JPH0546390B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明はボールペン用インキ組成物に関するも
ので、更に詳しくはボールの回転によるボール受
座の摩耗を防止して良好なインキの吐出性を確保
せしめると共に、ボールペンのペン先の下向け放
置時におけるペン先からのインキの漏れを極力防
止したボールペン用インキ組成物に関する。

（従来の技術） 従来ボールペンとしては油性のもの或いは水性
のものが知られているが、油性ボールペンの場合
その構造が極めて簡単であり、またインキ残量が
一目でわかるという長所を有している反面、数千
〜１万CPSという高粘性のインキであるが故に筆
記面におけるインキの浸透が悪くなり、そのため
ボテが発生したり筆跡が割れたりするという欠点
を有しており、また水性ボールペンの場合、油性
のそれとは逆にボテ等の発生はなく瑞々しい鮮明
な筆跡が得られる反面、インキ吸蔵部とボールペ
ンペン先との間にインキ中継部材を介在させたり
するなど構造的に複雑になりがちであるという欠
点を有しており、両者にはそれぞれ一長一短があ
つた。

本発明者らはこの様な事情に基き、油性ボール
ペンのもつ長所と水性ボールペンのもつ長所両方
を兼ね備えた機能的にも経済的にも優れたボール
ペンを得るべく種々研究を重ねたところ、１つの
知見としてそのインキの粘度が50〜2000CPSの範
囲内に調製されていることが最適であるというこ
とを得るに致つた。

しかし乍ら、単に樹脂等により粘度を上記範囲
に設定したインキを実際にボールペンに充填して
筆記すると、ボールの回転摩擦によりボール受座
が摩耗して、所謂、ボール沈みが発生し、これに
よつてボールペンチツプ内のインキ流通溝がボー
ルによつて塞がれインキの吐出性に問題が生じ、
遂には筆記不能になつてしまうなど新たな問題を
生起せしめることになつた。従来の水性ボールペ
ンはおいては、使用するインキの粘度が数CPSと
いう低粘性であるため、仮にボール沈みが発生し
てもその毛管力によつてインキの吐出量はある程
度確保できるため左程この傾向はみられず、また
数千〜１万CPSという高粘性のインキを使用する
油性ボールペンにおいても、インキ自体がその高
粘性に起因して潤滑剤の役目を果たすことにな
り、これによつてボール沈みは抑止され、インキ
の吐出性にはあまり問題が無かつたものである。

本発明者らはこの様な状況に基づき、粘度が50
〜2000CPSのインキを使用したボールペンにおけ
るボール受座の摩耗を防止すべく種々の添加剤に
ついて検討を重ねた結果、分子末端に第１級もし
くは第２のアルコール基を有するポリエーテルポ
リオールが最適であることを見い出し、既に出願
をしている。

しかし乍ら、その後の研究開発によつて新たな
問題点を招来することになつた。

即ち、前述したようなボールペン用インキ組成
物を一方にペン先を有するインキ収容管に充填
し、これをペン先を下向けにして放置した場合、
インキがペン先より経時的に漏出し易いという問
題が発生することである。

（発明の目的） そこで本発明者らは上記事情に鑑み、粘度50〜
2000CPSのインキを使用したボールペンのペン先
下向け放置時におけるペン先からのインキの漏れ
を防止すべく種々の添加剤について鋭意研究を行
なつた結果、ガーガムが最適であることを見い出
し、遂に本発明を完成したものである。

（発明の構成） 即ち本発明は、染料と樹脂と溶剤と水と分子末
端に第１級もしくは第２級のアルコール基を有す
るポリエーテルポリオールとから少なくともなる
粘度50〜2000CPSのボールペン用インキ組成物で
あつて、該ボールペン用インキ組成物にはガーガ
ムが含有されていることを特徴とするボールペン
用インキ組成物を要旨とするものである。

本発明において使用されるガーガムは、ヒドロ
キシプロピル化ガーガムであつて、その具体例と
してはジヤガーHP−８、同HP−11、同HP−60
（以上、三晶(株)製）等が挙げられ、これらは１種
もしくは２種以上混合して使用可能であり、その
使用量はインキ組成物全重量に対して0.05〜1.0
重量％が特に好ましい。ガーガムの含有量が0.05
重量％未満ではあまり効果が得られず、また1.0
重量％を越えるとインキ自体の増粘傾向が見ら
れ、書き味が良くなく実用上不適なものが得られ
る。

本発明における分子末端に第１級もしくは第２
のアルコール基を有するポリエーテルポリオール
の具体例としては、サンニツクスPP−200、同
PP−400、同GP−250、同GP−400、同TP−
200、同TP−400、同GL−3000、同GL−2800、
同GEP−2800、同FP−750（以上、三洋化成(株)製）
等が挙げられ、これらも同様に単独もしくは混合
して使用可能であり、その使用量はインキ組成物
全重量に対して５〜30重量％が特に好ましい。ポ
リエーテルポリオールの含有量が５重量％未満で
は所望の潤滑性が得難くなり、また30重量％を越
えると筆跡が滲み易くなつてあまり好ましくな
い。

本発明に使用される他の成分である染料、樹
脂、溶剤は従来より公知の水性インキの各成分と
何ら異なるところはない。その一例を示せば染料
として水溶性染料、樹脂としてはピロリドン系樹
脂、セルロース類、溶剤としてはエチレングリコ
ールの如き水溶性有機溶剤等である。

（実施例） 以下本発明を実施例に基づき更に詳細に説明す
るが、実施例中「部」とあるのは「重量部」を示
すものとする。

実施例 １ ウオーターブラツク187L（オリエント化学(株)製）
８部 ポリビニルピロリドンＫ−90 ６〃 エチレングリコール 15〃 ガーガム（ジヤガーHP−11、三晶(株)製）0.08〃 サンニツクスPP−400（ポリエーテルポリオール、
三洋化成(株)製） 10〃 水 60.92〃 還流冷却器を備えたフラスコに上記配合物を入
れ、60〜80℃の加熱下撹拌溶解し、ろ過させて不
溶解残査を除去して、粘度350CPSの黒色のボー
ルペン用インキ組成物を得た。

実施例 ２ ウオーターブルー＃９ ８部 ヒドロキシプロピルセルロースＨ（日本曹達(株)製）
４部 エチレングリコール 16〃 ガーガム（ジヤガーHP−60、三晶(株)製） 0.1〃 サンニツクスTP−400（ポリエーテルポリオール、
三洋化成(株)製） 15〃 水 56.9〃 実施例１と同様の方法により粘度1000CPSの青
色のボールペン用インキ組成物を得た。

比較例 実施例１におけるガーガム（ジヤガーHP−
11、三晶(株)製）を除去し、水を61部とした以外は
全て実施例と同様になしたものを比較例とした。

（発明の効果） 以上実施例１、２、比較例で得られたボールペ
ン用インキ組成物を洋白ボールペンチツプを有す
る透明なインキ収容管にそれぞれ充填し、これら
のものをボールペンチツプ（ペン先）を下向けに
してビーカーの中に立てて１日室温で放置したと
ころ、実施例１、２についてはビーカーの底面に
おけるペン先の当接部分のみ僅かな着色が見られ
ただけであるが、比較例においては明らかにペン
先からインキが漏出してビーカーを汚染してしま
つていた。

以上述べた如く本発明によれば、インキの粘度
を50〜2000CPSに設定してこれをボールペンのイ
ンキ収容管に充填して筆記を行なつても、ボール
の回転によるボール受座の摩耗が防止でき、ボー
ル沈みによる筆記不能といつた問題が極力解消で
きることは勿論の事、ペン先の下向けにして放置
した場合にはペン先からの経時的なインキの漏れ
が防止できるなどの数々の優れた効果を発揮する
ものである。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 染料と樹脂と溶剤と水と分子末端に第１級も
   しくは第２級のアルコール基を有するポリエーテ
   ルポリオールとから少なくともなる粘度50〜
   2000CPSのボールペン用インキ組成物であつて、
   該ボールペン用インキ組成物にはガーガムが含有
   されていることを特徴とするボールペン用インキ
   組成物。