JP7464932B2 - 大麦若葉由来の膵リパーゼ阻害剤、脂質吸収抑制用剤、及びそれらを含む飲食品 - Google Patents

大麦若葉由来の膵リパーゼ阻害剤、脂質吸収抑制用剤、及びそれらを含む飲食品 Download PDF

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本発明は、膵リパーゼ阻害剤、脂質吸収抑制用剤、及びそれらを含む飲食品に関し、さらに詳しくは膵リパーゼ阻害活性を有する大麦若葉由来のタンパク質を有効成分として含む膵リパーゼ阻害剤、脂質吸収抑制用剤、及びそれらを含む飲食品に関する。本発明の膵リパーゼ阻害剤等は、低濃度で膵リパーゼ阻害活性を有しており、生体での脂質の吸収を効果的かつ安全に抑制することができる。また、本発明の膵リパーゼ阻害剤等の有効成分は、大麦若葉に由来するタンパク質であるので、副作用がなく、安全に日常的な摂取が可能である。
膵臓から分泌される膵リパーゼは、食事によって摂取された中性脂肪を、脂肪酸とグリセリンに分解する消化酵素である。これら膵リパーゼの分解物は、小腸から吸収された後、再合成され、リン脂質、コレステロール及びタンパク質とカイロミクロンを形成し、リンパ管に分泌され、胸管を通って大動脈中に移行する。再合成された脂肪類は、脂肪が過剰の場合には体内に蓄積されてしまう。そこで、膵リパーゼの活性を阻害することによって、脂肪の消化と腸管からの吸収を阻害又は抑制して血中脂質を低下させることにより、肥満の予防と改善が期待される。
このため、膵リパーゼの阻害活性を有する成分が着目され研究されている。膵リパーゼ阻害活性を有する医療用医薬品としてオルリスタット(Orlistat)(国内未承認)、セチリスタット(cetilistat)等が知られている。これら医薬品は、消化管内のリパーゼを阻害し、脂質の分解を阻害して腸管からの脂質の吸収を抑制することにより、抗肥満効果を奏するとされている。しかしながら、これら医薬品には、脂肪便や下痢等の副作用が懸念されている(非特許文献1及び2)。それ故、副作用がなく、安全に日常的な摂取が可能で、確実なリパーゼ阻害効果を奏する新たな素材が求められている。
一方、多くの植物由来の成分は、安全性が高く、長期間服用しても副作用がない機能性飲食品として長年利用されている。それら有効成分のリパーゼ阻害作用や肥満抑制効果についても検討が行われている(例えば特許文献1~4、非特許文献3及び4参照)。
特開2008-56580号公報 特開2010-209051号公報 特開2006-182722号公報 特開2007-161645号公報
肥満研究 Vol.7 No.3 112~114 2001 日本内科学会雑誌 104:735~741,2015 Journal of Lipid Research 26, 1214-1221(1984) YAKUGAKU ZASSI 126(1),43-49(2006)
肥満の予防や改善には、前記のとおり、膵リパーゼ阻害活性や脂質吸収抑制活性を有する素材を、日常的かつ継続的に摂取することが必要であると考えられる。したがって、本発明の課題は、確実な膵リパーゼ阻害作用や脂質吸収抑制作用を有し、連用しても副作用のおそれの殆どない、効果的で安全性の高い膵リパーゼ阻害剤、脂質吸収抑制用剤、及びそれらを含む飲食品を提供することにある。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、長期間服用しても安全である大麦若葉に含まれるある種のタンパク質が膵リパーゼの効果的な阻害活性(膵リパーゼ阻害作用)を有することを見いだした。本発明はかかる知見に基づいて成し遂げられたものである。すなわち、本発明は次のとおりである。なお、有効成分(a)~(f)におけるアミノ酸配列又は塩基配列は後述する。
〔1〕大麦若葉由来のタンパク質を有効成分として含有する大麦若葉処理物を含むことを特徴とする膵リパーゼ阻害剤。
〔2〕大麦若葉処理物が、大麦若葉の乾燥粉末、搾汁液又は該搾汁液を乾燥させた搾汁末であることを特徴とする上記〔1〕記載の膵リパーゼ阻害剤。
〔3〕タンパク質が、以下の(a)~(f)よりなる群から選ばれる何れかのタンパク質であることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕記載の膵リパーゼ阻害剤。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ膵リパーゼ阻害活性を有するタンパク質
(c)配列番号3に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるタンパク質
(d)配列番号3に記載の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質であって、かつ該タンパク質が膵リパーゼ阻害活性を有するタンパク質
(e)配列番号4に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるタンパク質
(f)配列番号4に記載の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質であって、かつ該タンパク質が膵リパーゼ阻害活性を有するタンパク質
〔4〕以下の(a)~(f)よりなる群から選ばれる何れかのタンパク質を有効成分として含むことを特徴とする膵リパーゼ阻害剤。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ膵リパーゼ阻害活性を有するタンパク質
(c)配列番号3に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるタンパク質
(d)配列番号3に記載の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質であって、かつ該タンパク質が膵リパーゼ阻害活性を有するタンパク質
(e)配列番号4に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるタンパク質
(f)配列番号4に記載の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質であって、かつ該タンパク質が膵リパーゼ阻害活性を有するタンパク質
〔5〕上記〔1〕~〔4〕のいずれか記載の膵リパーゼ阻害剤を有効成分として含むことを特徴とする脂質吸収抑制用剤。
〔6〕上記〔1〕~〔4〕のいずれか記載の膵リパーゼ阻害剤、又は上記〔5〕記載の脂質吸収抑制用剤を有効成分として含んでなる膵リパーゼ阻害用又は脂質吸収抑制用の飲食品。
また本発明の実施の他の形態として、脂質吸収の増加(抑制の低下)や膵リパーゼに起因する疾患若しくは状態(症状)の予防又は改善(治療)を必要とする対象者に、大麦若葉由来のタンパク質を含有する大麦若葉処理物(以下「本大麦若葉処理物」ということがある。)又は(a)~(f)よりなる群から選ばれる何れかのタンパク質(以下「本膵リパーゼ阻害タンパク質」ということがある。)を投与する工程を備えた、脂質吸収の増加や膵リパーゼに起因する疾患若しくは状態(症状)を予防又は改善(治療)する方法や、脂質吸収の増加や膵リパーゼに起因する疾患若しくは状態(症状)の予防又は改善(治療)剤として使用するための本大麦若葉処理物又は本膵リパーゼ阻害タンパク質や、脂質吸収の増加や膵リパーゼに起因する疾患若しくは状態(症状)の予防又は改善(治療)における使用のための本大麦若葉処理物又は本膵リパーゼ阻害タンパク質や、脂質吸収の増加や膵リパーゼに起因する疾患若しくは状態(症状)の予防又は改善(治療)剤を製造するための本大麦若葉処理物又は本膵リパーゼ阻害タンパク質の使用を挙げることができる。
また本発明の他の実施形態として、本膵リパーゼ阻害タンパク質をコードする塩基配列(DNA断片)が導入された発現べクター、該発現べクターが導入された形質転換体、該形質転換体を用いる本膵リパーゼ阻害タンパク質、該発現べクターが導入された植物体、本膵リパーゼ阻害タンパク質の含有量が高められた植物体が挙げられる。
本発明の膵リパーゼ阻害剤は、膵リパーゼ阻害作用に基づく脂質吸収の抑制作用を有し、肥満の予防や改善を、副作用を伴うことなく効率的に実施できることから、脂質吸収抑制用剤となる。本発明の膵リパーゼ阻害剤や脂質吸収抑制用剤の有効成分であるタンパク質は、大麦若葉に由来するものであるので、安全性には全く問題がなく飲食品又は医薬品の形態に自由に調製することができるため、健常者はもとより、老齢者、病弱者、病後の人等も長期間に亘って摂取することができる。
大麦若葉エキス末から分離・精製したタンパク質のSDS-PAGE分析結果を示す図である。図中、「Fr.11-14」が精製物を示す。 精製したタンパク質の膵リパーゼ阻害活性を示す図である。 組換えタンパク質(図中の「Recombinant」)のSDS-PAGE分析結果を示す図である。図中、「←」が精製物(組換えタンパク質)を示す。 組換えタンパク質の膵リパーゼ阻害活性を示す図である。 2群(HFD群[図中の「HFD」]及び6%HV群[図中の「6%HV」])のマウスの糞中のトリグリセリド(TG)量を測定した結果を示す図である。 2群(HFD群[図中の「HFD」]及び6%HV群[図中の「6%HV」])のマウスの糞中の遊離脂肪酸量(NEFA)量を測定した結果を示す図である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明は、以下の記載内容に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
本発明の膵リパーゼ阻害剤や脂質吸収抑制用剤としては、本大麦若葉処理物を含むものや、本膵リパーゼ阻害タンパク質を有効成分として含むものであれば特に制限されず、ここで、本大麦若葉処理物は、本膵リパーゼ阻害タンパク質が膵リパーゼ阻害活性を有する状態で含有するものであり、本大麦若葉処理物の調製には、例えば分けつ開始期から出穂開始前期(草丈が20~40cm程度)に収穫された大麦の若葉(茎葉)の処理物を好適に用いることができる。
ここで、大麦としては、例えば、二条大麦、四条大麦、六条大麦、裸大麦等のHordeum vulgare種に属するものであれば、如何なる種でもよく、どの品種も用いることができるが、二条大麦、六条大麦、裸大麦が好ましく、六条大麦が特に好ましい。
さらに具体的には、二条大麦(ビール大麦)の品種としては、例えば、あおみのり、あぐりもち、アサカゴールド、きぬゆたか、おうみゆたか、キリニジョウ、はるな二条、あまぎ二条、ふじ二条、イシュクシラズ、ミサトゴールデン、カワホナミ、カワミズキ、きぬか二条、こまき二条、さきたま二条、とね二条、サチホゴールデン、さつきばれ、しゅんれい、ミハルゴールド、スカイゴールデン、タカチホゴールデン、つゆしらず、とね二条、なす二条、ニシノゴールド、ニシノチカラ、ニシノホシ、はるか二条、にらさき二条、にら二条、はるしずく、さつき二条、ほうしゅん、ミカモゴールデン、ミホゴールデン、みょうぎ二条、ヤシオゴールデン、ヤチホゴールデン、北育41号、彩の星、りょうふう等が挙げられる。
六条大麦の品種としては、例えば、アサマムギ、カシマゴール、ミノリムギ、カトリムギ、ムサシノムギ、ドリルムギ、サナダムギ、はがねむぎ、さやかぜ、すずかぜ、シュンライ、シルキースノウ、シンジュボシ、セツゲンモチ、ナトリオオムギ、ハマユタカ、ハヤミオオムギ、ファイバースノウ、倍取、ミユキオオムギ等が挙げられる。
裸大麦の品種としては、例えば、イチバンボシ、センボンハダカ、サヌキハダカ、キカイハダカ、サンシュウ、ナンプウハダカ、シラタマハダカ、ユウナギハダカ、ダイシモチ、トヨノカゼ、ハヤテハダカ、赤神力、一早生、ビワイロハダカ、ベニハダカ、ハシリハダカ、マンネンボシ(旧マンテンボシ)等が挙げられる。
これら品種は各農業試験場、農業研究センター、民間企業等により育成され、実や若葉等が食用(飲料を含む。)に利用されているものである。これら品種から、その栽培地域に適した品種を選択して育成し、若葉(茎葉)を収穫するのが好ましい。
また、上記本大麦若葉処理物としては、例えば、大麦若葉の搾汁処理物、粉砕処理物、細断処理物、乾燥処理物、焙煎処理物、抽出処理物、粉末化処理物、凍結処理物の他、搾汁・乾燥粉末化処理物、乾燥・粉砕処理物、粉砕・濾過処理物(ピューレ、ジュース)、細断・熱湯抽出処理物等の処理物、これらの組み合わせ処理物等を挙げることができるが、中でも、大麦若葉の搾汁液、該搾汁液を乾燥した搾汁末又は乾燥粉末を好適に例示することができ、これら搾汁液や搾汁末や乾燥粉末は、通常青汁、青汁末、青汁粉末、青汁用粉末等の主要原料又は製品として上市されることがある。
上記大麦若葉の搾汁液は、例えば、大麦若葉を収穫した(刈り取った)後に、圧搾して搾り出すことにより調製することができる。また、大麦若葉の搾汁末は、例えば、上記の搾汁液をそのままで、あるいは必要に応じて適当な賦形剤等と混合し、噴霧乾燥等により乾燥することにより調製することができる。そしてまた、大麦若葉の乾燥粉末は、例えば、大麦の若葉を収穫した(刈り取った)後に、細断し、乾燥処理及び粉砕処理、必要に応じてブランチング処理等を組み合わせて調製することができる。
本発明の膵リパーゼ阻害剤及び脂質吸収抑制用剤は、大麦若葉由来のタンパク質、具体的には以下の(a)~(f)よりなる群から選ばれる何れかのタンパク質(本膵リパーゼ阻害タンパク質)を有効成分として含むことを特徴とする。また、本発明の飲食品は、上記の膵リパーゼ阻害剤又は脂質吸収抑制用剤を有効成分として含むことを特徴とする。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列(一文字表記)からなるタンパク質(以下「タンパク質(a)」ということがある。)
Figure 0007464932000001
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ膵リパーゼ阻害活性を有するタンパク質(以下「タンパク質(b)」ということがある。)
タンパク質(b)は、前記タンパク質(a)のアミノ酸配列(配列番号2)において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ膵リパーゼ阻害活性を有するタンパク質である。
タンパク質(b)のアミノ酸配列において、「1若しくは数個」とは、例えば、1~43個、1~33個、1~22個、1~11個、1~9個、1~7個、1~5個、1~3個、1又は2個である。本発明において、個数の数値範囲は、例えば、その範囲に属する正の整数を全て開示するものである。つまり、例えば、「1~5個」との記載は、「1、2、3、4、5個」の全ての開示を意味する(以下、同様)。
また、上記タンパク質(b)としては、配列番号2のアミノ酸配列に対して、例えば90%以上、好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、膵リパーゼ阻害活性を有するタンパク質が挙げられる。
(c)配列番号3に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるタンパク質(以下「タンパク質(c)」ということがある。)
Figure 0007464932000002
(d)配列番号3に記載の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質であって、かつ該タンパク質が膵リパーゼ阻害活性を有するタンパク質(以下「タンパク質(d)」ということがある。)
タンパク質(d)は、タンパク質(c)をコードする塩基配列(配列番号3)又はその部分配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質であって、かつ該タンパク質が膵リパーゼ阻害活性を有するタンパク質である。
上記タンパク質(d)において、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件、高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件である。「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である。ストリンジェンシーの程度は、当業者であれば、例えば、温度、塩濃度、プローブの濃度及び長さ、イオン強度、時間等の条件を適宜選択することで、設定可能である。「ストリンジェントな条件」は、例えば、ザンブルーク(Sambrook)ら編「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd Ed.)」〔(Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)〕等に記載の条件を採用すること
もできる。
また、「ハイブリダイズするDNA」は、例えば、配列番号3からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAに対して、完全又は部分的に相補的なDNAである。これら相補的なDNAには、配列番号3からなるDNAの部分配列が含まれる。前記ハイブリダイズは、例えば、各種ハイブリダイゼーションアッセイにより検出できる。前記ハイブリダイゼーションアッセイは、特に制限されず、例えば、上記したザンブルーク(Sambrook)ら編「モレキュラー・クローニング: ア・ラボラトリーマニュアル第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd Ed.)」〔(Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)〕等に記載されている方法を採用することもできる。
また、上記タンパク質(d)において、配列番号3からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質としては、配列番号3の塩基配列に対して、例えば90%以上、好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有するDNAによりコードされるタンパク質からなり、かつ、膵リパーゼ阻害活性を有するタンパク質が挙げられる。
(e)配列番号4に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるタンパク質(以下「タンパク質(e)」ということがある。)
Figure 0007464932000003
(f)配列番号4に記載の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質であって、かつ該タンパク質が膵リパーゼ阻害活性を有するタンパク質(以下「タンパク質(f)」ということがある。)
タンパク質(f)は、タンパク質(e)をコードする塩基配列(配列番号4)又はその部分配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質であって、かつ該タンパク質が膵リパーゼ阻害活性を有するタンパク質である。
上記タンパク質(f)において、「ストリンジェントな条件」や「ハイブリダイズするDNA」、配列番号4の塩基配列との「同一性」は、タンパク質(d)におけるものと同様である。また「部分配列」の長さは特に限定されないが、全長の1/2程度以上の長さが好ましい。
本膵リパーゼ阻害タンパク質の分子量は、特に好ましくは34~37kDa程度であるが、上記タンパク質(a)~(f)の何れかの配列を含むものであればよく、その分子量は特に限定されず、例えば分子量が42kDaのタンパク質も本発明の範囲に含まれる(後述する実施例2、4参照)。
本膵リパーゼ阻害タンパク質は極めて低濃度から膵リパーゼ阻害活性をもつ。例えばブタ膵リパーゼに対しては約0.015μg/mlという非常に低い濃度で有意な阻害活性を示す(後述する実施例3、6を参照)。
このように本膵リパーゼ阻害タンパク質は膵リパーゼの優れた阻害作用を有していることから、脂質吸収抑制用の剤や飲食品として、それが活性のある形で含まれるような製剤として利用することができる。
本膵リパーゼ阻害タンパク質は、大麦若葉の処理物、好ましくは搾汁液(末)より、それ自体既知の通常用いられる方法、例えば、硫酸沈殿、イオン交換カラムクロマトグラフィー、ゲル濾過カラムクロマトグラフィーを用いて精製することができる。
また、本膵リパーゼ阻害タンパク質は、タンパク質(a)~(f)よりなる群から選ばれる何れかのタンパク質をコードする塩基配列(例えば配列番号3又は4)を有する遺伝子のDNA断片を、大腸菌や酵母あるいは昆虫やある種の動物細胞に、それぞれの宿主で増幅可能な発現ベクターを用いて導入、発現させることにより、当該タンパクをより簡便かつ大量に製造することができ、以下詳細に説明する。
ここで、上記した本発明のタンパク質をコードする塩基配列(DNA断片)は、大麦若葉の搾汁末(エキス末)から分離・精製したタンパク質(分子量;約34kDa)のアミノ酸配列を解析することにより得られたものである(後述する実施例4参照)。
大麦若葉に含まれるタンパク質が膵リパーゼ阻害活性を有することは、本発明者らの知る限り、本発明者らにより初めて見いだされた知見である。特許文献2(特開2010-209051)には、大麦若葉抽出物が膵リパーゼ阻害活性を有することが記載されている。しかしながら、この抽出物は、大麦若葉の「粉末100gに1000mLの70%(v/v)アセトン水溶液を加えて1週間室温にて静置して抽出」し、蘆液を集めて乾燥させることにより得られたものである。タンパク質の物性や抽出方法等から、この抽出物はタンパク質とは異なる物質と考えられる。
プラスミド等の発現ベクターに遺伝子のDNA断片を組み込む方法としては、例えば、Sambrook,J.ら,Molecular Cloning, A Laboratory Manual(2ndedition),Cold Spring Harbor Laboratory,1.53(1989)に記載の方法等が挙げられる。簡便には、市販のライゲーションキット(例えば、宝酒造株式会社製等)を用いることもできる。このようにして得られる組換えベクター(例えば、組換えプラスミド)は、宿主細胞(例えば、E-coli TB1,LE392又はXL-1Blue等)に導入される。
発現ベクターに組み込む遺伝子(DAN断片)遺伝子の種類は特に限定されず、天然由来のDNA、組換えDNA、化学合成DNAの何れでもよく、またゲノムDNAクローン、cDNAクローンの何れでもよい。この遺伝子(DNA断片)は、GenScript社等に委託し合成することができる。
プラスミドを宿主細胞に導入する方法としては、Sambrook,J.ら,Molecular Cloning, A Laboratory Manual(2ndedition),Cold Spring Harbor Laboratory,1.74(1989)に記載のリン酸カルシウム法又は塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、エレクトロポレーション法、エレクトロインジェクション法、PEG等の化学的な処理による方法、遺伝子銃等を用いる方法等が挙げられる。
発現べクターは、簡便には当業界において入手可能な組換え用べクター(例えば、プラスミドDNA等)に所望の遺伝子を常法により連結することによって調製することができる。用いられるべクターの具体例としては、大腸菌由来のプラスミドとして、例えば、pBluescript、pUC18、pUC19、pBR322、pTrc99A等が例示されるがこれらに限定されない。
発現べクターの種類は、原核細胞及び/又は真核細胞の各種の宿主細胞中で所望の遺伝子を発現し、所望のタンパク質を生産する機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、大腸菌用発現ベクターとして、pQE-30、pQE-60、pMAL-C2、pMAL-p2、pSE420等が好ましく、酵母用発現べクターとしてpYES2(サッカロマイセス属)、pPIC3.5K、pPIC9K、pAO815(以上ピキア属)、昆虫用発現ベクターとしてpBacPAK8/9、pBK283、pVL1392、pBlueBac4.5等が好ましい。
形質転換体は、所望の発現べクターを宿主細胞に導入することにより調製することができる。用いられる宿主細胞としては、本発明の発現べクターに適合し、形質転換され得るものであれば特に制限はなく、本発明の技術分野において通常使用される天然の細胞、又は人工的に樹立された組換え細胞等種々の細胞を用いることが可能である。例えば、細菌(エシェリキア属菌、バチルス属菌)、酵母(サッカロマイセス属、ピキア属等)、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等が挙げられる。
宿主細胞は、大腸菌、酵母、植物細胞又は昆虫細胞が好ましく、具体的には、大腸菌(M15、JM109、BL21等)、酵母(INVSc1(サッカロマイセス属)、GS115、KM71(以上ピキア属)等)、昆虫細胞(BmN4、カイコ幼虫等)等が例示される。また、動物細胞としてはマウス由来、アフリカツメガエル由来、ラット由来、ハムスタ-由来、サル由来又はヒト由来の細胞若しくはそれらの細胞から樹立した培養細胞株等が例示される。さらに、植物細胞に関しては、細胞培養が可能であれば特に限定されないが、例えば、タバコ、アラビドプシス、イネ、トウモロコシ、コムギ由来の細胞等が例示される。
宿主細胞として細菌、特に大腸菌を用いる場合、一般に発現べクターは少なくとも、プロモーター/オペレーター領域、開始コドン、所望の膵リパーゼ阻害タンパク質をコードする遺伝子、終止コドン、ターミネーター及び複製可能単位から構成される。
宿主細胞として酵母、植物細胞、動物細胞又は昆虫細胞を用いる場合には、一般に発現べクターは少なくとも、プロモーター、開始コドン、所望の膵リパーゼ阻害タンパク質をコードする遺伝子、終止コドン、ターミネーターを含むことが好ましい。またシグナルペブチドをコードするDNA、エンハンサー配列、所望の遺伝子の5'側及び3'側の非翻訳領域、選択マーカー領域又は複製可能単位等を適宜含んでいてもよい。
発現ベクターにおいて、好適な開始コドンとしては、メチオニンコドン(ATG)が例示される。また、終止コドンとしては、常用の終止コドン(例えば、TAG、TGA、TAA等)が例示される。
複製可能単位とは、宿主細胞中でその全DNA配列を複製することができる能力をもつDNAを意味し、天然のプラスミド、人工的に修飾されたプラスミド(天然のプラスミドから調製されたプラスミド)及び合成プラスミド等が含まれる。好適なプラスミドとしては、E.coliではブラスミドpQE30、pET又はpCAL若しくはそれらの人工的修飾物(pQE30、pET又はpCALを適当な制限酵素で処理して得られるDNAフラグメント)が、酵母ではプラスミドpYES2若しくはpPIC9Kが、また昆虫細胞ではプラスミドpBacPAK8/9等が挙げられる
エンハンサー配列、ターミネーター配列については、例えば、それぞれSV40に由来するもの等、当業者において通常使用されるものを用いることができる。
選択マーカーとしては、通常使用されるものを常法により用いることができる。例えばテトラサイクリン、アンピシリン、又はカナマイシン若しくはネオマイシン、ハイグロマイシン又はスペクチノマイシン等の抗生物質耐性遺伝子等が例示される。
発現べクターは、少なくとも、上述のプロモーター、開始コドン、所望の膵リパーゼ阻害タンパク質をコードする遺伝子、終止コドン、及びターミネーター領域を連続的かつ環状に適当な複製可能単位に連結することによって調製することができる。またこの際、所望により制限酵素での消化やT4DNAリガーゼを用いるライゲーション等の常法により適当なDNAフラグメント(例えば、リンカー、他の制限酵素部位等)を用いることができる。
発現べクターの宿主細胞への導入[形質転換(形質移入)]は従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、細菌(E.coli, Bacillus subtilis等)の場合は、例えばCohenらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69,2110(1972)]、プロトプラスト法[Mol.Gen.Genet.,168,111(1979)]やコンピテント法[J.Mol.Biol.,56,209(1971)]によって、Saccharomyces cerevisiaeの場合は、例えばHinnenらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1927(1978)]やリチウム法[J.Bacteriol.,153,163(1983)]によって、植物細胞の場合は、例えばリーフディスク法[Science,227,129(1985)]、エレクトロポレーション法[Nature,319,791(1986)]によって、動物細胞の場合は、例えばGrahamの方法[Virology,52,456(1973)]、昆虫細胞の場合は、例えばSummersらの方法[Mol.Cell.Biol.,3,2156-2165(1983)]によってそれぞれ形質転換することができる。
本膵リパーゼ阻害タンパク質は、上記の如く調製された発現ベクターを含む形質転換細胞を栄養培地で培養することによって発現(生産)することができる。栄養培地は、宿主細胞(形質転換体)の生育に必要な炭素源、無機窒素源若しくは有機窒素源を含んでいることが好ましい。炭素源としては、たとえばグルコース、デキストラン、可溶性デンプン、ショ糖、メタノール等が、例示される。無機窒素源若しくは有機窒素源としては、例えばアンモニウム塩類、硝酸塩類、アミノ酸、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液等が例示される。また、所望により他の栄養素(例えば無機塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウム)、ビタミン類、抗生物質(例えばテトラサイクリン、ネオマイシン、アンピシリン、カナマイシン等)等)を含んでいてもよい。
培養は、当業界において知られている方法により行われる。培養条件、例えば温度、培地のpH及び培養時間は、本発明の膵リパーゼ阻害タンパク質が大量に生産されるように適宜選択される。具体的には、例えば大腸菌での発現の場合、組換えタンパク質発現のための培養条件として、好ましくは4℃~40℃の温度で培養し、0.01mM~5.0mMのIPTGによる誘導を行う。
本膵リパーゼ阻害タンパク質は、上記培養により得られる培養物より以下のようにして取得することができる。
すなわち、本発明のタンパク質が宿主細胞内に蓄積する場合には、遠心分離やろ過等の操作により宿主細胞を集め、これを適当な緩衝液(例えば濃度が10M~100mM程度のトリス緩衝液、リン酸緩衝液、HEPES緩衝液、MES緩衝液等の緩衝液。pHは用いる緩衝液によって異なるが、pH5.0~9.0の範囲が望ましい)に懸濁した後、用いる宿主細胞に適した方法で細胞を破壊し、遠心分離により宿主細胞の内容物を得る。
本膵リパーゼ阻害タンパク質が宿主細胞外に分泌される場合には、遠心分離やろ過等の操作により宿主細胞と培地を分離し、培養ろ液を得る。宿主細胞破壊液、あるいは培養ろ液はそのまま、又は硫安沈殿と透析を行なった後に、本発明のタンパク質の精製、単離に供することができる。
精製・単離の方法としては、例えば、当該タンパクに6×ヒスチジンやGST、マルトース結合タンパクといったタグを付けている場合には、一般に用いられるそれぞれのタグに適したアフィニティークロマトグラフィーによる方法を挙げることができる。タグを付けずに本発明のタンパク質を生産した場合には、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過や疎水性クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー等を組み合わせる方法も挙げることができる。
本膵リパーゼ阻害タンパク質をコードする塩基配列(DNA断片)を植物に導入することで、本膵リパーゼ阻害タンパク質の含有量を高めた植物を作出することができる。この目的においては、植物形質転換用ベクターが有用である。植物用ベクターとしては、植物細胞中で当該遺伝子を発現し、当該タンパク質を生産する能力を有するものであれば特に限定されないが、例えば、pBI221、pBI121(以上、Clontech社製)、及びこれらから派生したベクターが挙げられる。また、特に単子葉植物の形質転換には、pIG121Hm、pTOK233(以上、Hieiら,Plant J.,6,271-282(1994))、pSB424(Komariら,PlantJ.,10,165-174(1996))等が例示される。
形質転換植物は、上述のベクターのβ-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子の部位に上記塩基配列(DNA断片)を入れ替えて植物形質転換用ベクターを構築し、これを植物に導入することで調整することができる。植物形質転換用ベクターは、少なくともプロモーター、翻訳開始コドン、所望の遺伝子(本願発明のDNA配列又はその一部)、翻訳終始コドン及びターミネーターを含んでいることが好ましい。また、シグナルペプチドをコードするDNA、エンハンサー配列、所望の遺伝子の5’側及び3’側の非翻訳領域、選抜マーカー領域等を適宜含んでいてもよい。
プロモーター、ターミネーターは植物細胞で機能するものであれば特に限定されないが、構成的発現をするプロモーターとしては、上記ベクターに予め組み込まれている35Sプロモーターの他に、アクチン、ユビキチン遺伝子のプロモーター等が例示される。
植物への遺伝子導入法としては、所望の植物に遺伝子を導入する方法であれば特に限定されない。具体的には、例えば、アグロバクテリウムを用いる方法(Horsch et al.,Science,227,129(1985)、Hiei et al.,Plant J.,6,p.271-282(1994))、エレクトロポレーション法(Fromm et al., Nature,319,791(1986))、PEG法(Paszkowski et al.,EMBO J.,3,2717(1984))、マイクロインジェクション法(Crossway et al.,Mol.Gen.Genet.,202,179(1986))、微小物衝突法(McCabe et al.,Bio/Technology,6,923(1988))等が挙げられる。
また、宿主となる植物種も本発明の植物形質転換用ベクターに適合し、形質転換されうるものであれば特に限定されず、本発明の技術分野において通常使用される植物、例えば単子葉植物では、イネ、トウモロコシ、コムギ等が挙げられ、双子葉植物ではタバコ、アラビドプシス、トマト、キュウリ、ニンジン、ダイズ、バレイショ、テンサイ、カブ、ハクサイ、ナタネ、ワタ、ペチュニア等が挙げられる。
上記のように遺伝子工学手法により得られた、あるいは大麦若葉搾汁液(末)より精製された、あるいは植物体中の含有量が高められた本膵リパーゼ阻害タンパク質は、膵リパーゼ阻害活性を有する。膵リパーゼ阻害活性は、基質としてトリオレインミセル溶液、酵素としてブタ膵臓リパーゼを用い、試料、基質、酵素を混合し、酵素反応により遊離した脂肪酸量を脂肪酸定量キットで定量し、その減少量によって阻害率を算出することにより測定することができる(後述する実施例3参照)。
本発明の膵リパーゼ阻害剤及び脂質吸収抑制用剤は、本膵リパーゼ阻害タンパク質を有効成分として含むものである。本膵リパーゼ阻害タンパク質は後述する実施例において具体的に示すとおり、膵リパーゼを確実に抑制(阻害)することができる。したがって、本膵リパーゼ阻害タンパク質を摂取することにより、脂肪の消化と腸管からの吸収を阻害又は抑制して、血中脂質の低下、かつ肥満の予防又は改善できる。
化学的に安定した中性脂肪の形をした脂肪が体内に入ると、中性脂肪は十二指腸で胆汁により乳化され、次に膵リパーゼの働きでモノグリセライドと脂肪酸、グリセロール等に分解され、水に溶けやすいグリセロールはそのまま小腸上皮細胞から吸収され、親水性の低いモノグリセライドと脂肪酸は腸内で胆汁酸の働きによりミセルを形成し、腸管から吸収される。したがって、本発明において、本膵リパーゼ阻害タンパク質は、前記のとおり膵リパーゼ阻害作用を有するので、脂質吸収抑制効果を有すると考えられる。
ここで、膵リパーゼ阻害作用とは、ヒトを含む哺乳動物の膵液に含まれる膵リパーゼの脂肪分解活性を阻害し得る作用を意味する。一般的に、リパーゼは、動植物から微生物に至るまで広く分布しており、生体内の組織や器官に局在して、油脂の分解反応における触媒としての役割を果たしている。しかしながら、各生物体を構成する組織や器官の生理機能は極めて多様であることから分かるように、それら組織や器官における脂質の分子構造や存在状態も多様である。このため、リパーゼという同じカテゴリーに属していても、基質に対する作用性や酵素的性質においては一様ではない。したがって、膵リパーゼも多くのリパーゼ群の中の特定の一態様ということができる。本発明においては、膵リパーゼに対して、本膵リパーゼ阻害タンパク質が効果的な阻害を示すことに基づいている。
また、脂質吸収抑制作用とは、食事等により摂取された脂肪の体内への吸収を抑制し得る作用のことをいい、これによって、肥満症の予防又は改善や、メタボリックシンドロームの予防又は改善が可能となる。
前記したように、膵リパーゼが阻害されると、摂取した脂肪の消化と腸管からの吸収が阻害又は抑制され、その結果、血中脂肪が低下する。すなわち、膵リパーゼ阻害が行われることによって、体内における脂質吸収が抑制され、体内の脂質低下作用が奏される。このような膵リパーゼ阻害と脂質吸収抑制の関係はよく知られており、例えば、教科書的な文献として、(i)「新しい臨床栄養学」(南江堂発行、第3版、1999年)、第73~77頁及び第95~101頁;(ii)「カラー図解 人体の正常構造と機能II 消化管」(日本医事新報社発行、2000年)、第58頁、及び;「食品に含まれる機能物質と肥満に関する研究」、日本栄養・食糧学会誌、第54巻第1号、第35~40頁、2001年)等が挙げられ、これらに上記関係が明確に示されている。したがって、本発明における大麦若葉由来のタンパク質、具体的には本膵リパーゼ阻害タンパク質が、膵リパーゼ阻害作用を有していることから、本発明における本膵リパーゼ阻害タンパク質は、肥満症の予防又は改善の他、メタボリックシンドロームの予防又は改善に有効である。
このように本膵リパーゼ阻害タンパク質は、膵リパーゼの阻害、及び膵リパーゼの阻害に基づく脂質吸収抑制により予防又は改善(治療)しうる疾患若しくは状態(症状)の予防若しくは改善(治療)に用いることができる。ここで、かかる予防又は改善しうる疾患若しくは状態(症状)としては、脂質吸収の増加や膵リパーゼに起因する疾患若しくは状態(症状)であれば特に制限されず、例えば、肥満症、インスリン抵抗性、食後高血糖、高血圧、高脂血症、脂肪肝、糖尿病、脳血管障害、虚血性心疾患、メタボリックシンドローム等が挙げられる。好ましくは、前記疾患若しくは状態は、肥満症、又は高脂血症である。
なお、本明細書において、疾患若しくは状態の「予防又は改善」とは、疾患若しくは状態の、調節、進行の遅延、緩和、発症予防、再発予防、抑制等を包含する意味で使用される。
本発明における本膵リパーゼ阻害タンパク質は、通常、易水溶性であり、飲食品及び医薬品に通常添加され得る成分との混和性に優れている。また、大麦若葉に由来する成分であるため安全性に優れている。したがって、このタンパク質を有効成分とする膵リパーゼ阻害剤、及び脂質吸収抑制用剤は、日常の食生活に適宜取り入れて無理なく安心して摂取することができる。
本発明の膵リパーゼ阻害剤は、膵リパーゼを阻害するために用いる剤であり、膵リパーゼ阻害の有効成分として大麦若葉由来のタンパク質、具体的には本膵リパーゼ阻害タンパク質を含有する大麦若葉処理物を含む剤であり、単独でも飲食品や医薬品(製剤)として使用することができる。また、飲食品や医薬品等の種々の組成物に、膵リパーゼ阻害の有効成分として含有させることができる。これにより、膵リパーゼ阻害用の飲食品組成物又は医薬品組成物を得ることができる。得られた膵リパーゼ阻害用の飲食品組成物又は医薬品組成物は、上述の膵リパーゼに起因する疾患若しくは状態(症状)、例えば、肥満症やメタボリックシンドロームの予防又は改善(治療)に有効に用いることができる。
本発明の脂質吸収抑制用剤は、膵リパーゼ阻害等に基づき、脂質吸収を抑制するために用いる剤であり、脂質吸収抑制の有効成分として本発明における大麦若葉由来のタンパク質、具体的には本膵リパーゼ阻害タンパク質を含有する大麦若葉処理物を含む剤であり、単独でも飲食品や医薬品(製剤)として使用することができる。また、飲食品や医薬品等の種々の組成物に、脂質吸収抑制の有効成分として含有させることができる。これにより、脂質吸収抑制用の飲食品組成物又は医薬品組成物を得ることができる。得られた脂質吸収抑制用の飲食品組成物又は医薬品組成物は、上述の脂質吸収の増加や膵リパーゼに起因する疾患若しくは状態(症状)、例えば、肥満症やメタボリックシンドロームの予防又は改善(治療)に有効に用いることができる。
また、本発明の脂質吸収抑制用剤は、上記の本発明の膵リパーゼ阻害剤を有効成分として含むことができる。
本発明の脂質吸収抑制用剤としては、本膵リパーゼ阻害タンパク質以外の、脂質吸収抑制の有効成分を含むものであってもよいが、かかるタンパク質単独でも優れた膵リパーゼ阻害や脂質吸収抑制効果を発揮するため、かかるタンパク質以外の、脂質吸収抑制の有効成分を含まないものが好ましい。
本発明において、膵リパーゼ阻害剤又は脂質吸収抑制用剤は、溶液、懸濁液、乳濁液、粉末、固体成形物等、経口摂取可能な形態であればよく特に限定されない。具体的には、例えば、粉末剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤の他、飲料、食品等の通常の食品や医薬品で用いられる形態を挙げることができる。また、製剤の形態としては、摂取量を調節しやすい粉末剤やカプセル剤、錠剤、顆粒剤、ドリンク等を好適に例示することができる。
本発明において、本大麦若葉処理物又は本膵リパーゼ阻害タンパク質は、そのまま用いてもよく、従来から知られている通常の方法で所望の製剤を製造して本発明の膵リパーゼ阻害剤や脂質吸収抑制用剤として利用することができる。例えば、製剤の製造上許可される諸種の添加剤と混合し、組成物として成型することができる。添加剤としては、本発明の効果を損なわない範囲において添加されるものであればよく、例えば、生薬、ビタミン、ミネラル等の他に、賦形剤、界面活性剤、被膜剤、油脂類、ワックス類、安定剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、滑沢剤、甘味料、着色料、香料、緩衝剤、酸化防止剤、pH調整剤、酸味料等が挙げられる。
上記生薬としては、例えば、高麗人参、アメリカ人参、田七人参、霊芝、プロポリス、アガリクス、ブルーベリー、イチョウ葉及びその抽出物等を挙げることができる。上記ビタミンとしては、例えば、ビタミンD、K等の油溶性ビタミン、ビタミンB1、B2、B6、B12、C、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン等の水溶性ビタミンを挙げることができる。
上記賦形剤としては、例えば、乳糖、デンプン、セルロース、マルチトール、デキストリン等を挙げることができる。上記界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等を挙げることができる。上記被膜剤としては、例えば、ゼラチン、プルラン、シェラック、ツェイン等を挙げることができる。上記油脂類としては、例えば、小麦胚芽油、米胚芽油、サフラワー油等を挙げることができる。上記ワックス類としては、例えば、ミツロウ、米糠ロウ、カルナウバロウ等を挙げることができる。上記甘味料としては、ショ糖、ブドウ糖、果糖、ステビア、サッカリン、スクラロース等を挙げることができる。
また、本発明によれば、本膵リパーゼ阻害タンパク質を有効成分とする膵リパーゼ阻害剤又は脂質吸収抑制用剤を含んでなる飲食品又は医薬品が提供される。ここで「含んでなる」とは、所望する製品形態に応じた生理学的に許容されうる担体を含んでいてもよく、また併用可能な他の補助成分を含有する場合も意味する。
本発明において、飲食品とは、医薬品以外のものであって、前記のとおり経口摂取可能な形態であればよく特に限定されない。具体的には、例えば、即席麺、レトルト食品、缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・みそ汁類、フリーズドライ食品等の即席食品類;清涼飲料、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、アルコール飲料等の飲料類;パン、パスタ、麺、ケーキミックス、唐揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品;キャラメル、チューイングガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、デザート菓子等の菓子類;ソース、トマト加工調味料、風味調味料、調理ミックス、たれ類、ドレッシング類、つゆ類、カレーやシチューの素類等の調味料;加工油脂、バター、マーガリン、マヨネーズ等の油脂類;乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、アイスクリーム類、クリーム類等の乳製品;卵加工品、魚肉ハムやソーセージ、水産練り製品等の水産加工品;畜肉ハムやソーセージ等の畜産加工品;農産缶詰、ジャム・マーマレード類、漬け物、煮豆、シリアル等の農産加工品;冷凍食品等が挙げられる。
本発明の飲食品は、膵リパーゼ阻害用又は脂質吸収抑制用という用途が特定された飲食品である。飲食品には、健康食品(例えば、機能性食品、栄養補助食品、健康補助食品、栄養強化食品、栄養調整食品、サプリメント等)、保健機能食品(例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等)、特別用途食品(例えば、病者用食品、乳幼児用調整粉乳、妊産婦又は授乳婦用粉乳等)等の他、脂質吸収の増加や膵リパーゼに起因する疾患又は状態(症状)のリスク低減、予防又は改善の表示を付した飲食品のような分類のものも包含される。
本発明の別の態様によれば、前記膵リパーゼ阻害剤又は脂質吸収抑制用剤を含んでなる飲食品であって、膵リパーゼ阻害に基づく脂質吸収の抑制により予防又は改善しうる疾患若しくは状態の予防、又は改善する機能が表示された飲食品が提供される。
本発明において、医薬品とは、製剤化のために許容されうる添加剤を併用して、常法に従い、経口製剤又は非経口製剤として調製したものである。経口製剤の場合には、前記のとおり、経口摂取可能な形態であれば特に限定されない。また、非経口製剤の場合には、注射剤や座剤の形態をとることができる。簡易性の点からは、経口製剤であることが好ましい。製剤化のために許容されうる添加剤としては、前記と同様のものが挙げられる。
本発明において、膵リパーゼ阻害剤又は脂質吸収抑制用剤中の有効成分の含有量は、製剤の種類、形態や、予防又は改善の目的等により一律に規定は難しいが、必要な1日あたりの有効成分の摂取量を摂取できるように、1日あたりの摂取量を考慮し、製剤中の含有量を適宜設定すればよい。例えば、青汁等の植物由来の健康食品として摂取する場合、本発明のタンパク質の何れかを含むタンパク質量として、通常4000mg~40mg、好ましくは1000mg~100mg程度を挙げることができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
[実施例1]大麦若葉エキス末の製造
特開2009-148213号公報に記載の方法に準じて次のとおり調製した。刈り取った大麦の若葉(茎葉)10kgを圧搾し、得られた搾汁液8kgを乾燥し、大麦若葉エキス末0.5kgを得た。
[実施例2]大麦若葉エキス末からの膵リパーゼ阻害活性を有するタンパク質の抽出・精製
大麦若葉エキス末4.5gをイオン交換水45mLに懸濁し、24時間室温で振盪した。懸濁液を10,000×g、室温で10分間遠心分離して得られた上清を冷凍保存した。凍結した上清を解凍し、再度10,000×g、室温で10分間遠心分離して得られた上清に飽和硫酸アンモニウム水溶液を滴下することで20%硫酸アンモニウムに調整後、4℃で10時間静置した。溶液を10,000×g、室温で10分間遠心分離して、20%硫酸アンモニウム沈殿画分と上清を得た。上清には再度飽和硫酸アンモニウム水溶液を加えて同様にして30%硫酸アンモニウム沈殿画分、40%硫酸アンモニウム沈殿画分、50%硫酸アンモニウム沈殿画分を得た。
次に40%硫酸アンモニウム沈殿画分をトリス塩酸緩衝液(13mM Tris-HCl,pH8.0)に溶解しHiTrapDesaltingカラム(GEヘルスケア・ライフサイエンス社製)により脱塩して得られた溶液(8mL)をHiTrap Q XLカラム(GEヘルスケア・ライフサイエンス社製)に吸着させ、トリス塩酸緩衝液で洗浄後、塩化ナトリウムを溶解した緩衝液によるグラジエント条件[0-0.5M NaCl(0-10分)、0.5-1.0M(10-15分)、1.0M(15-20分)]により溶出し膵リパーゼ阻害活性を示す画分(1.0M NaCl溶出画分)を回収した。回収した画分はVivaspin Turbo 15, 10,000MWCO(ザルトリウス・ジャパン社製)により脱塩とともに濃縮して精製物500μL(タンパク質濃度85μg/mL、Bradford法、標準品:BSA)を得た。
精製物はSDS-PAGE分析より約34kDaほどの位置に一本のバンドを確認した。その結果を図1に示す。図1中、「Fr.11-14」が精製物である。泳動はミニプロティアンTGX 10%ゲル(バイオラッド社製)、200V、30分、染色はQC Colloidal Coomassie Stain(バイオラッド社製)で行った。
[実施例3]精製したタンパク質の膵リパーゼ阻害活性
(1)測定法
トリオレインミセル溶液300μL(トリオレイン、レシチン、タウロコール酸を緩衝液に懸濁して超音波処理によりミセル化した溶液)と被験物質溶液100μL(50%ジメチルスルホキシド(DMSO)水溶液)を1.5mLマイクロチューブ内で混合し、37℃で5分間のプレインキュベートを行った。その後ブタ膵臓リパーゼ酵素溶液100μLを加え、37℃で10分間反応させた後、1M塩酸50μLを加えて反応を停止させた。
ここにヘキサン600μLを加え、1500×gで5分間遠心分離し、つづいて上下振盪を1分間、その後1分間静置する作業を3回繰り返した。混合液を1500×gで5分間遠心分離し、上層(ヘキサン層)300μLを取り出し、遠心エバポレーターを用いてヘキサンを除去し、残った乾固物をDMSO100μLに溶解した。この溶液をラボアッセイNEFA(富士フィルム和光純薬株式会社製)を用いて発色させ、サンプル(sample)の550nmの吸光度を測定した。リパーゼ阻害率(Inhibitory activity)は以下の式を用いて算出した。
Figure 0007464932000004
なお、ポジティブコントロールにはセチリスタット(10μM)を、コントロール(control)には50%DMSO水溶液を用いた。各被験物質のブランク(blank)には、ブタ膵臓リパーゼ酵素溶液の代わりに緩衝液を加えたものを使用した。
(2)結果
結果を図2に示す。精製タンパク質0.015625μg/mlの低濃度より、コントロールと比較して有意な阻害活性が確認された。図2中、PC(陽性対照)は10μMセチリスタットである。有意差の検定結果(t-test)は、mean±SD *p<0.05である。
[実施例4]膵リパーゼ阻害活性を有するタンパク質の配列解析
精製物の約34kDaバンドのnano-LC MS/MS解析を株式会社日本プロテオミクスにて実施した。その概要を次に示す。
(1)SDS-PAGEバンドの切り出し
(2)脱色、還元処理
(3)ゲル内タンパク質のトリプシン消化
(4)ペプチド断片の抽出、脱塩
(5)nano-LC MS/MS解析
(6)Mascot searchによりタンパク質の同定
その結果、精製したタンパク質は、Fructose-bisphosphate aldolase(Hordeum vulgare、Uniprot F2ELD1)(配列番号1)であると同定された。
Figure 0007464932000005
Figure 0007464932000006
同定されたタンパク質は、分子量が42kDaとSDS-PAGE分析結果(図1)と比較して差があるため、トランスクリプトバリアントであるUniProtKB-A0A287NGA7(配列番号2)ではないかと推定した。マッチしたペプチドは全てカバーされていた。このバリアントの分子量は37kDaであり、精製したタンパク質(34kDa)と同等であった。
同定されたタンパク質は、UniProt情報にフルクトース-ビスリン酸アルドラーゼ(Fructose-bisphosphate aldolase;解糖系においてフルクトース-1,6-二リン酸をグリセルアルデヒド-3-リン酸とジヒドロキシアセトンリン酸に分解する酵素)として登録されている(https://www.uniprot.org/uniprot/F2ELD1)。このタンパク質が膵リパーゼ阻害活性を有することの報告は、本発明者らの知る限り、なされていない。
[実施例5]組換えタンパク質の調製
(1)プラスミドベクターの構築
配列番号3の配列(Uniprot A0A287NGA7のcDNA配列:Ensembl Plants Transcript: HORVU4Hr1G019570.5より)を大腸菌での発現用に最適化した配列(配列番号4)をpET-19bベクターに導入したプラスミドベクターを構築した。なお、発現用に最適化した配列(配列番号4)の合成とプラスミドベクターの構築は、GenScript社へ委託した。
このベクターをMutagenesis Primer1、2(配列番号5、6)を用いてPrimeSTAR MAX DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社製)を用いて増幅することでHisタグを除去した。得られた反応液をE.coli HST08 Premium Competent Cells(タカラバイオ株式会社製)に加えて形質転換体を得た後、NucleoSpin Plasmid EasyPure(タカラバイオ株式会社製)を用いてプラスミドを精製した。
Figure 0007464932000007
(2)組換えタンパク質(A0A287NGA7)の発現と精製
上記(1)で精製したプラスミドベクターをBL21(DE3) Competent E. coli(New England Bio Labs社製)に導入して形質転換体を得た。この形質転換体を100μg/mLのアンピシリンを添加したLB培地50mLにてOD600が0.4-0.6程度となるまで培養後、1mMとなるようにイソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)を加えて37℃で二時間培養した。
得られた培養液を遠心分離(8,000×g、1分)して大腸菌を回収後、cOmplete, Mini(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社製)、0.2mg/mLリゾチーム、35unit/mL Benzonaseヌクレアーゼ(Sigma-Aldrich社製)を加えた CelLytic B Cell Lysis Reagent 1mLにて溶解した。室温で10分間反応後、遠心分離(15,000×g、5分)して得られた沈殿を再度CelLytic B Cell LysisReagentにて洗浄した。
得られた沈殿を変性剤入りのトリス緩衝液(50mMトリス、0.5M塩化ナトリウム、6Mグアニジン、pH8.0)50μLに溶解した。この溶液40μLをリフォールディング緩衝液(40mMトリス、0.2M塩化ナトリウム、0.4Mアルギニン、0.4Mグアニジン、30%グリセロール、pH8.0)に加えて4℃で4日間静置した。
溶液を遠心分離(10,000×g、10分)して得られた上清をバイオデザイン透析チューブ(#D102、BioDesign Inc. of New York)に入れ、4℃で10日間トリス緩衝液(50mMトリス、0.1M塩化ナトリウム、pH8.0)に対して透析後、さらにトリス緩衝液を交換して4℃で1日間透析した。
透析チューブから回収した溶液を遠心分離(15,000×g、3分)し、上清をVivaspin Turbo 15(10,000 MWCO、ザルトリウス・ジャパン社製)により濃縮したのち、HiTrapDesalting(GEヘルスケアジャパン株式会社製)により精製して組換えタンパク質(A0A287NGA7)を得た。得られたタンパク質はSDS-PAGE分析により約34kDaの位置にバンドが確認された。
このタンパク質のSDS-PAGE分析結果を図3に示す。図3中、「←」が精製物(組換えタンパク質)である。なお、泳動は10%TGX FastCastゲル(バイオラッド社製)、200V、30分、染色はEzStainAQua(アトー株式会社製)で行った。
[実施例6]組換えタンパク質の膵リパーゼ阻害活性
測定は上述の実施例3と同様の方法で行った。ただし、陽性対照のみ5μMのセチリスタットに濃度を変更している。その結果を図4に示す。図4中、PC(陽性対照)はセチリスタットである。有意差の検定結果(t-test)は、mean±SD *p<0.05である。
図2、図4から、組換えタンパク質は、大麦若葉エキス末から精製したタンパク質と同等の膵リパーゼ阻害活性を有していることが分かる。
[実施例7]糞中脂質の解析
以下の2群のマウスを用いて、糞中脂質(トリグリセライド量と遊離脂肪酸量)を解析した。
・HFD群:Research Diet社のD12492飼料を給餌するマウス群
・6%HV群:6%の大麦若葉エキス末を添加したD12492飼料を給餌するマウス群
糞中脂質の測定は次のとおり行った。マウスの糞を凍結乾燥により乾燥後、100mgを量り取って乳鉢で粉砕した。粉末化した糞を4mLのクロロホルム/メタノール(2:1、v/v)に懸濁して24時間振とうしながら抽出した。懸濁液をろ過し、ろ液を遠心分離(12,000×g、15分)にかけた。上清を回収し、遠心エバポレーターにより乾燥後、200μLのイソプロパノールを加えた。溶液を1時間超音波処理して脂質を溶解させたのち、LabAssaytriglyceride(富士フィルム和光純薬株式会社製、632-50991)によりトリグリセリド量を定量し、LabAssay NEFA(富士フィルム和光純薬株式会社製、294-63601)により遊離脂肪酸量を定量した。
上記2群のC57BL/6雄性マウス(各2匹、6-12週齢)に、それぞれの群における飼料を1週間給餌し、その後糞を3日間別々に採取して個別に、糞中のトリグリセリド(TG)量と遊離脂肪酸量(NEFA)量を上記方法により測定し、評価した(n=3)。その後、HFD群のマウスと6%HV群のマウスを入れ替え、入れ替えたそれぞれの群における飼料を1週間給餌し、再度同様に糞中のTG量及びNEFA量を測定し、評価した(n=6)。
その結果を図5、図6に示す。図から明らかなとおり、大麦若葉エキス末の添加群(6%HV群)では、麦若葉エキス末の非添加群(HFD群)と比べ、糞中トリグリセリド量及び遊離脂肪酸量ともに、有意に増加した(有意差の検定結果(t-test):mean±SD **p<0.01)。この結果から、大麦若葉エキス末は、生体内で脂質吸収の抑制作用を有することが解った。

Claims (4)

  1. 以下の(a)~()よりなる群から選ばれる何れかのタンパク質を有効成分として含むことを特徴とする膵リパーゼ阻害剤であって、前記タンパク質が、単離されたタンパク質又は組換えタンパク質である、前記膵リパーゼ阻害剤
    (a)配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ膵リパーゼ阻害活性を有するタンパク質
    (b)配列番号3に記載の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有するDNAによりコードされるタンパク質であって、かつ該タンパク質が膵リパーゼ阻害活性を有するタンパク質
    (c)配列番号4に記載の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有するDNAによりコードされるタンパク質であって、かつ該タンパク質が膵リパーゼ阻害活性を有するタンパク質
  2. タンパク質が、大麦若葉由来のタンパク質であることを特徴とする請求項1記載の膵リパーゼ阻害剤。
  3. 請求項1又は2記載の膵リパーゼ阻害剤を有効成分として含むことを特徴とする脂質吸収抑制用剤。
  4. 請求項1若しくは2記載の膵リパーゼ阻害剤、又は請求項記載の脂質吸収抑制用剤を有効成分として含んでなる膵リパーゼ阻害用又は脂質吸収抑制用の飲食品。
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