JP2006069256A - 自動車用内装材 - Google Patents

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Abstract

【課題】非通気の裏打ち層を廃し、吸音性を重視する構成とした自動車用内装材において、車室内に侵入した雨水や飲料などの液体が滲みこんで、緩衝材層にカビが発生することによる悪臭と、内装材を通過してボディパネルまで達することによる錆の発生を、吸音性を維持したまま防止する。
【解決手段】表皮層と緩衝材層との間に、透気抵抗度8秒/100cc以上であり、ヤング率1.0×10N/m以下である弾性体からなる止水層を積層する。
【選択図】図1

Description

本発明は自動車室内に意匠性を付与したり、あるいは緩衝材、防音材という目的で装備される自動車用内装材に関するものである。
近年、自動車用内装材においては、防音性能を持たせることが重視されてきており、その構造を適切にすることにより、車室内の静粛性の向上に大きく寄与している。従来の自動車用内装材としては、非通気のシートなどを積層することによって、自動車室内に侵入してくる騒音を遮断することを重視した遮音性重視構造が採用されてきたが、その一方で近年、非通気のシートを廃し、自動車用内装材に通気性をもたせ、一旦、車室内に入射した騒音、及び車室内で発生した騒音をも吸音可能とした吸音性重視構造が採用されるようになってきた。
前記遮音性重視構造としては、図2に示したような積層構造が知られている。遮音性を重視した構造では、ニードルパンチカーペットあるいはタフテッドカーペットからなる意匠層20と、フェルトやウレタンフォームからなる緩衝材層22との間に、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をバッキングした非通気性の裏打ち層21が設けられる。このような非通気性の裏打ち層21を、意匠層20と緩衝材層22との間に介在させることによって、車外から侵入してくる騒音を遮断することが可能となる。
また、吸音性重視構造としては、図3に示したような積層構造などが知られている。ニードルパンチカーペットあるいはタフテッドカーペットからなる意匠層30、不織布からなる剛性層31と、フェルトあるいはウレタンフォームからなる緩衝材層32とをこの順に積層する。この時、意匠層と剛性層および剛性層と緩衝材層との間にはポリエチレンパウダーなどの、音波が透過しやすい接着層33を積層して接着することによって、通気性が高く、吸音機能に優れた積層体を構成している。このように通気度を高くして吸音機能をもたせた積層体については下記の特許文献1あるいは特許文献2に開示されている。
特開2002−219989号公報(特願2001−396240号) 特許第3359645号公報(特願平10−519853号)
遮音性重視構造においては、非通気性の裏打ち層が設定されているため、車室外から入射する騒音を遮音することは可能であるが、非通気性の裏打ち層とボディパネルとが2重壁構造になることによって、特定の周波数域において共鳴が生じ、その周波数(共鳴透過周波数)付近について車室内の静粛性が大きく低下してしまうといった課題がある。また、一旦、車室内に入射した騒音、及び車室内で発生した騒音に関しては、その大半の成分が非通気性の裏打ち層で反射してしまうため、緩衝材層の吸音機能を働かせることができなくなり、騒音低減の効果が低くなることも課題とされている。
一方、吸音性重視構造においては、車室外から入射する騒音に対してだけでなく、一旦、車室内に入射した騒音、及び車室内で発生した騒音に対しても吸音材として機能させることができるため、非通気性の裏打ち層を設けた遮音性重視構造と比較して、車室内の静粛性を向上できる場合が多い。しかし、その一方で、雨天時などに車室内に浸入した雨水や、乗員が誤ってこぼしてしまった飲み物などの液体は、遮水機能も有する非通気性の裏打ち層が設定されていないために、緩衝材層あるいはボディパネルまで達してしまい、緩衝材層でカビ、ボディパネルにおいては錆びが発生するという虞があった。
本発明は上記課題に鑑み、詳細な実験および研究によって見出されたもので、非通気性の裏打ち層を廃する替わりに、透気抵抗度(JIS P8117)が8秒/100cc以上であり、ヤング率1.0×10N/m以下である弾性体からなる止水層を積層することによって、車室内に入射した騒音、及び車室内で発生した騒音を吸音する性能は従来の遮音重視構造よりも優れ、従来の吸音重視構造とほぼ同等の吸音性能を保ったまま、浸入した雨水や、乗員が誤ってこぼしてしまう飲み物などの液体が緩衝材層あるいはボディパネルまで達することを防ぐという止水性をも有した構造とするものであり、表皮層、止水層、緩衝材層を順に積層して構成される。
前記止水層は、透気抵抗度(JIS P8117)が8秒/100cc以上であり、ヤング率1.0×10N/m以下である弾性体からなり、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム、アクリルフォームなどの弾性体が好適に用いられる。ヤング率が上記のような値であれば、圧縮、膨張の振動が可能となる為、吸音性を持たせることが可能となる。また、前記表皮層と前記止水層は、パウダー状または網目状の接着剤で部分的に貼り合わされる。部分的に貼着することによって、接着剤で音波が遮断されることなく、止水層の吸音機能を働かせることを可能としている。また、前記緩衝材層は厚み5mm〜30mm、見掛け密度20kg/m〜100 kg/mの各種反毛繊維やポリエステル繊維のフェルト、あるいはウレタンフォームなどからなる。前記表皮層は、従来から用いられているタフテッドカーペットやニードルパンチカーペットからなる意匠層からなり、場合によっては前記意匠層に、形状保持性を持たせるためにポリエステル繊維等をニードルパンチして得られる不織布などの保形層を積層する。
上記のような構成とすることで、緩衝材層による吸音作用とともに、弾性体からなる止水層が振動することによる吸音作用と、表皮層の粘性抵抗による吸音作用により、車室内に入射、また車室内で発生した騒音の中で、会話主領域の全周波数域の騒音を、従来の吸音重視構造と同等以上に吸音することが可能となる。また、車室外から入射する騒音に対する遮音性に関しては、比較的通気性の低い止水層が設定されているため、従来の吸音性重視構造のものよりも遮音性に優れたものとすることができる。
さらに、前記止水層によって、車室内に持ち込まれた雨水や、乗員がこぼした飲料などの液体が緩衝材層やボディパネルまで到達することがなく、緩衝材層でカビや悪臭が発生したり、ボディパネルに錆びができるといった虞を解消することが可能となる。
以下、図面をもとに本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
図1は本発明による自動車用内装材を示した説明図であり、意匠層10と必要に応じて設定される保形層11とからなる表皮層1と、止水層12、緩衝材層13を順に積層した構成となっている。
意匠層10は従来から用いられているタフテッドカーペットあるいはニードルパンチカーペット等の自動車の内装材として適した、意匠性に優れた構造物が主に用いられている。
保形層11はポリエステル繊維などからニードルパンチによって形成される不織布などが好適に用いられる。尚、保形層11は形状保持性や剛性などが要求される時などに必要に応じて適用されるものであり、保形層11は、本発明における止水性の効果に対する影響はなく、吸音性における高周波数域の効果を向上させる影響が若干ある。
止水層12には、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム、アクリルフォームなどの弾性体であり、厚さ3mm〜15mm、ヤング率が1.0×10N/m以下、好ましくは5.0×10N/m以下の範囲にあるものが適しており、通気性はJIS P8117で測定される透気抵抗度としての数値で表されるものであって、8秒/100cc以上であるものが好適に用いられる。透気抵抗度が8秒/100ccを下回ると、十分な止水性を保てなくなり、緩衝材層22まで水などの液体が到達してしまうからである。これは、透気抵抗度の異なる止水層でサンプルを作成し、常温常湿(23℃、55%)という条件の下で、意匠層側から水100ccを100cmの面積に滴下し、水の透水状態を調査した結果、8秒/100ccよりも透気抵抗度の低いサンプルでは、水が乾燥する前に、緩衝材層に水が透過したことから得られた値である。
緩衝材層13には、各種反毛繊維、ポリエステル繊維からなるフェルト、ウレタンフォームなどが適しており、厚み5mm〜30mm、見かけ密度10kg/m〜60kg/mのものが好適に用いられる。
製造方法としては、前記意匠層と前記保形層とからなる表皮層に、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム、アクリルフォームなどの弾性体からなる止水層を接着剤で貼り合わせる。この時、弾性体が振動しやすいように、接着剤はパウダー状あるいは網目状の材料で部分的に貼り合わせることが好ましい。また、止水層の裏面に内装材の成形加工時の加熱により溶融状態となりうる接着剤を、予め、設定しておけば、成形加工時に緩衝材層を貼り合わせることが可能となり、緩衝材層を貼り合わせる工程を省略できるので工数の短縮が図れる。
(実施例1)
実施例として、表皮層が意匠層(ディロアニーパン:目付け250g/m)と保形層(ポリエステル不織布:目付け300g/m)からなり、止水層(ウレタンフォーム:厚さ5mm、ヤング率2.0×10N/m)と緩衝材層(反毛繊維フェルト:厚さ15mm、見掛け密度0.06g/cm)を順に積層して形成した積層体を本発明の評価試験用の試料として供した。
(実施例2)
実施例として、表皮層が意匠層(ディロアニーパン:目付け250g/m)と保形層(ポリエステル不織布:目付け300g/m)からなり、止水層(ウレタンフォーム:厚さ10mm、ヤング率2.0×10N/m)と緩衝材層(反毛繊維フェルト:厚さ10mm、見掛け密度0.06g/cm)を順に積層して形成した積層体を本発明の評価試験用の試料として供した。
(実施例3)
実施例として、表皮層が意匠層(ディロアニーパン:目付け250g/m)と保形層(ポリエステル不織布:目付け300g/m)からなり、止水層(ウレタンフォーム:厚さ5mm、ヤング率5.0×10N/m)と緩衝材層(反毛繊維フェルト:厚さ15mm、見掛け密度0.06g/cm)を順に積層して形成した積層体を本発明の評価試験用の試料として供した。
(実施例4)
実施例として、表皮層が意匠層(ディロアニーパン:目付け250g/m)と保形層(ポリエステル不織布:目付け300g/m)からなり、止水層(ウレタンフォーム:厚さ5mm、ヤング率7.0×10N/m)と緩衝材層(反毛繊維フェルト:厚さ15mm、見掛け密度0.06g/cm)を順に積層して形成した積層体を本発明の評価試験用の試料として供した。
(比較例1)
比較例1として、表皮層が意匠層(ディロアニーパン:目付け250g/m)と保形層(ポリエステル不織布:目付け300g/m)からなり、止水層(ウレタンフォーム:厚さ5mm、ヤング率1.1×10N/m)と緩衝材層(反毛繊維フェルト:厚さ15mm、見掛け密度0.06g/cm)を積層して形成した積層体を比較用の試料として供した。
(比較例2)
比較例2として、表皮層が意匠層(ディロアニーパン:目付け250g/m、非通気性の裏打ち層:樹脂バッキング1500g/m)とし、緩衝材層(反毛繊維フェルト:厚さ20mm、見掛け密度0.06g/cm)を積層して形成することによって、従来の遮音性重視構造の試料として供した。
(評価方法)
ISO−10534−2に従い、実施例1〜4および比較例1、2の周波数ごとの垂直入射吸音率を測定した。また、各試料のヤング率はmecanaum Inc.製のQMA(Quasi‐static Mechanical Analyzer)を使用して測定した。
(評価結果)
上記の実施例1〜4および比較例1、2の測定結果を、横軸に1/3オクターブバンド周波数、縦軸に垂直入射吸音率としたグラフとして表し、図4に示した。実施例1〜4の吸音性は遮音重視構造である比較例2より全周波数域で優れており、また、透気抵抗度8秒/100cc以上の止水層による止水性も兼ね備えているため、吸音性と止水性との両立が可能であることを示している。実施例1、2は止水層のヤング率が2.0×10N/mであり、全周波数域において高い吸音性を示している。また、実施例1、3および4の結果から、止水層のヤング率を高くしていくと垂直入射吸音率のピークが低周波から高周波へと移動していき、また、ヤング率の値が高くなるのに伴い、吸音率は低くなることがわかる。止水層のヤング率が1.0×10N/mよりも大きな1.1×10N/mという値とした比較例1では、吸音性が急激に悪化することがわかる。これはヤング率が高くなると止水層は振動し難くなり、振動による吸音機能が低下する為と考えられる。
本発明による自動車用内装材の説明図である。 従来の遮音性重視構造による自動車用内装材の説明図である。 従来の吸音性重視構造による自動車用内装材の説明図である。 実施例および比較例の垂直入射吸音率の測定結果を示したグラフ。
符号の説明
1 表皮層
10 意匠層
11 保形層
12 止水層
13 緩衝材層
20 意匠層
21 裏打ち層
22 緩衝材層
30 意匠層
31 剛性層
32 緩衝材層
33 接着層

Claims (4)

  1. 表皮層の裏面に、透気抵抗度(JIS P8117)が8秒/100cc以上であり、ヤング率1.0×10N/m以下である弾性体からなる止水層を積層してなることを特徴とする自動車用内装材。
  2. 前記止水層において、表皮層が積層されている面とは反対側の面にはフェルトやウレタンフォームなどの吸音性を有した緩衝材層を積層してなることを特徴とする請求項1に記載の自動車用内装材。
  3. 前記止水層は、前記表皮層及び前記緩衝材層とパウダー状または網目状の接着剤で部分的に貼り合わされてなることを特徴とする請求項1乃至2に記載の自動車用内装材。
  4. 前記表皮層は自動車室内に面する意匠層と、該意匠層の裏面に積層される保形層とからなることを特徴とする請求項1乃至3に記載の自動車用内装材。
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