JP4691909B2 - 半導体結晶の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は半導体結晶および半導体結晶の製造方法に関し、特に半導体結晶の成長方向における不純物濃度またはキャリア濃度分布をより均一にした半導体結晶および半導体結晶の製造方法に関する。
従来から半導体結晶は、発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)などの光デバイス用の基板およびトランジスタなどの電子デバイス用の基板として好適に用いられている。
ここで、光デバイスや電子デバイスのデバイス特性は、基板の不純物濃度やキャリア濃度に大きく影響を受けることが知られている。したがって、光デバイスや電子デバイスのデバイス特性のばらつきを解消するためには、成長する半導体結晶の成長方向における不純物濃度分布やキャリア濃度分布をより均一にする必要がある。
図7に、従来の半導体結晶の成長装置の一例の模式的な断面図を示す。この結晶成長装置は、坩堝1と、坩堝1を封入する耐熱容器4と、耐熱容器4の外側に設置されているヒータ3a、3bと、耐熱容器4を密閉するためのB23シール13と、これらの部材を収容するチャンバ5とを含む。この結晶成長装置の坩堝1の下部にはGaAs種結晶7が設置され、その上部に不純物としてSiを含むGaAs多結晶からなる原料およびB23からなる封止材14が順次収容される。そして、ヒータ3bを加熱することによってB23シール13を溶解させて耐熱容器4を密閉した後、ヒータ3aの温度を上昇させて坩堝1を加熱し、坩堝1内のGaAs多結晶を一旦融液化する。その後、坩堝1の下方から上方に向けてGaAs融液9の温度を次第に低下させ、坩堝1の下部にある種結晶7の表面から上方に向けてGaAs融液9を固化することによってSiを含むGaAs結晶8を成長させる。GaAs種結晶7上に成長させられたGaAs結晶8は、その成長方向と直交する方向に切り出されて光デバイスや用や電子デバイス用の基板として用いられる。
しかしながら、GaAs融液9中のSiは、GaAs結晶8に対する偏析係数が1以下であるため、偏析によってGaAs融液9中のSi濃度よりも低い濃度でしかGaAs結晶8中に取り込まれない。したがって、GaAs融液9の減少量に比較してGaAs融液9中のSiの減少量が少なくなるため、GaAs融液9中のSi濃度はGaAs結晶8が成長するにつれて増大する。これにより、GaAs結晶8中のSi濃度は下側からその上側にかけて次第に増加し、1つのGaAs結晶8から切り出される複数の基板間のキャリア濃度にばらつきが生じてしまうという問題があった。
そこで、特許文献1および特許文献2には、B23からなる封止材がGaAs融液中のSiを取り込むことを利用した方法が開示されている。たとえば、特許文献1に開示された方法においては、B23からなる封止材を2層にして下層には予め適当な量のSiO2を含有させ、上層にはSiO2を含有させないでおく。そして、GaAs結晶の成長初期においては下層に取り込まれるSi量を少なくしておき、GaAs結晶の成長がある程度進行したときに上層と下層とを攪拌して混合することによって下層のSiO2濃度を低くする。これにより、GaAs融液からSiをより多く取り込んでGaAs結晶中のSi濃度を制御する(特許文献1の段落[0026]〜[0029]参照)。また、特許文献2に開示された方法においては、GaAs結晶の成長中にSiO2の含有量が少ないB23をGaAs融液中に加える。その後、GaAs融液を攪拌することによってB23にSiを取り込ませ、GaAs融液中のSi濃度を制御する(特許文献2の段落[0013]参照)。
しかしながら、これらの方法においては、攪拌によってB23の混合状態を一定に制御することが非常に困難であるためB23中に取り込まれるSi量にばらつきが生じ、その結果としてGaAs結晶中のSi濃度の制御が非常に困難であるという問題があった。また、予めB23に含有させるSiO2量を制御する必要があるため、GaAs結晶を効率的に製造することができないという問題もあった。さらに、B23とSiとの反応が促進されるので多量のホウ素がGaAs結晶中に取り込まれ、GaAs結晶の格子定数が変化したり、Asサイトのホウ素によってアクセプタ濃度が増加するという問題もあった。
さらに、特許文献3には、坩堝に収容されたGaAs融液のSi濃度である1.0×1019cm-3よりも低い1.5×1018cm-3のSi濃度を有するブロック状のGaAs多結晶を坩堝の上部の原料供給容器に設置し、原料供給容器からGaAs融液を滴下しながら種結晶上にGaAs結晶を成長させる方法が開示されている。この方法は、GaAs結晶の成長に伴って消費されたGaAs融液量およびSi量を上部の原料供給容器から補充することによって坩堝内のGaAs融液の状態を成長初期の状態に保ちながらGaAs結晶を成長させるという考え方に基づくものである(特許文献3の段落[0031]参照)。
しかしながら、この方法においては、原料供給容器から融液にして供給されるブロック状のGaAs多結晶中にSi濃度のばらつきがあった場合には、成長後のGaAs結晶中におけるキャリア濃度にばらつきが生じるという問題があった。また、この方法においては、理論的には原料供給容器に収容された原料の質量と同じ質量に相当する部分しかキャリア濃度を均一にすることができないため歩留まりが悪くなるという問題があった。さらに、この方法においては、内径52mmの坩堝に対して5gの円板状のB23が封止材として充填されている(特許文献3の段落[0022]、[0024]参照)が、B23の密度が1.5g/cm3であって、坩堝内の融液の表面の面積が約21cm2(πr2=3.14×2.6×2.6)であることを考慮すると、B23の厚みは約1.6mmとなる。しかしながら、このようなB23の厚みではB23が破れてしまい、B23で融液の表面を覆うことができなかった。したがって、この場合には、滴下中に温度が低下した融液が直接、高温の融液に入り込むことになり坩堝内の融液の温度分布が乱されることによってGaAs多結晶が成長することがあるため、GaAs結晶の製造歩留まりが低下するという問題があった。
特開2000−109400号公報 特開2000−143397号公報 特開平9−52788号公報
本発明の目的は、半導体結晶の成長方向における不純物濃度またはキャリア濃度の分布をより均一にした半導体結晶および半導体結晶の製造方法を提供することにある。
明細書において「不純物」とは、半導体結晶中でキャリアを生成したり、半導体結晶中の転位を動きにくくすることによって半導体結晶の強度を向上させる(不純物硬化)などのために導入される不純物のことをいう。また、本明細書において「固化率」とは、半導体結晶の成長開始部分を固化率0とし、半導体結晶が成長するにしたがって増加し、成長終了部分を固化率1とする指標であり、半導体結晶の成長方向における結晶部分の位置を表わすものである。
発明は、坩堝内において酸化ホウ素で表面を覆われた、不純物を含む原料の融液を固化することによって半導体結晶を成長させる半導体結晶の製造方法であって、半導体結晶に対する不純物の偏析係数が1以下であり、原料の不純物濃度よりも低い不純物濃度の追加原料が収容された容器から追加原料の融液を坩堝内に滴下しながら、半導体結晶中における最低不純物濃度C 1min とC 1min ≦C 1 ≦1.5C 1min の関係を満たす不純物濃度C 1 である結晶部分が、固化率0.1〜0.8の範囲内における結晶部分の4/7以上を占めており、半導体結晶中における偏析係数が1よりも小さい不純物の濃度が固化率の増加と共に減少する結晶部分を有し、半導体結晶の固化率0.1〜0.8の範囲内の結晶部分に、固化率0.1の結晶部分の不純物濃度以下である部分を有する半導体結晶を成長させる半導体結晶の製造方法である。
また、本発明の半導体結晶の製造方法においては、容器の外側に設置された加熱手段の加熱温度の調節および加熱手段に対する容器の相対的な移動の少なくとも一方によって、追加原料の加熱温度を調節して融液の滴下量を制御することが好ましい。
また、本発明の半導体結晶の製造方法においては、半導体結晶の成長が、密閉された耐熱容器内において縦型ボート法により行なわれることが好ましい。また、本発明の半導体結晶の製造方法において、半導体結晶は、GaAs(ヒ化ガリウム)、InP(リン化インジウム)、InAs(ヒ化インジウム)およびGaP(リン化ガリウム)からなる群のうちいずれか1つの化合物半導体の結晶であることが好ましい。また、本発明の半導体結晶の製造方法において、不純物がIn(インジウム)、Zn(亜鉛)、Si(シリコン)、Al(アルミニウム)、S(イオウ)、Sn(スズ)、Se(セレン)、Te(テルル)、Cr(クロム)、C(炭素)、O(酸素)、Fe(鉄)およびGa(ガリウム)からなる群のうち少なくとも1つであることが好ましい。また、本発明の半導体結晶の製造方法において、半導体結晶は、C 1min ≦C 1 ≦1.5C 1min の関係を満たす不純物濃度C 1 である結晶部分の成長方向長さが75mm以上であることが好ましい。また、本発明の半導体結晶の製造方法において、半導体結晶は、C 1min ≦C 1 ≦1.5C 1min の関係を満たす不純物濃度C 1 である結晶部分の直径が70mm以上であることが好ましい。
本発明によれば、半導体結晶の成長方向における不純物濃度またはキャリア濃度の分布をより均一にした半導体結晶および半導体結晶の製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本願の図面において、同一の参照符号は同一部分または相当部分を表わすものとする。
図1に、本発明に用いられる半導体結晶の結晶成長装置の好ましい一例の模式的な断面図を示す。この結晶成長装置は、坩堝1と、坩堝1の上方に設置された容器2と、坩堝1および容器2を封入する耐熱容器4と、耐熱容器4の外側に設置されている加熱手段としてのヒータ3a、3b、3cと、耐熱容器4を密閉するためのB23シール13と、これらの部材を収容するチャンバ5とを含み、容器2の上方には質量計6が設置されている。
この結晶成長装置の坩堝1の下部にはGaAsからなる種結晶7が設置され、種結晶7の上部に不純物としてSiを含むGaAs多結晶からなる原料およびB23からなる封止材14が順次収容される。また、容器2にはSiなどの不純物を含まないGaAs多結晶からなる追加原料12が収容される。そして、ヒータ3bによりB23シール13を加熱して溶解することによって耐熱容器4を密閉する。このように、耐熱容器4を密閉した状態でGaAs結晶8を成長させる場合には、成長するGaAs結晶8が外部からの影響を受けにくくなる。
耐熱容器4の密閉後、ヒータ3aにより坩堝1を加熱し、坩堝1内のGaAs多結晶を融液化する。そして、坩堝1の下方から上方に向けてGaAs融液9の温度を次第に低下させ、坩堝1の下部にある種結晶7の表面から順次GaAs融液9を固化していく。ここで、GaAs融液9を固化する方法としては、たとえばヒータ3aにGaAsの融点以下の温度からその融点を超える温度までの温度勾配を下方から上方に向けて温度が上昇するように設定して坩堝1を次第に下方に移動させていく方法や坩堝1を移動させずにヒータ3aの温度を上方に向けて次第に低下させていく方法などがある。
さらに、ヒータ3cによって容器2を加熱し、容器2に収容されている追加原料12を融液化して容器2に設置されている穴11からSiを含まないGaAs融液10を坩堝1に滴下しながらGaAs結晶8を成長させる。また、追加原料12の質量変化は質量計6で確認することができるのでGaAs融液10の滴下量を制御することができる。ただし、ヒータ3cの加熱温度を制御することによってGaAs融液10の滴下量を十分に制御することができる場合には質量計6は用いなくてもよい。これにより、坩堝1のGaAs融液9中のSi濃度の増大を抑止しながらGaAs結晶8の成長を行なうことができる。
したがって、本発明においては、GaAs融液を滴下しない従来の方法と比べてGaAs結晶8の成長方向におけるSi濃度のカーブをより平坦にすることができる。
さらに、GaAs結晶8の成長方向全体にわたってキャリア濃度分布を均一にするために、不純物としてSiのみを含むGaAs結晶8の結晶成長において、Siなどの不純物を含まないGaAs融液10の容器2からの好適な滴下量について考察する。
まず、質量WsのGaAs結晶8が質量WmのGaAs融液9中にすでに成長しており、さらに質量dWsの微小のGaAs結晶8が成長する場合を考える。このときのGaAs融液9中のSiの質量をQmとすると、GaAs融液9中のSiの質量の変化量dQmは下記の式(1)で表わされる。なお、式(1)において、Cm(Ws)は質量WsのGaAs結晶8が成長している時点でのGaAs融液9中のSi濃度を示している。また、kはGaAsにおけるSiの偏析係数(k=0.14)を示している。
Figure 0004691909
また、質量dWsのGaAs結晶8が成長した時点でのGaAs融液9中のSi濃度Cm(Ws+dWs)は、下記の式(2)のように表わされる。なお、式(2)において、Qm(Ws+dWs)は質量dWsのGaAs結晶8が成長した時点でのGaAs融液9中のSiの質量を示し、Wm(Ws+dWs)はその時点でのGaAs融液9の質量を示している。
Figure 0004691909
ここで、式(2)における質量dWsのGaAs結晶8が成長した時点でのGaAs融液9中のSiの質量Qm(Ws+dWs)は、質量WsのGaAs結晶8が成長した時点でのGaAs融液9中のSiの質量Qm(Ws)からdQmだけ変化した値に等しいので、式(2)は下記の式(3)のように変形することができる。
Figure 0004691909
ここで、式(3)における質量WsのGaAs結晶8が成長した時点でのGaAs融液9中のSiの質量Qm(Ws)は、その時点でのGaAs融液9中のSi濃度Cm(Ws)にGaAs融液9の質量Wm(Ws)をかけた値に等しい。さらに、式(1)を式(3)に代入すると下記の式(4)が得られる。
Figure 0004691909
一方、GaAs結晶8の成長開始前の坩堝1のGaAs融液9の量をWm(0)とし、質量WsのGaAs結晶8が成長した時点において容器2から滴下されるSiなどの不純物を含まないGaAs融液10の量をWu(Ws)とする。このとき、式(3)におけるWm(Ws)は、GaAs融液9の初期の質量Wm(0)にこの時点までに滴下された融液量Wu(Ws)を加え、さらにGaAs結晶8の結晶成長量Wsを差し引いたものであると考えることができる。したがって、下記の式(5)が成立する。
Figure 0004691909
この式(5)を式(4)に代入すると、下記の式(6)が得られる。
Figure 0004691909
また、質量dWsのGaAs結晶が成長した時点でのGaAs融液の質量Wm(Ws+dWs)は、質量WsのGaAs結晶が成長した時点でのGaAs融液の質量Wm(Ws)にGaAs融液の滴下量dWuとGaAs結晶の成長量dWsとの差を加えたものと考えることができる。したがって、下記の式(7)が成立する。
Figure 0004691909
そして、式(7)に式(5)を代入して得られた式を、式(6)に代入することによって下記の式(8)が得られる。
Figure 0004691909
ここで、式(8)を変形すると、下記式(9)が得られる。
Figure 0004691909
ここで、(Cm(Ws+dWs)−Cm(Ws))は微小の質量dWsのGaAs結晶が成長したときのGaAs融液9のSi濃度の変化量であり、これをdCmで表わす。また、Cm(Ws+dWs)とCm(Ws)とはほとんど同じSi濃度であることから、これらをそれぞれCmで表わす。そして、dCmおよびCmを用いて式(9)を変形すると下記式(10)が得られる。
Figure 0004691909
理想的にはGaAs融液9のSi濃度の変化量dCmが0であればよいことから、下記の式(11)が成立することが好ましい。
Figure 0004691909
式(11)に(Wm(0)+Wu(Ws)−Ws)をかけて、式(11)を変形すると下記の式(12)が得られる。
Figure 0004691909
ここで、GaAs結晶8の成長量dWsについては、たとえば坩堝1の下方への移動速度やヒータ3aによる坩堝1の加熱温度を制御することなどによって所定の値に設定することができる。また、GaAs融液10の滴下量dWuは、たとえばヒータ3cに対する容器2の相対的な移動やヒータ3cの温度を変化させることによって容器2の追加原料12の加熱温度を調節して制御することができる。なお、「ヒータ3cに対する容器2の相対的な移動」とは、ヒータ3cを固定して容器2を上下方向に移動させたり、容器2を固定してヒータ3cを上下方向に移動させたり、または容器2とヒータ3cの両方を相互に移動させたりして、ヒータ3cに対する容器2の位置を変動させることをいう。
したがって、GaAs結晶8の成長量dWsを設定し、さらに式(12)を満たすようにGaAs融液10の滴下量dWuを制御すれば、成長方向全体にわたってSi濃度、すなわちキャリア濃度の均一なGaAs結晶8が得られることになる。また、本発明においては容器2に収容された追加原料12の質量に相当する部分のSi濃度(キャリア濃度)のみが均一になるわけではないため歩留まりが低下しない。
さらに、下記の式(13)の範囲でGaAs融液10の滴下量dWuを制御してGaAs結晶8を成長させた場合には、GaAs結晶8の最低キャリア濃度C2minとC2min≦C2≦1.5C2minの関係を満たすキャリア濃度C2である結晶部分が固化率0.1〜0.8の範囲内の結晶部分の4/7以上を占めるGaAs結晶8を成長させることができる。
Figure 0004691909
次に、GaAs結晶8の成長開始前に坩堝1内に収容される原料の質量について考察する。下記の式(5)の質量WsのGaAs結晶8が成長した時点でのGaAs融液9の質量Wm(Ws)は、成長開始前のGaAs融液9の質量Wm(0)にGaAs融液10の滴下量dWuとGaAs結晶8の成長量dWsとの差を積分した値を加えたものと考えられることから、下記の式(5)は下記の式(14)に変形することができる。
Figure 0004691909
Figure 0004691909
さらに、式(14)に式(12)を代入すると、下記の式(15)が得られる。
Figure 0004691909
式(15)をさらに変形すると、下記の式(16)が得られる。
Figure 0004691909
ここで、GaAs結晶8が質量Ws成長した時点でのGaAs融液9の質量Wm(Ws)が0よりも大きくなければGaAs結晶8は成長することができないので下記の式(17)が成立する。
Figure 0004691909
また、成長後のGaAs結晶8の質量Wsが、坩堝1と容器2に収容された原料の総質量WmTである場合にはWs=WmTが成立するので、Ws=WmTの式を式(17)に代入すると下記の式(18)が得られる。
Figure 0004691909
さらに、Wm(0)がWmTの70%以下である場合には、GaAs融液10の滴下によってGaAs融液9中のSi濃度が均一になりやすい傾向にある。したがって、GaAs結晶8の成長開始前において、坩堝1に収容される原料の質量Wm(0)は下記の式(19)を満たすことが好ましい。
Figure 0004691909
このように、不純物としてSiを含むGaAs融液9中にSiなどの不純物を含まないGaAs融液10を滴下することによって成長するGaAs結晶8の成長方向におけるSi濃度分布をより均一にすることができる。また、GaAs融液10の滴下量および/または坩堝1に収容される原料の質量を制御することによってGaAs融液9中のSi濃度(キャリア濃度)をさらに均一にすることができるようになる。
なお、上記においては半導体結晶としてGaAs結晶を製造したが、GaAs結晶の他に、InP結晶、InAs結晶またはGaP結晶などの化合物半導体の結晶を製造することもできる。
また、上記においては不純物としてSiを用いたが、本発明においては、In、Zn、Si、Al、S、Sn、Se、Te、Cr、C、O、FeおよびGaからなる群のうち少なくとも1つの不純物を用いることもできる。この場合、半導体結晶中でキャリアを生成する不純物(GaAs結晶やInP結晶に対するZn、Si、S、Sn、SeまたはTeなど)の不純物濃度についてはホール測定などによって測定される。また、半導体結晶中でキャリアを生成しない、または、キャリアをほとんど生成しない不純物(GaAs結晶に対するIn、Al、Cr、C、OやInP結晶に対するAl、FeまたはGaなど)の不純物濃度についてはSIMS分析、ICP分析またはGDMS分析などによって測定される。
ここで、Siの代わりにたとえばGaAs結晶8中でキャリアを生成せずに不純物硬化を生じさせる不純物を用いた場合でも、GaAs結晶8の最低不純物濃度C1minとC1min≦C1≦1.5C1minの関係を満たす不純物濃度C1である結晶部分が固化率0.1〜0.8の範囲の結晶部分の4/7以上を占めるGaAs結晶8を成長させることができる。
また、上記においてはSiを含まないGaAs融液10を滴下したが、GaAs結晶8の成長開始前に坩堝1に収容されている原料のSi濃度よりも低いSi濃度のGaAs融液10を滴下しても上記の式を応用してGaAs融液10の滴下量を制御することにより、従来法(ノーマルフリージング)に比べて成長方向に均一なSi濃度を有するGaAs結晶8を製造することができることは言うまでもない。この場合には、特に、GaAs結晶8の成長開始前に坩堝1に収容されている原料のSi濃度の1/5以下のSi濃度のGaAs融液10を滴下することが好ましい。
また、上記においては容器2を1つしか用いていないが、容器2を上下方向および/または水平方向に複数配列することが好ましい。これらの場合には、追加原料12をより多く充填することができる。
また、上記においては容器2に形成されている1つの穴11から融液を滴下しているが、容器2に複数の穴11を形成して融液を滴下することが好ましい。複数の穴11から融液を滴下した場合には、半導体結晶の成長方向だけでなくその成長方向に直交する方向においても不純物濃度を均一にすることができる傾向にある。また、容器2の穴11の1つあたりの開口部の面積は200mm2以下であることが好ましい。この場合には、GaAs融液10の滴下量をより高精度で制御することができる傾向にある。
また、坩堝1と容器2とを一体化して移動させること、または上記のように坩堝1と容器2とを一体化しない場合にはこれらを同方向に同速度で移動させることによって、GaAs結晶8を成長させることが好ましい。これらの場合には、容器2から坩堝1までの距離が一定になることから、GaAs融液10の滴下量をより高精度で制御することができる傾向にある。この場合の成長方法は、図2に示されているとおりである。図2に示された温度分布内で、坩堝1と容器2とが一体化され、これらが上から下に温度分布に対して相対的に移動することにより、GaAs結晶8の成長が種結晶7から上方向に進行すると同時に、追加原料12が高温部へ移動するために加熱されて追加原料12がGaAs融液10となるためGaAs融液10の滴下量を自動的に制御することができる。特に、追加原料12が収容された容器2が上下方向に複数設置されている場合には連続的に追加原料12がGaAs融液10として供給されるので、より長尺のGaAs結晶8の成長が可能となる。
また、上記においてはB23シール13によって耐熱容器4内を密閉したが、耐熱容器4は石英などで一体的に形成されて耐熱容器4内が密閉されていてもよい。
また、上記においてB23からなる封止材14の厚みは3mm以上であることが好ましい。この場合には、B23からなる封止材14が破れることなくGaAs融液9の表面を覆うことができるため滴下中に温度が低下したGaAs融液10がB23からなる封止材14によって温度を上昇させられた後にGaAs融液9中に入り込むことになる。それゆえ、この場合には、GaAs多結晶が成長せず歩留まり良くGaAs結晶8を製造することができる傾向にある。
また、上記のGaAs結晶8中のホウ素濃度は5×1018/cm3以下とすることができる。この場合には、GaAs結晶8を切り出して得られたGaAs基板と、光デバイスや電子デバイスなどのデバイスの製造時にGaAs基板上に成長させられる半導体結晶との格子整合性が良好となり、デバイス特性が悪化しない傾向にある。また、アクセプタとなるAsサイトのホウ素濃度を低減することができる。
また、上記において耐熱容器4内は、成長する半導体結晶を構成する物質のうちたとえばヒ素やリンなどの揮発性の物質からなる雰囲気であってもよい。
また、上記において耐熱容器4は、気密性カーボン、BN(窒化ホウ素)、pBN(パイロリティックBN)、Al23(アルミナ)、AlN(窒化アルミニウム)、SiC(炭化ケイ素)、石英、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、ステンレスまたはこれらの複合材料からなることが耐熱性の観点から好ましい。
また、本発明においては、VB法(垂直ブリッジマン法)やVGF法(垂直温度傾斜徐冷法)などの縦型ボート法を用いて半導体結晶を製造することが好ましい。この場合には、追加原料を収容した容器を半導体結晶が成長する坩堝の上方に設置することができるため、容易に追加原料の融液を坩堝内に滴下することができる。
また、本発明の半導体結晶の最低キャリア濃度C2minは1×1017/cm3以上5×1018/cm3以下であることが好ましく、特に半導体レーザ用としては1×1018/cm3以上2×1018/cm3以下であることがより好ましい。これらの場合には半導体結晶を切り出して得られた基板に大きな発熱を生じさせることなく大電流を流すことができる傾向が大きくなることから、この基板を用いた高出力の半導体レーザを容易に製造することができるようになる。
また、本発明の半導体結晶においては、半導体結晶中における偏析係数が1よりも小さい不純物の濃度またはキャリア濃度が固化率の増加と共に増加しない結晶部分を有することが好ましい。半導体結晶中において偏析係数が1よりも小さい不純物の濃度またはキャリア濃度は一般的に固化率の増加と共に増加する傾向にあるが、これらの濃度が固化率の増加と共に増加しない結晶部分を有する半導体結晶においては、半導体結晶の成長方向における不純物濃度またはキャリア濃度の均一性がより向上する。
また、本発明の半導体結晶においては、固化率0.8での不純物濃度またはキャリア濃度がそれぞれ固化率0.1での不純物濃度またはキャリア濃度よりも低い場合には、半導体結晶の成長方向における不純物濃度またはキャリア濃度の均一性をより向上させることができる傾向にある。
(実施例1)
図1に示す結晶成長装置を用い、表1に示す条件において、不純物としてSi(k=0.14)を含むGaAs結晶を製造した。ここで、実施例1においては、坩堝1の開口部の直径が7.6cm(3インチ)であって、成長開始前に坩堝1に収容されたGaAs多結晶からなる原料が1000g、Siが62mgであり、容器2に収容されたGaAs多結晶からなる追加原料12が5500gであった。
そして、ヒータ3bによりB23シール13を加熱して溶解させて耐熱容器4の内部を密閉状態とした後、ヒータ3aにより坩堝1に収容されたGaAs多結晶からなる原料を1238℃以上に加熱して融液にした状態で保持し、種結晶7への種付けを行なった。そして、ヒータ3aによって下方に進むにつれて20℃/cmの割合で温度が低下するように温度勾配が設定された領域を移動速度5mm/hで坩堝1を下方に移動させるとともに、容器2に収容されている追加原料12も1238℃以上に加熱して融液にし、この融液を穴11から坩堝1に滴下した。ここで、融液の滴下量dWuは種結晶7上のGaAs結晶8の成長量dWsに対して、{(1−k)−0.5}dWs≦dWu≦{(1−k)+0.3}dWsの関係を満たすように質量計6を用いて容器2内の追加原料12の質量を図りながらヒータ3cの加熱温度を調節して制御された。
そして、上記のようにして製造されたGaAs結晶8を結晶成長装置から取り出してその成長方向(固化率0〜0.9の結晶部分)におけるキャリア濃度をホール測定法により調べた。その結果を表1および図3に示す。表1に示すようにこのGaAs結晶8における最低キャリア濃度C2minは固化率0.3および固化率0.8の結晶部分における0.95×1018/cm3であった。そして、C2min≦C2≦1.5C2minの関係を満たすキャリア濃度C2である結晶部分はGaAs結晶8の固化率0.1〜0.8の範囲内の結晶部分のすべてであった。また、この結晶部分の成長方向長さは195mmであった。また、図3に示すように、このGaAs結晶8は、固化率が増加するにつれてキャリア濃度が減少する結晶部分を有していた(固化率0〜0.3、固化率0.5〜0.8)。また、GaAs結晶8における固化率0.8の結晶部分のキャリア濃度(0.95×1018/cm3)は固化率0.1の結晶部分のキャリア濃度(0.98×1018/cm3)よりも低かった。
(実施例2)
図1に示す坩堝1の開口部の直径が10cm(4インチ)であって、成長開始前に坩堝1に収容されたGaAs多結晶からなる原料が1500g、Siが93mgであり、容器2に収容されたGaAs多結晶からなる追加原料12が6500g、Siが2mgであったこと以外は実施例1と同様にしてGaAs結晶8を製造し、その成長方向(固化率0〜0.9の結晶部分)におけるキャリア濃度をホール測定法により調べた。その結果を表1および図3に示す。表1に示すようにこのGaAs結晶8における最低キャリア濃度C2minは固化率0.4の結晶部分における0.93×1018/cm3であった。そして、C2min≦C2≦1.5C2minの関係を満たすキャリア濃度C2である結晶部分はGaAs結晶8の固化率0.1〜0.8の範囲内の結晶部分の5/7以上を占めていた。また、この結晶部分の成長方向長さは103mmであった。また、図3に示すように、このGaAs結晶8は、固化率が増加するにつれてキャリア濃度が減少する結晶部分を有していた(固化率0.2〜0.4)。
(比較例1)
図7に示す結晶成長装置を用い、表1に示す量となるように、坩堝1内に収容された原料とSiの量を増加し、追加原料の融液を滴下しなかったこと以外は実施例2と同様にしてGaAs結晶8を製造し、その成長方向(固化率0〜0.9の結晶部分)におけるキャリア濃度をホール測定法により調べた。その結果を表1および図3に示す。表1に示すようにこのGaAs結晶8における最低キャリア濃度C2minは固化率0の結晶部分における0.99×1018/cm3であった。そして、C2min≦C2≦1.5C2minの関係を満たすキャリア濃度C2である結晶部分はGaAs結晶8の固化率0.1〜0.8の範囲内の結晶部分の4/7未満であった。また、この結晶部分の成長方向長さは62mmであった。また、図3に示すように、このGaAs結晶8は、固化率が増加するにつれてキャリア濃度が減少する結晶部分を有していなかった。
Figure 0004691909
また、実施例2と従来法の比較例1(ノーマルフリージング)において製造されたGaAs結晶の固化率0.1〜0.8の結晶部分から任意の厚みに複数枚のGaAs結晶基板を切り出し、切り出されたそれぞれのGaAs結晶基板についてホール測定法によりキャリア濃度を測定した。その結果を図8に示す。なお、図8において、横軸はキャリア濃度の範囲(たとえば図8において「0.8−1.0」と記載されている箇所は、GaAs結晶基板のキャリア濃度が0.8×1018/cm3〜1.0×1018/cm3であることを示している)を示しており、縦軸は横軸のそれぞれのキャリア濃度の範囲に含まれるキャリア濃度を有するGaAs結晶基板の枚数を示している。また、図8においては、対比しやすいように、実施例2の結果を棒グラフで、比較例1の結果を折れ線グラフで示している。また、横軸のそれぞれのキャリア濃度の範囲における実施例2のGaAs結晶基板の枚数は棒グラフの頂点に対応する縦軸の値で示され、比較例2のGaAs結晶基板の枚数は折れ線グラフ中の黒丸に対応する縦軸の値で示される。
図8からもわかるように、実施例2のGaAs結晶から切り出されたGaAs結晶基板のキャリア濃度は、比較例1よりも低濃度側に集中してGaAs結晶基板ごとのキャリア濃度のばらつきが少ない。したがって、この結果から、実施例2のGaAs結晶は比較例1の場合と比べてキャリア濃度分布が均一になっていることがわかる。
(実施例3)
成長開始前に図1に示す坩堝1に収容されたSiが8mgであり、容器2に収容された追加原料12としてGaAs多結晶を3000g、Siを1mgとしたこと以外は実施例1と同様にしてGaAs結晶8を製造し、その成長方向(固化率0〜0.9の結晶部分)におけるキャリア濃度をホール測定法により調べた。その結果を表2および図4に示す。表2に示すようにこのGaAs結晶8における最低キャリア濃度C2minは固化率0.2の結晶部分における0.10×1018/cm3であった。そして、C2min≦C2≦1.5C2minの関係を満たすキャリア濃度C2である結晶部分はGaAs結晶8の固化率0.1〜0.8の範囲内の結晶部分の4/7以上を占めていた。また、この結晶部分の成長方向長さは75mmであった。また、図4に示すように、このGaAs結晶8は、固化率が増加するにつれてキャリア濃度が減少する結晶部分を有していた(固化率0〜0.2)。
(実施例4)
図1に示す坩堝1の開口部の直径が10cm(4インチ)であって、成長開始前に坩堝1に収容されたGaAs多結晶からなる原料が1500g、Siが12mgであり、容器2に収容されたGaAs多結晶からなる追加原料12が8000gであったこと以外は実施例1と同様にしてGaAs結晶8を製造し、その成長方向(固化率0〜0.9の結晶部分)におけるキャリア濃度をホール測定法により調べた。その結果を表2および図4に示す。表2に示すようにこのGaAs結晶8における最低キャリア濃度C2minは固化率0.6の結晶部分における0.09×1018/cm3であった。そして、C2min≦C2≦1.5C2minの関係を満たすキャリア濃度C2である結晶部分はGaAs結晶8の固化率0.1〜0.8の範囲内の結晶部分の5/7以上を占めていた。また、この結晶部分の成長方向長さは125mmであった。また、図4に示すように、このGaAs結晶8は、固化率が増加するにつれてキャリア濃度が減少する結晶部分を有していた(固化率0.2〜0.6)。また、GaAs結晶8における固化率0.8の結晶部分のキャリア濃度(0.13×1018/cm3)は固化率0.1の結晶部分のキャリア濃度(0.14×1018/cm3)よりも低かった。
(比較例2)
図7に示す結晶成長装置を用い、表2に示す量となるように、坩堝1内に収容された原料とSiの量を増加し、追加原料の融液を滴下しなかったこと以外は実施例4と同様にしてGaAs結晶8を製造し、その成長方向(固化率0〜0.9の結晶部分)におけるキャリア濃度をホール測定法により調べた。その結果を表2および図4に示す。表2に示すようにこのGaAs結晶8における最低キャリア濃度C2minは固化率0の結晶部分における0.13×1018/cm3であった。そして、C2min≦C2≦1.5C2minの関係を満たすキャリア濃度C2である結晶部分はGaAs結晶8の固化率0.1〜0.8の範囲内の結晶部分の4/7未満であった。また、この結晶部分の成長方向長さは70mmであった。また、図4に示すように、このGaAs結晶8は、固化率が増加するにつれてキャリア濃度が減少する結晶部分を有していなかった。
Figure 0004691909
(実施例5)
成長開始前に図1に示す坩堝1に収容されたSiが120mgであり、容器2に収容されたGaAs多結晶からなる追加原料12を5000gとしたこと以外は実施例1と同様にしてGaAs結晶8を製造し、その成長方向(固化率0〜0.9の結晶部分)におけるキャリア濃度をホール測定法により調べた。その結果を表3および図5に示す。表3に示すようにこのGaAs結晶8における最低キャリア濃度C2minは固化率0.4の結晶部分における1.60×1018/cm3であった。そして、C2min≦C2≦1.5C2minの関係を満たすキャリア濃度C2である結晶部分はGaAs結晶8の固化率0.1〜0.8の範囲内の結晶部分の5/7以上を占めていた。また、この結晶部分の成長方向長さは138mmであった。また、図5に示すように、このGaAs結晶8は、固化率が増加するにつれてキャリア濃度が減少する結晶部分を有していた(固化率0〜0.4)。
(実施例6)
図1に示す坩堝1の開口部の直径が10cm(4インチ)であって、成長開始前に坩堝1に収容されたGaAs多結晶からなる原料が1500g、Siが180mgであり、容器2に収容された追加原料12としてGaAs多結晶を8000g、Siを9mgとしたこと以外は実施例1と同様にしてGaAs結晶8を製造し、その成長方向(固化率0〜0.9の結晶部分)におけるキャリア濃度をホール測定法により調べた。その結果を表3および図5に示す。表3に示すようにこのGaAs結晶8における最低キャリア濃度C2minは固化率0.7の結晶部分における1.58×1018/cm3であった。そして、C2min≦C2≦1.5C2minの関係を満たすキャリア濃度C2である結晶部分はGaAs結晶8の固化率0.1〜0.8の範囲内の結晶部分のすべてであった。また、この結晶部分の成長方向長さは169mmであった。また、図5に示すように、このGaAs結晶8は、固化率が増加するにつれてキャリア濃度が減少する結晶部分を有していた(固化率0.2〜0.7)。また、GaAs結晶8における固化率0.8の結晶部分のキャリア濃度(1.73×1018/cm3)は固化率0.1の結晶部分のキャリア濃度(1.95×1018/cm3)よりも低かった。
(比較例3)
図7に示す結晶成長装置を用い、表3に示す量となるように、坩堝1内に収容された原料とSiの量を増加し、追加原料の融液を滴下しなかったこと以外は実施例6と同様にしてGaAs結晶8を製造し、その成長方向(固化率0〜0.9の結晶部分)におけるキャリア濃度をホール測定法により調べた。その結果を表3および図5に示す。表3に示すようにこのGaAs結晶8における最低キャリア濃度C2minは固化率0の結晶部分における1.91×1018/cm3であった。そして、C2min≦C2≦1.5C2minの関係を満たすキャリア濃度C2である結晶部分はGaAs結晶8の固化率0.1〜0.8の範囲内の結晶部分の4/7未満であった。また、この結晶部分の成長方向長さは71mmであった。また、図5に示すように、このGaAs結晶8は、固化率が増加するにつれてキャリア濃度が減少する結晶部分を有していなかった。
Figure 0004691909
(実施例7)
成長開始前に図1に示す坩堝1に収容されたSiが200mgであり、容器2に収容されたGaAs多結晶からなる追加原料12を4500gとしたこと以外は実施例1と同様にしてGaAs結晶8を製造し、その成長方向(固化率0〜0.9の結晶部分)におけるキャリア濃度をホール測定法により調べた。その結果を表4および図6に示す。表4に示すようにこのGaAs結晶8における最低キャリア濃度C2minは固化率0の結晶部分における3.19×1018/cm3であった。そして、C2min≦C2≦1.5C2minの関係を満たすキャリア濃度C2である結晶部分はGaAs結晶8の固化率0.1〜0.8の範囲内の結晶部分のすべてであった。また、この結晶部分の成長方向長さは173mmであった。また、図6に示すように、このGaAs結晶8は、固化率が増加するにつれてキャリア濃度が減少する結晶部分を有していた(固化率0.5〜0.8)。
(実施例8)
図1に示す坩堝1の開口部の直径が100mm(4インチ)であって、成長開始前に坩堝1に収容されたGaAs多結晶からなる原料が1500g、Siが300mgであり、容器2に収容された追加原料12としてGaAs多結晶を6000g、Siを15mgとしたこと以外は実施例1と同様にしてGaAs結晶8を製造し、その成長方向(固化率0〜0.9の結晶部分)におけるキャリア濃度をホール測定法により調べた。その結果を表4および図6に示す。表4に示すようにこのGaAs結晶8における最低キャリア濃度C2minは固化率0の結晶部分における3.19×1018/cm3であった。そして、C2min≦C2≦1.5C2minの関係を満たすキャリア濃度C2である結晶部分はGaAs結晶8の固化率0.1〜0.8の範囲内の結晶部分の4/7以上を占めていた。また、この結晶部分の成長方向長さは78mmであった。また、図6に示すように、このGaAs結晶8は、固化率が増加するにつれてキャリア濃度が減少する結晶部分を有していた(固化率0.2〜0.3)。
(比較例4)
図7に示す結晶成長装置を用い、表4に示す量となるように、坩堝1内に収容された原料とSiの量を増加し、追加原料の融液を滴下しなかったこと以外は実施例8と同様にしてGaAs結晶8を製造し、その成長方向(固化率0〜0.9の結晶部分)におけるキャリア濃度をホール測定法により調べた。その結果を表4および図6に示す。表4に示すようにこのGaAs結晶8における最低キャリア濃度C2minは固化率0の結晶部分における3.19×1018/cm3であった。そして、C2min≦C2≦1.5C2minの関係を満たすキャリア濃度C2である結晶部分はGaAs結晶8の固化率0.1〜0.8の範囲内の結晶部分の4/7未満であった。また、この結晶部分の成長方向長さは58mmであった。また、図6に示すように、このGaAs結晶8は、固化率が増加するにつれてキャリア濃度が減少する結晶部分を有していなかった。
Figure 0004691909
なお、表1〜4における結晶長さの欄には、実施例1〜8および比較例1〜4のGaAs結晶において、それぞれのGaAs結晶中の最低キャリア濃度C2minとC2min≦C2≦1.5C2minの関係を満たすキャリア濃度C2である結晶部分の成長方向長さが示されている。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明によれば、半導体結晶の成長方向における不純物濃度またはキャリア濃度分布をより均一にした半導体結晶の製造方法とその製造方法により得られた半導体結晶を提供することができるので、本発明はたとえば発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)用の基板の製造に好適に用いられる。
本発明に用いられる半導体結晶の成長装置の好ましい一例の模式的な断面図である。 坩堝と容器とが一体化した本発明に用いられる半導体結晶の成長装置と加熱手段の温度分布との関係を示した図である。 実施例1、実施例2および比較例1のGaAs結晶の固化率とキャリア濃度との関係を示した図である。 実施例3、実施例4および比較例2のGaAs結晶の固化率とキャリア濃度との関係を示した図である。 実施例5、実施例6および比較例3のGaAs結晶の固化率とキャリア濃度との関係を示した図である。 実施例7、実施例8および比較例4のGaAs結晶の固化率とキャリア濃度との関係を示した図である。 従来の半導体結晶の成長装置の一例の模式的な断面図である。 実施例2と比較例1において製造されたGaAs結晶から切り出されたGaAs結晶基板のキャリア濃度範囲とそのキャリア濃度範囲に含まれるキャリア濃度を有するGaAs結晶基板の枚数との関係を示した図である。
符号の説明
1 坩堝、2 容器、3a,3b,3c ヒータ、4 耐熱容器、5 チャンバ、6 質量計、7 種結晶、8 GaAs結晶、9,10 GaAs融液、11 穴、12 追加原料、13 B23シール、14 封止材。

Claims (7)

  1. 坩堝内において酸化ホウ素で表面を覆われた、不純物を含む原料の融液を固化することによって半導体結晶を成長させる半導体結晶の製造方法であって、前記半導体結晶に対する前記不純物の偏析係数が1以下であり、前記原料の不純物濃度よりも低い不純物濃度の追加原料が収容された容器から前記追加原料の融液を前記坩堝内に滴下しながら、前記半導体結晶中における最低不純物濃度C 1min とC 1min ≦C 1 ≦1.5C 1min の関係を満たす不純物濃度C 1 である結晶部分が、固化率0.1〜0.8の範囲内における結晶部分の4/7以上を占めており、前記半導体結晶中における偏析係数が1よりも小さい不純物の濃度が固化率の増加と共に減少する結晶部分を有し、前記半導体結晶の固化率0.1〜0.8の範囲内の結晶部分に、固化率0.1の結晶部分の不純物濃度以下である部分を有する前記半導体結晶を成長させることを特徴とする、半導体結晶の製造方法。
  2. 前記容器の外側に設置された加熱手段の加熱温度の調節および前記加熱手段に対する前記容器の相対的な移動の少なくとも一方によって、前記追加原料の加熱温度を調節して前記融液の滴下量を制御することを特徴とする、請求項に記載の半導体結晶の製造方法。
  3. 前記半導体結晶の成長が、密閉された耐熱容器内において縦型ボート法により行なわれることを特徴とする、請求項またはに記載の半導体結晶の製造方法。
  4. 前記半導体結晶がGaAs、InP、InAsおよびGaPからなる群のうちいずれか1つの化合物半導体の結晶であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の半導体結晶の製造方法
  5. 前記不純物がIn、Zn、Si、Al、S、Sn、Se、Te、Cr、C、O、FeおよびGaからなる群のうち少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の半導体結晶の製造方法
  6. 前記半導体結晶中における最低不純物濃度C1minとC1min≦C1≦1.5C1minの関係を満たす不純物濃度C1である結晶部分の成長方向長さが75mm以上であることを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の半導体結晶の製造方法
  7. 前記半導体結晶中における最低不純物濃度C1minとC1min≦C1≦1.5C1minの関係を満たす不純物濃度C1である結晶部分の直径が70mm以上であることを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の半導体結晶の製造方法
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