JP4676778B2 - ヘリコバクター・ビリスの特異的抗原及びその抗体 - Google Patents

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Description

本発明はヘリコバクター・ビリスの特異的抗原及びそのモノクローナル抗体及びその利用方法に関する。
胃癌においてはヘリコバクター・ピロリが発癌に強く関与していることが疫学的調査から明らかになっている。スナネズミを用いたモデルにおいてもヘリコバクター・ピロリ感染が化学発癌剤による腺胃癌の発生を増強し、除菌によりその効果が減弱することが報告されている(非特許文献1)。
ヘリコバクター・ピロリ感染と胃疾患に関する検討が進むにつれて、ほかのヘリコバクター属の感染と臓器の病変との関係が検討されるようになってきた。ヘリコバクター・ビリスは胆汁中で生育できることから、胆道系疾患、特に腫瘍との関係が注目されている。マウスにおいては肝炎、肝癌、炎症性腸疾患を引き起こすことが報告されている(非特許文献2−4)。
ヒト胆道系疾患とヘリコバクター・ビリスの関係は胆汁をサンプルとしてPCRによる検出が行なわれ、胆道系悪性腫瘍に高率で検出された。ヒトの胆汁中にヘリコバクター・ビリスが検出されたことは、ヒトでも肝疾患、胆道系疾患、炎症性腸疾患に関与していることが考えられる。
ヘリコバクター・ビリスの検出方法としては糞便、胆汁を採取してPCRや培養による確認が行われており、なかでも糞便を用いた16S rRNA中の特異配列をPCRにより増幅して検出する感染診断法がマウスの感染を診断するために用いられている(非特許文献5、6)。より簡便に検出する方法として蛍光PCRが報告されている(非特許文献7、8)。また、種々の動物の糞便をサンプルとしてPCR−DGGE法による網羅的なヘリコバクター属の検出法が報告されている(非特許文献9)。
ヒトにおいては、胆汁をサンプルとして16S rRNAの特異領域をPCRにより増幅し、検出する方法が用いられている(非特許文献10、11)。
しかし、胆汁の採取は患者への負担が大きく、糞便や血漿(あるいは血清)を用いた簡便な方法の確立が望まれている。血中の抗体価を測定する方法は、ヒトの場合、他のヘリコバクター属による感染、特にヘリコバクター・ピロリ感染者が多いため、ピロリ菌体破砕物で抗体を吸収させた後に測定している(非特許文献12、13)。ヘリコバクター・ビリスの外膜タンパク質をウェスタンブロッティングにより検討した結果、ヘリコバクター・ビリスの外膜タンパク質はヘリコバクター・ピロリに対する抗体と交差反応性を示さないことが報告されている。特に46kDa付近に特徴的なタンパク質が存在していることを報告している(非特許文献14)。外膜たんぱく質に対する抗体価はヘリコバクター・ビリス感染により引き起こされた肝炎マウスで上昇することが確認されている(非特許文献15)。
抗体価を特異的に検出する抗原として、ヘリコバクター・ピロリにおいては26kDa(非特許文献8)のタンパク質が報告されている。病態との関連ではヘリコバクター・ピロリで血中抗体によるイムノブロットで検出されるバンドの中で125kDa(CagA)、87kDa(VacA)、35kDa(unknown)と胃潰瘍の関係が検討され、125kDaおよび87kDaのバンドで83.3%(n=12)、35kDaは100%の割合で胃潰瘍患者から検出されたと報告されている(非特許文献16)。
しかし、ヘリコバクター・ビリスでは、どの特異抗原に対する抗体価の上昇が感染あるいは病態と一致するかは確認されていない。ヘリコバクター・ビリスはヘリコバクター・ピロリと類似した、強いウレアーゼ活性とCagA、VacAを有していることから、これらが疾患と関連している可能性は容易に類推されるが、他のヘリコバクター属の菌と交差反応性を示す可能性が高く、抗体価の上昇と肝疾患、胆道系疾患、炎症性腸疾患との関連性は不明である。
Iryna Kornilovs`ka等(特許文献1)は13種のタンパク質とそれらを認識する抗体を記載しているが、本発明の抗原及び抗体とは異なるものである。また、S.Feng、等は167kDaのタンパク質をヘリコバクター・ビリスの特異抗原として報告している(非特許文献17)。この抗原を用いて、抗体価を測定する感染診断がマウスで報告されているが(非特許文献18、19)、本発明の抗原とは異なるものである。
国際公開第02/102842号パンフレット
Shimizu N.ら,「Cancer Res」,2000年,60巻,p.1512−1514 J.G.Fox、等、J.Clin.Microbiol.33巻、445−454頁、1995年 N.H.Shomer、等、Infect.Immun.65巻、4858−4864頁、1997年 C.L.Franklin、等、Lab Anim Sci.48巻、334−339頁、1998年 M. Mahler、等、Lab Anim Sci. 48巻、85−91ページ、1998年 L. Zenner、Comp. Immunol. Microbiol. Infect. Dis. 22巻、41−61ページ1999年 Z.Ge、等、J. Clin. Microbiol.、39巻、2598−602ページ、2001年 N.L.Drazenovich、等 Comp. Med.、52巻、347−53ページ、2002年、 W.A. Al−Soud、等、J. Med. Microbiol.52巻、765−71ページ、2003年 J.G.Fox、等、Gastroenterology、114巻、755−763頁、1998年 N.Matsukura、等、Jpn.J.Cancer Res.93巻、842−847頁、2002年 I.Nilsson、等、J.Med.Microbiol. 52巻、949頁、2003年 O.Ananieva、等、Clin.Diagn.Lab.Immunol.9巻、1160頁、2002年 Z.Ge、等、Infect.Immunol.69巻、3502頁、2001年 J.G.Fox、等、Comp.Med.54巻、571−7頁、2004年 P.Aucher等、J Clin Microbiol、36巻、931頁、1998年 S.Feng、等、Clin.Diagn.Lab.Immunol.9巻、627−32頁、2002年 L.V.Kendall、等、Comp.Med.54巻、44−48頁、2004年 S.Feng、等、Clin.Diagn.Lab.Immunol.11巻、1094−9頁、2004年
本発明は上記現状を鑑みヘリコバクター・ピロリに代表されるヘリコバクター属の細菌を含む細菌抗原と交差反応性を有しないヘリコバクター・ビリスの抗原及びこの抗原と特異的に反応するモノクローナル抗体の作製と、生体中のヘリコバクター・ビリス感染を検出するための方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、ヘリコバクター・ビリスに特異的な抗原の探索のため、ヘリコバクター・ビリス菌体及びヘリコバクター・ピロリ菌体を抗原として、各々の菌体で免疫したマウス抗血清によるウエスタンブロティングを行ったところ、マウス抗ヘリコバクター・ピロリ血清では25kDa以下のバンドは検出されなかったが、マウス抗ヘリコバクター・ビリス血清では検出された。このことより、ヘリコバクター・ビリスの菌体抽出物は25kDa以下に交差反応性のない特異的な抗原があることが推測された。そこでヘリコバクター・ビリスの抗原に対するモノクローナル抗体を作製し、その中から25kDa以下の抗原と反応し、かつヘリコバクター・ビリス以外のヘリコバクター属の細菌の抗原と反応しないモノクローナル抗体を発見し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明はヘリコバクター・ビリスの分子量10〜16kDaの抗原である。また第2の発明はヘリコバクター・ビリスの分子量10〜16kDaの抗原に対するモノクローナル抗体である。この抗原及び抗体は、Iryna Kornilovs`ka等(特許文献1)の発表した13種の蛋白と異なる抗原及び抗体である。さらに本発明はヘリコバクター・ビリス以外のヘリコバクター属の細菌の抗原と反応しないモノクローナル抗体を含むものである。
本発明の抗原による抗体価の測定は抗ピロリ抗体に影響されない、ヘリコバクター・ビリスに特異的な検出が可能であった。
本発明の抗原を用いて製造できるモノクローナル抗体はヘリコバクター・ビリスのみと反応し、交差反応性の可能性のある他のヘリコバクター属の細菌の抗原と反応しなかった。
以上のことからヘリコバクター・ビリスの特異的な免疫診断法が可能となった。
上述のようにヘリコバクター・ビリス菌体及びヘリコバクター・ピロリ菌体を抗原として、各々の菌体で免疫したマウス抗血清によるウエスタンブロティングを行ったところ、マウス抗ヘリコバクター・ピロリ血清では25kDa以下のバンドは検出されなかったが、マウス抗ヘリコバクター・ビリス血清では検出された。このことより、ヘリコバクター・ビリス菌体抽出物は25kDa以下に交差反応性のない特異的な抗原があることが推測された。そこで、モノクローナル抗体を作製し、25kDa以下の抗原を認識する抗体を選抜した。
本発明のモノクローナル抗体はヘリコバクター・ビリスの分子量10〜16kDa、好ましくは12kDaの抗原に対するモノクローナル抗体である。本発明のモノクローナル抗体は、本発明のハイブリドーマより産生することができ、例えば本発明のハイブリドーマを培養し、その培養液から得ることが出来る。しかし本発明のモノクローナル抗体の製造方法としては特に限定されず、例えば、遺伝子工学的に得られたものであっても、ヘリコバクター・ビリスの分子量10〜16kDaの抗原に特異的に反応することが出来る限り本発明の範囲に含まれる。
また、本発明のモノクローナル抗体は、ヘリコバクター・ビリス以外の細菌の抗原と反応しないという特徴を備えている。ここで細菌とは特に制限は無いが、好ましくはヘリコバクター属の細菌であり、より好ましくはヘリコバクター・ピロリ、ヘリコバクター・ヘパティカス、ヘリコバクター・フェリス、ヘリコバクター・ムステラエまたはヘリコバクター・シナエディである。本発明者らは本発明のモノクローナル抗体がその他の細菌としてバクテロイデス・ブルガタス、エシェリヒア・コリ、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ブレビバチルス・ブレビスまたはキャンピロバクター・ジェジュニの抗原と反応しないことも確認している。
本発明の上記モノクローナル抗体の認識するヘリコバクター・ビリスの分子量10〜16kDaの抗原の製造方法は特に限定されず、例えば遺伝子工学的に得られたものであっても分子量10〜16kDaでヘリコバクター・ビリスを検出することが出来る限り本発明の範囲に含まれる。実施例9に示したように、本発明のモノクローナル抗体とその認識抗原を用いた抗体価測定のELISAでは、マウス抗ヘリコバクター・ビリス血清のみの抗体価が高かった。従ってマウス抗ヘリコバクター・ビリス血清中にこの抗原に対する抗体が存在することから、抗体価測定によりヘリコバクター・ビリス感染を診断できることが確認できた。
また、この抗原のモノクローナル抗体との反応性はアルカリ処理・熱処理には安定であり、酸処理にはやや不安定でエタノール処理には不安定であることを確認している。
本発明のハイブリドーマは、ヘリコバクター・ビリスの分子量10〜16kDaの抗原に対するモノクローナル抗体を産生するもので、ヘリコバクター・ビリスで免疫した動物の脾細胞又はリンパ節細胞と、骨髄腫細胞を融合して得られるものである。
本発明のハイブリドーマは、公知の細胞融合法により作製できる。即ち、ヘリコバクター・ビリスの分子量10〜16kDaの抗原を免疫原としてヒト以外の動物を免疫し、その脾細胞又はリンパ節細胞と、骨髄腫細胞とを融合させてハイブリドーマを作製し、その中からヘリコバクター・ビリスの分子量10〜16kDaの抗原を認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択することにより、本発明のハイブリドーマを得ることができる。
上記ヒト以外の動物は特に制限は無いが、マウス・ラットが好ましい。
また上記被免疫動物を免疫する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、マウスを免疫する場合、1回に1〜100μg、好ましくは50〜100μgの免疫用抗原を同容量の生理食塩水およびフロイントの完全アジュバント等で乳化して、上記被免疫動物背部、腹部の皮下又は腹腔内に2〜7週ごとに3〜6回接種する方法等を挙げることができる。
本発明においては、上記被免疫動物を免疫後、抗体価の高い個体を選び、最終免疫3〜5日後に脾臓又はリンパ節を摘出し、公知の細胞融合法に従って、融合促進剤(例えばポリエチレングリコール:PEG)の存在化で、これらの組織に含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることができる。
特に好ましいハイブリドーマは、ヘリコバクター・ビリスの菌体抽出物を投与したラットの脾細胞とミエローマ細胞P−3(X63−Ag8)の融合を行い、融合細胞のスクリーニング、限界希釈法によるクローニングを行なったハイブリドーマBR59(FERM −20390)。
及びBR71(FERM −20391)である。
以下に実施例を含めて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものでない。
実施例1.マウス抗ヘリコバクター・ビリス血清及びマウス抗ヘリコバクター・ピロリ血清の調製
(1)菌体の培養法
ヘリコバクター・ビリス(ATCC51630)及びヘリコバクター・ピロリ(ATCC43504)は、それぞれ5%馬脱繊血を添加したブレインハートインヒュージョン寒天培地(ディフコ社製)を用いて37℃で微好気性環境下にて3〜4日培養した。
(2)菌体抽出法
実施例1−(1)で得られたヘリコバクター・ビリス及びヘリコバクター・ピロリのコロニーをそれぞれ白金耳等でかきとり、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)に懸濁した。懸濁液を20mM Tris−HCl buffer(pH8.0)4℃にて、10000×gで10分間遠心分離する操作を3回繰り返して菌体を洗浄し、0.6%N−ラウロイルサルコシン−20mM Tris−HCl buffer(pH8.0)に懸濁した。その後、超音波破砕機(超音波破砕機 東湘電機社製、Bioruptor)を用いて氷冷下で超音波処理して菌体を破砕し1時間室温でインキュベーションした。ついで4℃15分間10000xgで遠心分離し、上清を菌体抽出物とした。
(3)マウス抗ヘリコバクター・ビリス血清及びマウス抗ヘリコバクター・ピロリ血清の作製
実施例1−(2)により調製したヘリコバクター・ビリス及びヘリコバクター・ピロリの菌体抽出物をそれぞれフロイントの完全アジュバントで乳化して、菌体タンパク濃度が20μg/mLになるように調製した。これをBALB/cA Jclマウスの腹腔内に免疫毎0.2mLずつ投与した。初回免疫後14日目と28日目にヘリコバクター・ビリスの菌体抽出物をフロイントの不完全アジュバントで乳化して追加免疫を行った。最終免疫から3日目に心臓採血により血液を採集し、30分静置した後4℃15分間10000×gで遠心分離し、上清を各々マウス抗ヘリコバクター・ビリス血清及びマウス抗ヘリコバクター・ピロリ血清とした。
実施例2.マウス抗ヘリコバクター・ビリス血清及びマウス抗ヘリコバクター・ピロリ血清を用いたヘリコバクター・ビリスに特異的な抗原の探索
(1)菌体抽出物の電気泳動
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(NuPAGE Bis−Tris Gelインビトロジェン社製、12%アクリルアミドゲル)を行った。サンプルは、実施例1−(2)により調製したヘリコバクター・ビリス及びヘリコバクター・ピロリのそれぞれの菌体抽出物を、還元剤で処理しない常法に従い調製した。バッファ−は、MESバッファーを、分子量マーカーはBenchMark Prestained Protein Ladder(インビトロジェン社製)を用いた。
(2)セミドライウェスタンブロッティング法
実施例2―(1)に従いSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った後、セミドライウェスタンブロッティング法によりニトロセルロース膜にタンパク質を転写した。ニトロセルロース膜を1%BSA液とSuperBlock Blocking Buffer(ピアス社製)を1:1で混和した溶液に1時間浸してマスキングを行った後、一次抗体としてマウス抗ヘリコバクター・ビリス血清及びマウス抗ヘリコバクター・ピロリ血清と2時間反応させた。ニトロセルロース膜を0.1%ツィーン20−PBSで4回洗浄後、各々二次抗体としてペルオキシダーゼ標識抗マウスIg抗体(DAKO社製、1:4000)と反応させた。ニトロセルロース膜を0.1%ツィーン20−PBSで5回洗浄後、ENVISION+キット/HRP(DAB)(ダコ社製)により発色させた。
(3)ヘリコバクター・ビリス特異的な抗原の探索の結果
実施例2−(2)のウェスタンブロッティングの結果を図1に示した。マウス抗ヘリコバクター・ピロリ血清で染色された交差反応性を示すと思われる抗原は、25kDa以上に認められた(レーン2)。マウス抗ヘリコバクター・ビリス血清では25kDa以下にもバンドが検出された(レーン3)。このことより、ヘリコバクター・ビリス菌体抽出物は、25kDa以下にヘリコバクター・ピロリと交差反応性のない特異的な抗原があることが推測された。
実施例3.ヘリコバクター・ビリスの抗原を認識するモノクローナル抗体の作製と選択
(1)ヘリコバクター・ビリスの免疫及び細胞融合(脾臓法)
実施例1―(2)にて調製した免疫原(菌体抽出物)をフロイントの完全アジュバントで乳化して、菌体タンパク濃度が20μg/mLになるように調製した。これをSDラットの腹腔内に0.2mL投与した。初回免疫後14日目と32日目に菌体抽出物をフロイントの不完全アジュバントで乳化して追加免疫を行った。最終免疫から16日目にラット脾細胞を摘出し、脾臓細胞を得た。得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞P−3(X63−Ag8)を5:1の割合で混合し、50%PEG4000を用いて融合した後、HAT培地によりハイブリドーマを選択培養した。
(2)ELISA方法;
実施例1−(2)により調製したヘリコバクター・ビリス菌体抽出物(0.5μg/well)を固相化した96穴ELISAプレート(パッカード社製)を、1%BSA液とSuperBlock Blocking Buffer(ピアス社製)を1:1で混和したマスキング液(200μL/well)を加え2時間室温で静置し、その後一次抗体として各穴に融合細胞の培養上清液100μLを添加し、2時間反応させた。0.05%ツィ−ン20含有PBS(洗浄液)で洗浄後、二次抗体としてペルオキシダーゼ標識抗ラットIg(ダコ社製、1:4000)100μLを添加した。室温で1時間静置後、上記洗浄液で洗浄し、TMB(バイオエフエックス社製)発色液を各穴に100μLずつ添加した。室温で10分間反応させ、各穴に1N硫酸液を100μLずつ添加し酵素反応を停止し、450nmにおける吸光値を測定した。
(3)抗ヘリコバクター・ビリスモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの選択
細胞融合後15日目に、実施例3−(2)のELISAと同様の方法で培養上清中の抗体活性を測定した。免疫原に反応する抗体を産生するハイブリドーマクローンをELISAの吸光値が0.5以上を目安として選択した。各クローンを限界希釈法により2度クローニングを行い、その都度抗体活性の有無を、ELISA法を用いて調べた。陽性クローンに対して、シングルセルクローニングを行い、抗体産生が安定である抗ヘリコバクター・ビリス抗体を産生している多くのハイブリドーマクローンを得た。その後、得られたハイブリドーマを25cm、75cmフラスコに移し、培養した。継代後に安定して抗ヘリコバクター・ビリス抗体を産生するハイブリドーマは18株であった。
実施例4.抗ヘリコバクター・ビリスの25kDa以下の抗原を特異的に認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの選択
(1)菌体抽出物の電気泳動、セミドライウェスタンブロッティング
実施例2−(1)に従ってヘリコバクター・ビリスの菌体抽出物をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(NuPAGE Bis−Tris Gelインビトロジェン社製、12%アクリルアミドゲル)を行い、 実施例2−(2)に従いセミドライウェスタンブロッティングを行なった。ハイブリドーマの培養上清と2時間反応させた後、ニトロセルロース膜を0.1%ツィーン20−PBSで4回洗浄し、ペルオキシダーゼ標識抗ラットIg抗体(ダコ社製、1:4000)と反応させた。ニトロセルロース膜を0.1%ツィーン20−PBSで5回洗浄後、ENVISION+キット/HRP(DAB)(ダコ社製)により発色させた。
(2)ハイブリドーマの選択結果
セミドライウェスタンブロッティングの結果を図2に示した。18株の中から25kDa以下の抗ヘリコバクター・ビリス抗原を認識するモノクローナル抗体を安定に産生しているハイブリドーマを選別した。その結果、BR59(レーン1)及びBR71(レーン2)の2種のハイブリドーマが得られた。
実施例5.BR59とBR71の認識抗原の確認
(1)ELISA方法
BR59抗体の認識するヘリコバクター・ビリス認識抗原を捕捉し、BR71抗体でサンドイッチELISAを行なうことで、BR59抗体とBR71抗体が同一の抗原を認識しているかの確認を行なった。BR59を固相化した96穴ELISAプレート(Medisorp ヌンク社製)を、1%BSA液とSuperBlock Blocking Buffer(ピアス社製)を1:1で混和したマスキング液(200μL/well)を加え1時間室温で静置した。その後実施例1−(2)により調製した、ヘリコバクター・ビリス菌体抽出物を0.5μg/wellで添加し、室温で1時間反応させた。その後、0.05%ツィ−ン20含有PBS(洗浄液)で洗浄し、BR71ビオチン化抗体(0.5μg/well)を添加し、室温で1時間反応させた。上記洗浄液で洗浄し、ペルオキシダーゼ標識アビジン(ピアス社製、1:10000)を添加し、室温で1時間反応させた。再度上記洗浄液で洗浄し、TMB(バイオエフエックス社製)発色液を各穴に100μLずつ添加した。室温で10分間反応させ、各穴に1N硫酸液を100μLずつ添加し酵素反応を停止し、450nmにおける吸光値を測定した。
(2)BR59とBR71の認識抗原の確認の結果
結果を図3に示した。BR59抗体を固相化し、ヘリコバクター・ビリス、ヘリコバクター・ピロリ、ヘリコバクター・ヘパティカスの菌体抽出液を反応させ抗原を捕捉後、BR71ビオチン化抗体を反応させ、ペルオキシダーゼ標識アビジンで検出した。その結果、ヘリコバクター・ピロリ、ヘリコバクター・ヘパティカスとは反応しなかった。ヘリコバクター・ビリスで高い吸光度を示し、BR59とBR71はヘリコバクター・ビリスの同一の抗原を認識していることが確認できた。
実施例6.モノクローナル抗体BR59の認識抗原における安定性
(1)ヘリコバクター・ビリス菌体抽出物の処理条件
実施例1−(2)により調製したヘリコバクター・ビリス菌体抽出物を以下のA〜Dのように処理を行った。
A.酸処理
0.1M Glycine−HCl(pH 2.5)に懸濁し、10分間反応させた後、1.0M Tris−HCl(pH9.0)にて中和させた。
B.アルカリ処理
0.01N NaOHに懸濁し、10分間反応させた後、1N HClにて中和させた。
C.熱処理
沸騰水で5または10分間放置し、氷冷した。
D.エタノール処理
50%及び80% エタノールにて反応させた。その後10000×gで2分間遠心分離し、上清を回収した。また沈殿物は、エタノールと同量のPBSにて懸濁した。
(2)ELISA法
A〜Dに従い調製した抗原を、PBSで2.0μg/mLに調製し、96穴ELISAプレート(パッカード社製)に0.2μg/wellで固相化した。マスキングは、1%BSA液とSuperBlock Blocking Buffer(ピアス社製)を1:1で混和したマスキング液(200μL/well)を加え1時間室温で静置した。その後BR59抗体を添加し、室温で1時間反応させた。0.05%ツィ−ン20含有PBS(洗浄液)で洗浄後、ぺルオキシダーゼ標識抗ラットIg(ダコ社製、1:4000)100μLを添加した。室温で1時間静置後、上記洗浄液で洗浄し、TMB(バイオエフエックス社製)発色液を各穴に100μLずつ添加した。室温で3分間反応させ、各穴に1N硫酸液を100μLずつ添加し酵素反応を停止し、450nmにおける吸光値を測定した。
(3)認識抗原の安定性
モノクローナル抗体BR59の認識抗原の安定性を検討した結果を図4に示した。アルカリ処理・熱処理には安定であった。酸処理では若干吸光度の低下が見られ、やや不安定であった。しかし、エタノール処理には不安定で抗原性が失われた。
実施例7.他菌体との交差反応性の検討
(1) 菌体の培養法
ヘリコバクター・ヘパティカス(ATCC51448)、ヘリコバクター・フェリス(ATCC 49179)、ヘリコバクター・ムステラエ(ATCC 43772)、ヘリコバクター・シナエディ(ATCC 35683)、及びキャンピロバクター・ジェジュニ(ATCC 29428)は5%馬脱繊血を添加したブレインハートインヒュージョン寒天培地上で、37℃で4日間微好気培養した。ビフィドバクテリウム・インファンティス(JCM 1222)、ビフィドバクテリウム・ブレベ(JCM 1192)、バクテロイデス・ブルガタス(IFO 14291)は5%馬脱繊血を添加したBL寒天培地(日水製薬社製)上で、37℃で4日間、嫌気培養した。エシェリヒア・コリ(ATCC25922)はブレインハートインヒュージョン寒天培地上で、37℃で3日間、好気培養した。
得られたコロニーを実施例1−(2)に従い集菌・破砕し、各菌体の抽出物を調製した。
(2)ELISA法
実施例1−(2)により調製したヘリコバクター・ビリス及びヘリコバクター・ピロリ菌体抽出物、及び実施例7−(1)により調製したヘリコバクター・ヘパティカス、ヘリコバクター・シナエディ、ヘリコバクター・フェリス、ヘリコバクター・ムステラエ、キャンピロバクター・ジェジュニ、ビフィドバクテリウム・ブレベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス、バクテロイデス・ブルガタス、エシェリヒア・コリの菌体抽出物を0.5μg/wellで96well plateに固相化を行い、実施例3−(2)と同様の方法でELISAを実施した。一次抗体として、ハイブリドーマBR59、BR67、BR71、BR72の産生する抗体を添加した。
(3)結果
表1に示した。BR59及びBR71では、ヘリコバクター・ビリス以外の菌体では発色が認められなかった。従って、BR59及びBR71の認識する抗原は、ヘリコバクター・ピロリを含む他菌体との交差反応性がないことが確認できた。
実施例8.アフィニティーカラムによる抗ヘリコバクター・ビリスモノクローナル抗体の認識する抗原の分子量と特異性の検証
(1)BR59抗体カラムによる部分精製とセミドライウェスタンブロッティング
Protein Gカラムにより精製したBR59抗体を活性化セファロースに結合させ、アフィニティーカラムによるヘリコバクター・ビリス菌体抽出物から抗原の精製を行なった。この抗原を実施例2−(1)に従いSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(NuPAGE Bis−Tris Gelインビトロジェン社製、12%アクリルアミドゲル)を行い、銀染色とセミドライウェスタンブロッティングを行なった。なお、セミドライウェスタンブロッティングは実施例2−(2)に従い、一次抗体としてモノクローナル抗体BR59の培養上清を、二次抗体としてペルオキシダーゼ標識抗ラットIg抗体(ダコ社製、1:4000)を用いた。
(2)BR59抗体の認識する抗原の分子量の検証結果
銀染色とセミドライウェスタンブロッティングの結果を図5に示した。BR59抗体の認識する抗原であると推測されるバンドは、銀染色で12kDa付近に検出された(レーン1)。また、セミドライウェスタンブロッティングでも同様の位置にバンドが検出された(レーン4)。
(3)分子量の推定
BenchMark Prestained Protein LadderとBenchMark Protein Ladder(共にインビトロジェン社製)の2種の分子量マーカーを実施例2−(1)に従いSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(NuPAGE Bis−Tris Gelインビトロジェン社製、12%アクリルアミドゲル)を行い、銀染色により染色した結果を図6に示した。マーカーごとに推定される分子量に違いが認められた。ウェスタンブロッティング(図2、図5)の結果からBenchMark Prestained Protein Ladder(レーン1)を用いた場合には分子量は約14kDaと推定され、BenchMark Protein Ladder(レーン2)を用いたときには約12kDaと推定された。抗原の分子量は分子量マーカーのバンドの幅を考慮して10〜16kDaと推定した。
実施例9.マウス血清のヘリコバクター・ビリス抗体価の測定
(1)ELISA方法(抗原固相化法)
BR59認識抗原を固相化したプレートで、抗ヘリコバクター・ピロリ血清、抗ヘリコバクター・ヘパティカス血清及び抗ヘリコバクター・ビリス血清の抗体価測定を行い、BR59認識抗原の特異性を調べた。アフィニティーカラムを用いてヘリコバクター・ビリス菌体抽出物から精製したBR59の認識抗原を96穴ELISAプレート(パッカード社製)に固相化し、1%BSA液とSuperBlock Blocking Buffer(ピアス社製)を1:1で混和したマスキング液(200μL/well)を加え2時間室温で静置した。0.05%ツィ−ン20含有PBS(洗浄液)で洗浄後、マウス血清を1/200で添加し室温で1時間反応させた。なお、マウス血清は、実施例1−(3)で調製したマウス抗ヘリコバクター・ビリス血清及びマウス抗ヘリコバクター・ピロリ血清、実施例7−(1)で培養し、実施例1−(4)と同様の免疫方法で調製したマウス抗ヘリコバクター・ビリス血清を用いた。その後上記洗浄液で洗浄し、ペルオキシダーゼ標識抗マウスIg(ザイメド社製、1:2000)100μLを添加した。室温で1時間静置後、上記洗浄液で洗浄し、TMB(スミロン社製)発色液を各穴に100μLずつ添加した。室温で10分間反応させ、各穴に1N硫酸液を100μLずつ添加し酵素反応を停止し、450nmにおける吸光値を測定した。
(2)ELISA方法(抗体固相化法)
BR59及びBR71でヘリコバクター・ビリス認識抗原を捕捉し、その認識抗原に対する血中の抗体価を測定した。BR59及びBR71(0.2μg/well)を固相化した96穴ELISAプレート(パッカード社製)を、1%BSA液とSuperBlock Blocking Buffer(ピアス社製)を1:1で混和したマスキング液(200μL/well)を加え2時間室温で静置した。その後実施例1−(2)により調製した、ヘリコバクター・ビリス菌体抽出物を0.5μg/wellで添加し、室温で1時間反応させた。0.05%ツィ−ン20含有PBS(洗浄液)で洗浄後、マウス血清を1/200で添加し室温で1時間反応させた。なお、マウス血清は、実施例9−(1)と同様の血清を用いた。その後上記洗浄液で洗浄し、ペルオキシダーゼ標識抗マウスIg(ザイメド社製、1:2000)100μLを添加した。室温で1時間静置後、上記洗浄液で洗浄し、TMB(スミロン社製)発色液を各穴に100μLずつ添加した。室温で10分間反応させ、各穴に1N硫酸液を100μLずつ添加し酵素反応を停止し、450nmにおける吸光値を測定した。
(3)マウス血清のビリス抗体価の測定結果
実施例9−(1)の結果を図7に、実施例9−(2)の結果を図8に示した。抗原固相化、抗体固相化のどちらの測定方法も抗ヘリコバクター・ピロリ血清及び抗ヘリコバクター・ヘパティカス血清は低い吸光度を示し、抗ヘリコバクター・ビリス血清のみ高い吸光度を示した。従って、BR59の認識抗原はヘリコバクター・ビリスに特異的であること、また本モノクローナル抗体及びその認識抗原を用い上記の測定方法によりヘリコバクター・ビリス抗体価を特異的に測定することが可能であることが確認できた。このことより、この抗原は血清を用いたヘリコバクター・ビリス感染診断として有用であることが示唆された。
実施例10.糞便中のヘリコバクター・ビリス抗原量の測定
(1)BR59(0.5μg/well)を固相化した96穴ELISAプレート(Medisorp ヌンク社製)を、1%BSA液と10%アマルティを1:1で混和したマスキング液(200μL/well)を加え1時間室温で静置し、40℃で1時間乾燥させた。その後糞便添加あり(50倍懸濁)、なしの2種の希釈液(1%BSA、0.1%プロクリン/PBS)に、実施例1−(1)により調製したヘリコバクター・ビリス菌体抽出物を1.88−500ng/wellで添加し、室温で1時間反応させた。その後、0.05%ツィ−ン20含有PBS(洗浄液)で洗浄し、BR71ビオチン化抗体(0.5μg/well)を添加し、室温で1時間反応させた。上記洗浄液で洗浄し、ぺルオキシダーゼ標識アビジン(ピアス社製、1:10000)を添加し、室温で1時間反応させた。再度上記洗浄液で洗浄し、TMB(バイオエフエックス社製)発色液を各穴に100μLずつ添加した。室温で10分間反応させ、各穴に1N硫酸液を100μLずつ添加し酵素反応を停止し、450nmにおける吸光値を測定した。
(2)糞便中のヘリコバクター・ビリス抗原量の測定結果
結果を図9に示した。濃度依存的に吸光度は上昇し、ヘリコバクター・ビリス抗原を定量的に測定することが可能であった。また、糞便を添加しても濃度依存的に吸光度は上昇し、糞便中の抗原も測定することが可能であった。従って、この方法は糞便を用いたヘリコバクター・ビリス感染診断として有用であることが示唆された。
また、抗原検査のサンプルとしては、糞便だけでなく、胆汁なども考えられ、それらへの応用も期待できる。
本発明のヘリコバクター・ビリスの抗原及び抗体はヘリコバクター・ピロリ抗体及び抗原と反応せずヘリコバクター・ビリスに特異的に反応する。このことはヘリコバクター・ビリス感染による疾病の診断に有用である。
マウス抗ヘリコバクター・ビリス血清及びマウス抗ヘリコバクター・ピロリ血清のヘリコバクター・ビリス及びヘリコバクター・ピロリに対する反応性のウェスタンブロッティングの結果を示す写真である。 BR59抗体及びBR71抗体が認識する抗原のウェスタンブロッティングの結果を示す写真である。 BR59抗体とBR71抗体の認識抗原が同一であるのかを確認したELISAの結果を示すグラフである。 ELISAにて各条件化でのBR59認識抗原の安定性を調べた結果を示すグラフである。 ヘリコバクター・ビリスの菌体抽出物から精製したBR59抗体の認識抗原を、銀染色及びウェスタンブロッティングを行なった結果を示す写真である。 2種の分子量マーカーを電気泳動後、銀染色により染色した結果を示す写真である。 マウス血清のヘリコバクター・ビリスに対する抗体価を、BR59抗体の認識抗原を固相化したプレートによるELISAにて測定した結果を示すグラフである。 マウス血清のヘリコバクター・ビリスに対する抗体価を、モノクローナル抗体を固相化したプレートによるELISAにて測定した結果を示すグラフである。 糞便中に含まれるヘリコバクター・ビリスの抗原量を、モノクローナル抗体を固相化したプレートによるELISAにて測定した結果を示すグラフである。

Claims (4)

  1. BR59(FERM −20390)のハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体。
  2. BR71(FERM −20391)のハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体。
  3. ハイブリドーマBR59(FERM −20390)。
  4. ハイブリドーマBR71(FERM −20391)。
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