JP4692132B2 - 溶融めっき装置および溶融めっき装置の操業方法 - Google Patents
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その際、金属のインゴットの溶解に起因するポット内の溶融金属(以下単に、浴ともいう)の一時的な温度低下により、ドロスが発生し、このドロスが被めっき材近傍まで浴面あるいは浴中を流動する。そこでこれが被めっき材に付着するのを防止する目的で、インゴットを装入する部分を囲う堰をポットに設置することが行なわれている(特許文献1)。
また特許文献2には、図4(a)、(b)に示すようなシンクロール9を具備した溶融めっき装置が開示されている。
具体的には特許文献2の溶融めっき装置では、長さ2.2m、外径700mmのシンクロール9に対して、整流部材10の内面からシンクロール9の外周面までの間隔を75mm、シンクロール9の長手方向両端部を覆う長さをロール両端より500mmとした整流部材10を設置することにより、ボトムドロスの巻き上げの防止を図っている。
このため、特許文献1に記載の溶融金属めっき装置により、例えば幅1200mm、厚さ1.0mmの冷延鋼帯を浸漬し、引き上げて溶融亜鉛めっき鋼帯を製造する際、図5(a)に示すように、堰6に設けた連通孔7からの溶融金属の流れ(イ)および鋼帯Sの浴内通過に伴う流れ(ロ)により、特に鋼帯Sの通板速度が速い操業条件ではボトムドロス100の巻き上げが起こり得るので、巻き上げられたボトムドロス101が鋼板表面に付着するという問題があった。
また前記シンクロールは、該シンクロール下側の側面及び外周面の一部を覆うと共に、該外周面に沿った曲率を有し、該シンクロールに巻き付く金属帯の全面を覆わない長さの整流部材が両端に取り付けられてなることが好ましい。
また本発明は、前記いずれかに記載の溶融めっき装置により、被めっき材を溶融金属浴中に浸漬し、引き上げて溶融めっきする操業を行なうに際し、浴面レベルが目標値より低下したときにインゴット装入手段によりインゴットを浴へ装入し、加熱手段を作動させる操業を行なうことを特徴とする溶融めっき装置の操業方法である。
まず本発明をなすに至ったモデル解析結果を図5(a)、(b)に示す。図5(a)には、堰6の底板に設けた連通孔7からの下降流(イ)によりボトムドロス100が巻き上げられている状態を示し、図5(b)には、堰6の底板に設けた連通孔7からの下降流れ(イ)があってもボトムドロス100が巻き上げられていない状態を示す。図5(a)中、101は堰6の底板に設けた連通孔7からの下降流(イ)により巻き上げられたボトムドロスを示す。
また図5(b)に示すように、連通孔7を設けた底板からポット底面2までの間隔aを広げることにより、堰6の底板に設けた連通孔7からの下降流れ(イ)があっても、ドロスが巻き上げられ難くなるが、ポット深さが浅いと、ポット底面2上に十分な流れのよどみ領域を形成することができず、鋼帯の浴内通板に伴う流れ(ロ)によって生じるボトムドロスの巻き上げも起こり、ドロスが鋼帯S表面に付着することもわかった。
そこで本発明では、種々の条件でモデル解析を行ない、鋼帯Sの浴内通板速度120mpmでめっき操業を行った場合でも、ポット底面2上に流れのよどみ領域を十分に形成することができるポット深さとするとともに、堰6の底板に設けた連通孔7からの下降流れ(イ)により、ボトムドロス100が巻き上げられない状態を実現できるよう、連通孔7を設けた底板からポット底面2までの間隔を決定した。すなわち、図1に示すような本発明の実施の形態にかかる溶融めっき装置において、ポット深さbを2400〜3000mmとし、連通孔7を設けた底板からポット底面2までの間隔aをポット深さbの1/2〜2/3とした堰6を設置した。堰6を設置する場所は、シンクロール10に対して被めっき材Sが浴12に進入してくる側のポット1の壁面とすることが望ましい。
ポット深さbを2400mm未満とした場合には、鋼帯Sの幅が900〜1200mm、鋼帯Sの浴内通板速度120mpmの条件で、ポット底面2上に十分な流れのよどみ領域を形成することができず、一方、ポット深さbを3000mm超えとした場合には、流れのよどみ領域が広くなり浴温の不均一化を招きやすくなる不都合が発生する。そこで、鋼帯Sの幅が900〜1200mm、鋼帯Sの浴内通板速度120mpmのめっき操業条件で、流れのよどみ領域を形成することができるポット深さとするとともに、前記不都合を解消するため、ポット深さbを2400〜3000mmとした。
連通孔7を設けた底板からポット底面2までの間隔aがポット深さbの1/2未満とした場合、めっき操業条件によりインゴット5を浴へ装入した際の連通孔7からの下降流れによって、ドロスが巻き上げられてドロスが鋼帯S表面に付着してしまう。
ところで本発明の実施の形態にかかる溶融めっき装置は、図1に示したように、溶融金属浴12、シンクロール9および加熱手段8を有するポット1と、浴12へ、インゴット5を装入するインゴット装入手段4と、浴12内にてインゴット5を囲むとともに浴12との連通孔7を設けた底板を有する堰6を具備した溶融めっき装置である。図1中、10は整流部材を示し、11はスナウトを示す。
加熱手段8としてインダクターなどを用いることができる。加熱手段8をポット1に3箇所設置する場合、その設置位置は図2に示すように、シンクロール9のポット底面に平行な幅方向中央軸Lを含み且つ前記ポット底面に垂直な面に対して左右対称にするのが浴温を均一化するうえで好ましい。
またシンクロール9は、図4に示すように、シンクロール下側の側面及び外周面の一部を覆うと共に、該外周面に沿った曲率を有し、シンクロールに巻き付く金属帯の全面を覆わない長さの整流部材10が両端に取り付けられてなるのが、鋼帯Sの浴内通板速度が120mpmでのめっき操業条件において、流れのよどみ領域をさらに十分に形成することができるので好ましい。
但し、前記した浴温と浴中の流動のモデル解析結果から、ポット寸法は、深さbを、2800mm、ポット幅を3600mm、ポット奥行きを4250mmとし、堰6の底板からポット底面2までの間隔bを1500mmとして堰6をシンクロールに対して鋼帯が進入している側のポット1の一壁面に取り付け、またシンクロール9の回転中心からポット底面2までの距離を1500mmとした。
また、図1、図2に示した発明例の溶融めっき装置において、底板6Aに加えて左右のサイド板6BL、6BRに浴との連通孔を形成した堰を、堰6に代えて設置した場合には、同様な溶融めっき条件で製造した自動車外板用の溶融亜鉛めっき鋼帯表面を1000mにわたり、観察したところ、ドロス付着個数は0.5個/m2であった。この理由は、底板6Aに加えて左右のサイド板6BL、6BRに浴との連通孔を形成した特殊な堰は、図6に示した堰6の底板に設けた連通孔7からの下降流れ(イ)をさらに弱くするためである。
実施前のボトムドロスの堆積量とは、シンクロール9に整流部材10を設け、しかも堰が本発明の条件を満たしていない特許文献2の溶融めっき装置の場合である。このことから、発明例の溶融めっき装置により、ボトムドロスの堆積量を実施前の20%にまで減少することができていることがわかる。これは本発明においては浴温の均一化が達成された結果である。
但し、浴中における浴温の最大偏差は、図1に示した幅方向中央における側温箇所P1〜P6と、このP1〜P6の各側温箇所から左右に所定距離隔てて幅方向中央に対して左右対称に12箇所、合計18箇所で側温し、各箇所での側温値と目標値との偏差の絶対値のうち、最大の値とした。
1 ポット
2 ポット底面
3 浴面
4 インゴット装入手段
5 インゴット
6 堰
a 連通孔7を設けた底板からポット底面2までの間隔
b ポット深さ
W 幅
D 奥行き
6A 底板
6BL、6BR サイド板
6C 前板
7 連通孔
8 加熱手段(インダクター)
9 シンクロール
10 整流部材
11 スナウト
12 溶融金属浴
100 ボトムドロス
101 巻き上げられたボトムドロス
イ、ロ、ハ 溶の流れ
L シンクロールのポット底面に平行な幅方向中央軸
Claims (5)
- 溶融金属浴、シンクロールおよび加熱手段を有するポットと、該浴へインゴットを装入するインゴット装入手段と、該浴内にて前記インゴットを囲むとともに該浴との連通孔を設けた底板を有する堰を具備した溶融めっき装置において、前記ポット深さを2400〜3000mmとし、前記底板から前記ポット底面までの間隔を前記ポット深さの1/2〜2/3としたことを特徴とする溶融めっき装置。
- 前記シンクロールのポット底面に平行な幅方向中央軸を含み且つ前記ポット底面に垂直な面に対して、前記ポット、前記堰、前記堰の底板に設けた連通孔、加熱手段およびインゴット装入手段を面対称とすることを特徴とする請求項1に記載の溶融めっき装置。
- 前記シンクロールは、該シンクロール下側の側面及び外周面の一部を覆うと共に、該外周面に沿った曲率を有し、該シンクロールに巻き付く金属帯の全面を覆わない長さの整流部材が両端に取り付けられてなることを特徴とする請求項1または2に記載の溶融めっき装置。
- 前記堰は、底板に加え、サイド板にも連通孔を設けてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶融めっき装置。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶融めっき装置により、被めっき材を溶融金属浴中に浸漬し、引き上げて溶融めっきする操業を行なうに際し、浴面レベルが目標値より低下したときにインゴット装入手段によりインゴットを浴へ装入し、加熱手段を作動させる操業を行なうことを特徴とする溶融めっき装置の操業方法。
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