JP4690221B2 - 電解コンデンサ用陽極箔の製造方法 - Google Patents
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また、中高圧用に使用される陽極箔のエッチング工程は、トンネル状のエッチングピット(以下、ピットと称す)を形成する第1段エッチングと、そのピットを目標とする電圧に適した孔径まで拡大する第2段エッチングに分割して行うのが主流となっており、多数の分散性の良いピットを生成させ、効率よくピットの孔径を拡大させることができる。
永田伊佐也、「電解液陰極アルミニウム電解コンデンサ」、日本蓄電器工業株式会社、平成9年2月24日、第2版、P229−241
上記の硫酸イオンは、第2段エッチング工程で孔径拡大する際、均一な孔径拡大の妨げになり、静電容量の低下をもたらすため、第1段エッチング工程後にこれを除去する効果的な方法が求められていた。
すなわち、アルミニウム箔の表面酸化皮膜を除去する前処理工程と、硫酸を含んだエッチング液を使用し、トンネル状ピットを発生させる第1段エッチング工程と、該工程で発生したピットの孔径を拡大するための第2段エッチング工程とを有する電解コンデンサ用陽極箔の製造方法において、
第1段エッチング工程と第2段エッチング工程との間に、硫酸イオンを除去する洗浄工程を設け、洗浄工程が、第1の純水洗浄工程、アルカリ洗浄工程、第2の純水洗浄工程の3段からなることを特徴とする電解コンデンサ用陽極箔の製造方法である。
純度99.99%、厚さ110μmの高純度軟質アルミニウム箔を、1mol/Lのリン酸溶液に1分間浸漬して前処理を行った。
次に、第1段エッチング工程として、硫酸3.0mol/L、塩化アルミニウム1.0mol/Lの混合溶液を75℃に加熱し、該溶液中で、上記のアルミニウム箔に電流密度0.2A/cm2、電気量18C/cm2にて、直流電流を印加し、第1段エッチングを行った。
第1段エッチング後、硫酸イオン含有量0.05ppm以下の純水を注水した純水洗浄槽中で3分間浸漬洗浄を行い、その後、0.0003〜0.003mol/L、45℃の水酸化ナトリウム水溶液に15秒間浸漬した後、再度、硫酸イオン含有量が0.05ppm以下の純水に浸漬し、3分間洗浄を行った。
続いて、第2段エッチング工程として、塩酸0.50mol/L、塩化アルミニウム1.0mol/Lの混合溶液を85℃に加熱し、上記の洗浄を終えたエッチング箔を15分間浸漬してピットの孔径拡大を行い、水洗、脱塩素処理を施し、エッチング箔試料を作製した。
水酸化ナトリウム水溶液の濃度を0.001mol/L、浸漬時間を30秒に固定し、浸漬温度を30〜70℃の範囲で変更した以外は、実施例1と同様の方法でエッチング箔試料を作製した。
水酸化ナトリウム水溶液の濃度を0.001mol/Lに固定し、浸漬時間を10〜70秒の範囲で変更した以外は、実施例1と同様の方法でエッチング箔試料を作製した。
上記実施例以外に、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を0.0005mol/L、浸漬温度を45℃に固定し、浸漬時間を30、60秒としたもの(実施例2、3)、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を0.002mol/L、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を0.001mol/L、浸漬温度を60℃、浸漬時間を60秒としたもの(実施例14)についてもエッチング箔試料を作製した。
純水洗浄工程の純水中の硫酸イオン濃度を0.10ppmとした以外は、実施例8と同様の方法でエッチング箔試料を作製した。
アルカリ洗浄に用いるアルカリの種類を、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム(一例としてオルトケイ酸ナトリウム)とした以外は、実施例8と同様の方法でエッチング箔試料を作製した。
上記の第1の純水洗浄とアルカリ洗浄を行わず、硫酸イオン含有量0.05ppm以下の純水にて3分間洗浄を行った以外は、実施例1と同様の方法でエッチング箔試料を作製した。
上記の洗浄(純水洗浄−アルカリ洗浄−純水洗浄)を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法でエッチング箔試料を作製した。
また、上記のエッチング箔試料(第2段エッチング工程終了後のもの)について、濃度100g/L、液温90℃のホウ酸水溶液中で540V化成を行い、各試料の静電容量をLCRメータにて測定した。その結果を表1〜3に示す。
表1から明らかなように、水酸化ナトリウム水溶液の濃度は、0.0005〜0.002mol/Lの範囲が好適である。0.0003ml/Lでは、洗浄効果が十分でなく硫酸イオンが残留するため、静電容量が低下し(実施例15)、0.003ml/Lでは、水酸化ナトリウムによる過溶解や皮膜形成が起こり、静電容量が低下する傾向がある(実施例16)。
表1から明らかなように、水酸化ナトリウム水溶液への浸漬温度は、35〜60℃の範囲が好適である。30℃では、洗浄効果が十分でなく硫酸イオンが残留するため、静電容量が低下し(実施例5)、70℃では、水酸化ナトリウムによる過溶解や皮膜形成が起こり、静電容量が低下する傾向がある(実施例12)。
表1から明らかなように、水酸化ナトリウム水溶液への浸漬時間は、15〜60秒の範囲が好適である。10秒では、洗浄効果が十分でなく硫酸イオンが残留するため、静電容量が低下する(実施例7)。また、70秒としても、硫酸イオンの除去効果は60秒の場合と変わらないので、工数がかかる(実施例10)。
表1から明らかなように、純水洗浄液の硫酸イオン濃度が0.10ppmでは、硫酸イオンが多すぎるため、静電容量が低下してしまう。よって、硫酸イオン濃度は0.05ppm以下とするのが適当である。
表2、3から明らかなように、アルカリ洗浄に用いるアルカリの種類を、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウムとした場合も、水酸化ナトリウムを使用した実施例8と同様の効果が得られることが分かる。
Claims (7)
- アルミニウム箔の表面酸化皮膜を除去する前処理工程と、硫酸を含んだエッチング液を使用し、トンネル状ピットを発生させる第1段エッチング工程と、該工程で発生したピットの孔径を拡大するための第2段エッチング工程とを有する電解コンデンサ用陽極箔の製造方法において、
第1段エッチング工程と第2段エッチング工程との間に、硫酸イオンを除去する洗浄工程を設け、
前記洗浄工程が、第1の純水洗浄工程、アルカリ洗浄工程、第2の純水洗浄工程の3段からなることを特徴とする電解コンデンサ用陽極箔の製造方法。 - 前記第1段エッチング工程に使用するエッチング液が、硫酸に、塩酸、硝酸、リン酸、シュウ酸のうち少なくとも1種類を溶解してなることを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ用陽極箔の製造方法。
- 前記第2の純水洗浄工程において、純水の硫酸イオン含有量が0.05ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ用陽極箔の製造方法。
- 前記アルカリ洗浄工程が、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウムのうち少なくとも1種類を含むアルカリ性溶液への浸漬処理にて行われることを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ用陽極箔の製造方法。
- 前記アルカリ性溶液の濃度が、0.0005〜0.002mol/Lであることを特徴とする請求項4に記載の電解コンデンサ用陽極箔の製造方法。
- 前記アルカリ洗浄工程におけるアルカリ性溶液への浸漬温度が、35〜60℃であることを特徴とする請求項4に記載の電解コンデンサ用陽極箔の製造方法。
- 前記アルカリ洗浄工程におけるアルカリ性溶液への浸漬時間が、15〜60秒であることを特徴とする請求項4に記載の電解コンデンサ用陽極箔の製造方法。
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