JP4688257B2 - エマルジョンの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エマルジョンの製造方法に関する。更に詳しくは、塗料、インクジェット型プリンター用インク、繊維処理剤、被覆材料、粘着剤、皮膚化粧料、毛髪化粧料等に好適に使用しうる固体粒子含有エマルジョンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液滴に有用な固体物質を含有させた水中油滴型エマルジョンを製造する方法としては、含有させる親油性固体粒子を予め油中に添加した後、これを乳化分散させる方法が知られている(特開昭62−234541号公報)。しかしながら、この方法には、固体物質の含有比率を高くすると粘度が高くなるため、固体物質の分散が困難となり、またその固液混合物を相溶しない溶媒に乳化分散させる場合にも分散が困難となるため、固体物質の比率を高くすることができないという欠点がある。
【0003】
また、油滴を重合性モノマーにして乳化分散させたエマルジョンを懸濁重合させる場合には、重合開始剤を分散相に溶解させる必要があるが、固液混合物に重合開始剤を溶かすのに長時間を要するうえ、重合開始剤が溶解していることを確認するのが困難であり、重合開始剤を溶解させた溶液に固体物質を分散させるには重合開始剤の安定性の面から分散に時間をあまりかけられないため、固体物質の分散が不十分となるという欠点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、エマルジョンの油滴又は水滴(以下、分散液滴ともいう)に固体粒子を含有させたエマルジョンの製造方法及びエマルジョンの分散液滴中に重合性モノマーを存在させ、それを重合させる固体含有ポリマーエマルジョンの製造方法を提供することを課題とする。
【0005】
また、本発明は、エマルジョンの分散液滴に固体粒子を含有させ、かつ分散液滴の平均粒径が小さく、凝集物がなく、固体粒子含有率が高いエマルジョンの製造方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(1) 水中油滴型(以下、O/W型という)エマルジョンと、親油性固体粒子又はその分散体とを混合し、親油性固体粒子を油滴中に含有させる固体粒子含有エマルジョンの製造方法、
(2) 油中水滴型(以下、W/O型という)エマルジョンと、親水性固体粒子又はその分散体とを混合し、親水性固体粒子を水滴中に含有させる固体粒子含有エマルジョンの製造方法、並びに
(3) 油滴又は水滴に重合性モノマーを存在させ、前記(1)又は(2)記載の製造方法により固体粒子含有エマルジョンを製造し、ついで該重合性モノマーを重合させる固体含有ポリマーエマルジョンの製造方法
に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明でいう「含有」とは、分散液滴中に固体粒子が入った状態だけでなく、一部が入った状態や分散液滴表面に付着した状態も含まれる。また、分散液滴がポリマー粒子であってこのポリマー粒子の表面に固体粒子が付着した状態も、この含有に概念に含まれる。含有させる固体粒子は、無機化合物及び有機化合物のいずれであってもよい。
【0008】
また、本明細書でいう「親油性固体粒子」とは、水と接したときに接触角をつくる表面をもつ粒子を意味する。その親油性固体粒子には、親油性表面及び親水性表面の双方をもつもの、及び親水性表面に親油性表面をもつように表面処理が施されたものも含まれる。
【0009】
親油性固体粒子としては、モノアゾ系、ジスアゾ系、ベンズイミダゾロン系、キナクリドン系、フタロシアニン系等の有機顔料や、カーボンブラック等に無機顔料が挙げられる。親油性固体粒子の平均粒子径は、エマルジョンの安定性の観点から、好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.05〜5μm、特に好ましくは0.05〜1μmであることが望ましい。
【0010】
本明細書でいう「親水性固体粒子」とは、水と接したときに接触角をつくらない粒子表面をもつ粒子を意味する。その親水性固体粒子には、親水性表面及び親油性表面の双方をもつもの、及び親油性表面に親水性表面をもつように表面処理が施されたものも含まれる。
【0011】
親水性固体粒子としては、酸化チタン、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、カオリン、酸化鉄等が挙げられる。親水性固体粒子の平均粒子径は、エマルジョンの安定性の観点から、好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.05〜5μm、特に好ましくは0.05〜1μmであることが望ましい。
【0012】
これらの固体粒子を分散体として使用する場合には、必要に応じて固体粒子を分散させるための分散剤が使用される。
【0013】
分散剤としては、ドデシル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルのサルフェート塩等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、脂肪酸ショ糖エステル等のノニオン性界面活性剤、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシ−N−ヒドロキシイミダゾリニウムベタイン等の両性界面活性剤、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリメチルビニルエーテル、ポリブタジエン、タンパク質、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等の天然又は合成高分子化合物等が挙げられる。
【0014】
O/W型及びW/O型エマルジョンの調製の際に用いる油相成分及び水相成分は、両成分が互いに相溶しないものを選択して用いられる。
【0015】
水と相溶しない油相成分としては、20℃で水に対する溶解度が1g/100g水以下である有機化合物が好ましい。この有機化合物としては、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、綿実油、菜種油、スクワラン、スクワレン、ワックス、スチレン、ジビニルベンゼン、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ドデセニル、アクリル酸ミリスチル、アクリル酸パルミチル、アクリル酸ヘキサデセニル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸オクタデセニル、アクリル酸ベヘニル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ドデセニル、メタクリル酸ミリスチル、メタクリル酸パルミチル、メタクリル酸ヘキサデセニル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸オクタデセニル、メタクリル酸ベヘニル、シリコーンマクロモノマー等が挙げられる。
【0016】
油相成分と相溶しない水相成分としては、水のみ、及び水に任意の必要成分を溶解させた水溶液等が挙げられる。
【0017】
エマルジョンを調製する際には、必要に応じて、前述した界面活性剤、天然及び/又は合成高分子化合物等の分散剤を使用することができる。
【0018】
O/W型エマルジョンの油滴中に固体粒子を含有させる場合には、親油性固体粒子を用いるが、親水性固体粒子の表面を表面改質剤等で親油化させた親油性固体粒子を用いることもできる。
【0019】
他方、W/O型エマルジョンの水滴中に固体粒子を含有させる場合には、親水性固体粒子を用いるが、親油性固体粒子の表面を表面改質剤等で親水化させた親水性固体粒子を用いることもできる。
【0020】
親油性固体粒子としては、表面がほとんど無極性であり、水分子との相互作用が小さい(水に濡れにくい)粒子が好ましい。
【0021】
また、親水性固体粒子としては、表面の極性が大きく、水分子との相互作用が大きい(水に濡れやすい)粒子が好ましい。
【0022】
表面改質剤としては、ドデシル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルのサルフェート塩等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等のノニオン性界面活性剤、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシ−N−ヒドロキシイミダゾリニウムベタイン、レシチン等の両性界面活性剤や、リン酸塩系カップリング剤、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等のカップリング剤、ポリジメチルシロキサン等の高分子被覆表面改質剤が挙げられる。これらの表面改質剤は、親油性固体粒子の表面を親水性に改質させる場合、及び親水性固体粒子の表面を親油性に改質させる場合のいずれの場合にも用いることができる。
【0023】
まず、O/W型エマルジョンを調製し、これと、親油性固体粒子又はその分散体とを混合し、親油性固体粒子を油滴中に含有させる固体粒子含有エマルジョンの製造方法について説明する。
【0024】
分散剤を水に溶解した水相成分と難水溶性の油相成分とを混合し、乳化処理を行ってO/W型エマルジョンを調製する。乳化方法には、剪断型分散装置(ホモミキサー、ウルトラタラックス、マイルダーなどの高速剪断型乳化機や高圧ホモジナイザー)、超音波乳化機等が好適に用いられる。油相成分と水相成分との比率は、任意でよいが、操作性の観点から、油相成分の比率が0.5〜50重量%であることが好ましい。エマルジョンの分散液滴の平均粒径は、0.1〜30μmが好ましく、親油性固体粒子を含有した後の固体粒子含有エマルジョン分散液滴の粒径分布を狭くする観点から、0.1〜10μmがより好ましい。エマルジョンの分散液滴の平均粒径は、レーザー散乱式粒径測定装置LA−910((株)堀場製作所製)により測定することができる。
【0025】
以上のようにして得られたO/W型エマルジョンと、親油性固体粒子又はその分散体とを混合する。親油性固体粒子は、有機粒子及び無機粒子のいずれであってもよい。粒子の添加形態には特に限定がないが、粒子の径が小さい場合、粉体の状態で添加すると均一分散させることが困難となるため、予め水相成分中に分散させて親油性固体粒子の水分散体として使用することが望ましい。親油性固体粒子を水相成分中に分散させる方法は、公知の方法であればよく、分散させる際には、必要に応じて分散剤を用いることができる。
【0026】
O/W型エマルジョンと、親油性固体粒子又はその分散体とを混合し、水相成分中に存在している親油性固体粒子を油相成分中に移行させ、親油性固体粒子を油滴中に含有させることにより、固体粒子含有エマルジョンが得られる。
【0027】
油相成分中に含有させる親油性固体粒子の使用量は、油相成分100重量部に対して0.5〜80重量部が好ましく、エマルジョンの安定性の観点から、1〜50重量部がより好ましい。
【0028】
親油性固体粒子を油相成分中に含有させる手段としては、攪拌等による固体粒子と油滴の衝突のみでもよい。より早く、かつ確実に親油性固体粒子を油相成分中に含有させる観点から、油滴に剪断を与えて該油滴を微粒子化させると油滴と固体粒子との接触頻度を増大させることができるので好ましい。また、油滴が微粒子化されるとその表面積が増大し、相対的に分散剤量が不足し、不安定な状態になる。しかし、微粒子化された液滴を合体させた場合、液滴が安定な状態となり、その油滴中に固体粒子が取り込まれるので好ましい。
【0029】
剪断を加える手段としては、ホモミキサー、マイルダー、コロイドミル等の高速剪断型乳化機や高圧ホモジナイザーが挙げられ、また超音波をかける手段としては、超音波乳化機等が挙げられるが、液体に剪断又は超音波をかけることができるものであれば、これらに限定されない。これらの中では、生産性の観点から、ホモミキサー、マイルダー、コロイドミル、ウルトラタラックス、フィルミックスなどの高速剪断型乳化機又は高圧ホモジナイザーが好ましい。剪断力は、固体粒子含有率を実用上望まれている40重量%以上とするには、50Pa以上であることが好ましく、より迅速に含有させる観点から、100Pa以上であることがより好ましい。
【0030】
剪断力は、式(I):
τ = μ・S (I)
〔式中、μは流体の粘度(Pa・s)を示し、Sは剪断速度を示し、式(II):
S = du/dy (II)
(式中、uは線速度(m/s)を示し、高速剪断型乳化機の場合には回転部分の先端速度に相当し、高圧ホモジナイザーの場合にはホモバルブを通過する流体の速度に相当し、混合槽の場合には攪拌翼先端の周速を示す。yは移動面に対して垂直方向の距離(m)を示し、高速剪断型乳化機の場合には回転部分(ローター)の先端から固定部分(ステーター)までの距離に相当し、高圧ホモジナイザーの場合には流体が通過するホモバルブの間隙に相当し、混合槽の場合には攪拌翼先端から槽壁までの距離に相当する)で表される〕
で表される。
【0031】
固体粒子含有率をより一層効率よく40重量%以上とするには、剪断速度は、50×103 -1以上であることが好ましく、迅速に含有させる観点から、100×103 -1以上であることがより好ましい。また、固体粒子含有率を50重量%以上とする観点から、剪断速度は、150×103 -1以上であることが好ましく、また固体粒子の破壊や同一物質同士の凝集を回避する観点から、剪断速度は、100×109 -1以下であることが好ましい。なお、超音波を利用する場合には、3kW/m2 以上の出力をかけることが好ましい。
【0032】
次に、W/O型エマルジョンと、親水性固体粒子又はその分散体とを混合し、親水性固体粒子を水滴中に含有させる固体粒子含有エマルジョンの製造方法について説明する。
【0033】
分散剤を溶解した難水溶性の油相成分と、水又は水に水溶性成分を溶かした水相成分とを混合し、乳化処理を行ってW/O型エマルジョンを調製する。乳化方法は、O/W型エマルジョンを調製する際の方法と同様であればよい。水相成分と油相成分との比率は、任意であるが、操作性の観点から、水相成分の比率が0.5〜50重量%であることが好ましい。エマルジョンの分散液滴の平均粒径は、0.1〜30μmが好ましく、親水性固体粒子を水相成分に含有させた後の固体粒子含有エマルジョンの分散液滴の粒径分布を狭くする観点から、0.1〜10μmがより好ましい。分散液滴の平均粒径は、前記と同様の方法で求めることができる。
【0034】
以上のようにして得られたW/O型エマルジョンと、親水性固体粒子又はその分散体とを混合する。親水性固体粒子としては、有機粒子及び無機粒子のいずれであってもよい。親水性固体粒子の添加形態には特に限定がないが、粒子の径が小さい場合には、粉体の状態で添加すると均一分散させることが困難となるため、予め油相成分中に分散させておいた親水性固体粒子の油分散体として使用することが望ましい。親水性固体粒子を油相成分中に分散させる方法は、公知の方法であればよく、分散させる際には、必要により、前記分散剤を用いることができる。
【0035】
W/O型エマルジョンと、親水性固体粒子又はその油分散体とを混合し、油相成分中に存在している親水性固体粒子を水相成分中に移行させ、親水性固体粒子を水滴中に含有させることにより、固体粒子含有エマルジョンが得られる。
【0036】
水相成分中に含有させる親水性固体粒子の使用量、分散液滴の平均粒径が1μm以上の場合における剪断又は超音波をかける手段は、前記O/W型エマルジョンを用いて固体粒子含有エマルジョンを製造する場合と同様であればよい。
【0037】
また、O/W型エマルジョンを用いる場合には、親油性の重合性モノマーと油溶性重合開始剤とを含有する油滴に親油性固体粒子を含有させた後、重合性モノマーを重合させることによって固体含有ポリマーエマルジョンを得ることができる。また、W/O型エマルジョンを用いる場合には、親水性の重合性モノマー又は親水性の重合性モノマーと水の混合物と、水溶性重合開始剤とを含有する水滴に親水性固体粒子を含有させた後、重合性モノマーを重合させることによって固体含有ポリマーエマルジョンを得ることができる。
【0038】
また、O/W型エマルジョン及びW/O型エマルジョンのいずれを用いる場合であっても、更に連続相に重合性モノマーを存在させ、分散相の重合性モノマーを重合させるとともに、連続相の重合性モノマーを重合させてコア/シェル型の固体含有ポリマーエマルジョンを得ることができる。
【0039】
親油性の重合性モノマーとしては、20℃で水に対する溶解度が1g/100g水以下のものが好ましい。例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ドデセニル、アクリル酸ミリスチル、アクリル酸パルミチル、アクリル酸ヘキサデセニル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸オクタデセニル、アクリル酸ベヘニル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ドデセニル、メタクリル酸ミリスチル、メタクリル酸パルミチル、メタクリル酸ヘキサデセニル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸オクタデセニル、メタクリル酸ベヘニル、シリコーンマクロモノマー等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0040】
親水性の重合性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸モノマー、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2- メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸3-スルホプロピル、メタクリル酸3-スルホプロピル、ビニルスルホン酸等の不飽和スルホン酸モノマー、ビニルホスフェート、ジフェニル-2- アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル-2- メタクリロイロキシエチルホスフェート等の不飽和リン酸モノマー、N,N-ジメチルアクリルアミド等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0041】
油溶性重合開始剤としては、加熱下又は還元性物質の存在下で、ラジカル分解してモノマーの付加重合を開始させるものであって、油溶性の過酸化物、アゾビス化合物等を一般に使用できる。例えば、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2'- アゾビスイソブチロニトリル、2,2'- アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'- アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0042】
水溶性重合開始剤としては、加熱下又は還元性物質の存在下で、ラジカル分解し、モノマーの付加重合を開始させるものであって、水溶性のペルオキソ二硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等を一般に使用できる。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等のペルオキソ二硫酸塩、過酸化水素、t-ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物、2,2'- アゾビス-2- アミジノプロパン塩、4,4'- アゾビス-4- シアノペンタノン酸等のアゾ化合物が挙げられる。必要により、水溶性重合開始剤は、還元剤と組み合わせてレドックス系開始剤としても使用できる。
【0043】
本発明によって得られた固体粒子含有ポリマーエマルジョンは、例えば、塗料、インクジェット型プリンター用インク、繊維処理剤、被覆材料、粘着剤、皮膚化粧料、毛髪化粧料等に好適に使用することができる。特に、該固体粒子含有ポリマーエマルジョンは、皮膚化粧料、毛髪化粧料等に好適である。
【0044】
【実施例】
実施例1
青色顔料(大日精化工業(株)製、Pigment Blue-15 )40g 、ノニオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:エマルゲン2025G )10g 及びイオン交換水150gを混合し、ビーズミル(三井鉱山(株)製、商品名:アトライタMA-01SC )で10時間分散させ、顔料/水分散体を得た。
【0045】
一方、1リットル容のガラスビーカーに、メタクリル酸ステアリル25g 及び過酸化ラウロイル0.3gを入れて溶解し、これにイオン交換水500g及びノニオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:エマルゲン2025G)5gを加え、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製、HV-M型)にて乳化を行い、液滴の平均粒径1.24μm のO/W型エマルジョンを得た。
【0046】
このO/W型エマルジョン530.5gと先に調製しておいた顔料/水分散体44g とを混合し、ホモミキサーにて更に剪断速度900 ×103s-1となるように剪断を加えて混合を行い、液滴の平均粒径0.86μm の顔料含有エマルジョンを得た。固体粒子仕込み量は、油相成分100 重量部に対して35重量部であった。
【0047】
この顔料含有乳化物を1リットル容のガラス製反応器に移し、窒素置換を行った後、撹拌しながら加熱し、内温を75℃にした。撹拌下3時間重合を行い、顔料含有ポリマーエマルジョンを得た。
【0048】
実施例2
青色顔料(大日精化工業(株)製、Pigment Blue-15)40g 、ノニオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:エマルゲン2025G)16g 及びイオン交換水144gを混合し、ビーズミル(三井鉱山(株)製、商品名:アトライタMA-01SC)で10時間分散させ、顔料/水分散体を得た。
【0049】
一方、1リットル容のガラスビーカーに、メタクリル酸ステアリル25g 及び過酸化ラウロイル0.3gを入れて溶解し、イオン交換水500g、ノニオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:エマルゲン2025G)5gを添加し、高圧ホモジナイザー(ランニー(Rannie) 社製、GM-1) にて乳化を行い、液滴の平均粒径が0.16μm のO/W型エマルジョンを得た。
【0050】
得られたO/W型エマルジョン530.5gを先に調製した顔料/水分散体44g とアンカー翼により、低速で攪拌することにより、混合し、液滴の平均粒径0.36μm の顔料含有エマルジョンを得た。固体粒子の仕込み量は、油相成分100 重量部に対して35重量部であった。
【0051】
この顔料含有エマルジョンを1リットル容のガラス製反応器に移し、窒素置換を行った後、撹拌しながら加熱し、内温を75℃にした。撹拌下3時間重合を行い、顔料含有ポリマーエマルジョンを得た。
【0052】
実施例3
黒色顔料(御国色素(株)製、チタンブラック)40g 、ノニオン性界面活性剤(三菱化学フーズ(株)製、脂肪酸ショ糖エステルS-770 )15g 及びシクロヘキサン150gを混合し、実施例1で使用したのと同じビーズミルで10時間分散させ、顔料/油分散体を得た。
【0053】
次に1リットル容のガラスビーカーに、シクロヘキサン190g及びノニオン性界面活性剤(三菱化学フーズ(株)製、脂肪酸ショ糖エステルS-770) 0.6g を混合し、溶解させて活性剤のシクロヘキサン溶液を得た。
【0054】
続いて、0.5 リットル容のガラスビーカーにイオン交換水77g 及びメタクリロイルオキシエチレンジエチルサルフェート90%水溶液29g 、N,N-ジメチルアクリルアミド31g 及びペルオキソ二硫酸カリウム0.15g を入れて均一に混合させた後、前に調製しておいた活性剤のシクロヘキサン溶液中に添加し、ホモミキサーにて乳化を行い、液滴の平均粒径3.12μm のW/O型エマルジョンを得た。
【0055】
このW/O型エマルジョンと先に調製しておいた顔料/油分散体31g とを混合し、ホモミキサーにて更に剪断速度40×103s-1を加えて混合を行い、液滴の平均粒径2.66μm の顔料含有エマルジョンを得た。固体粒子仕込み量は、水相成分100 重量部に対して7.6 重量部であった。この顔料含有エマルジョンを1リットル容のガラス製反応器に移し、窒素置換を行った後、撹拌しながら加熱し、内温を68.5℃にした。撹拌下3時間反応を行い、顔料含有ポリマーエマルジョンを得た。
【0056】
実施例4
実施例2において、エマルジョンと顔料の混合時にホモミキサー剪断速度30×103s-1を加えて混合を行い、液滴の平均粒径0.49μm の顔料含有エマルジョンを得た。この顔料含有エマルジョンを1リットル容のガラス製反応器に移し、窒素置換を行った後、撹拌しながら加熱し、内温を75℃にした。撹拌下3時間重合を行い、顔料含有ポリマーエマルジョンを得た。
【0057】
実施例5
青色顔料(大日精化工業(株)製、Pigment Blue-15)40g 、ノニオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:エマルゲン2025G)10g 及びイオン交換水150gを混合し、実施例1で使用下のと同じビーズミルで10分間分散させ、顔料/水分散体を得た。
【0058】
一方、1リットル容のガラスビーカーに、メタクリル酸ステアリル25g 及び過酸化ラウロイル0.3gを入れて溶解し、イオン交換水500g及びノニオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:エマルゲン2025G)0.01g を添加し、実施例2で使用したのと同じ高圧ホモジナイザーにて乳化を行い、液滴の平均粒径が5.90μm のO/W型エマルジョンを得た。
【0059】
得られたO/W型エマルジョン530.5gと先に調製した顔料/水分散体44g とを混合し、高圧ホモジナイザーにて更に剪断速度が100 ×103 -1となるように剪断力を加えて混合を行い、液滴の平均粒径0.95μm の顔料含有エマルジョンを得た。固体粒子仕込み量は、油相成分100 重量部に対して35重量部であった。
【0060】
この顔料含有エマルジョンを1リットル容のガラス製反応器に移し、窒素置換を行った後、撹拌しながら加熱し、内温を75℃にした。撹拌下3時間重合を行い、顔料含有ポリマーエマルジョンを得た。
【0061】
実施例6
実施例5において、O/W型エマルジョンと顔料/水分散体との混合物に、実施例2で使用したのと同じ高圧ホモジナイザーにて剪断速度が2500×103 -1となるように剪断力を加えて混合を行い、液滴の平均粒径0.86μm の顔料含有エマルジョンを得た。固体粒子仕込み量は、油相成分100 重量部に対して35重量部であった。
【0062】
この顔料含有エマルジョンを1リットル容のガラス製反応器に移し、窒素置換を行った後、撹拌しながら加熱し、内温を75℃にした。撹拌下3時間重合を行い、顔料含有ポリマーエマルジョンを得た。
【0063】
実施例7
実施例5において、O/W型エマルジョンと顔料/水分散体との混合物に、超音波乳化機(日本精機(株)製、品番:US-600T)にて出力400kW/m2を加えて混合を行い、液滴の平均粒径0.68μm の顔料含有エマルジョンを得た。固体粒子仕込み量は、油相成分100 重量部に対して35重量部であった。
【0064】
この顔料含有エマルジョンを1リットル容のガラス製反応器に移し、窒素置換を行った後、撹拌しながら加熱し、内温を75℃にした。撹拌下3時間重合を行い、顔料含有ポリマーエマルジョンを得た。
【0065】
実施例8
実施例7において、O/W型エマルジョンと顔料/水分散体との混合物に、超音波乳化機にて出力1kW/m2を加えて混合を行い、液滴の平均粒径10.26 μm の顔料含有エマルジョンを得た。固体粒子仕込み量は、油相成分100 重量部に対して35重量部であった。
【0066】
この顔料含有エマルジョンを1リットル容のガラス製反応器に移し、窒素置換を行った後、撹拌しながら加熱し、内温を75℃にした。撹拌下3時間重合を行い、顔料含有ポリマーエマルジョンを得た。
【0067】
実施例9
1リットル容のガラスビーカーに、メタクリル酸ステアリル50g 及び過酸化ラウロイル0.5gを入れて溶解し、イオン交換水500g及びノニオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:エマルゲン2025G)5gを添加し、ホモミキサーにて乳化を行って液滴の平均粒径1.35μm のO/W型エマルジョンを得た。
【0068】
得られたO/W型エマルジョンを1リットル容のガラス製反応器に移し、窒素置換を行った後、撹拌しながら加熱し、内温を75℃にした。撹拌下3時間重合を行い、ポリマーエマルジョンを得た。得られたポリマーエマルジョン全量と、実施例1と同様に作製した顔料/水分散体10g とを1リットル容のガラスビーカーに入れ、ホモミキサーにて更に剪断速度40×103s-1を加えて混合を行って顔料含有ポリマーエマルジョンを得た。得られた顔料含有ポリマーエマルジョンの固体粒子仕込み量は、油相成分100 重量部に対して4重量部であった。
【0069】
比較例1
青色顔料(大日精化工業(株)製、Pigment Blue-15 )40g 、ノニオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:エマルゲン2025G )10g 及びイオン交換水150gを混合し、実施例1で使用したのと同じビーズミルで10時間分散させ、顔料/水分散体を得た。
【0070】
一方、1リットル容のガラスビーカーに、メタクリル酸ステアリル50g 及び過酸化ラウロイル0.5gを入れて溶解し、イオン交換水500g及びノニオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:エマルゲン2025G)5gを加えた後にホモミキサーによる乳化を行わず、直接先に調製した顔料/水分散体44g とを混合し、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製、品番:HV-M型)にて更に剪断を剪断速度40×103s-1を加えて混合を行い、これを1リットル容のガラス製反応器に移し、窒素置換を行った後、撹拌しながら加熱し内温を75℃にした。撹拌下3時間重合を行ったが、得られた反応物には直径100 μm以上の粗大凝集物が多数存在し、エマルジョンとしては不良であった。
【0071】
比較例2
メタクリル酸ステアリル250g、青色顔料(Pigment Blue-15 )100g及びノニオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:エマルゲン2025G)25g を混合し、実施例1で使用したのと同じビーズミルで10時間分散させ、顔料/油分散体を得た。このときの粘度は20℃で約4500mPa ・ s であった。この顔料/油分散体を30.8g 採り、これに過酸化ラウロイル0.5gを入れて溶解した後、エマルゲン2025G7.2g をイオン交換水500g中に溶解した活性剤水溶液に添加してホモミキサーにて乳化を行ったが、顔料/油分散体の粘度が高いため、油相成分が分散せず良好なエマルジョンを製造できなかった。このときの固体粒子仕込み量は油相成分100 重量部に対して40重量部であった。
【0072】
各実施例及び各比較例で得られたポリマーエマルジョンについて、体積平均粒径、固体粒子含有率、エマルジョン外観、ポリマー粒子表面外観、固体粒子−エマルジョン接触面積を下記の評価方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0073】
〔評価方法〕
(A)平均粒径
光散乱法により、粒度分布測定器〔(株)堀場製作所製、LA-910〕を用いて体積平均粒径を測定した。
【0074】
(B)固体粒子含有率
▲1▼ 固体粒子の仕込み濃度が0.02重量%となるように、顔料含有ポリマーエマルジョンをイオン交換水で希釈した希釈液10g を用意する。
▲2▼ 50mL容のビーカーにて希釈液と同重量のパルミチン酸イソプロピル(IPP) を加える。その際に、IPP が水相に混ざらないように静かに加える。
▲3▼ マグネチックスターラーの回転速度を600rpmに設定し、5分間攪拌する。
▲4▼ 攪拌終了後、5分間静置し、2相に分離させる。
▲5▼ 上相であるIPP 相から試料3gを採取する。
▲6▼ 2-ベンジルオキシエタノール(BOE)1g を試料に加え、溶解させて溶液を得る。
▲7▼ 得られた溶液の波長518nm における吸光度を測定し、遊離固体粒子含有率(重量%)を吸光度と遊離固体粒子含有率との検量線から求める。
▲8▼ 遊離固体粒子以外がエマルジョン中に含有された固体粒子として算出し、式:
〔固体粒子含有率(重量%)〕 = 100−〔遊離固体粒子含有率〕
にしたがって固体粒子含有率を求める。
【0075】
(C)エマルジョン外観
重合後のエマルジョンを目視で観察した。
【0076】
(D)ポリマー粒子表面外観
ポリマー粒子の表面を光学顕微鏡(10000 倍)で観察した。なお、表1中、「固体粒子を含有」とは固体粒子が油滴の中に入っており、油滴表面にはほとんど存在していない状態を、「固体粒子一部含有」とは固体粒子が油滴に入っているものと油滴の外にあるものとその一部が油滴の表面に接触しているものとがある状態を、「固体粒子接触」とは固体粒子が油滴の中にほとんど入っておらず、油滴表面に一部接触している状態をいう。
【0077】
(E)固体粒子−エマルジョン接触面積
光学顕微鏡(10000 倍)でポリマーエマルジョンを観察し、接触面積を以下の判定基準に基づいて評価した。
〔判定基準〕
A:固体粒子の表面をポリマーがほぼ完全に覆っており、接触面積が固体粒子の表面積とほぼ等しい状態。
B:固体粒子の一部をポリマーが覆っている状態。
C:固体粒子のほとんどがポリマーの外側に存在し、その一部がポリマーと接触している状態。
【0078】
【表1】
Figure 0004688257
【0079】
表1に示された結果から、各実施例によれば、エマルジョン分散相への固体粒子含有率が高いエマルジョンを得ることができることがわかる。
【0080】
【発明の効果】
本発明によれば、エマルジョン分散相への固体粒子の含有量の多いエマルジョンを得ることができるという効果が奏される。

Claims (10)

  1. 水中油滴型エマルジョンと、平均粒子径が0.05〜10μmの親油性固体粒子又はその分散体とを混合し、親油性固体粒子を油滴中に含有させる固体粒子含有エマルジョンの製造方法であって、
    混合する際に、
    剪断型分散装置を用い、50×10 3 -1 以上の剪断速度で剪断を行なうか、又は
    超音波型分散装置を用い、3kW/m 2 以上の出力で行なう、
    固体粒子含有エマルジョンの製造方法
  2. 親油性固体粒子を油滴に含有させる前及び/又は含有させる際に、剪断型分散装置を用いるか又は超音波型分散装置を用いて、該油滴をさらに微粒子化させる請求項1記載の製造方法。
  3. 親油性固体粒子を油滴に含有させる際及び/又は含有させた後に、水中油滴型エマルジョンの油滴同士を合体させる請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 油中水滴型エマルジョンと、平均粒子径が0.05〜10μmの親水性固体粒子又はその分散体とを混合し、親水性固体粒子を水滴中に含有させる固体粒子含有エマルジョンの製造方法であって、
    混合する際に、
    剪断型分散装置を用いるか、又は超音波型分散装置を用いる、
    固体粒子含有エマルジョンの製造方法
  5. 親水性固体粒子を水滴に含有させる前及び/又は含有させる際に、剪断型分散装置を用いるか又は超音波型分散装置を用いて、該水滴をさらに微粒子化させる請求項4記載の製造方法。
  6. 親水性固体粒子を水滴に含有させる際及び/又は含有させた後に、油中水滴型エマルジョンの滴同士を合体させる請求項4又は5記載の製造方法。
  7. 混合する際に、剪断型分散装置を用い、50×103-1以上の剪断速度で剪断を行なう請求項〜6いずれか記載の製造方法。
  8. 混合する際に、超音波型分散装置を用い、3kW/m2以上の出力で行なう請求項〜6いずれか記載の製造方法。
  9. 固体粒子含有率が40重量%以上である請求項1〜8いずれか記載の製造方法。
  10. 油滴又は水滴に重合性モノマーを存在させ、請求項1〜9いずれか記載の製造方法によって固体粒子含有エマルジョンを製造した後、該重合性モノマーを重合させる固体含有ポリマーエマルジョンの製造方法。
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