JP4673357B2 - コメ由来またはコメ原料醸造食品由来のタンパク質、脂質代謝改善剤および食品素材 - Google Patents

コメ由来またはコメ原料醸造食品由来のタンパク質、脂質代謝改善剤および食品素材 Download PDF

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Description

本発明は、コメ由来またはコメ原料醸造食品由来のタンパク質、脂質代謝改善剤および食品素材に関する。
我が国の食生活は、パン食等の欧米化が進んでおり、これに伴い、動脈硬化症などの心疾患が、日本人の死因の上位に位置するようになってきている。例えば、日本人の死因の第2位と3位を占めているのは、狭心症や心筋梗塞などを含めた心臓病と、脳出血や脳梗塞などの脳卒中であり、これらはどちらも、動脈硬化が原因となって起こる血管の病気である。心臓病と脳卒中を合わせると総死亡の約30%を占めるので、動脈硬化を防ぐことは重要である。中性脂肪やコレステロールが高い高脂血症の人は、高脂血症と適正値の境界の人、つまり潜在患者も入れると、2,200万人もいる(平成12年厚生労働省循環器疾患基礎調査)。さらに、国民栄養調査から見ると、男性は30代から、女性は50代からほぼ2人に1人が高脂血症の状態にあると考えられる。しかも、自分が高脂血症であることを自覚していない人が多く、自覚している人はわずか30%(平成11年国民栄養調査)にすぎない。高脂血症はスタチン系の薬剤を使用して治療するが、その世界での売上は年間30兆円とも言われており、わが国の医療費の増加に拍車をかける一因である。このような高脂血症を医薬品でなく、毎日摂取しうる食品で予防治療できれば医療費の節減につながることが期待されている。すなわち、動脈硬化症の危険因子となる高脂血症を予防するには、食生活の改善、運動療法等が必要となる。特に、食事は、高脂血症の直接の原因となるため、健康の観点から、米飯を中心とした和食が、再評価されつつある。しかし、食事は、個人の嗜好に大きく影響されるため、食事だけで高脂血症を防止することは、困難である。そこで、高脂血症を予防するための健康食品が開発されている。
このような健康食品として、例えば、発芽処理した玄米を含む健康食品がある(特許文献1)。また、酒粕および米麹のみを含有する健康食品がある(特許文献2)。一方、清酒の製造の際に生成する酒粕は、従来から、粕汁や粕漬けなどの食品に利用されてきた。最近では、清酒の製造の効率化のために、原料米を耐熱性αアミラーゼを用いて液化してアルコール発酵させる液化法が開発されて、実用化されている(特許文献3など)。液化法で生成する粕(以下、「液化酒粕」という)は、一般の酒粕に比較して、タンパク質含量が約2倍であり、また、アンギオテンシン変換酵素阻害ペプチドや、プロリエルエンドペプチダーゼ阻害ペプチド等の有用成分が含まれている。また、液化酒粕は、ラットにおいて、血清および肝臓のコレステロールの上昇を抑制し、胆汁酸およびコレステロールの排泄量を増加させる傾向が見られ、脂質の排泄量が増加することが知られている(非特許文献1)。食品成分の機能性評価は、一般的に、ラット等を用いた動物実験による評価にとどまるものが少なくない。しかし、例えば、非特許文献2に記載されているように、実験動物とヒトとの種差の問題は大きく、実際の食生活でどれだけの機能性物質をどのように利用すると効果が得られるのかは、最終的にヒトで評価しないとわからないことが課題であった。
特開2003−9810号公報 特開2004−261119号公報 特開昭59−66875号公報 日本農芸化学会誌、第71巻第2号、頁137−143、1997年 日本栄養・食糧学会誌、2006年、第59巻、第5号、p.277−282
従来の健康食品は、脂質代謝の改善効果などがあるものの、食品に適用可能な、さらに優れた脂質代謝改善剤などの開発が求められている。また、液化酒粕等のコメ由来醸造食品の有効利用の観点から、コメまたはコメを原料とした醸造食品を用いた機能性食品素材の開発が求められている。
そこで、本発明は、脂質代謝改善効果に優れたコメ由来またはコメ原料醸造食品由来のタンパク質、それを用いた脂質代謝改善剤および食品素材の提供を目的とする。
本発明のタンパク質は、コメ由来またはコメ原料醸造食品由来のタンパク質であって、下記の(a)から(c)の理化学的性質を有することを特徴とする。
(a)水、有機溶媒、塩水溶液およびアルカリ溶液に不溶性もしくは難溶性である。
(b)セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、マンナナーゼおよびプロテアーゼに対して難加水分解性であり、かつペプシンおよびパンクレアチンに対して難消化性である。
(c)分子量が8kDaから15kDaの範囲である。
本発明の脂質代謝改善剤は、本発明のタンパク質を含むことを特徴とする。
本発明の食品素材は、本発明の脂質代謝改善剤を含むことを特徴とする。
本発明者等は、脂質代謝改善の観点から、コメおよびコメ原料醸造食品の成分について、一連の研究を重ねた。その結果、前記各種溶媒に不溶性もしくは難溶性であり、前記各種分解酵素に対し、難加水分解性であり、前記消化酵素に対し難消化性であり、かつ前記所定の範囲の分子量を有する新規タンパク質を発見した。このタンパク質についてさらに研究を重ねたところ、前記タンパク質が、優れた胆汁酸吸着能およびリパーゼ吸着能を有することを見出し、本発明を完成した。コレステロールは、胆汁酸に代謝されて、小腸へ排出されるが、その多くは再吸収される。本発明のタンパク質は、胆汁酸に吸着するため、便となって胆汁酸が排出されて再吸収が抑制される。再吸収される胆汁酸の量が減ると、コレステロールから胆汁酸への代謝が増加し、細胞のコレステロールが減少する。この結果、細胞外からコレステロールを取り込む反応が活発になり、血中のコレステロールが下がることとなる。一方、脂質分解酵素であるリパーゼに本発明の前記タンパク質が吸着すると、リパーゼが不活性となり、脂質の分解吸収が抑制される。これらの効果は、ヒトにおいても確認され、本発明のタンパク質の摂取により、血中の総コレステロール・LDL(低密度リポタンパク質)コレステロール・中性脂肪量が減少し、摂取終了後も前記成分の低減が維持された。食品成分の機能性評価は、一般的に、ラット等を用いた動物実験による評価にとどまるものが少なくない。しかし、例えば、前記非特許文献2に記載されているように、実験動物とヒトとの種差の問題は大きく、実際の食生活でどれだけの機能性物質をどのように利用すると効果が得られるのかは、最終的にヒトで評価しないとわからない。したがって、本発明のタンパク質は、実際にヒトにおける有効性が確認された、優れた脂質代謝改善効果を有するタンパク質であるといえる。なお、これまで、コメもしくはコメ由来食品で脂質代謝改善効果が報告されてきたが、有効成分は不明であった。本発明は、有効成分を分子レベルで同定し、有効成分を増強してさらに脂質代謝改善効果の増大を図ることを可能にした点で、その意義が大きい。
本発明のタンパク質は、下記(A),(B)および(C)の少なくとも一つのタンパク質を含むことが好ましい。
(A)分子量8kDaから9kDaのタンパク質であって、N末端アミノ酸配列が下記配列番号1の配列であるタンパク質。
配列番号1:Ile−Thr−Thr−Met−Gln−Tyr−Phe−Pro
(B)分子量13.5kDaから14.5kDaのタンパク質であって、N末端アミノ酸配列が下記配列番号2または下記配列番号3の配列であるタンパク質。
配列番号2:Arg−Phe−Asp−Ala−Leu
配列番号3:Arg−Phe−Asp−Pro−Leu
(C)分子量14.5kDaから15.5kDaのタンパク質であって、N末端アミノ酸配列が下記配列番号4または下記配列番号5の配列であるタンパク質。
配列番号4:Arg−Phe−Asp−Ala−Leu
配列番号5:Arg−Phe−Asp−Pro−Leu
本発明の前記タンパク質は、前記(A),(B)および(C)の三種類のタンパク質の複合タンパク質であるという形態であってもよい。
本発明において、前記醸造食品は、例えば、清酒醸造過程において生じる副産物であってもよい。前記副産物は、例えば、一般の酒粕であってもよいし、液化酒粕であってもよい。前記液化酒粕は、液化酵素により液化された原料米をアルコール発酵させることにより製造される清酒の製造において生成する液化酒粕である。
本発明のタンパク質は、前述のように、胆汁酸吸着能およびリパーゼ吸着能を有する。
本発明の脂質代謝改善剤は、前記タンパク質が、1日あたり0.06〜640mg/kg体重の量にて経口摂取されることが好ましい。
本発明の脂質代謝改善剤は、例えば、血液中の総コレステロール量、LDL(低密度リポタンパク質)コレステロール量、中性脂肪量の少なくとも一つを低減させる効果を有していてもよい。
本発明の製造方法は、前記本発明の食品素材の製造方法であって、前記脂質代謝改善剤が、液化酵素により液化された原料米をアルコール発酵させることにより製造される清酒の製造において生成する液化酒粕を含み、前記液化酒粕を溶媒で洗浄する洗浄工程を含む製造方法である。本発明の製造方法において、前記洗浄工程で使用する溶媒が、水、アルカリ性水溶液、塩水溶液および有機溶媒からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
つぎに、本発明について、例を挙げて詳細に説明する。
本発明の前記タンパク質は、前述のように、前記各種溶媒に不溶性もしくは難溶性であり、前記各種分解酵素に対し、加水分解を受け難く(難加水分解性)、各種消化酵素に対し難消化性であり、前記所定の範囲の分子量を有する。
本発明の前記(a)において、水、有機溶媒、塩水溶液およびアルカリ溶液に不溶性もしくは難溶性のタンパク質とは、例えば、試料3gに、下記(1)から(5)の各溶媒を30mL加え、室温で1時間攪拌し、遠心分離した場合における沈殿物中のタンパク質をいう。なお、前記攪拌条件は、特に制限されず、例えば、スターラーとバーを用いて、適度な速度で回転させればよい。また、前記遠心分離の条件は、例えば、9000G(9000×9.8m/s)で10分間の条件である。
(溶媒)
(1) 蒸留水
(2) 3重量%NaCl水溶液
(3) 75重量%エタノール
(4) 0.025M NaOH水溶液
(5) 55重量%プロパノール
本発明において、前記(a)の有機溶媒に不溶性もしくは難溶性のタンパク質とは、例えば、試料に対しジエチルエーテルを用いたソックスレー脂肪抽出法により脂質の抽出を行った場合の残渣中のタンパク質をいう。
本発明において、前記(b)のセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、マンナナーゼおよびプロテアーゼに対して難加水分解性であるとは、例えば、下記の加水分解酵素処理をした後の沈殿残渣に含まれるタンパク質をいう。また、本発明において、前記(b)のペプシンおよびパンクレアチンに対して難消化性であるとは、例えば、下記の人工消化処理をした後の沈殿残渣に含まれるタンパク質をいう。さらに、本発明において、前記(a)および(b)のタンパク質が胆汁酸吸着能を有するといえば、例えば、胆汁酸吸着率が、未処理の場合に対し、80%以上であることをいう。前記胆汁酸吸着率は、例えば、下記の方法により測定できる。
(加水分解酵素処理)
試料2g、蒸留水20mLに対し、下記各酵素粉末を10mg添加し、pHと温度を下記のように設定し、三角フラスコに入れ恒温水槽にて120rpmで6時間反応させた後、10分間沸騰水中で湯煎し、酵素を失活させる。それぞれの反応溶液をすべて回収し、凍結乾燥後、胆汁酸吸着率の測定に供する。
(1)セルラーゼ+ヘミセルラーゼ pH4.5、50℃
(2)マンナナーゼ pH4.0、60℃
(3)プロテアーゼ pH10、60℃
(人工消化処理)
試料1gに対し、蒸留水20mLを加え、1N(1mol/L)のHClでpH2.0に調整し、ペプシン5mgを添加し、37℃で60分間、120rpmで攪拌して反応させた後、0.9N(0.9mol/L)のNaHCOで中和しさらに1N(1mol/L)のNaOHでpH7.5に調整する。そこにパンクレアチン5mgを添加し、37℃で120分間、120rpmで攪拌して反応させた後、10分間100℃で加熱し反応を止める。遠心分離後、沈殿を2回蒸留水で洗浄した後、残渣を凍結乾燥し、胆汁酸吸着試率の測定に供する。
(胆汁酸吸着率)
胆汁酸(タウロコール酸およびグリココール酸の少なくとも一方を含む)の2.5mM溶液(Na/Sorensenリン酸緩衝液pH8.0)10mLに、試料0.286gを添加後、L型試験管中で37℃、16時間振とう(120ストローク/分)させ、遠心分離により上清を得る。得られた上清を0.45μmフィルターによりろ過し、ろ液の液量を測定後、胆汁酸濃度を測定する。経口摂取後の生体内での状態を考慮し、試験管内の試料に含まれる繊維間隙に存在する胆汁酸は、ゆるい結合をして吸着されているとみなし、吸着反応後の液量変化を考慮した下記の式で胆汁酸の吸着率(%)を求める。
胆汁酸吸着率(%)=100−[(A×B)/(C×10)]×100
A:上清胆汁酸濃度
B:上清液量
C:吸着前の胆汁酸濃度
本発明において、前記(c)に示すタンパク質の分子量は、例えば、Agilent Technologies社製の商品名2100 Bioanalyzer(Protein Chip 80使用)により測定できる。
本発明において、コメとしては、コメ自体だけでなく、コメの加工食品も含む。コメ加工食品としては、例えば、もち、しん粉、白玉粉、みじん粉、道明寺粉、ビーフン、米麹、α米、これらを加工したせんべい・ポン菓子などの米菓などがあげられる。コメを原料とした醸造食品としては、例えば、一般の酒粕および前記液化酒粕がある。一般の酒粕は、通常の清酒の製造工程で副産物として生成するものである。前記液化酒粕は、従来の方法(例えば、前記特許文献3)により得ることができる。例えば、原料米を水に浸漬した状態で粉砕してゾル状にし、このゾル状の原料米に耐熱性α−アミラーゼを作用させて液化し、これを常法によりアルコール発酵させて清酒を製造する。前記清酒を圧搾する際に生成するのが液化酒粕である。液化酒粕の成分組成の一例(前記非特許文献1)を下記に示す。また、酒粕以外のコメを原料とした醸造食品としては、例えば、甘酒、にごり酒、粕汁のもとなどがあげられる。そのほかに、酒粕以外のコメを原料とした醸造食品としては、例えば、米焼酎、米酢、米アルコールまたは米を原料とした水あめなど製造時の副産物などがあげられる。
(液化酒粕の成分組成)
粗タンパク質:72.1%
粗脂質:5.7%
灰分:1.5%
その他成分:20.7%
本発明において、前記タンパク質、前記脂質代謝改善剤および前記食品素材の形態は、特に制限されず、固形状、粉末状、または溶媒に分散させた状態であってもよい。また、前記タンパク質、前記脂質代謝改善剤および前記食品素材は、前記タンパク質の精製品単独であってもよいし、その他の成分を含んでいてもよく、例えば、前記液化酒粕自体であってもよい。本発明の前記脂質代謝改善剤および前記食品素材における前記タンパク質の割合は、特に制限されず、例えば、5〜100重量%の範囲であり、好ましくは、25〜100重量%の範囲であり、より好ましくは50〜100重量%の範囲であり、含有割合は多い方が好ましい。なお、本発明において、食品は、飲料を含む。本発明の前記タンパク質の前記胆汁酸吸着率は、例えば、35%以上であり、好ましくは40%以上であり、より好ましくは45%以上である。
また、本発明の前記タンパク質、前記脂質代謝改善剤および前記食品素材は、濃縮、ペースト化、乾燥、ゼリー状に固めるなどの加工を施してもよく、その他、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤等サプリメントの剤型に製剤化してもよい。本発明の前記タンパク質、前記脂質代謝改善剤および前記食品素材には、必要に応じて、本発明以外の脂質代謝改善剤などの機能を有する食品成分、医薬成分等を添加してもよい。
本発明の前記タンパク質、前記脂質代謝改善剤は、直接食用できるが、前述のように、食品素材として食品に添加してもよい。本発明の前記タンパク質、前記脂質代謝改善剤および前記食品素材の摂取量は、特に制限されず、例えば、液化酒粕の摂取量を指標にして決定できる。
また、本発明の前記タンパク質、前記脂代謝改善剤および前記食品素材は、摂取させる動物種に特に限定はなく、例えば、ヒトに摂取させてもよい。その場合、1日あたりの前記タンパク質の摂取量は、例えば、0.06〜640mg/kgであり、好ましくは、0.6〜320mg/kgであり、より好ましくは、6〜160mg/kgである。したがって、例えば、前記タンパク質を64%含有する前記脂質代謝改善剤または前記食品素材の摂取量は、好ましくは、0.1〜1000mg/kgであり、より好ましくは、1〜500mg/kgであり、さらに好ましくは、10〜250mg/kgである。本発明の前記タンパク質、前記脂代謝改善剤および前記食品素材をヒトに摂取させる場合には、例えば、1日あたり3g摂取させてもよい。また、本発明の前記タンパク質、前記脂質代謝改善剤および前記食品素材の摂取方法は、特に制限されず、例えば、任意のタイミングや回数で摂取することができる。
本発明の前記タンパク質および前記脂質代謝改善剤は、食用の用途の他、医薬品の用途にも適用できる。
本発明の前記タンパク質および前記脂質代謝改善剤の医薬品の用途は、例えば、高コレステロール血症、高LDL(低密度リポタンパク質)コレステロール血症、高トリグリセリド血症等の高脂血症改善用、リパーゼ活性阻害用等が挙げられる。したがって、本発明の前記タンパク質および前記脂質代謝改善剤は、例えば、高コレステロール血症改善剤、高LDLコレステロール血症改善剤、高トリグリセリド血症改善剤等の高脂血症改善剤、リパーゼ活性阻害剤等として用いることができる。
本発明の前記タンパク質および前記脂質代謝改善剤を摂取することにより、例えば、血液中の総コレステロール量、LDLコレステロール量、中性脂肪量等を低減することができる。また、本発明の前記タンパク質および前記脂質代謝改善剤は、その摂取により前記血液中の総コレステロール量、LDLコレステロール量、中性脂肪量等が低減した場合には、継続的に摂取しなくても、その低減を維持することができる。
本発明において、前記血液中の総コレステロール量、LDL(低密度リポタンパク質)コレステロール量、中性脂肪量とは、その対象動物に特に限定はなく、例えば、ヒトの血液中の総コレステロール量、LDLコレステロール量、中性脂肪量であってもよい。前記ヒトの血液中における前記成分の測定方法は、特に制限されず、例えば、被験者(ヒト)の血液から分離した血清を用いてコレステロール測定機器等により測定してもよい。
前述のように、本発明の食品素材において使用する前記液化酒粕は、溶媒で洗浄した洗浄液化酒粕であることが好ましい。前記溶媒としては、例えば、水、アルカリ性水溶液、塩水溶液および有機溶媒などを使用することが好ましい。前記洗浄液化酒粕は、未洗浄の液化酒粕に比べて、独特の風味が減じており、食品素材として好ましく使用できる。前記洗浄に用いる洗浄溶媒の例は、下記のとおりである。これらのなかで、好ましい洗浄溶媒は、KOH水溶液である。
(洗浄溶媒)
水:蒸留水、イオン交換水、天然水、水道水、地下水
アルカリ性水溶液:NaOH水溶液、KOH水溶液、Ca(OH)水溶液、Mg(OH)水溶液、アンモニア水
塩水溶液:NaCl水溶液、KCl水溶液、CaCl水溶液、MgCl水溶液
有機溶媒:メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキサン、アセトン、酢酸エチル
前記液化酒粕の洗浄方法は、特に制限されず、例えば、液化酒粕を各種洗浄溶媒に分散混合し、遠心分離、ろ過等で前記洗浄溶媒から前記液化酒粕を分離すればよい。洗浄液化酒粕は、使用しやすいように、凍結乾燥後、ブレンダー等で粉砕して粉末化することが好ましい。
つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、下記の実施例および比較例によってなんら制限ないし限定されない。
(実施例1)
本実施例では、液化酒粕の胆汁酸吸着能を調べた。タウロコール酸およびグリココール酸の2種類の抱合胆汁酸の2.5mM溶液(Na/Sorensenリン酸緩衝液pH8.0)10mLに、液化酒粕の凍結乾燥粉末0.286gを添加後、L型試験管中で37℃、16時間振とう(120ストローク/分)させ、遠心分離により上清を得た。上清を0.45μmフィルターによりろ過し、ろ液の液量を測定後、胆汁酸濃度を測定した。胆汁酸濃度の測定は総胆汁酸テストワコー(商品名、和光純薬社製)を用いた。前記測定結果から、前述の式により、胆汁酸吸着率(%)を求めた。その結果、液化酒粕のタウロコール酸吸着率は、50%であり、液化酒粕のグリココール酸の吸着率は、37%であった。
(比較例1)
胆汁酸としてタウロコール酸のみを用いた以外は、実施例1と同様にして、赤糠(コメ(日本晴)の精白で生じた赤糠部分)、ひえ(ムソー株式会社製)、ビール酵母(商品名:ビール酵母食品、アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製)、セルロース(粉末、ナカライテスク株式会社製)、キチン(粉末、半井化学薬品株式会社製)、キトサン(東京化学工業株式会社製)について、胆汁酸吸着能を測定した。これらの結果を、実施例1の結果と併せて図1のグラフに示す。図示のように、液化酒粕は、他の食品もしくは食品素材と比較して、胆汁酸吸着率が高かった。
(比較例2)
カゼイン(和光純薬工業株式会社製)および大豆タンパク質(商品名:たん白粉末、和光純薬株式会社製)の胆汁酸吸着能を、実施例1と同様にして測定した。その結果を、下記の表1に示す。下記表1に示すように、カゼインおよび大豆タンパク質は、胆汁酸を吸着しなかった。
(表1)
胆汁酸濃度(μmol/L) タウロコール酸 グリココール酸
反応前 861.4 861.4
反応後 カゼイン 1415.8 1480.2
反応後 大豆タンパク質 881.2 995.0
(実施例2)
液化酒粕の凍結乾燥粉末3gに、下記の各溶媒(1)〜(5)を30mL加え、室温で1時間攪拌し、遠心分離後、蒸留水洗浄して得られた沈殿残渣を凍結乾燥し細かく粉砕し、これを試料(抽出残渣)とした。なお、ジエチルエーテルによる脱脂は、ソックスレー脂肪抽出法により一昼夜行った。これらの試料について、胆汁酸としてタウロコール酸のみを用いた以外は、実施例1と同様にして、胆汁酸吸着試験を実施し、胆汁酸吸着率(%)を求めた。また、対照として、各種溶媒による抽出処理をしていない液化酒粕についても、胆汁酸吸着試験を実施し、胆汁酸吸着率(%)を求めた。これらの結果を、図2のグラフに示す。図示のように、各抽出残渣は、対照(液化酒粕)と同等若しくはそれ以上の胆汁酸吸着率を示した。
(溶媒)
(1) 蒸留水
(2) 3重量%NaCl水溶液
(3) 75重量%エタノール
(4) 0.025M NaOH水溶液
(5) 55重量%プロパノール
(実施例3)
本実施例は、下記加水分解酵素処理および人工消化試験をした液化酒粕の胆汁酸吸着率を求めた例である。なお、対照として、下記消化酵素処理および人工消化試験をしない液化酒粕についても、同様に胆汁酸吸着率を求めた。これらの結果を、図3のグラフに示す。図示のように、消化酵素処理および人工消化試験をした液化酒粕は、対照の液化酒粕に比べ、胆汁酸吸着率はあまり低下せず、35%以上の胆汁酸吸着率を示した。
(加水分解酵素処理)
液化酒粕凍結乾燥粉末2g、蒸留水20mLに対し、下記各酵素粉末を10mg添加し、pHと温度を下記のように設定し、三角フラスコに入れ恒温水槽にて120rpmで6時間反応させた後、10分間沸騰水中で湯煎し、酵素を失活させた。それぞれの反応溶液をすべて回収し、凍結乾燥後、実施例1と同様の胆汁酸吸着試験(胆汁酸はタウロコール酸のみ)に供した。
(1)セルラーゼ(商品名:セルラーゼA「アマノ」3、天野エンザイム株式会社製)+ヘミセルラーゼ(商品名:ヘミセルラーゼ「アマノ」90、天野エンザイム株式会社製)
pH4.5、50℃
(2)マンナナーゼ(商品名:スミチームACH、新日本化学工業株式会社製)
pH4.0、60℃
(3)プロテアーゼ(商品名:プロレザーFG−F、天野エンザイム社製)
pH10、60℃
(人工消化処理)
液化酒粕凍結乾燥品1gに対し、蒸留水20mLを加え、1N(1mol/L)のHClでpH2.0に調整し、ペプシン(商品名:ペプシン 1:60000、 和光純薬工業株式会社製)5mgを添加し、37℃で60分間、120rpmで攪拌して反応させた後、0.9N(0.9mol/L)のNaHCOで中和しさらに1N(1mol/L)のNaOHでpH7.5に調整した。そこにパンクレアチン(商品名 Pancreatin, From porcine Pancreas、SIGMA−ALDRICH社製)5mgを添加し、37℃で120分間、120rpmで攪拌して反応させた後、10分間100℃で加熱し反応を止めた。遠心分離後、沈殿を2回蒸留水で洗浄した後、残渣を凍結乾燥し、実施例1と同様の胆汁酸吸着試験(胆汁酸はタウロコール酸のみ)に供した。
(実施例4)
液化酒粕凍結粉末および実施例3の人工消化試験の消化残渣粉末について、電気泳動(SDS−PAGE)により、本発明の液化酒粕由来タンパク質を確認した。すなわち、まず、各粉末を5mg/mLとなるように2×SDSサンプルバッファーに溶解し、5分間煮沸後、遠心分離し、遠心上清5〜15μLを泳動用試料とした。また、対照として、飯米の凍結乾燥粉末を、50mg/mLになるように前記サンプルバッファーに溶解し、上記と同様に調製した遠心上清15μLを、泳動用試料とした。使用したゲルは商品名マルチゲルII15/25、MarkerはタンパクマーカーIII(M)・ペプチドマーカー(PM)、泳動バッファーは、通常のトリス−グリシンバッファーよりも低分子領域の解析が可能な50mMのトリス−トリシンバッファーを使用した(いずれも、第一化学薬品社製)。電気泳動条件は、30mAで、70分間泳動を行った。これらの結果を、図4の電気泳動の写真に示す。同図において、(1)は飯米、(2)液化酒粕凍結乾燥粉末、(3)は液化酒粕の人工消化試験の消化残渣粉末である。図示のように、液化酒粕の人工消化試験の消化残渣粉末において、分子量10kDaから15kDaの範囲に、三つの本発明の前記タンパク質のバンドを確認した。
つぎに、前記三つの本発明の前記タンパク質の分子量および量比を定量するために、Agilent Technologies社製の商品名2100 Bioanalyzer(Protein chip 80を使用)で解析を行った。人工消化残渣粉末を5mg/mLになるようにSDS−PAGE用サンプルバッファーに懸濁し、10分間煮沸した後、不溶解物を取り除くために遠心し、その上清を試料とした。その結果を、図5に示す。同図において、左側のチャートは、キャピラリー電気泳動のチャートであり、右側の写真は、電気泳動の写真である。前記解析の結果を、下記表2に示す。
(表2)
Peak 分子量(kDa) 組成率(%)
1st 8.32 30.41
2nd 14.37 31.60
3rd(split) 14.97 37.83
その他のピーク − 0.16
前記表2に示すように、本発明の下記(A)〜(C)のタンパク質が確認された。
(A)分子量8.32kDaのタンパク質
(B)分子量14.37kDaのタンパク質
(C)分子量14.97kDaのタンパク質
つぎに、前記(A)〜(C)の各タンパク質について、常法により、N末端のアミノ酸配列を調べた。その結果を、下記表3に示す。また、これらのアミノ酸配列の結果から、ゲノムデータベースでタンパク質の種類を相同性検索で調べたところ、すべてコメ由来のタンパク質であることが確認された。また、これらのN末端シーケンスに相当するコメ由来のタンパク質の配列はデータベース上に複数のクローンとして存在した。これを下記表4に示した。ここに示した番号をもとに、NCBIのタンパク質データベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=Protein&itool=toolbar)に照会することで、タンパク質の配列を得ることができる。
(表3)
タンパク質種類 N末端アミノ酸配列
A Ile−Thr−Thr−Met−Gln−Tyr−Phe−Pro
(配列番号1)
B Arg−Phe−Asp−Ala−Leu(配列番号2)または
Arg−Phe−Asp−Pro−Leu(配列番号3)
C Arg−Phe−Asp−Ala−Leu(配列番号4)または
Arg−Phe−Asp−Pro−Leu(配列番号5)
(表4)
配列番号1に対応するクローン
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配列番号2と配列番号4に対応するクローン
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配列番号3と配列番号5に対応するクローン
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(実施例5)
圧搾直後から約1ヶ月間4℃で保存していた液化酒粕をブレンダーで粉砕したもの50g(水分47%)に対し、(1)蒸留水、(2)0.5重量%NaCl水溶液、(3)25mMのKOH水溶液を、それぞれ150mL加え、室温にて90分間攪拌した。その後、沸騰水中で30分間湯煎し、室温まで冷却後、遠心分離して得られた沈殿を凍結乾燥し、得られた乾燥酒粕をブレンダーで粉砕し、得られた粉末を、下記のモニター試食に供した。
(モニター試食)
各溶媒で1回洗浄した上記3種類の粉末液化酒粕サンプルに加え、洗浄前の未処理液化酒粕の凍結乾燥粉末サンプルを用意し、計4種類の液化酒粕粉末のブラインド試食を、モニター10名で実施した。採点は「食品素材としての好ましさ」に関して1を最良とし5までの五段階評価で行い、フリーコメントも記入してもらった。この結果を、下記の表5に示す。
Figure 0004673357
前記表5に示すように、各種溶媒で洗浄したものは、未処理のものより評価が高かった。特に、KOH水溶液で洗浄した液化酒粕は、それ自身の強い風味が低減され、他の食材の風味を損なうことなく添加できることから、食品素材として最適であった。
(実施例6)
本実施例では、下記サンプル(1)〜(4)について、リパーゼ阻害活性を確認した。また、比較例として、下記サンプル(5)〜(7)について、リパーゼ阻害活性を測定した。
(1) 液化酒粕
液化酒粕は、その凍結乾燥粉末を使用した。
(2) 液化酒粕ペプシン分解物
液化酒粕凍結乾燥品50gに対し、1N(1mol/L)のHCl 200mLとペプシン(商品名:ペプシン 1:60000、 和光純薬工業株式会社製)250mgを添加し、pH2.0、37℃で60分間、120rpmで攪拌して反応させた後、0.9N(0.9mol/L)のNaHCOで中和し、さらに1N(1mol/L)のNaOHでpH7.5に調整して反応を止めた。反応物を遠心分離後、沈殿を2回蒸留水で洗浄した後、残渣を凍結乾燥し、前記凍結乾燥粉末を液化酒粕ペプシン分解物とした。
(3) 液化酒粕ペプシン・パンクレアチン分解物
液化酒粕凍結乾燥品50gに対し、1N(1mol/L)のHCl 200mLとペプシン(商品名:ペプシン 1:60000、 和光純薬工業株式会社製)250mgを添加し、pH2.0、37℃で60分間、120rpmで攪拌して反応させ、0.9N(0.9mol/L)のNaHCOで中和し、さらに1N(1mol/L)のNaOHでpH7.5に調整して反応を止めた。続いて、この反応物に対し、パンクレアチン(商品名 Pancreatin, From porcine Pancreas、SIGMA−ALDRICH社製)250mgを添加し、37℃で120分間、120rpmで攪拌して反応させた後、10分間100℃で加熱し反応を止めた。遠心分離後、沈殿を2回蒸留水で洗浄した後、残渣を凍結乾燥し、前記凍結乾燥粉末を、液化酒粕ペプシン・パンクレアチン分解物とした。
(4) 液化酒粕アルカリ不溶画分、(5) 液化酒粕アルカリ可溶画分
凍結乾燥品50gに対し、3%NaCl水溶液200mL加え、室温で1時間攪拌し、遠心分離後、得られた沈殿残渣に対し、さらに0.1N(0.1mol/L)のNaOHを200mL加え、室温で1時間攪拌した。遠心分離して得られた上清をアルカリ可溶画分とし、酸沈後凍結乾燥して粉末を得た。一方、前記遠心分離で得られた沈殿をアルカリ不溶画分とし、残渣を凍結乾燥して粉末を得た。
(6) ビール酵母
ビール酵母として、ビール酵母食品(商品名:エビオス錠、アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製)を粉砕した粉末を使用した。
(7) カゼイン
カゼインとして、カゼイン粉末(和光純薬工業株式会社製)を使用した。
(リパーゼ阻害活性測定)
前記(1)〜(7)の各サンプル0.1gに対し、500U/Lのリパーゼ溶液(リパーゼ、和光純薬工業株式会社製)6mLを加え、37℃10分間反応後、遠心して得られた上清、およびブランクとしてサンプルを加えないリパーゼ溶液のリパーゼ活性を、リパーゼ測定用試薬(商品名:「BMY」モノテスト、ベーリンガー・マンハイム株式会社製)を用いて測定した。前記ブランクのリパーゼ活性100に対する各サンプルのリパーゼ活性の阻害率を求めた。この結果を、図6のグラフに示す。
図示のように、(1)液化酒粕、(2)液化酒粕ペプシン分解物、(3)液化酒粕ペプシン・パンクレアチン分解物および(4)液化酒粕アルカリ不溶画分は、リパーゼ活性を阻害した。中でも、(4)アルカリ不溶画分が最も強いリパーゼ阻害活性を示した。一方、(5)アルカリ可溶画分、(6)ビール酵母および(7)カゼインには、リパーゼ阻害活性がまったく認められなかった。
さらに、前記(1)〜(7)の各サンプルの溶出液のリパーゼ活性阻害率を確認した。すなわち、まず、前記(1)〜(7)の各サンプル0.1gに対し50mMリン酸緩衝液(pH7.7)6mLを加え、37℃10分間攪拌後、遠心して得られた上清をサンプルからの溶出液とした。各溶出液または緩衝液のみを用いて500U/Lのリパーゼ溶液を作成し、リパーゼ活性を測定した。緩衝液のみのリパーゼ活性を100とし、各サンプルからの溶出液によるリパーゼ活性の阻害率を求めた。その結果、前記(1)〜(7)の全てのサンプルからの溶出液には、リパーゼ活性の阻害は認められなかった。
(実施例7)
本実施例では、実施例5のサンプル(3)について、ヒトにおける脂質代謝改善効果を確認した。
(ヒトにおける脂質代謝改善効果の測定)
本実施例では、血液中の総コレステロール量が220mg/dL以上の高脂血症男性5名(平均年齢40.6±1.1歳、平均体重62.8±8.4kg)を被験者とした。前記被験者選定基準(総コレステロール量が220mg/dL以上)は、日本動脈硬化学会による高脂血症の診断基準に基づき設定した。前記被験者に、1日あたり前記粉末液化酒粕サンプル3gを、2ヶ月間毎日摂取させた。なお、前記粉末液化酒粕サンプルに含まれる本発明のタンパク質含有率は、約64%であった。前記サンプルの摂取条件は、1日の摂取量のみを限定し、摂取する時刻および回数は自由とした。また、前記サンプルは、他の飲食物と同時に摂取しても構わないものとした。前記被験者から、摂取開始前、摂取開始1ヶ月後、摂取開始2ヶ月後および試験終了1ヶ月後の計4回採血した。そして、前記採血した血液から、常法により血清を得た。前記血清について、血清中中性脂肪測定用「ネスコートVLII TG(商品名)」、血清中総コレステロール測定用「ネスコートVLII TC(商品名)」(ともに、アルフレッサ ファーマ株式会社製)を用いて、血清中の中性脂肪、総コレステロールおよびHDLコレステロール量を測定した。また、LDLコレステロール量は、以下の式(フリードワルドの公式)により算出可能であった4名について算出した。
(式1)
LDLコレステロール=総コレステロール−HDLコレステロール−中性脂肪×0.2
図7は、被験者5名の前記総コレステロール量の平均値の推移を示すグラフである。縦軸は、総コレステロール量(mg/dL)であり、横軸は、各測定時である。図示のように、前記総コレステロール量は、摂取開始2ヶ月後まで減少傾向が続き、摂取終了1ヶ月後においても、減少傾向が維持された。また、図示しないが、前記HDLコレステロール量は、摂取開始前から摂取終了1ヶ月後まで、ほぼ変動しなかった。
図8は、前記式1を用いて算出した前記LDLコレステロール量の平均値の推移を示すグラフである。縦軸は、LDLコレステロール量(mg/dL)であり、横軸は、各測定時である。同図に示すように、前記LDLコレステロール量は、前記総コレステロール量と同様に、摂取開始2ヶ月後まで減少傾向が続き、摂取終了1ヶ月後においても、減少傾向が維持された。したがって、高コレステロール高脂血症者が、本実施例のサンプルを摂取すれば、前記HDLコレステロール量は維持したままで、前記総コレステロール量および前記LDLコレステロール量を低減できることが示された。
図9は、血中中性脂肪量の多い被験者2名について、前記中性脂肪量の推移を示すグラフである。縦軸は、中性脂肪量(mg/dL)であり、横軸は、各測定時である。前記2名は、摂取開始2ヶ月目まで、前記中性脂肪量の減少傾向が続いた。したがって、本実施例のサンプルは、高中性脂肪高脂血症者の前記中性脂肪量を低減することも示された。
下記表6は、本実施例における前記中性脂肪量の変化を、被験者別に示した表である。同表中の変化量および増減率は、下記式2および3を用いて算出した。
(式2)変化量(mg/dL)=(摂取開始2ヶ月後の前記中性脂肪量)−(摂取前の前記中性脂肪量)
(式3)増減率(%)=(変化量)÷(摂取前の前記中性脂肪量)×100
(表6)
モニター 中性脂肪(mg/dL) 変化量 増減率
摂取前 摂取開始2ヶ月後 (mg/dL) (%)
A 432 385 −47 −10.9
B 144 109 −35 −24.3
C 80 63 −17 −21.3
D 55 81 26 47.3
E 48 62 14 29.2
表6に示すように、前記中性脂肪量の多い高脂血症者と異なり、前記中性脂肪量が正常範囲である2名は、前記中性脂肪量が低減しなかった。したがって、本実施例のサンプルは、高中性脂肪高脂血症者に対しては前記中性脂肪量を大幅に低減させ、中性脂肪量の正常な高脂血症者に対しては前記中性脂肪量に影響を与えない、副作用の少ない安全な食品素材であることが示された。
以上のように、本発明の前記タンパク質は、優れた胆汁酸吸着能およびリパーゼ吸着能を有し、脂質代謝改善効果に優れる。したがって、本発明の前記タンパク質は、例えば、胆汁酸再吸収抑制剤、脂質吸収抑制剤、脂質代謝改善剤、医薬、食品素材および食品など様々なものに適用でき、その用途は制限されず広い。
図1は、本発明の実施例1および比較例1における胆汁酸吸着率を示すグラフである。 図2は、本発明の実施例2における胆汁酸吸着率を示すグラフである。 図3は、本発明の実施例3における胆汁酸吸着率を示すグラフである。 図4は、本発明の実施例4における電気泳動の写真である。 図5は、本発明の実施例4におけるキャピラリー電気泳動のチャートと電気泳動の写真である。 図6は、本発明の実施例6におけるリパーゼ活性阻害率を示すグラフである。 図7は、本発明の実施例7における血清中総コレステロール量の平均値の推移を示すグラフである。 図8は、本発明の実施例7における血清中LDLコレステロール量の平均値の推移を示すグラフである。 図9は、本発明の実施例7における血清中中性脂肪量の推移を示すグラフである。

Claims (4)

  1. コメ由来またはコメ原料醸造食品由来のタンパク質であって、下記の(a)および(b)の理化学的性質を有する、下記(A)、(B)および(C)からなる複合タンパク質。
    (a)水、有機溶媒、塩水溶液およびアルカリ溶液に不溶性もしくは難溶性である。
    (b)セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、マンナナーゼおよびプロテアーゼに対して難加水分解性であり、かつペプシンおよびパンクレアチンに対して難消化性である。
    (A)分子量8.32kDaのタンパク質であって、N末端アミノ酸配列が下記配列番号1の配列であるタンパク質。
    配列番号1:Ile−Thr−Thr−Met−Gln−Tyr−Phe−Pro
    (B)分子量14.37kDaのタンパク質であって、N末端アミノ酸配列が下記配列番号2または下記配列番号3の配列であるタンパク質。
    配列番号2:Arg−Phe−Asp−Ala−Leu
    配列番号3:Arg−Phe−Asp−Pro−Leu
    (C)分子量14.97kDaのタンパク質であって、N末端アミノ酸配列が下記配列番号4または下記配列番号5の配列であるタンパク質。
    配列番号4:Arg−Phe−Asp−Ala−Leu
    配列番号5:Arg−Phe−Asp−Pro−Leu
  2. 前記醸造食品が、清酒醸造過程において生じる副産物である請求項1記載の複合タンパク質。
  3. 前記副産物が、液化酵素により液化された原料米をアルコール発酵させることにより製造される清酒の製造において生成する液化酒粕である請求項2記載の複合タンパク質。
  4. 胆汁酸吸着能を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の複合タンパク質。
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