JP4698923B2 - 燃料電池システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池自動車等に用いられる燃料電池システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池自動車等に搭載される燃料電池には、固体高分子電解質膜の両側にアノードとカソードとを備え、アノードに燃料ガス(例えば水素ガス)を供給し、カソードに酸化剤ガス(例えば酸素あるいは空気)を供給して、これらの反応ガス(燃料ガス、酸化剤ガス)の酸化還元反応にかかる化学エネルギを直接電気エネルギとして抽出するようにしたものがある。
【0003】
燃料電池は発電の際に発熱を伴うため、発電を継続すると燃料電池の温度は上昇していく。そこで、発電中の燃料電池の温度を適正に保持するために、反応ガスの供給流路にインタークーラー(熱交換器)を介装し、該インタークーラーにより反応ガスを冷却させている。その一方で、低温環境下では燃料電池は出力が低下してしまうため、早期に温度を上昇させることが望まれるが、この場合には、前記インタークーラーが温度上昇の障害となる。
この点を改善するために、例えば、特許文献1には、インタークーラーをバイパスするバイパス流路を設け、低温環境下では前記バイパス流路によりインタークーラーをバイパスさせて、高温の反応ガスを燃料電池に供給する技術が提案されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−110213号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、反応ガスが過度に乾燥していると、前記反応ガスが固体高分子電解質膜から水分を奪ってしまい、固体高分子電解質膜を傷めてしまう場合がある。これを防止するため、反応ガスを加湿させる加湿器を反応ガス供給流路のインタークーラー下流側に設ける場合がある。
しかしながら、上述したように高温の反応ガスをインタークーラーをバイパスさせて供給すると、前記加湿器を損傷させて性能を損なう虞があり、燃料電池の信頼性の点で好ましくないという問題があった。
【0006】
また、インタークーラーを通る流路と、バイパス流路の流路径が異なる場合には、これらの流路から供給される反応ガス(例えば酸化剤ガス)の圧力が流路の切換により変動してしまう。これにより、他方の反応ガス(例えば水素ガス)との圧力バランス(極間差圧)の変動をも引き起こし、燃料電池の信頼性の点で好ましくないという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、燃料電池の信頼性を高めることができる燃料電池システムを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた本発明の請求項1に係る発明は、燃料ガスと酸化剤ガスとを供給されて発電を行う燃料電池(例えば、後述する実施の形態における燃料電池1)と、前記燃料電池に燃料ガスを供給する燃料ガス供給流路(例えば、後述する実施の形態における水素ガス供給流路9)と、前記燃料電池に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給流路(例えば、後述する実施の形態におけるエア供給流路10)と、前記酸化剤ガス供給流路に設けられた加湿器(例えば、後述する実施の形態における加湿器8)と、該加湿器の上流側に設けられ、前記酸化剤ガスと熱交換を行う熱交換器(例えば、後述する実施の形態におけるインタークーラー4)と、前記熱交換器の入口側と出口側との間をバイパスするとともに、前記酸化剤ガス供給流路よりも流路径が小さいバイパス流路(例えば、後述する実施の形態におけるバイパス流路11)と、前記熱交換器への流路とバイパス流路とを選択的に切り換える流路切換バルブ(例えば、後述する実施の形態における切換バルブ5)と、前記加湿器の入口側温度を検出する温度検出手段(例えば、後述する実施の形態における温度センサ6)と、を備えた燃料電池システムであって、前記流路切換バルブにより、前記燃料電池の温度が低温環境下の場合で、かつ、前記加湿器の入口側温度(例えば、後述する実施の形態における温度TA)が、該加湿器の性能を維持可能な保護上限温度(例えば、後述する実施の形態における保護上限温度T1)未満の場合には前記バイパス流路が選択され、前記保護上限温度以上の場合には前記熱交換器への流路が選択されるように切り換える制御を行う制御手段(例えば、後述する実施の形態におけるECU7)を備え、前記酸化剤ガス流路に酸化剤ガスを供給するエアコンプレッサ(例えば、後述する実施の形態におけるエア供給システム3)の回転数が、前記熱交換器への流路が選択されている場合と前記バイパス流路が選択されている場合とで変更可能に構成され、前記熱交換器への流路が選択されている場合と前記バイパス流路が選択されている場合とで、前記燃料電池に供給される前記酸化剤ガスの圧力が同一になるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、燃料電池が低温環境下の場合で、かつ、加湿器の温度が、加湿器の性能を維持可能な保護上限温度未満の場合には、前記切換バルブを閉じることによりバイパス流路を介して酸化剤ガスを供給するため燃料電池の温度上昇を促進できるとともに、この場合に前記加湿器の温度が加湿器の性能を維持可能な保護上限温度に達した場合には、前記切換バルブを開いて酸化剤ガスを熱交換器を介して酸化剤ガスの温度を抑制して加湿器に供給するため、加湿器が保護されてその性能を維持することができる。また、バイパス流路を熱交換器の入口側と出口側との間をバイパスするように配置するとともに、バイパス流路の流路径を酸化剤ガス供給流路よりも小さくすることにより、流路切換バルブの開閉のみで流路の切換を行うことができる。したがって、簡易な操作で流路を切り換えることができる。さらに、適度な湿度の酸化剤ガスが燃料電池に供給されることで、燃料電池の信頼性を高めることができる。
【0011】
また、前記流路切換バルブより切り換えられた流路に応じて、前記エアコンプレッサの回転数を持ち替える制御を行い、熱交換器への流路とバイパス流路との流路径が異なる場合であっても、それぞれの流路の径に応じて等しい圧力となるように前記コンプレッサの回転数を制御することで、燃料電池に供給される酸化剤ガスの圧力を一定に維持することができる。よって、燃料ガスとの極間差圧も適正に保つことができるため、燃料電池の信頼性を高めることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に係る燃料電池システムの実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態における燃料電池システムの概略構成図である。
燃料電池1は、例えば固体ポリマーイオン交換膜等からなる固体高分子電解質膜をアノードとカソードとで両側から挟み込んで形成されたセルを複数積層して構成されたスタックからなる。
前記燃料電池1には、水素ガス供給システム2が水素ガス供給流路9を介して接続されている。前記水素ガス供給システム2は、水素タンク等の水素供給源を備え、該水素供給源から燃料電池1のアノードに水素ガスを供給する。
【0013】
また、前記燃料電池1には、エア供給システム3がエア供給流路10を介して接続されている。前記エア供給システム3は、エアコンプレッサ等の空気供給源を備え、該空気供給源から燃料電池1のカソードに空気(酸化剤ガス)を供給する。
【0014】
前記燃料電池1は、アノードに燃料として水素ガスを供給され、カソードに酸化剤として酸素を含む空気を供給されると、アノードで触媒反応により発生した水素イオンが、固体高分子電解質膜を通過してカソードまで移動して、カソードで酸素と電気化学反応を起こして発電し、水が生成される。
これらの反応ガスは発電に供された後、燃料電池1のアノード、カソードからそれぞれオフガスとして排出される。
【0015】
前記エア供給流路10には加湿器8が設けられ、該加湿器8により前記流路10のエアを適度な湿度に加湿して、燃料電池1の固体高分子電解質膜を乾燥から保護している。
前記エア供給流路10の加湿器8上流側には、インタークーラー4が設けられている。これにより、インタークーラー4に流入するエアは熱交換される。
また、前記エア供給流路10には、インタークーラー4をバイパスするバイパス流路11が接続されている。そして、前記エア供給流路10の、前記インタークーラー4とバイパス流路11下流部との間には、流路切換バルブ5が設けられている。
【0016】
本実施の形態においては、前記インタークーラー4への流路の径を、前記バイパス流路11の径よりも大きい径に設定している。これにより、前記インタークーラー4への流路は、前記バイパス流路11に比べて圧力損失が低くなり、前記切換バルブ5を開くと、特別な制御を行わなくても、エア供給システム3から供給されたエアの大部分をインタークーラー4に流入させることができる。したがって、後述する燃料電池1の低温時等の特別な場合にのみ前記切換バルブ5を閉じてバイパス流路11にエアを流通させれば良く、通常の発電制御時においては切換バルブ5を開いておけば、エアをインタークーラー4に通すことができる。
【0017】
このように、切換バルブ5の開閉のみで流路の切換を行うことができるため、三方弁を設けたり、それぞれの流路に開閉弁を設けて制御を行う必要がなく、流路に関する装置構成をコンパクト化できるとともに簡易な操作で流路を切換えることができる。
また、前記加湿器8の入口側には温度センサ6が設けられ、該温度センサ6により加湿器8に流入するエアの温度TAを検出する。
【0018】
前記水素ガス供給システム2、エア供給システム3、流路切換バルブ5、温度センサ6はそれぞれECU(Electric Control Unit)7に接続されており、該ECU7は前記温度センサ6で検出された温度TAにより流路10、11の切換制御を行う。これについて図2を用いて説明する。
【0019】
図2は図1に示した燃料電池システムにおける制御を示すフローチャートである。まず最初は、ステップS12で、通常の発電制御として切換バルブ5を開く指令を送信する。これにより、エアはインタークーラー4に流入し、熱交換された後に加湿器8、燃料電池1に供給される。
【0020】
そして、ステップS14で、切換バルブ5を閉じる要求(閉要求)があるかどうかを判定し、判定結果がYESの場合にはステップS16に進み、判定結果がNOの場合にはステップS18に進む。この閉要求は、例えば燃料電池1の温度が低い場合等に発生する。
【0021】
ステップS16では、温度センサ6で検出した加湿器8入口側の温度TAが所定値T1(保護上限温度)以上かどうかを判定する。この判定結果がYESであればステップS18に進み切換バルブ5を開いた状態で、ステップS22に進む。これにより、酸化剤ガスは、インタークーラー4に流通して熱交換される。
また、ステップS16の判定結果がNOであればステップS20に進み、切換バルブ5を閉じて、ステップS22に進む。これにより、酸化剤ガスの流路は、バイパス流路11に切り換えられる。
【0022】
このように、燃料電池1が低温環境下の場合で加湿器8の温度が低い場合(T1未満の場合)には、バイパス流路11を介してエアを供給するため燃料電池1の温度上昇を促進できる。また、前記加湿器8の温度が所定値T1以上のときには、エアをインタークーラー4を介して熱交換させて、エアの温度を抑制して加湿器8に供給するため、加湿器8が保護されてその性能を維持することができる。これにより、適度な湿度のエアが燃料電池1に供給されることで、燃料電池1の信頼性を高めることができる。
【0023】
ステップS22では、切換バルブ5が開いているかどうかの判定を行う。この判定結果がYESであればステップS26に進み、エア供給システム3のコンプレッサの回転数を、回転数算出マップ2を用いて制御し、一連の処理を終了する。また、ステップS22の判定結果がNOであれば、ステップS24に進み、エア供給システム3のコンプレッサの回転数を、回転数算出マップ1を用いて制御し、一連の処理を終了する。ここで、前記マップ1で算出された回転数は、前記マップ2で算出された回転数よりも大きくなるように設定されている。
【0024】
上述したように、本実施の形態においては、流路10の径を流路11よりも大きく設定しているため、それぞれの流路10、11でのコンプレッサの回転数を同じ回転数に設定すると、径の小さい流路11の圧力損失により燃料電池1に供給されるエア圧力が低減してしまう。本実施の形態においては、前記流路11に切り換えられた場合には、コンプレッサの回転数を大きくなるように変更して流路11での圧力損失を補うようにしているため、燃料電池1に供給されるエア圧力を切り換え前と略同一に維持することができる。
【0025】
このように、前記切換バルブ5の開閉に応じて、前記エアコンプレッサの回転数を持ち替える制御を行うため、インタークーラー4への流路10と、バイパス流路11の流路径が異なる場合であっても、それぞれの流路の径に応じて略等しい圧力となるように前記コンプレッサの回転数を制御することで、燃料電池1に供給される酸化剤ガスの圧力を略一定に維持することができる。よって、燃料ガスとの極間差圧も適正に保つことができるため、燃料電池1の信頼性を高めることができる。
【0026】
なお、本発明における燃料電池システムは、上述した実施の形態のみに限られるものではない。また、前記燃料電池システムは、燃料電池自動車に好適に用いることができるが、他の用途にも適用することができるのはもちろんである。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る発明によれば、燃料電池の温度上昇を促進できるとともに、加湿器が保護されてその性能を維持することができ、燃料電池の信頼性を高めることができる。
【0028】
また、燃料電池に供給される酸化剤ガスの圧力を一定に維持するように回転数を持ち替えることができ、燃料ガスとの極間差圧も適正に保つことができるため、燃料電池の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
【図2】 図1に示した燃料電池システムの制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 燃料電池
4 インタークーラー
5 切換バルブ
6 温度センサ
7 ECU
8 加湿器
9 水素ガス供給流路
10 エア供給流路
11 バイパス流路
Claims (1)
- 燃料ガスと酸化剤ガスとを供給されて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池に燃料ガスを供給する燃料ガス供給流路と、
前記燃料電池に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給流路と、
前記酸化剤ガス供給流路に設けられた加湿器と、
該加湿器の上流側に設けられ、前記酸化剤ガスと熱交換を行う熱交換器と、
前記熱交換器の入口側と出口側との間をバイパスするとともに、前記酸化剤ガス供給流路よりも流路径が小さいバイパス流路と、
前記熱交換器への流路とバイパス流路とを選択的に切り換える流路切換バルブと、
前記加湿器の入口側温度を検出する温度検出手段と、を備えた燃料電池システムであって、
前記流路切換バルブにより、前記燃料電池の温度が低温環境下の場合で、かつ、前記加湿器の入口側温度が、該加湿器の性能を維持可能な保護上限温度未満の場合には前記バイパス流路が選択され、前記保護上限温度以上の場合には前記熱交換器への流路が選択されるように切り換える制御を行う制御手段を備え、
前記酸化剤ガス流路に酸化剤ガスを供給するエアコンプレッサの回転数が、前記熱交換器への流路が選択されている場合と前記バイパス流路が選択されている場合とで変更可能に構成され、
前記熱交換器への流路が選択されている場合と前記バイパス流路が選択されている場合とで、前記燃料電池に供給される前記酸化剤ガスの圧力が同一になるように構成されていることを特徴とする燃料電池システム。
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