JP4693349B2 - ハイドロフォーム加工後の耐割れ性に優れるCr含有フェライト系鋼板 - Google Patents

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本発明は、自動車やオートバイの排気管や触媒外筒材、燃料タンクあるいは発電プラント関係や燃料電池セパレータおよびその周辺部材等に用いられるCr含有フェライト系鋼板に関し、特にハイドロフォーム加工後の耐割れ性に優れるCr含有フェライト系鋼板に関するものである。
エキゾーストマニホールド、排気パイプ、コンバーターケース、マフラー等に代表される排気部材は、プレス加工による絞り加工や張り出し加工、曲げ加工等の多種多様の加工方法により所定の形状に成形されている。そのため、これら加工方法に対応させるために、鋼板が有する各種機械的性質、例えば、降伏強度(YS)、引張強度(TS)、伸び(El)、降伏比(YR)、n値、r値およびそれらの異方性、伸びフランジ性、時効性、焼付硬化性などの諸特性を、その加工目的に応じて改善する努力がなされている。
ところで、近年、上記従来の加工方法とは異なる新たな加工方法が注目され、その適用が進んでいる。その加工方法は、ハイドロフォームと呼ばれる加工方法(液圧プレス成形とも呼ばれる)で、型にセットされたパイプの内部に液体を充填した後、軸方向にパイプを押し込みながら内部に充填された液体に圧力を加えることで、パイプを金型に倣わせて成形する方法である。この加工方法は、前述したプレス加工や曲げ加工よりも設計の自由度が高く、複雑な形状を一体成形することで、部品点数や溶接費用の削減が可能となる等の優れた特長を有しているため、生産性を飛躍的に向上することができる技術である。
このハイドロフォーム加工に適した材料としては、例えば、特許文献1には、n値、r値等を制御した鋼板が開示され、また、特許文献2には、集合組織、r値等を制御した鋼板が開示されているが、いずれも普通鋼板に関するものである。一方、最近では、フェライト系ステンレス鋼板製のパイプをハイドロフォーム加工に適用する事例も増えてきており、その結果、新たな問題が表面化してきた。すなわち、所定形状に加工した後、例えば、図1(b)のようなT字張り出しと呼ばれる加工を施した後、さらに押し潰しや曲げ加工等を行うと、脆性割れを生じることがあるという問題である。この割れの原因については、まだ十分には解明されておらず、その対策も不明のままである。
特開2003−049295号公報 特開2001−348647号公報
さて、従来のフェライト系ステンレス鋼板を代表とするCr含有フェライト系鋼板は、一般的に、相当歪で1.3を超える加工は不可能とされていた。このことは、例えば、絞り比が3.6の超深絞り加工を行った場合に、素材鋼板が受ける相当歪は高々1.2程度でしかないことからも容易に理解できる。これに対してハイドロフォーム加工においては、素材鋼板が受ける相当歪は1.5から2.0であるのが普通である。すなわち、ハイドロフォーム加工は、深絞り加工や曲げ加工よりもはるかに過酷な加工である。しかも上述したように、Cr含有フェライト系鋼板は、ハイドロフォーム加工後に割れが発生し易いため、その適用は、極限られた部品に限定されているのが現状である。しかし、Cr含有フェライト系鋼板は、耐酸化性や耐熱性、耐食性に優れており、また、高価なNiを含まないため安価である。そこで、Cr含有フェライト系鋼板をハイドロフォーム加工に用いることができれば、その効果は非常に大きい。
ところで、ハイドロフォーム加工後の割れに類似した割れとして、2次加工脆性が知られている。この脆性割れは、深絞り成形を行った後に、張り出し成形を行った場合に起こるものである。この2次加工脆性に対する対策としては、Bを添加し、粒界を強化することが一般に行われている。これは、割れ破面に粒界割れが認められ、その部分が割れの起点となっているとの考えから、粒界を強化することで脆性割れを抑制するという技術思想に基づくものである。これに対して、Cr含有フェライト系鋼板に見られるハイドロフォーム加工後の割れには、粒界割れは観察されず、しかも、Bを添加したのみでは、割れを有効に抑制することはできない。これは、上記のようにハイドロフォーム加工は、その加工度、即ち、加工歪が大きいために、粒界と粒内との強度差が無くなり、その結果、Bを添加して粒界を強化しても、その影響が現れなかったものと考えられる。
上記のように、ハイドロフォーム加工は、従来の深絞り加工と比較して非常に厳しい加工方法であり、しかも、ハイドロフォーム加工後の割れに対しては、従来の2次加工脆性に対する対策は有効ではない。そのため、ハイドロフォーム加工に用いることができるCr含有フェライト系鋼板の開発が望まれていた。
本発明の目的は、従来の2次加工脆性とは異なるハイドロフォーム加工後の割れを抑制したCr含有フェライト系鋼板を提供することにある。
発明者らは、Cr含有フェライト系鋼板において発生する従来の2次加工脆性割れとは異なる、ハイドロフォーム加工特有の脆性割れを防止するために、素材鋼板の成分組成や機械的特性が割れに及ぼす影響について詳細な検討を行った。その結果、上記ハイドロフォーム加工特有の割れは、パイプ造管前の素材が有するシャルピー吸収エネルギーの遷移温度と相関があること、また、従来の技術常識に反して、素材の結晶粒径には適正な大きさが必要であり、大き過ぎてもまた小さ過ぎても好ましくないことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、C:0.02mass%以下、Si:2mass%以下、Mn:3mass%以下、P:0.04mass%以下、S:0.006mass%以下、Cr:6〜20mass%、Ni:2mass%以下、N:0.02mass%以下、O:0.008mass%以下を含有し、かつTi,Nb,VおよびAlのいずれか1種または2種以上を合計で1mass%以下含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、シャルピー吸収エネルギーが80J/cm以上となる最低温度が−40℃以下かつ結晶粒度番号が3.5〜7.5であることを特徴とするハイドロフォーム加工後の耐割れ性に優れるハイドロフォーム加工用Cr含有フェライト系鋼板である。
なお本発明の鋼板は、上記成分組成に加えてさらに、下記のA〜C群のうちの少なくとも1群の成分を含有することが好ましい。

A群:Cu,WおよびMoのいずれか1種または2種以上を各5mass%以下かつ合計で8mass%以下
B群:BまたはMgのいずれか1種または2種を各0.01mass%以下、ただし、Bを含有する場合は、結晶粒度番号を3.5〜6.0とする
C群:CaまたはREMのいずれか1種または2種を各0.1mass%以下
本発明によれば、Cr含有フェライト系鋼板に特有のハイドロフォーム加工後の割れを有効に防止することができるので、製造工程の効率化や製品の安全性を向上することができる。そのため、本発明のCr含有フェライト系鋼板は、自動車排気系部材、燃料電池内セパレータ部材、水素改質器用部材、ガソリン燃料系の燃料供給パイプ等を、ハイドロフォーム加工により製造する際のパイプ用素材として好適に用いることができる。
本発明を開発する契機となった実験について説明する。
ハイドロフォーム加工後の耐割れ性を定量評価するために、C:0.02mass%以下、Si:2mass%以下、Mn:3mass%以下、P:0.04mass%以下、S:0.006mass%以下、Cr:6〜20mass%、Ni:2mass%以下、N:0.02mass%以下、O:0.008mass%以下を含有し、かつTi,Nb,VおよびAlのいずれか1種または2種以上を合計で1mass%以下含有した、板厚1.2mmのCr含有フェライト系冷延鋼板を素材として38.1mmφの電縫管を造管し、その後、ハイドロフォーム加工により、図1(b)に示したようなT字張り出し部品の成形に供した。このT字張り出し部品を、80℃の温度に加熱したのち、鋼製定盤上に横向きにして載置し、図1(b)に示したT字張り出し部品のX点に向けて、5kgの錘を80cmの高さから落下させる落重試験を行い、割れ発生の有無および割れの大きさを測定し、割れなしを○、割れが1箇所でかつ割れの長さが10mm以内の場合を△、割れが複数かあるいは割れの長さが10mm超えの場合を×と評価した。
また、上記試験に用いた電縫管(パイプ)の素材鋼板について、フェライト組織の結晶粒度番号の測定およびシャルピー衝撃試験を下記の要領で行った。
<結晶粒度番号>
パイプ素材鋼板の圧延方向断面の板厚中心部におけるフェライト組織の結晶粒度番号をJIS G 0552に準拠して測定した。
<シャルピー衝撃試験>
パイプ素材鋼板の圧延方向に採取した2mmVノッチ付きシャルピーサブサイズ試験片(幅:1.2mm)を用いて、−120℃〜0℃の温度範囲でシャルピー衝撃試験を、各条件でn数3ずつ行い、その吸収エネルギーの平均値が80J/cm2以上となる最低の温度を求め、この温度を「シャルピー遷移温度」と定義した。
上記落重試験の結果と素材の結晶粒度番号およびシャルピー遷移温度との関係を整理して図2に示した。この図から、パイプの素材鋼板のシャルピー遷移温度が−30℃未満でかつ結晶粒度番号が3.0超え8.0未満の範囲で、ハイドロフォーム加工後の耐割れ性が優れていることがわかった。すなわち、従来の2次加工脆性に関する技術常識からは、結晶粒が微細であるほどつまり結晶粒度番号が大きいほどシャルピー遷移温度は低温側に移行し、ハイドロフォーム後の耐割れ性も改善すると考えられるが、発明者らは、結晶粒径は大き過ぎてもまた小さ過ぎても劣化する傾向にあり、むしろある程度の大きさである方が、ハイドロフォーム後の耐割れ性が優れていることを新たに知見し、本発明を完成させた。
発明者らは、この理由について、以下のように考えている。すなわち、ハイドロフォーム加工のような厳しい加工においては、一様伸びと素材の靭性のバランスが特に重要である。結晶粒が小さ過ぎる場合、つまり結晶粒度番号が大き過ぎる場合には、一様伸びは小さいものの、素材の靭性は良好(シャルピー遷移温度が低い)である。逆に、結晶粒が大き過ぎる場合、つまり結晶粒度番号が小さ過ぎる場合には、一様伸びは良好であるが、素材の靭性は劣る(シャルピー遷移温度が高い)。したがって、ハイドロフォーム後の耐割れ性を改善するためには、単に、素材のシャルピー遷移温度を制御するだけではなく、その結晶粒度番号をも制御して、一様伸びと脆性とのバランスをとる必要があるためと考えられる。
次に、本発明のCr含有フェライト系鋼板について説明する。
フェライト系鋼板
ハイドロフォーム加工に用いられるパイプの素材となる本発明の鋼板は、Cr含有フェライト系鋼板である。ここでいうフェライト系とは、ハイドロフォーム加工時の鋼板組織が、体積率で80%以上がフェライト組織であることを言う。フェライト系鋼板は、耐酸化性や耐熱性、耐食性に優れており、かつ、オーステナイト系ステンレス鋼板より安価であるため、フェライト系鋼板に限定する。
シャルピー遷移温度:−30℃未満
本発明のシャルピー遷移温度とは、先述したように、パイプに加工する前の素材鋼板についてシャルピー衝撃試験を行った時に、その吸収エネルギーの平均値が80J/cm2以上となる最低の温度のことを言い、本発明の鋼板は、その温度が−30℃未満である必要がある。この値が−30℃以上では、ハイドロフォーム加工後の耐割れ性が劣る。シャルピー遷移温度は、低温であればある程、ハイドロフォーム加工後の耐割れ性は改善される傾向があり、−50℃以下であることが好ましくい。
結晶粒度番号:3.0超え8.0未満 パイプに加工する前の素材鋼板の結晶粒度番号は、3.0超え8.0未満であることが必要である。ここで、上記結晶粒度番号とは、素材鋼板のフェライト粒の結晶粒度をJIS G 0552に準拠して測定した値である。先述したように、結晶粒度番号が3.0以下の場合には、結晶粒が大きくなり過ぎて靭性が劣化し、また、8.0以上では、逆に結晶粒が微細化し過ぎて一様伸びが低下し、ハイドロフォーム加工性やハイドロフォーム加工後の耐割れ性が低下する。好ましくは、4.0以上7.0以下であり、さらに好ましくは4.5以上6.5以下である。なお、結晶粒度番号を上記範囲に調整するには、冷間圧延後の仕上焼鈍温度を制御することが好ましく、その好ましい温度範囲は850〜1050℃であり、より好ましくは950〜1050℃である。
次に、本発明のCr含有フェライト系鋼板の成分組成を限定する理由について説明する。
C:0.02mass%以下
Cは、鋼板強度を高め成形性を劣化させる元素であり、0.02mass%を超えて含有すると、靭性および成形性の劣化が顕著となるため、0.02mass%以下に制限する。成形性を確保するためには、C含有量は低いほどよく、0.008mass%以下が望ましい。しかし、低減し過ぎると、2次加工脆性が問題となるので、0.001mass%以上含有することが好ましい。
Si:2mass%以下
Siは、鋼の強度を高める元素であるが、耐酸化性を向上するために添加してもよい。しかし、その量が2mass%を超えると、加工硬化が顕著となり成形性を劣化させるほか、表面性状も劣化させるので2mass%以下とする。好ましくは1mass%以下、さらに好ましくは0.1mass%以下である。なお、脱酸剤として添加する場合には、0.02mass%以上の添加が好ましい。
Mn:3mass%以下
Mnは、鋼の強度を高める元素であり、また、脱酸剤としても添加される。しかし、Mnの過剰な添加は、MnSを形成し、成形性や耐食性を低下させるので、3mass%以下に制限する。より成形性、耐食性が求められる用途の場合には、Mnは、0.2mass%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1mass%以下である。なお、脱酸剤として添加される場合には、0.02mass%以上添加することが好ましい。
P:0.04mass%以下
Pは、低減することにより、粒径を変化させずに靭性を改善(シャルピー遷移温度を下げる)することができる元素であり、ハイドロフォーム加工後の耐割れ性を改善するには低いほどよい。よって、0.04mass%以下に制限する。特に、靭性や溶接性を改善するためには、0.02mass%以下とするのが好ましい。より好ましくは、0.015mass%以下である。
S:0.006mass%以下
Sは、非金属介在物として存在し、靭性を劣化させる元素であり、0.006mass%以下に制限する。特に、ハイドロフォーム加工後の耐割れ性を改善する観点からは、Sは少ないほどよく、0.005mass%以下であることが望ましい。さらに好ましくは0.003mass%以下である。
Cr:6mass%以上20mass%以下
本発明の鋼板は、Cr含有のフェライト系鋼板であり、Crは非常に重要な元素である。このCrは、耐酸化性や耐熱性、耐食性を向上する効果があり、これらの効果を得るためには、6mass%以上添加する必要がある。しかし、Crの過剰の添加は、一様伸びを低下させるほか、ハイドロフォーム加工性およびハイドロフォーム加工後の耐割れ性を著しく低下させるため、上限を20mass%とする。したがって、要求される特性に応じて、6〜20mass%の間で添加量を決めればよい。なお、耐熱性、耐食性とハイドロフォーム加工性やハイドロフォーム加工後の耐割れ性とをバランスさせるためには、11〜16mass%の範囲が好ましく、さらに好ましくは13〜16mass%である。
Ni:2mass%以下
Niは、靭性を向上させる効果を有するが、高価であるため2mass%以下に制限する。靭性向上を図るための好ましい添加量は0.05〜0.8mass%、より好ましくは0.5〜0.8mass%である。
N:0.02mass%以下
Nは、鋼の靭性および成形性を劣化させる元素である。その含有量が0.02mass%を超えると、靭性および成形性の劣化が顕著となるので、0.02mass%以下に限定する。ハイドロフォーム加工性やハイドロフォーム加工後の耐割れ性を改善するためには、Nの含有量は少ないほど良く、0.01mass%以下であることが望ましい。
O:0.008mass%以下
Oは、酸化物系介在物を生成し、ハイドロフォーム加工後の耐割れ性に悪影響があるため、0.008mass%以下に制限する。さらに、ハイドロフォーム加工後の耐割れ性を改善するためには、好ましくは0.005mass%以下、さらに好ましくは0.002mass%以下である。
Ti,Nb,VおよびAl:1種または2種以上を合計で1mass%以下
Nb,Ti,V,Alは、CやNと炭窒化物を形成し、C,Nの有害性を減ずるため、これらの中から選ばれる1種または2種以上を添加する。しかし、いずれの元素も過剰に添加すると、表面欠陥を増加させたり、シャルピー遷移温度を上げたりするため、これらの元素の添加量は合計で1mass%以下に制限する。なお、C,Nの有害性を取り除くためには、
Ti/48+Nb/98+V/51+Al/27≧C/12+N/14
の式を満たす範囲で添加することが好ましい。
本発明の鋼板は、上記必須成分に加えてさらに、Cu,W,Moのいずれか1種または2種以上、さらに、BまたはMgのいずれか1種または2種、あるいはさらに、CaまたはREMのいずれか1種または2種を必要に応じて下記の範囲で添加することができる。
Cu,W,Mo:1種または2種以上を各5mass%以下、合計で8mass%以下 Cu,W,Moは、固溶することにより高温耐力の向上あるいは耐食性の向上に寄与するが、高価な元素であるため各々5mass%以下とするのが好ましい。また、これら元素の合計添加量は、ハイドロフォーム加工性およびハイドロフォーム加工後の耐割れ性を改善するためには、8mass%以下であることが好ましい。
B,Mg:1種または2種を各0.01mass%以下 B,Mgは、2次加工脆性を改善するために添加することができる。しかし、Bは、0.01mass%を超えて添加すると、多量のBNが生成して全伸びが劣化するので、0.01mass%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.0005〜0.005mass%である。一方、Mgは、0.01mass%を超えると全伸びが劣化するので、0.01mass%以下が好ましい。より好ましくは0.003〜0.008mass%である。
Ca,REM:1種または2種を各0.1mass%以下 Ca,REMは、耐酸化性を向上させるため、必要に応じて各々0.0050mass%以上添加することができる。ここで、REMは、希土類元素すなわちランタノイド系元素及びYを指す。これら元素の過剰の添加は、シャルピー遷移温度を上昇させるため、0.1mass%以下の範囲で添加することが好ましい。
なお、本発明の鋼板の製造方法については、特に限定する必要はなく、通常のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法で製造することができる。また、本発明の上記説明では、ハイドロフォーム加工に供するパイプとして電縫管を用いたが、これに限られることなく、例えば、TIG溶接、レーザー溶接、プラズマ溶接等の溶接方法で造管したパイプに適用してもその効果に変わりはない。
表1に示す成分組成からなる鋼を溶製し、連続鋳造して鋼スラブとし、1100℃に再加熱後、熱間圧延して4mm厚の熱延鋼板とした。この熱延鋼板を980℃で焼鈍し、酸洗し、冷間圧延して厚さ1.2mmの冷延鋼板とし、その後、焼鈍温度を800℃から1100℃の範囲で変化して仕上焼鈍し、結晶粒の大きさを種々に変化させた。かくして得られた冷延焼鈍板について、シャルピー遷移温度と結晶粒度番号を下記の要領で測定した。
(1) シャルピー遷移温度
鋼板の圧延方向に採取した2mmVノッチ付きシャルピーサブサイズ試験片(幅:1.2mm)を用いて、−120℃〜0℃の範囲で、5℃間隔でシャルピー衝撃試験を各条件で3本ずつ行い、その吸収エネルギーの平均値が80J/cm2以上となる最低の温度をシャルピー遷移温度とした。
(2) 結晶粒度番号
鋼板の圧延方向断面の板厚中心部におけるフェライト組織の結晶粒度番号をJIS G 0552に準拠して測定した。
Figure 0004693349
また、上記のようにして得た冷延鋼板を素材とし、図1(a)に示した形状の電縫管(38.1φ×1.2mm)を造管し、その電縫管を用いてハイドロフォーム加工して図1(b)のT型張り出し形状の試験片に成形し、この試験片を鋼製定盤上に横向きに載置し、図中のX点に向けて5kgの錘を80cmの高さから落下させる落重試験を行い、割れ発生の有無および割れの大きさを測定し、割れなしを○、割れが1箇所でかつ割れの長さが10mm以内の場合を△、割れが複数かあるいは割れの長さが10mm超えの場合を×と評価した。
上記測定の結果を表1中に併記して示した。シャルピー遷移温度と結晶粒度番号が本発明の条件を満たす発明例(No.1〜11)はいずれも、ハイドロフォーム加工後の耐割れ性に優れている。一方、Mnが本発明範囲を外れている比較例のNo.A、Oが外れている比較例のNo.CおよびPが外れている比較例のNo.Dはいずれも、シャルピー遷移温度が高く、ハイドロフォーム加工後の耐割れ性が悪い。比較例のNo.Eは、発明例のNo.2ベースの鋼板の結晶粒を大きく成長させたものであるが、Bを添加しているにも拘わらず、ハイドロフォーム後の耐割れ性は悪い。つまり、本発明が対象としている割れにはBの効果は認められず、従来の2次加工脆性割れとは異なることがわかる。また、C,P,Sが多い比較例のNo.Fは、シャルピー遷移温度が低いにも拘わらず、結晶粒が微細化し過ぎているため、ハイドロフォーム後の耐割れ性が劣る。また、比較例のNo.Bは、シャルピー遷移温度が低いにも拘わらず、結晶粒度番号が小さい(結晶粒が大きい)ために、ハイドロフォーム後の耐割れ性が劣る。
本発明の鋼板は、ハイドロフォーム加工により成形する耐熱、耐食性用途部品に好適に用いることができる。
ハイドロフォーム加工後の耐割れ性の評価方法を模式的に示す図である。 ハイドロフォーム加工後の耐割れ性に及ぼす素材鋼板のシャルピー遷移温度、結晶粒度番号の影響を示すグラフである。

Claims (5)

  1. C:0.02mass%以下、
    Si:2mass%以下、
    Mn:3mass%以下、
    P:0.04mass%以下、
    S:0.006mass%以下、
    Cr:6〜20mass%、
    Ni:2mass%以下、
    N:0.02mass%以下、
    O:0.008mass%以下を含有し、かつ
    Ti,Nb,VおよびAlのいずれか1種または2種以上を合計で1mass%以下含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、シャルピー吸収エネルギーが80J/cm以上となる最低温度が−40℃以下かつ結晶粒度番号が3.5〜7.5であることを特徴とするハイドロフォーム加工後の耐割れ性に優れるハイドロフォーム加工用Cr含有フェライト系鋼板。
  2. 上記成分組成に加えてさらに、Cu,WおよびMoのいずれか1種または2種以上を各5mass%以下かつ合計で8mass%以下含有することを特徴とする請求項1に記載のハイドロフォーム加工用Cr含有フェライト系鋼板。
  3. 上記成分組成に加えてさらに、Mgを0.01mass%以下含有することを特徴とする請求項1または2に記載のハイドロフォーム加工用Cr含有フェライト系鋼板。
  4. 上記成分組成に加えてさらに、Bを0.01mass%以下含有し、かつ結晶粒度番号が3.5〜6.0であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイドロフォーム加工用Cr含有フェライト系鋼板。
  5. 上記成分組成に加えてさらに、CaまたはREMのいずれか1種または2種を各0.1mass%以下含有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のハイドロフォーム加工用Cr含有フェライト系鋼板。
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