JP4679099B2 - 油性ボールペン - Google Patents
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このような構造の水性ボールペンとしては、例えば、上記キャップ部材のシールゴムがショアA硬度で、Hs5〜35となるニトリルゴムを使用したものが知られている(例えば、本出願人による特許文献1参照)。
また、従来の油性ボールペンは、一般に、揮発性の低い、2−フェノキシエタノールやベンジルアルコールの混合溶剤を使用しているため、チップ先端からの揮発防止等は特に問題なかったため、チップ先端をキャップ部材のシール部材で覆う必要もないものである。
これらの油性インキは、揮発性インキであり、従来のシール部材等では、そのチップ先端から溶媒成分等が揮発しやすいため、チップ先端部のシール性が問題となり、書き出し時の筆記カスレや、筆感を損なうなどの課題が生じることがある。
(1)少なくとも、25℃での蒸気圧が0.001mmHg以上であり、分子構造内に芳香環を持たないアルコール、多価アルコール、グリコールモノエーテルから選ばれる溶剤を全溶剤中に50重量%以上含有する揮発性油性インキを充填してなるボールペン本体と、該ボールペン本体のチップ側に着脱自在となり、内部にシール部材を有するキャップ本体とを備え、該キャップ本体をボールペン本体のチップ側に装着した際に前記シール部材がチップ先端を覆うように形成してなる油性ボールペンであって、上記キャップ本体のシール部材がブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)の中から選ばれるゴムから構成されていることを特徴とする油性ボールペン。
(2)グリコールモノエーテルが下記一般式(I)で示される溶剤を使用した上記(1)記載の油性ボールペン。
本発明の油性ボールペンは、少なくとも、25℃での蒸気圧が0.001mmHg以上であり、分子構造内に芳香環を持たないアルコール、多価アルコール、グリコールモノエーテルから選ばれる溶剤を全溶剤中に50重量%以上含有する揮発性油性インキを充填してなるボールペン本体と、該ボールペン本体のチップ側に着脱自在となり、内部にシール部材を有するキャップ本体とを備え、該キャップ本体をボールペン本体のチップ側に装着した際に前記シール部材がチップ先端を覆うように形成してなる油性ボールペンであって、上記キャップ本体のシール部材がブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)の中から選ばれるゴムから構成されていることを特徴とするものである。
本発明の油性ボールペンは、用いる油性インキが、上述の如く、蒸気圧の高い特定の溶剤を使用した場合において、ボールペン本体のチップ先端から該溶剤成分等が揮発しやすくなり、チップ先端部のシール性を損なうことによる、書き出し時の筆記カスレや、筆感を損なうなどの特有の課題を解決することを目的として開発されたものである。
従って、上記特性、すなわち、25℃での蒸気圧が0.001mmHg以上のアルコール、多価アルコール、グリコールモノエーテルから選ばれる少なくとも1種の溶剤が全溶剤中で50重量%未満の場合や、用いる溶剤が25℃での蒸気圧が0.001mmHg未満の場合は、本発明の対象外である。
本発明では、上述の如く、少なくとも、25℃での蒸気圧が0.001mmHg以上であり、分子構造内に芳香環を持たないアルコール、多価アルコール、グリコールモノエーテルから選ばれる溶剤の含有量は、全溶剤中に50重量%以上であり、好ましくは、60〜100重量%が望ましく、これにより、優れた筆記性能及び筆記描線の乾燥性、並びに筆跡の裏抜けを防止することができるものとなる。なお、上記含有量の範囲であれば、上記特性以外のその他の溶剤を使用してもよいものである。
また、上記特性の溶剤を含む溶剤全体の含有量は、インキ全量に対して、20〜90重量%、好ましくは、30〜80重量%である。
本発明の揮発性油性インキに用いることができる樹脂としては、例えば、ケトン樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、フェノール系樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、ロジン系樹脂、アクリル系樹脂、尿素アルデヒド系樹脂、マレイン酸系樹脂、シクロヘキサノン系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン等に代表される樹脂が挙げられる。
これらの樹脂の含有量としては、油性インキ全量に対して、1〜30重量%が好ましく、より好ましくは1〜20重量%である。
この含有量が1%未満であると、粘度調整やペン先での摩耗が困難となり、30%超過であると、樹脂以外の原材料が配合できなくなったり、書き味に悪影響を及ぼすことになる。
具体的な分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルエーテル、スチレン−マレイン酸共重合体、ケトン樹脂、ヒドロキシエチルセルロースやその誘導体、スチレン−アクリル酸共重合体等の合成樹脂やPO・EO付加物やポリエステルのアミン系オリゴマー等が挙げることができる。
また、本発明では、着色剤として顔料あるいは顔料と染料併用の形で使用することもできる。顔料としては、例えば、カーボンブラック、フタロシアニン、アゾ、キナクリドン、ジケトピロロピロール、インダスレン、ジオキサジン等の有機顔料を使用することができる。更に、顔料としては、用いる有機溶剤に溶解し難く分散後の平均粒径が30nm〜700nmとなるものが好ましい。
顔料の含有量は、油性インキ全量に対し、0.5〜25重量%、好ましくは0.5〜20重量%までの範囲で必要に応じて含有することができる。
使用できる顔料は、単独で又は2種以上の混合で使用することができる。また、必要に応じて、無機顔料を用いた分散体や染料等も分散安定性に悪影響を与えない程度で添加することができる。更に、スチレン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸、メタアクリル酸エステル、アクリルニトリル、オレフィン系モノマーを重合して得られる樹脂エマルションや、インキ中では膨潤して不定形となる中空樹脂エマルション、または、これらのエマルション自身を着色剤で染着して得られる染着樹脂粒子からなる有機多色顔料等を用いることができる。
これらの顔料に対して併用する染料としては分散系を破壊しないものであれは特に制限なく使用することができる。これらの染料としては、通常の染料インキ組成物に用いられる直接染料、酸性染料、塩基性染料、媒染・酸性媒染染料、酒精溶性染料、アゾイック染料、硫化・硫化建染染料、建染染料、分散染料、油溶染料、食用染料、金属錯塩染料等や通常の顔料インキ組成物に用いられる無機および有機顔料の中から任意のものを使用することができる。その含有量は、油性インキ全量に対して、1〜50重量%の範囲で選ばれる。
本発明において、上記特性の油性インキをボールペン用リフィールに充填する場合には、インキ追従体を油性インキの後端部に充填することが好ましい。使用する溶剤は上記特性を有するものであり、揮発性があるので、揮発防止、吸湿性防止、インキ漏れ防止としてインキ追従体を充填するものである。
用いることができるインキ追従体としては、インキに使用する上記特性の溶剤に対して低透過性、低拡散性が必要であり、そのベースとしては不揮発性や難揮発性の流動体、具体的には、ポリブテンや流動パラフィン等、上記特性の溶剤と基本的に相溶性を有さない非シリコン系の油性類を使用することができる。これらの物質の粘度が低い場合、増粘剤やゲル化剤を用いるとよい。具体的には、金属セッケン類、ベントナイト類、脂肪酸アマイド類、水添ヒマシ油類、酸化チタンやシリカやアルミナ等を含む金属微粒子類、セルロース類、エラストマー類等が挙げられる。
本発明において、上記シール部材に用いるブチルゴム(IIR)は、イソブチレンと少量のイソプレンを超低温共重合させた極めて不飽和度の低いゴムであり、最大の特徴は気体透過性の低いことである。用いるブチルゴム(IIR)としては、各グレードのものを使用でき、不飽和度(イソプレン量)が3〜5%のものを使用することが好ましく、また、塩素化ブチルゴム(CIIR)、臭素化ブチルゴム(BIIR)も使用することができる。
また、上記シール部材に用いるエチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)は、エチレンとプロピレンの共重合体、EPDMは、エチレンとプロピレン及び若干ジエン成分との3元共重合体であり、その特徴はIIRゴムに非常に類似した非ジエン系非極性ゴムである。
なお、IIRゴムは、一般にショアA硬度が70以上となるものが多く、ゴム硬度を上記の範囲20〜50(更に好ましい範囲となる30〜45)にするためには、本発明の効果を損なわないように、好適な可塑剤(鉱油、ポリブテン)等で調整される。
これらのゴムの中で、特にIIRゴムの使用が特に好ましいものである。これは上記特性の溶剤に対して揮発防止に効果があるだけでなく、IIRゴム構造そのものに効果があると考えられる。すなわち、IIRゴムの構造は、上述の如く、イソブチレンと少量のイソプレンの共重合体であり、特に上記一般式(I)で示す溶剤は、イソプレン系溶剤であり、IIRゴムに対する親和性が高いものである。また、溶剤のもつアルコール性水酸基がゴムに対する耐性を持たせるため、大きく膨潤しないものと推察される。更に、この親和性がチップ先端のインキ固化物をIIRゴム側に付着させるため、書き出し時の筆記カスレを抑制し、柔らかく滑らかな筆感にすることが可能となると推察される。
本発明では、上記特性の溶剤で調製した油性インキは、筆記した後、チップ先端部にインキ乾燥固化物が溜まることとなる。再筆記時にはその固化物がボールの回転を妨げ、書き出し時の筆記カスレを生じてしまう。しかも、これはシールゴムとして水性ボールペン等で多用されているNBRではIIRゴムの書き出し時のスムーズさはないものである。つまり、単にIIRゴム等の揮発防止効果だけではなく、IIRゴム等のイソプレン系ゴムとインキ溶剤の親和性によりペン先がゴムに潜り込んだ後、インキ固化物をIIRゴム等側に転写させチップ先端は綺麗な表面を取り戻すといった効果が大きく働いているからである。そのため、本発明では、溶剤の揮発防止だけではなく、書き出し時のカスレが良好になり、柔らかく滑らかな筆感にすることに優れた油性ボールペンを提供することが可能となったのである。
本実施形態の油性ボールペンAは、図1〜図3に示すように、上記特性の溶剤を全溶剤中に50重量%以上含有する揮発性油性インキを充填してなるボールペン本体10と、該ボールペン本体10のチップ15側に着脱自在となり、内部にシール部材20を有するキャップ本体30とを備えたものである。
このキャップ本体30には、ボールペン本体10のチップ15側に装着した際に前記シール部材20がチップ15先端を覆うように形成してなるものである。このシール部材20は、図3(a)〜(c)に示すように、全体の外形形状が円形形状となっており、その内側には段部となったチップ被覆シール部21を備え、ボールペン本体10のチップ15側にキャップ本体20を装着した際に、図2に示すように、前記シール部材20の弾性によりチップ15先端を覆うように構成されたものである。
このキャップ本体30のシール部材20は、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)の中から選ばれるゴムから構成されるものであり、好ましくは、ショアA硬度が20〜50の範囲となるブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)の中から選ばれるゴムから構成されるものである。なお、図示符号31は、キャップ本体30に圧入により成形されたPP(又はPET)からなる部材である。
シールゴムとして、下記に記載のゴム1〜6を用いた。また、評価用溶剤、評価用インキは下記組成を用いた。
ゴム1:エチレンプロピレンゴム(EPDM、ショアA硬度35)
ゴム2:ブチルゴム(IIR、ショアA硬度40)
ゴム3:アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR、ショアA硬度40)
ゴム4:シリコーンゴム(Q、ショアA硬度30)
ゴム5:フッ素ゴム(FKM、ショアA硬度70)
溶剤1:3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール
溶剤2:ジプロピレングリコールジメチルエーテル
評価用インキ1:
スピロンバイオレットC−RH(保土ヶ谷化学工業社製) 8.0
スピロンイエローC−GNH(保土ヶ谷化学工業社製) 5.0
Printex#35(デグッサ社製) 8.0
ポリビニルブチラール BL−1(積水化学社製) 4.0
ハイラック110H(日立化成社製) 12.0
リン酸エステル:フォスファノールLB―400 1.46
アミン系化合物:ポリオキシエチレンオレイルアミン
(TAMNO−5) 1.04
3−メトキシブタノール 5.0
3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール 55.5
スピロンイエローC−GNH(保土ヶ谷化学工業社製) 15.0
ハイラック111(日立化成社製) 20.0
ジプロピレングリコールジメチルエーテル 65.0
これらの評価結果を下記表1に示す。
各種ゴムの寸法を測定し、評価用溶剤を入れた10mmlガラス瓶に各種ゴムを浸漬した。ガラス瓶を密栓し、50℃で3日間放置した後、再度寸法を測定し、膨潤率を測定した。
膨潤率は、上述したように、初期と経時後の重量から重量変化率を算出し、膨潤率の度合いを下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:膨潤率が1.00%以下のもの
○:吸湿率が1.00超過〜2.00%未満
△:吸湿率が2.00〜3.00%未満
×:吸湿率が3.00%以上のもの
準備した10mmlガラス瓶に、各種ゴムを瓶の内径の大きさに抜き取り評価用溶剤を入れた後、ゴムの蓋を圧入し、溶剤重量と全重量を測定した。その後、50℃、3日間放置した後、再測定し、下記式により溶剤透過率を測定し、溶剤透過率の度合いを下記評価基準で評価した。
溶剤透過率(%)=〔(経時後全重量−初期全重量)/(溶剤重量)〕×100
評価基準:
◎:膨潤率が1.00%以下のもの
○:吸湿率が1.00超過〜2.00%未満
△:吸湿率が2.00〜3.00%未満
×:吸湿率が3.00%以上のもの
試験に用いたボールペンは、図1〜図3に準拠するものであり、シール部材として上記ゴム種を用いると共に、内径1.60mmのポリプロピレンチューブ、ステンレスチップ(ボールは超硬合金で、直径1.0mm)を有するものを用いた。
また、上記組成の評価用インキ1及び2を各0.2gを充填した後、25℃、65%条件下にて、30分毎にPPC用紙に「三菱」という文字の筆記を行い、5回繰り返した後に、文字のカスレ度合いを下記評価基準で官能評価した。
評価基準:
○:ボールの回転がスムーズで問題なく筆記できたもの
×:ボールの回転がスムーズでなく筆記時にひっかかりがあったもの
10 ボールペン本体
20 シール部材
30 キャップ本体
Claims (3)
- 少なくとも、25℃での蒸気圧が0.001mmHg以上であり、分子構造内に芳香環を持たないアルコール、多価アルコール、グリコールモノエーテルから選ばれる溶剤を全溶剤中に50重量%以上含有する揮発性油性インキを充填してなるボールペン本体と、該ボールペン本体のチップ側に着脱自在となり、内部にシール部材を有するキャップ本体とを備え、該キャップ本体をボールペン本体のチップ側に装着した際に前記シール部材がチップ先端を覆うように形成してなる油性ボールペンであって、上記キャップ本体のシール部材が不飽和度(イソプレン量)が3〜5%のブチルゴム(IIR)、塩素化ブチルゴム(CIIR)、臭素化ブチルゴム(BIIR)の中から選ばれるゴムから構成されていることを特徴とする油性ボールペン。
- シール部材を構成するゴムのショアA硬度は、20〜50の範囲のものである請求項1又は2記載の油性ボールペン。
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