JP4677679B2 - 製品の製造プロセスにおける特性調整方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、製品の製造プロセスにおける特性調整方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
製品の製造プロセスには多数の工程が組み込まれ、その途中には特性調整工程が設けられて、その特性調整工程で特性制御加工条件を付与することにより製品完成時における特性の合わせ込みを行うものがある。例えば図6に示す製造プロセスでは、工程1〜工程n−1が順に実施された後、特性調整工程である工程nでは特性制御加工条件が付与される。更に引き続き、工程n+1等が実施された後、出来上がった製品の特性検査が実施される。例えば、セラミック製品においては、熱処理が特性調整工程に該当し、同工程の熱処理条件が特性制御加工条件に該当する。この場合、特性検査で得られた特性結果を特性調整工程にフィードバックして同工程での特性制御加工条件を変化させ、特性検査での特性結果を狙い値に合わせ込むようにしていた。
【0003】
しかしながら上記の手法では、製品特性が狙い値を外れた場合、それが最終の特性検査工程で確認され、その後に修正アクションが起動される。そのため、特性調整工程(工程n)から特性検査工程までのリードタイムがある場合、リードタイム相当の期間内に生産された製品は全て狙い値を外れてしまうという問題が生じる。
【0004】
一方、特性検査での特性結果を特性制御加工条件にフィードバックする手法とは異なり、製品特性を予測する手法が特開平10−187206号公報や特開平5−204407号公報に開示されている。例えば特開平10−187206号公報では、被処理体を処理するためのプロセスを模擬した数式モデル(理論式)をベースに処理の予測を行っており、予測精度を向上させるべく被処理体の種類若しくは処理条件に応じてグループ分けした過去の処理の実績データに基づきオフセット値を求め補正している。しかしながら、上記公報の手法では、処理結果の予測に数式モデル(理論式)を必要とするため、数式モデルを精度良く作成しないと予測精度が確保できない。また、数式モデルの作成自体が不可能である製造プロセスが存在することも考えられ、数式モデル化が不可能な製造プロセスに関しては適用できなかった。
【0005】
また、特開平5−204407号公報では、プロセスの状態を表す変量として状態量及び出力量を所定時間間隔でサンプリングし、各サンプリング時点から過去の所定期間前までのサンプリング値を用いて重回帰分析部で重回帰分析を行い偏回帰係数を求めている。そして、偏回帰係数のパターンをニューラルネットワークで分類することにより、プロセスの出力値の変動パターンを予測するようにしている。しかしながら、上記公報の手法では、プロセス(システム)の出力の特性そのものを予測するのではなく、変動パターンを予測しているに過ぎない。そのため、製品の最終特性を望み通りに合わせ込む等の細かな調整は不可能であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題に着目してなされたものであって、その目的とするところは、製品特性の合わせ込みを比較的容易に実現し、且つ特性合わせ込みの精度を向上させることができる製品の製造プロセスにおける特性調整方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる製造プロセスでは、特性制御加工条件を付与するための特性調整工程が多数の工程の途中に実施され、その特性調整工程の後に少なくとも1つの別工程を経て特性検査工程が実施される。また特に本発明の特性調整方法では、大別してデータ準備段階と、モデル作成段階と、モデル運用段階とを要件としている。詳しくは、データ準備段階では、特性調整工程よりも前の各工程でそれぞれ得られた中間特性と、特性調整工程で付与された特性制御加工条件と、その時々の中間特性及び特性制御加工条件の結果得られた特性検査工程での製品特性とからなるロット毎のデータセットが準備される。また、モデル作成段階では、前記準備したデータセットを用い、中間特性と特性制御加工条件とを入力、製品特性を出力とした時の因果関係を表す学習モデルが作成される。更に、モデル運用段階では、特性調整工程に際し、前記作成した学習モデルを用いて、特性調整工程以前の中間特性を前提に、特性制御加工条件を変化させた時の製品特性を予測し、予測誤差の小さい特性制御加工条件が検索される。そして、特性調整工程では、モデル運用段階で検索した特性制御加工条件を付与して製品特性の合わせ込みが行われる。
【0008】
要するに、中間特性と特性制御加工条件は、製品特性を決定するための重要なファクタである。それ故に、前記の通り中間特性、特性制御加工条件及び特性検査工程での製品特性の因果関係から学習モデルを作成し、更に以後のプロセスにて学習モデルを運用すれば、その都度の中間特性及び特性制御加工条件に対する製品特性が正確に予測できるようになる。言い換えれば、特性調整工程では、それ以前の工程の中間特性(製品の出来映え)から、所望の製品特性を得るための特性制御加工条件が自動的に且つ適切に検索できる。この場合、既述した従来公報の手法とは異なり、数式モデル(理論式)を必要とすることなく製品特性の合わせ込みが容易に実現できる。また、最終的な製品特性を見込んだ特性予測が可能となるため、特性合わせ込みの精度を向上させることができる。
【0009】
なお、特性検査工程での検査結果を特性調整工程にその都度フィードバックする従来方法では、特性調整工程と特性検査工程との間に別工程があるためどうしても特性合わせ込みに時間的な遅れが生じるが、本発明では、学習モデルにより製品特性を予測するため、時間的な遅れを生じることなく特性の合わせ込みが実施できる。
【0010】
本明細書において、特性調整工程で付与する特性制御加工条件とは、最終的な製品特性に影響を与える加工条件を言い、代表的なものとして、セラミック製品の熱処理条件等が挙げられる。また、一連の製造プロセスの中で製品特性への影響度の大きい工程が特性調整工程として認定される。
【0011】
また、請求項に記載の発明では、データ準備段階で準備した各データセットについて中間特性と特性制御加工条件とをパラメータとして各データセットを多次元空間にプロットし、それら各データセットを複数のクラスタに分類すると共に、同一クラスタのデータ平均から新たな代表点を算出する。そして、モデル作成段階では、前記算出した代表点を用いて学習モデルを作成する。この場合、データ分布の偏り是正の効果と、平均化処理によるノイズ低減効果とが併せて得られる。その結果、学習モデルの近似精度が向上し、ひいては製品特性の予測精度が向上する。また、データ圧縮効果により学習処理時間が短縮できる。
【0012】
クラスタ処理として具体的には、請求項に記載したように、各データセットを複数のクラスタに分類する際、多次元空間における各データセットの最大距離を計算し、その最大距離に対する割合X%の範囲内のデータを同一クラスタとして分類することでクラスタ処理を行うと良い。
【0013】
請求項に記載の発明では、モデル作成段階がニューラルネットワークにより構築される。この場合、多数の入力及び出力を適宜組み合わせて因果関係を類推することにより、精度の良い学習モデルが短時間で得られるようになる。
【0014】
請求項に記載の発明では、平時流れる製造プロセスにて所定数のデータセットが蓄積されると、その時点でデータ準備段階及びモデル作成段階により学習モデルが更新される。つまり、製造プロセスでは様々な要因で工程状態が変動しており、過去に作成された学習モデルはもう既に最適モデルではなくなっている可能性もある。この場合、学習モデルを必要に応じて更新することにより、工程状態等が変動したとしてもその変動に対応させて学習モデルを最適化することができる。
【0015】
請求項に記載の発明では、新たに学習モデルを作成した際、その最新の学習モデルと少なくとも現時点で既に採用している学習モデルとを比較し、予測誤差が最小のものを今後採用する学習モデルとして決定する。これにより、製品特性の合わせ込みがより一層好適に実施できるようになる。
【0016】
本発明は、セラミックガスセンサの製造プロセスとして好適に用いることができる(請求項)。つまり、セラミックガスセンサは、被検出ガス中の特定成分濃度を検出するものであり、センサ素子の固体電解質層、電極層、保護層が各々の工程で作製され、その後の特性調整工程では特性制御加工条件として熱処理条件が設定される。また、特性検査工程ではセンサ素子の出力特性が検査される。
そして、こうしたガスセンサの製造プロセスにおいて、モデル運用段階では、特性調整工程以前の中間特性を前提に熱処理条件が変更され、所望のセンサ出力特性を得るための熱処理条件が検索される。かかる場合、中間特性や特性制御加工条件(熱処理条件)によりセンサ出力特性が変化するが、上記した本発明によれば、センサ出力特性が常に規格通りに調整できる。その結果、ガスセンサの不良発生を防止し、品質向上を図ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。本実施の形態では、セラミックガスセンサとしての酸素濃淡起電力式の酸素センサ(O2 センサ)を対象にその製造プロセスについて本発明を具体化することとしており、先ずはじめにO2 センサの概要及びその製造プロセスを簡単に説明する。
【0018】
図4は、O2 センサにおけるセンサ素子の構成を示す断面図である。図4には、センサ素子の全体構成を(a)に示し、断面構造の拡大図を(b)に示す。センサ素子10において、断面コップ状の固体電解質層11はジルコニアZrO2 等の酸素イオン伝導性酸化物焼結体よりなり、その外表面には、排ガス側電極層12が設けられ、内表面には大気側電極層13が設けられている。これら各電極層12,13は白金等の触媒活性の高い貴金属にて構成されている。また、排ガス側電極層12の外側には、アルミナ等よりなる電極保護層14と被毒物捕獲用のトラップ層15とが設けられている。
【0019】
便宜上図示は省略するが、上記センサ素子10には、固体電解質層11の基端部(図の上端部)にハウジング及びコネクタ端子等が組み付けられると共に、固体電解質層11の先端側に断面コ字状の保護カバーが組み付けられる。更に、固体電解質層11の内部空間にはヒータが組み付けられるようになっている。
【0020】
上記センサ素子10を具備するO2 センサは、その出力特性として、排ガス中の空燃比が理論空燃比(λ=1)に対してリッチかリーンかに応じた概ね2値の電圧信号を出力する。
【0021】
図1には、センサ素子10の製造プロセスと生産管理システムの全体構成とを示しており、始めに製造プロセスの流れを簡単に説明する。但し図中の各工程は、センサ素子10の製造プロセスの全てではなく、便宜上主立ったものだけを図示している。
【0022】
図1において、工程1では、ジルコニアZrO2 が断面コップ状に成型・研削され、続く工程2では、ジルコニアZrO2 が焼成される。この工程1,2により固体電解質層11が形成される。その後、工程3では、固体電解質層11の内外表面に白金めっきが施され、排ガス側電極層12及び大気側電極層13が形成される。更に、工程4では、プラズマ溶射法等により電極保護層14が形成され、続く工程5では、トラップ層形成用のスラリーが塗布されてトラップ層15が形成される。
【0023】
その後、特性調整工程である工程6では、所定の熱処理温度及び雰囲気下でセンサ素子10がエージングされる。工程7では、センサ素子10に対してハウジングやコネクタ端子等が組み付けられる。最後に、工程8では、センサ素子10の特性検査が実施される。
【0024】
また、生産管理システムとして、工程毎にパソコン21a〜21hが設置されており、各パソコン21a〜21hによりそれぞれの工程が管理されると共に工程情報として中間特性が逐次取り込まれる。工程毎のパソコン21a〜21hはネットワーク化されており、各パソコン21a〜21hで得られた中間特性、特性制御加工条件及び最終特性の各データは工程管理データベース22に送られ、それら中間特性、特性制御加工条件及び最終特性がロット毎のデータセットとして記憶保持される。
【0025】
具体的には、工程1では固体電解質層11の成型比重が計測され、その計測データがパソコン21aに取り込まれる。工程2では固体電解質層11の焼成比重が計測され、その計測データがパソコン21bに取り込まれる。工程3では各電極層12,13のめっき膜厚が計測され、その計測データがパソコン21cに取り込まれる。工程4では電極保護層14のコート膜厚が計測され、その計測データがパソコン21dに取り込まれる。工程5ではトラップ層15の塗布重量が計測され、その計測データがパソコン21eに取り込まれる。工程管理データベース22では、これら工程1〜工程5で得られた各計測データ(中間特性)が表計算ソフト等によりロット毎に記憶保持される。
【0026】
また、工程6(特性調整工程)では、特性制御加工条件として、エージング温度及び熱処理炉内における添加物濃度が決定される。そして、この特性制御加工条件がパソコン21fから工程管理データベース22に送られ、上記の中間特性と同様、ロット毎に記憶保持される。
【0027】
工程8(特性検査工程)では、センサ素子10の特性検査の結果が最終特性としてパソコン21hに取り込まれ、上記の中間特性や特性制御加工条件と同様、工程管理データベース22に送られてロット毎に記憶保持される。因みに、特性検査工程では、図5に示すように、被検出ガスの雰囲気が所定周期でストイキ(理論空燃比)を中心にリッチ/リーンで切り替えられ、その時のセンサ素子10の出力からリッチ時間比率Dr、リッチ時の出力変動幅Va、1周期の時間Tfが計測される。なお、リッチ時間比率Drは、1周期時間Tf中のリッチ時間Trの時間比率である(Dr=Tr/Tf)。そして、それら計測データDr,Va,Tfが最終特性としてパソコン21hに取り込まれる。
【0028】
また、工程管理データベース22にはシミュレーションパソコン23が接続されている。このシミュレーションパソコン23は、工程管理データベース22に記憶されているロット毎のデータセットを用い、中間特性と特性制御加工条件とを入力、最終特性を出力とした時の因果関係を表す学習モデルを作成すると共に、特性調整工程に際し、前記作成した学習モデルを運用して最終特性の合わせ込みを実施する。
【0029】
次に、シミュレーションパソコン23により実施される製品特性の合わせ込み手順について図2を用いて詳しく説明する。図2は、処理の流れを示すブロック図である。なお以下の説明は、シミュレーションパソコン23を主体とする制御動作として記載する。
【0030】
先ずはじめに、「処理1」(データ準備段階)として、工程管理データベース22に記憶保持されているロット毎のデータセット(バッチ処理データの集合)を準備する。このとき、各製品種類(品番)毎に設けた中間特性の規格を参考にしてデータセットを取捨選択する。すなわち、中間特性データの上限値と下限値とを予め決めておき、中間特性データが上限値又は下限値から外れた場合、その中間特性データを含むデータセットを削除するか、或いは中間特性データを上限値又は下限値で丸め込む。
【0031】
次に、「処理2」として、前記処理1により得られた各データセットについてクラスタ処理を実施する。つまり、中間特性及び特性制御加工条件からなる入力データをパラメータとして各データセットを多次元空間にプロットし、それら各データセットの2点間距離があるレベル以下の入力データを同一クラスタとして分類する。そして、これら同一クラスタの入力データの平均を取ったものを入力の新たな代表点として設定する。
【0032】
その具体的内容を図3により説明する。なお図3では、入力が2次元(2入力:x1,x2)である場合について示す。各データセットに相当する入力点は、2次元座標において(a)のように分布しており、全ての入力点間の距離のうち最大距離dmaxを計算する。そして、この最大距離dmaxを基準に最大距離dmaxのX%の範囲内の入力点を同一クラスタとして認定する。最大距離dmaxの20%でクラスタ化する場合、(b)のように各入力点がクラスタ1〜クラスタ4で分類され、クラスタ1〜クラスタ4について各々中心点(代表点)が計算される。また、最大距離dmaxの50%でクラスタ化する場合、(c)のように各入力点がクラスタ1,クラスタ2で分類され、クラスタ1,クラスタ2について各々中心点(代表点)が計算される。
【0033】
また、元の入力に対応する出力(最終特性)についても入力同様、同一クラスタの出力の平均をとり、それを新たな出力の代表点として設定する。そして、上記クラスタ処理の結果を、新たなデータセットとして登録する。
【0034】
更に、「処理3」(モデル作成段階)として、前記処理2(クラスタ処理)によって得られたデータセットを用い、中間特性と特性制御加工条件とを入力、最終特性を出力としてニューラルネットワークにより入出力間の因果関係を定量化し学習モデルを作成する。この学習モデルは、シミュレーションパソコン23の所定のメモリ領域(ハードディスク)に格納される。
【0035】
なおここで、モデル作成の手段として、ニューラルネットワーク以外に、ファジィ推論、GMDH(Group Method of Data Handling )等の知的制御手法を用いることも可能である。
【0036】
一方、上記の如く作成した学習モデルは以下の通り運用される(モデル運用段階)。シミュレーションパソコン23は、新たに製造中で特性調整工程直前(図1の工程5)まで加工が進捗している製品に対して、各工程(工程1〜工程5)で得られた中間特性を取り込む。そして、特性調整工程(図1の工程6)において、前記作成した学習モデルを用い、特性制御加工条件を変化させた時の最終特性の変化に基づき、製品特性上望ましい最終特性(例:規格の中心)となるよう最適な特性制御加工条件を検索する。つまり、特性調整工程以前の中間特性を前提に、特性制御加工条件を変化させた時の最終特性が予測され、予測誤差の小さい特性制御加工条件が検索される。
【0037】
また、上記学習モデルは以下の通り管理され、必要に応じて更新される。つまり、センサ素子10の製造プロセスは次々と流れ、中間特性等からなるデータセットが時々刻々蓄積されていく。学習モデルはある時点の最適モデルであっても次の時点では既に最適でなくなっているかも知れない。これは工程状態も様々な要因で変動すると考えられるためである。そこで、学習モデルを運用する際には、状況変化を適切に把握してモデルパラメータの更新・見直しを図る必要がある。以下に、モデル更新の手順を示す。
【0038】
新規のデータセットが所定数蓄積されると、その時点で新規のデータセットにより学習モデルを新たに作成する。このとき使用するデータセット数は、例えば最新のものから数えて10〜500の間で任意に指定できるものとする。そして、新規のデータセットにより今回作成した学習モデルと、現時点で採用している学習モデルとを比較し、両者のうち予測誤差が最小のものを今後採用する学習モデルとして決定する。
【0039】
因みに、過去に作成された数世代分の学習モデルを履歴としてハードディスクに保存しておき、その過去の学習モデルとの比較により新たな学習モデルを決定しても良い。例えば、今回作成した学習モデルと、現時点で採用している学習モデルを含む過去5世代分の学習モデルとを比較し、その中で予測誤差が最小のものを今後採用する学習モデルとして決定する。
【0040】
以上詳述した本実施の形態によれば、以下に示す効果が得られる。
特性調整工程(図1の工程6)において、それ以前の工程の中間特性(製品の出来映え)から、製品(センサ素子10)の最終特性が予測できると共に、所望の製品特性を得るための特性制御加工条件が自動的に且つ適切に検索できる。この場合、既述した従来公報の手法とは異なり、数式モデル(理論式)を必要とすることなく、製品特性の合わせ込みが容易に実現できる。また、最終特性を見込んだ特性予測が可能となるため、特性合わせ込みの精度を向上させることができる。入出力の因果関係が不明なシステム(プロセス)を対象としても、その因果関係の定量化が可能となる。
【0041】
特に、セラミックガスセンサとしてのO2 センサの製造プロセスにおいて、センサ出力特性が常に規格通りに調整できるようになる。その結果、O2 センサの不良発生を防止し、品質向上を図ることができる。
【0042】
また、特性検査工程での検査結果を特性調整工程にその都度フィードバックする従来方法では、特性調整工程と特性検査工程との間に別工程があるためどうしても特性合わせ込みに時間的な遅れが生じるが、本実施の形態によれば、学習モデルにより製品特性を予測するため、時間的な遅れを生じることなく特性の合わせ込みが実施できる。
【0043】
また、モデル作成の前段階で、ロット毎のデータセットに対してクラスタ処理を施したので、データ分布の偏り是正の効果と、平均化処理によるノイズ低減効果とが併せて得られる。その結果、学習モデルの近似精度が向上し、ひいては製品特性の予測精度が向上する。また、データ圧縮効果により学習処理時間が短縮できる。
【0044】
モデル作成段階がニューラルネットワークにより構築されるので、多数の入力及び出力を適宜組み合わせて因果関係を類推することができ、精度の良い学習モデルが短時間で得られるようになる。
【0045】
また、学習モデルを必要に応じて更新することにより、工程状態等が変動したとしてもその変動に対応させて学習モデルを最適化することができる。更に、新たに学習モデルを作成した際、過去の学習モデルとの比較を行い予測誤差が最小のものを今後採用する学習モデルとして決定するので、製品特性の合わせ込みがより一層好適に実施できるようになる。
【0046】
なお本発明は、上記以外に次の形態にて具体化できる。
感度解析手法を用いて学習モデルを作成しても良い。ここで、感度解析とは、出力値に対して入力値の一つを変化させた時どの程度出力値が変化するかを解析するものであり、処理手順は以下の通りである。すなわち、該当する学習モデルに対して変化させたい入力以外は全て値を固定し、該当する入力を最小から最大までスイープしてその時の出力変化をグラフに表示する。スイープさせる入力情報としては、エージング温度、使用する熱処理炉、添加物濃度等が良い。そして、入力情報を変化させた時のセンサ出力特性の変化度合を考慮して入力パラメータとして用いる入力情報を選別し、その選別した入力情報を用いて学習モデルを作成する。この場合、最終特性に対して影響度の低い入力情報を排除し、影響度の高い入力情報を選択的に用いることにより、学習モデルの精度が向上する。
【0047】
上記実施の形態では、図1の工程1〜工程5で各々得られる中間特性を全て用いて学習モデルを作成したが、その一部を用いて学習モデルを作成しても良い。例えば、図1の工程3〜工程5で各々得られる中間特性(めっき膜厚、コート膜厚、塗布重量)のみを用いて学習モデルを作成する。
【0048】
上記実施の形態では、ロット毎のデータセットをクラスタ処理することを要件としたが、このクラスタ処理を行わずに上記製造プロセスを実現しても良い。つまり、シミュレーションパソコン23では、工程管理データベース22から読み出した各データセットをそのまま用い、中間特性と特性制御加工条件とを入力、製品特性を出力とした時の因果関係を表す学習モデルを作成する。この場合にも、従来既存の手法と比べて、製品特性の合わせ込みを比較的容易に実現し、且つ特性合わせ込みの精度を向上させることができる。
【0049】
O2 センサ以外に、A/FセンサやNOxセンサなど、他のガスセンサの製造プロセスにも本発明が適用できる。また、ガスセンサ以外のセンサ、ピエゾアクチュエータや、セラミック触媒等のモノリス製造品など、他の製品の製造プロセスにも本発明が適用できる。特に、特性検査工程にて高い性能特性が要求される製品についてその製造プロセスへの適用が望ましい。
【0050】
例えば、ピエゾアクチュエータに関しては、その製造プロセスにおいて、粉砕粒径、シート成型密度、焼成条件等を中間特性とし、分極条件(印加電圧、時間)を特性制御加工条件とする。更に、製造後のピエゾアクチュエータの伸び、発生力、キュリー温度を最終特性とする。一方で、セラミック触媒に関しては、原料中のカオリン粒径等を中間特性とし、焼成前径を調整するためのガイドリング選択を特性制御加工条件とする。更に、焼成後のセラミック触媒の径を最終特性とする。そして、これら中間特性と特性制御加工条件とを入力、最終特性を出力とした時の因果関係を表す学習モデルを作成し、適宜運用する。これにより、ピエゾアクチュエータ又はセラミック触媒の製造プロセスにおいて、特性合わせ込みの精度が向上し、完成品としての品質向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】センサ素子の製造プロセスの概要及び生産管理システムの全体構成を示すブロック図。
【図2】製品特性の合わせ込み手順を示すブロック図。
【図3】クラスタ処理の具体例を説明するための図。
【図4】センサ素子の構成を示す断面図。
【図5】特性検査時のセンサ出力の推移を示すタイムチャート。
【図6】従来技術における製造プロセスを示すブロック図。
【符号の説明】
10…センサ素子、11…固体電解質層、12,13…電極層、14…電極保護層、15…トラップ層、21a〜21h…パソコン、22…工程管理データベース、23…シミュレーションパソコン。

Claims (7)

  1. 特性制御加工条件を付与するための特性調整工程を多数の工程の途中に設けると共に、その特性調整工程の後に少なくとも1つの別工程を経て特性検査工程を設けた製品の製造プロセスにおいて、
    特性調整工程よりも前の各工程でそれぞれ得られた中間特性と、特性調整工程で付与された特性制御加工条件と、その時々の中間特性及び特性制御加工条件の結果得られた特性検査工程での製品特性とからなるロット毎のデータセットを準備するデータ準備段階と、
    前記準備したデータセットを用い、中間特性と特性制御加工条件とを入力、製品特性を出力とした時の因果関係を表す学習モデルを作成するモデル作成段階と、
    特性調整工程に際し、前記作成した学習モデルを用いて、特性調整工程以前の中間特性を前提に、特性制御加工条件を変化させた時の製品特性を予測し、予測誤差の小さい特性制御加工条件を検索するモデル運用段階と、
    を有し、前記特性調整工程では、前記モデル運用段階で検索した特性制御加工条件を付与して前記製品特性の合わせ込みを行うことを特徴とする製品の製造プロセスにおける特性調整方法。
  2. 前記データ準備段階で準備した各データセットについて中間特性と特性制御加工条件とをパラメータとして各データセットを多次元空間にプロットし、それら各データセットを複数のクラスタに分類すると共に、同一クラスタのデータ平均から新たな代表点を算出し、前記モデル作成段階では、前記算出した代表点を用いて学習モデルを作成する請求項1に記載の製品の製造プロセスにおける特性調整方法。
  3. 請求項に記載の特性調整方法において、各データセットを複数のクラスタに分類する際、多次元空間における各データセットの最大距離を計算し、その最大距離に対する割合X%の範囲内のデータを同一クラスタとして分類することでクラスタ処理を行う製品の製造プロセスにおける特性調整方法。
  4. 前記モデル作成段階は、ニューラルネットワークにより構築される請求項1〜の何れかに記載の製品の製造プロセスにおける特性調整方法。
  5. 平時流れる製造プロセスにて所定数のデータセットが蓄積されると、その時点で前記データ準備段階及びモデル作成段階により学習モデルを更新する請求項1〜の何れかに記載の製品の製造プロセスにおける特性調整方法。
  6. 新たに学習モデルを作成した際、その最新の学習モデルと少なくとも現時点で既に採用している学習モデルとを比較し、予測誤差が最小のものを今後採用する学
    習モデルとして決定する請求項1〜の何れかに記載の製品の製造プロセスにおける特性調整方法。
  7. 被検出ガス中の特定成分濃度を検出するためのセラミックガスセンサに関し、センサ素子の固体電解質層、電極層、保護層を各々の工程で作製し、その後の特性調整工程では特性制御加工条件として熱処理条件を設定し、特性検査工程ではセンサ素子の出力特性を検査するセラミックガスセンサの製造プロセスに適用され、
    前記モデル運用段階では、特性調整工程以前の中間特性を前提に熱処理条件を変化させ、所望のセンサ出力特性を得るための熱処理条件を検索する請求項1〜の何れかに記載の製品の製造プロセスにおける特性調整方法。
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