JP5142006B2 - 燃料電池システム - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池に対して酸化ガスをバイパス可能な燃料電池システムに関するものである。
燃料電池自動車などに搭載される燃料電池は、アノードに供給された燃料ガス中の水素とカソードに供給された酸化ガス中の酸素との化学反応によって、電力を発生すると共に水を生成する。生成された水は、燃料オフガス及び酸化オフガスの流れによって、燃料電池内部から両ガスの排出路へと排出される。一般に、燃料電池から排出される燃料オフガスは、水素希釈器を通り、水素濃度が低減された状態で大気中へ排出される。一方、燃料電池から排出される酸化オフガスは、そのまま大気中へと排出される。
ところが、発電効率が低い状態で燃料電池を運転している場合には、アノードから水素が排出されるだけでなくカソードからも水素(主にポンピング水素)が排出されることもあり、酸化オフガス中に水素が含まれる可能性がある。このような場合には、酸化オフガスをそのまま大気中へと排出することは環境上好ましくない。
酸化オフガス中の水素濃度を低減できるようにした特許文献1に記載の燃料電池システムは、酸化ガスの供給路と酸化オフガスの排気路とを連通するバイパス路と、バイパス路を開閉するバイパス弁と、を備える。燃料電池システムは、酸化オフガス中の水素濃度が高まったときにバイパス弁を開弁し、酸化オフガスに酸化ガスを導入することで、酸化オフガス中の水素濃度を低減するようにしている。また、この燃料電池システムでは、排気路に設けた調圧弁により、燃料電池に対する酸化ガス供給圧を調整している。
特開2004−172027号公報
このような従来の燃料電池システムでは、運転停止時に、外気温が例えば氷点下まで低下すると、システム内に残留した生成水などの水が調圧弁にて氷結する場合がある。調圧弁が凍結して作動できなくなると、燃料電池に対する酸化ガス供給圧や酸化ガス供給流量が不足又は過剰となってしまうおそれがある。
本発明は、以上のような問題に鑑みてなされたものであり、調圧弁が凍結した場合にも適切に運転可能な燃料電池システムを提供することをその目的としている。
上記目的を達成するべく、本発明の燃料電池システムは、燃料電池に供給される酸化ガスが流れる供給路と、燃料電池から排出される酸化オフガスが流れる排出路と、酸化ガスが燃料電池をバイパスして流れるように、供給路と排出路とを接続するバイパス路と、排出路とバイパス路との排出側接続部よりも上流側の排出路に設けられた調圧弁と、を備えた燃料電池システムにおいて、供給路とバイパス路との供給側接続部に設けられ、燃料電池及びバイパス路への酸化ガスの通流を制御する通流制御手段を備え、調圧弁は、当該燃料電池システムの起動時に酸化ガスがバイパス路を流れる際に開弁状態であるように、当該燃料電池システムの停止時に開弁状態に設定されるものであり、通流制御手段は、酸化ガスの一部をバイパス路に分流することで燃料電池への酸化ガス流量を制御可能に構成されているものである。
かかる構成によれば、仮に調圧弁が凍結したとしても、通流制御手段が酸化ガスの一部をバイパス路に分流することで燃料電池への酸化ガス流量を制御できる。このとき、調圧弁は開弁状態であるので、燃料電池から酸化オフガスを排気できる。したがって、調圧弁が凍結していたとしても、燃料電池に必要量の酸化ガスを供給でき、燃料電池システムの運転を適切に行える。また、酸化ガスの一部をバイパス路に分流できるため、排出路を流れる酸化オフガスを酸化ガスで希釈できる。
好ましくは、通流制御手段はロータリー弁である。
上記した本発明の燃料電池システムの一態様によれば、通流制御手段は、燃料電池システムの起動時に、酸化ガスの一部をバイパス路に分流する一方、燃料電池システムの通常の運転時に、バイパス路への酸化ガスの分流を遮断することが好ましい。より好ましくは、通流制御手段は、燃料電池システムの起動時であって所定の低温時にのみ、酸化ガスの一部をバイパス路に分流する。
かかる構成によれば、低温起動時に調圧弁が凍結していたとしても、燃料電池システムの運転を適切に行うことができる。
また、本発明の燃料電池システムの別の一態様によれば、通流制御手段は、燃料電池システムの通常運転に比して電力損失の大きな低効率運転を行う際に、酸化ガスの一部をバイパス路に分流することが好ましい。
この構成によれば、低効率運転時に酸化オフガスを酸化ガスで希釈できる。
燃料電池システムが低効率運転を行うと、燃料電池の自己発熱が促進される。そこで、低効率運転は、所定の低温時にのみ行われることが好ましい。
かかる構成によれば、効率よく燃料電池を暖機できる。
上記目的を達成するべく、本発明の別の燃料電池システムは、燃料電池に供給される酸化ガスが流れる供給路と、燃料電池から排出される酸化オフガスが流れる排出路と、酸化ガスが燃料電池をバイパスして流れるように、供給路と排出路とを接続するバイパス路と、排出路とバイパス路との排出側接続部よりも上流側の排出路に設けられた調圧弁と、を備えた燃料電池システムにおいて、バイパス路を開閉するバイパス弁と、供給路とバイパス路との供給側接続部よりも下流側の供給路に設けられた絞り弁と、当該燃料電池システムの起動時においてバイパス弁が開弁中のときには調圧弁が開弁状態であるように、当該燃料電池システムの停止時に当該調圧弁を開弁状態に設定する制御装置と、を備え、制御装置は、バイパス弁が開弁中のときには、調圧弁を制御しない一方で絞り弁を制御することで燃料電池への酸化ガス流量を制御するものである
これらの構成によれば、バイパス弁の開弁中には、調圧弁が開弁状態であるので、燃料電池から酸化オフガスを排気できる。また、バイパス弁の開弁中には、酸化ガスをバイパス路から排出路に導くことができる。したがって、排出路を流れる酸化オフガスを酸化ガスで希釈できる。さらに、バイパス弁の開弁中に仮に調圧弁が凍結していたとしても、絞り弁で燃料電池への酸化ガス流量を制御できる。これにより、燃料電池に必要量の酸化ガスを供給でき、燃料電池システムの運転を適切に行うことができる。
好ましくは、本発明の燃料電池システムは、絞り弁よりも下流側の供給路に設けられ、酸化ガスを加湿する加湿器を更に備える。
かかる構成によれば、加湿器より上流に絞り弁が位置するため、比較的低湿潤の酸化ガスの流量を絞ることができる。一方で、燃料電池には、加湿器により加湿された比較的高湿潤の酸化ガスを供給することができる。
好ましくは、制御装置は、燃料電池システムの起動時にバイパス弁を開弁する一方、燃料電池システムの通常の運転時にバイパス弁を閉弁する。より好ましくは、制御装置は、燃料電池システムの起動時であって所定の低温時にのみ、バイパス弁を開弁する。
好ましくは、制御装置は、燃料電池システムの通常運転に比して電力損失の大きな低効率運転を行う際、バイパス弁を開弁する。
好ましくは、低効率運転は所定の低温時にのみ行われる。
以上説明したように、本発明の燃料電池システムによれば、調圧弁が凍結した場合にも適切に運転することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態に係る燃料電池システムについて説明する。
<第1実施形態>
図1は、燃料電池システム1の構成図である。
本実施形態の燃料電池システム1は、燃料電池自動車(FCHV)、電気自動車、ハイブリッド自動車などの車両に搭載することができるが、もちろん車両のみならず各種移動体(例えば、船舶や飛行機、ロボットなど)や定置型電源にも適用可能である。
燃料電池システム1は、燃料電池2と、酸化ガスとしての空気(酸素)を燃料電池2に供給する酸化ガス配管系3と、燃料ガスとしての水素ガスを燃料電池2に供給する燃料ガス配管系4と、燃料電池2に冷媒を供給して燃料電池2を冷却する冷媒配管系5と、システム1の電力を充放電する電力系6と、システム全体を統括制御する制御装置7と、を備えている。
燃料電池2は、例えば固体高分子電解質型で構成され、多数の単セルを積層したスタック構造を備えている。単セルは、イオン交換膜からなる電解質の一方の面に空気極(カソード)を有し、他方の面に燃料極(アノード)を有し、さらに空気極及び燃料極を両側から挟みこむように一対のセパレータを有している。一方のセパレータの酸化ガス流路2aに酸化ガスが供給され、他方のセパレータの燃料ガス流路2bに燃料ガスが供給される。供給された燃料ガス及び酸化ガスの電気化学反応により、燃料電池2は電力を発生する。燃料電池2での電気化学反応は発熱反応であり、固体高分子電解質型の燃料電池2の温度は、およそ60〜80℃となる。
酸化ガス配管系3は、燃料電池2に供給される酸化ガスが流れる供給路11と、燃料電池2から排出された酸化オフガスが流れる排出路12と、酸化ガスが燃料電池2をバイパスして流れるバイパス路17と、を有している。供給路11の下流端は酸化ガス流路2aの上流端に連通し、排出路12の上流端は酸化ガス流路2aの下流端に連通している。酸化オフガスには、燃料電池2の空気極側で生成されるポンピング水素などが含まれる(詳細は後述)。また、酸化オフガスは、燃料電池2の電池反応により生成された水分を含むため高湿潤状態となっている。
供給路11には、エアクリーナ13を介して酸化ガス(外気)を取り込むコンプレッサ14(供給機)と、コンプレッサ14によって燃料電池2に圧送される酸化ガスを加湿する加湿器15と、が設けられている。加湿器15は、供給路11を流れる低湿潤状態の酸化ガスと、排出路12を流れる高湿潤状態の酸化オフガスとの間で水分交換を行い、燃料電池2に供給される酸化ガスを適度に加湿する。
燃料電池2に供給される酸化ガスの背圧は、カソード出口付近の排出路12に配設された背圧調整弁16によって調圧される。背圧調整弁16は、例えばステップモータで駆動する弁であり、制御装置7に電気的に接続されている。背圧調整弁16の弁開度は、制御装置7によって、全開、半開及び全閉を含む任意の範囲で調整可能に構成されている。背圧調整弁16の近傍には、排出路12内の圧力を検出する圧力センサP1が設けられている。酸化オフガスは、背圧調整弁16及び加湿器15を経て最終的に排ガスとしてシステム外の大気中に排気される。
バイパス路17は、供給路11と排出路12とを接続している。バイパス路17と供給路11との供給側接続部Bは、コンプレッサ14と加湿器15との間に位置している。また、バイパス路17と排出路12との排出側接続部Cは、加湿器15の下流側に位置している。バイパス路17には、モータ又はソレノイドなどで駆動する開閉弁であるバイパス弁18が設けられている。バイパス弁18は、制御装置7に接続されており、バイパス路17を開閉する。なお、以下の説明では、バイパス弁18の開弁により、バイパス路17の下流へとバイパスされる酸化ガスを「バイパスエア」と称呼する。
絞り弁19は、供給側接続部Bと加湿器15との間の供給路11の部分に位置している。絞り弁19は、モータ又はソレノイドなどで駆動する制御弁であり、制御装置7に接続されている。絞り弁19は、制御装置7からの制御信号によって、燃料電池2への酸化ガスの流量を絞ることができるように構成されている。後述するように、絞り弁19は、背圧調整弁16が凍結しても、燃料電池2への酸化ガス供給量を調整することができるようになっている。
燃料ガス配管系4は、水素供給源21と、水素供給源21から燃料電池2に供給される水素ガスが流れる供給路22と、燃料電池2から排出された水素オフガス(燃料オフガス)を供給路22の合流点Aに戻すための循環路23と、循環路23内の水素オフガスを供給路22に圧送するポンプ24と、循環路23に分岐接続されたパージ路25と、を有している。元弁26を開くことで水素供給源21から供給路22に流出した水素ガスは、調圧弁27その他の減圧弁、及び遮断弁28を経て、燃料電池2に供給される。パージ路25には、水素オフガスを水素希釈器(図示省略)に排出するためのパージ弁33が設けられている。
冷媒配管系5は、燃料電池2内の冷却流路2cに連通する冷媒流路41と、冷媒流路41に設けられた冷却ポンプ42と、燃料電池2から排出される冷媒を冷却するラジエータ43と、ラジエータ43をバイパスするバイパス流路44と、ラジエータ43及びバイパス流路44への冷却水の通流を設定する切替え弁45と、を有している。冷媒流路41は、燃料電池2の冷媒入口の近傍に設けられた温度センサ46と、燃料電池2の冷媒出口の近傍に設けられた温度センサ47と、を有している。温度センサ47が検出する冷媒温度は、燃料電池2の内部温度(以下、燃料電池2の温度という。)を反映する。冷却ポンプ42は、モータ駆動により、冷媒流路41内の冷媒を燃料電池2に循環供給する。
電力系6は、高圧DC/DCコンバータ61、バッテリ62、トラクションインバータ63、トラクションモータ64、及び各種の補機インバータ65,66,67を備えている。高圧DC/DCコンバータ61は、直流の電圧変換器であり、バッテリ62から入力された直流電圧を調整してトラクションインバータ63側に出力する機能と、燃料電池2又はトラクションモータ64から入力された直流電圧を調整してバッテリ62に出力する機能と、を有する。高圧DC/DCコンバータ61のこれらの機能により、バッテリ62の充放電が実現される。また、高圧DC/DCコンバータ61により、燃料電池2の出力電圧が制御される。
トラクションインバータ63は、直流電流を三相交流に変換し、トラクションモータ64に供給する。トラクションモータ64(動力発生装置)は、例えば三相交流モータである。トラクションモータ64は、燃料電池システム1が搭載される例えば車両100の主動力源を構成し、車両100の車輪101L,101Rに連結されている。補機インバータ65、66、67は、それぞれ、コンプレッサ14、ポンプ24、冷却ポンプ42のモータの駆動を制御する。
制御装置7は、内部にCPU,ROM,RAMを備えたマイクロコンピュータとして構成される。CPUは、制御プラグラムに従って所望の演算を実行して、後述する低効率運転の制御など、種々の処理や制御を行う。ROMは、CPUで処理する制御プログラムや制御データを記憶する。RAMは、主として制御処理のための各種作業領域として使用される。
制御装置7は、ガス系統(3,4)や冷媒系統5に用いられる圧力センサ(P1)及び温度センサ(46,47)、燃料電池システム1が置かれる環境の外気温を検出する外気温センサ51、並びに、車両100のアクセル開度を検出するアクセル開度センサなどの各種センサからの検出信号を入力し、各構成要素(供給機14、背圧調製弁16及びバイパス弁18など)に制御信号を出力する。また、制御装置7は、低温始動時など燃料電池2を暖機する必要がある場合には、ROMに格納されている各種マップを利用して発電効率の低い運転を行う。
図2は、燃料電池2の出力電流(以下、「FC電流」という。)と出力電圧(以下、「FC電圧」という。)との関係を示す図である。図2は、燃料電池システム1が比較的発電効率の高い運転(以下、「通常運転」という。)を行った場合を実線で示し、燃料電池システム1が比較的発電効率の低い運転(以下、「低効率運転」という。)を行った場合を点線で示している。
燃料電池システム1を通常運転する場合には、電力損失を抑えて高い発電効率が得られるように、エアストイキ比を1.0以上(理論値)に設定した状態で燃料電池2を運転する(図2の実線部分参照)。ここで、エアストイキ比とは酸素余剰率をいい、水素と過不足なく反応するのに必要な酸素に対して供給される酸素がどれだけ余剰であるかを示す。
これに対し、燃料電池2を暖機する場合には、電力損失を大きくして燃料電池2の温度を上昇させるべく、エアストイキ比を1.0未満(理論値)に設定した状態で燃料電池2を運転する(図2の点線部分参照)。エアストイキ比を低く設定して低効率運転を行うと、水素と酸素との反応によって取り出せるエネルギーのうち、電力損失分(すなわち熱損失分)が積極的に増大されるため、燃料電池2を迅速に暖機することができる一方、燃料電池2の空気極にはポンピング水素が発生する。
図3は、ポンピング水素の発生メカニズムを説明するための図であり、(A)は通常運転時の電池反応を示し、(B)は低効率運転時の電池反応を示している。
燃料電池2の各単セル80は、電解質膜81と、この電解質膜81を挟持するアノード及びカソードを備えている。水素(H2)を含む燃料ガスはアノードに供給され、酸素(O2)を含む酸化ガスはカソードに供給される。アノードへ燃料ガスが供給されると、下記式(1)の反応が進行して、水素が水素イオンと電子に乖離する。アノードで生成された水素イオンは電解質膜81を透過してカソードへ移動する一方、電子はアノードから外部回路を通ってカソードへ移動する。
アノード: H2 →2H+ + 2e- ・・・(1)
ここで、図3(A)に示す通常運転の場合、すなわちカソードへの酸化ガスの供給が十分な場合には(エアストイキ比≧1.0)、下記式(2)が進行して酸素、水素イオン及び電子から水が生成される。
カソード: 2H+ + 2e- + (1/2)O2 → H2O ・・・(2)
一方、図3(B)に示す低効率運転の場合、すなわちカソードへの酸化ガスの供給が不足している場合には(エアストイキ比<1.0)、不足する酸化ガス量に応じて下記式(3)が進行し、水素イオンと電子が再結合して水素が生成される。生成された水素は、酸化オフガスとともにカソードから排出されることになる。なお、乖離した水素イオンと電子が再結合することによってカソードで生成される水素、すなわちカソードにおいて生成されるアノードガスをポンピング水素と呼ぶ。
カソード: 2H+ + 2e- → H2 ・・・(3)
このように、カソードへの酸化ガスの供給が不足した状態では、酸化オフガスにポンピング水素が含まれる。そこで、燃料電池システム1が低効率運転を行う際には、制御装置7はバイパス弁18を開弁制御し、コンプレッサ13により供給される酸化ガスの一部をバイパス路17に分流させるようにしている。この分流されたバイパスエアによって酸化オフガス中の水素濃度を希釈して、水素濃度が安全な範囲にまで低減された酸化オフガスを排出路12から外部に排気するようにしている。
ここで、低効率運転は、主として燃料電池2を暖機することを目的として、燃料電池システム1の起動時に行われるものであり、特に低温起動時にのみ行われるものである。例えば、燃料電池システム1の起動時に外気温センサ51により検出された外気温が、所定の低温(例えば0℃以下)であったときに、燃料電池システム1の低効率運転が行われ、その後、燃料電池2の暖機が完了したところで、燃料電池システム1は、低効率運転から通常運転に移行する。バイパス弁18は、低効率運転を行う燃料電池システム1の起動時に開弁し、低効率運転後の通常運転では、閉弁する。
さて、本実施形態に係る燃料電池システム1の一連の制御例について説明する。
先ず、燃料電池システム1の運転停止時(以下、「システム停止時」という。)における制御例を説明する。
システム停止時には、制御装置7は、燃料電池2内の水分を外部に排出する掃気処理を実行する。例えば、カソード系統(酸化ガス配管系3)の掃気処理は、燃料電池2への水素ガスの供給を停止した状態で、コンプレッサ14の駆動によって酸化ガスを酸化ガス流路2aに供給して、酸化ガス流路2aに残る生成水を含む水分を排出路12へと排出することで行われる。この掃気処理によって、背圧調整弁16内に残る生成水も基本的には排出路12の下流へと排出される。
しかし、背圧調整弁16には、水分が気体又は液体として残留する場合もある。システム停止時の外気温又は背圧調整弁16の近傍の温度が極低温(氷点下以下)にまで低下し、背圧調整弁16に残留した水分が氷結すると、背圧調整弁16を開閉駆動できなくなるおそれがある。仮に、背圧調整弁16が閉弁状態で凍結してしまい、開弁できなくなると、燃料電池システム1の次の起動時に、所望の圧力及び流量の酸化ガスを燃料電池2に供給できなくなり、燃料電池2が発電不能となるおそれがある。
そこで、本実施形態のシステム停止時には、制御装置7は、背圧調整弁16が少なくとも開弁状態であるように、又は背圧調整弁16が所定の開度に固定されるように制御している。背圧調整弁16の開度の設定は、ステップモータを制御することにより目標開度にて停止し、ステップモータへの電源供給を遮断することで行うことができる。このときの背圧調整弁16の開度は、全開又は半開程度でよく、要は全閉以外であればよい。
好ましくは、背圧調整弁16の開度は、全開以外の所定の開度であるとよい。なぜなら、仮に背圧調整弁16が全開位置にて凍結して固着した場合、燃料電池2での酸化ガス圧力(空気極圧力)を十分に昇圧できないおそれがあるからである。それゆえ、背圧調整弁16の開度としては、燃料電池2を定点動作させた場合にある程度の酸化ガス圧力を確保できる開度であることが好ましい。この開度で燃料電池システム1が運転停止することにより、燃料電池システム1の次の起動時に、背圧調整弁16の制御レス運転が可能となる。
次に、燃料電池システム1の起動時(以下、「システム起動時」という。)における制御例を説明する。
例えば車両100の運転手によるイグニッションスイッチのON操作等によって、燃料電池システム1が起動すると、制御装置7は、低効率運転を行うか否かを判定する。外気温センサ51による外気温が比較的高く、又は、燃料電池2の温度が比較的高く、そのために燃料電池2の暖機が不要と判断される場合には、制御装置7は、起動直後から通常運転が行われるように燃料電池システム1を制御する。
一方、外気温や燃料電池2の温度が所定の低温(例えば0℃以下)であり、燃料電池2の暖機が必要と判断される場合には、制御装置7は、起動時に低効率運転を行うように燃料電池システム1を制御する。低効率運転は、酸化ガス配管系3においては、バイパス弁18を開弁し、コンプレッサ14及び絞り弁19を制御することで行われる。このとき、背圧調整弁16は、制御装置7により開度を制御されず、システム停止時に設定された所定の開度に維持又は固定される。
低効率運転の際、制御装置7は、絞り弁19を制御することで燃料電池2への酸化ガス流量を制御する。具体的には、絞り弁19は、所定の開度に制御されて酸化ガスの流量を絞り、燃料電池2の要求出力に応じた供給圧力及び供給流量の酸化ガスが燃料電池2に供給されるようにする。なお、制御装置7は、絞り弁19の開度を考慮してコンプレッサ14を制御する。例えばコンプレッサ14は、燃料電池2の発電に必要な流量の酸化ガスが燃料電池2に供給され、且つ、酸化オフガス中の水素濃度の希釈に必要な流量のバイパスエアがバイパス弁18の下流に流れるように駆動される。
以上説明したように、本実施形態の燃料電池システム1によれば、システム起動時の低効率運転の際に、背圧調整弁16が凍結していたとしても、絞り弁19により燃料電池2への酸化ガス流量及び酸化ガス圧力を制御することができる。また、背圧調整弁16が開弁状態にあるので、燃料電池2から酸化オフガスを排気することができる。したがって、燃料電池2は適切に発電することができるため、燃料電池システム1の低効率運転を適切に行うことができる。また、低効率運転の際には、排出路12を流れる酸化オフガスをバイパスエアで希釈できる。
特に、本実施形態では、絞り弁19を加湿器15よりも上流に設けているため、比較的低湿潤の酸化ガスの流量を絞ることができる。また、絞り弁19が燃料電池2の上流で酸化ガスの流量を絞るため、燃料電池2での酸化ガス圧力を減圧でき、燃料電池2を任意の酸化ガス圧で使用することが可能となる。
さらに、低効率運転で燃料電池2が発電すると、燃料電池2が固体高分子電解質型の場合、その温度はおよそ60〜80℃となる。酸化オフガスの温度もそれと同程度になるため、この酸化オフガスにより背圧調整弁16が加熱されることになる。これにより、背圧調整弁16を解凍できるため、その後の通常運転を適切に行えるようになる。なお、通常運転の際には、燃料電池2の要求出力に応じて背圧調整弁16及び絞り弁19の両方を制御するようにしても良いし、背圧調整弁16及び絞り弁19の一方のみを制御するようにしてもよい。
上記例では、システム起動時に低効率運転を行う場合を例示したが、例えばシステム要求電力が所定値以下になった場合やシステム停止指示があった場合に低効率運転を行っても良い。また、他の実施態様では、背圧調整弁16が凍結していないのであれば、低効率運転のときに背圧調整弁16の開度を制御するようにしてもよい。
<第2実施形態>
次に、図4を参照して、第2実施形態に係る燃料電池システム1について相違点を中心に説明する。第1実施形態との相違点は、バイパス弁18及び絞り弁19の組合せに代えて、ロータリー弁300を供給側接続部Bに設けたことである。なお、第1実施形態と同一となる第2実施形態の構成要素については、第1実施形態と同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
ロータリー弁300は、燃料電池2及びバイパス路17への酸化ガスの通流を制御する通流制御手段として機能する。ロータリー弁300は、制御装置7に接続されており、弁の開度を電気的に制御可能に構成されている。例えば、ロータリー弁300は、燃料電池2及びバイパス路17の一方への酸化ガスの通流を遮断し且つ他方への酸化ガスの通流を許容することができる。また、ロータリー弁300は、燃料電池2及びバイパス路17の両方への酸化ガスの通流を許容することができる。つまり、ロータリー弁300は、酸化ガスの一部をバイパス路17に分流することで、燃料電池2への酸化ガス流量を制御することができるように構成されている。
なお、第1実施形態と同様に、バイパス路17の下流に分流されて燃料電池2をバイパスする酸化ガスを、「バイパスエア」と称呼する。別の実施態様においては、通流制御手段は、ロータリー弁300に限らず、他の切替弁又は流量制御部材であってもよい。
本実施形態に係る燃料電池システム1の一連の制御例について説明する。なお、一連の制御例はロータリー弁300の制御を除き、基本的には第1実施形態と同様である。
システム停止時には、制御装置7は、背圧調整弁16が少なくとも開弁状態であるように、又は背圧調整弁16が所定の開度に固定されるように制御する。この所定の開度は、全開以外であることが好ましい。
システム起動時には、制御装置7は、低効率運転を行うか否かを判定する。制御装置7は、燃料電池2の暖機が必要と判断される場合(例えば所定の低温時)には、起動時に低効率運転を行うように燃料電池システム1を制御する。低効率運転は、酸化ガス配管系3においては、コンプレッサ14及びロータリー弁300を制御することで行われる。このとき、背圧調整弁16は、制御装置7により開度を制御されず、システム停止時に設定された所定の開度に維持又は固定される。
低効率運転の際、制御装置7は、ロータリー弁300を制御することで燃料電池2への酸化ガス流量を制御する。具体的には、ロータリー弁300は、燃料電池2及びバイパス路17の両方に酸化ガスを通流する所定の開度に設定され、バイパスエアをバイパス路17に流すことで、燃料電池2の要求出力に応じた供給圧力及び供給流量の酸化ガスが燃料電池2に供給されるようにする。なお、制御装置7は、ロータリー弁300の開度を考慮してコンプレッサ14を制御する。例えば、コンプレッサ14は、燃料電池2の発電に必要な流量の酸化ガスが燃料電池2に供給され、且つ、酸化オフガス中の水素濃度の希釈に必要な流量のバイパスエアがバイパス路17の下流に流れるように駆動する。
したがって、本実施形態の燃料電池システム1によっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、システム起動時の低効率運転の際に、背圧調整弁16が凍結していたとしても、ロータリー弁300により燃料電池2への酸化ガス流量及び酸化ガス圧力を制御できる。また、背圧調整弁16が開弁状態にあるので、燃料電池2から酸化オフガスを排気することができる。したがって、燃料電池2は適切に発電できるため、燃料電池システム1の低効率運転を適切に行える。また、低効率運転の際には、排出路12を流れる酸化オフガスをバイパスエアで希釈できる。
さらに、低効率運転時の酸化オフガスによって背圧調整弁16を解凍できるため、その後の通常運転を適切に行えるようになる。なお、通常運転の際には、燃料電池2の要求出力に応じて背圧調整弁16及びロータリー弁300の両方を制御しても良いが、ロータリー弁300によるバイパスエアの分流を遮断し、背圧調整弁16により燃料電池2への酸化ガスの供給圧を制御することが好ましい。
なお、上記例では、システム起動時に低効率運転を行う場合を例示したが、例えばシステム要求電力が所定値以下になった場合やシステム停止指示があった場合に低効率運転を行っても良い。また、他の実施態様では、背圧調整弁16が凍結していないのであれば、低効率運転のときに背圧調整弁16の開度を制御するようにしてもよい。
第1実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。 第1実施形態に係るFC電流とFC電圧との関係を示すグラフである。 第1実施形態に係るポンピング水素の発生メカニズムを説明するための図であり、(A)は通常運転時の電池反応を示し、(B)は低効率運転時の電池反応を示す。 第2実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。
符号の説明
1:燃料電池システム、2:燃料電池、7:制御装置、11:供給路、12:排出路、14:コンプレッサ(供給機)、15:加湿器、16:背圧調整弁(調圧弁)、17:バイパス路、18:バイパス弁、19:絞り弁、B:供給側接続部、C:排出側接続部

Claims (12)

  1. 燃料電池に供給される酸化ガスが流れる供給路と、
    前記燃料電池から排出される酸化オフガスが流れる排出路と、
    前記酸化ガスが前記燃料電池をバイパスして流れるように、前記供給路と前記排出路とを接続するバイパス路と、
    前記排出路と前記バイパス路との排出側接続部よりも上流側の前記排出路に設けられた調圧弁と、を備えた燃料電池システムにおいて、
    前記供給路と前記バイパス路との供給側接続部に設けられ、前記燃料電池及び前記バイパス路への酸化ガスの通流を制御する通流制御手段を備え、
    前記調圧弁は、当該燃料電池システムの起動時に酸化ガスが前記バイパス路を流れる際に開弁状態であるように、当該燃料電池システムの停止時に開弁状態に設定されるものであり、
    前記通流制御手段は、酸化ガスの一部を前記バイパス路に分流することで前記燃料電池への酸化ガス流量を制御可能に構成されている、燃料電池システム。
  2. 前記通流制御手段は、ロータリー弁である、請求項1に記載の燃料電池システム。
  3. 前記通流制御手段は、当該燃料電池システムの起動時に、酸化ガスの一部を前記バイパス路に分流する一方、当該燃料電池システムの通常の運転時に、前記バイパス路への酸化ガスの分流を遮断する、請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
  4. 前記通流制御手段は、当該燃料電池システムの起動時であって所定の低温時にのみ、酸化ガスの一部を前記バイパス路に分流する、請求項3に記載の燃料電池システム。
  5. 前記通流制御手段は、当該燃料電池システムの通常運転に比して電力損失の大きな低効率運転を行う際に、酸化ガスの一部を前記バイパス路に分流する、請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
  6. 前記低効率運転は、所定の低温時にのみ行われる、請求項5に記載の燃料電池システム。
  7. 燃料電池に供給される酸化ガスが流れる供給路と、
    前記燃料電池から排出される酸化オフガスが流れる排出路と、
    前記酸化ガスが前記燃料電池をバイパスして流れるように、前記供給路と前記排出路とを接続するバイパス路と、
    前記排出路と前記バイパス路との排出側接続部よりも上流側の前記排出路に設けられた調圧弁と、を備えた燃料電池システムにおいて、
    前記バイパス路を開閉するバイパス弁と、
    前記供給路と前記バイパス路との供給側接続部よりも下流側の前記供給路に設けられた絞り弁と、
    当該燃料電池システムの起動時において前記バイパス弁が開弁中のときには前記調圧弁が開弁状態であるように、当該燃料電池システムの停止時に当該調圧弁を開弁状態に設定する制御装置と、を備え
    前記制御装置は、前記バイパス弁が開弁中のときには、前記調圧弁を制御しない一方で前記絞り弁を制御することで前記燃料電池への酸化ガス流量を制御する、燃料電池システム。
  8. 前記絞り弁よりも下流側の前記供給路に設けられ、酸化ガスを加湿する加湿器を更に備えた、請求項に記載の燃料電池システム。
  9. 前記制御装置は、当該燃料電池システムの起動時に前記バイパス弁を開弁する一方、当該燃料電池システムの通常の運転時に前記バイパス弁を閉弁する、請求項7又は8に記載の燃料電池システム。
  10. 前記制御装置は、当該燃料電池システムの起動時であって所定の低温時にのみ、前記バイパス弁を開弁する、請求項に記載の燃料電池システム。
  11. 前記制御装置は、当該燃料電池システムの通常運転に比して電力損失の大きな低効率運転を行う際、前記バイパス弁を開弁する、請求項7又は8に記載の燃料電池システム。
  12. 前記低効率運転は、所定の低温時にのみ行われる、請求項11に記載の燃料電池システム。
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