JP4697885B2 - 複合化粒子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、複合化粒子の製造方法に関する。さらに詳しくは、撥水性、撥油性、光学特性、紫外線防御性、感触、安全性、活性、色調、分散安定性、耐候性が制御された、塗料、インクジェット型プリンター用インク、トナー、燃料電池、発光ダイオード、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、化粧品等に好適に使用しうる複合化粒子の製造方法に関する。
母粒子の表面に子粒子を複合化させる方法としては、機械的混合によって複合化させるドライブレンド法(例えば、特許文献1参照)、粒子を有機溶媒に分散させ、得られるスラリーをスプレードライ法によって溶媒を蒸発させる溶媒揮散法(例えば、特許文献2参照)、有機微粒子を臨界温度以上かつ4MPa以上の圧力の二酸化炭素中で可塑化させ、減圧により二酸化炭素を除去する方法(例えば、特許文献3参照)などが知られている。
しかしながら、ドライブレンド法では、母粒子への子粒子の固着性が弱いという欠点がある。さらに、複合化できる母粒子と子粒子の組み合わせにおいて、粒子の材質や形状に制約がある。また、溶媒揮散法や貧溶媒法では、使用される有機溶媒に引火の恐れがあり、得られた粒子に有機溶媒が残留すると人体に有害であったり、においの悪化を招く恐れがある等の欠点があり、また加熱による脱溶媒操作が必要となる。さらに、溶媒が使用されることにより毛管凝縮作用が起き、得られる粒子が凝集するため、解砕・分級工程が必要とされる等、操作が煩雑であるという欠点がある。また、二酸化炭素を用いる方法は、有機微粒子を子粒子として可塑化することにより、有機微粒子を母粒子の表面に固着させて複合化粒子を得る方法であり、子粒子の材質に制限がある。
特開平9−12430号公報 特開平9−48707号公報 特開2005−179349号公報
本発明は、人体に対して有害な有機溶媒を用いることなく、簡便な製造工程により、有機微粒子をバインダーとして母粒子の表面に子粒子が固着した複合化粒子の製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、母粒子と有機微粒子との混合物を、20℃以上かつ4MPa以上の圧力の二酸化炭素の存在下におき、該有機微粒子を可塑化し、二酸化炭素を除去して、有機微粒子が母粒子の表面に固着した粒子(粒子A)を製造する第一工程、並びに粒子Aと子粒子との混合物を、20℃以上かつ4MPa以上の圧力の二酸化炭素の存在下におき、該粒子Aに固着した該有機微粒子を可塑化し、二酸化炭素を除去して粒子Aの表面に子粒子が固着した複合化粒子(粒子B)を製造する第二工程を含む複合化粒子の製造方法に関する。
本発明の方法で製造された複合化粒子は、凝集が少なく、有機微粒子をバインダーとして母粒子の表面に子粒子が固着しているため、攪拌・混合における機械的エネルギーによっても子粒子が母粒子から剥離し難く、この複合化粒子を用いてさらなる工程を行っても、複合化粒子における高い性能が維持される。
本発明により得られる複合化粒子は、有機微粒子をバインダーとして子粒子が母粒子の表面に固着しているもの、即ち、有機微粒子を介して母粒子と子粒子が複合化したものであって、母粒子と子粒子の間に有機微粒子が存在する構成、具体的には、母粒子の表面の一部又は全部が有機微粒子で被覆されたものの表面に子粒子が固着された構成を有するものである。また、バインダーとして用いられる有機微粒子は塑性変形し、可塑化前の形状よりも偏平な形状で母粒子及び子粒子に密着した状態で固着したものである。本発明において「固着」とは、有機微粒子が母粒子及び子粒子表面に接着し、剥離しにくい状態のものを意味する。
本発明は、母粒子、子粒子及びバインダーとなる有機微粒子を用い、
第一工程:母粒子と有機微粒子との混合物を、20℃以上かつ4MPa以上の圧力の二酸化炭素の存在下におき、有機微粒子を可塑化し、二酸化炭素を除去して、有機微粒子が母粒子の表面に固着した粒子(粒子A)を製造する工程、並びに
第二工程:粒子Aと子粒子との混合物を、20℃以上かつ4MPa以上の圧力の二酸化炭素の存在下におき、該粒子Aに固着した有機微粒子を可塑化し、二酸化炭素を除去して粒子Aの表面に子粒子が固着した複合化粒子(粒子B)を製造する工程
を有する方法により、前記複合化粒子を製造する方法である。即ち、第一工程において、有機微粒子を可塑化により、母粒子の表面に固着させた後、第二工程において、再度有機微粒子を可塑化させることにより子粒子を有機微粒子に固着させて、有機微粒子をバインダーとして母粒子の表面に子粒子が固着した複合化粒子が得られる。本発明の方法を用いれば、バインダーとして用いる有機微粒子が二酸化炭素に接触することで可塑化し、形状が変形するため、母粒子及び子粒子との接触面積が大きくなり、固着力が向上する。従って、本発明により得られる複合化粒子は、有機微粒子をバインダーとして子粒子が母粒子の表面に強固に固着しているという優れたものである。さらに、本発明の方法では、有機微粒子をバインダーとして用いるため、材質や形状面において利用可能な母粒子と子粒子の選択の範囲も広い。
母粒子及び子粒子としては、20℃以上かつ4MPa以上の圧力の二酸化炭素に実質的に溶解せず、かかる二酸化炭素との接触においてもその形状及び形態が変化しないものを使用することができる。
母粒子及び子粒子としては、例えば、PMMA(ポリメチルメタクリレート)等のアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ナイロン等のポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂、並びにエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂等の高分子化合物、酸化チタン、シリカ、マイカ、タルク、カオリン、セリサイト、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸、硫酸バリウム、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、カーボンブラック、マンガンバイオレット、チタン被覆雲母(チタンマイカ)、ガラスビーズ、ゼオライト等の無機化合物、及びこれらの複合体等が挙げられる。
母粒子の平均粒径は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜1,000μm、より好ましくは0.2〜500μm、さらに好ましくは0.2〜100μmである。
子粒子の平均粒径は、母粒子への固着性の観点から、母粒子の平均粒径未満(即ち、母粒子の1/1未満)が好ましい。また、子粒子の平均粒径は、子粒子の凝集性の観点から、母粒子の平均粒径の1/10000以上が好ましく、1/1000以上がより好ましく、1/500以上がさらに好ましい。
また、子粒子の平均粒径は、好ましくは0.01〜100μm、より好ましくは0.05〜50μm、さらに好ましくは0.1〜20μmである。
なお、本明細書にいう「平均粒径」とは、レーザー回折/散乱法で測定された体積基準粒度分布から算出される平均径を意味する。
母粒子及び子粒子の形状は、特に限定されず、例えば、球状、板状、不定形の粒子が挙げられる。
母粒子は2種以上を混合して用いても良い。同様に子粒子も2種以上を混合して用いても良い。
子粒子の量は、母粒子1重量部に対して0.001重量部以上が好ましく、0.005重量部以上がより好ましく、0.01重量部以上がさらに好ましい。また、子粒子のみの凝集を抑制するために、母粒子1重量部に対して5重量部以下が好ましく、3重量部以下がより好ましく、1重量部以下がさらに好ましい。
有機微粒子としては、20℃以上かつ4MPa以上の圧力の二酸化炭素に溶融又は可塑化するものを用いることができ、高分子化合物が好ましく用いられる。かかる高分子化合物としては、例えば、PMMA(ポリメチルメタクリレート、ガラス転移点(Tg):72〜130℃)等のアクリル樹脂、ポリエチレン(融点(Tm):108〜136℃)、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン(Tg:80〜100℃)、ポリ塩化ビニル(Tg:70〜87℃)、ポリエチレンテレフタレート(Tg:69℃)等のポリエステル、ポリカーボネート(Tg:145〜150℃)、ナイロン等のポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂、並びにエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂、シリコーン系有機化合物、シラン系有機化合物、フッ素系有機化合物等が挙げられる。なお、上記の物性は「プラスチックス」Vol.51, No.12(工業調査会発行)等による。これらの高分子化合物の中では、Tg又はTmが50〜200℃の高分子化合物が好ましく、50〜130℃の高分子化合物がより好ましい。ここに、Tg及びTmはJIS K 7121:1987(プラスチックの転移温度測定方法)で測定した値である。
シリコーン系有機化合物としては、例えば、特開2002−210356号公報、特開2004−82089号公報等に開示されているメチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジエンポリシロキサン、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ポリエーテル変性シリコーン、メチルスチリル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、高級アルコキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、シリコーン変性アクリル樹脂等が挙げられる。
シリコーン系有機化合物は、重量平均分子量が500〜500000であることが好ましく、1000〜300000であることがより好ましい。
シラン系有機化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
シラン系有機化合物は、重量平均分子量が500〜500000であることが好ましく、1000〜300000であることがより好ましい。
フッ素系有機化合物としては、例えば、特開2002−210356号公報、特開2004−82089号公報等に開示されているパーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキシド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル含有オリゴマー、パーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩、フルオロシリコーン、パーフルオロアルキル基を有するアクリレート又はメタクリレートの単独重合体及び共重合体、パーフルオロポリエーテル、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。これらのうち、二酸化炭素への溶解が容易であるという観点から、フルオロアルキル基又はパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体、フルオロアルキル基又はパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル−長鎖アルキル(メタ)アクリレート共重合体が好ましい。また、炭素数4以上のパーフルオロアルキル基、ポリフルオロアルキル基、又はパーフルオロポリエーテル基を有する(メタ)アクリレートの単独重合体、及びこの化合物と炭素数8〜22のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとの共重合体がより好ましい。
フッ素系有機化合物は、フッ素原子の質量組成比が9〜80質量%であるのが好ましく、20〜70質量%であるのがより好ましく、40〜65質量%であるのがさらに好ましい。また、ぽフッ素系有機化合物は、25℃において固体であるという観点から、重量平均分子量が3000〜500000であることが好ましく、5000〜300000であることがより好ましい。
また20℃以上かつ4MPa以上の圧力の二酸化炭素に溶解する有機化合物であっても、溶解しない処理温度及び圧力下で用いる場合や処理時間が短い場合には二酸化炭素に可塑化する有機化合物となりうる。
有機微粒子の平均粒径は、母粒子への固着性の観点から、母粒子の平均粒径の1/5以下が好ましく、1/7以下がより好ましく、1/10以下がさらに好ましい。また、有機微粒子の平均粒径は、有機微粒子の凝集性の観点から、母粒子の平均粒径の1/10000以上が好ましく、1/1000以上がより好ましく、1/500以上がさらに好ましい。
また、有機微粒子の平均粒径は、好ましくは0.01〜100μm、より好ましくは0.05〜50μm、さらに好ましくは0.1〜20μm、さらに好ましくは0.1〜3μm、さらに好ましくは0.1〜1μmである。有機微粒子の形状は、特に限定されない。
有機微粒子の量は、固着性の観点から、母粒子1重量部に対して0.001重量部以上が好ましく、0.005重量部以上がより好ましく、0.01重量部以上がさらに好ましい。また、有機微粒子の量は、有機微粒子のみの凝集を抑制するために、母粒子1重量部に対して5重量部以下が好ましく、3重量部以下がより好ましく、1重量部以下がさらに好ましい。
以下、第一工程について説明する。
第一工程では、まず、母粒子と有機微粒子との混合物を、20℃以上かつ4MPa以上の圧力の二酸化炭素の存在下におき、有機微粒子を可塑化させる。
「有機微粒子の可塑化」とは、有機微粒子が溶解することなく溶融又は可塑化して変形していることを意味する。例えば、有機微粒子が可塑化前に真球であった場合、有機微粒子が母粒子と接触している部分は偏平になり、母粒子と面で接触するという態様が挙げられる。また、有機微粒子の母粒子と接触していない部分は概略球状を維持している態様が挙げられる。また、有機微粒子同士が隣接している場合、可塑化により一部が互いに融着し、場合によっては網目状の形状になる態様や可塑化により互いに融着し、母粒子の表面を被覆している態様が挙げられる。
二酸化炭素の存在下、有機微粒子を可塑化させる際の温度は、有機微粒子の可塑性に依存するが、可塑化を効率的に行う観点から、20℃以上であり、二酸化炭素の臨界温度(31℃)以上が好ましい。
また、二酸化炭素の存在下、有機微粒子を可塑化させる際の圧力は、有機微粒子の可塑性に依存するが、4MPa以上であり、10MPa以上がより好ましい。高圧においては二酸化炭素の密度が高くなるため、母粒子の流動性が良好となり、粒子の凝集性が改善されるという観点より、圧力は高い方が好ましい。圧力の上限は、設備のコストや二酸化炭素の除去や減圧を効率的に行う観点から、50MPa以下が好ましく、40MPa以下がより好ましい。
高圧の二酸化炭素は、高分子化合物に対して幅広い溶解度を示す。二酸化炭素の溶解(収着)によって有機微粒子は膨潤し、その結果、有機微粒子の可塑性が、その融点又はガラス転移点(Tg)以下の温度であっても大幅に増大する。このため、有機微粒子を20℃以上かつ高圧、特に4MPa以上の二酸化炭素に接触させることで有機微粒子の可塑性を増大させることができ、有機微粒子を変形させることで母粒子及び子粒子表面への接触面積を増大させ、それらの強固な固着を実現することが可能となるのである。可塑化の際、有機微粒子と接触させる二酸化炭素は、20℃以上かつ4MPa以上の二酸化炭素が好ましく、有機化合物への二酸化炭素の溶解度を高くすることができる、また、二酸化炭素の密度を高くすることにより粒子の流動性を向上させることができるという観点から超臨界二酸化炭素がより好ましい。
第一工程に供する母粒子と有機微粒子の混合物は、例えば、高速流動型混合機等で母粒子と有機微粒子をあらかじめ混合して得られた混合物であることが好ましい。
また、20℃以上かつ4MPa以上の圧力の二酸化炭素の存在下、有機微粒子を可塑化させる際には、有機微粒子の可塑化を促進するために、可塑剤を共存させてもよい。可塑剤は、20℃以上かつ4MPa以上の圧力の二酸化炭素に溶解又は乳化可能なものが好ましい。
可塑剤としては、例えば、p-メトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル、フタル酸エステル、リン酸エステル、脂肪族一塩基酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、二価アルコールエステル、オキシ酸エステル等が挙げられる。
また、有機微粒子が二酸化炭素による可塑化を受けにくい物質の場合には、エントレーナとして人体に無害な助溶媒を加えて可塑化の促進を行ってもよい。助溶媒としては、極性溶媒が好ましく、例えば、アルコール、アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、水等が挙げられる。前記アルコールは、エタノール及び1-プロパノールが好ましく、エタノールがより好ましい。
二酸化炭素の仕込みに関して、二酸化炭素存在下での有機微粒子の融点又はガラス転移点以下の温度で母粒子が良好な流動状態となるまで二酸化炭素を導入する。二酸化炭素を導入した後、攪拌し、有機微粒子が可塑化する温度まで昇温することで粒子の凝集性を改善することができる。
二酸化炭素の存在下、有機微粒子を可塑化させる時間は、子粒子の可塑性に依存するが、好ましくは1分〜20時間、さらに好ましくは5分〜5時間、さらに好ましくは15分〜3時間である。
可塑化工程中に容器内を攪拌することで、母粒子の流動性が良好となり、粒子の凝集性を改善することができる。
次に、有機微粒子を可塑化した後、二酸化炭素を除去することにより、有機微粒子が母粒子の表面に固着した粒子(粒子A)が得られる。
二酸化炭素を除去して粒子Aを得る方法としては、例えば、得られた混合物を容器外に排出することにより、粒子Aと二酸化炭素とを分離して、粒子Aを得る方法等が挙げられるが、二酸化炭素は、前記のように、高圧下で高分子化合物に対して幅広い溶解度を示す一方で、圧力を減少させると有機微粒子に対する溶解度を急激に低下させることができる。従って、本発明では、容器内で減圧操作のみにより粒子Aと二酸化炭素との分離が可能となる。
容器内で粒子Aを得る方法では、母粒子の表面に有機微粒子を可塑化により固着させた後、例えば、容器に備えられているバルブ等を開放して容器内の圧力を大気圧まで減圧することにより、容器内の粒子Aを二酸化炭素から分離することができる。
粒子の凝集性を改善する観点から、二酸化炭素存在下での有機微粒子の融点又はガラス転移点以下に冷却した後に、容器内から二酸化炭素を排出し、大気圧まで減圧することが好ましい。
容器内の圧力を大気圧まで減圧するのに要する時間は、装置に依存するが2秒〜20時間が好ましく、5秒〜10時間がより好ましい。
減圧工程中に二酸化炭素の液相を発生させてもよく、発生させなくてもよいが、使用する母粒子の平均粒径が20μm以下の場合は毛細管力による凝集が起こる可能性があるため、二酸化炭素の液相の発生を避けた方がよい。
得られた混合物を容器外に排出することにより、粒子Aと二酸化炭素とを分離して、粒子Aを得る方法では、容器内の混合物をノズル等を介して容器外に排出することにより、ノズル等を出て瞬時に混合物から二酸化炭素を分離除去するとともに、凝集のない粒子Aを製造することができる。排出条件に特に限定はないが、排出後の温度が有機微粒子の融点又はガラス転移点以下が好ましい。
次に、第一工程で得られた粒子Aと子粒子の混合物を、第二工程に供する。第二工程に供する粒子Aと子粒子の混合物は、例えば、高速流動型混合機等で粒子Aと子粒子をあらかじめ混合して得られた混合物であることが好ましい。
第二工程も、母粒子と有機微粒子の混合物の代わりに、有機微粒子が母粒子の表面に固着した粒子Aと子粒子を用いる以外は、第一工程と同様にして、20℃以上かつ4MPa以上の圧力の二酸化炭素の存在下、粒子Aに固着した有機微粒子を可塑化し、二酸化炭素を除去することにより、粒子Aの表面に子粒子が固着した複合化粒子(粒子B)が得られる。
なお、第二工程において、二酸化炭素を用いて有機微粒子の可塑化を行なう際に、フッ素系高分子化合物又はシリコーン系高分子化合物を容器内に共存させ、粒子Bの一部又は全部を被覆してもよい。この場合、粒子Bの原料となる母粒子及び/又は子粒子について、粒子表面の一部又は全部をあらかじめフッ素系高分子化合物及び/又はシリコーン系高分子化合物で被覆処理しておいてもよい。
フッ素系高分子化合物及びシリコーン系高分子化合物としては、例えば、特開2002-210356号公報の段落番号〔0035〕〜〔0046〕に記載のものが挙げられる。
以上に説明した少なくとも第一工程及び第二工程を経て得られる複合化粒子は、有機微粒子をバインダーとして子粒子が母粒子の表面に強固に固着しているという優れたものである。
実施例1
〔第一工程〕
球状のポリメタクリル酸メチル(以下、PMMAと略す)母粒子〔綜研化学(株)製、商品名:MX-3000、平均粒径:32μm〕50.0gと、バインダーとして球状のPMMA微粒子〔綜研化学(株)製、商品名:MP-2200、平均粒径0.3μm、ガラス転移点128℃〕2.5gを高速流動型混合機スーパーミキサー〔(株)カワタ製、商品名:ピッコロSMP-2、内容量0.3L〕に充填し、3000r/minで10分間ドライブレンドし、第一混合粉体を得た。なお、バインダーのガラス転移点は、示差走査熱量計((株)リガク製、商品名DSC8230)を用い、JIS K 7121:1987(プラスチックの転移温度測定方法)で測定した値である。
原料のPMMA母粒子及びPMMA微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を各々図2(倍率:3000倍)、図3(倍率:10000倍)に示す。また、得られた第一混合粉体の走査型電子顕微鏡写真を図4(倍率:3000倍)に示す。図4に示された顕微鏡写真から、PMMA微粒子がほぼ真球状のままでPMMA母粒子の表面に付着していることがわかる。
得られた第一混合粉体を用い、図1に示される装置を用いてPMMA微粒子がPMMA母粒子の表面に固着した粒子Aを以下の手順にて製造した。
オートクレーブ10〔内容量500mL、(株)AKICO製〕内に、第一混合粉体30.4gを充填した。
このオートクレーブ10には、内部を攪拌するための攪拌機9、内部の圧力を計測する内部圧力計6b、内部が過圧したときに減圧するための安全弁7b、内部の温度を計測する温度計11、及び内部の温度調節のためのカートリッジヒーター12がそれぞれ設けられている。カートリッジヒーター12は、温度調節器13に電気的に接続されている。
また、オートクレーブ10には、COボンベ1から延びるCO供給管24が結合している。CO供給管24には、COボンベ1側からフィルター2、コンデンサー3、昇圧ポンプ4、第2バルブV-2、予熱器8及び第3バルブV-3が順に介設されている。CO供給管24の昇圧ポンプ4と第2バルブV-2との間の部位とフィルター2とコンデンサー3との間の部位は第1バルブV-1が介設された圧力調節管25で連結されている。また、CO供給管24の昇圧ポンプ4と第2バルブV-2との間で管が分岐して圧力計6aが取り付けられている。さらに、CO供給管24の第2バルブV-2と予熱器8との間で管が分岐して安全弁7aが設けられている。また、コンデンサー3に近接してクーラー5が設けられており、クーラー5、コンデンサー3、及び昇圧ポンプ4の順に循環するように連結した冷媒循環管26が設けられ、その冷媒循環管26を-5℃の冷媒がそれらを循環している。
オートクレーブ10からは第1排出管15が延びてバグフィルター16に結合している。この第1排出管15には、第4バルブV-4が介設されていると共に外側を覆うようにヒーター14が設けられている。
第一混合粉体を充填後、COボンベ1から二酸化炭素を、CO供給管24に流通させた。まず、フィルター2でゴミ等を二酸化炭素から除去した後、-5℃に制御された冷媒が通液されているコンデンサー3で凝縮し、次いで、ポンプヘッドが冷却された昇圧ポンプ4で昇圧した。昇圧時の圧力を、圧力計6aにより測定した。この圧力は第1バルブV-1の開閉によって調節することができ、二酸化炭素が過圧したときには安全弁7aを開いて減圧することができる。
攪拌機9を200r/minで回転させながら、第2バルブV-2を開放して二酸化炭素を予熱器8に通して所定の温度まで予熱して送り、第3バルブV-3を開いてオートクレーブ10にこの二酸化炭素を導入した。カートリッジヒーター12を使用し、温度調節器13によりオートクレーブ10内の温度調節を行い、温度計11及び圧力計6bにより、セル内の温度及び圧力をそれぞれ温度41℃及び圧力12MPaに調節した。その後、更に温度調節器13によりオートクレーブ10内の温度調節を行い、排気バルブV-4及び温度計11、圧力計6bにより、セル内の温度及び圧力をそれぞれ温度80℃及び圧力25MPaに調節した。攪拌機9を200r/minで回転させながら、この条件下で30分間保持し、PMMA微粒子を可塑化した。なお、二酸化炭素をオートクレーブ10に注入供給した後に内部を所定の温度及び圧力に設定することで超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を生じさせることも、また、所定の温度及び圧力に設定したオートクレーブ10内に超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を注入供給することもいずれも可能である。
攪拌機9を100r/minで回転させながら、温度調節器13によりオートクレーブ10内の温度調節を行い、排気バルブV-4及び温度計11、圧力計6bにより、セル内の温度及び圧力をそれぞれ温度45℃及び圧力14MPaに調節した。
排気バルブV-4を開放し、第1排出管15より排気し、オートクレーブ10内を12分間で大気圧まで減圧した。減圧操作時には二酸化炭素の液相が発生しないように温度を調節した。減圧途中の7MPaにおける温度は32℃であり、減圧終了時の容器内温度は19℃であった。また、第1排出管15の凍結を防ぐために、ヒーター14により加熱した。また、第1排出管15から若干漏出してくる粒子に関しては、バグフィルター16で捕捉した。オートクレーブ10内の容器圧を大気圧まで減圧した後、オートクレーブ10内からPMMA母粒子の表面にPMMA微粒子が固着した粒子A 17を得た。
得られた粒子Aの走査型電子顕微鏡写真を図5(倍率:3000倍)に示す。図5に示された顕微鏡写真から、PMMA母粒子にPMMA微粒子が固着している粒子Aが得られたことがわかる。また、固着前は球状であったPMMA微粒子が偏平化しており、隣接したPMMA微粒子同士が融着しているものも見られることより、PMMA微粒子の可塑化が起きたことが示される。
〔第二工程〕
得られた粒子A20.0gと、板状の硫酸バリウム子粒子〔堺化学工業(株)製、商品名:HM、平均粒径11μm〕4.0gを高速流動型混合機スーパーミキサーに充填し、3000r/minで10分間ドライブレンドし、第二混合粉体を得た。
原料の硫酸バリウム子粒子の走査型電子顕微鏡写真を図6(倍率:3000倍)に示す。また、第二混合粉体の走査型電子顕微鏡写真を図7(倍率:1000倍)に示す。図7に示された顕微鏡写真から、一部の硫酸バリウム子粒子がPMMA母粒子の表面に付着しているが、母粒子の表面に付着していない硫酸バリウム子粒子が存在することがわかる。
得られた第二混合粉体を用い、図1に示される装置を用いてPMMA微粒子をバインダーとしてPMMA母粒子の表面に硫酸バリウム子粒子が固着した粒子B(複合化粒子)を以下の手順にて製造した。
得られた第二混合粉体17.9gを、オートクレーブ10〔内容量500mL、(株)AKICO製〕内に充填した。
充填後、COボンベ1から二酸化炭素をCO供給管24に流通させた。まず、フィルター2でゴミ等を二酸化炭素から除去した後、-5℃に制御された冷媒が通液されているコンデンサー3で凝縮し、次いで、ポンプヘッドが冷却された昇圧ポンプ4で昇圧した。昇圧時の圧力を、圧力計6aにより測定した。
攪拌機9を200r/minで回転させながら、第2バルブV-2を開放して二酸化炭素を予熱器8に通して所定の温度まで予熱して送り、第3バルブV-3を開いてオートクレーブ10にこの二酸化炭素を導入した。カートリッジヒーター12を使用し、温度調節器13によりオートクレーブ10内の温度調節を行い、温度計11及び圧力計6bにより、セル内の温度及び圧力をそれぞれ温度45℃及び圧力13.5MPaに調節した。その後、更に温度調節器13によりオートクレーブ10内の温度調節を行い、排気バルブV-4及び温度計11、圧力計6bにより、セル内の温度及び圧力をそれぞれ温度80℃及び圧力25MPaに調節した。攪拌機9を200r/minで回転させながら、この条件下で30分間保持し、PMMA微粒子をバインダーとしてPMMA母粒子と硫酸バリウム子粒子の複合化を行った。
攪拌機9を100r/minで回転させながら、温度調節器13によりオートクレーブ10内の温度調節を行い、排気バルブV-4及び温度計11、圧力計6bにより、セル内の温度及び圧力をそれぞれ温度45℃及び圧力14MPaに調節した。
排気バルブV-4を開放し、第1排出管15より排気し、オートクレーブ10内を10分間で大気圧まで減圧した。減圧操作時には二酸化炭素の液相が発生しないように温度を調節した。減圧途中の7MPaにおける温度は38℃であり、減圧終了時の容器内温度は29℃であった。また、第1排出管15の凍結を防ぐために、ヒーター14により加熱した。また、第1排出管15から若干漏出してくる粒子に関しては、バグフィルター16で捕捉した。オートクレーブ10内の容器圧を大気圧まで減圧した後、オートクレーブ10内からPMMA微粒子をバインダーとしてPMMA母粒子の表面に硫酸バリウム子粒子が固着した粒子B(複合化粒子)17を得た。
なお、図1に示す装置は、オートクレーブ10から第2排出管18が延びて回収容器20に結合した構造も有している。この第2排出管18には、第5バルブV-5が介設されていると共に、外側を覆うようにヒーター23が設けられている。また、第2排出管18には、回収容器20側の先端部に温度計21が設けられていると共に、その先端にノズル19が取り付けられている。
従って、この装置では、オートクレーブ10内において20℃以上かつ4MPa以上の圧力の二酸化炭素の存在下で母粒子と有機微粒子又は粒子Aと子粒子とを接触させた後、第5バルブV-5を開くと、オートクレーブ10内部の二酸化炭素と得られた粒子A又は粒子B(複合化粒子)との混合物が第2排出管18を介して排出され、瞬時に二酸化炭素が気化して除去され、ノズル19を介して回収容器20内に粒子A又は粒子B22を回収することもできる。また、温度計21で排出される混合物の温度を計測し、ヒーター23で加熱することにより第2排出管18の凍結を防止することができる。
得られた複合化粒子の走査型電子顕微鏡写真を図8(倍率:1000倍)に示す。図8に示された顕微鏡写真から、PMMA母粒子の表面に硫酸バリウム子粒子が固着している複合化粒子が得られたことがわかる。また、固着前にみられたPMMA母粒子の表面に付着していない硫酸バリウム子粒子はほとんど存在せず、PMMA微粒子が可塑化して硫酸バリウム子粒子がPMMA母粒子の表面に固着したことが示される。
実施例2
実施例1と同様の方法により、表1に示した条件にて複合化粒子を得た。
原料のPMMA母粒子〔松本油脂製薬(株)製、商品名:M-503B、平均粒径:20.0μm〕の走査型電子顕微鏡写真を図9(倍率:3000倍)に示す。また、PMMA母粒子とPMMA微粒子を混合して得られた第一混合粉体及びPMMA微粒子がPMMA母粒子の表面に固着した粒子Aの走査型電子顕微鏡写真を、各々図10(倍率:3000倍)、図11(倍率:3000倍)に示す。図10、11に示された顕微鏡写真から、固着前は球状であったPMMA微粒子が偏平化し、隣接したPMMA微粒子同士が融着しているものも見られることより、可塑化が起きたことが示される。
さらに、板状のアルミナ子粒子〔YKK(株)製、商品名:セラフYFA05070、平均粒径:5μm〕の走査型電子顕微鏡写真を図12(倍率:3000倍)に示す。また、粒子Aとアルミナ子粒子を混合して得られた第二混合粉体及び得られた複合化粒子の走査型電子顕微鏡写真を、各々図13(倍率:3000倍)、図14(倍率:3000倍)に示す。図13、14に示された顕微鏡写真から、PMMA母粒子の表面にアルミナ子粒子が固着している複合化粒子が得られたことがわかる。また、固着前にみられるPMMA母粒子の表面に付着していないアルミナ子粒子はほとんど存在せず、PMMA微粒子が可塑化してアルミナ子粒子がPMMA母粒子の表面に固着したことが示される。
実施例3
実施例1と同様の方法により、表1に示した条件にて複合化粒子を得た。
PMMA母粒子とPMMA微粒子を混合して得られた第一混合粉体及びPMMA微粒子がPMMA母粒子の表面に固着した粒子Aの走査型電子顕微鏡写真を、各々図15(倍率:3000倍)、図16(倍率:3000倍)に示す。図15、16に示された顕微鏡写真から、固着前は球状であったPMMA微粒子が偏平化し、隣接したPMMA微粒子同士が融着しているものも見られることより、可塑化が起きたことが示される。
さらに、板状の合成マイカ子粒子〔トピー工業(株)製、商品名:PDM-10L、平均粒径11.6μm〕の走査型電子顕微鏡写真を図17(倍率:3000倍)に示す。また、粒子Aと合成マイカ子粒子を混合して得られた第二混合粉体及び得られた複合化粒子の走査型電子顕微鏡写真を、各々図18(倍率:1000倍)、図19(倍率:1000倍)に示す。図18、19に示された顕微鏡写真から、PMMA母粒子の表面に合成マイカ子粒子が固着している複合化粒子が得られたことがわかる。また、固着前にみられるPMMA母粒子の表面に付着していない合成マイカ子粒子は存在せず、PMMA微粒子が可塑化して合成マイカ子粒子がPMMA母粒子の表面に固着したことが示される。
実施例4
実施例1と同様の方法により、表1に示した条件にて複合化粒子を得た。
原料のチタンマイカ母粒子〔ECKART Gmbh & Co. KG製、商品名:Prestige Bright Gold、平均粒径:45μm〕及びPMMA微粒子〔綜研化学(株)製、商品名:MP-2701、平均粒径0.3μm、ガラス転移点128℃〕を、各々図20(倍率:1000倍)、図21(倍率:10000倍)に示す。また、チタンマイカ母粒子とPMMA微粒子を混合して得られた第一混合粉体及びPMMA微粒子がチタンマイカ母粒子の表面に固着した粒子Aの走査型電子顕微鏡写真を、各々図22(倍率:3000倍)、図23(倍率:3000倍)に示す。図22、23に示された顕微鏡写真から、固着前は球状であったPMMA微粒子が偏平化し、隣接したPMMA微粒子同士が融着しているものも見られることより、可塑化が起きたことが示される。
さらに、球状のシリカ子粒子〔(株)日本触媒製、商品名:KE-P100、平均粒径0.1μm〕の走査型電子顕微鏡写真を図24(倍率:10000倍)に示す。また、粒子Aとシリカ子粒子を混合して得られた第二混合粉体及び得られた複合化粒子の走査型電子顕微鏡写真を、各々図25(倍率:1000倍)、図26(倍率:1000倍)に示す。図25、26に示された顕微鏡写真から、チタンマイカ母粒子の表面にシリカ子粒子が固着している複合化粒子が得られたことがわかる。また、固着前にみられるチタンマイカ母粒子の表面に付着していないシリカ子粒子は存在せず、PMMA微粒子が可塑化してシリカ子粒子がチタンマイカ母粒子の表面に固着したことが示される。
比較例1
〔前混合工程〕
球状のPMMA母粒子〔松本油脂製薬(株)製、商品名:M-503B、平均粒径:20.0μm〕14.5gと、バインダーとして球状のPMMA微粒子〔綜研化学(株)製、商品名:MP-2200、平均粒径0.3μm〕1.0gを高速流動型混合機スーパーミキサー〔(株)カワタ製、商品名:ピッコロSMP-2、内容量0.3L〕に充填し、3000r/minで10分間ドライブレンドし、第一混合粉体を得た。
PMMA母粒子とPMMA微粒子の第一混合粉体の走査型電子顕微鏡写真を図27(倍率:3000倍)に示す。図27に示された顕微鏡写真から、第一混合粉体は、PMMA微粒子がほぼ真球状のままでPMMA母粒子の表面に付着していることがわかる。
〔後混合工程〕
得られた第一混合粉体15.5gと、板状のアルミナ子粒子〔YKK(株)製、商品名:YFA05070、平均粒径:5μm〕3.7gを高速流動型混合機スーパーミキサーに充填し、3000r/minで10分間ドライブレンドし、第二混合粉体を得た。
得られた第一混合粉体とアルミナ子粒子の第二混合粉体の走査電子顕微鏡写真を図28(倍率:3000倍)に示す。図28に示された顕微鏡写真から、第二混合粉体は、PMMA微粒子がPMMA母粒子に固着していないため、PMMA微粒子のほとんどがアルミナ子粒子の表面に付着していることがわかる。
比較例2
球状のPMMA母粒子〔綜研化学(株)製、商品名:MX-3000、平均粒径:32μm〕50.0gと、板状の硫酸バリウム子粒子〔堺化学工業(株)製、商品名:HM、平均粒径11μm〕10.0gを高速流動型混合機スーパーミキサー〔(株)カワタ製、商品名:ピッコロSMP-2、内容量0.3L〕に充填し、3000r/minで17分間ドライブレンドし、混合粉体を得た。
得られた混合粉体の走査型電子顕微鏡写真を図29(倍率:1000倍)に示す。図29に示された顕微鏡写真から、一部の硫酸バリウム子粒子がPMMA母粒子の表面に付着しているが、PMMA母粒子の表面に付着していない硫酸バリウム子粒子も存在していることがわかる。
得られた混合粉体を用い、図1に示される装置を用いて複合化粒子を以下の手順にて製造した。
オートクレーブ10〔内容量500mL、(株)AKICO製〕内に、混合粉体50.0gを充填した。
充填後、COボンベ1から二酸化炭素をCO供給管24に流通させた。まず、フィルター2でゴミ等を二酸化炭素から除去した後、-5℃に制御された冷媒が通液されているコンデンサー3で凝縮し、次いで、ポンプヘッドが冷却された昇圧ポンプ4で昇圧した。昇圧時の圧力を、圧力計6aにより測定した。
攪拌機9を200r/minで回転させながら、第2バルブV-2を開放して二酸化炭素を予熱器8に通して所定の温度まで予熱して送り、第3バルブV-3を開いてオートクレーブ10にこの二酸化炭素を導入した。カートリッジヒーター12を使用し、温度調節器13によりオートクレーブ10内の温度調節を行い、温度計11及び圧力計6bにより、セル内の温度及び圧力をそれぞれ温度40℃及び圧力12MPaに調節した。その後、更に温度調節器13によりオートクレーブ10内の温度調節を行い、排気バルブV-4及び温度計11、圧力計6bにより、セル内の温度及び圧力をそれぞれ温度100℃及び圧力30MPaに調節した。攪拌機9を200r/minで回転させながら、この条件下で30分間保持した。
攪拌機9を150r/minで回転させながら、温度調節器13によりオートクレーブ10内の温度調節を行い、排気バルブV-4及び温度計11、圧力計6bにより、セル内の温度及び圧力をそれぞれ温度44℃及び圧力16MPaに調節した。
排気バルブV-4を開放し、第1排出管15より排気し、オートクレーブ10内を11分間で大気圧まで減圧した。減圧操作時には二酸化炭素の液相が発生しないように温度を調節した。減圧途中の7MPaにおける温度は37℃であり、減圧終了時の容器内温度は27℃であった。また、第1排出管15の凍結を防ぐために、ヒーター14により加熱した。また、第1排出管15から若干漏出してくる粒子に関しては、バグフィルター16で捕捉した。オートクレーブ10内の容器圧を大気圧まで減圧した後、オートクレーブ10内から複合化粒子17を得た。
得られた複合化粒子の走査型電子顕微鏡写真を図30(倍率:1000倍)に示す。図30に示された顕微鏡写真から、一部の硫酸バリウム子粒子はPMMA母粒子の表面に付着しているが、PMMA母粒子の表面に付着していない硫酸バリウム子粒子も多数存在していることがわかる。
比較例3、4
比較例2と同様の方法を用いて表2に示した条件にて複合化粒子を得た。
比較例3において、PMMA母粒子とアルミナ子粒子を混合して得られた混合粉体及び得られた複合化粒子の走査型電子顕微鏡写真を、各々図31(倍率:3000倍)、図32(倍率:3000倍)に示す。
比較例4において、PMMA母粒子と合成マイカ子粒子を混合して得られた混合粉体及び得られた複合化粒子の走査型電子顕微鏡写真を、各々図33(倍率:1000倍)、図34(倍率:1000倍)に示す。
図32、34に示された顕微鏡写真から、一部の子粒子が母粒子の表面に付着しているが、母粒子の表面に付着していない子粒子も多数存在することがわかる。
比較例5
板状のチタンマイカ母粒子〔ECKART Gmbh & Co. KG製、商品名:Prestige Bright Gold、平均粒径:45μm〕30.0gと、球状のシリカ子粒子〔(株)日本触媒製、商品名:KE-P100、平均粒径0.1μm〕6.0gを高速流動型混合機スーパーミキサー〔(株)カワタ製、商品名:ピッコロSMP-2、内容量0.3L〕に充填し、3000r/minで17分間ドライブレンドし、混合粉体を得た。
得られた混合粉体の走査型電子顕微鏡写真を図35(倍率:1000倍)に示す。図35に示された顕微鏡写真から、一部のシリカ子粒子がチタンマイカ母粒子の表面に付着しているが、チタンマイカ母粒子の表面に付着していないシリカ子粒子が存在することがわかる。
実施例1〜4で得られた複合化粒子は擦っても母粒子と子粒子が剥がれにくいものであった。
本発明によれば、撥水性、撥油性、光学特性、紫外線防御性、感触、安全性、活性、色調、分散安定性、耐候性が制御された、塗料、インクジェット型プリンターインク、トナー、燃料電池、発光ダイオード、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、化粧品等に好適に使用しうる複合化粒子を提供することができる。
本発明の方法に使用された装置の一実施態様を示す概略説明図である。 実施例1及び実施例3に使用した原料のPMMA母粒子の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:3000倍)である。 実施例1〜3で使用した原料のPMMA微粒子の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:10000倍)である。 実施例1で得られた第一混合粉体の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:3000倍)である。 実施例1で得られた粒子Aの粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:3000倍)である。 実施例1に使用した原料の硫酸バリウム子粒子の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:3000倍)である。 実施例1で得られた第二混合粉体の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:1000倍)である。 実施例1で得られた複合化粒子の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:1000倍)である。 実施例2に使用した原料のPMMA母粒子の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:3000倍)である。 実施例2で得られた第一混合粉体の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:3000倍)である。 実施例2で得られた粒子Aの粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:3000倍)である。 実施例2に使用した原料のアルミナ子粒子の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:3000倍)である。 実施例2で得られた第二混合粉体の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:3000倍)である。 実施例2で得られた複合化粒子の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:3000倍)である。 実施例3で得られた第一混合粉体の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:3000倍)である。 実施例3で得られた粒子Aの粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:3000倍)である。 実施例3に使用した原料の合成マイカ子粒子の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:3000倍)である。 実施例3で得られた第二混合粉体の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:1000倍)である。 実施例3で得られた複合化粒子の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:1000倍)である。 実施例4に使用した原料のチタンマイカ母粒子の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:1000倍)である。 実施例4に使用した原料のPMMA子粒子の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:10000倍)である。 実施例4で得られた第一混合粉体の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:3000倍)である。 実施例4で得られた粒子Aの粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:3000倍)である。 実施例4に使用した原料のシリカ子粒子の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:10000倍)である。 実施例4で得られた第二混合粉体の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:1000倍)である。 実施例4で得られた複合化粒子の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:1000倍)である。 比較例1で得られた第一混合粉体の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:3000倍)である。 比較例1で得られた第二混合粉体の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:3000倍)である。 比較例2で得られた混合粉体の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:1000倍)である。 比較例2で得られた複合化粒子の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:1000倍)である。 比較例3で得られた混合粉体の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:3000倍)である。 比較例3で得られた複合化粒子の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:3000倍)である。 比較例4で得られた混合粉体の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:1000倍)である。 比較例4で得られた複合化粒子の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:1000倍)である。 比較例5で得られた混合粉体の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率:1000倍)である。
符号の説明
1 CO2ボンベ
2 フィルター
3 コンデンサー
4 昇圧ポンプ
5 クーラー
6a 圧力計
6b 圧力計
7a 安全弁
7b 安全弁
8 予熱器
9 攪拌機
10 オートクレーブ
11 温度計
12 カートリッジヒーター
13 温度調節器
14 ヒーター
15 第1排出管
16 バグフィルター
17 粒子A又は粒子B(複合化粒子)
18 第2排出管
19 ノズル
20 回収容器
21 温度計
22 粒子A又は粒子B(複合化粒子)
23 ヒーター
24 CO2供給管
25 圧力調節管
26 冷媒循環管
V-1 第1バルブ
V-2 第2バルブ
V-3 第3バルブ
V-4 第4バルブ
V-5 第5バルブ

Claims (5)

  1. 母粒子と有機微粒子との混合物を、20℃以上かつ4MPa以上の圧力の二酸化炭素の存在下におき、該有機微粒子を可塑化し、二酸化炭素を除去して、有機微粒子が母粒子の表面に固着した粒子(粒子A)を製造する第一工程、並びに粒子Aと子粒子との混合物を、20℃以上かつ4MPa以上の圧力の二酸化炭素の存在下におき、該粒子Aに固着した該有機微粒子を可塑化し、二酸化炭素を除去して粒子Aの表面に子粒子が固着した複合化粒子(粒子B)を製造する第二工程を含み、前記母粒子と子粒子の少なくともいずれか一方の形状が板状であり、母粒子と子粒子の間に有機微粒子が存在する複合化粒子の製造方法。
  2. 有機微粒子が、ガラス転移点又は融点が50〜200℃の高分子化合物である請求項1記載の複合化粒子の製造方法。
  3. 有機微粒子の平均粒径が0.01〜100μmかつ母粒子の平均粒径の1/10000〜1/5である請求項1又は2記載の複合化粒子の製造方法。
  4. 子粒子の平均粒径が母粒子の平均粒径の1/10000以上1/1未満である請求項1〜3いずれか記載の複合化粒子の製造方法。
  5. 第一工程及び/又は第二工程において、有機微粒子を可塑化させた後、減圧し容器内で粒子A及び/又は粒子Bを得る、請求項1〜4いずれか記載の複合化粒子の製造方法。
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