まず、本発明者は、ライメントマークの非対称性による影響を低減し、高精度に位置検出を行うことができる波長選択方法、位置検出方法及び装置、並びに、露光装置を提供するにあたり、アライメント信号のコントラストが最も高い波長とアライメントマークの非対称性誤差を最も発生しにくい波長との関係について鋭意検討した。
図1に示すようなモデルを用いて、アライメントマーク上に塗布されるレジストの塗布むらの非対称性によるアライメントマークの計測誤差(アライメント誤差)とアライメント信号のコントラストの解析を行った。図1は、アライメントマークAMの形状を示す断面図であり、レジストPRがアライメントマークAMに対して計測方向にSfずれた形状をしている。スピンコートによりウェハWPにレジストPRを塗布する場合、レジストPRは中心から外周方向に放射状に流れるため、図1に示すように、アライメントマークAMの段差付近で塗布むらが発生する。
図1に示すアライメントマークAMの像をシミュレーションした結果を図2に示す。図2を参照するに、アライメントマークAMを照明するアライメント光の波長によってアライメント信号のコントラストが変化している。
図3は、照明するアライメント光の波長に対するアライメント信号のコントラストとアライメント誤差との関係を示す図である。図3を参照するに、アライメント光の波長が540nmのとき、コントラストは最大となるがアライメント誤差はゼロにならず、アライメント光の波長が580nmのとき、アライメント誤差がゼロとなり最小となる。以上のことから、本発明者は、コントラストが最大となる波長のアライメント信号が、アライメント誤差を最小にするとは限らないことを発見した。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。ここで、図4は、本発明の一側面としての露光装置1の構成を示すブロック図である。なお、図4において、回路パターンが形成されたレチクルRCを照明する照明装置は省略されている。
露光装置1は、例えば、ステップ・アンド・スキャン方式やステップ・アンド・リピート方式でレチクルRCに形成された回路パターンをウェハ100に露光する投影露光装置である。かかる露光装置は、サブミクロンやクオーターミクロン以下のリソグラフィー工程に好適であり、以下、本実施形態ではステップ・アンド・スキャン方式の露光装置(「スキャナー」とも呼ばれる。)を例に説明する。ここで、「ステップ・アンド・スキャン」とは、レチクルに対してウェハを連続的にスキャン(走査)してレチクルパターンをウェハに露光すると共に、1ショットの露光終了後ウェハをステップ移動して、次の露光領域に移動する露光方法である。「ステップ・アンド・リピート」方式とは、ウェハの一括露光ごとにウェハをステップ移動して次のショットの露光領域に移動する露光方法である。
露光装置1は、図4に示すように、所望のパターン(回路パターン等)の描画されたレチクルRCを縮小投影する投影光学系10と、前工程で下地パターン及びアライメントマーク110の形成されたウェハ100を保持するウェハチャック25と、ウェハ100を所定の位置に位置決めするウェハステージ20と、ウェハ100上のアライメントマーク110の位置を計測するアライメント光学系200と、アライメント信号処理部30と、制御部40とを有する。なお、アライメント光学系200、アライメント信号処理部30及び制御部40は、協同して、ウェハ100の位置を検出する位置検出装置として機能する。
レチクルRCは、例えば、石英製で、その上には転写されるべき回路パターン(又は像)が形成され、図示しないレチクルステージに支持及び駆動される。レチクルRCから発せられた回折光は、投影光学系10を通りウェハ100上に投影される。レチクルRCとウェハ100とは、投影光学系10を介して光学的にほぼ共役な位置に配置される。本実施形態の露光装置1は、スキャナーであるため、レチクルRCとウェハ100を縮小倍率比の速度比でスキャンすることにより、レチクルRCのパターンをウェハ100上に転写する。なお、ステップ・アンド・リピート方式の露光装置(「ステッパー」とも呼ばれる。)の場合は、レチクルRCとウェハ100を静止させた状態で露光が行われる。
投影光学系10は、レチクルRC上のパターンを反映する光をウェハ100上に投影する光学系である。投影光学系20は、複数のレンズ素子のみからなる光学系、複数のレンズ素子と少なくとも一枚の凹面鏡とを有する光学系(カタディオプトリック光学系)、複数のレンズ素子と少なくとも一枚のキノフォームなどの回折光学素子とを有する光学系、全ミラー型の光学系等を使用することができる。色収差の補正が必要な場合には、互いに分散値(アッベ値)の異なるガラス材からなる複数のレンズ素子を使用したり、回折光学素子をレンズ素子と逆方向の分散が生じるように構成したりする。
ウェハ100は、被処理体であり、図6に示すアライメントマーク110が形成されており、その上には、フォトレジストが塗布されている。ウェハ100は、液晶基板その他の被処理体を広く含む。
ウェハステージ20は、ウェハチャック25を介してウェハ100を支持する。ウェハステージ20は、当業界で周知のいかなる構成をも適用することができるので、ここでは詳しい構造及び動作の説明は省略する。例えば、ウェハステージ20は、リニアモーターを利用してXY方向にウェハ100を移動することができる。レチクルRCとウェハ100は、例えば、同期走査され、ウェハステージ20と図示しないレチクルステージの位置は、例えば、レーザー干渉計などにより監視され、両者は一定の速度比率で駆動される。ウェハステージ20は、例えば、ダンパを介して床等の上に支持されるステージ定盤上に設けられ、レチクルステージ及び投影光学系10は、例えば、床等に載置されたベースフレーム上にダンパを介して支持される図示しない鏡筒定盤上に設けられる。
アライメント光学系200は、ウェハ100上のアライメントマーク110を検出し、ウェハ100の位置を計測する。図5は、図4に示すアライメント光学系200の主要構成要素を示すブロック図である。図5は、ウェハ100のX方向の位置を検出する光学系の例であり、Y方向についてはZ軸周りに90度回転したものを用いればよい(アライメントマーク110もX方向用マークをX軸周りに90度回転したものを用いる)ので、以下、ウェハ100のX方向の位置を検出する光学系で説明する。
アライメント光学系200は、照明系210と、結像系220とで構成され、アライメント光源211からの照明光(アライメント光)は、レンズ212で拡大及び平行光とされ、任意の波長を選択的に透過させる波長選択手段250を通り、再度、レンズ213で集光される。この間、可変開口絞り214により照明光のコヒーレンシー(σ)を調整する。アパーチャ215は、ウェハ100と共役な位置に配置され、ウェハ100上のアライメントマーク110の周辺の領域に不要な光が照明されないように視野絞りの機能を有する。
レンズ213により集光された光は、レンズ216で平行光にされ、ビームスプリッタ221で反射し、レンズ222を通り、ウェハ100上のアライメントマーク110を照明する。アライメントマーク110からの反射光は、レンズ222、ビームスプリッタ221、レンズ223、224及び225を通り、ラインセンサー226で受光される。結像系220の開口数(NA)は、可変開口絞り227により、調整することができる。アライメントマーク110は、100倍程度の結像倍率で拡大され、ラインセンサー226に結像される。なお、ラインセンサー226には、2次元エリアセンサーを用いることもできる。エリアセンサーを用いることで、X方向用及びY方向用のアライメントマークの両方を検出することが可能となる。
アライメントマーク110は、各ショットのスクライブライン上に配置されている。図6は、アライメントマーク110の形状の一例を示す図であって、図6(a)は平面図、図6(b)は断面図である。アライメントマーク110は、図6に示すように、計測方向であるX方向に4μm、非計測方向20μmの矩形のマークエレメント112をX方向に20μmピッチで4つ並べている。また、マークエレメント112は、図6(b)に示すように、エッチングにより矩形の輪郭部分が0.6μmの凹形状の線幅で構成された断面構造をしている。また、実際には、アライメントマーク110上にレジストが塗布されているが、図6では図示を省略している。
図6に示すアライメントマーク110を用いた場合、アライメント光学系200のレンズ222乃至225のNAに入らない大きな角度のエッジ部での散乱光の発生や、エッジ部での散乱光の干渉により、ラインセンサー226で撮像された像は、図7のようになるのが一般的である。アライメントマーク110は凸部が暗く又は明るくなる。これは、明視野画像で多く観察される像であり、その特徴と言える。ここで、図7は、図6に示すアライメントマーク110を光学的に検出した場合の典型的な検出結果を示す図である。
このように撮像されたアライメントマーク110の画像は、アライメント信号処理部30で処理される。アライメント信号処理部30は、本実施形態では、テンプレートマッチング法を用いて、アライメントマーク110の位置を算出する。テンプレートマッチング法は、図8(b)に示す取得した信号Sと、図8(a)に示す予め装置で持っているモデル信号(テンプレート)Tとの相関演算で、最も相関が高い位置をアライメントマークの中心として検出する。図8(c)に示す相関値の関数Eにおいて、ピーク画像から左右に数画素の領域の重心画素位置を求めることにより、1/10画素乃至1/50画素の分解能を達成できる。ここで、図8は、図7に示す検出結果に適用可能なテンプレートマッチング法を説明するための図である。
テンプレートマッチング法は、以下の数式1で表される。
ここで、Sはセンサーで取得した信号、Tはモデル信号、Eは相関結果である。信号S、モデル信号T、相関値Eの関係を図示すると、図8のようになる。図8では、4つのマークエレメント112のうち、1つのマークエレメント像についての処理方法を示している。以下同様に、他の3つのマークエレメント像についても、テンプレートマッチング法により、各マークエレメント像のセンサー上での位置を検出する。
テンプレートマッチング法により、マークエレメント像の中心位置X1(n)、X2(n)、X3(n)及びX4(n)を求める(単位は画素)。ここで、nは、テンプレート番号である。4つのマークエレメント像の中心位置X1(n)乃至X4(n)を平均化することで、以下の数式2で示すアライメントマーク110全体の中心座標Xa(n)が求まる。
その結果、ウェハ100上のアライメントマーク110の位置ずれXw(n)は、アライメント光学系200の結像倍率をM、ラインセンサー226のアライメント計測方向の画素ピッチをPxとすれば、以下の数式3で表される。
数式3に基づいて、ラインセンサー226で得られたベストフォーカス像信号からのアライメントマーク110の位置ずれ量X1と、ラインセンサー226からのアライメントマーク110の位置ずれ量X2を求める。かかる位置ずれ量X1及びX2を用いて、アライメントマーク110の位置Xを決定しているが、この処理方法については後で詳細に説明する。
続いて、アライメントマーク110の位置の計測値を基にして、ウェハ100のアライメントを行う方法について説明する。本実施形態では、グローバルアライメント(AGA:Advanced Global Alignment)を適用している。グローバルアライメントは、ウェハ上の全チップ(ショット)の内、数ショットを選択して(選択したショットをサンプルショットと呼ぶ)、選択したショット内にあるアライメントマークの位置を検出して行われる。
図9は、露光装置1のウェハステージ20のXY座標系に対して、ウェハ110上のショット配列がずれている様子を示す図である。ウェハ110のずれとしては、図9に示すように、X方向のシフトSxと、Y方向のシフトSyと、X軸に対する傾きθxと、Y軸に対する傾きθyと、X方向の倍率Bxと、Y方向の倍率Byの6つのパラメーターで示すことができる。なお、X方向及びY方向の倍率Bx及びByは、露光装置1のウェハステージ送りを基準として、ウェハ110の伸縮を表し、半導体プロセスの成膜やエッチング等でウェハ110に熱を加えることにより引き起こされる。
ここで、計測したAGAの各サンプルショットの計測値をAi、サンプルショットのアライメントマーク110の設計位置座標をDiとして、以下の数式4及び5で定義する。ここで、iは、計測ショット番号である。
AGAでは、上述したウェハの位置ずれを示す6つのパラメーターSx、Sy、θx、θy、Bx及びByを用いて、以下の数式6で表される1次の座標変換D’iを行う。
数式6では、説明を簡単にするために、θx及びθyは微少量(≒0)、Bx及びByはBx=By≒1であるためcosθ=1、sinθ=0、θx×Bx=θx、θy×By≒θy等の近似を用いた。
図10は、数式6に示す1次の座標変換を行う様子を模式的にベクトルで示した図である。図10を参照するに、Wで示す位置にウェハ110上のアライメントマーク110があり」、設計上の位置であるMの位置からAiだけずれており、座標変換D’iを行うと、ウェハ100上のアライメントマーク110の位置ずれ(残差)Riは、以下の数式7で表される。
AGAでは、各サンプルショットでの残差Riが最小になるように最小2乗法を適用している。即ち、以下に示す数式8及び数式9から、残差Riの平均2乗和を最小とするパラメーターSx、Sy、θx、θy、Bx及びByを算出する。
数式8及び9に、各サンプルショットでの計測値(xi,yi)及びアライメントマーク110の設計位置(Xi,Yi)を代入して、パラメーターSx、Sy、θx、θy、Bx及びByを求め、求めたパラメーターを基に、ウェハ110上の各ショットのアライメントを行った後に露光が実施される。
次に、図5に示すアライメント光学系200の波長選択手段250について説明する。図11は、図5に示すアライメント光学系200の波長選択手段250の構成の一例を示す平面図である。図11を参照するに、本実施形態の波長選択手段250は、円盤252の同一半径上に10個のバンドパス干渉フィルタ254a乃至254jが設けられており、円盤252を回転させて、任意のバンドパス干渉フィルタ254a乃至254jを照明光の光路上に配置することにより、任意の波長の照明光でアライメントマーク110を照明することができる。図12は、図11に示す波長選択手段250のバンドパス干渉フィルタ254a乃至254jの分光特性を示す図である。図12を参照するに、本実施形態では、バンドパス干渉フィルタ254a乃至254jは、透過波長幅が約30nmで、透過中心波長が20nmずつ異なった特性を持つように構成している。
また、波長選択手段250は、例えば、複屈折板と強誘電性液晶セルの組み合わせを用いて作製したバンドパスフィルタを用いることもできる。更に、波長を可変とするTiサファイアレーザーを用いることも可能であり、或いは、異なる波長の光源を複数用いてもよい。
以下、アライメントマーク110の形状に非対称性の誤差がある場合の最適な波長選択方法について説明する。図13は、アライメントマーク110の形状を示す断面図であり、レジスト120がアライメントマーク110に対して計測方向にSfだけずれた非対称な形状をしている。レジスト120の膜厚Rtとしては、320nm、368nm、416nm、464nmを使用し、照明光(アライメント光)の波長に対するアライメントマーク像のシミュレーション結果からアライメント信号を算出して、上述のテンプレートマッチング法により、アライメントマーク110の位置を求めた。アライメント誤差は、ウェハ100のアライメントマーク110の位置と、アライメント信号から求めたアライメントマーク110の位置(検出値)との差分としている。
図14(a)は、アライメント光の波長と、アライメント誤差との関係を示す図である。図14(a)において、横軸はアライメント光の波長であり、縦軸はアライメント誤差(図13において、レジスト120のシフト量に対するアライメント誤差の傾きを求めたもの)である。図14(a)に示されるように、レジスト120の膜厚に応じて、アライメント誤差がゼロとなるアライメント光の波長が存在する。これは、レジスト120の塗布むらがあっても、アライメント誤差がゼロとなるアライメント光の波長を選択することによって、ウェハ100上のアライメントマーク110の位置を正確に検出することが可能となることを意味する。従って、上述したように、波長選択手段250によって、アライメント光の波長を20nmピッチで変更できることが好ましいことがわかる。
アライメント誤差がゼロとなる波長を選択する方法として、本発明者は、マークエレメント112以外の部分にあるレジスト120、即ち、非マーク部B(図13に示す領域B)に注目した。ここで、非マーク部Bは、アライメントマーク110の領域内又はその近傍において、マークエレメント112のエッジ部から所定距離だけ離れた領域の膜厚変化や膜構造変化が無い反射率が一定となる領域と定義する。本実施形態のように、複数のマークエレメント112から構成されるアライメントマーク110の場合は、マークエレメント112間の中心位置を非マーク部Bとすることが好ましい。
図14(b)は、図13に示す非マーク部Bの反射率の分光特性を示す図である。図14(a)及び図14(b)を参照するに、非マーク部Bの反射率の変化が少ない領域、即ち、反射率が極大となる波長又は反射率が極小となる波長でのアライメント誤差が最小となっている。これは、アライメントマーク110のマークアライメント112のエッジ部両側において、レジスト120の膜厚の差による非対称性があっても、そのレジスト120の膜厚による反射率の差が僅かであるためアライメント信号も非対称にならない、又は、非対称量が小さいため誤差が極めて小さく、アライメントマーク110の位置を検出することができるようになったためと考えられる。なお、非マーク部Bの反射率が極大又は極小となる波長でアライメント誤差が最小となったが、非マーク部Bの反射率が極小となる波長の場合、明視野照明ではアライメント信号のコントラストが低下するため、非マーク部Bの反射率が極大となる波長を用いることが好ましい。
次に、非マーク部Bの反射率が極大となる波長を求める方法について説明する。第1の方法としては、アライメント信号を取得し、非マーク部Bの光量を比較する方法である。アライメントマーク110の形成されたウェハ100にレジスト120を塗布した後、かかるウェハ100に上述のAGAを複数の波長に対して行い、各波長、各サンプルショットに対してアライメント信号を取得する。続いて、波長λごとに全サンプルショットの非マーク部Bのアライメント信号の強度の平均値Isin(λ)を求める。なお、各波長のアライメント光の入射光量や、各波長に対するアライメント光学系200内での透過率を較正するため、ウェハステージ20上に設置してある分光反射率Rref(λ)が、既知の基準マーク台をアライメント光学系200で撮像して、同様に、波長ごとにアライメント信号の強度Iref(λ)を予め取得しておく。
これにより、非マーク部Bの反射率R(λ)は、以下の数式10で求めることができる。
数式10により、各波長λでの非マーク部Bの反射率R(λ)を求めて、極大の反射率となる波長を選択し、かかる波長を有するアライメント光を用いるようにしている。
なお、非マーク部Bの反射率を算出するにあたり、アライメント信号を生成するラインセンサー226を使用せず、図15に示すように、アライメント光学系200のアライメント光源211からの照明光を一部分割し、アライメントマーク110の非マーク部Bのみを照射し、その反射光をフォトダイオード310で計測する反射率計測部300を設けてもよい。また、アライメント信号を取得するためのウェハ100については、最適な(即ち、非マーク部Bでの反射率が極大をとる)波長が選択された後に、かかる波長を有するアライメント光を用いてアライメントを行った後、露光を行うようにしてもよい。ここで、図15は、反射率計測部300の構成の一例を示すブロック図である。
次に、非マーク部Bの反射率が極大となる波長を求める第2の方法は、反射率をアライメントマーク110を構成している材料の屈折率及び膜厚(即ち、レジスト120の屈折率及び膜厚)から計算により求める方法である。図16に示すように、レジスト120の屈折率をn1、ウェハ100の屈折率をn2とすると、反射率Riは、以下の数式11で求めることができる。図16は、ウェハ110及びレジスト120の屈折率及び膜厚を示す図である。
ここで、δiは、レジスト120の表面120aの反射光と、レジスト120の裏面120bの反射光との光路長差に相当する位相差であり、以下の数式12で示される。
但し、d1はレジスト120の膜厚、θiはレジスト120からウェハ100への入射角度である。
ウェハ100に対して、照明光が垂直入射した場合、反射率が極大となる波長λは、以下の数式13及び数式14から求まる。
更に厳密には、実際のアライメント光学系200では、パーシャルコヒーレント照明を用いる場合が多いので、垂直入射だけではなく、コヒーレンシーσ分の斜入射角度を考慮した計算をすることが好ましい。
垂直入射光に比べて斜入射光では、レジスト120の表面120aの反射光と、レジスト120の裏面120bでの反射光との光路長差が長くなるため、反射率が極大となる波長が垂直入射に比べて短波長側に数nm程度シフトする。図16に示すように、コヒーレンシーσ分に相当する入射光光線数をJ、入射角度に相当する入射光線番号をiとして、各入射角度ごとに数式11に基づいて反射率Riを算出し、以下の数式15に示すように、平均値として反射率Rを求め、その反射率が極大となる波長を求めるのが厳密な算出方法である。
数式13、数式14又は数式15によって求めた反射率が極大となる波長に対して、アライメント光学系200に設置されている波長選択手段250が有するバンドパス干渉フィルタ254a乃至254jのうち、最も近い中心波長となるバンドパス干渉フィルタ254a乃至254jを選択してアライメントを行うようにしている。なお、反射率が極大となる波長から所定の範囲内にある波長のアライメント光を用いてアライメントを行ってもよい。所定の範囲とは、反射率が極大となる波長から30nm程度である。また、本実施形態では、二層構造(即ち、ウェハ100とレジスト120)による反射率の算出を説明したが、アライメントマーク110が多層膜で構成される場合においても、公知の多層膜反射率の計算式により同様に求めることが可能である。
なお、露光装置1に、ユーザーがアライメントマーク110(レジスト120)を構成する材質の光学定数及び膜厚を入力する入力部と、入力された光学定数と膜厚を用いて、非マーク部での反射率が極大となる波長を自動的に算出する算出部とを設けてもよく、アライメントマーク110により最も非対称性の影響を受けにくい波長のアライメント光を自動的に選択してアライメントを行うようにしてもよい。なお、レジスト120の光学定数及び膜厚ごとに非マーク部での反射率が極大となるアライメント光の波長を予めデータベース等で記憶しておき、レジスト120の情報を取得することで、かかるデータベースから非マーク部での反射率が極大となるアライメント光の波長を選択してもよい。
本実施形態では、アライメント信号からアライメントマーク110の位置を検出する信号処理方式として、テンプレートマッチング法を適用した例で説明したが、折り返し対称テンプレートマッチング法などの別の信号処理方式を用いてもよい。本発明の波長選択方法を用いることで、アライメントマーク110の非対称性によるアライメント信号の誤差が低減され、高精度なアライメントを行うことができる。
更に、本実施形態では、アライメントマーク110の非対称性として、レジスト120の塗布むらの場合を例に説明したが、アライメントマーク110の非対称性はレジスト120に限らず、アライメントマーク110上に成膜された半透明膜の膜厚が非対称になる場合においても同様の効果が得られる。
アライメント信号のコントラストが最大となるアライメント光を用いた場合にアライメント誤差が除去しきれなかったものに対して、各波長に対する非マーク部の反射率の変化を図17に示す。図17を参照するに、非マーク部の反射率は、アライメント光の波長が580nmのときに最大となり、アライメント誤差がゼロになる波長と一致していることがわかる。即ち、本発明の波長選択方法は、アライメント信号のコントラストによってアライメント光の波長を選択する場合に比べて、効果的にアライメント誤差を低減できる方法であるといえる。ここで、図17は、アライメント光の波長に対する反射率及びアライメント信号のコントラストと、アライメント誤差の関係を示す図である。
以上の説明では、複数の波長のアライメント光をアライメント光学系200の照明系210で時系列的に変更してアライメントマーク110を照明する例を示したが、以下の実施形態では、照明系210側では、複数の波長のアライメント光で同時にアライメントマーク110を照明し、結像系220側で異なる波長の信号に分離するアライメント光学系200Aを説明する。
図18は、アライメント光学系200Aの主要構成要素を示すブロック図である。図18を参照するに、複数の波長の光を発するアライメント光源211Aからの照明光は、レンズ212で拡大及び平行光とされ、再度、レンズ213で集光される。この間、可変開口絞り214により照明光のコヒーレンシー(σ)を調整する。アパーチャ215は、ウェハ100と共役な位置に配置され、ウェハ100上のアライメントマーク110の周辺の領域に不要な光が照明されないように視野絞りの機能を有する。
レンズ213により集光された光は、レンズ216で平行光にされ、ビームスプリッタ221で反射し、レンズ222を通り、ウェハ100上のアライメントマーク110を照明する。アライメントマーク110からの反射光は、レンズ222、ビームスプリッタ221、レンズ223、224及び225を通り、ラインセンサー226で受光される。
更に、結像系220の光路上には、ダイクロイックミラー228及び229が配置され、ダイクロイックミラー228で反射した光は、レンズ225Aを介してラインセンサー226Aで、ダイクロイックミラー229で反射した光は、レンズ225Bを介してラインセンサー226Bで受光される構成となっている。
ダイクロイックミラー228の分光反射率特性は、図19に示すRLのようになっており、中心波長λc1=0.5μmで波長幅50nmの光を効果的に反射させ、それより長波長側の光を効果的に透過させるように設計してある。従って、ラインセンサー226Aで生成されるアライメント信号は、中心波長λc1=0.5μmで波長幅50nmの光から形成されたものとなる。
また、ダイクロイックミラー229の分光反射率特性は、図19に示すMLのようになっており、中心波長λc3=0.61μmで波長幅50nmの光を効果的に反射させ、それより長波長側の光を効果的に透過させるように設計してある。従って、ラインセンサー226Bで生成されるアライメント信号は、中心波長λc3=0.61μmで波長幅50nmの光から形成されたものとなる。
ダイクロイックミラー228及び229を透過してラインセンサー226で受光される光は、図19に示すTLのように、中心波長λc2=0.555μmで波長幅50nmの光になる。ここで、図19は、図18に示すダイクロイックミラー228及び229の分光反射特性を示す図である。
このように、アライメント光学系200Aでは、3つのラインセンサー226、226A及び226Bで、波長が0.50μm、0.555μm及び0.61μmの異なる波長のアライメント信号を同時に形成することが可能となる。アライメント光学系200Aは、アライメント光学系200に比べて、結像系220の構成が複雑になるが、異なる波長の光によるアライメント信号を同時に生成することができるため、スループットが有利になるという効果を有する。更に、ダイクロイックミラーを用いて、波長幅を限定しているため、分光された後の光路上に、限定された波長幅のみに対応した色収差補正手段を配置することが可能となり、色収差の補正が容易であるという効果も有する。なお、本実施形態では、3つの異なる波長の光を使用する例を説明したが、ダイクロイックミラーの枚数を増やすことで、細かい波長ピッチで更に多くの波長のアライメント信号を得ることも可能である。
図20は、図18に示すアライメント光学系200Aの変形例であるアライメント光学系200Bの主要構成要素を示すブロック図である。アライメント光学系200Bは、センサー230に2次元のエリアセンサーを用いて、アライメントマーク110の計測方向と垂直方向に分光するように構成していることが特徴である。
図20を参照するに、複数の波長の光を発するアライメント光源211Aからの照明光は、レンズ211で拡大及び平行光とされ、再度、レンズ213で集光される。この間、可変開口絞り214により照明光のコヒーレンシー(σ)を調整する。アパーチャ215は、ウェハ100と共役な位置に配置され、ウェハ100上のアライメントマーク110の周辺の領域に不要な光が照明されないように視野絞りの機能を有する。
レンズ213により集光された光は、レンズ216で平行光にされ、ビームスプリッタ221で反射し、レンズ222を通り、ウェハ100上のアライメントマーク110を照明する。アライメントマーク110からの反射光は、レンズ222、ビームスプリッタ221、レンズ223、224及び225を通り、エリアセンサー230で受光される。
更に、結像系220の光路上には、アライメントマーク110と共役な位置に、図21に示すような、バンドパスフィルタ231が配置されている。バンドパスフィルタ231は、図21に示すように、アライメントマーク110の計測方向と垂直な方向に、帯状の3種類の多層膜231a乃至231cを透明基板上に成膜することで構成される。本実施形態では、多層膜231a乃至231cの透過帯域は、480nm乃至520nm、520nm乃至560nm、560nm乃至600nmとなるように設計されている。バンドパスフィルタ231は、アライメントマーク110と共役な位置に配置されているため、アライメントマーク110の像110zがバンドパスフィルタ231上に結像する。ここで、図21は、図20に示すアライメント光学系200Bのバンドパスフィルタ231の構造を模式的に示す断面図である。
また、エリアセンサー230もアライメントマーク110とバンドパスフィルタ231と共役な位置に配置されているため、図22に示すように、アライメントマーク110の像110z及びバンドパスフィルタ231がエリアセンサー230上に再度結像する。即ち、エリアセンサー230上において、アライメントマーク110の計測方向と垂直な方向に異なる波長のアライメント光を用いてアライメントマーク110を照明した場合のアライメントマーク110の像110aを得ることができる。従って、図22に示すように、エリアセンサー230の信号ラインを選ぶことにより、所望の波長でのアライメント信号を得ることができる。換言すれば、アライメントマーク110の非マーク部の反射率が極大となる波長から所定の範囲内の波長に対応する信号ラインを選択して、かかる信号ラインから生成されるアライメント信号に信号処理を行うことで、アライメントマーク110の位置を高精度に検出することができる。ここで、図22は、図20に示すアライメント光学系200Bのエリアセンサー230上でのアライメントマーク110の像110zを示す平面図である。
なお、アライメント光学系200Bでは、3つの異なる波長の光を使用する例を説明したが、バンドパスフィルタ231を構成する多層膜の数を増やすことで、細かい波長ピッチで更に多くの波長のアライメント信号を得ることも可能である。また、バンドパスフィルタ231を照明系210側に配置することも可能である。図20においては、アライメントマーク110と共役な位置であるアパーチャ215の位置に配置することになりアパーチャ215の透過部(即ち、開口部)にバンドパスフィルタ231を設けて、視野絞りの機能と兼用する構成としてもよい。
図23は、図20に示すアライメント光学系200Bの変形例であるアライメント光学系200Cの主要構成要素を示すブロック図である。アライメント光学系200Cは、アライメント光学系200Bと同様に、センサー230に2次元のエリアセンサーを用いているが、アライメントマーク110の計測方向と垂直な方向に回折格子を使用して分光するように構成していることが特徴である。
図23を参照するに、複数の波長の光を発するアライメント光源211Aからの照明光は、レンズ211で拡大及び平行光とされ、再度、レンズ213で集光される。この間、可変開口絞り214により照明光のコヒーレンシー(σ)を調整する。アパーチャ215は、ウェハ100と共役な位置に配置され、ウェハ100上のアライメントマーク110の周辺の領域に不要な光が照明されないように視野絞りの機能を有する。
レンズ213により集光された光は、レンズ216で平行光にされ、ビームスプリッタ221で反射し、レンズ222を通り、ウェハ100上のアライメントマーク110を照明する。アライメントマーク110からの反射光は、レンズ222、ビームスプリッタ221、レンズ223、224及び225を通り、エリアセンサー230で受光される。
また、レンズ225とエリアセンサー230との間には、回折格子240が配置されている。回折格子240は、アライメントマーク110の計測方向と垂直な方向に格子が配列されており、図24に示すように、回折格子240で回折した光がエリアセンサー230で受光されるように構成される。エリアセンサー230上では、回折格子240の分光作用により、アライメントマーク110の計測方向と垂直な方向に連続的に波長が異なる光によって結像したアライメントマーク110の像が得られる。これにより、エリアセンサー230のアライメントマーク110の計測方向と垂直な方向の信号ラインを任意に選び、平均化することにより、任意の中心波長及び波長幅のアライメント信号を生成することができる。ここで、図24は、図23に示すアライメント光学系230Cの回折格子240の分光作用を示す断面図である。
従って、アライメントマーク110の非マーク部の反射率が極大となる波長から所定の範囲内の波長に対応する信号ラインを選択して、かかる信号ラインから生成されるアライメント信号に信号処理を行うことで、アライメントマーク110の位置を高精度に検出することができる。なお、アライメント光学系230Cでは、アライメントマーク110の計測方向と垂直な方向に連続して変化する波長のアライメントマークの像を形成することができるため、エリアセンサー230の信号ラインの数を適当に選ぶことができ、中心波長及び波長幅の自由度が高いという効果もある。
アライメント光学系200、200A乃至200Cは、アライメントを実行する上で、半導体プロセスによるアライメントマークの非対称性の影響を低減させ、アライメント精度を向上させることができ、半導体素子の製造工程において、歩留まり(スループット)を向上させることができる。
再び、図4に戻って、制御部40は、図示しないCPU、メモリを有し、露光装置1の動作を制御する。制御部40は、図示しない照明装置及びレチクルステージ、ウェハステージ20と電気的に接続されている。制御部40は、アライメント信号処理部30からのアライメントマーク110の位置情報に基づいて、ウェハステージ20を介してウェハ100の位置決めを行う。CPUは、MPUなど名前の如何を問わずいかなるプロセッサも含み、各部の動作を制御する。メモリは、ROM及びRAMより構成され、露光装置1を動作するファームウェアを格納する。
露光において、図示しない光源から発せられた光束は、図示しない照明光学系によりレチクルRCを、例えば、ケーラー照明する。レチクルRCを通過してレチクルパターンを反映する光は、投影光学系10によりウェハ100上に結像される。露光装置1は、アライメント光学系200及びアライメント信号処理部30等によって高精度にアライメントが行われているので、高いスループットで経済性よくデバイス(半導体素子、LCD素子、撮像素子(CCDなど)、薄膜磁気ヘッドなど)を提供することができる。
次に、図25及び図26を参照して、上述の露光装置1を利用したデバイス製造方法の実施例を説明する。図25は、デバイス(ICやLSIなどの半導体チップ、LCD、CCD等)の製造を説明するためのフローチャートである。ここでは、半導体チップの製造を例に説明する。ステップ1(回路設計)では、デバイスの回路設計を行う。ステップ2(マスク製作)では、設計した回路パターンを形成したマスクを製作する。ステップ3(ウェハ製造)では、シリコンなどの材料を用いてウェハを製造する。ステップ4(ウェハプロセス)は、前工程と呼ばれ、マスクとウェハを用いてリソグラフィー技術によってウェハ上に実際の回路を形成する。ステップ5(組み立て)は、後工程と呼ばれ、ステップ4によって作成されたウェハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の工程を含む。ステップ6(検査)では、ステップ5で作成された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テストなどの検査を行う。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、これが出荷(ステップ7)される。
図26は、ステップ4のウェハプロセスの詳細なフローチャートである。ステップ11(酸化)では、ウェハの表面を酸化させる。ステップ12(CVD)では、ウェハの表面に絶縁膜を形成する。ステップ13(電極形成)では、ウェハ上に電極を蒸着などによって形成する。ステップ14(イオン打ち込み)では、ウェハにイオンを打ち込む。ステップ15(レジスト処理)では、ウェハに感光剤を塗布する。ステップ16(露光)では、露光装置1によってマスクの回路パターンをウェハに露光する。ステップ17(現像)では、露光したウェハを現像する。ステップ18(エッチング)では、現像したレジスト像以外の部分を削り取る。ステップ19(レジスト剥離)では、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらのステップを繰り返し行うことによってウェハ上に多重に回路パターンが形成される。本実施形態のデバイス製造方法によれば、従来よりも高品位のデバイスを製造することができる。このように、露光装置1を使用するデバイス製造方法、並びに結果物としてのデバイスも本発明の一側面を構成する。
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。