JP4672318B2 - エッチング方法 - Google Patents

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Description

本発明は、エッチング方法に関し、詳細には、反応性ガスのプラズマを利用してシリコン基板にエッチングを行なうエッチング方法に関する。
SOI(Silicon on insulator)構造のデバイスは、省電力化、高速化が可能であるため、超LSIなどの各種半導体装置のほか、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)への適用も期待されている。SOI構造の半導体装置の製造においては、BOX(Buried Oxide:埋込酸化膜)層の上に形成されたシリコン層をエッチングすることにより、ホールやトレンチを形成する。このエッチングには、エッチングガスとして、例えば、SFとOの混合ガス、SFとOとSiFの混合ガス、SFとCとの混合ガスなどを用い、SOI構造のBOX層が露出するまでSi層をプラズマエッチングすることが行なわれている。
しかし、エッチングがBOX層付近まで進行すると、強固なBOX層との境界面でシリコン層のエッチングが横方向へ進行するノッチング現象が発生する。このノッチング現象は、高アスペクト比となるホールやトレンチの底部で、正イオンと電子の流入バランスが崩れてイオン過多になり、BOX層が正に帯電する結果、入射するガスプラズマ中の正イオンが曲げられ、シリコン側壁やその保護膜をエッチングしてしまうために起こると考えられている。
また、一般に被処理基板の中央部とエッジ部ではエッチングレートが異なるため、上記ガス系を用いてSOI構造の被処理基板のシリコン層をエッチングする際、エッチングレートが遅い部分が終了するまでエッチングを行なうと、被処理基板のエッチングレートが速い部分ではBOX層まで到達した後もオーバーエッチングが続けられることになるため、さらにノッチングが発生しやすくなる。
ノッチングを防止する技術としては、被エッチング薄膜を構成する元素と同一の元素を含む四塩化シリコンなどの添加ガスをエッチングガスに混合してエッチングを行なうエッチング方法(例えば、特許文献1)が提案されている。
また、ノッチング防止のため、第1エッチャントとしてSFとHBrとOを用い、第2エッチャントとしてHBrとOとを用いるエッチング方法が提案されている(例えば、特許文献2)。
特開平8−213368号公報(請求項1など) 特表2003−524898号公報(請求項1など)
一般に、スループット向上の観点から、エッチングレートは高い方が好ましく、SOI構造の被処理基板に対してエッチングを行なう場合でも、高エッチングレートでの処理を実現することが求められる。ところが上記従来技術の方法は、いずれもエッチングレートを犠牲にしてノッチングを回避しようとするものである。例えば、上記特許文献1では、四塩化シリコンの添加により積極的に保護膜を形成してノッチの防止を図っているが、保護膜が形成されれば、必然的にエッチングレートは低下する。また、上記特許文献2の方法でも、第1エッチャントとして堆積物を形成しやすいHBrを含むガスを用いるので、エッチングレートはせいぜい2〜4μm/分であり、また、第2エッチャントによるエッチングのレートも6000〜8000オングストローム/分程度に過ぎない。従って、従来技術に挙げたノッチング対策は、仮にノッチングを回避できたとしても、エッチングレートが低すぎ、実用性に欠けるという問題があった。
従って、本発明の目的は、ノッチングを回避するとともに、高エッチングレートでのエッチングが可能なエッチング方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点によれば、真空に保持可能な処理容器内に、所定形状のパターンが形成されたマスク層と、前記マスク層の下に形成された被エッチング層としてのシリコン層と、前記シリコン層の下に形成されたストッパー層とを有する被処理体を載置し、エッチングガスのプラズマを作用させることにより前記ストッパー層に達する略垂直形状の開口を形成するエッチング方法であって、SFとOとを含み、HBrを含まない第1のエッチングガスにより、前記シリコン層に壁面がテーパー形状の開口を、前記ストッパー層の一部が露出するまで形成する第1のエッチング工程と、SFとOとHBrとを含む第2のエッチングガスにより、前記開口のテーパー形状の壁面を横方向に広げ、前記壁面がテーパー形状の開口を、前記ストッパー層に達する略垂直形状の開口とする第2のエッチング工程と、を含み、前記第1のエッチングを、SF流量をO流量の3〜4倍とし、前記テーパー形状の開口のテーパー角度が80〜88°の範囲になるように、前記処理容器内の圧力を23.9Pa以上39.9Pa未満、前記被処理体単位面積あたりの高周波電力を2.2W/cm 以上3.3W/cm 以下の範囲で制御して発生させたプラズマにより行い、前記第2のエッチングを、HBrと、SFおよびOとの比[HBr/(SF+O)]を0.25より大きく1より小さくし、前記被処理体単位面積あたりの高周波電力が前記第1のエッチングよりも小さく、かつ前記処理容器内の圧力が前記第1のエッチングよりも高い条件で発生させたプラズマにより行うことを特徴とする、エッチング方法が提供される。
第1の観点において、前記第1のエッチング工程では、前記ストッパー層の一部が露出した後も所定時間オーバーエッチングを行なうことができる
らに、前記ストッパー層がシリコン酸化膜であり、被処理体がSOI構造を有するシリコンウエハであることが好ましい。
第1の観点において、前記第2のエッチング工程のエッチング速度は、前記第1のエッチング工程のエッチング速度より小さいことが好ましい。
本発明の第2の観点によれば、コンピュータ上で動作する制御プログラムが記憶されたコンピュータ記憶媒体であって、
前記制御プログラムは、実行時に、上記第1観点に係るエッチング方法が行われるように、プラズマエッチング装置を制御することを特徴とする、コンピュータ記憶媒体が提供される。
本発明のプラズマエッチング方法によれば、フッ素含有ガスと酸素を含む処理ガスによる第1のエッチング工程と、フッ素含有ガスと酸素と臭化水素とを含む処理ガスによる第2のエッチング工程とを含み、第1のエッチング方法では、ホールまたはトレンチの側壁をテーパー状に形成し、第2のエッチング工程で略垂直な側壁を形成する少なくとも2段階のエッチング工程によって、高いエッチングレートを維持しながら、ノッチの発生を効果的に防止することができる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明方法を実施する目的で好適に使用可能なマグネトロンRIE方式のプラズマエッチング装置100の概要を示す断面図である。このエッチング装置100は、気密に構成され、小径の上部1aと大径の下部1bとからなる段つき円筒状をなし、壁部が例えばアルミニウム製のチャンバー(処理容器)1を有している。
このチャンバー1内には、被処理体としてSOI構造を備えたシリコン基板であるウエハWを水平に支持する支持テーブル2が設けられている。支持テーブル2は例えばアルミニウムで構成されており、絶縁板3を介して導体の支持台4に支持されている。また、支持テーブル2の上方の外周にはSi以外の材料、例えば石英で形成されたフォーカスリング5が設けられている。上記支持テーブル2と支持台4は、ボールねじ7を含むボールねじ機構により昇降可能となっており、支持台4の下方の駆動部分は、ステンレス鋼(SUS)製のベローズ8で覆われている。ベローズ8の外側にはベローズカバー9が設けられている。なお、上記フォーカスリング5の外側にはバッフル板10が設けられており、このバッフル板10、支持台4、ベローズ8を通してチャンバー1と導通している。なお、チャンバー1は接地されている。
チャンバー1の下部1bの側壁には、排気ポート11が形成されており、この排気ポート11には排気系12が接続されている。そして排気系12の真空ポンプを作動させることによりチャンバー1内を所定の真空度まで減圧することができるようになっている。一方、チャンバー1の下部1bの側壁上側には、ウエハWの搬入出口を開閉するゲートバルブ13が設けられている。
支持テーブル2には、整合器14を介してプラズマ形成用の第1の高周波電源15が接続されており、この第1の高周波電源15から所定の周波数の高周波電力が支持テーブル2に供給されるようになっている。一方、支持テーブル2に対向してその上方には後で詳細に説明するシャワーヘッド20が互いに平行に設けられており、このシャワーヘッド20は接地されている。したがって、支持テーブル2およびシャワーヘッド20は一対の電極として機能する。
第1の高周波電源15の給電線には、整合器25を介して第2の高周波電源26が接続されている。第2の高周波電源26は第1の高周波電源15の周波数よりも低い高周波電力を供給しプラズマ形成用の高周波電力に重畳されるようになっている。
支持テーブル2の表面上にはウエハWを静電吸着して保持するための静電チャック6が設けられている。この静電チャック6は絶縁体6bの間に電極6aが介在されて構成されており、電極6aには直流電源16が接続されている。そして電極6aに電源16から電圧が印加されることにより、静電力例えばクーロン力によってウエハWが吸着される。
支持テーブル2の内部には、冷媒室17が設けられており、この冷媒室17には、冷媒が冷媒導入管17aを介して導入され冷媒排出管17bから排出されて循環し、その冷熱が支持テーブル2を介してウエハWに対して伝熱され、これによりウエハWの処理面が所望の温度に制御される。
また、チャンバー1が排気系12により排気されて真空に保持されていても、冷媒室17に循環される冷媒によりウエハWを有効に冷却可能なように、冷却ガスが、ガス導入機構18によりそのガス供給ライン19を介して静電チャック6の表面とウエハWの裏面との間に所定圧力(バックプレッシャー)で導入される。このように冷却ガスを導入することにより、冷媒の冷熱がウエハWに有効に伝達され、ウエハWの冷却効率を高くすることができる。
上記シャワーヘッド20は、チャンバー1の天壁部分に支持テーブル2に対向するように設けられている。このシャワーヘッド20は、その下面に多数のガス吐出孔22が設けられており、かつその上部にガス導入部20aを有している。そして、その内部には空間21が形成されている。ガス導入部20aにはガス供給配管23aが接続されており、このガス供給配管23aの他端には、エッチングガスおよび希釈ガスからなる処理ガスを供給する処理ガス供給系23が接続されている。
このような処理ガスが、処理ガス供給系23からガス供給配管23a、ガス導入部20aを介してシャワーヘッド20の空間21に至り、ガス吐出孔22から吐出される。
一方、チャンバー1の上部1aの周囲には、同心状に、ダイポールリング磁石24が配置されている。ダイポールリング磁石24は、図2の水平断面図に示すように、複数の異方性セグメント柱状磁石31がリング状の磁性体のケーシング32に取り付けられて構成されている。この例では、円柱状をなす16個の異方性セグメント柱状磁石31がリング状に配置されている。図2中、異方性セグメント柱状磁石31の中に示す矢印は磁化の方向を示すものであり、この図に示すように、複数の異方性セグメント柱状磁石31の磁化の方向を少しずつずらして全体として一方向に向かう一様な水平磁界Bが形成されるようになっている。
したがって、支持テーブル2とシャワーヘッド20との間の空間には、図3に模式的に示すように、第1の高周波電源15により鉛直方向の電界ELが形成され、かつダイポールリング磁石24により水平磁界Bが形成され、このように形成された直交電磁界によりマグネトロン放電が生成される。これによって高エネルギー状態のエッチングガスのプラズマが形成され、ウエハWがエッチングされる。
プラズマエッチング装置100の各構成部は、CPUを備えたプロセスコントローラ50に接続されて制御される構成となっている。プロセスコントローラ50には、工程管理者がプラズマエッチング装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、プラズマエッチング装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインタフェィス51が接続されている。
また、プロセスコントローラ50には、プラズマエッチング装置100で実行される各種処理をプロセスコントローラ50の制御にて実現するための制御プログラムや処理条件データ等が記録されたレシピが格納された記憶部52が接続されている。
そして、必要に応じて、ユーザーインタフェィス51からの指示等にて任意のレシピを記憶部52から呼び出してプロセスコントローラ50に実行させることで、プロセスコントローラ50の制御下で、プラズマエッチング装置100での所望の処理が行われる。また、前記レシピは、例えば、CD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスクなどの読み出し可能な記憶媒体に格納された状態のものを利用したり、あるいは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させて利用したりすることも可能である。
次に、このように構成されるプラズマエッチング装置100を用いた本発明方法の実施形態について、適宜図4を参照しながら説明する。本発明方法では、第1のエッチング工程と、第2のエッチング工程の2ステップのエッチング処理を行なうものであるため、以下の説明は、第1のエッチング工程と第2のエッチング工程とに分けて説明する。
<第1のエッチング工程>
第1のエッチング工程では、まず、図1のゲートバルブ13を開にしてウエハWをチャンバー1内に搬入し、支持テーブル2に載置した後、支持テーブル2を図示の位置まで上昇させ、排気系12の真空ポンプにより排気ポート11を介してチャンバー1内を排気する。この状態のウエハWは、図4(a)に示すように、Si基板101上に、絶縁酸化膜のストッパー層102、被エッチング層としてのポリシリコンなどのシリコン層103、レジストなどのマスク層104が積層された構造をしている。マスク層104には、所定形状のパターンが形成されている。
そして処理ガス供給系23からエッチングガスおよび希釈ガスを含む処理ガスが所定の流量でチャンバー1内に導入され、チャンバー1内の圧力を13.3〜66.7Pa(100〜500mTorr)にし、その状態で第1の高周波電源15から支持テーブル2に所定の高周波電力を供給する。プラズマを生成させるための高周波電力としては、例えばウエハW面積当り1.6〜7.6W/cmとすることが好ましい。この際に、ウエハWは、直流電源16から静電チャック6の電極6aに所定の電圧が印加されることにより例えばクーロン力により静電チャック6に吸着保持されるとともに、上部電極であるシャワーヘッド20と下部電極である支持テーブル2との間に高周波電界が形成される。シャワーヘッド20と支持テーブル2との間にはダイポールリング磁石24により水平磁界Bが形成されているので、ウエハWが存在する電極間の処理空間には直交電磁界が形成され、これによって生じた電子のドリフトによりマグネトロン放電が生成される。そしてこのマグネトロン放電により形成されたエッチングガスのプラズマによりウエハWがエッチングされる。この場合に、チャンバー1内のガス圧力を高めに設定することにより、イオンおよび電子の荷電粒子のみならず、十分な量のラジカルを生成させることができ、このラジカルが有効に作用して20μm/min以上という高速のエッチングを実現することができる。
また、ウエハWの上のラジカル数を多くする観点から被処理体であるウエハWを載置する電極に高周波電力を印加することが好ましい。本実施形態ではRIEタイプのプラズマ生成機構を用い、ウエハWを載置する下部電極である支持テーブル2に高周波電力を印加するので、プラズマを被処理体の直上で形成することができる。したがって、ラジカルの消滅レートを減少させてウエハWの上のラジカル数を多くすることができるとともに、ラジカルをウエハWのエッチングに有効に寄与させることができる。また、電極間に電界と直交する磁場を形成しながらエッチングを行うことにより、被処理体直上にE×Bドリフトが生じ、被処理体の直上で高プラズマ密度が実現される。これらにより、上記ガス圧力が高いことと相俟って一層高速でエッチングすることができる。
第1のエッチング工程で使用するエッチングガスとしては、ウエハWを高速でエッチングする観点から反応性の高いフッ素含有ガスと酸素を含むガスを用いることが好ましい。フッ素含有ガスとしては、1分子に存在するFの数が多いほど反応性が高く、その分子をAxFy(ただし、Aは任意の元素、xおよびyは価数)と表した場合に、yが4以上、さらにはyが6以上が反応性が高く好ましい。このようなフッ素含有ガスとしては、CF、C、SF、S10等を挙げることができる。また、フッ素含有ガスとともに酸素ガスを用いることによりエッチングの異方性を高めることができ、エッチングの形状性を良好にすることができる。具体的には、SFとOとを含み、SF/O比が1〜10のものが、高速エッチング性および形状性の観点から好ましく、3〜4程度がより好ましい。
エッチングの形状性を良好にするためには、ウエハWの温度を低下させることも有効である。そのために、冷媒室17が設けられており、この冷媒室17に冷媒が循環され、その冷熱が支持テーブル2を介してウエハWに対して伝熱され、これによりウエハWの処理面が所望の温度に制御される。エッチングの形状性つまり異方性を良好にするためには、例えば−30℃程度の冷媒を循環させる。
また、ガス導入機構18によりガス供給ライン19を介してウエハWに冷熱を有効に供給するための伝熱ガスが静電チャック6の表面とウエハWの裏面との間に所定圧力(バックプレッシャー)で導入されるが、このガスとしては通常のHeの代わりにSFやC等のエッチングガスとして用いられるガスを導入することが好ましい。これらは冷却効率がHeよりも大きく、ウエハWを冷却する効果を一層高めることができ、エッチングの形状性をより良好にすることが可能となる。
プラズマ生成用の第1の高周波電源15は、所望のプラズマを形成するためにその周波数および出力が適宜設定される。ウエハWの直上のプラズマ密度を高くする観点からは、周波数が27MHz以上であることが好ましい。
第2の高周波電源26は、プラズマのイオンエネルギーをコントロールするための高周波電力を供給するものであり、その周波数は第1の高周波電源15の周波数よりも小さく2MHz以上であることが好ましい。
ダイポールリング磁石24は、ウエハWの直上のプラズマ密度を高くするために、対向電極である支持テーブル2およびシャワーヘッド20の間の処理空間に磁場を印加するが、その効果を有効に発揮させるためには処理空間に10000μT(100G)以上の磁場を形成するような強度の磁石であることが好ましい。磁場は強ければ強いほどプラズマ密度を高くする効果が増加すると考えられるが、安全性の観点から100000μT(1kG)以下であることが好ましい。
第1のエッチング工程では、図4(b)に示すように、マスク層104からシリコン層103に向けてエッチングを進行させ、ホール110(またはトレンチ)の側壁111がテーパー形状になるようにエッチングを施す。つまり、図4(b)中に破線で示す最終的なエッチング形状に対し、ホール(またはトレンチ)110下部の側壁111のエッチングを抑制した状態にとどめる。テーパー状の側壁111の角度θは、底面となるストッパー層102に対して80〜88°の範囲になるように制御することが好ましい。
このようなテーパー形状は、第1のエッチング工程におけるチャンバー1内の圧力と、プラズマを発生させるための高周波電力によって、制御することができる。この目的のため、第1のエッチング工程におけるチャンバー1内の圧力は、13.3〜66.7Pa(100〜500mTorr)とし、プラズマを生成させるための高周波電力はウエハWの面積当り1.6〜7.6W/cmとすることが好ましい。
ここで、圧力と高周波電力がホール110のテーパー形状に与える影響について検討を行なった模擬試験について説明する。図5は、チャンバー1内の圧力を8〜39.9Pa(60〜300mTorr)、高周波電力を400〜800W(ウエハWの面積当り2.2〜4.4W/cm)の範囲で変化させて、ウエハWの中央部に40×40μmの四角い開口のホール110を形成した場合のホール110の形状を電子顕微鏡により撮影した画像を示す図面である。なお、プラズマエッチングにおける他の条件は、以下のとおりである。
プラズマエッチング条件:
磁場の強さ=17000μT(170G)勾配磁石;
SF/O流量比=300/80;
上下部電極間距離(シャワーヘッド20の下面と支持テーブル2の上面までの距離、以下同様である)=37mm;
バックプレッシャー(センター部/エッジ部)=933/5332Pa(7/40Torr);
シャワーヘッド20の温度=40℃;
チャンバー1側壁の温度=40℃;
支持テーブル2の温度=−10℃;
図5中、テーパー角度は白抜きの数字で示している。この図5から、チャンバー内圧力が大きくなるとテーパー角θが小さくなり、テーパーが強まる傾向が示されている。また、同じチャンバー内圧力でも高周波電力が高くなると、テーパー角θが大きくなり、テーパーが弱まる(あるいは、逆向きのテーパー形成となる)傾向が示されている。
以上のように、第1のエッチング工程では、処理ガスとして、SFおよびOを用い、チャンバー内圧力と高周波電力を制御することによって、ホール110がテーパー形状となるようにエッチングを行えることが確認された。
第1のエッチング工程は、図4(b)に示すように、ストッパー層102の一部が露出するか、あるいは、ストッパー層102の一部が露出してから所定時間経過するまでオーバーエッチングを実施した後終了することができる。オーバーエッチングは、例えばエッチング対象の膜厚に対しエッチング量として0〜15%程度多くなる時間行なうことが好ましい。
<第2のエッチング工程>
第2のエッチング工程は、プラズマエッチング装置100で処理ガスを代えてエッチングを実施する。第2のエッチング工程では、図4(c)のように、第1のエッチング工程で形成されたホール110のテーパー形状の側壁111(破線で示す)を横方向に広げるようにエッチングが進められる。
第2のエッチング工程の処理ガスとしては、例えばSFなどのフッ素含有ガスと、Oガスと、HBrとを含むガスが使用される。フッ素含有ガスとしては、前記第1のエッチング工程と同じガスを用いることができる。
ここで、図6は、エッチングガスに含まれるHBrと、SFおよびOとの流量比を変化させて、Si基板へ直接エッチングを行なった模擬実験のホール110の形状を電子顕微鏡によって撮影した画像である。
本実験では、SF/Oの流量を180/60mL/minに固定しており、図6(a)は、HBrガスを含まない場合、同(b)はHBr60mL/min、同(c)はHBr120mL/min、同(d)はHBr180mL/min、同(e)はHBr240mL/minであり、HBr/(SF+O)は、それぞれ0、0.25、0.5、0.75、1である。
なお、プラズマエッチングにおける他の条件は、以下のとおりである。
プラズマエッチング条件:
磁場の強さ=17000μT(170G)勾配磁石;
チャンバー内圧力=26.7Pa(200mTorr);
高周波電力=600W(ウエハ面積当り3.3W/cm);
上下部電極間距離=37mm;
バックプレッシャー(センター部/エッジ部)=1333/2666Pa(10/20Torr);
シャワーヘッド20の温度=40℃;
チャンバー1側壁の温度=40℃;
支持テーブル2の温度=0℃
図6から、HBrの量が多くなるに従い、エッチングレートが低下し、ホール110の深さが浅くなっていることが見て取れる。HBrは、エッチング中にデポ(堆積物)を形成し、このデポが保護膜として機能する結果、エッチングレートを低下させるものである。しかし、図6(a)のHBrを含まない処理ガスの場合には、デポによる保護作用が無いことから、エッチングが垂直方向に進み、ストッパー層102が存在するSOIウエハでは、ノッチを引き起こす原因となる。また、HBr比が少ない場合には、図6(b)に示すように、ホール110が横方向に広がり過ぎる場合がある。従って、他の条件にも依存するが、第2のエッチング工程でテーパー状の側壁111を略垂直にエッチングするためのガス流量比には、最適範囲が存在することが理解される。
この模擬試験から、第2のエッチング工程では、図6の(c)、(d)を含む範囲、例えば、第2のエッチングガスに含まれるHBrと、フッ素含有ガスおよびOとの比[HBr/(フッ素含有ガス+O)]が0.25より大きく1より小さい範囲でエッチングを行なうことが好ましく、エッチングレートの低下を抑制するためには、0.25より大きく0.75より小さい範囲がより好ましく、0.25より大きく0.5以下が望ましいと考えられる。
また、ノッチング形成回避、エッチング形状制御などの観点から、第2のエッチング工程におけるチャンバー1内の圧力は、26.7〜66.7Pa(200〜500mTorr)とし、プラズマを生成させるための高周波電力はウエハWの面積当り1.6〜3.3W/cmとすることが好ましい。
さらに、第2のエッチング工程では、光学的手法によるエッチング形状モニター手段を用いて、テーパー角度などをモニターし、所定のエッチング形状となった時点で終点とし、エッチングを終了させることができる。
以上の検討を踏まえ、SOIウエハに対して、プラズマエッチング装置100を用いてエッチングを実施した結果を図7〜図9に示す。なお、図中、「センター部」はSOIウエハの中央に形成したホール110、「エッジ部」はSOIウエハのエッジに形成したホール110を意味している。
図7は比較例であり、以下に示すプラズマ処理条件でシリコン層103の膜厚が50μmのサンプル[図7(a)および(b)]と、100μmのサンプル[図7(c)、(d)]に対して1段階でエッチングを実施した後のホール110断面の電子顕微鏡画像である。
(1)エッチング工程の条件:
磁場の強さ=17000μT(170G);
チャンバー内圧力=26.7Pa(200mTorr);
高周波電力=600W(ウエハ面積当り3.3W/cm);
SF/O流量比=180/60;
上下部電極間距離=37mm;
バックプレッシャー(センター部/エッジ部)=1333/2666Pa(10/20Torr);
シャワーヘッド20の温度=40℃;
チャンバー1側壁の温度=40℃;
支持テーブル2の温度=0℃
シリコン層103の膜厚が50μmのサンプル(a)、(b)は、30%のオーバーエッチング、すなわち65μmの深さまでエッチングできる時間をかけてエッチングを実施した。また、100μmのサンプル(c)、(d)は、15%のオーバーエッチング、すなわち115μmの深さまでエッチングできる時間をかけてエッチングを実施した。
図7(a)〜(d)から、いずれのサンプルにおいても、ホール110の底がストッパー層102に沿って横方向に削られ、ノッチが発生していることがわかる。
図8は本発明方法による第1実施例の結果を示しており、シリコン層103の膜厚が50μmのサンプル[図8(a)および(b)]と、100μmのサンプル[図8(c)および(d)]に対して、第1のエッチング工程および第2のエッチング工程を下記の条件で実施した後のホール110断面の電子顕微鏡画像である。
(1)第1のエッチング工程の条件:
磁場の強さ=17000μT(170G);
チャンバー内圧力=26.7Pa(200mTorr);
高周波電力=600W(ウエハ面積当り3.3W/cm);
SF/O流量比=180/60;
上下部電極間距離=37mm;
バックプレッシャー(センター部/エッジ部)=1333/2666Pa(10/20Torr);
シャワーヘッド20の温度=40℃;
チャンバー1側壁の温度=40℃;
支持テーブル2の温度=0℃
(2)第2のエッチング工程の条件:
磁場の強さ=17000μT(170G);
チャンバー内圧力=39.9Pa(300mTorr);
高周波電力=300W(ウエハ面積当り1.6W/cm);
SF/O/HBr流量比=180/60/180;
上下部電極間距離=37mm;
バックプレッシャー(センター部/エッジ部)=1333/2666Pa(10/20Torr);
シャワーヘッド20の温度=40℃;
チャンバー1側壁の温度=40℃;
支持テーブル2の温度=0℃
ここで、図8(a)のサンプルは、第1のエッチング工程で45μm、第2のエッチング工程で20μmの合計65μmの深さまでエッチングできる時間分のオーバーエッチングを実施した。
図8(b)のサンプルは、第1のエッチング工程で45μm、第2のエッチング工程で12μmの合計57μmの深さまでエッチングできる時間分のオーバーエッチングを実施した。
また、図8(c)のサンプルは、第1のエッチング工程で95μm、第2のエッチング工程で20μmの合計115μmの深さまでエッチングできる時間分のオーバーエッチングを実施した。
また、図8(d)のサンプルは、第1のエッチング工程で95μm、第2のエッチング工程で12μmの合計107μmの深さまでエッチングできる時間分のオーバーエッチングを実施した。
センター部のホール110断面(膜厚100μm)を示す図8(c)において、ホール110の底がストッパー層102に沿って横方向に極く僅かに削られているが、図7のような顕著なノッチは抑制されていることがわかる。また、図8(a)、(b)、(d)に示すホール110は、いずれもノッチの発生は見られなかった。
以上、図7および図8の結果を総合すると、処理ガス中にHBrを含まない第1のエッチング工程と、処理ガス中にHBrを所定比率で含む第2のエッチング工程とを実施した2段階のエッチングの場合(図8)、通算のエッチング時間が同じでも、一段階のエッチング結果(図7)に比べて、ノッチの発生を効果的に抑制できることが示された。
図9は、本発明の第2実施例の結果を示しており、シリコン層103の膜厚が100μmのサンプル[図9(a)および(b)]に対して、第1のエッチング工程および第2のエッチング工程を下記の条件で実施した後のホール110断面の電子顕微鏡画像である。
(1)第1のエッチング工程の条件:
磁場の強さ=17000μT(170G);
チャンバー内圧力=33.25Pa(250mTorr);
高周波電力=550W(ウエハ面積当り3.0W/cm);
SF/O流量比=180/60;
上下部電極間距離=37mm;
バックプレッシャー(センター部/エッジ部)=1333/2666Pa(10/20Torr);
シャワーヘッド20の温度=40℃;
チャンバー1側壁の温度=40℃;
支持テーブル2の温度=0℃;
(2)第2のエッチング工程の条件:
磁場の強さ=17000μT(170G);
チャンバー内圧力=39.9Pa(300mTorr);
高周波電力=300W(ウエハ面積当り1.6W/cm);
SF/O/HBr流量比=180/60/180;
上下部電極間距離=37mm;
バックプレッシャー(センター部/エッジ部)=1333/2666Pa(10/20Torr);
シャワーヘッド20の温度=40℃;
チャンバー1側壁の温度=40℃;
支持テーブル2の温度=0℃;
ここで、図9(a)のセンター部は、第1のエッチング工程で115μm、第2のエッチング工程で15μmの合計130μmの深さまでエッチングできる時間をかけてエッチングを実施した。
図9(b)のエッジ部は、第1のエッチング工程で101μm、第2のエッチング工程で9μmの合計110μmの深さまでエッチングできる時間をかけてエッチングを実施した。
第1のエッチング工程終了後、センター部のホール110の側壁111のテーパー角度は83.7°であり(図示せず)、これが第2のエッチング工程終了後の側壁112では87.0°となっており、略垂直に近い側壁112のホール110が形成された。また、図9(a)、(b)に示すように、センター部、エッジ部のいずれの箇所でも、ノッチは形成されなかった。
また、本実施形態では、第1のエッチング工程で20μm/min以上、第2のエッチング工程で5〜10μm/minの高いエッチングレートが得られることも確認されている。
以上のように、本実施形態の方法を採用することにより、ノッチングを防止してSOIなどのウエハWを極めて高速でエッチングできることが確認された。従って、本発明のかつエッチングの形状性も良好となることが確認された。
以上、本発明の実施形態を述べたが、本発明は上記実施形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態ではマグネトロンRIEプラズマエッチング装置100の磁場形成手段としてダイポールリング磁石を用いたが、これに限るものではなく、磁場の形成も必須なものではない。また、本発明の範囲のガス圧力でプラズマを形成することができれば装置は問わず、容量結合型や誘導結合型等の種々のプラズマエッチング装置100を用いることができる。ただし、高圧でプラズマを形成する観点からは誘導結合型よりも容量結合型のものが好ましい。また、プラズマ生成領域と被処理体とを近づける観点からはその中でもRIEタイプのものが好ましい。また、上記実施形態ではウエハのエッチングについて示したが、Si部分を含む被処理体におけるSiのエッチングであれば、ウエハのエッチングに限るものではない。
本発明に係る方法を実施するためのマグネトロンRIEプラズマエッチング装置の概略構成を示す断面図。 図1の装置のチャンバーの周囲に配置された状態のダイポールリング磁石を模式的に示す水平断面図。 チャンバー内に形成される電界および磁界を説明するための模式図。 本発明のエッチング方法の手順を示しており、(a)はエッチング前、(b)は第1のエッチング工程終了後、(c)は第2のエッチング工程終了後の状態を示す図面。 圧力と高周波電力がエッチングのテーパー角度に与える影響を説明するためのエッチング形状の電子顕微鏡写真。 HBrの添加比率を変えた場合のエッチング形状を示す電子顕微鏡写真。 比較例におけるエッチング形状を示す電子顕微鏡写真。 第1実施例におけるエッチング形状を示す電子顕微鏡写真。 第2実施例におけるエッチング形状を示す電子顕微鏡写真。
符号の説明
1;チャンバー(処理容器)
2;支持テーブル(電極)
12;排気系
15;第1の高周波電源
17;冷媒室
18;ガス導入機構
20;シャワーヘッド(電極)
23;処理ガス供給系
24;ダイポールリング磁石
26;第2の高周波電源
100;プラズマエッチング装置
101;Si基板
102;ストッパー層
103;シリコン層
104;マスク層
110;ホール
111,112;側壁
W;ウエハ

Claims (5)

  1. 真空に保持可能な処理容器内に、所定形状のパターンが形成されたマスク層と、前記マスク層の下に形成された被エッチング層としてのシリコン層と、前記シリコン層の下に形成されたストッパー層とを有する被処理体を載置し、エッチングガスのプラズマを作用させることにより前記ストッパー層に達する略垂直形状の開口を形成するエッチング方法であって、
    SFとOとを含み、HBrを含まない第1のエッチングガスにより、前記シリコン層に壁面がテーパー形状の開口を、前記ストッパー層の一部が露出するまで形成する第1のエッチング工程と、
    SFとOとHBrとを含む第2のエッチングガスにより、前記開口のテーパー形状の壁面を横方向に広げ、前記壁面がテーパー形状の開口を、前記ストッパー層に達する略垂直形状の開口とする第2のエッチング工程と、
    を含み、
    前記第1のエッチングを、
    SF流量をO流量の3〜4倍とし、前記テーパー形状の開口のテーパー角度が80〜88°の範囲になるように、前記処理容器内の圧力を23.9Pa以上39.9Pa未満、前記被処理体単位面積あたりの高周波電力を2.2W/cm 以上3.3W/cm 以下の範囲で制御して発生させたプラズマにより行い、
    前記第2のエッチングを、
    HBrと、SFおよびOとの比[HBr/(SF+O)]を0.25より大きく1より小さくし、前記被処理体単位面積あたりの高周波電力が前記第1のエッチングよりも小さく、かつ前記処理容器内の圧力が前記第1のエッチングよりも高い条件で発生させたプラズマにより行うことを特徴とする、エッチング方法。
  2. 前記第1のエッチング工程では、前記ストッパー層の一部が露出した後も所定時間オーバーエッチングを行なうことを特徴とする、請求項1に記載のエッチング方法。
  3. 前記ストッパー層がシリコン酸化膜であり、被処理体がSOI構造を有するシリコンウエハであることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のエッチング方法。
  4. 前記第2のエッチング工程のエッチング速度は、前記第1のエッチング工程のエッチング速度より小さいことを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエッチング方法。
  5. コンピュータ上で動作する制御プログラムが記憶されたコンピュータ記憶媒体であって、
    前記制御プログラムは、実行時に、
    前記請求項1から請求項4のいずれか一項に記載されたエッチング方法が行われるように、プラズマエッチング装置を制御することを特徴とする、コンピュータ記憶媒体。
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