10】 図7の光学式エンコーダにおいて、スライダ側のさらに他の構成を示す図である。
【図11】 スケールについた汚れに関する説明図である。
【符号の説明】
10 スケール、12 反射格子、14,30,36 スライダ、16,24 光源、18,26 凸レンズ、20(20a,20b) 透過格子、22,40 受光素子、28 ボールレンズ、38 発光素子、42 凹面鏡、46 鋳込み材、48 反射層。

Claims (2)

  1. 格子により形成された干渉縞と、干渉縞と相対移動する格子を通過した光の量に基づき格子の相対移動量を算出する、光学式エンコーダであって、
    発光素子と受光素子を背中合わせに一体とした光学素子と、
    前記光学素子の発光素子側に配置され、発光素子からの光を平行光よりも集光して前記光学素子の受光素子側に向けて反射する凹面鏡と、
    前記光学素子の受光素子側に配置された透過格子と、
    透過格子と相対移動し、反射面が格子状に形成された反射格子と、
    を有し、
    凹面鏡によって反射され、受光素子側に向けて照射された発光素子からの光は、透過格子を通過し、反射格子により反射されて、再度透過格子を通過して受光素子へと集光される、光学式エンコーダ。
  2. 請求項1に記載の光学式エンコーダであって、前記光学素子は、背中合わせに一体とした発光素子と受光素子を透光性材料により鋳ぐるみ、この透光性材料の発光素子側の表面を反射層が形成された凸面として凹面鏡としたものである、光学式エンコーダ。
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