JP4691257B2 - シャペロニン10及びβ−インターフェロンによる多発性硬化症の治療方法 - Google Patents

シャペロニン10及びβ−インターフェロンによる多発性硬化症の治療方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4691257B2
JP4691257B2 JP2000594486A JP2000594486A JP4691257B2 JP 4691257 B2 JP4691257 B2 JP 4691257B2 JP 2000594486 A JP2000594486 A JP 2000594486A JP 2000594486 A JP2000594486 A JP 2000594486A JP 4691257 B2 JP4691257 B2 JP 4691257B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cpn10
ifn
day
mice
beta
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2000594486A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2002535286A (ja
JP2002535286A5 (ja
Inventor
モートン、ハレ
キャバナー、アリス
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
University of Queensland UQ
Original Assignee
University of Queensland UQ
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by University of Queensland UQ filed Critical University of Queensland UQ
Publication of JP2002535286A publication Critical patent/JP2002535286A/ja
Publication of JP2002535286A5 publication Critical patent/JP2002535286A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4691257B2 publication Critical patent/JP4691257B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides
    • A61K38/16Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • A61K38/17Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • A61K38/19Cytokines; Lymphokines; Interferons
    • A61K38/21Interferons [IFN]
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides
    • A61K38/16Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • A61K38/17Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • A61K38/19Cytokines; Lymphokines; Interferons
    • A61K38/21Interferons [IFN]
    • A61K38/215IFN-beta
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P25/00Drugs for disorders of the nervous system
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P25/00Drugs for disorders of the nervous system
    • A61P25/28Drugs for disorders of the nervous system for treating neurodegenerative disorders of the central nervous system, e.g. nootropic agents, cognition enhancers, drugs for treating Alzheimer's disease or other forms of dementia

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Neurosurgery (AREA)
  • Neurology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Psychiatry (AREA)
  • Hospice & Palliative Care (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Medicinal Preparation (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Developing Agents For Electrophotography (AREA)
  • Surgical Instruments (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)

Description

【0001】
(発明の属する技術分野)
本発明は、cpn10とβ−インターフェロンの組み合わせ治療を用いた多発性硬化症の治療方法に関する。本発明は、cpn10とβ−インターフェロンとを備えた医薬組成物とキットにも関する。
【0002】
(発明の背景)
多発性硬化症(MS)は、神経系に関する最も一般的な自己免疫疾患であり、米国ではおよそ250,000人中1人が罹患している。臨床上、MSは、衰弱、感覚異常、感覚喪失、及び神経と筋肉の機能に対する一般的な調節の低減に至る、中枢神経系(CNS)の散在する髄鞘脱落によって特徴付けられる。
【0003】
インターフェロン−β(IFN−β)
IFN−βはウイルス刺激に応答して繊維芽細胞により生産される、抗ウイルス性かつ抗腫瘍性のサイトカインである。IFN−βは免疫系モジュレーターとして作用し、適切に制御された臨床試験におけるMSの自然な進展を実質的に変更する唯一の治療剤である(The IFN−β Multiple Sclerosis Study Group、1993年、Neurology 43:655−61)。しかしながら、その研究から、多用量のIFN−β(一日おきに8百万国際単位(MIU)注射)は、大きな耐性があると共にMSの再発・緩解の経過に有効な影響を有するが、部分的にしか有効でないことが明らかとなった。その患者は、割合は下がり臨床上の重症度も比較的軽いが、症状の再燃を有し続けた。しかし、上記の用量は、初期の予備的試験によると、用量(16MIU)を週に3回投与すると許容できない毒性を生じることが見出されたため、増大させることはできなかった。上述に引用した制御臨床試験で2つの用量(1.6と8MIU)を投与した後の、目立った副作用の発生は低かった。
【0004】
IFN−β治療に関連する研究所での最も一般的な異常は、総白血球細胞数の有意な変化を伴わないリンパ球減少であった。他の目立った副作用は、インフルエンザ様の症状と注射部位での反応であった。インビトロ研究によると、IFN−βは患者と健常者の両方に由来する分裂促進因子刺激による末梢血単核細胞の増殖を有効に抑制することが示されている。この増殖抑制効果は、IL−2R発現の減小と関連していた(ルディック(Rudick)ら、1993年、Neurology、43:2080−7)。
【0005】
実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)の治療剤としてのIFN−βの有効性を調べるために、実験ラットとマウスについて詳細な研究が行われている。EAEはMSの最も有効な動物モデルであり、齧歯類におけるCNSのCD4+T細胞媒介性の炎症性髄鞘脱落疾患である(ペッチネリ(Pettinelli)とマクファーリン(McFarlin)、1981年、J.Immunol.127:1420−3)。EAEは感受性のある動物にCNS抗原(ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質)とアジュバントとを接種することにより誘発することが可能である。EAEの徴候の進展は、Tリンパ球とマクロファージによる神経系の浸潤に関連する(レイン(Raine)、1984年、Lab.Invest.50:608−35)。EAEからの自発的回復の間、神経系の炎症性細胞の数は減小する(マコーメ(McCombeら、1992年、J.Neurol.Sci、113:177−86)。その理由の一部は、中枢神経系のTリンパ球とマクロファージのプログラム死(アポトーシス)による(タビ(Tabi)ら、1994年、Eur.J.Immunol.24:2609−17;マコーメら、1996年、J.Neurol.Sci、139:1−6)EAEからの回復は、IL−10及びTGF−β等のダウンレギュレートな(免疫系の刺激に対する反応を抑制する)サイトカインの生産にも関連する(ケネディ(Kennedy)ら、1992年、J.Immunol.149:2496−2505)。
【0006】
リュール(Ruul)ら、1996年、J.Immunol.157:5721−31)の研究では、合成MBPペプチドの63−88残基を接種することにより、LewisラットでEAEが誘発された。接種後8日から17日まで組換えラットIFN−β(3×105U/日、皮下)で治療することにより、動物は治療期間の間疾患から完全に保護された。しかし、治療を休止すると、大部分の動物は、重症度が大きく高まり、長引く緩解疾患経過を発展させた。治療が26日まで続けられた場合、動物は治療が中止された後でも再発しなかった。以上の結果から、EAEの回復期間中の治療の休止は、重症の麻痺性疾患の急速な開始と関連するように思われる。
【0007】
EAEの特徴の1つは、疾患の臨床期の間の漸進的な体重減少である。これは動物が回復すると急速に元に戻る(リュールら、1996年、前掲)。IFN−βによる8日から26日までの治療は、コントロール群と比較した場合に、体重減小を抑制した。しかしながら、接種の約25日目に明らかになったことであるが、治療後すべての動物は成長遅延を示した。種々の疾患のためのIFN−β治療の間の、患者に関する最も一般的かつ用量制限的な副作用の一つとして、体重増加の欠如も観察された。
【0008】
EAEのマウスモデルを用いて、ユ(Yu)ら、1996年、J.Neuroimmunol.64:91−100は、ミエリンプロテオリピドタンパク質(PLP)の免疫優勢ペプチドp139−151による免疫化後の(SWR×SJL)F1マウスにおけるEAEの経過に対するマウスIFN−βによる治療の影響を決定した。マウスは、平均神経学的欠損の顕著な減小と、再燃の開始時期及び開始速度の有意な遅延と、DTHの減小とを示した。IFN−β治療は、平均臨床スコアの長期改善と、明瞭な組織病理の改善と、障害への進行の遅延とを生じた。インビトロにおいて、IFN−βは、決定基感作リンパ節細胞の増殖を用量依存的な様式で抑制した。結論として、上記著者らは、IFN−β治療したマウスでは明瞭な組織病理の改善が存在するが、該改善は治癒からはほど遠いことを示した。CNS炎症の重症度と発症についての同様に重要ではあるが最も穏和な長期間治療効果がMS患者に関して説明されている(IFN−β Multiple Sclerosis Study Group、1993年)。
【0009】
初期妊娠因子(EPF)
EPFはモートン(Morton)ら、1974年、Nature、249:459−60及びモートンら、1976年、Proc.R.Soc.Lond.193:413−9に最初に記述された。
【0010】
EPFは受精して6−24時間以内の母親の血清に現れ、研究したすべての種において妊娠の少なくとも最初の半分の期間中存在し、続く胚の成長と生存に必須である(モートンら、1987年、Current Topics in Developmental Biology 23:73−92;アタナサス−プラッシス(Athanasas−Platsis)ら、1989年、J.Reprod.Fert.87:495−502;アタナサス−プラッシスら、1991年、J.Reprod.Fert.92:443−51)。またEPFは、腫瘍細胞(クイン(Quinn)ら、1990年、Clin.Exp.Immunol.80:100−8;クインとモートン、1992年、Cancer Immunol.Immunother.34:265−71)のためと、部分的肝切除後の肝細胞再生(クインら、1994年、Hepatology 20:1294−302)のための、自己分泌生存因子でもある。他の多くの成長因子と同様、EPFは血小板に存在しており、これはEPFが創傷治癒に関して生理学的役割を有し得ることを示唆している(キャバナ(Cavanagh)とモートン、1994年、Eur.J.Biochem.222:551−60)。
【0011】
EPFは免疫調節特性も有する。これが最初に提唱されたのは、EPFが、免疫抑制性の抗リンパ球血清(モートンら、1974、前掲、モートンら、1976、前掲)と、抗CD8抗体ではなく抗CD4抗体(モートンら、1982、Pregnancy Proteins,編 B.Grudzinskas,B.Teisner,M.Seppala Academic Press、Syney、391−405)との、ロゼット(バラ飾り形構造)抑制特性を増強することができることが示されたときである。さらなる研究により、EPFがマウスにおけるトリニトロクロロベンゼン(TNCB)に対する遅延型過敏症(DTH)反応を抑制し(ノーナン(Noonan)ら、1979年、Nature 278:649−51)、分裂促進因子によって誘導されたリンパ球増殖を抑制し(アタナサス−プラッシス、1993年、PhD論文、クイーンズランド大学)、EPF結合T細胞によるIFN−γの生産を抑制することが示された。EPFの免疫抑制作用は、抑制因子及び/又はリンホカインの逐次誘導に媒介される。EPFはCD4+T細胞に結合し、遺伝子により制限された2つの抑制因子であるEPF−S1とEPF−S2を逐次放出する(ロルフェ(Rolfe)ら、1988年、Clin.Exp.Immunol.73:219−25;ロルフェら、1989年、Immunol.Cell Biol.67:205−8)。EPFの作用は種によって制限されも系統によって制限されもせず、EPF−S1活性はマウスMHCのI領域とヒトのHLA−DRに制限されるが、EPF−S2作用はIgh領域に局在化する。
【0012】
シャペロニン10
ヒト血小板から精製したEPFのアミノ酸の配列決定により(キャバナとモートン、1994年、前掲)、EPFは熱ショックタンパク質ファミリーのメンバーであるシャペロニン10(cpn10)とアミノ酸配列を共有していることが示された(ハルトマン(Hartman)ら、1992年、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 89:3394−8)。従って、EPFとcpn10は同族体であると考えられる。cpn10は細菌からヒトまで様々な生物に存在する。cpn10の構造は哺乳類の種間で大いに保存されているが、細菌と哺乳類間ではあまり保存されてない。cpn10はミトコンドリアに存在し、そこでタンパク質の折り畳みの役割を果たし(エリス(Ellis)とファンデルフィース(van der Vies)、1991年、Annu.Rev.Biochem.60:321−47)他の熱ショックタンパク質と同様、細胞cpn10は細胞ストレスの間アップレギュレートされる。
【0013】
EPFと同様、cpn10はロゼット抑制検定において活性であり、ラットの同種皮膚移植片の生存能力の延長によって証明されるような免疫抑制活性を示す。EAEに関して、国際出願出願公開第WO95/15338号を参照すると、cpn10はEAEの開始を遅らせると共に、ラットモデルでの該疾患の臨床上の特徴を改変することが示された。従って、cpn10とIFN−βは共に免疫抑制性であることが上記文献から明らかである。
【0014】
(発明の目的)
続く実験において、本願発明者は、マウスのEAEの治療に関してcpn10とIFN−βを比較し、cpn10とIFN−βが異なる機構を介して作用するという驚くべき発見をした。この発見の結果、cpn10とIFN−βは互いに協同作用して、EAEの治療を改善することが認められている。従って、連想されるのは、cpn10とIFN−βが協同作用して、ヒトのMSの治療を改善することである。
【0015】
従って、本発明の目的は、多発性硬化症(MS)を治療するための方法及び医薬組成物を提供することにある。
【0016】
(発明の概要)
第1態様において、本発明は、ある個体に医薬として有効量のcpn10及びIFN−βを投与する工程から成る、MSの治療方法にある。
【0017】
好ましい実施形態において、本発明の方法はMSの再発予防のために使用される。
第2態様において、医薬として有効量のcpn10及びIFN−βと、医薬として許容される担体又は希釈液とを含むMS治療用の医薬組成物が提供される。
【0018】
第3態様において、医薬として有効量のcpn10及びIFN−βを、医薬として許容される担体又は希釈液と共に備えたキットが提供される。
好ましくは、前記IFN−βは脱水した形をしており、使用の際に、前記医薬として許容される担体又は希釈液によって再水和される。
【0019】
1実施形態において、前記cpn10は脱水した形をしており、使用の際に、前記医薬として許容される担体又は希釈液によって再水和される。
別の実施形態において、前記cpn10は錠剤又はカプセルの形をしている。
【0020】
上述の態様によれば、好ましくは医薬として有効量のcpn10及びIFN−βは、5−60mgのcpn10を含む。
より好ましくは、医薬として有効量のcpn10及びIFN−βは、10−30mgのcpn10を含む。
【0021】
好ましくは、医薬として有効量のcpn10及びIFN−βは、1−10MIUのIFN−βを含む。
より好ましくは、医薬として有効量のcpn10及びIFN−βは、4−6MIUのIFN−βを含む。
【0022】
明細書とそれに続く請求の範囲を通じて、「含む・含有する・備える」(comprise,comprises,comprising)は、限定的ではなく包括的に使用しており、示したある1つの整数又は複数の整数の群は、1または複数の示していない整数又は複数の整数の群を含み得る。
【0023】
(発明の詳細な説明)
cpn10とIFN−βが異なる機構を介して−マウスとラットのEAE症状を協同作用的に軽減するという本願発明者による発見から本発明が少なくとも一部端を発していることは理解されるであろう。特に、IFN−βとcpn10の組み合わせによる治療は、治療の休止後のEAE再発を予防する能力を顕著に改善することを示した。従って、EAEはヒトMSの最良の実験動物モデルであるため、上記発見は、ヒトのMSの治療に関する。これに関して、IFN−βの投与はMSのよく知られている治療方法であるが、特に多用量のIFN−βでは副作用が生じる。従って、本発明はcpn10とIFN−βがIFN−βのみよりも疾患の徴候をより大きく軽減し、それによって副作用を生じる濃度でIFN−βを投与する必要性を減らすという、組み合わせ療法を提供する。IFN−βがMSの治療に不可欠となっているため、cpn10とIFN−βを用いた組み合わせ療法は、患者がIFN−β治療から外れる必要がない点で、又は患者がMS再発の可能性を減らしつつIFN−β治療から外れてもよいという点で、極めて魅力的である。
【0024】
従って、第1態様において、本発明は医薬として有効量のcpn10とIFN−βの投与によるMSの治療方法を提供する。
好ましい実施形態では、本発明の方法を用いてMSの再発が予防される。
本明細書に使用する場合「MSの再発」とは、初期攻撃からの回復後にMSの徴候が再び起こることである。MSの再発は、例えば、個体がIFN−β療法から外れたときや、副作用の危険性又は発現のためにIFN−βの量を減らしたときに起こり得る。本発明の方法は、MSの徴候の再発を遅らせることができる点又は該徴候の重症度が低減される点で、MSの再発を防止することが可能である。
【0025】
「医薬として有効量の」は、個体に投与した時に、該個体の疾患の徴候を予防、軽減、低減又は除去し、及び/又は該疾患の徴候の重症度又は持続時間を低減する、薬物又は薬剤(例えばcpn10とIFN−β)の量を意味する。本発明はcpn10及びIFN−βが単独では無効であるか最適状態に及ばないが、組み合わせると医薬として有効であるような量でのcpn10とIFN−βの投与を意図している。
【0026】
好ましくは、医薬として有効量のcpn10及びIFN−βは、5−60mgのcpn10を含む。
より好ましくは、医薬として有効量のcpn10及びIFN−βは、10−30mgのcpn10を含む。
【0027】
好ましくは、医薬として有効量のcpn10及びIFN−βは、1−10百万国際単位(MIU)のIFN−βを含む。
より好ましくは、医薬として有効量のcpn10及びIFN−βは、4−6MIUのIFN−βを含む。
【0028】
熟練者には、上述の医薬として有効量が、一般に70kgの個体に関して計算されたものであることが理解されるであろう。従って、用量は体重、年齢、性別、個体の身体全体の健康と適応度(fitness)、及び個体が受けている他の治療によって変わり得る。さらに、cpn10とIFN−βの投与量は投与回数と投与のタイミングに互いに依存する。
【0029】
これに関して、cpn10とIFN−βの投与回数と投与のタイミングは、変わる可能性があるものと想定する。従って、本発明の範囲内で想到される治療様式は以下の2つがあることが明らかである。
【0030】
(i)IFN−βとcpn10の各々が異なる時期に及び/又は異なる回数で投与される、IFN−βとcpn10の組み合わせ治療方法。
(ii)IFN−βとcpn10が同時に投与される治療方法。
好ましくは、cpn10は毎日投与される。ただし、それよりも少ない回数に基づく投与も可能ではある(例えば週に2回又は3回)。
【0031】
以下に論じるが、IFN−βの供給源によるが、IFN−βは通常、週に1回又は週に3回投与される。そのような投与回数は、cpn10がいかに頻繁に投与されようが、維持され得る。しかしながら、IFN−βとcpn10は同時に毎日投与することが好ましい。この後者の投与様式は、cpn10とIFN−βが皮下又は筋内注射用の前記医薬組成物に組み合わされた場合に、特に適している。
【0032】
1実施形態において、IFN−βは皮下又は筋内注射により投与され、cpn10は注射又は経口投与される。
好ましくは、cpn10は錠剤又はカプセルの形式等で経口投与される。
別の実施形態において、IFN−βとcpn10は筋内又は皮下注射により同時に投与される。
【0033】
cpn10は好ましくは精製した組換え合成型で与えられる。代わりに、cpn10は化学合成により製造することも可能である。しかし、熟練者には、cpn10の大きさが化学合成をあまり好ましくない選択にしていることが理解されよう。
【0034】
これに関して、適当なcpn10ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列が当該技術分野においてよく知られている。ただし、熟練者は便宜上、以下の哺乳類のcpn10配列を参照する。
【0035】
(i)ヒトcpn10(NCBI Entrez アクセッション番号UO7550;チェン(Chen)ら、1994年、Biochem.Biophys.Acta.1219:189−190);
【0036】
(ii)マウスcpn10(NCBI Entrez アクセッション番号U09659;ディックソン(Dickson)ら、1994年、J.Biol.Chem.269:26858−864);
【0037】
(iii)ラットcpn10(NCBI Entrez アクセッション番号X71429;ライアン(Ryan)ら、1994年、FEBS Letter 337:152−156);
【0038】
上記文献は参照により本明細書に組み込まれる。
pGEXシステムを用いた組換え合成cpn10の生産と精製に関する実施例を以下に与える。別の有効な方法は、組換え合成cpn10の生産に酵母やバキュロウイルス発現系等の真核生物発現系を使用することである。細菌での発現に対するそのような系の有利な点は、cpn10が真核生物細胞で生産されN末端の修飾がないことである。これによって比活性が大きくなると共に安定性が増大する。組換えタンパク質の発現に有効な方法の例は、「タンパク質の科学における最新プロトコル(CURRENT PROTOCOLS IN PROTEIN SCIENCE)(コリガン(Coligan)ら編、John Wiley&Sons Inc.、1995−99年)の5〜7章に見られるが、該文献も参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
現在、MSの臨床治療に使用されるIFN−βには3つの供給源がある。それらを他の関連情報と合わせて表1に列挙する。
Betaseron(又はBetaferon)は、例えば、担体又は希釈液としてデキストロース及びヒト血清アルブミンと共に脱水した形でSchering社により通常供給される。水溶性担体又は希釈液として作用し、脱水IFN−β/デキストロース/ヒト血清アルブミンを注射の前に再水和する0.54%NaClも含まれる。
【0040】
適当な場合、医薬組成物は医薬として許容される担体又は希釈液である。
「医薬として許容される担体又は希釈液」とは、全身性投与に安全に使用することができる固体又は液体の充填剤、希釈液又はカプセル物質を意味する。脱水IFN−β/デキストロース/ヒト血清アルブミンを再水和する上述の0.54%NaCl水溶性担体又は希釈液は、一例である。IFN−βに適した他の担体の例が米国特許第4,992,271号と第5,643,566号に提供されており、これらは参照により本願に組み込まれる。
【0041】
投与の特定経路によって、当該技術分野においてよく知られている種々の医薬として許容される担体を使用することが可能である。そのような担体は、糖類、デンプン、セルロースとその誘導体、麦芽、ゼラチン、滑石、硫酸カルシウム、植物油、人工油、ポリオール、アルギン酸、リン酸緩衝溶液、乳化剤、等浸透圧塩水、及び発熱物質を含まない水から選択し得る。
【0042】
投与形式は、錠剤、分散液、懸濁液、注射液、溶液、シロップ、トローチ、カプセル、座薬、エーロゾル、経皮パッチ等が含まれる。そのような投与形式には、徐放装置又はそのように作用するよう改変された他の形式のインプラントも含まれ得る。治療剤の徐放は、例えばアクリル樹脂、ワックス、高級脂肪族アルコール、ポリ乳酸又はポリグリコール酸を始めとする疎水性ポリマーとヒドロキシプロピルメチルセルロース等の特定のセルロース誘導体により治療剤をコーティングすることにより行うことができる。さらに、徐放は、
【0043】
他のポリマーマトリックス、リポソーム、及び/又はマイクロスフェアを使用することによっても行うことができる。
経口投与又は注射による投与に適した本発明の医薬組成物は、カプセル、におい袋又は錠剤等の別々のユニットとして、粉末又は顆粒として、若しくは溶液又は水性液体、非水性液体、水中油滴エマルション又は油中水滴液体エマルジョンの懸濁液として、与えられる。そのような組成物は薬剤術のいかなる方法によっても調製することが可能であるが、すべての方法は、cpn10及び/又はIFN−βを担体と関連付ける工程を含む。一般に、組成物はcpn10及び/又はIFN−βを液体担体又は細分した固体担体もしくはその両方と均質かつ十分に混合し、必要に応じて精製品を所望の体裁に成形することにより調製される。
【0044】
鼻咽腔スプレーや吸入器を介する等の肺への投与を支援する担体も当該技術分野においてよく知られているものとして想到される。
従ってMSの治療用のキットが想到されることは明白である。そのような場合、IFN−βとcpn10は担体又は希釈液と共に脱水した形で与えられ、注射の前に再水和される。代わりに、キットは錠剤又はカプセル形式のcpn10を備えてもよく、その場合、cpn10は経口投与であるのに対して、IFN−βは注射で投与するために担体又は希釈液に再水和される。
【0045】
前記キットに関して想到されるのは、医薬として有効量のcpn10とIFN−βの投与を支援するための、針、シリンジ、吸入器、エーロゾルキャニスタ等である。
【0046】
本発明をより詳しく理解するために、熟練者は以下の本発明を限定しない実施例を参照する。
実施例1
一般的材料
1.1 動物
クイーンズランド大学の中央動物飼育ハウス(Central Animal Breeding House,The University of Queensland)から8〜10週齢の雌ルイスラット(JC系)を得た。オーストラリア西部の動物資源センター(Animal Resources Centre,Western Australia)から8〜12週齢の雌SJL/Jマウスを得た。中央動物飼育ハウスから異系交配した成熟雌クワッケンブッシュ(Quackenbush)マウスを得た。
【0047】
すべての動物を、温度(22〜26℃)及び光(12時間明、12時間暗)制御室内でマウス/ラット用ペレット剤及び水の連続供給下に維持した。手術前に、ラット(平均体重170g)を、10mlのケタミン(100mg/ml)、6.2mlのキシラジン(20mg/ml)、0.8mlのアトロピン(600μg/ml)及び10mlの食塩水溶液(0.9%w/v)を含む腹腔内麻酔剤混合物(0.2ml)で麻酔した。動物のすべての研究は、クイーンズランド大学の動物実験倫理委員会(The University of Queensland Animal Experimentation Ethics Committee)から倫理的承認を得てオーストラリア国健康及び医学研究委員会(Australian National Health and Medical Resrach Committee)のガイドラインに沿って実施した。
【0048】
1.2 組換えcpn10(rcpn10)
国際公開WO95/15338号(本明細書に文献援用される)に記載のように、プラスミドpGEX−2T細菌発現系(アマーシャム ファルマシア バイオテク社、スウェーデン ウプサラ所在(Amersham Pharmacia Biotech,Uppsala,Sweden))を用いて、組換えヒトcpn10を調製した。手短に言えば、バッチ法を用い、グルタチオン−セファロース4Bゲル(アマーシャム ファルマシア バイオテク社)により細胞溶解物からグルタチオン−Sトランスフェラーゼ融合タンパク質を回収し、cpn10をトロンビンで切断し[0.05M トリス−HCL、pH8.0/0.15M NaCl/2.5mM CaCl2緩衝液、1000単位のトロンビン)(Sigma T6884;シグマ アルドリッチ社、米国ミズーリ州セントルイス所在(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO,USA));緩衝液1]、上清中で回収した(試料1)。次いで、ゲルを高塩濃度の緩衝液(0.05M トリス−HCl、pH8.0/2M NaCl;緩衝液2)で洗浄した(試料2)。リンパ球増殖アッセイ(以下参照)にかけるために、cpn10をResource RPCカラム(アマーシャム ファルマシア バイオテク社)上で精製した。コントロール標本としてブランクランを用いた。上清(cpn10 試料1)及び高塩濃度洗浄物(cpn10 試料2)のタンパク質濃度は、Lowryら,J.Biol.Chem.第193巻:265−75ページ,1951年の方法に従って推定した。これらの標本の純度は、15%トリス−トリシンゲル(Schagger & von Jagow,Analytical Biochem.,第166巻;368−79ページ,1987年)を用いてSDS−PAGEによって決定した。cpn10の濃度は、二抗体サンドイッチELISAによって決定し、生物活性は、ロゼット抑制試験(Cavanagh & Morton,Today’s Life Sciences,第8巻:24−7ページ,1996年)で決定した。pGEX−2T発現系を用いて調製したcpn10のアミノ酸配列は、N末端に追加のG−S−Mを有するヒトcpn10と同一であり、この分子はアセチル化されていない。
【0049】
1.3 化学合成cpn10
段階的固相法によりN末端アセチル化型の合成cpn10(scpn10)を調製した(Loveら,New Methods for the Study of Biomolecular Complexes,第510巻,Series C:Mathematical and Physical Sciences.Ens,Standing & Chemushevich編,NATO ASI Series,Kluwer Academic Publishers,Netherlands,171−9ページ,1998年)。
【0050】
1.4 組換えIFN−β
組換えマウスIFN−β(カルバイオケム−ノババイオケム社、米国カリフォルニア州ラ・ホーヤ所在(Calbiochem−Novabiochem Corp.,La Jolla,CA,USA))を、0.1%w/vBSAを含むPBS中に、1ml当たり48.4μgタンパク質(4.5×105単位)で加えた。組換えラットIFN−β(0.1mg/1×105単位;バイオソース インターナショナル社、米国カリフォルニア州カマリロ所在(BioSource International,Camarillo,CA,USA)をリンパ球増殖アッセイで試験した。ラットIFN−βを1.0mlの蒸留水に溶解させ、−70℃でアリコートにして凍結し、1回だけ融解した。賦形剤だけのものは、PBSと0.1%w/vのBSA(PBS/BSA;Sigma#9418)から構成されるものであった。
【0051】
1.5 ミエリンプロテオリピドタンパク質(PLP)
脳炎誘発性タンパク質PLPペプチドの残基139−151(HCLGKWLGHPDKF;Greerら,J.Immunol.,第156巻:371−9ページ,1996年)を段階的固相法で合成し、逆相HPLCで精製した。エレクトロスプレーマススペクトロメトリーにより純度を決定した(≧90%純粋)。
【0052】
実施例2
cpn10を用いたインビボ実験
2.1 EAEの誘発及び臨床的評価
Deiblerら,Prep.Biochem.,第2巻:139−165ページ,1972年の方法に従って、モルモットの脳からミエリン塩基性タンパク質(MBP)を調製した。0.9%のNaClw/v(塩類溶液)中のMBPを、4mg/mlの牛酪菌(Mycobacterium butyricum)を含む等量の不完全フロイントアジュバント中で乳化した。0日目、麻酔下に、ラットの1本の足の裏の肉球に0.1mlのエマルション(50μg/ラット)を接種した。10日目から、ラットを毎日計量し、臨床的徴候を監視した。尾、後脚及び前脚の衰弱度を別々に、Pender,J.Neurol.Sco.,第75巻:317−28ページ,1986年によって記載されているように、0(衰弱なし)〜4(完全麻痺)までのスケールで採点した。各検査日に、各ラットの総障害を記録し、結果を平均障害スコア/群として表した。ラットは、通常、20日目までに障害から回復したが、回復後数週間で再発が観察されるケースもあった。
【0053】
2.2 cpn10によるEAEの治療
接種日から17日目まで、1μg〜50μgの範囲の用量のcpn10又は適切な対照賦形剤を24時間又は48時間毎に投与してラットを治療した(表2参照)。ラットに、さらなる治療をせずに、cpn10試料1又は緩衝液1を投与した。cpn10試料2又は緩衝液2に1%正常ラット血清を添加した後、投与前に一晩PBS中で透析した。cpn10を腹腔内(ip)投与するか、又は湾曲した給餌針を用いて経口投与(O/F、経口給餌)し、各ラットの体重及び臨床スコアを20日目まで記録した。50μg/24時間を与えたラットは35日目まで調べた。
【0054】
EAEラットをcpn10の腹腔内又は経口投与により治療すると、10日目〜20日目の間に障害及び体重減少が用量依存的に軽減された(表2)。50μg/日を与えたラット群において、cpn10を腹腔内又は経口投与したラットでは障害の総体的な減少に差がなかった(図1及び図2)。これらの群のどちらにも再発は観察されなかったのに比べ、対照群では低レベルの再発が観察された。対照群と比べて、予測された体重減少の軽減が見られた(図3)。ラットがいったん回復期に入ってしまうと、体重の増加は対照マウスのものと一致した(図3)。
【0055】
試験したcpn10の用量では、動物は、EAEの臨床的徴候から完全には保護されなかったが、それ以上の用量の試験は、cpn10の供給が限られていたために不可能であった。また、この分子は、N末端に、血清担体タンパク質との結合に干渉する変異があるために理想的ではないと考えられた。しかし、高用量を用いると、臨床的スコア及び体重減少には有意な軽減が示された。治療を中止した17日目には、cpn10で治療したマウスに再発は観察されず、体重増加に及ぼす長期的作用はなかった。これらの結果は、IFN−βでラットを治療した後に観察された結果(Ruulsら,1996年、前掲)とは対照的である。
【0056】
2.3 cpn10で治療したラットはMBPに対するDTH反応の阻害を示した
ラットにMBPを接種してから、4匹ずつの4つの群に分けた。0日目から16日目まで、群1及び群4には賦形剤だけを与え、群2と群3にはcpn10(50μg/ラット/24時間)をそれぞれ経口及び腹腔内投与した。15日目に、エンジニアのマイクロメーター(ミツトヨ社(Mitutoyo))を用いてラットの両耳の厚さを測定し、次いで群2〜群4の両耳の付け根に10μlの塩水中20μgのMBPを注射した。群1のラットには塩類溶液だけを与えた。24時間後、再び両耳を測定し、引き算して耳の膨脹度を決定した。
【0057】
MBPで攻撃し、対照賦形剤を与えた群4のラットには実質的な耳の膨脹が観察された(図4)。MBP攻撃の前に、cpn10の経口投与による治療(群2)又は腹腔内投与による治療(群3)を受けたラットには、極く軽度の膨脹しか発生しなかった。対照賦形剤で治療し、塩類溶液で攻撃した群1のラットでは、耳の厚さに差がなかった。群4のラットには耳の付け根の周囲に重度の炎症を起こした赤い領域があったが、群2及び群3ではそれが目につかなかったので、視覚的にはこの差は極めて顕著であった。群1〜3の間には耳の膨脹度に有意な差がなかった。二重反復実験で同様な結果が得られた。
【0058】
これらの結果は、cpn10が、IFN−βと同様にTh1免疫応答を抑制することを立証するものであり、この点に関して、経口投与したcpn10も、腹腔内投与したcpn10と同様に有効であることを示している。
【0059】
2.4 白血球(WBC)の合計数及び百分率数
賦形剤だけ又はcpn10(50μg/ラット/24時間)の腹腔内投与もしくは経口投与によるEAEラット(n=3/群)の治療後16日目に、WBC数を得るために尾から血液試料を採取してEDTAに入れ、百分率数を得るためにライト・ギムザ染色した血液塗沫標本を調製した。
【0060】
結果が表5に示されている。3つの群間で、合計WBC数、リンパ球数又は好中球数に有意な差はなかった。二重反復実験で同様な結果が得られた。
これらの知見は、ラットに毎日50μgのcpn10を投与しても回復期中のラットの体重増加に影響を与えないことを示す知見と合わせて、cpn10には極めて明白な副作用はないことを示唆している。再び繰り返すが、これはIFN−βにはない特性である。ヒトでは、IFN−β治療は著しいリンパ球減少症を引き起こすことがあり、マウスでは、Soosら,J.Immunol.第155巻:2747−53ページ,1995年により、IFN−β(105U/注射)の注射後12時間でリンパ球数が31.7%減少することが確認された。
【0061】
実施例3
cpn10を用いたインビトロ実験
3.1 MBPに応答したリンパ節細胞の増殖に対するcpn10の効果
接種後10日目に、ラット2匹を麻酔、心臓穿刺して採血し、無菌条件下に各ラットの接種した四肢に排膿する膝窩リンパ節を除去した。リンパ節を細かく切断し、2mM L−グルタミン、25mM HEPES、50μM 2−メルカプトエタノール、1mM Na−ピルベート、50μg/mlのゲンタマイシン、1%熱失活ルイスラット血清(培養培地)を含むRPM1640(ICN社、米国カリフォルニア州コスタメサ所在(ICN,Costa Mesa,CA,USA))に懸濁した。破片を除去した後、懸濁されたリンパ球をプールし、2回洗浄して、細胞濃度を4×106細胞/mlに調整した。増殖アッセイで試験する前に、HPLCで精製したcpn10を48時間(1%正常ラット血清と共に)PBSに透析し、次いで、NAP−5カラム(アマーシャム ファルマシア バイオテク社)上の培養培地に移し、Millex−GV4 0.22μm Filter Unit(ミリポア社,米国マサチューセッツ州ベッドフォード所在(Mippipore,Bedford,MA,USA))を通過させてフィルター滅菌した。対照培地(HPLCからのブランクラン)も同様に治療した。フィルターを通した標本中のcpn10の濃度を二抗体サンドイッチELISAで確認した。
【0062】
100μg/ml(10.0μM)〜20ng/ml(2.0nM)の培養培地(図6参照)中でcpn10の希釈物を調製し、各希釈物から100μlずつを、96ウエル平底プレート(NuncionTMΔMicroWell Plates,ヌンク社、デンマーク ロスキルデ所在(Nunc,Roskilde,Denmarak))中に三部に分配した。MBP(50μl、80μg/ml培養培地)及び調製したリンパ節懸濁液(50μl;4×106細胞/ml)を各ウエルに添加した。コントロールウエル(各6ウエル)には、(a)MBPを含むがcpn10は含まない細胞か、(b)MBPもcpn10も含まない細胞を入れた。プレートを加湿雰囲気下に37℃、5%CO2で72時間培養した。最後の18時間の間に、各ウエルに0.5μCi[メチル−3H]チミジン(アマーシャム ファルマシア バイオテク社)を間欠的に加え、シンチレーションカウンター(EG&G ウォラック社、フィンランド ターク所在(EG&G Wallac,Turku,Finland))で含まれている放射能を測定した。cpn10を含むウエルに含まれていた放射能はcpn10を含まないウエルのものと同等であった。細胞の生存力を評価するためにパラレルプレートを用意した。72時間培養した後、培地上清を除去し、細胞をPBS(20μl)中0.1%w/vのトリパンブルーに再懸濁した。トリパンブルー排除試験により細胞の生存力を評価した。
【0063】
cpn10は、リンパ球のMBP誘発性増殖を用量依存的に抑制した(図6)。したがって、cpn10は、IFN−βと同じ様に、MBP反応性T細胞をダウンレギュレ−トすることができる(van der Meideら,J.Neuroimmunol.,第84巻:14−23ページ,1998年)。
【0064】
3.2 ロゼット抑制試験
先に記載の方法(Mortonら,1976年,前掲;Cavanagh & Morton,1996年,前掲)を用い、ロゼット抑制試験で、cpn10及びラット組換えIFN−β(バイオソース インターナショナル社、米国カリフォルニア州カマリロ所在)を活性について試験した。(1)0.5mlのPBS/0.01%BSAw/v(PBS/0.01%BSA)中1.0μgのcpn10及び(2)0.5mlのPBS/0.01%BSA中1.0μgのrIFN−βを含む溶液を調製し、次いで、NAP−5カラム上のハンクスの平衡塩溶液/0.01%BSA(HBSS/0.01%BSA)中に移した(cpn10及びIFN−βの最終濃度;1.0μg/ml)。試料をHBSS/0.01%BSA中で10-5から10-15まで10倍希釈し、各希釈物のロゼット抑制力価(RIT)を決定した。このアッセイで正の結果を生じる試料の最高希釈度としてcpn10力価(対数逆数試料希釈度)を記録した。
【0065】
このアッセイでは、cpn10試料(1.0μg/ml)が10-12の力価を示したのに対し、IFN−β試料はいずれの濃度においても活性を示さなかった。
【0066】
cpn10はTh1細胞に結合し、ロゼット抑制試験では活性である遺伝子制限サプレッサー因子を放出する。これらの結果は、IFN−βがTh1免疫応答を抑制する機構がcpn10のものとは異なることを示している。
【0067】
ラットモデルでの結果は、cpn10による治療が
(i) EAEを有する動物の障害及び体重減少を軽減し;
(ii) インビボでDTH反応を抑制し;かつ
(iii)インビトロで起脳炎(MBP反応性)細胞の活性をダウンレギュレートすることを示した。
したがって、cpn10はIFN−βと同じ様にTh1応答を抑制するであろう。しかし、この応答をダウンレギュレートする手段は異なるものと思われる。
【0068】
cpn10は、CD4+T細胞から特異的遺伝子制限サプレッサー因子を放出するcpn10の能力の測度であるロゼット抑制試験においては活性である。IFN−βはこのアッセイで活性を示さない。
【0069】
ラットにcpn10を投与しても合計リンパ球数には影響を与えないが、Soosら,1995年,前掲は、IFN−βで治療したマウスが、顕著なリンパ球減少症を発症することを示した。これは、IFN−β治療を受けている患者でも観察された。IFN−β治療とは異なり、cpn10による治療は、治療後の体重増加によって評価されるように、ラットの良好な生活状態に及ぼす長期的な作用は全くない。
【0070】
これらの結果は、IFN−βとcpn10の作用様式は異なるが、どちらもTh1免疫応答を抑制し、そうすることにより、EAEの症状を変え得ることを示している。EAEのマウスモデルは、EAEの治療におけるIFN−βとcpn10の相補的な組合せ療法を実施し得るかどうかを決定するために開発された。
【0071】
実施例4
マウスにおけるEAEの誘発
水と完全フロイントアジュバントとからなるエマルション(シグマ アルドリッチ社、米国ミズーリ州セントルイス所在;Greerら,1996年,前掲)中100μgのPLP p139−151及び400μgの結核菌(Mycobacterium tuberculosis)H37Ra(ディフコ ラボラトリーズ、米国ミシガン州デトロイト所在(Difco Laboratories,Detroit,MI,USA))を側腹部に皮下注射してSJL/JマウスにEAEを誘発させた。0日目と3日目に、各マウスに、0.3mlの0.9%w/vNaCl(食塩水溶液)中0.3μgの百日咳毒素((Bordetella pertussis)、リスト バイオロジカル ラボラトリーズ社、米国カリフォルニア州所在(List Biological Laboratories,Inc.CA,USA))をさらに静脈内注射した。8日目から毎日、マウスを以下のように臨床的に評価した:0=障害なし;1=尾の緊張の低下及びわずかにぎこちない歩行;2=尾の無緊張及び/又は中程度のぎこちない歩行及び/又は直立能力低下;3=四肢の衰弱;4=四肢麻痺;5=瀕死状態。マウスを42日目又は60日目まで調べた(表3参照)。各検査日に、各治療群の平均障害スコア/マウスを測定した。
【0072】
検査期間全体にわたって、合計平均障害スコア/マウス/群を計算した。この値は、初回攻撃時(8日目〜21日目)及び検査期間内に発生した再発期中(22日目〜42日目又は60日目;表4参照)の合計平均障害スコアとしても表した。2つの群のマウス(実験4及び5、表3参照)では、実験期間を60日目から68日目まで延長し、61日目から68日目までの合計平均障害スコアを記録した。
【0073】
実施例5
cpn10治療がマウスのEAEに及ぼす効果
複数の群のマウス(n=10/群)を、1日おきに腹腔内投与した2.5μg、5μg又は20μg/マウスの用量の組換えcpn10(rcpn10)で治療した。接種日(0日目)又は障害発症時(8日目)に治療を開始し、18日目又は20日目まで継続した(表3参照)。検査期間は表3に示されている。異なる用量の治療方式を用い、rcpn10を与えた群の合計平均障害スコアと、賦形剤だけを与えて同時に試験した群のものとを比較した(Mann−Whitney Rank Sum test,Sigma Stat 2.0,Jandel Scientific)。
【0074】
PLPペプチド139−151を接種した後、マウス(10匹/群)は慢性再発型EAEを発症した。臨床的徴候の発生は、8日目〜10日目に現れ、14日目〜16日目でピークに達し、21日目までに減少した(図8A)。マウスは不完全回復を経験し、その後、さらなる臨床的障害エピソードを有していた。0日目〜18日目又は20日目まで1日おきに2.5μg、5μg又は10μgのrcpn10で治療すると、賦形剤だけを与えた群に比べて、検査期間全体にわたって総障害が有意に抑制された(表3)。20μgのrcpn10/用量でも障害の抑制が生じたが、結果は賦形剤を与えた群のものと有意には異なっていなかった(表3)。接種時(0日目;表3)ではなく、障害発生時(8日目)に治療を開始した場合、治療群間に応答の差は観察されなかった。60日目以降では、rcpn10で治療した群のマウスにEAEの臨床的兆候が発生し、61日目から68日目までの合計平均障害スコアは賦形剤のみを与えたマウス群のものと有意には異なっていなかった(データは示さず)。
【0075】
実施例6
IFN−βとcpn10の組合せ療法
EAEの臨床的徴候の抑制にrcpn10とIFN−βが協同作用するかどうかを確認するために、rcpn10とIFN−βとを別々及び一緒に用いてマウス群を治療した(図8A及び図8B)。協同作用が存在する場合にそれを容易に観察し得るように次善用量のrcpn10及びIFN−βを選択した。4つの群のマウス(n=10/群)を試験した。接種日に、群2と群4には0日目から20日目まで1日おきに2.5μgのrcpn10を腹腔内投与し、群1と群3には賦形剤を投与した。IFN−βを塩類溶液中105単位/mlに希釈し、群3と群4のマウスには、10日目から20日目まで1日おきに50μlの塩類溶液中5,000単位(0.5μg;Yuら,1996年,前掲)を皮下注射した。群1と群2のマウスには、塩類溶液に1/4希釈した、PBS中0.1%BSA50μlを投与した。IFN−β製剤及び賦形剤製剤中に存在するBSA担体の投与によるアナフィラキシーを予防するために、18日目と20日目に、すべてのマウスを、体重1g当たり10μgの抗ヒスタミン(ピリラミン、シグマ−アルドリッチ社)の腹腔内投与により治療した(Joseら,J.Exp.Med.,第179巻:881−887ページ,1994年)。60日目まで上述のように毎日マウスを調べ、cpn10、IFN−β、cpn10+IFN−βを与えた群の結果と、賦形剤だけを与えた群の結果とを比較した(Mann−Whitney Rank Sum test)。この実験を二重反復した。
【0076】
EAEマウスを0日目から20日目まで1日おきに2.5μgのrcpn10で治療すると、賦形剤だけを与えたマウスと比べて、8日目から60日目までの検査期間中の合計平均障害スコアが抑制された(図8A、表4)。これらの結果に鑑み、本発明者らは、IFN−βがMSの周知療法であり、かつEAEに対して活性を示す(Yuら,1996年,前掲)ことを前提として、rcpn10とIFN−βの効力を比較した。10日目から20日目まで1日おきに5,000単位のIFN−βを投与したが、同検査期間中に有意な抑制は生じなかった(図8B、表4)。しかし、rcpn10とIFN−βとを組合せ投与すると、対照群と比較して、試薬を別々に投与したときよりも大きな抑制が生じた(図8A、図8B、表4)。障害に及ぼす抑制効果は、初回攻撃中(8日目〜21日目)よりも、再発期中(22日目〜60日目)の方が明らかであった。cpn10だけで治療してもIFN−βだけで治療しても初回攻撃中に有意な抑制は生じなかったが、組合せ治療は有効であった(図9、表4)。組合せ治療を用いることにより、再発期中の合計平均障害スコアの抑制は対照群と比べて強化された(表4)。二重反復実験で類似の結果が得られた(データは示さず)。
【0077】
予備実験(データは示さず)中、IFN−β製剤又は対照賦形剤中のBSAを皮下投与した後、10日〜12日の間に(すなわち、20日目から22日目までに)約50%のマウスが死亡した。これは、BSAに対する感作によるアナフィラキシーショックによるものと考えられた。上記実験では、18日目と20日目にマウスを抗ヒスタミンで治療(Joseら,1994年,前掲)すると、それ以上の死亡は発生しなかった。
【0078】
実施例7
組換えcpn10又は賦形剤で治療したマウスの組織学
接種後14日目に、2.5μgの組換えcpn10/マウスを1日おきに腹腔内投与した群からのマウス2匹と、賦形剤だけを与えた群からのマウス2匹を麻酔し、カルノフスキー固定液(McCombeら,1992年,前掲)を潅流させた。各群から潅流のために選択されたマウスは、その日の群の平均を表す障害スコアを有していた。脊髄を取り出し、Epox8112に包埋し、頚部(C5)、胸郭(T6)、腰部(L4)及び仙椎(S2)骨髄ならびに馬尾からの半薄型の切片をトルイジンブルーで染色した。切片を炎症及び脱髄の徴候について調べた。
【0079】
対照マウス及びrcpn10で治療したマウス由来の多重レベルの骨髄切片が図10に示されている。コントロールマウスの場合、実質内の軟膜下領域及び血管周囲領域に炎症が見られる。脱髄の徴候があり、頚部骨髄より仙椎及び腰部骨髄の方が重度であった。rcpn10で治療したマウスでは、特に実質に炎症が少なく、脱髄も少ないことが分る。
【0080】
実施例8
MBPに応答したインビトロリンパ節細胞の増殖
インビトロリンパ球増殖アッセイで、IFN−β、組換えcpn10及び化学合成cpn10の活性を決定した。1%自己ラット血清を含むrcpn10(200μg/ml)及びscpn10(100μg/ml)を、使用前に3日間、リン酸緩衝塩類溶液(PBS;0.05M リン酸ナトリウム緩衝液、pH7.4/0.15M 塩化ナトリウム)に透析し、NAP−5カラム(アマーシャム ファルマシア バイオテク社)上の培養培地(2mM L−グルタミン、25mM HEPES、50μM 2−メルカプトエタノール、1mM ピルビン酸ナトリウム、50μg/ml ゲンタマイシン、1%熱失活自己ラット血清を含むRPM1640)中に移し、Millex−GV4 0.22μm Filter Unit(ミリポア社、米国マサチューセッツ州ベッドフォード所在)を通過させてフィルター滅菌した。対照賦形剤も同様に治療した。ルイスラットにMBPを接種してMBP−EAEを誘発させた。10日目に、2匹のラットの接種した四肢に排膿する膝窩リンパ節を取り出し、培養培地中で細胞懸濁液(4×106/ml)を調製した。図11に示されているように、MBP(20μg/mlの最終濃度)及び0.1〜50μg/mlの範囲の最終濃度のIFN−β又はcpn10の存在下に、96ウエル平底プレート中でリンパ節細胞(2×105/ウエル)を三部にして試験した。対照ウエル(各6ウエル)には、(a)MBPは含むがcpn10は含まない細胞と、(b)MBPもcpn10も含まない細胞を入れた。プレートを37℃、5%CO2下に72時間培養した。最後の18時間の間に、各ウエルに0.5μCi[メチル−3H]チミジン(アマーシャム ファルマシア バイオテク社)を間欠的に加え、含まれている放射能を測定した。結果を、刺激率、すなわち、MBPを含むウエルの平均/MBPを含まないウエルの平均として表した。種々の希釈度のcpn10を含む場合の刺激率と、cpn10を含まない場合の刺激率とを比較した(Student’s t test)。
【0081】
72時間の培養後に、rcpn10、scpn10及びIFN−βはすべてMBP−EAEラット由来のリンパ節細胞のMBP誘発性増殖を抑制した(図11)。IFN−βが最も効力があり、1.9μg/ml(96nM)の濃度で細胞増殖を50%阻害したのに比べ、このレベルの阻害を達成するのに、scpn10では11μg/ml(1.1μM)、rcpn10では28μg/ml(2.8μM)の濃度であった。
【0082】
実施例9
cpn10用バイオアッセイであるロゼット抑制試験
cpn10用のバイオアッセイであるロゼット抑制試験、(Cavanagh & Morton,1996年,前掲)で、scpn10、rcpn10及びIFN−βを活性について試験した。rcpn10とscpn10(50μg)は、ハンクスの平衡塩類溶液/0.01%BSA(HBSS/BSA)中で10-5から10-15まで10倍希釈した。IFN−β(0.5μg/ml)は、HBSS/BSA中で10-13まで10倍希釈した。クワッケンブッシュマウス由来の脾臓細胞を用いて、各希釈物のロゼット抑制力価(RIT)を測定した。このアッセイで正の結果を得るための試料の最高希釈度として限界用量(対数逆数試料希釈度)を記録した。
【0083】
これらの実験において、rcpn10及びscpn10は、ロゼット抑制試験において全く同一の反応を示した(図12)。これとは対照的に、IFN−βは、このアッセイでは、どの濃度においても活性を有していなかった。
【0084】
実施例10
cpn10はマウスの抗原誘発性アナフィラキシー死を予防する
実施例6に記載の実験に鑑み、アナフィラキシーショックであると思われるものに起因するマウスの死をさらに調査した。4つの群のマウスにPLP p139−151を接種した。0日目に、2つの群にはcpn10を与え、2つの群にはコントロール賦形剤を与えた。10日目に、各cpn10群の1つにIFN−β又はPBS/BSAを与え、各コントロール群の1つにIFN−β又はPBS/BSAを与えた。
【0085】
表5に示されているように、PBS/BSA中のIFN−β注射又はPBS/BSA注射を開始してから8日目〜12日目の間に、BSAは与えたがcpn10は与えなかった群では4/9及び6/10のマウスが死亡したが、BSAとcpn10とを与えた群では3/10及び0/9のマウスが死亡した。これらのマウスは、BSA担体タンパク質の投与によるアナフィラキシーのために死亡したものと考えられる。結論として、cpn10を投与されたマウスは、BSAに対する免疫感作によって引き起こされるアナフィラキシーショックから保護されたのに対し、IFN−βはこの保護を与えなかった。また、cpn10を投与したときの投与部位の炎症も少なかった。
【0086】
実施例11
総括
上記実施例に示された結果から、cpn10がSJL/Jマウスにおいてミエリンプロテオリピドタンパク質によって誘発されるEAEの臨床的徴候を抑制することが示された。このモデルは、ヒトのMSの臨床的経過によく似た慢性の再発型EAEである。MSに罹患している患者は、PLPペプチドに対するT細胞応答を強化した(Greerら,Brain,第120巻:1447−60ページ,1997年)が、これはさらに、PLPによって誘発されたEAEがMSの良いモデルであることも示唆している。実験期間中、障害の抑制に最も有効な用量は、1日おきに投与された5μg及び10μgであった。用量をこれより高くすると効力が低下した。高用量での同様な効力低下が、先に、ラットにおいて、移植部位に局所的にcpn10を投与すると同種異系皮膚移植の生存時間を延長し得ることを示す研究で観察されている。EAEマウスにおけるcpn10の抑制効果は、初回攻撃時よりも再発期の方がより明らかであった。障害の抑制が初回攻撃時より再発期に強力になる理由は、cpn10がこの期間に活性である天然サプレッサー機構を高めるか、又は再発が初回エピソードとは病態生理学的に異なるからかも知れない。慢性EAEの後期エピソード中、他の抗原に対しても免疫応答が広がって抗体応答が強化され、その結果、後期エピソードの病因論が初回攻撃のものとは異なるのかも知れない。この研究でも、cpn10とIFN−βがそれらの能力を協同作用させてEAEを抑制することが示された。cpn10とIFN−βを一緒に投与すると、どちらかを単独で投与するよりも強力に障害を抑制する。これは、障害の再発期に特に明白であったが、いつでも、cpn10とIFN−βとはそれらの能力を協同作用させて障害を抑制したし、アンタゴニスト作用は観察されなかった。
【0087】
ロゼット抑制試験において、cpn10とIFN−βとは異なる反応を示し、リンパ球増殖アッセイは、それらが作用機構を異にすることを示唆している。ロゼット抑制試験は、EPFが最初に発見されたアッセイであり(Mortonら,1976年,前掲)、依然としてEPF及びcpn10用のバイオアッセイである。ロゼット抑制試験におけるEPFの作用は、リンフォカイン、EPF−S1及びEPF−S2によって仲介され、EFPがマウスやヒトのCD4+細胞に結合した後で順次誘発される(Rolfeら,1988年,前掲;Rolfeら,1989年,前掲)。これらのリンフォカインは、遅延型過敏症反応を抑制する能力のためにサプレッサー因子と称された(Rolfeら,1988年,前掲)。リンフォカインはその能力が遺伝子制限されている。EPF−S1(Mr 14−18,000)の制限は、ネズミH−2のI領域及びヒトのHLA−DRにマッピングされているが、EPF−S2(Mr −55,000)の制限は、Igh領域に局在している(Rolfeら,1988年,前掲;Rolfeら,1989年,前掲;Rolfeら,1995年,前掲)。rcpn10で治療した後の臨床的徴候の抑制は、初回攻撃後に治療を中止したにもかかわらず、60日目まで維持された。これは、長期抑制型活性の誘発を示唆している。IFN−βはロゼット抑制試験においては活性ではなく、これは、IFN−βがリンパ球活性のダウンレギュレーションに同じサプレッサー−インデューサー経路を使っていないことを示している。
【0088】
IFN−βは、MBPに応答したインビトロMBP活性化リンパ球の増殖を抑制する能力においてはcpn10よりかなり活性が高い。IFN−β(Arnason,Neurology,第43巻:641−643ページ,1993年)もcpn10も共に活性化T細胞によるIFN−γの産生を抑制する。IFN−βはIFN−γの分泌を阻害し、MS患者の欠陥サプレッサー活性を高め、抗原提示細胞表面でIFN−γにより誘発されるクラスII主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)抗原の発現を阻害する(The IFNB Multiple Sclerosis Study Group,Neurology,第43巻:655−661ページ,1993年)。cpn10は、CD4+細胞、CD8+細胞及び単核細胞の亜集団に結合する。cpn10が活性化CD4+T細胞の亜集団に結合すると、IFN−β集団の抑制が生じる。cpn10が免疫調節作用を誘発させる手段及びこれがどのようにdpn10のEAEにおける障害抑制能力に関連するかは未だ解明されていない。
【0089】
これらの研究により、cpn10が慢性EAEを抑制し得、かつマウスのEAEの臨床的徴候を抑制するIFN−βの能力を高め得ることが示された。本発明者らによって解明されたcpn10とIFN−βの作用の異なる機構が、これらの作用物質に、EAE及びMSの協同療法としての新たな前途を開いたことは極めて重大である。確かに文献によって示唆されたように、もしcpn10及びIFN−βが類似の免疫抑制機構を介して作用するならば、EAEモデルで観察し得る協同的又は相乗作用的効果は存在し得ないであろう。それに対し、本明細書に呈示されているcpn10とIFN−βの異なる作用機構及びEAEデータは、cpn10とIFN−βがヒトのMSの有用な組合せ療法となるという提案について論理的な根拠を提供している。
【0090】
IFN−βはヒトの多発性硬化症のための疾病改変療法として広範囲に用いられている。IFN−βは臨床的再発速度を低下させ、障害の持続性進行の発生時期を遅らせ、かつ再発性−寛解性多発性硬化症に罹患している患者の新規なMRI病変の数を低減させる(European Study Group on Interferonβ−1b,Lancet,第352巻:1491−1497ページ,1998年)。しかし、患者によっては、治療を開始してから2年以内に障害の持続性進行を経験するものもあり、これは、IFN−βの効力をIFN−βの効力と合わせた他の可能性のある療法と同時に調査する研究がさらに必要であることを示唆している。
【0091】
要約すると、本明細書に呈示した動物モデルの結果は、cpn10がヒトMSの治療にIFN−βと組合わせて使用するための有力な候補であることを示唆している。第1に、cpn10は、EAE/MS症状の誘発においてIFN−βと相乗作用するようである。第2に、cpn10とIFN−βの組合せ療法の中止後にEAEの再発が著しく減少することは、万が一副作用のために一時的にIFN−βの投与を中止するようなことがあっても、この組合せ療法が有用な治療法となり得ることを示唆している。第3に、cpn10は、典型的にはIFN−βを含む医薬組成物中に存在する(BSAなどの)担体タンパク質抗原に対するアナフィラキシー反応の可能性を低減させるようである。
【0092】
本明細書に詳細に説明されている発明は、当業者による改変及び変更が可能であるが、そのような改変及び変更は本明細書に記載されている発明の広範な精神及び範囲内に包含される。
【0093】
(表の簡単な説明)
表1
MSの治療に現在使用されているIFN−β調製品のリスト。sc=皮下注射、im=筋内注射。
表2
組換えcpn10による治療は、LewisラットにおけるMBP−EAEの平均総臨床スコアを下げる。0日目にラットの1つの後足の肉球にMBPを接種した。cpn10又は賦形剤のみを、0日目から始まる17日目まで、示した時間間隔で、腹腔内(ip)又は経口投与した(1群当たりラット7匹)。臨床上の徴候を10日目から20日日まで毎日記録し(方法の箇所を参考)、表中の群の試験を35日目まで続け(*で示す)、1ラット当たりの平均臨床スコアを各群について決定した。試験群の1ラット当たりの平均総臨床スコアを、同時に試験した賦形剤のみを受けた群の1ラット当たりの平均総臨床スコアと比較した(Mann−Whitney Rank Sum Test)。
【0094】
表3
rcpn10による治療は、SJL/JマウスにおけるPLP−EAEの総EAE障害スコアを下げる。EAEはPLPペプチド139−151によりSJL/Jマウスで誘発させた(グリアー(Greer)ら、1996年、J.Immunol.156:171−179)。マウス(1群当たりn=10)は、rcpn10又は賦形剤で治療し、8日目から42日目又は60日目まで臨床的に評価した。結果は、同時に試験した賦形剤のみを受けた群と比較したrcpn10治療群における、試験期間にわたる総平均障害スコア/マウスとして記録した(Mann−Whitney Rank Sum test)。
【0095】
表4
組換えcpn10(rcpn10)とIFN−βの組み合わせ治療は、SJL/JマウスにおけるPLP−EAEの総臨床スコアを下げる。EAEはPLPペプチド139−151によりSJL/Jマウスで誘発させた。マウス(1群当たりn=10)は、rcpn10、IFN−β、又は両方の組み合わせ、若しくは賦形剤のみで上述のように治療した。マウスを8日目から60日目まで、8日目から21日目まで、及び22日目から60日目まで臨床的に評価した。結果は、試験期間にわたる各群の1マウス当たりの総平均臨床スコアとして記録した。rcpn10、IFN−β、及びrcpn10+IFN−βで治療した群の結果を、同時に試験した賦形剤のみを受けた群の結果と比較した(Mann−Whitney Rank Sum Test)。
【0096】
表5
SJL/Jマウスにおける抗原誘導アナフィラキシー死の予防。0日目にEAEをPLPペプチド139−151により4群のSJL/Jマウスに誘発させた。0日目に、群1と群2は2.5μgのcpn10/マウス/48時間腹腔内投与を受け、群3と群4は賦形剤のみを受けた。10日目に、群1と群3は0.5×104単位のマウスIFN−β(PBS/0.1%BSAに溶解)を受け、群2と群4はPBS/BSAを受けた。8日目から、マウスの体重を測定し、EAEの臨床上の徴候を毎日調べた。データは、PBS/0.1%BSAに溶解させたIFN−β又はPBS/BSAのみによる治療を開始した後8〜12日目に死亡した各群のマウスの数を、各群のマウス総数の分数として示す。群1と群2対群3と群4の死亡率を統計比較すると、カイ二乗分析を用いたp値が<0.02であることが明らかとなった。
【表1】
Figure 0004691257
【表2】
Figure 0004691257
【表3】
Figure 0004691257
【表4】
Figure 0004691257

【図面の簡単な説明】
【図1】MBPの接種日に開始した、EAEラットへの組換えcpn10の腹腔内投与。値は平均障害平均標準誤差(SEM)を示す。cpn10治療により、総障害スコアは有意に減小した(p=0.001;Mann−Whitney Rank Sum Test、Sigma Stat2.0、Jandel Scientific)。
【図2】MBPの接種日に開始した、EAEラットへの組換えcpn10の経口投与。値は平均障害平均標準誤差(SEM)を示す。cpn10治療により、総障害スコアは有意に減小した(p=0.005;Mann−Whitney Rank Sum Test、Sigma Stat2.0、Jandel Scientific)。
【図3】MBPの接種日に開始した、EAEラットへの組換えcpn10 pGEXの腹腔内(i/p)又は経口(O/F)投与。値は1群当たりの体重減少(%)を示す(10日目の体重と比較)。
【図4】MBPの接種日にラットへ組換えcpn10を腹腔内又は経口投与するか、若しくはラットをコントロール賦形剤で治療した、該ラットにおけるMBPに対する遅延型過敏症(DTH)反応。4群のラット(1群当たりn=4)を0日目にMBPで接種し、0日目から16日目まで毎日経口投与(O/F、群2)又は腹腔内投与(3群)によりcpn10(50μg/ラット)を受けさせるか、又は腹腔内により賦形剤のみ(1群と4群)を受けさせた。15日目に、ラットの両耳の耳の厚さを測定し、群2〜4の両耳の底部に10μl食塩水に溶解した20μgMBPを注入した。群1には食塩水を注射した。24時間後、再び両耳を測定し、引き算により耳の膨張を測定した。群4と比較して***p<0.001;**p<0.003であった(Student’s t test)。
【図5】MBPの接種日(0日目)に開始した、ラット(n=3)への組換えcpn10の毎日の腹腔内投与又は経口投与が、白血球総数及び差に及ぼす影響。計数は(標準偏差で示す)16日目に得た。
【図6】インビトロにおける組換えcpn10によるMBP刺激由来のリンパ球増殖の抑制。リンパ球はMBPの接種後に10日目にラットの排膿リンパ節から回収した。cpn10の希釈液は、プレートで最終濃度を与えるように調製され、100μlを三つ組に分配した。各ウェルに50μlの洗浄したリンパ球(4×106/ml)と50μlのMBP(80μg/ml)とを加えた。コントロールウェルは、:a)MBPを有するがcpn10は有さない細胞、又はb)MBPを有さずcpn10も有さない細胞、のいずれかを含んでいた。プレートを72時間インキュベートし、最後の18時間の間は0.5μCi[メチル−3H]チミジンを適用した。cpn10が有るか無い状態でインキュベートした細胞に取り込まれた放射能(cpm+標準偏差)を測定することにより、増殖を評価した。***p<0.001;**p=0.005であった(Student’s t test)。
【図7】賦形剤のみで治療したマウスと比較した、組換えcpn10で治療したSJLマウスにおけるEAEの平均障害スコアの減小。EAEは、PLPペプチドp139−151によりマウス(1群当たりn=10)で誘発させ、cpn10(10μg/マウス/48時間又は2.5μg/マウス/48時間)又は賦形剤のみを0日から20日まで腹腔内投与した。8日目から、臨床上の徴候を毎日監視し、各マウスの総障害を記録した。結果を、平均障害スコア/群として示す。
【図8】賦形剤のみで治療したマウスと比較した、a.組換えcpn10(rcpn10)又はrcpn10+IFN−β、b.IFN−β又はrcpn10+IFN−βで治療した、SJL/JマウスにおけるPLP−EAEの平均障害スコア(±平均標準誤差)。EAEは、PLPペプチドを0日目に接種することにより誘発させた。マウス(n=10/群)はa.0日目から20日目まで一日おきに腹腔内にrcpn10(2.5μg/マウス)、b.10日目から20日目まで一日おきに皮下にIFN−β(5×103単位/マウス)、又は両方の組み合わせを受けた。コントロールマウスは賦形剤のみを受けた。8日目から60日目まで、臨床上の徴候を毎日監視し、各群の平均障害スコアを記録した。結果を平均障害スコア/群として示す。
【図9】初期攻撃と再発期間の間に組換えcpn10、IFN−β又は両方の組み合わせで治療した、SJL/JマウスにおけるPLP−EAEの総平均障害スコア(±平均標準誤差)。EAEは、PLPペプチドを0日目に接種することにより誘発させた。マウスは、rcpn10腹腔内(0日目から20日目まで一日おきに2.5μg/マウス)、IFN−β皮下(10日目から20日目まで一日おきに5,000単位/マウス)、又は両方の組み合わせで治療した。コントロールマウスは賦形剤のみを受けた。臨床上の徴候を8日目から21日目までと22日目から60日目まで監視した。rcpn10とIFN−βの組み合わせ治療により、初期攻撃の間、コントロール群と比較して障害が有意に抑制された(*p=0.050)、再発期間の間でもrcpn10又はrcpn10+IFN−βによってコントロール群と比較して障害が有意に抑制された(**p=0.030、***p=0.014)。
【図10】14日目にサンプル採取した、(A)コントロールマウスと(B)組換えcpn10(0日目から20日目まで一日おきに2.5μg/マウス、腹腔内)で治療したマウスの仙骨脊髄の切片。コントロールマウス(A)では、多くの繊維に炎症(大きな矢印)と髄鞘脱落(小さな矢印)の顕著な領域が存在した。cpn10治療マウス(B)では、軟膜下領域に炎症(大きな矢印)が観察されたが、髄鞘脱落の証拠は殆ど無かった。
【図11】インビトロにおけるrcpn10、合成cpn10(scpn10)及びIFN−βによるMBP刺激由来のリンパ球増殖の抑制。リンパ球はMBPの接種10日後にラットの排膿リンパ節より回収し、(2×105細胞)を、MBP(20μg/ml)及びrcpn10、scpn10、IFN−βと、示した濃度でインキュベートした。コントロールウェルは、a)MBPを有するがcpn10はない細胞、又はb)MBPを有さずcpn10もない細胞、のいずれかを含んでいた。プレートを3日間インキュベートし、最後の18時間は0.5μCi[メチル−3H]チミジンを適用した。細胞に取り込まれた放射能によって増殖を評価し、刺激率として示した(MBPを有するウェルの平均/MBPを有しないウェルの平均;標準偏差を示す)。cpn10又はIFN−βを有するウェルの結果を、cpn10又はIFN−βを有しないウェルの結果と比較した。***p<0.001;*p=0.05であった(Student’s t test)。
【図12】ロゼット抑制試験におけるIFN−β、合成cpn10(scpn10)と組換えcpn10(rcpn10)の活性。cpn10調製物(50μg/ml)とIFN−β(05μg/ml)は10倍に希釈し、各希釈液のロゼット抑制力価を決定した。限界用量(対数逆数試料希釈度、標準偏差を示す)を、測定に陽性の結果を与えるサンプルの最も高い希釈度として記録した。

Claims (27)

  1. 多発性硬化症(MS)を治療するための医薬組成物を製造するための方法であって、医薬として有効量のシャペロニン10(cpn10)及びインターフェロン−ベータ(IFN−β)と医薬として許容される担体又は希釈液とを配合する工程を備える、前記方法。
  2. 前記多発性硬化症(MS)の治療がMSの再発予防のための治療である請求項1に記載の方法。
  3. 前記IFN−βは単独で投与された時はMSの治療に有効ではない請求項1または2に記載の方法。
  4. IFN−βとcpn10が同時に投与されるように前記医薬組成物が構成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. IFN−βとcpn10が別々に投与されるように前記医薬組成物が構成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記医薬組成物は注射の形態である、請求項4に記載の方法。
  7. cpn10が経口投与されるように前記医薬組成物が構成される、請求項5に記載の方法。
  8. IFN−βが注射により投与されるように前記医薬組成物が構成される、請求項5又は請求項7に記載の方法。
  9. 医薬として有効量のcpn10及びIFN−βが5−60mgのcpn10を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  10. 医薬として有効量のcpn10及びIFN−βが10−30mgのcpn10を含む、請求項9に記載の方法。
  11. 医薬として有効量のcpn10及びIFN−βが1−10の百万国際単位(MIU)のIFN−βを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  12. 医薬として有効量のcpn10及びIFN−βが4−6MIUのIFN−βを含む、請求項11に記載の方法。
  13. MSを治療するための医薬組成物であって、医薬として有効量のシャペロニン10(cpn10)及びインターフェロン−ベータ(IFN−β)と医薬として許容される担体又は希釈液とを含む医薬組成物。
  14. 前記IFN−βは単独で投与された時はMSの治療に有効ではない請求項13に記載の組成物。
  15. 医薬として有効量のcpn10及びIFN−βが5−60mgのcpn10を含む、請求項13または14に記載の組成物。
  16. 医薬として有効量のcpn10及びIFN−βが10−30mgのcpn10を含む、請求項15に記載の組成物。
  17. 医薬として有効量のcpn10及びIFN−βが1−10MIUのIFN−βを含む、請求項13または14に記載の組成物。
  18. 医薬として有効量のcpn10及びIFN−βが4−6MIUのIFN−βを含む、請求項17に記載の組成物。
  19. 医薬として有効量のシャペロニン10(cpn10)及びインターフェロン−ベータ(IFN−β)と医薬として許容される担体又は希釈液とを備えた多発性硬化症(MS)の治療用のキット。
  20. 前記キットは、単独で投与された時はMSの治療に有効ではない量のIFN−βを含む請求項19に記載のキット。
  21. 前記IFN−βは脱水した形をしており、使用の際に前記医薬として許容される担体又は希釈液によって再水和される、請求項19または20に記載のキット。
  22. 前記cpn10は脱水した形をしており、使用の際に、前記医薬として許容される担体又は希釈液によって再水和される、請求項19〜21のいずれか一項に記載のキット。
  23. 前記cpn10は錠剤又はカプセルの形をしている、請求項19〜22のいずれか一項に記載のキット。
  24. 医薬として有効量のcpn10及びIFN−βが5−60mgのcpn10を含む、請求項19〜23のいずれか一項に記載のキット。
  25. 医薬として有効量のcpn10及びIFN−βが10−30mgのcpn10を含む、請求項19〜24のいずれか一項に記載のキット。
  26. 医薬として有効量のcpn10及びIFN−βが1−10MIUのIFN−βを含む、請求項19〜25のいずれか一項に記載のキット。
  27. 医薬として有効量のcpn10及びIFN−βが4−6MIUのIFN−βを含む、請求項19〜26のいずれか一項に記載のキット。
JP2000594486A 1999-01-20 2000-01-20 シャペロニン10及びβ−インターフェロンによる多発性硬化症の治療方法 Expired - Fee Related JP4691257B2 (ja)

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
AUPP8239A AUPP823999A0 (en) 1999-01-20 1999-01-20 A treatment
AUPP8239 1999-01-20
AU8239 1999-01-20
PCT/AU2000/000032 WO2000043033A1 (en) 1999-01-20 2000-01-20 CHAPERONIN 10 AND β-INTERFERON THERAPY OF MULTIPLE SCLEROSIS

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2002535286A JP2002535286A (ja) 2002-10-22
JP2002535286A5 JP2002535286A5 (ja) 2007-02-15
JP4691257B2 true JP4691257B2 (ja) 2011-06-01

Family

ID=3812443

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000594486A Expired - Fee Related JP4691257B2 (ja) 1999-01-20 2000-01-20 シャペロニン10及びβ−インターフェロンによる多発性硬化症の治療方法

Country Status (12)

Country Link
US (1) US20090214473A1 (ja)
EP (1) EP1150703B1 (ja)
JP (1) JP4691257B2 (ja)
KR (1) KR100694011B1 (ja)
AT (1) ATE313332T1 (ja)
AU (2) AUPP823999A0 (ja)
CA (1) CA2361081C (ja)
DE (1) DE60024967T2 (ja)
DK (1) DK1150703T3 (ja)
ES (1) ES2255484T3 (ja)
PT (1) PT1150703E (ja)
WO (1) WO2000043033A1 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
MXPA06008082A (es) * 2004-01-16 2007-03-21 Cbio Ltd Modulacion de la secrecion de quimioquina y de citoquina inducible por el receptor similar al de toll por medio de chaperonina 10.
BG66458B1 (bg) 2005-03-21 2014-10-31 Иван Иванов Средство за конкурентно инхибиране на ендогенен гама интерферон
CA2620729A1 (en) 2005-08-31 2007-03-08 Cbio Limited Modified chaperonin 10
WO2007045046A1 (en) * 2005-10-20 2007-04-26 Cbio Limited Treatment of hypersensitivity
JP2009528297A (ja) * 2006-03-02 2009-08-06 シーバイオ リミテッド 抗原提示細胞の機能の調節による免疫応答の制御
BG66517B1 (bg) 2008-04-08 2016-02-29 Tigo Gmbh Супресор на ендогенния човешки гама - интерферон
US9359421B2 (en) 2008-04-08 2016-06-07 Tigo Gmbh Suppressor of the endogenous interferon-gamma
BG1430U1 (bg) * 2010-06-25 2011-04-29 Иван ИВАНОВ Фармацевтично средство
BG67190B1 (bg) 2017-03-29 2020-11-16 Tigo Gmbh Анти-гама мутантен протеин срещу ендогенния човешки гама интерферон

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1997019686A1 (de) * 1995-11-30 1997-06-05 Dr. Rentschler Arzneimittel Gmbh & Co. Verwendung einer kombination aus pentoxifyllin mit typ i-interferonen zur behandlung der multiplen sklerose
JPH09506431A (ja) * 1993-11-30 1997-06-24 ザ・ユニバーシティ・オブ・クイーンズランド チャペロニン10
JPH10500109A (ja) * 1994-05-10 1998-01-06 イミユロジク・フアーマシユーチカル・コーポレーシヨン 多発性硬化症のための組成物および治療方法

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09506431A (ja) * 1993-11-30 1997-06-24 ザ・ユニバーシティ・オブ・クイーンズランド チャペロニン10
JPH10500109A (ja) * 1994-05-10 1998-01-06 イミユロジク・フアーマシユーチカル・コーポレーシヨン 多発性硬化症のための組成物および治療方法
WO1997019686A1 (de) * 1995-11-30 1997-06-05 Dr. Rentschler Arzneimittel Gmbh & Co. Verwendung einer kombination aus pentoxifyllin mit typ i-interferonen zur behandlung der multiplen sklerose

Also Published As

Publication number Publication date
AU2527100A (en) 2000-08-07
JP2002535286A (ja) 2002-10-22
DE60024967D1 (en) 2006-01-26
ES2255484T3 (es) 2006-07-01
US20090214473A1 (en) 2009-08-27
AU771867B2 (en) 2004-04-01
DE60024967T2 (de) 2006-08-17
EP1150703A1 (en) 2001-11-07
AUPP823999A0 (en) 1999-02-11
WO2000043033A1 (en) 2000-07-27
CA2361081C (en) 2010-09-21
PT1150703E (pt) 2006-05-31
DK1150703T3 (da) 2006-05-29
EP1150703B1 (en) 2005-12-21
ATE313332T1 (de) 2006-01-15
EP1150703A4 (en) 2004-11-10
KR100694011B1 (ko) 2007-03-12
KR20020002376A (ko) 2002-01-09
CA2361081A1 (en) 2000-07-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20090214473A1 (en) Combination chaperonin 10 and beta-interferon therapy for multiple sclerosis
US20210244789A1 (en) Compositions and methods for treatment of intracellular damage and bacterial infection
Tuohy et al. Modulation of the IL-10/IL-12 cytokine circuit by interferon-β inhibits the development of epitope spreading and disease progression in murine autoimmune encephalomyelitis
US7723290B2 (en) Compositions and methods for modulating the immune system
JP4804626B2 (ja) 免疫レギュレータ
Gately Interleukin-12: a recently discovered cytokine with potential for enhancing cell-mediated immune responses to tumors
KR0159046B1 (ko) 포유류의 자기면역 포도막망막염의 치료 또는 예방방법
US20110294736A1 (en) Compounds and methods for the treatment of autoimmune and inflammatory disease
JPH09511745A (ja) 経口寛容および/またはタイプiインターフェロンを用いた自己免疫疾患の治療
Di Rosa et al. Lack of Th2 cytokine increase during spontaneous remission of experimental allergic encephalomyelitis
KR20140114443A (ko) Hiv 치료
KR100424212B1 (ko) 1형인터페론을포함하는자가-면역질환치료용조성물
JP2010527354A (ja) 免疫調節化合物によるアレルギー性疾患の治療
Jung et al. Therapeutic effect of transforming growth factor-beta 2 on actively induced EAN but not adoptive transfer EAN.
Zaheer et al. Clinical course of myelin oligodendrocyte glycoprotein 35–55 induced experimental autoimmune encephalomyelitis is aggravated by glia maturation factor
KR101324647B1 (ko) 다발성신경경화증의 치료 또는 예방용 조성물 및 이의 스크리닝 방법
RU2166959C2 (ru) Способ лечения аутоиммунных заболеваний с использованием интерферонов типа i
JPH02209812A (ja) 乾癬治療用医薬組成物
JPH11510806A (ja) 免疫抑制治療のためのインターロイキン10およびシクロスポリンの併用
JPH09510737A (ja) 化学療法剤を増強するためのil−4の使用
Batbayar et al. CAJMS F Ik W
Pichugina et al. Specific features of γ-interferon system in patient with frequent recurrences of herpes simplex (from medical practice)
TW201725047A (zh) 熱休克蛋白於治療異位性皮膚炎之用途
MXPA98001091A (en) Combined use of interleukin-10 and cyclosporine for immunosupres therapy

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20061220

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20061220

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100119

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100419

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20100622

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100930

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20101228

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110125

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110221

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140225

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees