JP6948657B2 - 脳機能改善用組成物 - Google Patents
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Description
近年の研究においては、食物や食物由来成分が脳機能の維持、発達、改善に効果があることが明らかになりつつある。例えば、コーヒーやキャベツ等から抽出されるクロロゲン酸を含有する経口組成物が、脳機能改善に有効であることが明らかとなっている(例えば、特許文献1参照)。
本発明の課題は、優れた脳機能改善効果を有する組成物を提供することにある。
すなわち、本発明者らは、ニンニク皮が、脳機能改善に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
[1]ニンニク皮又はその抽出物(N−trans−feruloyloctopamineの精製物を除く)を含有することを特徴とする脳機能改善用組成物。
[2]ニンニク皮の水溶性溶媒抽出物を含有することを特徴とする上記[1]記載の脳機能改善用組成物。
[3]抗認知症用であることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の脳機能改善用組成物。
本発明における脳機能の改善とは、脳機能低下の予防(脳機能の維持向上)、脳機能低下の回復、脳機能低下の治療(治癒)を含む概念である。例えば、軽度認知障害等の記憶力の低下の改善や、認知症の改善(抗認知症)を挙げることができる。具体的に、認知症の改善としては、認知症の発症の予防、発症した認知症の緩和、発症した認知症の治療を挙げることができる。認知症としては、例えば、アルツハイマー型認知症を挙げることができる。
(原料)
ニンニク皮としては、東北産の「福地ホワイト」の皮(主として各鱗片を覆う皮)を用いた。
ニンニク皮1gを秤量し、水又はエタノールで24時間振盪抽出(200rpm)した。水抽出物は、遠心分離し、上澄みを凍結乾燥させて得た。エタノール抽出物は、抽出液を濾過し、ロータリーエバポレーターにて濃縮後、デシケータ内で乾固させて得た。
上述のように、近年では、食物や食物由来成分が脳機能の維持、発達および改善に効果があるということが明らかになりつつあり、その1つとして、ヒト腸管上皮細胞において吸収された成分が脳由来神経栄養因子(BDNF;brain derived neurotrophic factor)産生を増強し、産生されたBDNFが神経細胞の活性化を促すという腸管の活性化を介した脳機能制御機構がある。
本試験では、腸管上皮細胞モデルとしてヒト結腸癌由来細胞(以下、「Caco−2細胞」という。)を用い、神経細胞モデルとしてヒトアストロサイトーマ(以下、「1321N1細胞」という。)を用い、各サンプルが脳機能(認知症)に及ぼす影響を評価した。
Caco−2細胞および1321N1細胞はDulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM)(高グルコース)(含1%ペニシリン−ストレプトマイシン及び10%ウシ胎児血清(FBS))を用いて、コンフルエントになるまでφ10cmディッシュにて前培養した。その後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、培地に再懸濁後、24穴プレートに5.0×104cells/wellの濃度で播種し、CO2インキュベーター(37℃、5%CO2)でオーバーナイト培養した。
オーバーナイト培養後、サンプルを含む無血清DMEM培地(含1%ペニシリン−ストレプトマイシン)に交換し、CO2インキュベーターにて24時間培養した。
サンプル添加24時間後のCaco−2細胞および1321N1細胞を回収し、PureLink RNA Mini kit(Invitrogen)を用いてtotal RNAを抽出した。ReverTra Ace qPCR RT Master Mix with gDNA Remover(TOYOBO)にて、抽出したtotal RNAからcDNAを合成した。合成したcDNAを鋳型としてAriaMX リアルタイムPCR装置(アジレント・テクノロジー)でリアルタイムPCRを行った。リアルタイムPCR反応には、THUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(TOYOBO)を用いた。BDNF遺伝子用プライマーとして5’−GTCAAGTTGGGAGCCTGAAATAGTG−3’及び5’−AGGATGCTGGTCCAAGTGGTG−3’を、NGF遺伝子用プライマーとして5’−ACCTTTCTCAGTAGCGGCAA−3’及び5’−TGTGTCACCTTGTCAGGGAA−3’を、内部標準β−アクチン用プライマーとして5’−GGGTCAGAAGGACTCCTATG−3’及び5’− GTAACAATGCATGTTCAAT−3’を使用した。リアルタイムPCR反応条件として、95℃、3分の初期変性後、95℃、3秒での変性、60℃、30秒のアニーリング/伸長という2ステップのPCR反応を40サイクル行った。
その結果を図1及び2に示す。
Caco−2細胞または1321N1細胞に、ニンニク皮の熱水抽出物、亜臨界水抽出物、温水・凍結乾燥物、温水・減圧乾燥物、水・凍結乾燥物を、終濃度100μg/mL処理区添加、RNAを抽出後、合成したcDNAを鋳型として、BDNF遺伝子またはNGF遺伝子の発現量を調査するため、リアルタイムPCRを行った。
その結果を図3及び図4に示す。
以上の結果から、熱水抽出物が、脳由来神経栄養因子(BDNF)の産生を最も増強できると考えられる。
以上の結果から、熱水抽出物が、神経成長因子(NGF)を最も活性化できると考えられる。
ニンニク皮含有サプリメントを摂取することによるヒトの認知機能の改善効果を検証した。
満65歳以上の健常な成人男女16名を対象に、プラセボ対照二重盲検ランダム化並行群間比較試験(RCT)を行った。被験者は、ブロックランダム化法を用いて、試験物群・プラセボ群の間に有意な偏りがないよう、性別と年齢を条件に各群を8名ずつに割り付けた。試験物群の平均年齢は70.3±2.60歳、プラセボ群の平均年齢は66.6±0.92歳であった。
したがって、ニンニク皮含有サプリメントを摂取することにより、認知機能の向上が図られることが明らかとなった。
ACEは、血圧調節メカニズムの一つであるレニン−アンジオテンシン系において、アンジオテンシンIから、昇圧作用を有するアンジオテンシンIIを生成する。また同時に、降圧ペプチドであるブラジキニンを分解するなど、血圧上昇に大きく関与する酵素である。
本試験では、各サンプルのACEに対する酵素阻害活性を評価することにより、各サンプルの降圧効果について検討した。
ACE活性試験は、ACE kit−WST(同仁化学研究所)を用いた。同キットは、3−Hydroxybutyryl−Gly−Gly−Gly(3HBGGG)より遊離した3−Hydroxybutyric acid(3HB)を酵素法にて検出する方法である。
=[(Ablank1−Asmaple)/(Ablank1−Ablank2)]×100
糖尿病は糖代謝の異常により高血糖状態が継続する疾病であり、様々な病気を引き起こす原因ともなる。高血糖状態には生活習慣が大きく影響をしており、日常的な血糖値のコントロールが重要である。α−グルコシダーゼは小腸上皮細胞において糖のα−グルコシド結合を加水分解する酵素の複合体であり、二糖類の消化と吸収に関与する。
本試験では、サンプルの血糖値上昇抑制効果を評価するため、サンプルのα−グルコシダーゼ活性を測定した。
評価サンプルとして、ニンニク皮水抽出を22、222μg/mLの終濃度、及びエタノール抽出物を222μg/mLの終濃度で添加した。スクロース、α−グルコシダーゼおよびサンプルを各100μLずつ混合した。インキュベーター内で37℃、30分間反応させた。100℃にセットしたブロックインキュベーターにて10分間加熱し、反応停止した。加熱後、室温に戻るまで3分間静置した。サンプルを遠心し、上清中のグルコース濃度をバイオセンサで測定した。
骨は、骨芽細胞による骨形成と、破骨細胞による骨吸収(骨破壊)のバランスによってコントロールされている。高齢になると骨粗しょう症になりやすいのは、破骨細胞が骨芽細胞よりも活性化されることで骨量が減少するためである。そのため、破骨細胞の増殖・分化を阻害することは骨粗しょう症の抑制に有効であると考えられる。
破骨細胞のマーカー酵素としては、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP:tartrate−resistant acid phosphatase)が知られている。骨髄細胞を分化誘導し、TRAP活性を測定することにより細胞の分化状態を評価可能である。
本実験では、サンプルが破骨細胞への分化を抑制する機能を有するか、TRAP活性を測定し評価した。
マクロファージ様細胞(RAW264)はDulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM)(高グルコース)(含1%ペニシリン−ストレプトマイシンおよび10%ウシ胎児血清(FBS))を用いて、80%コンフルエントになるまでφ10cmディッシュにて前培養した。その後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、培地に再懸濁後、96穴プレートに0.5×104cells/wellの濃度で播種し、CO2インキュベーター(37℃、5%CO2)でオーバーナイト培養した。
評価サンプルとして、ニンニク皮水抽出物を0.01、0.1、1μg/mLの終濃度で添加した。オーバーナイト培養後、サンプルを含む破骨細胞分化誘導培地(OSCMM、コスモバイオ)に交換し、CO2インキュベーターにて72時間培養した。
細胞生存率は、Cell Counting kit−8(同仁化学)を用いて測定した。サンプル添加72時間後、サンプル含有OSCMM培地を除去し、96穴プレートの各ウェルにサンプルを含まない無血清DMEM培地(含1%ペニシリン−ストレプトマイシン)を100μL加えた。次いで、各ウェルにCCK−8液を10μL添加し、CO2インキュベーターにて1時間静置培養した。マイクロプレートリーダーで450nmにおける吸光度を測定し、細胞生存率を算出した。
細胞生存率測定後、細胞上清を除去し、細胞固定液(アセトン:エタノール=1:1)を各ウェル100μLずつ加え、1分間室温にて細胞を固定した。細胞固定液を除去し、30分間ウェルを乾燥させた。各ウェルに基質パラニトロフェニルリン酸(pNPP)溶液(1.5mg/mL)を100μLずつ加え、37℃で60分間反応させる。その後、反応停止液1N NaOHを各ウェルに50μL加えた。マイクロプレートリーダーで405nmにおける吸光度を測定し、TRAP活性を算出した。
アミノ酸と還元糖を共存させると、架橋反応が生じタンパク質の構造が変化する。これはメイラード反応と呼ばれる非酵素的褐変化反応であり、パンやホットケーキなど、食品の加熱調理時に見られる茶色い焦げも、この反応によるものである。メイラード反応は、体内に存在するタンパク質と糖質との共存によっても進行する。血中の糖濃度が高い状態が続くと、タンパク質との架橋反応が生じ、後期生成物であるAGEs(Advanced Glycation End Products:最終糖化産物)が生成される。AGEsが体内へ蓄積すると、老化や疾病のリスクが高まると考えられていることから、AGEs生成を阻害する素材の探索が求められている。
本試験では、ニンニク皮水抽出物及びエタノール抽出物がAGEs形成に及ぼす影響について評価した。
ニンニク皮水抽出物は超純水を溶媒としてサンプル濃度2.5mg/mlになるよう調製した。終濃度は1mg/mlである。ニンニク皮エタノール抽出物はDMSOを溶媒としてサンプル濃度2.5mg/mlになるよう調製した。終濃度は1mg/mlである。ポジティブコントロールとして、アミノグアニジンを2.2mg/mlとなるよう、超純水を溶媒として調製した(終濃度:880μg/ml)。
蛍光測定用黒色プレートに、グリセルアルデヒド溶液(45mg/mlinPBS)10μl、BSA溶液(20mg/ml in PBS)50μl、サンプル溶液40μlを添加した。混合した直後(反応0時間)の蛍光強度(Ex:370nm、Em:440nm)をFlex Station 3により測定した(AGEsの構造は蛍光を発するものであり、蛍光強度によりAGEsの産生量を測定することが可能である)。また、サンプル自体の有する蛍光強度を測定するため、グリセルアルデヒド、BSA溶液をPBSに置き換えたプレートを陰性対照として用意し、この値を差し引くことで、反応0時間目の蛍光強度とした。このプレートを37℃で20時間反応させた。反応20時間後の溶液の蛍光強度をFlex Station 3(水抽出物)およびinfinite F200 PRO(エタノール抽出物)により測定した。陰性対照のプレートも同様に反応させて蛍光強度を測定し、陰性対照の値を差し引くことで、反応20時間目の蛍光強度とした。反応前後の蛍光強度を差し引いてAGEs生成量とし、コントロール(溶媒)のAGEs生成量を100%として、ニンニク皮のAGEs生成量の相対値をAGEs生成率(%)として表した。
リパーゼは脂肪を分解する酵素で、膵臓から十二指腸へ分泌されるリパーゼは脂肪の消化・吸収に大きく関与している。現在、肥満が原因となり、糖尿病に代表される代謝性疾患や血管疾患などの疾患を抱える人口が急増しており、肥満の解決は急務を有する事項の一つである。肥満の要因は環境、遺伝など数多くの要因があるが、肥満の原因自体は消費エネルギーよりも摂取エネルギーが過剰であることに尽きる。膵リパーゼは脂肪の吸収に関与しているため、リパーゼ活性が阻害されるような物質は、摂取エネルギーを低下させ、抗肥満効果を発揮する有効なアプローチの一つとして考えられている。
ニンニク皮水抽出物及びエタノール抽出物の抽出物溶液25μLを0.1mM 4−methylumbelliferyl oleate(4−MUO)(/13mM Tris−HCl、150mM NaCl、1.3mM CaCl2緩衝液)溶液50μLと混合し、150μg/mL膵臓由来リパーゼ25μLを上記と同様の緩衝液に溶かし、反応の開始とした。25℃で30分間インキュベートした。0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.2)100μLを加えて反応を停止させた後、蛍光強度測定した(Ex:360、Em:465nm)。4−MUOにリパーゼが作用して遊離した4−methylumbelliferoneの蛍光強度を測定することで、リパーゼ活性に与える影響を評価した。
以下に示す配合により、カプセル剤を製造した。
にんにく皮エキス末 200mg
菜種硬化油 10mg
ステアリン酸Ca 5mg
以下に示す配合により、錠剤を製造した。
にんにく皮エキス末 200mg
結晶セルロース 88mg
ショ糖脂肪酸エステル 9mg
微粒二酸化ケイ素 3mg
以下に示す配合により、カプセル剤を製造した。
にんにく皮エキス末 200mg
べに花油 200mg
グリセリン脂肪酸エステル 25mg
以下に示す配合により、顆粒剤を製造した。
にんにく皮エキス末 60g
難消化性デキストリン 25g
コーンスターチ 15g
Claims (2)
- ニンニク皮の水溶性溶媒抽出物(N−trans−feruloyloctopamineの精製物を除く)を含有することを特徴とする脳機能改善用組成物。
- 抗認知症用であることを特徴とする請求項1記載の脳機能改善用組成物。
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