JP4676251B2 - 磁気カップリング装置 - Google Patents

Description

本発明は、磁力を利用して回転伝達する磁気カップリング装置に関する。

歯を有するギアやタイミングベルトを用いた回転伝達機構は、歯の噛み合いによるため、バックラッシュや騒音や歯の摩耗などの問題があるほか、歯が小さく歯数が多くなるほど部品の加工・組立精度についての要求が高くなる。

磁力を利用して回転伝達する磁気カップリング装置としては、例えば特許文献１（特許第３４６３７００号公報）、特許文献２（特開平１１−３１１２６０号公報）、特許文献３（特開２０００−８３３６５号公報）に記載されたものがあるが、磁気カップリング装置をギアやタイミングベルトと組み合わせて複合的な回転伝達を行うようなものは存在しない。
特許第３４６３７００号公報 特開平１１−３１１２６０号公報 特開２０００−８３３６５号公報

本発明の課題は、歯を有するギアやタイミングベルトを用いた回転伝達機構による上記のような問題点を、磁気カップリング装置を併用することで解決しようとするものである。

本発明の磁気カップリング装置は、歯を有する駆動側と従動側のそれぞれの回転体に、Ｎ、Ｓ交互の磁極を円周上に形成した磁気カップリング部材を付設し、駆動側回転体にて駆動側の磁気カップリング部材が回転されることにより、従動側の磁気カップリング部材との間に磁力によるトルクが生じ、そのトルクが従動側回転体に伝達されるようになっている。

コンパクト化の観点から、駆動側と従動側のそれぞれにおいて、リング状の磁気カップリング部材が回転体の側面に付設され、両方の磁気カップリング部材の周面同士が対向していると良い。

駆動側の回転体及び磁気カップリング部材の直径と、従動側の回転体及び磁気カップリング部材の直径とが異なるようにすると、減速又は増速機構となる。

駆動側回転体と従動側回転体とが駆動側ギアと従動側ギアで、これらの歯を噛み合わせる場合には、通常は互いの歯が接触しない状態で噛み合うように組み合わされ、駆動側の磁気カップリング部材と従動側の磁気カップリング部材との間の磁力によるトルク以上のトルクが加わったとき、互いの歯が接触するようになっていることが望ましい。

駆動側回転体と従動側回転体とが、タイミングベルトを介して回転が伝達される駆動側プーリと従動側プーリである場合には、駆動側プーリに付設された駆動側の磁気カップリング部材と従動側プーリに付設された従動側の磁気カップリング部材との間に中間の磁気カップリング部材が介在され、磁力によるトルクがこの磁気カップリング部材を介して従動側の磁気カップリング部材に伝達されるようにする。

本発明の磁気カップリング装置は電動ロータリーアクチュエータに適用することができ、その場合には、駆動側回転体がモータで回転され、従動側回転体がロータを回転させるように、これら回転体と駆動側及び従動側の磁気カップリング部材が電動ロータリーアクチュエータに組み込まれる。タイミングベルトを用いた場合には、中間の磁気カップリング部材も電動ロータリーアクチュエータに組み込まれる。

また、本発明の磁気カップリング装置は電動スライダにも適用することができ、その場合には、駆動側回転体がモータで回転され、従動側回転体がスライダを摺動させるスクリュー軸を回転させるように、これら回転体と駆動側及び従動側の磁気カップリング部材が電動スライダに組み込まれる。タイミングベルトを用いた場合には、中間の磁気カップリング部材も電動スライダに組み込まれる。

本発明の磁気カップリング装置は、歯を有する駆動側回転体と従動側回転体のそれぞれに磁気カップリング部材を付設し、磁力によるトルクを利用して駆動側回転体の回転を従動側回転体に伝達するので、駆動側回転体と従動側回転体の歯の噛み合いによるバックラッシュや騒音や歯の摩耗などの問題を解消できるとともに、駆動側回転体及び従動側回転体について加工・組立に高い精度を必要としなくなる。また、駆動側プーリの回転をタイミングベルトを介して従動側プーリに伝達する場合には、中間の磁気カップリング部材を介在させることとにより、上記のような効果を有する回転伝達機構として簡単に対応できる。

請求項３に係る発明のように、リング状の磁気カップリング部材を駆動側と従動側のそれぞれの回転体の側面に付設し、両方の磁気カップリング部材の周面同士を対向させれば、コンパクトな構造にできる。

請求項４に係る発明のように、駆動側の回転体及び磁気カップリング部材の直径と、従動側の回転体及び磁気カップリング部材の直径とが異なる関係にすれば、上記のような効果を有する減速又は増速機構となる。

本発明の磁気カップリング装置は、請求項５に係る発明のように、モータの回転を減速又は増速してロータに伝達する電動ロータリーアクチュエータ、又は、請求項６に係る発明のように、モータの回転を減速又は増速してスクリュー軸に伝達してスライダを摺動させる電動スライダに適用するのに好適である。

次に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。

図１〜図８に示す実施例１は、本発明を、微細な回転角のステップ回転が可能な電動ロータリーアクチュエータに適用したものである。本発明による磁気カップリング装置Ａ１は、電動ロータリーアクチュエータの箱形の本体ハウジング１内に、ハイポイドギア装置２と共に組み込まれ、本体ハウジング１内に設置されたステッピングモータ（以下、単にモータと言う）３のステップ回転を、本磁気カップリング装置Ａ１で減速し、本体ハウジング１の上面に上端部が臨んでいる円筒状のロータ４にハイポイドギア装置２を介して伝達することで、回転を外部に取り出すようになっている。

モータ３とハイポイドギア装置２は本体ハウジング１内に並置され、磁気カップリング装置Ａ１は、モータ３のモータ軸５の先端部に固定された駆動側ギア６と、ハイポイドギア装置２のピニオンギア軸７の基端部に固定された従動側ギア８との間で、次のような構造にて回転伝達を行う。

すなわち、駆動側ギア６と従動側ギア８とは、互いの歯が噛み合っていて、前者のトルクを後者へ機械的に直接伝達できるようになっているのに加え、前者の側面に付設された駆動側磁気カップリング部材９と、後者の側面に付設された従動側磁気カップリング部材１０とで、磁力を利用して前者のトルクを後者へ伝達できるようにもなっている。

駆動側及び従動側の両磁気カップリング部材９・１０はリング状で、図９に示すように、Ｎ、Ｓ交互の磁極を円周上に形成した、いわゆる磁気リングとなっており、前者のＮ極と後者のＳ極、前者のＳ極と後者のＮ極が交互に対向して、円周方向の磁力が作用することにより、駆動側磁気カップリング部材９のトルクが従動側磁気カップリング部材１０へ無接触で伝達される。

このトルクは正弦波形となることから、その周期と、駆動側ギア６と従動側ギア８との噛み合いは、図１０及び図１１に示すように、トルクの正弦波の半周期がギア６・８の歯のピッチの整数倍で、両ギア６・８の歯が完全に噛み合ったところでトルクが０になることが好ましい。

更には、図１２に示すように、駆動側ギア６と従動側ギア８とが、通常は互いの歯が接触しない状態で噛み合うように組み合わされ、通常はこの状態で、駆動側の磁気カップリング部材９と従動側の磁気カップリング部材１０との間の磁力によるトルクのみで回転が伝達され、その磁力以上のトルクが加わったとき、図１３に示すように両ギア６・８の歯が互いに接触し、駆動側ギア６のトルクが従動側ギア８へ機械的に伝達されるようにすることが望ましい。

図１４に、駆動側の磁気カップリング部材９と従動側の磁気カップリング部材１０とによる磁気カップリングの回転角−トルク特性と、ステッピングモータ３の回転角−トルク特性の関係を示す。正弦波形（１）は、磁気カップリング部材９・１０の磁極数が１８極の場合の磁気カップリングの回転角−トルク特性曲線、正弦波形（２）及び（３）は、２相・５０歯としたステッピングモータ３の回転角−トルク特性曲線で、正弦波形（３）のようにステッピングモータ３のトルクが大きくなると、磁気カップリングの回転角−トルク特性曲線との間で位相差が生じ、磁気カップリング作用が不調となる。

図６及び図８に示すように、ハイポイドギア装置２のピニオンギア軸７は、その基端側と先端側とを、基端側ベアリング１１と先端側ベアリング１２にて軸受けされている。基端側ベアリング１１は、本体ハウジング１内の中空部１３の内周面に固定リング１４にて固定されているのに対し、先端側ベアリング１２は、中空部１３の内周面に直接固定されている。ピニオンギア軸７の基端７ａは本体ハウジング１の側面より突出しており、ピニオンギア軸７は、ドライバ等の工具で本体ハウジング１外から手動での回転も可能となっている。

ピニオンギア軸７の円錐台形の先端部はハイポイドピニオンギア１５となっている。
一方、ロータ４の中間部に設けられた鍔部４ａの下面には、ハイポイドリングギア１６が付設され、ハイポイドピニオンギア１５と本体ハウジング１内で噛み合っている。

ロータ４は、本体ハウジング１内の上下のベアリング１７・１８にて、軸方向がピニオンギア軸７と直交する方向に軸受けされている。

このような電動ロータリーアクチュエータによると、モータ３の回転は、駆動側磁気カップリング部材９と従動側磁気カップリング部材１０との間で、磁力による無接触状態でトルクが伝達されるので、駆動側ギア６と従動側ギア８との間でのバックラッシュが防止されるとともに、互いの歯の接触による騒音や歯の摩耗なども防止される。

そして、横軸であるピニオンギア軸７に回転が伝達され、更にその先端のハイポイドピニオンギア１５がハイポイドリングギア１６と噛み合っているので、上下のベアリング１７・１８に縦軸のように軸受けされているロータ４が回転する。

図１５〜図２０に示す実施例２は、本発明を、微細な歩進摺動が可能な電動スライダに適用したものである。本発明による磁気カップリング装置Ａ２は、電動スライダの箱形の本体ハウジング２１内に、推進装置２２と共に組み込まれ、本体ハウジング２１内に設置されたステッピングモータ（以下、単にモータと言う）２３のステップ回転を、本磁気カップリング装置Ａ２で減速して推進装置２２のスクリュー軸２４に伝達し、本体ハウジング２１の外側に装着されたスライダ２５をスライダ推進装置２２で往復摺動できるようになっている。

モータ２３とスライダ推進装置２２は本体ハウジング２１内に並置され、磁気カップリング装置Ａ２は、モータ２３のモータ軸２６の先端部に固定されたフランジ付きの駆動側プーリ２７と、横軸であるスクリュー軸２４の延長軸２４ａの先端部に固定された従動側プーリ２８との間で、次のような構造にて回転伝達を行う。

駆動側及び従動側の両プーリ２７・２８は、これらの間に掛け回されたタイミング２９の歯と噛み合う歯を外周面に有し、駆動側プーリ２７の回転がタイミング２９を介して従動側プーリ２８に伝達される。駆動側プーリ２７には、これと一体回転するように駆動側磁気カップリング部材３０が付設され、従動側プーリ２８には、これと一体回転するように従動側磁気カップリング部材３１が付設されている。すなわち、モータ軸２６には、駆動側磁気カップリング部材３０が駆動側プーリ２７と共に固定され、スクリュー軸２４の延長軸２４ａには、従動側磁気カップリング部材３１が従動側プーリ２８と共に固定されている。そして、これら駆動側磁気カップリング部材３０と従動側磁気カップリング部材３１との間において、中間の磁気カップリング部材３２が、本体ハウジング２１内に固定された中間軸３３にベアリング３４にて別途回転自在に軸受けされている。

これら３個の磁気カップリング部材３０・３１・３２はリング状で、Ｎ、Ｓ交互の磁極を円周上に形成した、いわゆる磁気リングとなっており、互いのＮ極とＳ極が交互に対向して、円周方向の磁力が作用することにより、駆動側磁気カップリング部材３０のトルクが中間の磁気カップリング３１を介して従動側磁気カップリング部材３２へ無接触で伝達される。

スライダ推進装置２２のスクリュー軸２４は、本体ハウジング２１内にベアリング３５にて軸受けされている。そして、スクリュー軸２４は、本体ハウジング２１内の推進部材３６とボールネジ３７にて螺合されている。この推進部材３６は、本体ハウジング２１の上面のレール３８に沿って摺動するスライダ２５と、連結ロッド３９で連結されており、スクリュー軸２４の回転により推進部材３６が推進されると、これと一体にスライダ２５が摺動する。

このような電動スライダによると、モータ２３の回転は、駆動側磁気カップリング部材３０と中間の磁気カップリング３２と従動側磁気カップリング部材３１との間で、磁力による無接触状態でトルクが伝達されるので、駆動側プーリ２７とタイミングベルト２９と従動側プーリ２８との間でのバックラッシュが防止されるとともに、互いの歯の接触による騒音や歯の摩耗なども防止される。

そして、横軸であるスクリュー軸２４に回転が伝達され、このスクリュー軸２４の回転により推進部材３６が推進されると、これと一体にスライダ２５が本体ハウジング２１上をレール３８に沿って摺動される。

なお、実施例１での磁気カップリング装置Ａ１を、実施例２における磁気カップリング装置Ａ２に代えて電動スライダに適用することも、また、実施例２での磁気カップリング装置Ａ２を、実施例１における磁気カップリング装置Ａ１に代えて電動ロータリーアクチュエータに適用することも可能である。

本発明を電動ロータリーアクチュエータに適用した実施例１の平面図である。 その左側面図である。 その右側面図である。 図１のＸ１−Ｘ１線位置での断面図である。 図１のＸ２−Ｘ２線位置での断面図である。 図３のＹ−Ｙ線位置での断面図である。 図３のＺ１−Ｚ１線位置での断面図である。 図３のＺ２−Ｚ２線位置での断面図である。 実施例１における駆動側及び従動側の両磁気カップリング部材のＮ、Ｓの磁極関係を示す模式図である。 実施例１における駆動側ギアと従動側ギアとの噛み合いと、磁気カップリングによるトルク波形の関係を示す図である。 その拡大図である。 駆動側ギアと従動側ギアの互いの歯が接触しない噛み合いと、磁気カップリングによるトルク波形の関係を示す図である。 歯が接触したときの噛み合いと磁気カップリングによるトルク波形の関係を示す図である。 磁気カップリングの回転角−トルク特性と、ステッピングモータの回転角−トルク特性の関係を示すグラフである。 本発明を電動スライダに適用した実施例２の右側面図である。 その左側面図である。 図１５のＸ−Ｘ線位置での断面図である。 同じくＹ−Ｙ線位置での断面図である。 左側面図である。 図１７のＺ−Ｚ線位置での断面図である。

符号の説明

Ａ１ 磁気カップリング装置
１ 本体ハウジング
２ ハイポイドギア装置
３ ステッピングモータ
４ ロータ
４ａ 鍔部
５ モータ軸
６ 駆動側ギア
７ ピニオンギア軸
７ａ ピニオンギア軸の基端
８ 従動側ギア
９ 駆動側磁気カップリング部材
１０ 従動側磁気カップリング部材
１１ 基端側ベアリング
１２ 先端側ベアリング
１３ 中空部
１４ 固定リング
１５ ハイポイドピニオンギア
１６ ハイポイドリングギア
１７・１８ ベアリング
Ａ２ 磁気カップリング装置
２１ 本体ハウジング
２２ 推進装置
２３ ステッピングモータ
スクリュー軸２４
２４ａ 延長軸
２５ スライダ
２６ モータ軸
２７ 駆動側プーリ
２８ 従動側プーリ
２９ タイミング
３０ 駆動側磁気カップリング部材
３１ 従動側磁気カップリング部材
３２ 中間の磁気カップリング部材
３３ 中間軸
３４ ベアリング
３５ ベアリング
３６ 推進部材
３７ ボールネジ
３８ レール
３９ 連結ロッド

Claims (6)

1. タイミングベルトを介して回転が伝達される駆動側プーリと従動側プーリとに、Ｎ、Ｓ交互の磁極を円周上に形成した磁気カップリング部材を付設し、これら磁気カップリング部材との間に中間の磁気カップリング部材が介在され、駆動側プーリにて駆動側プーリの磁気カップリング部材が回転されることにより、従動側プーリの磁気カップリング部材との間に磁力によるトルクが生じ、このトルクが前記中間の磁気カップリング部材を介して従動側の磁気カップリング部材に伝達されることを特徴とする磁気カップリング装置。
2. 前記駆動側プーリと前記従動側プーリとのそれぞれに歯を有する駆動側回転体と従動側回転体を付設したことを特徴とする請求項１に記載の磁気カップリング装置。
3. 駆動側回転体と従動側回転体のそれぞれにおいて、リング状の磁気カップリング部材が回転体の側面に付設され、両方の磁気カップリング部材の周面同士が対向していることを特徴とする請求項２に記載の磁気カップリング装置。
4. 駆動側の回転体及び磁気カップリング部材の直径と、従動側の回転体及び磁気カップリング部材の直径とが異なることを特徴とする請求項２又は３に記載の磁気カップリング装置。
5. 駆動側プーリがモータで回転され、従動側プーリがロータを回転させるように、これらプーリと、駆動側及び従動側並びに中間の磁気カップリング部材が電動ロータリーアクチュエータに組み込まれていることを特徴とする請求項１に記載の磁気カップリング装置。
6. 駆動側プーリがモータで回転され、従動側プーリがスライダを摺動させるスクリュー軸を回転させるように、これらプーリと、駆動側及び従動側並びに中間の磁気カップリング部材が電動スライダに組み込まれていることを特徴とする請求項１に記載の磁気カップリング装置。

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