JP4681948B2 - 再帰反射性標識体 - Google Patents

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Description

本発明は、夜間における視認性に優れる再帰反射性標識体に関するものである。
再帰反射性の標識体は、よく知られるものとしてガラスビーズ再帰反射シート上に矢印状のプリズム再帰反射体を設けたもの等があるが、例えば、デリネーターの表面(正面)に横断歩道標識又は踏切標識の絵図面を貼着し、これを保護カバー内に納め該保護カバーに鉄パイプ柱を取付けてなるデリネーター標識が開示されている(例えば特許文献1)。
一方、ガードレール本体の表面に耐候性反射蛍光塗料の焼付塗装により、前方の車道状況を示す文字・図形による反射型のガイドマークを付設したガードレールシステムが開示されている(例えば特許文献2)。またこれらを組み合わせ、蛍光塗料による塗装面上にプリズム再帰反射体を取り付けた再帰反射標識体も用いられてきている。
実願昭53−35678号のマイクロフィルム(実開昭54−138591号) 登録実用新案第3013531号公報
しかしながら、蛍光塗料を用いて塗装した場合、塗料に含有される蛍光性物質自体がそれ程耐候性の高いものではなく、塗装後に表面に露出した蛍光性物質が紫外線や水分等によって劣化され、長期間使用すると蛍光性の低下や変色が起こり、耐候性に難点があるものであった。また蛍光塗料を塗布するのでは、塗料中に配合可能な蛍光性物質の量に上限があり、上限まで配合しても昼間や夜間は兎も角、薄暮時や雨天時など周囲の状況が悪いと十分な視認性が得られない場合があった。
本発明は上記の如き課題に鑑みてなされたものであり、蛍光性の低下及び変色の発生が抑えられ、長期に亘って薄暮時や雨天時も含めて常に高い視認性を得ることができる再帰反射性標識体を提供せんとするものである。
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。すなわち、本発明に係わる再帰反射性標識体は、図柄部と、該図柄部の残余の部分である下地部とから標識面が形成され、前記図柄部と前記下地部との明度のコントラストにより前記標識面に図柄が表示され、該図柄によって標識としての意味が表示されている標識体であって、前記図柄部がプリズム再帰反射体により形成され、標識面を形成する基材の上に、蛍光層の前面に紫外線を吸収できるクリヤー層が設けられた蛍光シートが貼着されて下地部が形成され、前記蛍光シートの上にプリズム反射体が取り付けられ、該プリズム反射体の部分が図柄部となされ、前記蛍光シートのプリズム反射体が取り付けられていない残余の部分が下地部となされたことを特徴とするものである。
本発明に係わる再帰反射性標識体によれば、蛍光層が前面に設けられ紫外線を吸収できるクリヤー層に保護されることで、紫外線や水分による蛍光性物質の劣化が抑えられ、蛍光性の低下及び変色の発生の度合いを軽減して長期に亘って高い視認性を得ることができる。更には蛍光シートを貼着するのみで下地部を形成することができ、形成に係わる作業を簡便なものとすることができる。
本発明に係わる再帰反射性標識体によれば、蛍光層が前面に設けられ紫外線を吸収できるクリヤー層に保護されることで、紫外線や水分による蛍光性物質の劣化が抑えられ、蛍光性の低下及び変色の発生の度合いを軽減して長期に亘って高い視認性を得ることができる。更には蛍光シートを貼着するのみで下地部を形成することができ、形成に係わる作業を簡便なものとすることができる。
本発明に係わる最良の実施の形態について、図面に基づき以下に具体的に説明する。
図1は、本発明に係わる再帰反射性標識体の、実施の一形態を示すもので、(a)は標識面付近を示す斜視図、(b)は(a)のA−A断面におけるプリズム再帰反射体付近の詳細を示す断面図である。まず(a)において、再帰反射性標識体10は適宜の取付部材を用いて、地表から立設された支柱20に取り付けられて用いられ、主として道路のカーブに沿って設置されて運転者の視線誘導を行うものである。再帰反射性標識体10の標識面1は、下地部12上に矢印形状である図柄部11が設けられて形成され、図柄部11はプリズム再帰反射体、下地部12は蛍光シートによって形成されている。図柄部11の矢印形状により、道路の線形が矢印の示す方向にカーブしていることを道路利用者に認識させることができる。
次に(b)において、標識面1は基材4上に蛍光シート2が貼着され、蛍光シート2の前面側
αにプリズム再帰反射体3が取り付けられ、蛍光シート2により下地部12が、プリズム再帰反射体3により図柄部11が表現されている。蛍光シート2は前面側αからクリヤー層21、蛍光層22、着色基材層23、接着層24の順に一体に積層されたもので、蛍光層22はクリヤー層21と着色基材層23とにより挟まれていることで、水分から保護されている。またクリヤー層21は透明な合成樹脂からなり、紫外線吸収剤が配合されたもので、かかるクリヤー層21が前面に設けられていることで蛍光層22は太陽光に含まれる紫外線から保護されるようになされている。
プリズム再帰反射体3は、再帰反射性のプリズムを備えた再帰反射部31と接着層32が積層されたもので、接着層32により蛍光シート2に接着されると共に、ビスであり螺着時に基材4に達する締結手段Tにより基材4に固着されて取り付けられたものである。
蛍光シート2の、蛍光層22に用いられる蛍光性物質は、主として500nm〜640nmの波長の光で励起されて発光することで鮮やかな色調を発現するものであるが、クリヤー層21において、主にエネルギーの高い紫外線の領域である400nm以下の波長の光を吸収し、上記500nm〜640nmの波長の光についての光を透過するようにしておくことで、視認性と耐候性を高いものとできる。クリヤー層21において400nm以下の波長の紫外線を吸収するのはなるべく高い割合で吸収できるのが好ましいが、屋外において5年以上に亘って用いるには、80%以上を吸収できるようにしておくのが好ましい。また500nm〜640nmの波長の光については、なるべく高い割合で透過するようにしておくのが好ましいが、70%以上を透過できるようにしておくことで蛍光性物質による鮮やかな色調を発現させることができ好ましい。
蛍光シート2の、蛍光層22は蛍光性物質を高充填した合成樹脂や、蛍光性物質をマイクロカプセル化したものや、粉体状の蛍光性物質を接着剤や粘着剤等で着色基材層23の前面に稠密に直接付着させたもの等を用いることができる。いずれの場合でもクリヤー層21が前面側に設けられることで、劣化が防止されると共に、着色基材層23から脱落するのを防止できる。
蛍光層22の形成に用いられる蛍光性物質は特に限定されるものではなく、金属酸化物を主成分として蛍光を発する蛍光顔料等であり、蛍光性を発現させる金属酸化物としては、一般には、アルミニウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛、カドミウム、ストロンチウム等の酸化物やユーロピウム等の希土類酸化物等が用いられ、これらは一種のみが用いられてもよいが、二種以上が組み合わされて用いられてもよい。
本発明に係わる再帰反射性標識体を用いた際の視認性について、以下の実施例に基づきその効果を説明する。
(実施例1)
図1に示したような再帰反射性標識体において、縦40cm、横22cmの標示面に、表面積221cmの矢印形状の図柄部を設け、図柄部をプリズム再帰反射体、下地部を蛍光シートによって形成して本発明に係わる実施例1の再帰反射性標識体を得た。図柄部はポリカーボネート樹脂を赤橙色の蛍光顔料(BASF社製、ルモゲン)により着色したもの、下地部は黄色の蛍光シート(マルワ工業社製、蛍光スーパールミタック・黄色)を用いたもので、図柄部と下地部との明度差はL値で24である。
(比較例1)
下地部を黄色の蛍光塗料により塗装した塗装板とした以外は実施例1と同じにして、比較例1の再帰反射性標識体を得た。
(比較例2)
下地部の蛍光シートについて、クリヤー層を紫外線吸収剤を配合しない塩化ビニル製透明シートに変更した以外は実施例1と同じにして、比較例2の再帰反射性標識体を得た。
実施例1、比較例1及び比較例2の再帰反射性標識体を用いて視認性の評価試験を行った。評価試験は、被験者に自動車(カルディナバン)の運転席に乗車し、一体の再帰反射性標識体の正面に正対して10m、20m、40m、60m離れて視認した場合の視認性を評点によって評価する。また曲率半径90mの道路に再帰反射性標識体を10m間隔で五体設置し、ロービーム及びハイビームにて前照灯を照射しながら時速40kmで走行した際の視認性を評点によって評価する。これらの評価試験を晴天の日中、曇天の日中、薄暮時(周辺照度が6000cd/m)について行う。
被験者は26歳〜47歳までの男女10人で、評点は、再帰反射性標識体及びその図柄が、かなりかなりよく見えるが5点、よく見えるが4点、見えるが3点、見えにくいが2点、見えないが1点とし、被験者の主観にて評価を行った。その平均値を表1に示す。
評価試験の結果において、実施例1は、比較例1と比較して格段に視認性が高いことが表わされており、下地部に用いている蛍光シートによって、薄暮時などの周辺状況の悪い状態においても下地部が蛍光シートにより鮮やかな色調となり、高い視認性が得られることが明りょうに示されている。但し、実施例1と比較例2については、この条件下での視認性に大差は見られていない。
次に、紫外線に暴露された後の、劣化が考え得る状態での視認性の評価を行った。実施例1、比較例1及び比較例2の再帰反射性標識体を、JIS−A−1415(プラスチック建築材料の促進暴露試験方法)のWS形(サンシャインカーボンアーク灯を用いるもの)試験機を用いて、1000時間の促進耐候性を行い、結果を表1に示した方法と同一の方法及び被験者にて再度試験を行った。その結果を表2に示す。
表1の結果と、表2の促進耐候性試験後の結果とを比較すると、比較例1は許より、比較例2についても蛍光性物質の劣化による視認性の顕著な低下が見られ、屋外において長時間に亘って紫外線に曝されることで、視認性の低下が起こることが明りょうに示されている。対して、実施例1は比較例1及び比較例2と較べ、視認性の低下の度合いが極めて小さい程度で抑えられており、本発明に係わる効果が明りょうに示される結果となっている。
本発明に係わる再帰反射性標識体の、実施の一形態を示す説明図である。
符号の説明
1 標識面
11 図柄部
12 下地部
2 蛍光シート
21 クリヤー層
22 蛍光層
3 プリズム再帰反射体
10 再帰反射性標識体

Claims (1)

  1. 図柄部と、該図柄部の残余の部分である下地部とから標識面が形成され、前記図柄部と前記下地部との明度のコントラストにより前記標識面に図柄が表示され、該図柄によって標識としての意味が表示されている標識体であって、前記図柄部がプリズム再帰反射体により形成され、標識面を形成する基材の上に、蛍光層の前面に紫外線を吸収できるクリヤー層が設けられた蛍光シートが貼着されて下地部が形成され、前記蛍光シートの上にプリズム反射体が取り付けられ、該プリズム反射体の部分が図柄部となされ、前記蛍光シートのプリズム反射体が取り付けられていない残余の部分が下地部となされたことを特徴とする再帰反射性標識体。
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