JP4691388B2 - 超軽量な防音材 - Google Patents

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Description

本発明は、エンジンルームなどの非車室内側における騒音を車室内に伝播しないようにする超軽量な防音材に関し、特に、軽量な構造にして、車室内への騒音を吸収できる超軽量な防音材に関する。
特許文献1に示すとおり、車両においてノイズ低減と断熱とをもたらすよう、特に、フロア遮音や端部壁遮音やドアカバーや屋根内側カバーにおいて、吸音性かつ遮音性かつ振動減衰性かつ断熱性のカバーを形成するための多機能キット(41)であって、少なくとも1つの面状車体パーツ(11)と、複数層からなるノイズ低減アセンブリパッケージ(42)と、を具備してなり、前記アセンブリパッケージは、少なくとも1つのポーラスなスプリング層(13)とりわけ開放ポアを有したフォーム層を備え、前記アセンブリパッケージ(42)と前記面状車体パーツとの間には、空気層(25)が設けられ、遮音性と吸音性と振動減衰性とを最適に組み合わせるのに好適であるような超軽量キット(41)を形成するために、前記多層アセンブリパッケージ(42)は、重量層を有していないアセンブリパッケージであって、微小ポーラスを有した硬質層(14)とりわけ開放ポアを有したファイバ層またはファイバ/フォーム複合体層を備え、前記硬質層(14)は、Rt=500Nsm-3〜Rt=2500Nsm-3という空気流に対しての総抵抗を有し、とりわけ、Rt=900Nsm-3〜Rt=2000Nsm-3という空気流に対しての総抵抗を有し、および、mF=0.3kg/m2〜mF=2.0kg/m2という単位面積あたりの重量を有し、とりわけ、mF=0.5kg/m2〜mF=1.6kg/m2という単位面積あたりの重量を有していることを特徴とするキットである。この発明によるキットの利点は、今日自動車産業において好んで使用されているような、薄いスチールシートまたは軽量アルミニウムシートまたは有機シートに対して応用した場合に、特に明瞭である。本発明によるキットのさらなる利点は、使用されているポーラススプリング層の熱伝導度が極度に小さいことにある。このため、このようなキットは、良好な音響特性(すなわち、遮音効果)を示しつつも、良好な断熱性をも有している。
特許文献2に示すとおり、車両用の防音材10であって、車室内側100より順に、第1の通気性吸音層20、非通気性遮音層30、第2の通気性吸音層40の順に積層されており、かつ第1の通気性吸音層20の車室内側には非通気層を有せず、第2通気性吸音層40の反車室内側にも非通気層を有しないことを特徴とし、防音材を通過し車室内側に漏れた騒音を再吸収するとともに、エンジンルーム外から車室内に進入してくる騒音も吸収できる防音材を提供すること、かつ、軽量化も考慮した防音材を提供するものである。
特許文献3に示すとおり、車体パネル(10)の室内面側に添装される自動車用インシュレータ(20)であって、このインシュレータ(20)は、繊維成形体をベースとした吸音層(21)の単層から構成され、車体パネル(10)を通じて吸音層(21)内に侵入する騒音を吸音するとともに、吸音層(21)を透過した透過騒音が車室内のパネル(40)内面で反射して、再度表面側から吸音層(21)内に再帰し、該反射騒音を吸音できる通気型インシュレータとして構成されていることを特徴とし、吸音層(21)の表裏面のうち少なくとも一方面に、吸音層(21)の面密度より高密度に設定された高密度繊維集合体からなる表皮層(22)が積層されている。また、吸音層(21)の表裏面のうち少なくとも一方面の全面、あるいは一部に発泡樹脂シート材からなる表皮層(27)が積層されている。これにより、従来の遮音層を廃止することにより、軽量化が図れるとともに、インストルメントパネル40内の音圧上昇を抑え車室内の静粛性を高める。
特許文献4に示すとおり、積層品は、スキン剥離強度が20N/cm以下であり、L値が60以下であるポリオレフィン系樹脂発泡体と、厚さが5mm以上、密度が50kg/cm3以下の嵩高性不織布とを一体成形してなる積層体であって、該積層体の目付が3kg/m2以下であることを特徴とするものである。これにより、軽量、かつリサイクル性に優れ、成形加工が容易で外観美麗な積層品を提供できる。
通気抵抗を利用した表皮層と吸音層の組み合わせのダッシュ・サイレンサが提案されている。
従来からの遮音構造と、特許文献1の構造と透過損失と吸音力を比較すると以下の通りである。ここで、低周波数とは1/3オクターブバンド中心周波数で315Hz以下であり、中周波数は400〜1600Hzで、高周波数は2000Hz以上である。
ここで従来の遮音タイプ構造(図17参照、以下「図17の構造」という)と、特許文献1の構造(図18参照、以下「図18の構造」という)と透過損失と吸音力を比較すると以下の通りである。
図17の構造のダッシュ・サイレンサの総目付量は6.0kg/m2であり、図18の構造の現状利用されている実効目付量は2.0kg/m2である。これらの製品は自動車ボディパネルに取り付けられている。このボディパネルの目付量は6.2kg/m2である。
図19(a)の透過損失のグラフから図17の構造では非通気性の表皮層とパネルで二重壁構造となり、更に、中間に通気抵抗のある吸音材を利用することで重量則以上の透過損失を得ることができる。但し、ゴムシートの目付量が高い為、低い周波数で大きな透過共鳴が発生し透過損失が大幅に低下する。
図19(a)の透過損失のグラフから図18の構造では通気の表皮層とパネルで二重壁構造となるが表皮層が通気するため、高周波数での音漏れが発生し、重量則以下の透過損失しか得られない。遮音性では図18の構造では十分な透過損失を得ることができない。
図19(b)の吸音率のグラフから図17の構造では低周波数に強い表皮共振による吸音率が向上する周波数が発生するが、中周波数及び高周波数側で吸音率がほとんどない。
図19(b)の吸音率のグラフから図18の構造では通気抵抗の高い表皮層による表皮共振と背後の吸音層の吸音力を利用して中周波数から高周波数にかけ吸音力を得ている。
実際の自動車静粛性への影響はダッシュ・サイレンサ部では、ダッシュパネルから入射する直接音より、自動車各部より入射し、反射する間接音が多いため、従来構造と比較して特許文献1は大幅に透過損失は低下しているが、中周波数からの比較的高い吸音力で車室内の吸音力を向上され、ほぼ同等の車室内の静粛性を確保する事ができる。更に製品重量で大幅に軽量化できるため、最近のダッシュパネル構造として利用されてきた。
特許文献5及び6に示すとおり、また自動車の天井材において、表皮質に孔を空けた発明も種々提案されている。
天井材において、非通気性材料に開孔を設けることで吸音力の向上を示したものであり、これらの特許は単に開孔による吸音効果を狙っている。
特表2000−516175 特開2001−347899 特開2002−220009 特開2002−347194 特開昭55−11947 実用新案登録第2542339号
しかしながら、車両構造によっては直接音の影響が大きい自動車もあり、この図18の構造では透過損失が不足し(図19(a)参照)、車室内の静粛性が確保できないことがある。また、実際の製品は凹凸があり、吸音層の厚さが1〜30mmも変化する。これにより、高周波数では吸音層の吸音力を利用している特許文献1の図18の構造では吸音層の厚さ低減により、吸音力は低下する。更に、吸音層は厚さ30〜50mmのフェルトを成形して生産されるため、薄肉部では通気抵抗が一般面より低下して、十分な吸音力を得ることができない。本来、特許文献1の構造のダッシュ・サイレンサは吸音力で車室内の静粛性を確保している為、これにより十分な性能を発揮することができなくなるおそれがある。
また従来の防音材は車室外からの透過音を低減することを目的にしており、幅広い周波数で良い吸音力を得ることができるが、車室内の反射音を吸音する対策が十分ではなく、1/3オクターブバンド中心周波数で800Hz〜1600Hzが会話明瞭度に重要でありこの会話明瞭度の観点から比較的高い1000Hz近辺の周波数の吸音が不十分である。特許文献2では、図20に示す通り、1000Hz以上の周波数の吸音は吸音材の吸音力を利用することから、吸音材の厚さが薄くなると吸音率が低下する傾向がある。図18の構造の防音材は車室内での反射音を吸音する機能があるが吸音周波数の制御の方策が明確でない。特許文献3、4の従来の防音材では吸音部と表層の界面の拘束状態、表皮部の通気量で吸音特性、遮音特性が大きく影響されることを見過ごしている。実際の製品では複雑な形状で界面の接着強度も必要となり、設計条件と異なる吸音・遮音特性となるおそれがある。また、狭いスペースでの利用ができないおそれがある。
さらに、特許文献6の段落0003では従来の天井基材で小孔は径が5mm程度と小さいため吸音効果を向上させることができないと記述され、段落0006のように径8mmで20mmピッチで開口率は13%程度となり800〜2000Hzの吸音性能が向上したと記載されている。この開孔率では開孔率が大きすぎる状態となり、400Hzの吸音率は大幅に低下する傾向がある。
したがって、本発明は、ボディパネルから入射する直接音に対する遮音性向上、つまり、透過損失が低い中周波数からの透過損失の向上を目的とし、実際の製品の凹凸で吸音層が薄肉化しても十分吸音力を確保する、つまり、中周波数(特に人の会話に係る周波数帯の騒音レベル範囲を含む)から高周波数へかけての吸音力向上を目的とし、従来、315〜800Hzの吸音力が上がりにくい周波数での吸音力向上を目的とし、更に、吸音材の軽量化を目的とするものである。
上記諸課題に鑑み、本発明者は吸音層と非通気性材質からなる多孔の共振層との間の界面における接着状態に着目することにより、本発明はなされたものである。
請求項1記載の発明は、高密度吸音層と低密度吸音層の複層体に形成され、全体としての厚さが1〜50mm、全体としての密度が0.01〜0.2g/cm3である軽量な吸音層と、
前記高密度吸音層と接着層を介して接着する、目付量は1000g/m2以下であって、0.01〜20mmの径の孔を開孔率1〜10%で多数個形成する非通気性材質からなる多孔の共振層と、からなり、
前記吸音層が車体パネル側に配置され、前記非通気性の共振層は車室内側に設置されており、
前記高密度吸音層と前記共振層に対する前記接着層の接着強度が剥離幅25mmで180度の剥離にて1〜20N/25mmに設定され、
前記接着層は、前記高密度吸音層と前記共振層の全界面に対して50〜100%の面積で接着されることを特徴とする、超軽量な防音材である。
本発明では、開孔率1〜10%で径が0.01〜20mmで1250Hz以上の周波数で5〜20%の吸音力向上があり、更に400Hz付近でも防音材自体の共振による吸音率向上と1250Hzで非通気性材質からなる多孔の共振層単体の膜振動による吸音力向上を接着層にて得ている。
前記非通気性材質からなる多孔の共振層と吸音層との界面は、前記接着層によって十分な接着力で接着されており、前記吸音層と前記非通気性材質からなる多孔の共振層とをその界面で共振させることで吸音することを特徴とする防音材である。ここでJIS L1018 8.3.3.1 編地の通気性による「フラジール形試験機」及びこの結果に相関性が極めて高い通気性試験機を用い測定するものであり、非通気性とは、その通気量が設備の最低測定能力以下である0.1cm3/cm2・sec以下であるものをいう。前記吸音層は空気層を持つことが好ましい。
ここで全界面とは前記非通気性材質からなる多孔の共振層と吸音層とが接着可能な全ての界面をいう。全界面の面積は、例えば、非通気の共振層、吸音層の片面の面積をそれぞれS1、S2とすると、S1=S2の場合なら、全界面の面積S=S1=S2となり、S1>S2の場合なら、S=S2、S1<S2の場合なら、S=S1である。
前記接着層の接着強度に関する剥離とは、「JIS K6854 図4:180度剥離」に類似し、先の接着された吸音層と非通気の共振層が、例えば剥離速度:200mm/分の測定条件で剥がされることを言う。このときの剥離状態は、材料の表層破壊(たとえばフェルトの表層破壊)、接着剤の界面剥離(たとえば全ての接着剤が吸音層側について剥離する)、接着剤の凝集剥離(たとえば吸音層と非通気の共振層の双方に残りながら接着剤自体が糸を引くように剥離される)、またはこの材料の表層破壊と、接着剤の界面剥離と、接着剤の凝集剥離とが複合した状態で剥離することをいう。
また、ここでいう開孔率とは、非通気の共振層にある孔の面積を、孔の無い場合の非通気の共振層の表面積で除し、百分率にしたものである。
本発明の使用例としては、自動車用防音製品であるダッシュ・サイレンサの防音構造として利用されることが挙げられる。このダッシュ・サイレンサ近傍での騒音の周波数分析において、高周波(1250Hz以上)のレベルが大きいとき、この開孔を設けることで、騒音を吸音しレベルを下げることができる。
本発明者は非通気性材質からなる多孔の共振層と吸音層との界面の状態を示す剥離強度と接着層の接着面積が吸音性に影響することを見出し本発明に至ったものである。本発明による超軽量な防音材の原理は、非通気性材質からなる多孔の共振層と吸音層との界面での共振現象による吸音である。非通気性材質からなる多孔の共振層と吸音層との間にある接着層の利用によって、界面において吸音する音の周波数を制御することができ、室内の音は非通気性材質からなる多孔の共振層と吸音層の膜共振で吸音されるのである。
吸音層及び接着層は非通気性又は通気性の材質である。吸音層は、吸音性があれば通気性、非通気性は関係がない。例えばウレタンモールド品の中には非通気性のものもある。また、非通気性材質からなる多孔の共振層は、車両の音振特性等により、全面、あるいは部分的に設けても良いが、吸音層の表面側、あるいは裏面側のどちらか一方に形成する必要がある。
厚さが1〜50mm、密度が0.01〜0.2g/cm3、好ましくは0.03〜0.08g/cm3の軽量な吸音層と、目付量は1000g/m2以下、好ましくは100g/m2以下であって、0.01〜20mm、好ましくは0.1〜20mm、特に好ましくは8〜12mmの径の孔を、開孔率1〜10%、好ましくは4〜6%で多数個形成する非通気性材質からなる多孔の共振層との接着部の面積は50〜100%、 特に80%以上が好ましい。全面接着でも部分接着でもよい。例えば、吸音層と非通気性材質の共振層とは、接着層によって連続的に接着されていることが好ましいが、1〜50ドット/cm2に相当する点接着で接合してもよいし、糸状に接着されていることでもよい。また、接着フィルムを利用した場合、全面接着でもよい。また、共振層に孔を開ける加工方法には、ニードルで孔開けする方法やプレスで孔開けする方法等が挙げられる。
接着強度は、剥離幅25mmで180度の剥離にて1〜20N/25mm、好ましくは3〜10N/25mmである。
目付量は1000g/m2以下、好ましくは100g/m2以下である。非通気性材質からなる多孔の共振層において、0.01〜20mm、好ましくは0.1〜20mm、特に好ましくは4〜16mm、特に好ましくは8〜12mmの径の孔を、開孔率1〜10%、好ましくは2〜8%、特に好ましくは4〜6%で多数個形成することが好ましい。
非通気性材質からなる多孔の共振層は、例えば、樹脂等の発泡体又はフィルム体である。フィルム体は樹脂製フィルム体でもよいし金属製フィルム体でもよい。フィルム体の材質にアルミニウム等の金属製を採用すれば、軽量で高い剛性を得ることができ、好適である。
吸音層は非通気性又は通気性の材質であり、例えば、熱可塑性フェルトであり、化繊反毛材、PET繊維をバインダー繊維でフェルト化したものである。また、ポリエチレンテレフタレート等のPET系フェルト、ウレタンモールド品、ウレタン発泡のスラブ品、RSPP等を採用して好ましい。
接着層は非通気性又は通気性の材質であり、例えば、エチレンビニルアセテート(以下EVAと略す)、ウレタン系接着剤等である。
前記吸音層において高密度吸音層及び低密度吸音層は2層の個別材料による複層体もしくは単一材料で高密度側と低密度側のように密度勾配がある材料であることが好ましい。
前記吸音層において高密度吸音層及び低密度吸音層が2層の個別材料による複層体は、個別の高密度と低密度の吸音材の2層の組み合わせであることが好ましい。また単一材料で高密度側と低密度側のように密度勾配がある材料は、非通気性の共振層側に高密度側が接着層で接着されていれば2層の場合と同じ効果が得られる。
前記高密度吸音層の片面が前記共振層に前記接着層を介して接着されるとともに、前記低密度吸音層の片面が前記高密度吸音層の前記共振層と反対側の片面に別の接着層を介して接着されるか、若しくは積層されてもよいし、又は、単一材料で高密度側と低密度側のように密度勾配を設けたものでも良い。
また、複層の吸音層の積層は接着での積み重ねでもよい。複数の吸音層の接合は、接着剤、接着フィルム、機械的な接合、例えばニードルパンチ等の機械的穿孔力による接合でもよい。
請求項2記載の発明は、前記吸音層は、1枚の吸音部材を加工することで前記複層体に形成されていることを特徴とする請求項1の超軽量な防音材である。この吸音部材の材質例としては発泡ビーズ、ウレタン、ゴム、フェルト等が挙げられる。
ここで、請求項1に記載の発明を実現するにあたり、高密度吸音層と低密度吸音層をそれぞれ別部材で構成してもよいが、請求項2記載の発明によれば、1枚の吸音部材で高密度吸音層と低密度吸音層を構成できるので、部品点数削減を図ることができる。
請求項3記載の発明は、1枚のフェルトの片面のみをニードル加工して高密度にすることで、前記高密度吸音層と前記低密度吸音層を前記1枚のフェルトで構成したことを特徴とする請求項2の超軽量な防音材である。
請求項4記載の発明は、前記共振層の構造は発泡体またはフィルム体であり、前記発泡体の場合は厚さ1〜7mm、前記フィルムの場合は厚さ10〜200μmであることを特徴とする請求項1乃至3の超軽量な防音材である。
請求項1の吸音層は非通気性または通気性の低密度の吸音特性を持っているが、請求項1の非通気性材質からなる多孔の共振層は低い音または振動エネルギーで振動を容易にする為、十分軽量である必要があるからである。
非通気性材質からなる多孔の共振層の目付量は1000g/m2以下、好ましくは100g/m2以下である。
非通気性材質からなる多孔の共振層の密度は、発泡体であるときには、0.02〜0.1g/cm3、好ましくは、0.03〜0.06g/cm3であり、フィルムであるときには、0.9〜1.2g/cm3、好ましくは、0.9〜1.0g/cm3である。
非通気性材質からなる多孔の共振層の厚さは、発泡体であるときには、1〜7mm、好ましくは2〜3mmであり、非通気性材質からなる多孔の共振層がフィルムであるときには、10〜200μm、好ましくは20〜100μmである。
非通気性の共振フィルム層の材質は、オレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム又はそれらの複合体から構成することが好ましい。非通気独立共振発泡体は、ポリプロピレン発泡体(以下、PPFという)、ポリエチレン発泡体(以下、PEFという)等のオレフィン系発泡体が好ましい。
請求項5記載の発明は、前記高密度吸音層の密度は0.05〜0.20g/cm3、厚さが2〜70mmの範囲であり、前記低密度吸音層の密度は0.01〜0.10g/cm3、厚さが2〜70mmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つの超軽量な防音材である。
請求項6記載の発明は、
前記高密度吸音層の初期圧縮反発力が30〜600Nで、前記低密度吸音層の初期圧縮反発力が5〜300Nであり、
少なくとも前記高密度吸音層の初期圧縮反発力は前記低密度吸音層の1.2〜40倍であり、前記吸音層の厚さにおける高密度吸音層の占める厚さは20〜80%であり、
少なくとも前記高密度吸音層の初期圧縮反発力は低密度吸音層の1.5〜5倍であり、
吸音層の厚さにおける高密度吸音層の占める厚さは40〜60%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つの超軽量な防音材である。
複層体である吸音層の全体としての厚さは1〜50mm、特に好ましくは5〜40mmであり、複層体全体としての密度が0.01〜0.2g/cm3、特に0.03〜0.08g/cm3であることが好ましい。吸音層の材質は、熱可塑性フェルト、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)等のポリエステル系フェルト、ウレタンモールド品、ウレタン発泡のスラブ品、車両廃材からのリサイクル材(以下、RSPPと略す)等が好ましい。吸音層の目付量は500〜2000g/m2、好ましくは1000〜1600g/m2である。
吸音層に使用されている吸音材の初期圧縮反発力の測定方法はφ100mm、厚さ20mmの円柱状に吸音材をトリミングしたものを試料とする。図2は、初期圧縮反発力の測定方法である。先の試料に上面から荷重を加え、5mm圧縮した時の反発力をテンシロン等の荷重測定装置で測定する。この時の荷重速度は50mm/分とする。測定の参考値に2.5mm圧縮時と7.5mm圧縮時も同時に測定する。
ここで吸音層の圧縮反発力は制振材の弾性率に関わる値である。従来、防音材の一種であるフェルト材は制振材の一種である。制振材料は振動エネルギーを吸収し熱エネルギーに変換する制振効果を示す特性として損失係数ηがある。この損失係数ηは以下の式で計算される。
Figure 0004691388
本発明によれば、会話明瞭度を改善させるため、1000〜1600Hzでの吸音力が特に良好である。これは前記吸音層がその厚さを連続的に任意に変化させるからである。この範囲での周波数でのシート共振による吸音力の向上を効果的に得ることができ、車室内の良好な静粛性が得られる。超軽量な防音材の厚さが薄くなってもシートの共振現象を利用している為、高い吸音率を得ることができる。
また、本発明では、吸音層を、高密度吸音層と低密度吸音層の複層体に形成しているので、透過損失を向上させることができるとともに、共振層に孔が多数個形成されているので、吸音率を高めることができる。
従来の吸音材に対し非通気性材質からなる多孔の共振層の大幅な重量低減が可能になる。この前記非通気性材質からなる多孔の共振層の目付量は1000g/m2以下、好ましくは100g/m2以下、前記非通気性材質からなる多孔の共振層の構造は発泡体またはフィルム体であり、前記発泡体の場合は、厚さ1〜7mm、好ましくは2〜3mm、前記フィルムの場合は厚さ10〜200μm、好ましくは20〜100μmとしたからである。例えば、目付量は、遮音タイプでは4000〜10000g/m2であり、吸音タイプでは500〜2000g/m2であるが、本発明の非通気性材質からなる多孔の共振層では目付量が1000g/m2以下である。
なお、接着層の厚みは、1〜100μm、好ましくは5〜50μmが好ましい。接着層の目付量は5〜200g/m2、好ましくは10〜100g/m2が好ましい。接着層の密度は任意であることが好ましい。
以下、本発明の超軽量な防音材に係るダッシュ・サイレンサ1についての好適な実施形態について図面を参照して説明する。このダッシュ・サイレンサ1は、図1(a)(b)に示す通り、熱可塑性フェルトでは通気度が10〜50cm3/cm2・secでモールドしたものであり、ウレタン発泡体(フォーム)では10cm3/cm2・sec以下の通気度を持つ吸音層2と、非通気性材質からなる多孔の共振層3との2層構造であるが、吸音層2と非通気性材質からなる多孔の共振層3の間にそれらを接着する接着層4が形成されている。
吸音層2は密度が異なる高密度吸音層2a、低密度吸音層2bとから構成され、吸音層2a及び2bがダッシュパネル10側に配置され、非通気性の共振層3は車室内側に設置される。低密度吸音層2bはダッシュパネル10に接合されている。
高密度吸音層2aは非通気性の共振層3に前記接着層4を介し接着されている。高密度吸音層2aの密度は0.05〜0.20g/cm3であり、厚さが2mm〜30mmの範囲である。低密度吸音層2bは、非通気性の共振層3と反対側の高密度吸音層2aの面に密度が0.01〜0.10g/cm3で厚さが2〜30mmの範囲で接着層2cを介して接着されている。高密度吸音層2aの初期圧縮反発力が30〜400Nで低密度吸音層2bの初期圧縮反発力が0.5〜200Nであり、少なくとも高密度吸音層2aの初期圧縮反発力は低密度吸音層の1.2〜40倍であり、吸音層2の厚さにおける高密度吸音層2aの占める厚さは20〜80%である。好ましくは高密度吸音層2aの初期圧縮反発力が200〜300Nで低密度吸音層2bの初期圧縮反発力が50〜100Nであり、少なくとも高密度吸音層2aの初期圧縮反発力は低密度吸音層2bの1.5〜5倍であり吸音層2の厚さにおける高密度吸音層2aの占める厚さは40〜60%である。
吸音層2において高密度吸音層2a及び低密度吸音層2bは2層の個別材料による複層体もしくは単一材料で高密度側と低密度側のように密度勾配がある材料である。
高密度吸音層2aと低密度吸音層2bをそれぞれ別部材で構成してもよいが(図1(b)参照)、1枚の吸音部材で高密度吸音層2aと低密度吸音層2bを構成してもよい(図1(c)参照)。吸音層2は、1枚の吸音部材を加工することで前記複層体に形成される。この吸音部材の材質例としては発泡ビーズ、ウレタン、ゴム、フェルト等が挙げられる。1枚のフェルトの片面領域のみをニードルで加工(パンチ)して高密度にすることで、高密度吸音層2aと低密度吸音層2bを1枚のフェルトで構成することもある。
上記構造によるダッシュ・サイレンサ1は、吸音層2と非通気性材質からなる多孔の共振層3とをその界面で共振させることで吸音するものである。ここで、通気度については、JIS L1018 8.3.3.1 編地の通気性による「フラジール形試験機」及びこの結果に相関性が極めて高い通気性試験機を用い測定する。
非通気材質の共振層3に0.01〜20mmの径の孔3aを開孔率1〜10%で多数個形成してある。孔3aは丸形、角形、楕円形等の適宜の形状でよい。孔3aのピッチは均等間隔又は適宜間隔でよい。孔3aは非通気材質の共振層3の主面に対して垂直に形成されることが好ましい。開孔率1〜10%は、非通気性材質からなる多孔の共振層の表面積に対して、多数の孔3a全部の面積の合計値の占める割合を百分率で規定したものである。
なお、超軽量な防音材の物性の一覧図表は図3に記載してある。
図4のダッシュ・サイレンサ1は、エンジンルームEと車室Rとを区画する鉄製パネル(ダッシュパネル)10上に室内面に沿ってダッシュ・サイレンサ1が添装されているものである。ダッシュ・サイレンサ1は、燃費効率及び取付作業性を高めるために、製品重量を大幅に超軽量化するとともに、超軽量化しても充分な吸音特性を備えるように構成されている。
この吸音層2は、ダッシュパネル10の面形状に沿って成形されている。高密度吸音層2aおよび低密度吸音層2bを含む吸音層2の全体の厚さは50mm以下であり、全体の目付量が500〜2000g/m2、好ましくは、1000〜1600g/m2、その厚さは5mm〜40mmが実用上好ましく、任意の厚さに成形される。その密度は0.01〜0.2g/cm3、好ましくは0.03〜0.08g/cm3、初期圧縮反発力は2〜200N、好ましくは、20〜100Nである。ただし、局部的に厚さが1mmまで圧縮成形される場合は、この部分の密度は0.5g/cm3と極めて高くなり、吸音性能が低下するがこの部分の遮音について重量則分は確保できる。
吸音層2は、通気性又は非通気性の材質である。熱可塑性フェルトが好ましい。化繊反毛材、PET繊維をバインダー繊維でフェルト化したものである。
図4に示す通り、吸音層2が50mm以下の範囲で厚さを任意に変化させてあることでダッシュ・サイレンサ1の厚みも変化している。ランダムに吸音層2の厚みを変更することで、トータルでみると315〜4000Hzの広い周波数の範囲の音を吸音できる。
非通気性材質からなる多孔の共振層3は、吸音層2に対して車室R側に形成したものである。この非通気性材質からなる多孔の共振層3は、主として、吸音層2と膜共振することで、車室Rの音を吸音するものである。非通気性材質からなる多孔の共振層3は、非通気共振フィルム層又は非通気共振発泡体である。
この非通気性材質からなる多孔の共振層3は、非通気性材質からなる多孔の共振層の目付量は1000g/m2以下、好ましくは100g/m2以下である。非通気性材質からなる多孔の共振層の厚さは、発泡体であるときには、1〜7mm、好ましくは2〜3mmであり、非通気性材質からなる多孔の共振層がフィルムであるときには、10〜200μm、好ましくは20〜100μmである。非通気性材質からなる多孔の共振層の密度は、発泡体であるときには、0.02〜0.1g/cm3、好ましくは、0.03〜0.06g/cm3であり、フィルムであるときには、0.9〜1.2g/cm3、好ましくは、0.9〜1.0g/cm3である。
非通気性材質からなる多孔の共振層3の材質は、オレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム又はそれらの複合体である。非通気共振発泡体は、ポリプロピレン発泡体(以下、PPFという)、ポリエチレン発泡体(以下、PEFという)等のオレフィン系発泡体が好ましい。また、気泡の種類は、連続気泡型でもよいし不連続気泡(独立気泡)型でもよい。また、気泡の成形方式は、発泡剤を予め混入させておき、ガスを生成させて発泡させる方式でもよいし、機械的に発泡させる方式でもよい。
接着層4の目付量は5〜200g/m2、好ましくは10〜100g/m2である。接着層4の厚みは、1〜100μm、好ましくは5〜50μmである。密度は接着剤の一般的な値でよい。接着層4の接着強度は1〜20N/25mm、好ましくは3〜10N/25mmである。接着面積率は50%から100%、好ましくは80%〜100%である。全面接着でも部分接着でもよい。例えば、吸音層2と非通気性材質からなる多孔の共振層3とは、接着層によって連続的に接着されてもよし、1〜50ドット/cm2に相当する点接着で接合してもよいし、糸状に接着されていることでもよい。また、接着フィルムを利用した場合、全面接着でもよい。接着層4の材質は、EVA系、ウレタン系、クロロプレンラテックス(CR)系、スチレン−ブタジエン系重合体(SBR)系、アクリル系、オレフィン系等の樹脂を採択する。但し、非通気性材質からなる多孔の共振層3を十分、吸音層2で制振するために、所定の接着力が確保できない材質の使用は望ましくない。
吸音層2と非通気性材質からなる多孔の共振層3の成形工法としては、防音材の抄造工法はカート機による積層、またはランダム抄造機を利用するが、非通気性材質からなる多孔の共振層3との接着面はなるべく平滑に仕上げることが好ましい。これは接着面積を確実に確保するためであり、これにより非通気性材質からなる多孔の共振層3を効率よく強制することができる。
ボディパネルから入射する直接音に対する遮音性向上、つまり、透過損失が低い中周波数からの透過損失の向上の課題については、ボデーパネルの目付量に比べ、大幅に軽量にした非通気性材質からなる多孔の共振層3を表皮層として利用し、パネルと非通気性材質からなる多孔の共振層3の間に通気抵抗のある吸音層2を設けた。更に従来技術ではなかった非通気性材質からなる多孔の共振層3と吸音層2の界面の制御(接着層4による接着力の制御)を行ったものである。非通気性材質からなる多孔の共振層3の目付を大幅に下げ1000g/m2以下にしたので、これにより、本実施形態の孔3aを無くした比較形態において、透過共鳴の周波数が高くなる(図5(a)(b)(1)参照)。また2重層構造による透過損失の向上が認められる(図5(a)(3)参照)。本実施形態でも同様であり後述する。
実際の製品の凹凸で吸音層が薄肉化しても十分吸音力を確保する、つまり、中周波数から高周波数へかけての吸音力向上の課題について、部品の立て付け、スペースの影響で吸音層2が薄くなっても、吸音層2と非通気性材質からなる多孔の共振層3との膜共振を利用することで高い吸音率を確保できる。共振層の目付量を50g/m2とした場合、吸音層2と共振周波数frとの関係は次の表1の通りになる。
Figure 0004691388
車室R内での音は拡散入射であり、非通気性材質からなる多孔の共振層3は軽量で剛性が低い為、共振は微少な範囲で独立して発生している。この為、例えば吸音層2の厚さLの値が30〜5mmに変化したとき、共振周波数は1531〜3750Hzで変化し、図6(a)(b)に示す通り、吸音率は幅広い範囲で確保され、非通気層のない吸音層とは異なり、高い吸音力を確保することができる。
ここで、一般的なバネ・マス系の振動モデルを考えた場合、吸音層2の空気バネと、吸音層2と非通気性材質からなる多孔の共振層3の総質量による機械的バネを利用したときの共振周波数の式は、通常のバネ振動の式においてバネ定数にあたるk=ρ・C2/Lとすることにより、共振周波数frが数式2で算出される。ただし、frは共振周波数(Hz)、ρは空気密度(1.2Kg/m3)、Cは音速(340m/s)、mは非通気性材質からなる多孔の共振層3の目付量(g/m2)、Lは吸音層の厚さ(mm)である。
Figure 0004691388
ここで、先ず、孔3aが無い場合の比較形態の吸音率と透過損失を図7(a)(b)を参照して考察する。比較形態によれば吸音層と接着層を介して接着する非通気性材質からなる多孔の共振層が充分軽量であるので、表皮の膜共振により1250Hz付近で高い吸音率を得ながら接着層により防音材が一体化し、防音材全体の共振により400Hzで高い吸音率を得ることができる。すなわち、400Hzと1250Hz付近の2箇所に共振周波数がある2系列のバネ・マス振動モデルを形成している。従来、250〜500HZの吸音力があがりにくい周波数での吸音力向上の課題について、非通気性材質からなる多孔の共振層3を吸音層2に十分接着することで、吸音層2のバネ定数が加わり非通気性材質からなる多孔の共振層3単品の共振周波数が高周波数側へ移動し(図7(a)(b)(4)参照)、吸音層2の強制力で共振による透過損失の低下量が減少する(図7(a)(b)(5)参照)。吸音層2の空気バネと、吸音層2と非通気性材質からなる多孔の共振層3の総質量によるバネ・マスで315〜630Hzで共振が発生し、この周波数の吸音率が向上する(図7(a)(b)(6)参照)。
この構造ではダッシュ・サイレンサ1とパネル(ここでは鉄製パネル15)との2重壁効果で重量則以上の透過損失を得ることができる。更にこの効果を悪化させる透過共鳴の周波数を表皮層(非通気性材質からなる多孔の共振層3)を極めて軽量にすることで透過損失が十分高い周波数領域で発生させ更に表皮層3が極めて軽量であることと表皮層3と吸音層2の接着力を制御し、十分な接着力と接着面積を確保することから吸音層の制振性により透過共鳴により透過損失の低下量を低減している。一方、吸音特性は非通気の共振層3が極めて軽く更に吸音層2の厚さを50mm以下に制御することで、共振周波数が315〜4000Hzで制御でき、高い吸音率を得ることができる。また、非通気性材質からなる多孔の共振層3は、吸音層2と、十分な接着力と接着面積で接着されているため、吸音層2の一部の質量を利用したバネ・マス系の共振が315〜630Hzで発生し、吸音性が向上する。この構成のダッシュ・サイレンサ1の非通気の共振層3は、従来の表皮層と比べ目付量が十分軽量でありながら、ダッシュパネル1から入射する直接音(ここではエンジンルームEからの音)を十分遮音し、さらに他部位(ここではエンジンルームE以外の部分)から入射し車室R内で反射する間接音を吸音する効果がある。
次に前記比較形態に孔3aを設けていない場合の本実施形態の吸音率と透過損失を図8を参照して考察する。本実施形態では比較形態と振動モデルの構造は同様であるが、非通気性材質からなる多孔の共振層3に開孔率1〜10%でφ1〜10mmで孔3a設けることで、孔3aにより共鳴が発生する。音の拡散入射においてこのような軽量で剛性が低い共振層では微妙な範囲で独立した共振が発生する。これにより孔3aのある領域では孔3aによる共鳴が発生し、孔3aの無い領域では400Hz、1250Hzの共振が発生している。本実施形態の吸音率曲線(図中短い点線)で1%〜10%の開孔率で径が0.01〜20mmの多数個の孔3aを非通気性材質からなる多孔の共振層3に開けることで、高周波数(1250Hz以上)の音の波のみ開孔部の影響による共鳴効果で1250Hz以上の吸音率が比較形態の吸音率曲線(図中実線で示す)に対して5〜20%向上する(図中a参照)。中周波数及び低周波数の音の波は本条件では影響が少ないが400〜1000Hzの吸音率は1〜5%低下する(図中c参照)。更に非通気性材質からなる多孔の共振層3に10%以上の開孔率で孔を開けた防音材の吸音率曲線(図中長い点線)では1250Hz以上の周波数で吸音率の向上が更に得られるが(図中b参照)、400Hzの周波数付近での吸音率が10〜20%低下し(図中c参照)、吸音率の上昇力ーブも高周波側にスライド(図中d参照)して、1250Hzまでの吸音力は5〜10%低下する。これは開孔面積が大きすぎて非通気性材質からなる多孔の共振層の膜共振が減少した影響と思われる。
(実施例)
実施例と比較例のデータ比較を行ったのでこれを図9及び図11に示す。比較例の構成は、接着層4の接着面積が20%の場合であり、接着層4の接着面積が100%であることと相違する点を除き、実施例と同じものを用いた。ダッシュ・サイレンサ1の厚みが22mm、吸音層2の厚みが20mm、非通気共振層3の厚みが2mm、接着層4の厚みが50μm、共振層3の孔3aの径は2.5mm、開口率は3%である。実施例のダッシュ・サイレンサ1は、非通気性材質からなる多孔の共振層3がポリプロピレン発泡体(PPF)で、発泡率30倍、比重0.031g/cm3、厚み2mm、目付62g/m2であり、吸音層2が熱可塑性フェルト(ポリエステル化繊と雑綿を利用した一般的なもの)、比重0.06g/cm3、厚み20mm、目付1200g/m2であり、接着層の接着面積は90%である。水溶性EVA系接着剤を、非通気性材質からなる多孔の共振層3としての発泡率30倍で厚さ2mmのポリプロピレン発泡体に50g/m2塗布し、熱可塑性フェルトまたはニードルパンチを行ったフェルトからなる吸音層2と圧力1kg/cm2で60秒間圧縮する。乾燥が遅い場合は加熱することで約30秒間の圧締でよい。接着後の接着強度は2〜8N/25mmで、界面のほぼ90%が接着している。剥離状態は吸音層2の熱可塑フェルトの表層破壊である。ここでニードルパンチを行ったフェルトはそうでないフェルトに対し表層破壊強度が高くなりこの為、接着強度は5〜10N/25mmと高くなる。
図9は、防音材1の1/3オクターブバンドの周波数VS透過損失の特性図表である。この透過損失の測定は、JIS A 1409によるが、試験体が10m2ではなく、1m2でおこなったものである。図10は測定室の平面図であり、スピーカ20とマイクロフォン31〜36が配置され、防音材1の試験体が各部屋の壁に配置される。図9において、接着層の接着面積が90%である場合と、接着面積が20%である場合と比較すると、接着面積が90%の場合、400Hz以上の周波数範囲において接着面積が20%である場合より透過損失の上昇が認められる。これにより車室外から車室内に侵入する騒音を低減できる。さらにニードルパンチを行ったフェルトはそうでないフェルトに対し表層破壊強度が高く、すなわち接着強度が5〜10N/25mmとなり、図には示されていないが400Hz以上の周波数範囲において、さらに1〜3dB、透過損失が高くなる。
図11は、防音材1の1/3オクターブバンドの周波数VS吸音率の特性図表である。この吸音率の測定は、JIS A 1416(残響室吸音)によるが、試験体が10m2ではなく、1m2で行なったものである。図12は測定室の平面図であり、スピーカ40とマイクロフォン51〜53が配置され、測定室の床にダッシュ・サイレンサ1の試験体及び鉄板15が配置される。図11において、接着層の接着面積が90%である場合と、接着面積が20%である場合とを比較すると、接着面積が90%の場合、630Hz〜1600Hzの周波数範囲において、接着力と接着面積により非通気性材質からなる多孔の共振層が拘束され、防振・制振され、吸音率の多少の低減が認められるが、吸音率は0.6以上はあるので車室内の騒音を吸音できる。比較例では非通気性材質からなる多孔の共振層により吸音率は上昇する。630Hz〜1600Hzの周波数以外の範囲では、接着面積が90%の場合、接着力と接着面積により非通気性材質からなる多孔の共振層と吸音層による共振現象によって、接着面積が20%の場合よりも吸音率が上昇する。これにより、この周波数領域で車室内の騒音を接着面積が20%の場合より低減できる。更に400〜500Hz付近の周波数で非通気性材質からなる多孔の共振層と吸音層の相互からなる共振周波数により、吸音率0.7を得ることができ、中周波数での車室内の騒音低減に役立っている。
本実施形態によれば、非通気性材質からなる多孔の共振層3が柔軟な薄層よりなること等により、車室R内の音がこの非通気性材質からなる多孔の共振層3に干渉し、吸音層2と非通気性材質からなる多孔の共振層3とが薄膜振動を行っており、これは非通気性材質からなる多孔の共振層3と吸音層2との界面での共振現象による吸音である。また、非通気性材質からなる多孔の共振層3と吸音層2との間にある接着層4の利用によって、界面において吸音する音の周波数を制御することができる。
次に、吸音層2を異密度の2層である高密度吸音層2a及び低密度吸音層2bにする場合と、吸音層2を非異密度にする場合との周波数VS透過損失の比較を図13示す。吸音層202を異密度の高密度吸音層202a及び低密度吸音層202bの2層構造にすることで中周波数(640〜1250Hz)以上で更に透過損失が大幅に改善される。
図14は、吸音層2が異密度と非異密度であることを比較するときの周波数VS吸音率を示すグラフである。吸音層2が非異密度の場合、中周波数領域(640〜1250Hz)だけが著しく高い吸音率を示している。一方、吸音層2が異密度である場合、315Hz〜4000Hzの幅広い周波数で高い吸音率を得ている。中周波数領域(640〜1250Hz)の特定の周波数を持つ騒音だけでなく、幅広く吸音可能になる。また、400Hzと1600Hzの周波数の間では、非異密度の場合よりも吸音率は低下し、共振周波数のピークが明確に現れることが判る。これは異密度の構造では、接着層4を介して非通気性の共振層3と高密度吸音層2aの剛性の影響を受けているからである。この剛性が高くなると高い周波数へ共振周波数は移行することになる。また低周波数側の共振周波数は異密度構造も、同様に低周波数領域(125〜500Hz)である。これは吸音層2の異密度差による剛性差に影響はなく、非通気性の共振層3と吸音層2の質量の総和のマスと吸音層2のバネによるバネマス系振動による。
次に、吸音層2を異密度の2層である高密度吸音層2a及び低密度吸音層2bにし、かつ、共振層3に多数個の孔3aを設けた本実施形態に係る図1構造の場合(以下、ケース1と呼ぶ)と、ケース1の孔3aを廃止した場合(以下、ケース2と呼ぶ)と、ケース1の孔3aを廃止し、かつ、吸音層2を1層の非異密度にした場合(以下、ケース3と呼ぶ)との、周波数VS透過損失の比較を図15示す。図16は、上記ケース1〜3の周波数VS吸音率の比較を示すグラフである。
図15に示すように、本実施形態に係るケース1は、ケース2に比べて透過損失が劣るものの、ケース3に比べれば透過損失が向上する。また、図16に示すように、本実施形態に係るケース1は、ケース2に比べて吸音率が向上するとともに、その向上する周波数の範囲も拡大する。特に、中周波数(640〜1250Hz)以上の周波数帯域にて、吸音率が大幅に向上する。また、本実施形態に係るケース1は、ケース3に比べれば吸音率の高い周波数の範囲が縮小するものの、中周波数(640〜1250Hz)の周波数帯域では吸音率が向上する。従って、透過損失の向上および吸音率の向上を両立させることを鑑みると、その両立を図るといった点で、本実施形態に係るケース1はケース2,3に比べて優れている。
以上説明した通り、本実施形態によれば、会話明瞭度を改善させるため、1000〜1600Hzでの吸音力が特に良好である。非通気共振シ−ト層の目付量を1000g/m2以下、吸音層の厚さを1〜50mmで変化させることで、この範囲での周波数でのシート共振による吸音力の向上を効果的に得ることができ、車室内の良好な静粛性が得られる。防音材1の厚さが薄くなってもシートの共振現象を利用している為、高い吸音率を得ることができる。従来の防音材に対し非通気性材質からなる多孔の共振層の大幅な重量低減が可能になる。特に、高周波数(1250Hz以上)領域での騒音を防止できる。
また、吸音層2を、高密度吸音層2aと低密度吸音層2bの複層体に形成しているので、透過損失を向上させることができるとともに、共振層3に孔が多数個形成されているので、吸音率を高めることができる。
以上、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得るものである。また、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、改変等を加えることができるものであり、それらの改変、均等物等も本発明の技術的範囲に含まれることとなる。
本発明の防音材の平面図(a)、接着層2cのある場合の断面図(b)、接着層2cの無い場合の断面図(c)である。 初期圧縮反発力の測定方法を示す説明図である。 本発明実施形態の防音材の物性を示す一覧図表である。 本発明の防音材が適用されるダッシュ・サイレンサが適用されるダッシュパネルの断面図である。 (a)(b)は、それぞれ、本発明比較形態(孔3aを無くした非通気性材質からなる多孔の共振層とする場合)のダッシュ・サイレンサと図17の構造と図18の構造についての周波数に対する透過損失、及び周波数に対する吸音率との関係を示すグラフである。 (a)(b)は、本発明比較形態(孔3aを無くした非通気性材質からなる多孔の共振層とする場合)のダッシュ・サイレンサの周波数に対する吸音率との関係を示すグラフである。 (a)(b)は、それぞれ、本発明比較形態(孔3aを無くした非通気性材質からなる多孔の共振層とする場合)のダッシュ・サイレンサについての、接着層が十分である場合と不十分である場合を比較するための、周波数に対する透過損失、及び周波数に対する吸音率との関係を示すグラフである。 本発明比較形態と、本発明実施形態(孔3aを設けた場合)のダッシュ・サイレンサについて、共振層の開孔率がゼロの場合、開孔率が高い場合、開孔率が低い場合を比較するためのグラフである。 ダッシュ・サイレンサの実施例と比較例の周波数VS透過損失を示すグラフである。 透過損失の測定装置の平面図である。 ダッシュ・サイレンサの実施例と比較例の周波数VS吸音率を示すグラフである。 吸音率の測定装置の平面図である。 吸音層2を異密度の2層である高密度吸音層2a及び低密度吸音層2bにする場合と、吸音層2を非異密度にする場合との周波数VS透過損失の比較を示すグラフである。 吸音層2が異密度と非異密度であることを比較するときの周波数VS吸音率を示すグラフである。 共振層3が孔あきで吸音層3が異密度(本発明)の場合、孔なし異密度の場合、および孔なし非異密度の場合を比較するための周波数VS透過損失を示すグラフである。 共振層3が孔あきで吸音層3が異密度(本発明)の場合、孔なし異密度の場合、および孔なし非異密度の場合を比較するための周波数VS吸音率を示すグラフである。 従来からの遮音構造の説明図である。 特許文献1の遮音構造の説明図である。 (a)(b)は、それぞれ、特許文献1の遮音構造の吸音材の周波数と透過損失との関係を示すグラフ、及び従来からの遮音構造の吸音材の周波数と吸音率との関係を示すグラフである。 特許文献2の周波数と吸音率との関係を示すグラフである。
符号の説明
1…ダッシュ・サイレンサ 2…吸音層 3…非通気性材質からなる多孔の共振層
3a…孔 4…接着層 10…ダッシュパネル(車体パネル)
E…エンジンルーム R…車室

Claims (6)

  1. 高密度吸音層と低密度吸音層の複層体に形成され、全体としての厚さが1〜50mm、全体としての密度が0.01〜0.2g/cm3である軽量な吸音層と、
    前記高密度吸音層と接着層を介して接着する、目付量は1000g/m2以下であって、0.01〜20mmの径の孔を開孔率1〜10%で多数個形成する非通気性材質からなる多孔の共振層と、からなり、
    前記吸音層が車体パネル側に配置され、前記非通気性の共振層は車室内側に設置されており、
    前記高密度吸音層と前記共振層に対する前記接着層の接着強度が剥離幅25mmで180度の剥離にて1〜20N/25mmに設定され、
    前記接着層は、前記高密度吸音層と前記共振層の全界面に対して50〜100%の面積で接着されることを特徴とする超軽量な防音材。
  2. 前記吸音層は、1枚の吸音部材を加工することで前記複層体に形成されていることを特徴とする請求項1の超軽量な防音材。
  3. 1枚のフェルトの片面のみをニードル加工して高密度にすることで、前記高密度吸音層と前記低密度吸音層を前記1枚のフェルトで構成したことを特徴とする請求項2の超軽量な防音材。
  4. 前記共振層の構造は発泡体またはフィルム体であり、
    前記発泡体の場合は、厚さ1〜7mm、
    前記フィルムの場合は厚さ10〜200μmであることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1つの超軽量な防音材。
  5. 前記高密度吸音層の密度は0.05〜0.20g/cm3、厚さが2〜70mmの範囲であり、
    前記低密度吸音層の密度は0.01〜0.10g/cm3、厚さが2〜70mmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つの超軽量な防音材。
  6. 前記高密度吸音層の初期圧縮反発力が30〜600Nで、前記低密度吸音層の初期圧縮反発力が5〜300Nであり、
    少なくとも前記高密度吸音層の初期圧縮反発力は前記低密度吸音層の1.2〜40倍であり、前記吸音層の厚さにおける高密度吸音層の占める厚さは20〜80%であり、
    少なくとも前記高密度吸音層の初期圧縮反発力は低密度吸音層の1.5〜5倍であり、
    吸音層の厚さにおける高密度吸音層の占める厚さは40〜60%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つの超軽量な防音材。
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