JP4693221B2 - アルミニウム合金製ドアビーム及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のドア補強用部材として使用されるアルミニウム合金製ドアビーム及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平11−278054号公報には、アルミニウム合金押出材からなり、長手方向に垂直な断面において、図5に示すように、圧縮側フランジ1と引張側フランジ2を一対のウエブ3、4により連結した断面形状を有し、かつ圧縮側フランジ1の中心線aと引張側フランジ2の中心線bがずれているドアビームが記載されている。なお、中心線a、bは、長手方向に垂直な断面において各フランジの中心(長さの中心)を通り荷重Pの方向に引いた線である。なお、図5のドアビームの両フランジ1、2はそれぞれ均一な厚さをもち、かつ互いに平行であるから、中心線a、bの方向は両フランジ1、2に垂直である。
【0003】
このドアビームは、荷重Pが圧縮側フランジ1に均等にかかったと仮想したときの荷重の作用線(圧縮側フランジ1の中心線aと同じ位置、矢印で表示)が引張側フランジの中心線bとずれているため、曲げ荷重Pを受けたとき、ビーム断面がひしゃげるように座屈変形(ウエブが倒れる)を起こしやすく、割れが生じるほど引張側に歪みが蓄積される前に荷重が大きく低下し、その結果、前記公報に記載されたように、引張側フランジ2側の負荷が緩和され、引張側に割れが発生し難くなり、圧縮側にも割れが発生しにくくなる。これにより、破断変位を大幅に改善することができ、短いビーム長でも大きい破断変位を得ることができ、同時に重量を増やすことなく必要な最大荷重及びエネルギー吸収量を稼ぐことができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このドアビームは、軽量化、レイアウト上の必要性、あるいはブラケットレスドアビームとして用いる場合にその取り付けの利便性等のため、両端部を斜めにカットして用いられることが多い(曲げモーメント分布から考えて斜めカットしても性能上支障が出ない)。その際、現在は図4(a)に示すように、▲1▼まず押出材の断面に垂直な面Aで所定長さに切断し、続いて各々の押出材の両端を斜めの面B、Cで切断する、又は、▲2▼垂直な面Aで切断することなく、斜めの面B、Cのみで切断する、等の方法を採用している。しかし、いずれの方法でも、図4(a)にドットを付した部分が歩留り落ち(製品に利用されない部分)となり、歩留りが低下するという問題があった。
【0005】
従って、本発明は、一対のフランジが一対のウエブにより連結されたアルミニウム合金押出材からなり、長手方向に垂直な断面をみたとき、一方のフランジの中心線と他方のフランジの中心線がずれたドアビームにおいて、このような歩留り落ちを減らして歩留りの向上を図ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るアルミニウム合金製ドアビームは、一対のフランジが一対のウエブにより連結されたアルミニウム合金押出材からなり、長手方向に垂直な断面をみたとき、前記ウエブが互いに平行で前記フランジに対し同方向に傾斜し、一方のフランジの中心線と他方のフランジの中心線がずれ、かつ断面形状がその図心を対称中心として対称であることを特徴とする。
本発明において、フランジの中心線とは、アルミニウム合金押出材の長手方向に垂直な断面において、各フランジの中心(長さの中心)を通り、想定される荷重の方向に引いた直線であり、同断面においてフランジに対し垂直である。
また、本発明に係るアルミニウム合金製ドアビームの製造方法は、上記の断面形状を有する長尺のアルミニウム合金押出材に適用されるカッティング方法であり、該押出材の長手方向に対して傾斜しかつ断面におけるフランジの幅が最小となる面と、その面とは逆に傾斜しかつ断面におけるフランジの幅が最小となる面で、該押出材の長手方向に沿ってドアビームの長さ毎に交互に切断し、前記押出材から複数本のドアビームを製造することを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1に参考例に係るドアビームの一例(長手方向に垂直な断面)を示す。このドアビームは、一対のフランジ11、12が一対のウエブ13、14により連結されたアルミニウム合金押出材からなり、両フランジ11、12は互いに平行で同じ厚み(c=d)、同じ幅(e=f)を有し、両ウエブ13、14は両フランジに垂直で同じ厚み(g=h)、同じ長さを有する。また、長手方向に垂直な断面において、フランジ11の両張出幅e1、e2はフランジ12の両張出幅f1、f2と等しくされ(e1=f1、e2=f2)、フランジ11の中心線aとフランジ12の中心線bは左右にずれている。なお、中心線a、bは各フランジ11、12の中心(長さの中心)を通り荷重Pの方向に引いた直線であり、各フランジ11、12に対し垂直である。
両中心線a、bが左右にずれていることは、曲げの中立軸i及び図心Oを通り該曲げの中立軸iに垂直な軸jのいずれに対しても非対称であることを意味する。そして、上記ドアビームの断面形状は、長手方向に垂直な断面において、図心Oを対称中心として対称である。すなわち図心Oを中心として180゜回転しても同形状となる。
【0008】
このドアビームは、上記断面形状を有する長尺のアルミニウム合金押出材を切断して製造することができる。図4(b)に示すように、この押出材の長手方向に対して傾斜しかつ断面におけるフランジ11、12の幅が最小となる面Bと、面Bとは逆に傾斜しかつ断面におけるフランジ11、12の幅が最小となる面Bで、該押出材の長手方向に沿ってドアビームの長さ毎に交互に切断する。なお、この押出材では、面B、Cと押出材のフランジ面(フランジ11、12の表面)が交わる交線の向きは押出材の長手方向に垂直となる。
この押出材の断面形状は、長手方向に垂直な断面において、図心Oを対称中心として対称であるから、切断された各押出材21、22、23、24・・・は全て同じ断面及び立体形状であり、そのままドアビームとして利用することができ、歩留り落ちが少ない。また、この製造方法によれば切断工程の数が少なくなり、生産性が向上する。
【0009】
一方、図5に示すドアビームのように、その断面形状において、両フランジ1、2の幅が異なり(e≠f)、対角上の張出幅が異なり(e1≠f1、e2≠f2)、あるいは厚みが異なる(c≠d)など、断面形状が図心Oを中心として対称でない場合は、仮に図4(b)のように切断すると、各押出材は一つおきに別形状となる。しかし、この断面形状では、フランジ11が圧縮側、フランジ12が引張側というように向きが定められているから、一つおきにドアビームとして利用できない押出材が製造されることになる。従って、必ず図4(a)のように切断しなくてはならず、必然的に多くの歩留り落ちが出る。
【0010】
図2に示すのは、本発明に係るドアビームの例である(同じく長手方向に垂直な断面)。このドアビームは、同じく一対のフランジ31、32が一対のウエブ33、34により連結されたアルミニウム合金押出材からなり、両フランジ31、32は互いに平行で同じ厚み(c=d)、同じ幅(e=f)を有し、両ウエブ33、34は互いに平行で両フランジに対し同方向に傾斜し同じ厚み(g=h)、同じ長さを有する。また、長手方向に垂直な断面において、フランジ31の両張出幅e1、e2はフランジ32の両張出幅f1、f2と等しくされ(e1=f1、e2=f2)、フランジ31の中心線aとフランジ32の中心線bは左右にずれている。なお、中心線a、bは各フランジ31、32に対し垂直である。
【0011】
このドアビームの断面形状は、曲げの中立軸i及び図心Oを通り該曲げの中立軸iに垂直な軸jに対して非対称である。そして、上記ドアビームの断面形状は、長手方向に垂直な断面において、図心Oを対称中心として対称である。すなわち図心Oを中心として180゜回転しても同形状となる。
このドアビームも、図4(b)に示すように、上記断面形状を有する長尺のアルミニウム合金押出材を切断して製造することができ、歩留り落ちが少なく、生産性が向上する。
【0012】
図3に示すのは、参考例に係る別のドアビームの例である(同じく長手方向に垂直な断面)。このドアビームは、同じく一対のフランジ41、42が一対のウエブ43、44により連結されたアルミニウム合金押出材からなり、両フランジ41、42が湾曲している点で図1に示すドアビームとは異なる。
しかし、図1に示すドアビームと同じく、両フランジ41、42は同じ幅及び厚みを有し、両ウエブは互いに平行で同じ長さ及び厚みを有し、押出材の長さ方向に垂直な断面において、フランジ41の中心線aとフランジ42の中心線bは左右にずれている。この中心線a、bは各ウエブ43、44と平行である。また、その断面形状は、曲げの中立軸i及び図心Oを通り該曲げの中立軸iに垂直な軸jに対して非対称であり、かつ図心Oを対称中心として対称である。すなわち図心Oを中心として180゜回転しても同形状となる。
このドアビームも、図4(b)に示すように、上記断面形状を有する長尺のアルミニウム合金押出材を切断して製造することができ、歩留り落ちが少なく、生産性が向上する。
【0013】
このドアビームはフランジ41、42が外側に湾曲しているので、その曲率をドアのアウターパネルの曲率に合わせておけば、接着剤でフランジとアウターパネルの内側を接着する場合に(剛性向上、振動騒音防止等のために予めフランジとアウターパネルを1乃至複数箇所で接着剤を介して接着しておく場合がある)、隙間がほぼ一定であるので接着しやすく有利である。この場合、接着剤とドアビームの密着性を高めるため、ドアビームに表面処理等を適宜行うこともできる。表面処理としては、例えばアルマイト処理、水和酸化物皮膜の形成等が挙げられる。また、フランジ41、42が湾曲していることで、実際の荷重方向が想定している方向(中心線a、bと平行)から多少斜めにずれた場合でも、フランジがその荷重を垂直に受けることができる。
【0014】
なお、本発明及び参考例に係るドアビームには、各種アルミニウム合金がいずれも適用できるが、特にZn:4〜9%(質量%、以下同じ)、Mg:0.8〜2%を含有するAl−Zn−Mg系アルミニウム合金、Mg:0.4〜1.3%、Si:0.2〜1.5%を含有するAl−Mg−Si系アルミニウム合金が好適であり、一般的な合金として、例えば7N01、6061、6063、6N01等が挙げられる。
【0015】
【発明の効果】
本発明によれば、破断変位が大きく、重量を増やすことなく必要な最大荷重及びエネルギー吸収量を稼ぐことができると同時に、歩留りの向上と製造工程における生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例に係るドアビームの断面形状である。
【図2】 本発明に係るドアビームの断面形状である。
【図3】 参考例に係る別のドアビームの断面形状である。
【図4】 押出材を切断してドアビームを製造する方法であり、従来方法(a)及び本発明方法(b)である。左側の図形はそれぞれの側面図である。
【図5】 従来のドアビームの断面形状である。
【符号の説明】
1 圧縮側フランジ
2 引張側フランジ
3、4、13、14、33、34、43、44 ウエブ
11、12、31、32、41、42 フランジ
a、b 中心線
O 図心
Claims (2)
- 一対のフランジが一対のウエブにより連結されたアルミニウム合金押出材からなり、長手方向に垂直な断面をみたとき、前記ウエブが互いに平行で前記フランジに対し同方向に傾斜し、一方のフランジの中心線と他方のフランジの中心線がずれ、かつ断面形状がその図心を対称中心として対称であることを特徴とするアルミニウム合金製ドアビーム。
- 請求項1に記載された断面形状を有する長尺のアルミニウム合金押出材を、前記押出材の長手方向に対して傾斜しかつ断面におけるフランジの幅が最小となる面と、その面とは逆に傾斜しかつ断面におけるフランジの幅が最小となる面で、該押出材の長手方向に沿ってドアビームの長さ毎に交互に切断し、前記押出材から複数本のドアビームを得ることを特徴とする請求項1に記載されたアルミニウム合金製ドアビームの製造方法。
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