本発明は、路側装置と情報交信を行う通信手段を備えた車載用情報通信装置およびその装置の速度報知方法に関する。
今日では、高速道路等の有料道路の料金所などに設置されたアンテナと、自動車に搭載したETC用車載装置とで通信を行い、自動車を止めずに有料道路の料金支払いなどを行うノンストップ自動料金収受システム(以下、ETC(Electronic Toll Collection)システムとする)が多く用いられている。このETCシステムを用いることによって、料金の徴収に必要なコストの削減を図ることが可能になるとともに、料金所で頻発する渋滞を緩和することが可能となっている。
具体的に、ETC用車載装置を装備した車両がETCシステムの導入された料金所のETCゲートに進入した場合、ETCゲートの路側アンテナ(路側情報交信装置)とETC用車載装置に設けられるETCアンテナとの間で5.8GHz帯の高周波信号の送受信が行われ、ETC用車載装置にセットされるETCカードの料金徴収に必要な情報の交信が行われる。料金所では、受信された情報に基づいて車両の通行料金等の確認を行い、車両を停止させることなく料金徴収処理を行う。
このETCシステムが導入された料金所には、料金情報等を正しく受信できなかった場合に料金所で車両を停止させるため、またETC用車載装置を搭載していない車両が不正にETCゲートの設けられた料金所を通行することを防止するために、開閉バーが設置されている。料金所の路側アンテナとETC用車載装置のETCアンテナとの間で正しく情報の交信を行うことができた場合には、開閉バーが開放されて料金所を通過することが可能となっている。
一方で、車両が高速でETCゲートに進入した場合や、ETCカードがETC用車載装置にセットされておらずETCカードから料金徴収に必要な情報を読み取ることができなかった場合には、路側アンテナとETCアンテナとで正しく情報の交信ができず、開閉バーが開放されない場合がある。このため、車両が開閉バーに衝突することなく料金所において安全に停止することができるように、車両がETCゲートに進入する速度は時速20km以下であることが望ましい。そこで、今日では、車両の進入速度が20km以上の場合に、運転者に対して減速を促す警告(報知)等を発するETC用車載装置等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−227300公報(第5頁)
しかしながら、現実に車両の進入速度が20km程度の速度であっても、路側アンテナとETCアンテナとの交信が正しく完了した後に開閉バーが開放されるため、運転者が交信完了の直前まで閉じられている開閉バーによって心理的な不安・恐怖心を抱いてしまうおそれがある。このように運転者が心理的な不安等を抱いた場合、運転者は、車両の走行速度が既に推奨速度(適切な速度)である20km以下に達しているにもかかわらずさらに車両を減速させてしまい、開閉バーが開放されたときにはほぼ停止同然の速度まで車両が速度されてしまうおそれがあった。
このように、ETCゲートを通過する車両がほぼ停止同然の速度まで減速してしまった場合には、ETCゲートを通過する車両の流れを阻害するおそれがあり、通行車両の円滑化を図ることが困難となってしまう。また、車両の急激な減速により、ETCゲートに進入する後続車両との車間距離が急に狭まって、減速した車両と後続車両とが接触してしまうおそれもある。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、車両が適切な速度を維持してETCゲートを円滑に通過することを支援する車載用情報通信装置およびこの装置を用いた速度報知方法を提供することを課題とするものである。
上記課題を解決するために、本発明に係る車載用情報通信装置は、路側装置と情報交信を行う通信手段と、車両速度に関する情報の報知を行う報知手段と、車両速度を検出する車速検出手段と、前記通信手段により前記路側装置から発信された前記予備電波を受信した場合に、前記車速検出手段によって検出された前記車両速度を取得し、取得した車両速度が前記通信手段を介して前記路側装置と情報交信を行いつつ前記路側装置の近傍を通過する車両速度として適切な速度である場合には、前記報知手段に当該車両速度が適切な速度である旨の報知を行わせる制御手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明に係る車載用情報通信装置は、路側装置と情報交信を行う通信手段と、GPS信号に基づいて車両位置を検出する車両位置検出手段と、路側装置の位置情報を記録する第1記録手段と、車両速度に関する情報を報知する報知手段と、車両速度を検出する車速検出手段と、該車両位置検出手段により検出された車両位置の周囲に前記路側装置が存在するか否かを、前記第1記録手段に記録される前記路側装置の位置情報に基づいて検出し、該当する路側装置を検出した場合には、前記車速検出手段によって検出された前記車両速度が前記通信手段を介して前記路側装置と情報交信を行いつつ前記路側装置の近傍を通過する車両速度として適切な速度であるか否かを判断し、前記車両速度が適切な速度であった場合には、前記報知手段に当該車両速度が適切な速度である旨の報知を行わせる制御手段とを備えることを特徴とするものであってもよい。
さらに、本発明に係る車載用情報通信装置は、路側装置と情報交信を行う通信手段と、GPS信号に基づいて車両位置を検出する車両位置検出手段と、路側装置の位置情報を記録する第1記録手段と、前記路側装置の近傍を通過するときの予測車両速度に関する情報を報知する報知手段と、前記報知手段により報知を行う地点を前記路側装置から車両位置までの距離に応じて記録する第2記録手段と、車両速度を検出する車速検出手段と、該車両位置検出手段により検出された車両位置から所定の範囲内に前記路側装置が存在するか否かを前記第1記録手段に記録される前記路側装置の位置情報に基づいて検出し、検出された路側装置までの距離が前記第2記録手段に記録された距離よりも近い場合には、前記車速検出手段により検出された車両速度と前記車両位置検出手段により検出された車両位置とに基づいて前記路側装置の近傍を通過するときの車両の予測車両速度を算出し、算出された予測車両速度が前記通信手段を介して前記路側装置と情報交信を行いつつ前記路側装置の近傍を通過する車両速度として適切な速度である場合には、前記報知手段に前記予測車両速度が適切な速度である旨の報知を行わせる制御手段とを備えることを特徴とするものであってもよい。
上記車載用情報通信装置は、前記路側装置が、ETCシステムの料金所近傍に設置されて前記通信手段と料金徴収に必要とされる情報の交信を行う路側情報交信装置であってもよい。
また、前記制御手段が、車載用ETC装置に設けられていてもよく、さらに、前記制御手段が、カーナビゲーション装置に設けられていてもよい。
本発明に係る車載用情報通信装置の速度報知方法は、路側装置と情報交信を行う通信手段と、車両速度に関する情報の報知を行う報知手段と、前記通信手段および前記報知手段を制御する制御手段とを備えた車載用情報通信装置の速度報知方法であって、前記制御手段が、前記路側装置より発信される予備電波を、前記通信手段を介して受信する予備電波受信ステップと、車両速度を検出する車速検出ステップと、前記予備電波受信ステップにおいて前記予備電波を受信した場合に、前記車速検出ステップにより検出された車両速度が前記通信手段を介して前記路側装置と情報交信を行いつつ前記路側装置の近傍を通過する車両速度として適切な速度であるか否かを判断する通過車速判断ステップと、該通過車速判断ステップにおいて判断された車両速度が適切な速度であると判断した場合に、前記報知手段に当該車両速度が適切な車両速度である旨の情報を報知させる報知ステップとを有することを特徴とするものである。
また、本発明に係る車載用情報通信装置の速度報知方法は、路側装置と情報更新を行う通信手段と、前記路側装置の位置情報を記録する第1記録手段と、車両速度に関する情報を報知する報知手段と、前記通信手段および前記報知手段を制御する制御手段とを備えた車載用情報通信装置の速度報知方法であって、前記制御手段が、GPS信号に基づいて車両位置を検出する車両位置検出ステップと、該車両位置検出ステップにより検出された車両位置の周囲に前記路側装置が存在するか否かを前記第1記録手段に記録された路側装置の位置情報に基づいて検索する路側装置検索ステップと、車両速度を検出する車速検出ステップと、前記車両位置検索ステップにより該当する前記路側装置を検出した場合に、前記車速検出ステップによって検出された前記車両速度が前記通信手段を介して前記路側装置と情報交信を行いつつ前記路側装置の近傍を通過する車両速度として適切な速度であるか否かを判断する通過車速判断ステップと、該通過車速判断ステップにおいて判断された車両速度が適切な速度であると判断した場合に、前記報知手段に当該車両速度が適切な速度である旨の報知を行わせる報知ステップとを有することを特徴とするものであってもよい。
さらに、本発明に係る車載用情報通信装置の速度報知方法は、路側装置と情報更新を行う通信手段と、前記路側装置の位置情報を記録する第1記録手段と、車両速度に関する情報を報知する報知手段と、該報知手段により報知を行う地点を前記路側装置から車両位置までの距離に応じて記録する第2記録手段とを備えた車載用情報通信装置の速度報知方法であって、前記制御部が、GPS信号に基づいて車両位置を検出する車両位置検出ステップと、該車両位置検出ステップにより検出された車両位置の所定の範囲内に前記路側装置が存在するか否かを前記第1記録手段に記録された前記路側装置の位置情報に基づいて検索する路側装置検索ステップと、該路側装置検索ステップにより検出された前記路側装置から前記車両位置検出ステップにより検出された車両位置までの距離を算出する距離算出ステップと、該距離算出ステップにより検出された距離が前記第2記録部に記録された距離よりも近いか否かを判断する距離対比ステップと、車両速度を検出する車速検出ステップと、前記距離対比ステップにより距離が近いと判断された場合に、前記車両位置検出ステップにより検出された前記車両位置と前記車速検出ステップにより検出された車両速度とに基づいて、前記路側装置の近傍を通過するときの車両の予測車両速度を算出する予測車速算出ステップと、該予測車速算出ステップにより算出された予測車両速度が前記通信手段を介して前記路側装置と情報交信を行いつつ前記路側装置の近傍を通過する車両速度として適切な速度である場合には、前記報知手段に前記予測車両速度が適切な速度である旨の報知を行わせる報知ステップとを有することを特徴とするものであってもよい。
また、上記車載用情報通信装置の速度報知方法において、前記路側装置が、ETCシステムの料金所近傍に設置されて前記通信手段と料金徴収に必要とされる情報の交信を行う路側情報交信装置であってもよい。
さらに、前記制御手段が、車載用ETC装置に設けられていてもよく、また、前記制御手段が、カーナビゲーション装置に設けられていてもよい。
本発明に係る車載用情報通信装置およびその装置を用いた速度報知方法を用いることによって、路側装置の近傍を通過する車両の車両速度が適切な速度であるか否かを判断し、車両速度が適切な速度であった場合には、車両速度が適切な速度であることを報知手段により報知することができるので、運転者は、必要以上に車両速度を減速させることなく路側装置の近傍を通過することが可能となる。
特に、路側装置がETCシステムの料金所近傍に設置されて前記通信手段と料金徴収に必要とされる情報の交信を行う路側情報交信装置である場合には、料金所に設置される開閉バーが、報知された車両速度を維持することによって確実に開閉されるものと判断することができるため、開閉バーの存在によって生じる心理的な不安・恐怖心により、運転者が必要以上に車両速度を減速させてしまうことを防止することができる。
以下、本発明に係る車載用情報通信装置に該当するETC用車載装置について、図面を用いて説明する。
図1は、実施例1に係るETC用車載装置1の構成を示したブロック図である。実施例1に係るETC用車載装置1は、ETCアンテナ2と、スピーカー3と、表示部4と、ETC本体部5とを有している。
ETCアンテナ2はETCゲートに設置される路側アンテナと情報の交信を行うため、例えば、車室内のインストルメントパネル内部または上面部に、受信部が車両前方を臨むようにして設置される。ETCアンテナ2は、ETCゲートの路側アンテナから情報を受信した場合に、ETC本体部5に対して情報を伝達する役割を有しており、また、ETC本体部5より情報を受信した場合に、路側アンテナに向けてその情報を発信する役割を有している。
スピーカー3は、ETC本体部5からの音声情報に応じてブザー音や特定の音声案内等を運転者に対して発信する。また、表示部4は、ETC本体部5からの表示情報を受信して運転者に対して視認可能なメッセージを出力する。なお、表示部4は文字や記号を表示することが可能な液晶ディスプレイ等であってもいいし、また赤、青等の色によって運転者に注意(報知)を促すLED灯具等であってもよい。
また、ETCアンテナ2、スピーカー3、表示部4はETC本体部5と別体に構成されていてもいいし、ETC本体部5に一体に形成されていてもよい。
ETC本体部5は、無線部6と、カード挿脱部7と、HMI部(ヒューマン・マシーン・インターフェース部)8と、ETC制御部9とを有している。
無線部6は、ETCアンテナ2からの情報を受信してETC制御部9に伝達すると共に、ETC制御部9より受信した情報を、ETCアンテナ2を介して出力する役割を有している。
カード挿脱部7は、カード収納部に挿入されたETCカードのICチップとの交信を行い、ICチップに記録された情報を読み取ってETC制御部9に伝達し、また必要に応じてETC制御部9より受信した情報をICチップに記録する役割を有している。
HMI部8は、ETC制御部9からの情報に応じて、スピーカー3から音声案内を出力したり、表示部4に対して文字情報等を表示させたりする役割を有している。
ETC制御部9は、無線部6、カード挿脱部7、HMI部8に対して制御信号、情報信号等を出力して、各部の制御を行う。ETC制御部9には、車両本体に設置される車速パルス発生装置10より車速パルス信号が入力されており、この車速パルス信号に基づいて、車両の走行速度(車両速度)の検出を行うことが可能となっている。
以下、上述したETC制御部9における速度報知処理を、図2に示すフローチャートを用いて説明する。
まず、ETC制御部9は、カード挿脱部7を介してカード収納部にETCカードが挿入され、ETCカードのICチップからETCゲート通過のために必要な情報を読み取ることができるか否かの判断を行う(ステップS1)。ETCカードより情報が正常に読み取ることができない場合(ステップS1がNOの場合)、ETC制御部9は、後述する処理を実施することなく速度報知処理を終了する。
ETCカードから情報を正常に読み取ることができる場合(ステップS1がYESの場合)、ETC制御部9は、ETCゲートより一定距離手前に設置される予備アンテナから発信されている予備電波を、ETCアンテナ2が受信したか否かを、無線部6を介して判断する(ステップ2)。予備電波を受信した場合(ステップS2でYESの場合)には、所定距離(ETCゲートから予備アンテナまでの距離、例えば100m)離れた場所にETCゲートを備えた料金所が存在し、車両がETCゲートに近づいているものと判断することが可能となる。予備電波を受信しなかった場合(ステップS2でNOの場合)、ETC制御部9は、ステップS2に示す予備電波の受信処理を繰り返し実行してETCゲートの検出を行う。予備電波を受信した場合(ステップS5でYESの場合)、ETC制御部9は、車速パルス発生装置10より受信される車速パルス信号に基づいて車両速度の検出を行う(ステップS3)。
ETC制御部9は、検出された車両速度がETCアンテナ2を介して路側アンテナと情報交信を行いつつETCゲートを通過する車両速度として適切な速度(推奨速度)、例えば、時速10〜20kmの範囲内の車両速度であるか否かの判断を行う(ステップS4)。車両速度が適切な速度でないと判断した場合(ステップS4でNOの場合)、ETC制御部9は、次述するETCアンテナ2と路側アンテナとの情報交信の完了判定処理(ステップS6)へ処理を進める。
車両速度が適切な速度であると判断した場合(ステップS4でYESの場合)、ETC制御部9は、HMI部8を介して、スピーカー3から安全にETCゲートを通過することが可能な車両速度で走行している旨の音声案内を出力させたり、表示部4に安全にETCゲートを通過することが可能な車両速度で走行している旨のメッセージを表示させたりして(ステップS5)、運転者に対して現在の走行速度を維持するように注意を促す。その後、ETC制御部9は、ETCゲートの路側アンテナと、ETCアンテナ2との間で料金徴収に必要な情報の交信が完了したか否かを判断し(ステップS6)、料金徴収が完了するまで、ステップS3以降の処理を繰り返し行う。必要な情報の交信が完了した場合(ステップS6でYESの場合)、ETC制御部9は、速度報知処理を終了する。
このように、ETC制御部9が、ETCゲートに車両が近づいていることを予備電波に基づいて求め、ETCゲートに進入する車両速度が適切な速度であるか否かを判断することにより、車両速度が適切な速度であった場合には運転者に走行速度の維持を促す音声案内等を出力することができるので、運転者は、開閉バーが閉じられた状態であっても、その速度を維持すれば開閉バーが開放されるものと判断することができ、心理的な不安・恐怖心に基づいて必要以上に車両速度を減速させてしまうことを防止することができる。
なお、上記速度報知処理において、車両速度が時速10〜20kmの範囲内であるかどうか判断(ステップS4)を行った後に、車両速度が時速20km以上である場合には、車両速度が適切な速度に比べて高すぎる旨の音声案内やメッセージ表示を行うことによって、車両速度を適切な速度に導きやすくなる。さらに、車両速度が時速10km以下の場合には、車両速度が適切な速度に比べて低すぎる旨の音声案内やメッセージ表示を行うことによって、車両速度を適切な速度に導くように、処理を行ってもよい。このような処理を行うことによって、運転者は、走行車両の速度が適切な速度よりも高いのか低いのかを、速度計等を見ることなく判断することができ、より安全に車両速度の調整を行うことが可能となる。
また、実施例1において説明したETC用車載装置1では、ETC制御部9が直接車速パルス信号を検出して車両速度を判断し、スピーカー3および表示部4を介して運転者に速度維持案内等を行う構成となっているが、必ずしもETC制御部9が直接、車速検出、音声案内、メッセージ表示等を行う必要はない。例えば、今日ではカーナビゲーション装置を装備する車両が多く存在し、一般的なカーナビゲーション装置では、車両案内処理のために車速パルス信号を検出して車両速度を判断する機能と、スピーカーおよび表示部を介して運転者に走行に関する案内を行う機能を備えている。このため、予備電波を受信してETCゲートを備えた料金所が存在すると判断した場合(ステップS2でYESの場合)、ETC制御部9は、カーナビゲーション装置で検出された車両速度情報を利用して車両速度を判断し、車両速度が時速10〜20kmであると判断した場合には、カーナビゲーション装置に速度維持案内等に関する情報を送信し、カーナビゲーション装置のスピーカーまたは表示部を介して、運転者へ車両速度が適切な速度である旨の案内を行う構成としてもよい。
次に、実施例2に係るETC用車載装置について説明を行う。実施例2に係るETC用車載装置は、予備電波の受信の有無によって料金所の存在を判断するのではなく、カーナビゲーション装置の地図情報に基づいて料金所の存在を判断する点で実施例1に示すETC用車載装置と相違する。なお、実施例2におけるETC用車載装置に関して、実施例1において説明した構成と同一の機能を有する部分については同一符号を付すものとし、その詳細な説明は省略するものとする。
図3は、実施例2に係るETC用車載装置20の構成を示したブロック図である。実施例2に係るETC用車載装置20は、ETC機能部分とカーナビゲーション機能部分とによって構成されており、図3示すように、ETC機能部21とETCアンテナ2と、カーナビゲーション本体部22と、音声出力部23と、表示部24と、入力部25と、GPSアンテナ26とを有している。
ETC機能部21は、ETC制御部9と、無線部6と、カード挿脱部7とを有している。ETCアンテナ2により受信された情報は、無線部6を介してETC制御部9に伝達される。
カーナビゲーション本体部22は、GPS検出部28と、データベース記録部29と、メモリ部30と、ユーザインターフェース部31と、メイン制御部32とを有している。
GPS検出部28は、GPSアンテナ26を介して受信されたGPS情報の検出判断を行い、検出されたGPS情報をメイン制御部32に伝達する。
データベース記録部29には、地図情報および地図情報に付随するETCゲートの位置情報等が記録されている。データベース記録部29として、今日ではハードディスクドライブ等が多く用いられるが、DVDドライブやCDドライブ等であってもよい。
メモリ部30は、メインプログラムを格納し、起動時にメイン制御部32よりアクセスされるROMと、メインプログラムを読み出すために使用されるDRAMと、電源オフの状態であっても必要とされる情報を維持するSRAMと、表示部24に文字等の情報を表示する際に使用されるVRAMとにより構成されている。
ユーザインターフェース部31は、メイン制御部32からの情報に応じて、音声出力部23から音声を出力したり、表示部24に対して文字情報等を表示させたりする役割を有している。
メイン制御部32は、GPS検出部28、データベース記録部29、メモリ部30、ユーザインターフェース部31に対して制御信号、情報信号等を出力して、各部の制御を行う。メイン制御部32には、車両本体に設置される車速パルス発生装置10より車速パルス信号が入力されており、この車速パルス信号に基づいて、車両の走行速度を判断することが可能となっている。
また、メイン制御部32は、ETC制御部9とのデータの交信を行うことによって、ETCアンテナ2と路側アンテナとの情報の交信の有無等を判断することが可能となっている。
GPSアンテナ26は、上空約2万kmを周回するGPS衛星より発信された電波を受信してGPS検出部28に出力する。
表示部24は、メイン制御部32からの表示情報を受信し、運転者に対して視認可能な文字情報等を出力する。表示部24は、液晶ディスプレイであり、車室内のインストルメントパネルの上面部等、運転者が視認しやすい場所に設置される。
音声出力部23は、メイン制御部32からユーザインターフェース部31を介して出力される音声情報に応じて、ブザー音や特定の音声案内等を出力する。音声出力部23は、液晶ディスプレイにスピーカーとして設けられる。なお、音声出力部23としてのスピーカーは、必ずしも液晶ディスプレイに設けられている必要はなく、カーナビゲーション本体部22に設けられていても、また、独立に設けられていてもよい。
入力部25は、運転手等がカーナビゲーション本体部の操作を行う際に使用される入力手段であり、例えば、液晶ディスプレイに設けられるタッチパネルや、操作用のリモコン等がこれに該当する。
次に、上述したメイン制御部32における速度報知処理を、図4に示すフローチャートを用いて説明する。
まず、メイン制御部32は、ETC制御部9を介してカード挿脱部7のカード収納部にETCカードが挿入され、ETCカードのICチップからETCゲート通過のために必要な情報を読み取ることができるか否かの判断を行う(ステップS11)。ETCカードより情報が正常に読み取ることができない場合(ステップS11でNOの場合)には、後述する処理を実施することなく速度報知処理を終了する。
ETCカードから情報を正常に読み取ることができる場合(ステップS1でYESの場合)、メイン制御部32は、GPSアンテナ26を介して受信したGPS衛星の電波より自車両の車両位置を求め(ステップS12)、車両位置に対応する地図情報をデータベース記録部29より読み出して、車両から所定距離(例えば100m)以内の場所に、ETCゲートを備えた料金所が存在するか否かを判断する(ステップS13)。ETCゲートが所定距離以内に存在しないと判断した場合、メイン制御部32は、ステップS12に示す車両位置検出処理を再度行い行い、ETCゲートが存在しないか否かの判断(ステップS13)を繰り返し実行する。ETCゲートが所定距離以内に存在すると判断した場合、メイン制御部32は、車速パルス発生装置10より受信される車速パルス信号に基づいて車両速度の検出を行う(ステップS14)。
メイン制御部32は、検出された車両速度が、ETCアンテナ2を介して路側アンテナと情報交信を行いつつETCゲートを通過する車両速度として適切な速度、例えば、時速10〜20kmの範囲内の速度であるか否かの判断を行う(ステップS15)。車両速度が適切な速度でないと判断した場合(ステップS15でNOの場合)、メイン制御部32は、次述するETCアンテナ2と路側アンテナとの情報交信の完了判定処理(ステップS17)へ処理を移行する。
車両速度が適切な速度であると判断した場合(ステップS15でYESの場合)、メイン制御部32は、ユーザインターフェース部31を介して、音声出力部32から安全にETCゲートを通過することが可能な車両速度で走行している旨の音声案内を出力させたり、表示部24に安全にETCゲートを通過することが可能な車両速度で走行している旨のメッセージを表示させたりして(ステップS16)、運転者に対して現在の走行速度を維持するように注意を促す。その後、メイン制御部32は、ETCゲートの路側アンテナと、ETCアンテナ2との間で料金徴収に必要な情報の交信が完了したか否かを判断し(ステップS17)、料金徴収が完了するまで、ステップS14以降の処理を繰り返し実行する。必要な情報の交信が完了した場合(ステップS17でYESの場合)、メイン制御部32は、速度報知処理を終了する。
このように、メイン制御部32が、ETCゲートに車両が近づいていることをデータベース記録部29に記憶される地図情報等に基づいて求め、ETCゲートに進入する車両速度が適切な速度であるか否かを判断し、車両速度が適切な速度であった場合には運転者に走行速度の維持を促す音声案内等を出力することができるので、運転者は、開閉バーが閉じられた状態であっても、その速度を維持すれば開閉バーが開放されるものと判断することができ、心理的な不安・恐怖心に基づいて必要以上に車両速度を減速させてしまうことを防止することができる。
なお、実施例2においても実施例1と同様に、上記速度報知処理において車両速度が時速10〜20kmの範囲内に存在するか否かの判断(ステップS15)を行った後に、車両速度が時速20km以上である場合には、車両速度が適切な速度に比べて高すぎる旨の音声案内やメッセージ表示を行うことによって車両速度を適切な速度に導き、車両速度が時速10km以下の場合には、車両速度が適切な速度に比べて低すぎる旨の音声案内やメッセージ表示を行うことによって車両速度を適切な速度に導くように処理を行ってもよい。このような処理を行うことによって、運転者は、走行車両の速度が適切な速度よりも高いのか低いのかを、速度計等を見ることなく判断することができるので、より安全に車両速度の調整を行うことが可能となる。
さらに、上述した実施例2においては、ETC機能部21とカーナビゲーション本体部22とを別の構成とした場合について説明を行ったが、図5に示すように、ETC機能部5の無線部6とカード挿脱部7とをカーナビゲーション本体部34に設け、ETC制御部9の機能をメイン制御部32aによって処理させる構成としてもよい。このように構成することによって、ETC機能部5とカーナビゲーション本体部22とを一体とすることができ、設置スペースの低減、システム全体の小型化等を図ることが容易となる。
次に、実施例3に係るETC用車載装置について説明を行う。実施例3に係るETC用車載装置は、実施例2において図3を用いて説明したETC用車載装置20と同一構成であるため、本実施例における詳しい説明は省略する。
図6は、実施例3におけるメイン制御部32の速度報知処理を示したフローチャートである。以下、このフローチャートに基づいてメイン制御部32の速度報知処理を説明する。
まず、メイン制御部32は、初期値設定処理を行う(ステップS21)。この初期値設定処理は、後述する既設距離の初期値および最終距離を設定等する処理である。ここで、既設距離とは、ETC用車載装置20により音声案内等を開始する地点を車両とETCゲートを備える料金所との距離に基づいて設定した値である。また、最終距離とは、既設距離として設定された値よりもさらに小さな値が設定され、ETCゲートに車両が進入してETCゲートとETCアンテナとで料金徴収に必要な情報の交信が行われる料金所直前の距離を意味する。本実施例では、既設距離の初期値として、500mの距離を設定し、最終距離として100mを設定する。既設距離および最終距離の値はメモリ部30に記憶される。
次に、メイン制御部32は、ETC制御部9を介してカード挿脱部7のカード収納部にETCカードが挿入され、ETCカードのICチップからETCゲート通過のために必要な情報を読み取ることができるか否かの判断を行う(ステップS22)。ETCカードより情報が正常に読み取ることができない場合(ステップS22でNOの場合)には、後述する処理を実施することなく速度報知処理を終了する。
ETCカードから情報を正常に読み取ることができる場合(ステップS22でYESの場合)、メイン制御部32は、GPSアンテナ26を介して受信したGPS衛星の電波より車両位置を求め(ステップS23)、車両位置に対応する地図情報をデータベース記録部29より読み出して、車両の所定の範囲内(例えば、1kmの範囲内)にETCゲートが存在するか否かの判断を行う(ステップS24)。ETCゲートが検出さず、ETCゲートが所定の範囲内に存在しないと判断した場合、メイン制御部32は、車両位置検出処理を再度行い(ステップS23)、ETCゲートが存在するか否かの判断を繰り返し実行する(ステップS24)。
ETCゲートが検出され、ETCゲートが所定の範囲内に存在すると判断した場合、制御部は、自車両の車両位置からETCゲートまでの距離を算出すると共に、算出された距離がメモリ部30に記録される既設距離よりも短いか否かの判断を行う(ステップS25)。初めてステップS25の処理を行う場合には、初期値設定処理(ステップS21)において設定された値である500mより短いか否かの判断を行う。
算出された距離が既設距離、例えば500mよりも遠い場合(ステップS25でNOの場合)、メイン制御部32は、ステップS23〜ステップS25の処理を、繰り返し実行する。
算出された距離が既設距離よりも短い場合、つまり、車両が既設距離よりもETCゲートに接近している場合、メイン制御部32は、車速パルス発生装置30より受信される車速パルス信号に基づいて車両の走行速度の検出を行う(ステップS26)。
その後、メイン制御部32は、車両位置からETCゲートまでの距離が、メモリ部30に記録される最終距離よりも短いか否かの判断を行う(ステップS27)。
ETCゲートまでの距離が最終距離よりも長い場合、つまり、車両がETCゲートから最終距離(100m)以上離れていると判断した場合(ステップS27でNOの場合)、メイン制御部32は、メモリ部30に記録された前回の車両速度(旧車両速度)と、今回検出された車両速度との速度差と、前回メモリ部30に車両速度を記憶したときの旧既設距離と今回の既設距離との差とを用いて車両の減速率を算出し、算出された減速率に基づいてETCゲートを通過するときの車両速度を予測する(ステップS30)。なお、初めてこの処理を行う場合には、前回の車両速度および旧既設距離の値を求めることができないため、車両速度の予測を行うことなく、後述するステップS31の処理に移行する。
次に、メイン制御部32は、予測された車両速度(予測車両速度)が、ETCアンテナ2を介して路側アンテナと情報交信を行いつつETCゲートを通過する車両速度として適切な速度、例えば、時速10〜20kmの範囲内の車両速度であるか否かの判断を行う(ステップS29でYESの場合)。予測車両速度が適切な速度であると判断した場合、メイン制御部32は、ユーザインターフェース部31を介して、音声出力部23からこのままの割合で減速を続けて走行するによって、ETCゲートを通過するときに予想される車両速度が最適な車両速度となる旨の音声案内を出力させたり、表示部24に、このままの割合で減速を続けることによって、ETCゲートを通過するときに予想される車両速度が最適な車両速度となる旨のメッセージを表示させたりし(ステップS30)、運転者に対して、このままの割合で減速を続けるように注意(報知)を促す。予測された車両速度(予測車両速度)がETCゲートを通過するのに適切な速度でないと判断した場合(ステップS29でNOの場合)、メイン制御部32は、音声案内出力・メッセージ表示処理(ステップS30)を行うことなく次の処理(ステップS31)に移行する。
その後、メイン制御部32は、既設距離を旧既設距離としてメモリ部30に記録させると共に、既設距離の値から100m引いた値を新たな既設距離として、メモリ部30に記録する(ステップS31)。2回目以降に、ETCゲートまでの距離が既設距離よりも短いか否かの判断を行う場合(ステップS25)には、新たに設定された既設値(500m―100m=400m)に基づいて判断が行われる。
また、メイン制御部32は、今回検出された車両速度を旧車両速度としてメモリ部30に記録し(ステップS31)、ステップS23に示す車両位置検出処理を繰り返し実行する。
ETCゲートまでの距離が最終距離よりも短い場合、つまり、最終距離(100m)よりも近い位置まで車両がETCゲートに接近していると判断した場合(ステップS27でYESの場合)、メイン制御部32は、検出された車両速度が、ETCアンテナ2を介して路側アンテナと情報交信を行いつつETCゲートを通過する車両速度として適切な速度、例えば、時速10〜20kmの範囲内の速度であるか否かの判断を行う(ステップS32)。車両速度が適切な速度でないと判断した場合(ステップS32でNOの場合)、メイン制御部32は、次述するETCアンテナ2と路側アンテナとの情報交信の完了判定処理(ステップS34)へ処理を移行する。
車両速度が適切な速度であると判断した場合(ステップS32でYESの場合)、メイン制御部32は、ユーザインターフェース部31を介して、音声出力部23から安全にETCゲートを通過することが可能な車両速度で走行している旨の音声案内を出力させたり、表示部24に安全にETCゲートを通過することが可能な車両速度で走行している旨のメッセージを表示させたりして(ステップS33)、運転者に対して現在の走行速度を維持するように注意を促す。その後、メイン制御部32は、ETCゲートの路側アンテナと、ETCアンテナ2との間で料金徴収に必要な情報の交信が完了したか否かを判断し(ステップS34)、料金徴収が完了するまで、ステップS23以降の処理を繰り返し行う。必要な情報の交信が完了した場合(ステップS34でYESの場合)、メイン制御部32は、速度報知処理を終了する。
このように、メイン制御部32が、ETCゲートに車両が近づいていることをデータベース記録部29に記憶される地図情報等に基づいて求め、ETCゲートから既設距離に接近する毎に(400m、300m、200m)、車両がETCゲートを通過するときの予測車両速度を求めて、車両速度の減速を維持することによって適切な速度でETCゲートを通過可能である旨を運転者に伝えることができるので、運転者は、実施例1および実施例2に比べてETCゲートまでの距離が遠い場所から車両速度が適切な速度となるように順調に減速されていることと認識することができる。さらに、最終距離(100m)まで接近した場合には、車両速度を維持する旨の音声案内またはメッセージ表示が行われるので、運転者は、開閉バーが閉じられた状態であってもその速度を維持すれば開閉バーが開放されるものと判断することができ、心理的な不安・恐怖心に基づいて必要以上に車両速度を減速させてしまうことを防止することができる。
なお、実施例3においても、実施例1、2と同様に、上記速度報知処理において車両速度が時速10〜20kmの範囲内の速度であるか否かの判断(ステップS29およびステップS32)を行った後に、車両速度が時速20km以上である場合には、車両速度が適切な速度に比べて高すぎる旨の音声案内やメッセージ表示を行うことによって車両速度を適切な速度に導き、車両速度が時速10km以下の場合には、車両速度が適切な速度に比べて低すぎる旨の音声案内やメッセージ表示を行うことによって車両速度を適切な速度に導くように処理してもよい。このような処理を行うことによって、運転者は、走行車両の速度が適切な速度よりも高いのか低いのかを、速度計等を見ることなく判断することができるので、より安全に車両の速度調整を行うことが可能となる。
さらに、上述した実施例2と同様に、図5に示すように、ETC機能部5の無線部6とカード挿脱部7とをカーナビゲーション本体部34に設け、ETC制御部9の機能をメイン制御部32aにより処理する構成としてもよい。このように構成することによって、ETC機能部5とカーナビゲーション本体部22とを一体とすることができ、設置スペースの低減、システム全体の小型化等を図ることが容易となる。
以上、本発明に係る車載用情報通信装置に該当するETC用車載装置について、実施例1〜実施例3により図面を用いて説明したが、本発明に係る車載用情報通信装置は上述した実施例に限定されるものではない。例えば、実施例1〜3において、車両がETCゲートを通過するのに適切な速度(推奨速度)として、時速10〜20kmの範囲内の車両速度を用いて説明を行ったが、適切な速度(推奨速度)はこの速度に限定されるものではなく、正確にETCアンテナと路側アンテナとで情報の交信を行うことができ、開閉バーが開放しなかった場合に車両が開閉バーの手前で止まることが可能な速度であれば、時速10〜20kmよりも低い速度域であっても高い速度域であってもよい。
さらに、実施例3において既設距離の初期値として500mを設定し、図6のステップS31において、既設距離の値を100m除算する処理を行ったが、この初期値は500mでなくてもよく、また、ステップS31において除算する値は100m以外の値であってもよい。
実施例1に係るETC用車載装置の構成を示したブロック図である。
実施例1におけるETC制御部の速度報知処理を示したフローチャートである。
実施例2および実施例3に係るETC用車載装置の構成を示したブロック図である。
実施例2におけるメイン制御部の速度報知処理を示したフローチャートである。
実施例2および実施例3に係るETC用車載装置の他の構成を示したブロック図である。
実施例3におけるメイン制御部の速度報知処理を示したフローチャートである。
符号の説明
1,20,30 ETC用車載装置(車載用情報通信装置)
2 ETCアンテナ(通信手段)
3 スピーカー(報知手段)
4、24 表示手段(報知手段)
5 ETC制御部(制御手段)
6 無線部(通信手段)
7 カード挿脱部
8 HMI部
9 ETC制御部(制御手段)
10 車速パルス発生装置
23 音声出力部(報知手段)
26 GPSアンテナ
29 データベース記録部(第1記録部)
30 メモリ部(第2記録部)
31 ユーザインターフェース部
32、32a メイン制御部(制御手段)