JP4684665B2 - ブチルゴム系熱可塑性エラストマーのアニオン性水性分散体およびその製造方法 - Google Patents
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熱可塑性エラストマーの水分散体については、ジエン系熱可塑性エラストマーを中心にこれまで多くの検討がなされており、通常、ジエン系熱可塑性エラストマーを有機溶剤に溶解した有機相と、乳化剤を溶解させた水相とを混合し、これをホモミキサーや超音波分散機等を用いて乳化した後に有機溶剤を除去して製造されている(特許文献1および2参照)。
これに対し、ブチルゴム系熱可塑性エラストマーの水性分散体については知られておらず、優れた特性を有するブチルゴム系熱可塑性エラストマーの水性分散体およびその製造方法の確立が望まれている。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられる界面活性剤としては、アニオン系の界面活性剤であれば特に限定はなく、例えば脂肪族系ポリオキシアルキレンエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ロジン酸塩および脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム等の脂肪酸塩等を挙げることができる。これらは適宜、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
YO3SCH(CH2COOR1)COOR2 〔I〕
(式中、Yは、ナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩又はアンモニア塩を表し、R1、R2は、同一または異なってよく、炭素数5〜12のアルキル基又はフェニル基を示す。)で表される化合物である。
ジアルキルスルホコハク酸塩の具体例としては、例えば、ジオクチルスルホコハク酸塩、ジエチルヘキシルスルホコハク酸塩、ジアルキルフェニルスルホコハク酸塩、ジドデシルスルホコハク酸塩等を挙げることができる。それらの中でも特にジオクチルスルホコハク酸塩を使用した場合に好ましい結果が得られる。
R3(AO)nSO3Y 〔II〕
(式中、Yは、ナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩又はアンモニア塩を表し、R3は、炭素数5〜24のアルキル基または炭素数5〜24のアルケニル基を表し、nは、付加モル数を示し2〜50の整数を示す。AOは、−(−C2H4O−)n1−(−C3H6O−)n2−(n1=0〜50、n2=0〜50、但し、n1+n2=2〜50であり、n1≠0且つn2≠0のとき、−C2H4O−と−C3H6O−との順番は問わず、ブロックでもランダムでもよい。)を表す。)で表される化合物である。
脂肪族系ポリオキシアルキレンエーテル硫酸塩の具体例としては、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンオレイルエーテル硫酸塩等を挙げることができる。ポリオキシアルキレンラウリルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシアルキレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム等が挙げられる。ポリオキシアルキレンオレイルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシプロピレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンオレイルエーテル硫酸アンモニウム等を挙げることができる。それらの中でも、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル硫酸塩、特にポリオキシアルキレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムが好ましく、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムを用いた場合に、とりわけ好ましい結果が得られる。
R3COOM 〔III〕
(式中、R3は、炭素数5〜24のアルキル基または炭素数5〜24のアルケニル基、Mは、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニア塩またはアミン塩を表す。)で表される化合物である。
脂肪酸塩の具体例としては、例えば、オレイン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、等を挙げることができるが、それらの中で、特にオレイン酸塩を使用した場合に好ましい結果が得られる。
R4C6H4SO3M
(式中、R4は、炭素数5〜24のアルキル基、Mは、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩またはアミン塩を表す。)で表される化合物である。
アルキルベンゼンスルホン酸塩の具体例としては、例えば直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩等を挙げることができるが、なかでも直鎖型アルキル(C10〜C14)ベンゼンスルホン酸塩が好ましく、特にドデシルベンゼンスルホン酸塩、それらの中で特にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを使用した場合に好ましい結果が得られる。
ノニオン系界面活性としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキレート、オキシエチレンオキシプロピレンブロック共重合体およびポリグリセリンエステルなどを挙げることができる。
一方、高分子分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸エステルの塩、アルギン酸ナトリウムなどを挙げることができる。
本発明のブチルゴム系熱可塑性エラストマーのアニオン性水性分散体から得られるブチルゴム系熱可塑性エラストマーの成形品もまた、本発明の一つである。
前記成形品を作成するための温度条件としては、特に限定されないが、40〜200℃の温度にて、乾燥することが好ましい。
アニオン系界面活性剤は、熱安定性に優れているので、前記ブチルゴム系熱可塑性エラストマーの成形品は、アニオン系界面活性剤に起因する着色がない。
また、アニオン系界面活性剤は、ブチルゴム系熱可塑性エラストマーとの相溶性に優れているので、前記ブチルゴム系熱可塑性エラストマーの成形品からのアニオン系界面活性剤のブリードは、殆ど見られない。
従って、このブチルゴム系熱可塑性エラストマーのアニオン性水性分散体は、プラスチック成形体、繊維、紙、フィルム等のコーティング剤、ガスバリア剤、フォームラバー用原料、繊維やガラス繊維の収束剤、あるいはホース、チューブ、ベルト、ガスケット、パッキング成形材料の原料として広く利用可能であり、工業的価値の大きいものである。
内容積が500mlのセパラブルフラスコに、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンブロック共重合体(イソブチレン含有量=77重量%)30gとトルエン170gとを加え、50℃で4時間攪拌して溶解した。得られたトルエン溶液に、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム1.5gを100gの水に溶解した水溶液を添加し、これをホモミキサー(特殊機化工業株式会社の商品名“TKホモミキサー M型”)を用いて2分間攪拌混合して乳化液を得た。なお、攪拌混合時の回転数および温度は、それぞれ12000rpmおよび40℃に設定した。得られた乳化液を40〜90kPaの減圧下で40〜70℃に加熱し、トルエンを留去した。この結果、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンブロック共重合体のアニオン性水性分散体が得られた。
内容積が500mlのセパラブルフラスコに、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンブロック共重合体(イソブチレン含有量=77重量%)30gとシクロヘキサン153gとイソプロピルアルコール17gを加え、50℃で4時間攪拌して溶解した。得られた有機溶液に、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム1.5gを100gの水に溶解した水溶液を添加し、これをホモミキサー(特殊機化工業株式会社の商品名“TKホモミキサー M型”)を用いて2分間攪拌混合して乳化液を得た。なお、攪拌混合時の回転数および温度は、それぞれ12000rpmおよび40℃に設定した。得られた乳化液を40〜90kPaの減圧下で40〜70℃に加熱し、シクロヘキサンおよびイソプロピルアルコールを留去した。この結果、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンブロック共重合体のアニオン性水性分散体が得られた。
内容積が500mlのセパラブルフラスコに、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンブロック共重合体(イソブチレン含有量=77重量%)30gとシクロヘキサン170gとを加え、50℃で4時間攪拌して溶解した。得られたシクロヘキサン溶液に、オレイン酸カリウム1.2gを100gの水に溶解した水溶液を添加し、これをホモミキサー(特殊機化工業株式会社の商品名“TKホモミキサー M型”)を用いて2分間攪拌混合して乳化液を得た。なお、攪拌混合時の回転数および温度は、それぞれ12,000rpmおよび40℃に設定した。得られた乳化液を40〜90kPaの減圧下で40〜70℃に加熱し、シクロヘキサンを留去した。この結果、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンブロック共重合体のアニオン性水性分散体が得られた。
内容積が500mlのセパラブルフラスコに、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンブロック共重合体(イソブチレン含有量=77重量%)30gとヘプタン153gとイソプロピルアルコール17gを加え、50℃で4時間攪拌して溶解した。得られた有機溶液に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5gを100gの水に溶解した水溶液を添加し、これをホモミキサー(特殊機化工業株式会社の商品名“TKホモミキサー M型”)を用いて2分間攪拌混合して乳化液を得た。なお、攪拌混合時の回転数および温度は、それぞれ12000rpmおよび40℃に設定した。得られた乳化液を40〜90kPaの減圧下で40〜70℃に加熱し、ヘプタンおよびイソプロピルアルコールを留去した。この結果、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンブロック共重合体のアニオン性水性分散体が得られた。
実施例1においてジオクチルスルホコハク酸ナトリウムのかわりにポリオキシエチレンラウリルエーテルを用いた以外は実施例1と同様に操作し、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンブロック共重合体のノニオン性水性分散体を得た。
実施例1においてジオクチルスルホコハク酸ナトリウムのかわりにオクタデシルアミン酢酸塩を用いた以外は実施例1と同様に操作し、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンブロック共重合体のカチオン性水性分散体を得た。
実施例1においてジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを6g用いた以外は実施例1と同様に操作し、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンブロック共重合体のアニオン性水性分散体を得た
実施例1においてジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを0.15g用いた以外は実施例1と同様に操作し、ラテックス化を試みたが、トルエンの留去時に塊状物となり水性分散体は得られなかった。
各実施例および各比較例で得られたラテックスについて、平均粒子径、保存安定性および水性分散液から得られた成形品の状態を下記の方法に従って調べた。結果を表1に示す。
(平均粒子径)レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所の商品名“SALD−2000J”)を用いて測定した。
(保存安定性)水性分散液40gを50mlの容器に入れて密封し、25℃の温度環境下で放置した。そして、3ヶ月後に水性分散液の状態を目視により評価した。評価の基準は下記の通りである。
○:相分離なし
×:相分離あり
(着色性)水性分散液10gをφ120mmのシャーレに入れて、40℃で12Hr乾燥することで、水性分散液の皮膜を得た。この皮膜の状態を目視にて、下記の評価基準に従い評価した。
〇:皮膜の着色がない
×:皮膜が着色している
(界面活性剤のブリード)上記皮膜を用いて、下記の方法で評価した。
〇:皮膜の表面から界面活性剤がブリードしていない
×:皮膜の表面から界面活性剤が少しブリードしている。
Claims (6)
- ブチルゴム系熱可塑性エラストマーを、該ブチルゴム系熱可塑性エラストマー100重量部に対して1〜15重量部の割合のアニオン系界面活性剤の存在下で乳化分散させたブチルゴム系熱可塑性エラストマーのアニオン性水性分散体であって、ブチルゴム系熱可塑性エラストマーが、(A)イソブチレンを主要なモノマーとして構成されるブロックおよび(B)芳香族ビニル化合物を主要なモノマーとして構成されるブロックからなる共重合体であるブチルゴム系熱可塑性エラストマーのアニオン性水性分散体。
- ブチルゴム系熱可塑性エラストマーが、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンブロック共重合体である請求項1に記載のブチルゴム系熱可塑性エラストマーのアニオン性水性分散体。
- アニオン系界面活性剤がジアルキルスルホコハク酸塩、脂肪族系ポリオキシアルキレンエーテル硫酸塩、脂肪酸塩およびアルキルベンゼンスルホン酸塩よりなる群から選ばれた少なくとも1つである請求項1〜2の何れか1項に記載のブチルゴム系熱可塑性エラストマーのアニオン性水性分散体。
- 前記アニオン性水性分散体中のブチルゴム系熱可塑性エラストマー粒子の平均粒子径が0.1〜3μmである請求項1〜3の何れか1項に記載のブチルゴム系熱可塑性エラストマーのアニオン性水性分散体。
- 請求項1〜4の何れか1項に記載のブチルゴム系熱可塑性エラストマーのアニオン性水性分散体から得られるブチルゴム系熱可塑性エラストマーの成形品。
- 有機溶剤に溶解させたブチルゴム系熱可塑性エラストマーと、水に溶解させたアニオン系界面活性剤とを混合し、乳化させた後、前記有機溶剤を留去することからなる請求項1〜4の何れか1項に記載のブチルゴム系熱可塑性エラストマーのアニオン性水性分散体の製造方法。
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