【発明の詳細な説明】
免疫抑制治療のためのインターロイキン10およびシクロスポリンの併用発明の分野
本発明は、移植片/組織拒絶、対宿主性移植片病および自己免疫疾患の抑制方
法に関する。特に、本発明は、免疫抑制治療のためのインターロイキン10および
シクロスポリンの併用に関する。発明の背景
Tリンパ球により産生されるサイトカインであるインターロイキン10(IL-10
)は、まず、マウスおよびヒトTリンパ球によるインターフェロンγ(IFN-γ)
およびIL-2の合成を阻害するその能力により同定された。Fiorentinoら、1989,
J.Exp.Med.170:2081-2089; Mooreら、1990,Science 248:1230-1252; Vieiraら
、1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1172-1177。IL-10は後に、B細胞(O'Garr
aら、1990,Internat.Immunol.2:821-828)およびマクロファージ(Fiorentin
oら、1991,J.Immunol.147:3815-3822)により産生されることが示された。
IL-10は、種々の細胞型に対して広範な効果を発揮する。IL-10は、T細胞およ
び単球により産生される広いスペクトルのサイトカインの合成を阻害する。IFN-
γおよびIL-2の合成の阻害に加えて、IL-10はまた、モノカインであるIL-1α、I
L-1β、IL-6およびTNFαの産生を阻害することが示されている。de Waalら、199
1,J.Exp.Med.174:1209-1217。IL-10は、マウスの胸腺細胞およびT細胞(MacN
eilら、1990,Immunol.145:4167)および肥満細胞(Thompson-Snipesら、1991,
J.Exp.Med.173:507-512)に対する増殖促進効果を有し、そしてIL-10は細胞傷
害性T細胞の発達を刺激する(ChenおよびZlotnik,1991,J.Immunol.147:528-
533)。
マウスおよびヒトIL-10は、エプスタイン−バーウイルス中のオープンリーデ
ィングフレームによりコードされるタンパク質との高い配列類似性を有する。ウ
イルス性IL-10と名付けられるこのオープンリーディングフレームの発現産物も
また、サイトカイン合成を阻害する能力を有する。Mooreら、1990,Science 248
:1230-1252; Vieiraら、1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1172-1177。
IL-2、IFN-γおよびTNF-αを含むいくつかのサイトカインは、リンパ球混合反
応(MLR)を調節することが示されている。Shevach,1985,Annu.Rev.Immunol.3
:397; Fidelusら、1982,Transplantation 34:308; Tadmoriら、1985,J.Immuno
l.134:4542-4550; Tadmoriら、1986,J.Immunol.136:1155-1162; Novelliら、
1991,147:1445-1450; Landolfoら、1985,Science 229:176-180; Shalabyら、1
988,J.Immunol.141:499-505。IFN-γがMLR移植片拒絶において重要な役割を担
い得ることが報告されている。Novelliら、1991,J.Immunol.147:1445-1450; L
andolfoら、1985,Science 229:176-180。IFN-γまたはTNFに対する抗体(Shala
byら、1988,J.Immunol.141:499-505)は、MLR誘導性増殖をブロックすること
が示されている。これらの研究において、IFN-γに対する抗体が、ヒト系におけ
るMLRならびにマウスにおけるインビトロおよびインビボの同種異系移植片反応
性を抑制したことが見出された。
国際公開第WO 93/17698号は、組織移植片拒絶を抑制するためのIL-10の使用を
開示する。ヒトIL-10およびウイルス性IL-10の両方の使用が記載される。
菌類Tolypocladium inflatum Gamsおよび他の不完全菌類により産生される環
状ペプチドであるシクロスポリン(シクロスポリンA;CSAとしても知られる)
は、サイトカイン阻害能力を有する。シクロスポリンによるIL-2産生の阻害(Sh
evach,1985,Annu.Rev.Immunol.3:397; Fidelusら、1982,Transplantation
34:308)またはCD2の抗体(Tadmoriら、1985,J.Immunol.134:4542-4550)が
、MLRにより誘導されるT細胞増殖を低下させることが見出されている(Tadmori
ら、1986,J.Immunol.136:1155-1162)。CSAはインビボおよびインビトロ細胞
媒介性応答を抑制し(Fidelusら、1982,Transplantation 34:308-311)、そし
て現在大部分の器官移植免疫抑制プロトコルにおいて使用されている。CSAは、
同種異系移植物(皮膚、心臓、腎臓、膵臓、骨髄、小腸および肺を含む)の生存
を延長し、そしてまた対宿主性移植片病(GVHD)および遅延型過敏症を抑制する
ことが知られている。しかし、CSAについての問題は器官毒性である。高用量のC
SAは、強くそして不可逆性の腎毒性ならびに肝毒性および心臓毒性を引き起こす
。従っ
て、より低いレベルのCSAの投与を可能にし、それによりこの薬剤の毒性効果を
減少させる免疫抑制処置方法についての必要性が存在する。発明の要旨
本発明は、このような方法を提供することにより、この必要性を満たす。より
詳細には、本発明は、有効量のインターロイキン10およびシクロスポリンを、組
織移植片拒絶を経験しているかまたは組織移植片拒絶の危険がある患者に投与す
る工程を包含する、組織または器官拒絶を抑制するための方法を提供する。
本発明はさらに、有効量のインターロイキン10およびシクロスポリンを、対宿
主性移植片病を患うかまたは対宿主性移植片病についての危険がある患者に投与
する工程を包含する、対宿主性移植片病を抑制するための方法を提供する。
なおさらに、本発明は、有効量のインターロイキン10およびシクロスポリンを
、自己免疫疾患を患う患者に投与する工程を包含する、自己免疫疾患を処置する
ための方法を提供する。
IL-10およびCSAの組み合わせを含む薬学的組成物もまた、本発明により提供さ
れる。図面の簡単な説明
添付の図面の図は、ヒトIL-10およびシクロスポリンの組み合わせによる、MLR
におけるT細胞増殖の相乗的抑制を示す。発明の詳細な説明
本明細書において引用されるすべての参考文献は、その全体が参考として本明
細書に援用される。
主要器官の不全は、哺乳動物における疾患および死亡の主な原因である。同種
の別の哺乳動物から得られた正常器官での移植による、疾患器官の外科手術的置
換は、救命手順であり得る。不運なことに、正常な身体免疫防御機構は、このよ
うな器官移植物を外来として認識し、そしてこれを攻撃し、その結果移植片の不
全および拒絶を生じる。このように、同種異系組織および同種異系器官の移植に
対する主要な障害は、移植物レシピエントによる移植片拒絶である。ドナー組織
に対するレシピエントまたは宿主の細胞媒介性免疫応答は、拒絶プロセスにおけ
る重要な役割を担う。この応答は以下の2つの重要な様相を有する:(i)主要組
織適合遺伝子複合体(MHC)に関してのドナー細胞またはドナー組織の「外来」
としての認識;および(ii)宿主細胞による外来細胞の破壊。このプロセスの一部
として、多数の宿主細胞が増殖し、そして細胞傷害性−−すなわち適切な抗原を
提示しているドナー細胞を殺傷する能力−−を獲得する。従って、細胞媒介性免
疫は、以下の2つの測定可能な機能:増殖、および細胞傷害性活性に関して説明
され得る−−Dubeyら、131章、Roseら編、「Manual of Clinical Laboratory Im
munology」第3版(American Society of Microbiology,Washington,D.C.,198
6)を参照のこと。
細胞培養技術の開発は、インビボ免疫化プロセスを模倣するインビトロ方法の
確立を導き、従ってインビトロにおける細胞媒介性免疫の評価のための手段を提
供した。移植に関して特に有用であるのは、リンパ球混合反応(MLR)またはリ
ンパ球混合培養である。基本的には、MLRは、レスポンダー(responder)細胞の
サンプルと、不活化されたスティミュレーター(stimulator)細胞のサンプルと
を同時培養する工程(スティミュレーター細胞はレスポンダー細胞に関して同種
異系である、すなわちスティミュレーター細胞はレスポンダー細胞が採取される
個人とは異なる個人から得られる)、およびレスポンダー細胞の増殖応答を測定
する工程を包含する。より詳細には、MLRは、適切な培養系においてレスポンダ
ーリンパ球(宿主細胞を模倣する)とスティミュレーターリンパ球(ドナー細胞
を模倣する)とを混合する工程からなり、その増殖および/または転写機構は、
例えば、照射またはDNA合成インヒビター(例えば、マイトマイシンC)での処
理などにより無力化された。スティミュレーター細胞は、それらはなおその刺激
機能を実行し得るが、レスポンダー細胞から測定される応答を覆い隠し得るいか
なる他の機能からも阻害されるように不活化される。すなわち、スティミュレー
ター細胞は、それらは複製し得ないが、それらの抗原プロセッシング機構は機能
的なままであるように処理される。
細胞が数日間培養された後、多数の異なる測定が、レスポンダー細胞のスティ
ミュレーター細胞に対する反応性の程度を定量するためになされ得る。通常、レ
スポンダー細胞において測定される応答は、細胞増殖である。レスポンダー細胞
の増殖は、標準的プロトコルを用いて、トリチウム化チミジンの取り込みにより
測定され得る。例えば、2.5〜10×104のスティミュレーター細胞が、96ウェル丸
底組織培養プレート中の2.4×104同種異系CD4+(レスポンダー)細胞に添加され
、そして適切な培地中で4日間インキュベートされる。インキュベーション後、
細胞は1μCiのトリチウム化チミジンで6時間パルスされ、次いでそれらは回収
され、そして例えばシンチレーション計数によりトリチウム化チミジンの取り込
みについて測定される。
IL-10およびCSA、またはIL-10およびCSAアナログの併用/同時投与がT細胞増
殖の相乗的抑制を引き起こすことが予想外に見出された。驚くべきことに、この
相乗的効果は、比較的低レベルのこれらの薬剤が一緒に使用された場合のみ見ら
れる。本発明は本明細書中以下でIL-10およびCSAの併用に関して論じられるが、
CSAのアナログもまたT細胞増殖の相乗的抑制を引き起こすためにIL-10と組み合
わされ得ること、およびこのような組み合わせが本発明の実施における使用のた
めに意図されることが理解されるべきである。
IL-10およびCSAの組み合わせは、T細胞応答に関連する病状(特に、自己免疫
疾患、対宿主性移植片病(GVHD)および組織移植片拒絶)の抑制において有利に
使用され得る。本発明は、同種異系移植片拒絶およびGVHDのような細胞媒介性反
応を抑制するために使用され得る。さらに、IL-10の多様な生物学的活性を考慮
すると、IL-10およびCSAの同時使用は、同種異系骨髄移植物におけるGVL(移植
片対白血病)を支持し得る。
本発明は、皮膚、心臓、腎臓、膵臓、骨髄、小腸、肺などの同種異系移植物の
の拒絶を防止するか、またはその生存を延長するために;例えば、慢性関節リウ
マチ、狼瘡、糖尿病、多発性硬化症および重症筋無力症のような自己免疫疾患を
処置するために;そしてCSAが使用されていた他の疾患(例えば、乾癬)を処置
するために使用され得る。IL-10の活性により、CSAはより低い量で使用され得、
それによりこの薬物の使用に通常伴う重篤な副作用を回避または軽減し得る。
移植物のレシピエントは、腎臓移植物、肝臓移植物、心臓移植物、心肺移植物
、
骨髄移植物、角膜移植物などのレシピエントであり得る。移植される組織自体は
代表的にはヒト起源であるが、アカゲザル、ヒヒまたはブタのような別の種由来
でもあり得る。本明細書において使用する用語「組織」は、個々の細胞(例えば
、血球(その始原体(progenitor)および前駆体(precursor)を含む))なら
びに膵臓細胞、ならびに固形器官などを含む。用語固形器官は、心臓、皮膚、肝
臓、肺、腎臓、膵臓、腸、内分泌腺、膀胱、骨格筋などを意味する。
本発明の方法は、予防的に使用され得るか、または確立された自己免疫疾患、
GVHDまたは移植片拒絶の処置のために使用され得る。本発明の方法による処置に
適切な個体は、GVHDまたは組織拒絶を発達する危険性のある(素因のある)任意
の個体、すなわち移植患者、または臨床的症状を示している個体を含む。予防的
使用は、移植前の投与、および疾患/拒絶の発症を防止するかまたは遅らせるた
めの、GVHDまたは移植片拒絶のいかなる臨床的症状の非存在下における移植後投
与を含む。
本発明の実施において、IL-10およびCSAは患者に「同時に」投与される。同時
投与は、IL-10およびCSAが、(i)同時に(必要に応じて共通のキャリア中に2つ
を一緒に処方することにより)、または(b)共通の処置スケジュールの過程の間
の異なる時間にのいずれかで患者に投与されることを意味する。後者の場合、2
つの化合物は意図される効果を達成するに十分に近い時間で投与される。代表的
には、一方の薬剤が第1の薬剤のほぼ半減期以内に投与される場合、2つの薬剤
は同時に投与されるとみなされる。有効薬剤は、単一の薬学的組成物中で一緒に
、または別々に投与され得る。両方の有効薬物(すなわち、IL-10およびCSA)は
、患者において治療的に有効であるに十分な組み合わせのレベルで存在するべき
である。IL-10およびCSAの投与経路は、同一であり得るか、または異なり得る。
一般に、IL-10およびCSAは、薬学的キャリア中に有効量のIL-10およびCSAを含
む薬学的組成物として投与される。薬学的キャリアは、本発明の組成物を患者に
送達するために適切な、任意の適合性の非毒性物質であり得る。
本明細書において使用するインターロイキン10またはIL-10は、(a)国際公開第
91/003249において開示される成熟(すなわち、分泌リーダー配列を欠いている
)IL-10の公知の配列に実質的に同一のアミノ酸配列を有し;そして(b)天然I
L-10と共通の生物学的活性を有するタンパク質であると定義される。本発明の目
的のために、グリコシル化された(例えば、酵母またはCHO細胞のような真核生
物細胞において産生された)IL-10およびグリコシル化されていない(例えば、
化学的に合成されたか、またはE.coliにおいて産生された)IL-10の両方は等価
であり、そして交換可能に使用され得る。IL-10の生物学的活性を保持するムテ
インおよび他のアナログ(ウイルス性IL-10を含む)もまた含まれる。
本発明における使用のために適切なIL-10は、多数の供給源から得られ得る。
例えば、IL-10は、このタンパク質を分泌し得る活性化されたT細胞の培養培地
から単離され得る。さらに、IL-10またはその活性フラグメントは、当該分野に
おいて公知の標準的な技術を使用して化学的に合成され得る。例えば、Merrifie
ld.1986,Science 233:341-347およびAthertonら、Solid Phase Peptide Synth
esis,A Practical Approach,1989,IRL Press,Oxfordを参照のこと。
好ましくは、タンパク質またはポリペプチドは、IL-10ポリペプチドをコード
する単離された核酸を使用して、組換え技術により得られる。分子生物学の一般
的方法は、例えば、Sambrookら、1989,Molecular Cloning,A Laboratory Manu
al,第2版,Cold Spring Harbor,New YorkおよびAusubelら(編)Current Pro
tocols in Molecular Biology,Green/Wiley,New York(1987および定期的な補
遺)により記載されている。適切な配列は、標準的な技術を使用して、ゲノムラ
イブラリーまたはcDNAライブラリーのいずれかから得られ得る。IL-10をコード
するDNA構築物はまた、確立された標準的な方法により(例えば、自動化DNA合成
機において)合成的に調製され、次いで精製され、アニールされ、連結され、そ
して適切なベクター中にクローン化され得る。Athertonら、1989。ポリメラーゼ
連鎖反応(PCR)技術が使用され得る。例えば、PCR Protocols: A Guide to Met
hods and Applications,1990,Innisら(編),Academic Press,New Yorkを参
照のこと。
DNA構築物は、全体のIL-10の天然配列またはそのホモログを含み得る。用語「
ホモログ」は、IL-10をコードするDNA配列の天然変異体またはDNA配列の改変に
より生成された変異体もしくはフラグメントを示すことが意図される。DNA配列
の適切な改変の例は、別のアミノ酸配列を生じさせないヌクレオチド置換、ま
たは異なるアミノ酸配列を生じさせ、それゆえおそらく異なるタンパタ質構造を
生じさせるヌクレオチド置換である。可能な改変の他の例は、1つもしくはいく
つかのヌクレオチドの配列への挿入、配列のいずれかの末端における1つもしく
はいくつかのヌクレオチドの付加、またはいずれかの末端におけるもしくは配列
内の1つもしくはいくつかのヌクレオチドの欠失である。天然タンパク質の活性
と類似のIL-10活性を示す(例えば、T細胞増殖抑制に関して)タンパク質をコ
ードする任意の相同なDNA配列が、請求される発明における使用のために意図さ
れる。
宿主細胞をトランスフェクトするために使用されるヌクレオチド配列は、種々
の所望される特性を有するIL-10ムテインおよびフラグメントを生じさせるため
に、上記のように改変され得る。このような改変されたIL-10は、一次的レベル
において(例えば、アミノ酸の挿入、置換、欠失および融合により)天然に生じ
る配列から変化し得る。好ましくは、アミノ酸置換は保存的である;すなわち、
塩基性アミノ酸残基は他の塩基性アミノ酸残基で置換されるなど。これらの改変
は、最終的な改変されたタンパク質鎖を生成するために、多数の組み合わせで使
用され得る。
アミノ酸配列変異体は、種々の考えられている目的(血清半減期を増加させる
こと、精製または調製を容易にすること、治療的効力を改善すること、および治
療的使用の間の副作用の重篤度または発生を少なくすることを含む)を有して調
製され得る。アミノ酸配列変異体は、通常は事前に決定された天然において見出
されない変異体であるが、他は翻訳後変異体(例えば、グリコシル化変異体また
はポリエチレングリコール(PEG)に結合されたタンパク質など)であり得る。
このような変異体は、それらがIL-10の生物学的活性を保持している限り本発明
において使用され得る。
好ましくは、ヒトIL-10がヒトの処置のために使用されるが、ウイルス性もし
くはマウスIL-10またはいくつかの他の哺乳動物種由来のIL-10が代わりに使用さ
れ得る。最も好ましくは、使用されるIL-10は、組換えヒトIL-10である。ヒトIL
-10の組換え生産は、米国特許第5,231,012号に記載されている。ヒトおよびマウ
スIL-10の調製は、国際公開第WO 91/00349号に記載されている。エプスタインバ
ー由来のウイルス性IL-10(BCRFIタンパク質)のクローン化および発現は、Moor
eら(Science 248:1230,1990)に開示され、そしてEP 0 506 836に記載されて
いる。
CSAは、従来的に実施されているような方法で投与され得る。例えば、Goodman
およびGilmanのThe Pharmacological Basis of Therapeutics,第7版,1985,1
299頁を参照のこと。例えば、CSAは12.5%アルコールを含む100 mg/mlの経口溶
液として、および静脈内投与のために33%アルコールおよび650mgのポリオキシ
エチル化ひまし油(polyoxyethlated castor oil)を含む50 mg/mlの溶液として
静脈内投与用に提供され得る。静脈内投与され得る場合、CSAは、正常生理食塩
水または水中5%デキストロースの50 mgから20〜100 mgの希釈溶液として、数
時間の期間にわたる緩やかな注入により与えられ得る。静脈内用量は、代表的に
は経口用量の1/3である。最も好ましくは、CSAの投与は、カプセルまたは錠
剤形熊のいずれかで経口である。このような処方物は、有効化合物および適切な
キャリア(これは、1つ以上の補助的成分を含み得る)を会合させる工程を包含
する任意の適切な薬学の方法により調製され得る。一般に、処方物は、有効化合
物を液体または細かく分割された固体キャリア、あるいはその両方と一様にそし
て密接に混合し、次いで、必要であれば、得られる混合物を成形することにより
調製され得る。例えば、錠剤は、有効化合物を、必要に応じて1つ以上の補助的
成分と共に含有する粉末または顆粒を圧縮または成形することにより調製され得
る。圧縮された錠剤は、適切な機械において、必要に応じて結合剤、潤滑剤、不
活性希釈剤、および/または表面活性分散剤(単数または複数)と混合された、
自由流形態の化合物(例えば、有効化合物を含有する粉末または顆粒)を圧縮す
ることにより調製され得る。成形された錠剤は、適切な機械において、不活性液
体結合剤で湿らされた粉末化化合物を成形することにより作製され得る。CSAの
調製は、米国特許第4,117,118号に開示されている。本発明の実施において使用
もとで市販されている。
T細胞増殖の相乗的抑制はまた、IL-10およびCSAのアナログを使用して観察さ
れ得る。本明細書において用いられる「CSAアナログ」は、合成アナログおよびC
SAと同一の活性/作用機構を示す任意の薬剤を含むように意味される。このよう
な薬剤は、例えば、FK-506を含む。FK-506は、Streptomyces tsukubaenis no.99
93から単離されたマクロライド免疫抑制剤である。EP 0 184 162(Fujisawa)。
IL-10の投与は好ましくは、腹腔内、静脈内、皮下または筋肉内の注入の注射
によるか、または他の受容可能な全身的方法による非経口である。筋肉内または
皮下注射による投与が最も好ましい。あるいは、IL-10は、移植可能なまたは注
射可能な薬物送達システムにより投与され得る。例えば、Urquhartら、1984,An
n Rev.Pharacol.Toxicol 24:199; Lewis編,1981,Controlled Release of Pest
icides and Pharmaceuticals,Pleum Press,New York,New York:米国特許第3
,773,919号および同第3,270,960号を参照のこと。経口投与もまた、IL-10を胃腸
のプロテアーゼから保護する周知の処方物を使用して実施され得る。
このような薬物の非経口投与のために有用な組成物は周知である。例えば、Re
mington's Pharmaceutical Science,11版,1990,Mack Publishing Co.,Easto
n,PAを参照のこと。非経口投与される場合、IL-10は代表的には、薬学的キャリ
アとともに単位投与量注射可能形態(溶液、懸濁液、乳濁液)で処方される。こ
のようなキャリアの例は、正常生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、
およびハンクス液である。固定油およびオレイン酸エチルのような非水性キャリ
アもまた使用され得る。好ましいキャリアは5%デキストロース/生理食塩水で
ある。キャリアは、等張性および化学的安定性を増強する物質(例えば、緩衝液
または保存剤)のような少量の添加物を含有し得る。IL-10は、好ましくは、凝
集物および他の供給源タンパク質を実質的に含まない精製された形態で、約5〜
20μg/mlの範囲の濃度で処方される。ヒト血清アルブミンのような任意の周知の
キャリアタンパク質もまた、所望であれば添加され得る。
IL-10はまた、例えば、組織への直接DNA注射、組換えウイルスベクターまたは
リン脂質およびトランスフェクトされた細胞の移植の使用を含む、標準的な遺伝
子治療技術により送達され得る。例えば、Rosenberg,1992,J.Clin.Oncol.10:
180を参照のこと。
IL-10およびCSAは、免疫抑制効果を提供するに有効な量で、ヒト患者に同時に
投与される。本明細書において用いられる「有効量」は、GVHD、自己免疫疾患ま
たは組織拒絶を減少させるかまたは防止するに十分な量を意味し、そして共同し
て作用する2つの薬剤の組み合わされた効果をいう。一方または両方の薬物は、
例えば、単独で使用される場合、意図される目的のためには至適以下であると考
えられる用量で使用され得る。特定の患者についての有効量は、移植される組織
の状態、型、および量、患者の全体的な健康および年齢、投与経路、観察される
副作用の重篤度などのような要因に依存して変化し得る。IL-10の有効用量は、
代表的には、約0.1〜25μg/kg/日、好ましくは約1〜16μg/kg/日の範囲である
。CSAの有効用量は、代表的には、約1〜14mg/kg/日、より好ましくは約1〜8m
g/kg/日の範囲である。好ましくは、投与は、移植と同時に、または移植の2〜
4時間前に開始される。しかし、投与は、移植前の24時間の期間内または移植後
の24時間の期間内に開始し得る。投与が移植後任意の時間に開始されて、移植片
拒絶を防止するために患者に投与される他の化合物を置換または補充し得ること
もまた意図される。投与の長さは変化し得、そしていくつかの場合においては、
移植片拒絶プロセスを制御するために、患者の残りの寿命にわたって継続し得る
。
実施例
本発明は、以下の非限定的実施例により例証され得る:
一般的な材料および方法
以下に記載する実施例において、以下のプロトコルおよび手順は以下に従った
:培地
細胞を、10%ウシ胎児血清(Hazleton Biologics,Inc.,Lenexa,KS)、2mM
L-グルタミン(JRH Biosciences,Lenexa,KS)、80μgmlゲンタマイシン(Sig
ma Chemical Co.,St.Louis,MO)または100μ/mlペニシリン−ストレプトマイ
シン(JRH Biosciences,Lenexa,KS)を補充したRPMI 1640(JRH Biosciences,
Lenexa,KS)中で調製および培養した。ELISA
サイトカイン産生測定のためのELISAキットを、R&D systems,Minneapolis,M
Nから購入した。ヒトPBMCおよび単球精製
ヒト血液サンプルをヘパリン処理したバキュテナー(vacutainer)中に採集し
た。赤血球(RBC)の除去を容易にするために、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中
6%デキストラン(JRH Biosciences,Lenexa,KS)2mlを各バキュテナーに添
加し、混合し、そして室温で30〜45分間放置した。上部の軟膜層を慎重に除去し
、そして細胞を遠心分離した(300×g、10分間、4℃)。細胞を、15 mlのPBS中
で3回洗浄した。末梢血単核細胞(PBMC)を、FICOLL-PAQUE(Pharmacia,Pisca
taway,NJ)勾配を使用して単離した。10 mlの細胞を4mlのFICOLL-PAQUEの上部
に重層し、遠心分離し(1400×g、20分間、室温)そして界面に沈降している細
胞を採集した。これらのPBMCをPBS中で3回洗浄し、計数し、そしてMLR実験にお
ける使用のための適切な培地中に再懸濁した。実験のいくつかにおいて、末梢血
単球を、10%ウシ胎児血清(FBS)を補充した培地中でPBMCをインキュベートし
、そして107のPBMCを各々含むT-75フラスコ中、5%CO2雰囲気下、37℃で1時間
接着させることにより、調製した。非接着性細胞を除去した後、フラスコを温培
地で十分に洗浄し、次いで冷PBSと氷上で15分間インキュベートした。次に、接
着性単球をピペッティングを繰り返すことにより回収し、洗浄し、そして完全培
地中に再懸濁した。CD14モノクローナル抗体での染色およびフローマイクロフル
オロメトリー(flow microfluorometric)(FMF)分析により測定した細胞純度
は、92%CD14+であった。トリパンブルー排除により測定した生存度は、>95%
であった。リンパ球混合反応
スティミュレーターPBMCを50μlのマイトマイシンC(Sigma Chemical Co.,S
t.Louis,MO)で20分間37℃で処理した。レスポンダーPBMCおよびスティミュレ
ーター細胞を、96ウェルマイクロタイタープレート(Becton Dickinson,Lincol
n Park,NJ)に各ウェル当たり1×105細胞で、サイトカインまたは抗体ととも
に、総容量200μlで、3連で添加した。培養物を37℃で空気中5%CO2とともに
6日間インキュベートした。次いで、培養物を1ウェル当たり1μCiの[3H]TdR
(15.6 CI/mmol,NEN,Boston,MA)で16時間パルスした。細胞を、96ウェルセ
ルハーベスター(Skatron,Inc.,Sterling,VA)を使用してフィルター上に採
集し、そしてベータカウンター(Pharmacia LKB Nuclear Inc.,Gaithersburg,
MD)で計数した。免疫蛍光およびフローサイトメトリー
MLR由来の上清を取り出し、そして非接着性PBMCを採集した。接着性細胞を5m
M EDTAとの4℃、20分間のインキュベーションにより採集し、そして穏やかに掻
き取った。細胞を合わせ、300×gで10分間遠心分離し、そして氷冷PBSで3回洗
浄した。生存細胞をNeubaeur計数チャンバーを使用するトリパンブルー排除によ
り計数し、PBS中に1×107細胞/mlに再懸濁し、そして100μlのヒトIgG(1mg/
ml)を各ウェルに添加し、そして水上でインキュベートした。30分後、100μl/
ウェルのFBSを添加し、そしてプレートを500×gで10分間遠心分離した。上清を
除去し、そして細胞を、適切な量の、FITCに結合されたマウス抗ヒトモノクロー
ナル抗体中に再懸濁した。二重染色されたサンプルについては、細胞を、20μl
の、各表面マーカーに対するマウス抗ヒトモノクローナル抗体とともに同時にイ
ンキュベートした。全ての容量を、PBSを用いて40μlとした。アイソタイプコン
トロール抗体を、特異的マーカーと同一の濃度で使用した。サンプルを30分間4
℃でインキュベートし、FBSを添加し(100μl/ウェル)、そしてサンプルを以前
に記載のように遠心分離した。細胞を50%FBSを含有する200μlアリコートのPBS
で3回洗浄し、そして1mlの、0.01%のアジ化ナトリウムを含有するPBS中に再
懸濁した。フローサイトメトリー分析をFACScanフローサイトメーター(Becton
Dickinson Immunocytometry Systems(BDIS),San Jose,CA)を使用して実施し
、そして生存細胞をヨウ化プロピジウム排除に基づいてゲートした。平均チャン
ネル蛍光および特異的マーカーについての%ポジティブを、LYSIS IIソフトウエ
ア(BDIS)を使用して測定した。B細胞および単球の精製については、PBMCをそ
れぞれCD20またはCD14で染色し、そしてポジティブ選択によりソートした。ソー
トした細胞の純度は、3回の実験において95%と98%との間の範囲であった。ヒトPBMCからの抗原提示細胞の枯渇
ヒト血液から精製したPBMCを、FICOLL勾配によりヘパリン処理したチューブ中
に採集した。血液をPBSで1:1希釈した。30 mlの希釈した血液を50 ml円錐チ
ューブ中の20 mlのFicollの上部に重層し、そして2,000 rpmで30分間スピンした
。
界面の細胞を採集し、そして培地(10%FCS/RPMI)で3回洗浄した。
プラスチック接着抗原提示細胞(APC)を、PBMCを1%ヒト血清(AB型)中に
1×106細胞/mlで再懸濁することにより除去し、そして37℃で30分間インキュベ
ートした。浮遊した細胞を採集し、そして培地(10% FCS/RPMI)中に入れた。
ナイロンウール接着APCを以下のように除去した:
10 mlシリンジに1.5gのナイロンウール(Polysciences,Inc.,カタログ番号
18369)を充填し、そしてオートクレーブした。3方向ストップコックおよび22
ゲージ針をシリンジに装着し、そしてカラムを50 mlの予め温めた培地で洗浄し
た。5×107細胞/mlのプラスチック接着APCの細胞懸濁液を、予め温めた培地で
調製した。細胞懸濁液を添加する直前に、ウールを5mlの予め温めた培地でリン
スし、カラムを乾燥させ、そしてストップコックを閉じた。細胞(5〜10×107
)を添加した。細胞をカラムに浸透させ、そしてストップコックを閉じた。さら
なる0.5 mlの培地を添加し、そしてカラムを37℃で45分間維持した。カラムを20
mlの予め温めた培地で洗浄することにより非接着細胞をチューブ中に採集し、
1秒当たり1滴で溶出した。
免疫抑制効果の実証
IL-10の主要な特性は、Th 1型(IL-2、IFN)および単球(TNF-α)のサイトカ
インの産生をブロックすることにより細胞媒介性免疫を阻害する能力である。こ
れらのサイトカインは移植片受容性および対宿主性移植片病(GVHD)の主要なレ
ギュレーターであることが知られているので、ヒトIL-10(hIL-10)のT細胞の
同種異系刺激に対する効果を研究した。IL-10 はMLR誘導性増殖を抑制する
同種異系抗原により誘導されるT細胞増殖に対するIL-10の効果を評価するた
めに、初代一方向MLR(ここで、1人のドナー由来の末梢血単核細胞(PBMC)を
無関係なドナーのマイトマイシン処理したPBMCと、IL-10の存在下および非存在
下で同時培養する)において引き起こされる増殖応答に対するIL-10の効果を検
討した。
16の無関係なドナー由来のPBMCを使用する20の独立した実験において、IL-10
(100〜200 U/ml)はMLR誘導性増殖を強力に抑制した。これらの研究において、
同種異系刺激は強力な増殖応答を誘導し、そしてIL-10による抑制は、MLRの刺激
指数にかかわらず、65%と100%との間の範囲であった。表1はIL-10に対するモ
ノクローナル抗体がMLRのIL-10誘導性抑制を中和したことを示す。これらの培養
物において観察された抑制はIL-10に帰因した。なぜなら、そのアイソタイプコ
ントロールではなく中和モノクローナル抗体の添加が、IL-10の抑制効果を逆転
させたからである。
aMLR培養物を上記のように行った。ヒトIL-10(100 U/ml)、19B1(IL-10に対す
るラットモノクローナル抗体)およびそのアイソタイプコントロールラットIgG1
を2.5 U g/mlで使用した。b
データは3連測定の3HTdR取り込みM±SDであり、そして3回の実験の代表であ
る。IL-10 がB細胞株により誘導されるMLRにおける増殖を阻害し得ないことは、TNF- α産生の阻害の欠如に関連する
IL-10の作用機構の初期の研究により、IL-10が正常単球上に提示される特異的
可溶性抗原により誘導されるヒトT細胞クローンの活性化を抑制するが、抗原が
EBV-LCL B細胞株により提示された場合は抑制しないことが示された。de Waal
ら、1991,J.Exp.Med.174:915-924。これらの研究において、EBV-LCLが使用さ
れた場合、IL-10がT細胞活性化を抑制し得ないことが、それらがB細胞である
という事実に起因したのか、これらの細胞が異なる亜集団を表したという可能性
、および/またはそれらがEBV形質転換B細胞であったという可能性に起因した
の
かどうかは明らかではなかった。この疑問にさらに取り組むために、同種異系PB
MC、精製B細胞、単球またはB細胞株がスティミュレーターとして使用された場
合のMLRにおける増殖を抑制するIL-10の能力を研究した。表2は、スティミュレ
ーターとして正常B細胞を使用する場合のMLRにおいて、IL-10が増殖を抑制する
が、B細胞株を使用する場合のMLRにおいて、IL-10が増殖を抑制しないことを示
す。
aMLR培養物を、上記のように、PBMC(1×105/ウェル)とマイトマイシン処理B
細胞株(1×105/ウェル)または4×104の精製B細胞(FMFによりポジティブに
選択されたCD20+)との間で行った。ヒトIL-10を200 U/mlで使用し、そしてシク
ロスポリンAを40 ng/mlで使用した。b
データは3連測定の(3)HTdR取り込みのM±SDであり、そして3回の実験の代表
である。
ND=実施せず
表2に示すように、IL-10は、精製正常B細胞(985%CD20+)または単球(98
%CD14+)をスティミュレーターとして、そしてPBMCをレスポンダー細胞として
使用した場合に、MLR誘導性増殖を強力に抑制する。しかし、IL-10は、B細胞株
(DaudiまたはJY)をMLRのスティミュレーターとして使用した場合に、反応を抑
制しなかった。1000 U/mlまでのIL-10のより高い用量は、JY誘導性MLRを抑制し
なかった。これらのデータは、IL-10がB細胞株により誘導されたMLRを抑制し得
ないことが、それらがB細胞であるという事実に帰因しないことを示唆し、そし
てむしろこれらの細胞株が、正常B細胞により使用される機構とは異なる機構(
単数または複数)を介してMLRを刺激し得る可能性を示唆する。
表2において見られ得るように、CSAはJY誘導性MLRにおける増殖を阻害した。
B細胞株誘導性MLRがIL-10による抑制に耐性である機構を研究するために、IL
-10の、このMLRにおけるサイトカイン合成に対する効果を検討した。IL-10(200
U/ml)の存在下および非存在下で60時間行ったMLRの上清におけるIL-2、IFN-γ
およびTNF-αの存在を、ELISAキットを使用して測定した。表3は2回の実験か
らの代表的なデータを示す。
aMLR培養物を、上記のようにレスポンダーとしてPBMC(1×106/ml)およびステ
ィミュレーターとしてマイトマイシンC処理JY細胞(5×105細胞/)または同
種異系PBMC(5×105)を使用して、24ウェルプレート中で60時間行った。IL-10
を100 U/mlで使用し、そしてCSAを40 ng/mlで使用した。b
データはこれらの培養物の上清において検出されたサイトカイン濃度の3連測
定の平均である(SD≦15%)。結果は、2回または3回の実験の代表である。市
販のELISAキットの検出限界は、IFN-γおよびTNF-αについては25 pg/ml、そし
てIL-2については50 pg/mlであった。
表3は、高レベルのサイトカインが、JYにより誘導されたMLRの上清中に検出
可能であったことを示す。特に、このデータにより、IL-2およびIFN-γのレベル
は、IL-10の存在下で行ったMLRの上清において低下されるが、TNF-αのレベルは
低下されないことが示される。対照的に、CSAは、TNF-α産生を阻害した。
JY細胞単独の培養物(マイトマイシンCで処理したまたは処理していない)の
上清は検出可能なTNF-αを含有しなかったので、これらのMLRにおけるTNF-αの
供給源は、活性化されたレスポンダーPBMCに帰因し得る。一緒に、このデータは
、IL-10がPBMCとJYとの間のMLRにおける増殖を阻害し得ないことは、IL-10がTNF
-α合成を阻害し得ないこと(これはこのサイトカインがこれらの培養物中の残
存するIL-2と協力作用し、そしてIL-10誘導性抑制を克服することを可能にする
)に起因し得ることを示唆する。この結論は、IL-10とは異なり、JY誘導性MLRに
おける増殖を阻害するCSA(表2)はまた、MLRにおけるTNF-α産生を阻害した(
表3)という知見により支持される。CSAはB細胞株誘導性MLRにおける増殖を抑
制し得るが、IL-10はB細胞株誘導性MLRにおける増殖を抑制し得ないことは、同
種異系免疫応答に対するIL-10によるCSAとは異なる作用機構を示す。IL-10 およびCSAの効力の比較
CSAはまたサイトカイン合成阻害能力を有しており、そして器官移植における
大部分の免疫抑制プロトコルにおいて現在使用されているので、CSAの活性をIL-
10の活性と比較した。
同種異系刺激のためのインビトロ実験モデルである一方向リンパ球混合反応(
MLR)を使用して、hIL-10はCSAよりも強力なインヒビターであることが見出され
た(IC50:それぞれ8pMおよび4nM)。さらに、低用量でのhIL-10およびCSAの
組み合わせの添加は、MLRにおけるT細胞増殖の相乗的抑制を引き起こした。
図において見られ得るように、MLR培養物への特定の用量での(IL-10およびCS
A:各々0.5〜40 pM)hIL-10およびCSAの組み合わせの添加は、MLRにおけるT細
胞増殖の相乗的抑制を引き起こした。各々の薬剤のより高い濃度において(360p
M)、相乗作用は失われた。IL-10とCSAとの間の相乗的抑制は、インビボ研究に
おいて観察された。
IL-10およびCSAは、MLRにおけるT細胞活性化を相乗的に阻害した。この相乗
作用は、hIL-10およびCSAのより低い用量で観察された。このデータから、IL-10
およびCSAの組み合わせの投与は、個々に、IL-10またはCSAのいずれかよりも有
効な抑制治療であることが評され得る。直接および間接同種異系刺激に対するIL-10およびCSAの効果
T細胞の同種異系刺激は、以下の2つの経路を介して発揮され得る;直接同種
異系刺激および間接同種異系刺激。本明細書において使用する「直接同種異系刺
激」は、レシピエントT細胞の、移植片における同種異系スティミュレーター細
胞の表面上のインタクトなMHC分子としての同種異系抗原に対する応答を意味す
る。直接同種異系刺激は、急性移植片拒絶の原因であり、そして初期の拒絶エピ
ソードを媒介する抗移植片細胞傷害性T細胞応答に対する主因である。本明細書
において使用する「間接同種異系刺激」は、レシピエントのAPCによりプロセス
され、そして提示されたレシピエントT細胞移植片主要組織適合遺伝子複合体(
MHC)同種異系抗原の応答を意味する。間接同種異系刺激は、慢性移植片拒絶お
よび抗移植片抗体産生、異種移植片拒絶、ならびに非応答性(寛容)の誘導の原
因である。
hIL-10およびCSAの、同種異系刺激のこれらの2つの経路に対する効果を研究
した。T細胞とスティミュレーター細胞上の同種異系(allo)MHC分子との相互作
用から生じる直接同種異系刺激は、初期の急性移植片拒絶を担うと考えられてい
る。レシピエントにより提示されるスティミュレーター細胞(APC)の落とされ
た(shed)同種異系抗原とのT細胞相互作用から生じる間接同種異系刺激は、後
期の移植片拒絶を担うと考えられている。IL-10およびCSAの直接同種異系刺激に
対する効果を検討するために、一方向初代MLR(ここで、レスポンダーのPBMCか
らAPCを枯渇させ、そしてスティミュレーターのPBMCと培養する)を行った。こ
れらの培養物へのIL-10の添加は、CSAよりも多くの抑制を引き起こした。同様の
結果が、CD4+またはCD8+細胞をこれらの培養物においてレスポンダーとして使用
した場合に得られた。
間接同種異系刺激のために、APCをスティミュレーター集団から枯渇させ、そ
してレスポンダーのPBMCと培養した。hIL-10はまた、CSAよりも強力な、間接同
種異系刺激に対するインヒビターであった。
ヒトIL-10は、T細胞の直接同種異系刺激および間接同種異系刺激の両方を抑
制することにおいて、CSAよりも有効であることが見出された。hIL-10は直接お
よび間接両方のT細胞同種異系刺激を抑制するので、IL-10およびCSAの組み合わ
せは、急性移植片拒絶(直接同種異系刺激により媒介される)ならびに慢性移植
片拒絶および異種移植片拒絶(間接同種異系刺激により媒介される)を防止する
ために使用され得る。
当業者に明らかなように、本発明の多数の改変および変形が、その精神および
範囲から逸脱することなくなされ得る。本明細書中に記載の特定の実施態様は、
例のみのために提供され、そして本発明は、請求の範囲に権利が与えられる等価
物の完全な範囲とともに、添付の請求の範囲に関してのみ限定される。
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フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,S
Z,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD
,RU,TJ,TM),AL,AM,AU,AZ,BB
,BG,BR,BY,CA,CN,CZ,EE,GE,
HU,IL,IS,JP,KG,KR,KZ,LK,L
R,LT,LV,MD,MG,MK,MN,MX,NO
,NZ,PL,RO,RU,SG,SI,SK,TJ,
TM,TR,TT,UA,UZ,VN